駆動装置の制御装置
【課題】内燃機関に駆動連結された回転電機を利用した内燃機関の制振制御と、内燃機関の動作状態の設定によるトルクの脈動の抑制制御との関係を最適化する。
【解決手段】内燃機関11の現在の動作状態と、現在の脈動トルクとに基づいて、制振対象となる脈動トルクである制振対象脈動トルクを算出する脈動トルク算出部5と、回転電機12の現在の動作状態と、回転電機12の動作状態に関して予め設定された制振制御可能域とに基づいて、回転電機12の現在の動作状態において回転電機12が出力可能な制振トルクの最大値である出力可能制振トルクを算出する出力可能制振トルク算出部6と、制振対象脈動トルクが出力可能制振トルクよりも大きい場合、内燃機関11の仕事率を維持しつつ内燃機関11の出力トルクを低下させる方向に、内燃機関11の動作状態を変化させる内燃機関制御部3とを備える。
【解決手段】内燃機関11の現在の動作状態と、現在の脈動トルクとに基づいて、制振対象となる脈動トルクである制振対象脈動トルクを算出する脈動トルク算出部5と、回転電機12の現在の動作状態と、回転電機12の動作状態に関して予め設定された制振制御可能域とに基づいて、回転電機12の現在の動作状態において回転電機12が出力可能な制振トルクの最大値である出力可能制振トルクを算出する出力可能制振トルク算出部6と、制振対象脈動トルクが出力可能制振トルクよりも大きい場合、内燃機関11の仕事率を維持しつつ内燃機関11の出力トルクを低下させる方向に、内燃機関11の動作状態を変化させる内燃機関制御部3とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関と当該内燃機関に駆動連結された回転電機とを制御対象とし、この回転電機により内燃機関の脈動トルクを打ち消す方向の制振トルクを発生させて当該脈動トルクを抑制する駆動装置の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、内燃機関は、出力すべき目標パワー(仕事率)である動作状態を、例えばトルクと回転数との関係によって規定した動作ラインに応じて制御されている。このような動作ラインには、燃料消費率を優先した動作状態で規定された燃料消費率優先動作ラインや、出力(パワー)の大きさを優先したパワー優先動作ライン、車両の場合には乗員に伝わる内燃機関のトルクの脈動に起因する振動や異音を抑制して乗り心地を優先する乗り心地優先動作ラインなどがある。特開2005−180331号公報(特許文献1)に開示された自動車の制御装置は、これらの動作ラインの何れかを選択して動作モードを切り換える。例えば、この制御装置では、乗り心地優先動作ラインに応じた乗り心地優先動作モードを、運転者のスイッチ操作により選択することができる(第26,37段落、図3,5,7等)。但し、乗り心地優先動作ラインでの動作を選択すると、当然ながら燃料消費率優先動作ラインでの動作に比べて内燃機関の燃料消費率は低下する。
【0003】
ところで、近年、化石燃料の消費による環境負荷を軽減するべく、内燃機関のみを駆動源とする自動車に比べて環境負荷が小さいハイブリッド自動車が実用化されている。ハイブリッド自動車は、例えば、内燃機関と交流の回転電機とが駆動連結されて構成される。このようなハイブリッド自動車では、内燃機関のトルクの脈動による振動や異音を抑制するために回転電機を利用することができる。例えば燃料消費率優先ラインに基づいて内燃機関を動作させつつ、内燃機関のトルクの脈動を打ち消す制振トルクを回転電機に出力させることによって、振動や異音を抑制することができる。
【0004】
但し、回転電機を利用したこのような制振制御では、回転電機のトルクの応答性が制振性能に大きく影響する。例えば、回転電機のトルク制御の応答性が低いと、高い制振効果が得られない場合がある。自動車のように、回転電機に、広い回転速度域及び広い要求トルク域での利用が求められる場合、回転電機の制御の方式は、回転電機の動作状態(トルクや回転速度などの組み合わせ)に応じて異なる場合がある。ハイブリッド自動車などで用いられる交流の回転電機は、バッテリなどの直流電源から供給される直流電力をインバータにより交流に変換して駆動される。インバータを介した3相の交流回転電機の制御方式には、例えば、3相パルス幅変調制御、2相変調制御、矩形波制御などがある。3相パルス幅変調制御は、3相のそれぞれをパルス幅変調によって制御する方式である。2相変調制御は、3相の内の1相を固定して他の2相をパルス幅変調する方式である。矩形波制御は、電気角の1周期に付き1つの矩形波パルスを用いて制御する方式である。これらの制御方式は、回転電機の回転速度や要求トルクなどに応じて選択される。これらの制御方式は、それぞれ応答性が異なり、制振制御に適さないものもある。従って、回転電機による制振トルクに依存しすぎると充分な制振効果を得られない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−180331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記背景に鑑みて、内燃機関に駆動連結された回転電機を利用した内燃機関の制振制御と、内燃機関の動作状態の設定によるトルクの脈動の抑制制御との関係を最適化する技術が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に鑑みた本発明に係る駆動装置の制御装置の特徴構成は、
内燃機関と当該内燃機関に駆動連結された回転電機とを制御対象とし、前記回転電機により前記内燃機関の脈動トルクを打ち消す方向の制振トルクを発生させて前記脈動トルクを抑制する駆動装置の制御装置であって、
前記内燃機関の現在の動作状態と、現在の前記脈動トルクとに基づいて、制振対象となる前記脈動トルクである制振対象脈動トルクを算出する脈動トルク算出部と、
前記回転電機の現在の動作状態と、前記回転電機の動作状態に関して予め設定された制振制御可能域とに基づいて、前記回転電機の現在の動作状態において前記回転電機が出力可能な前記制振トルクの最大値である出力可能制振トルクを算出する出力可能制振トルク算出部と、
前記制振対象脈動トルクが前記出力可能制振トルクよりも大きい場合、前記内燃機関の仕事率を維持しつつ前記内燃機関の出力トルクを低下させる方向に、前記内燃機関の動作状態を変化させる内燃機関制御部と、を備える点にある。
【0008】
制振対象脈動トルクが出力可能制振トルクよりも大きい場合には、回転電機を利用して内燃機関の脈動トルクを充分に打ち消すことができないが、本特徴構成によれば、内燃機関制御部が、内燃機関の動作状態を変化させることによって脈動トルクを抑制することが可能である。この際、内燃機関制御部は、内燃機関の仕事率を維持しつつ、内燃機関の動作状態を変化させるので、脈動トルクを抑制するとともに必要な出力を得ることができる。尚、仕事率とは、内燃機関の回転速度と出力トルクとの積である。一般的には、脈動トルクの振幅は内燃機関の出力トルクが大きいほど大きくなる。内燃機関制御部は、出力トルクを低下させる方向に内燃機関の動作状態を変化させるので、脈動トルクの振幅を小さくし、脈動トルクを抑制することができる。このように、本特徴構成によれば、回転電機により内燃機関の脈動トルクを打ち消す方向の制振トルクを発生させて脈動トルクを抑制するだけでなく、必要に応じて内燃機関の動作状態を変化させて脈動トルクを抑制することができる。従って、内燃機関に駆動連結された回転電機を利用した内燃機関の制振制御と、内燃機関の動作状態の設定によるトルクの脈動の抑制制御との関係を最適化することができる。
【0009】
内燃機関と当該内燃機関に駆動連結された回転電機とを有して駆動装置が構成されている場合、駆動装置としての出力トルクに回転電機の出力トルクも加算されている場合がある。この場合、回転電機は、駆動装置の出力トルクとなるトルクを出力すると共に、制振トルクも出力する必要がある。回転電機が出力可能なトルクは有限の値であるから、回転電機は、制振トルクの振幅が大きい場合には、駆動装置の出力トルクとなるトルクを充分に出力できない場合もある。視点を変えれば、回転電機は、駆動装置の出力トルクとなるトルクを出力すると、必要とされる制振トルクを出力できない場合もある。従って、上述した、回転電機の制振制御可能域は、回転電機が、その動作状態において出力可能な最大トルクに応じて規定されると好適である。
【0010】
また、回転電機に、広い回転速度域及び広い要求トルク域での利用が求められる場合、回転電機の制御の方式は、回転電機の動作状態(トルクや回転速度などの組み合わせ)に応じて異なる場合がある。例えば、インバータを介した交流回転電機の制御方式には、パルス幅変調方式であっても、正弦波パルス幅変調や空間ベクトルパルス幅変調などの通常変調制御と、不連続パルス幅変調などの過変調制御とがある。これらの変調方式は、それぞれ直流電力から交流電力への変換率である変調率が異なる。一般的に、変調率は、直流電圧に対する交流電圧の実効値の割合によって表される。例えば、直流電力から3相交流電力へ変換する場合、理論的には、正弦波パルス幅変調では約0.61、空間ベクトルパルス幅変調では約0.71、過変調パルス幅変調では約0.78が変調率の最大値となる。また、矩形波制御方式では、変調率は約0.78で一定となる。但し、一般的には変調率が高い変調方式ほど、3相交流波形に歪みが生じたり、制御の応答性が低下したりする傾向がある。このため、変調方式によっては、制振トルクの出力に適さない場合もある。従って、制振制御可能域は、回転電機の変調方式や、変調方式を定める1つの要因となる変調率などに応じて設定されると好適である。
【0011】
上述したように、1つの態様として、本発明に係る駆動装置の制御装置が制御対象とする前記回転電機が、直流電源の電力がインバータを介して交流電力に変換されて供給されるように構成され、前記直流電源の電圧である直流電圧に対する交流電圧の実効値の割合を表す指標が変調率であり、本発明に係る駆動装置の制御装置における前記制振制御可能域は、回転速度に応じて前記回転電機が出力可能な最大トルクと、回転速度に応じて予め定められた変調率に前記回転電機が達するトルクと、のいずれか小さい方によって規定される動作状態の領域であると好適である。
【0012】
内燃機関制御部は、内燃機関の動作状態を、例えば、内燃機関の回転速度とトルクとの関係で規定されたマップを用いて制御することが多い。このマップ上には、回転速度とトルクとの関係で、回避が必要な大きさの脈動トルクが発生する領域を設定することも可能である。この領域は、脈動トルクを抑制する必要がある回避必要振動領域ということができる。制振制御が必要な場合には、内燃機関の回転速度とトルクとで規定される動作状態が、この回避必要振動領域内にあるということになる。従って、内燃機関制御部は、内燃機関の仕事率を維持しつつ、回避必要振動領域の外側まで、内燃機関の出力トルクを低下させる方向に内燃機関の動作状態を変化させることによって脈動トルクを抑制することが可能である。1つの好適な態様として、本発明に係る駆動装置の制御装置の前記内燃機関制御部は、前記制振対象脈動トルクが前記出力可能制振トルクよりも大きい場合、前記内燃機関の回転速度とトルクとの関係で予め設定された回避必要振動領域の外側まで前記内燃機関の動作状態を変化させるとよい。
【0013】
制振対象脈動トルクが、出力可能制振トルク以下である場合には、回転電機を用いて制振制御を行うことが可能である。内燃機関は、燃料消費率が最も高くなる回転速度とトルクの関係を規定した最適効率ライン上で動作するように制御されることが好ましい。従って、制振制御が必要でない場合や、回転電機を用いて制振制御が可能な場合には、内燃機関制御部は、内燃機関の動作状態を最適効率ライン上に設定して内燃機関を制御する。内燃機関が最適効率ライン上で制御されておらず、制振対象脈動トルクが出力可能制振トルク以下である場合には、内燃機関制御部は、内燃機関の動作状態が最適効率ラインに近づくように、内燃機関の動作状態を変化させるとよい。但し、制振対象脈動トルクと出力可能制振トルクとの値が近く、両者の大小関係が頻繁に入れ替わり、それに伴って内燃機関の動作状態を変化させる方向が頻繁に入れ替わると、制御の安定性が損なわれる可能性がある。従って、所定の干渉幅を設けて、制振対象脈動トルクが出力可能制振トルクに対してこの緩衝幅以上小さい場合に、内燃機関制御部が内燃機関の動作状態を最適効率ラインに近づく方向に変化させるとよい。
【0014】
つまり、1つの態様として、本発明に係る駆動装置の制御装置の前記内燃機関制御部は、前記制振対象脈動トルクが前記出力可能制振トルク以下である場合、前記内燃機関の燃料消費率が最も高くなる前記内燃機関の回転速度とトルクとの関係を規定した最適効率ライン上となるように前記内燃機関の動作状態を設定し、前記内燃機関の現在の動作状態が前記最適効率ライン上でなく、前記制振対象脈動トルクが前記出力可能制振トルクに対して所定の緩衝幅以上小さい場合、前記内燃機関の仕事率を維持しつつ前記内燃機関の動作状態を前記最適効率ラインに近づく方向に変化させると好適である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】駆動装置及び駆動装置ユニットの構成を模式的に示すブロック図
【図2】内燃機関の制御の基準となる動作ラインの一例を示す図
【図3】モータトルクTmとモータ回転速度Nmとの関係を示す特性図
【図4】等仕事率ライン上で内燃機関の動作点を変化させる例を示す図
【図5】エンジントルクと脈動トルクとの関係の一例を模式的に示すグラフ
【図6】脈動トルクと制振対象脈動トルクとの関係の一例を模式的に示すグラフ
【図7】回転電機が制振トルクを発生可能な場合の例を示す図
【図8】回転電機が制振トルクを発生できない場合の例を示す図
【図9】内燃機関の動作点を変化させる例を示す図
【図10】内燃機関の動作点の変化に伴い変化する制振トルクの振幅の例を示す図
【図11】回転電機の動作点の変化に伴って変化する出力可能制振トルクの振幅の一例を示す図
【図12】制振制御の流れの一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、内燃機関と当該内燃機関に駆動連結された回転電機とを備える駆動装置を駆動源とする車両において、当該駆動装置を制御対象とする制御装置を例として、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の説明において、「駆動連結」は、2つの回転要素(例えば、内燃機関と回転電機)が駆動力を伝達可能に連結された状態を意味する。また、「駆動連結」は、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、あるいは当該2つの回転要素が1又は2以上の電動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む概念として用いられる。このような伝動部材には、回転を同速で又は変速して伝達する各種部材(例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等)が含まれる。また、ここで「駆動力」は「トルク」と同義である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態において、駆動装置制御ユニット2(駆動装置の制御装置)による制御対象となる駆動装置1は、いわゆる1モータパラレル方式のハイブリッド車両用の駆動装置である。駆動装置制御ユニット2は、少なくとも、内燃機関11と内燃機関11に駆動連結された回転電機12とを制御対象とする。本実施形態において、駆動装置1は、内燃機関11に駆動連結される入力軸Iと車輪15に駆動連結される出力軸Oとを結ぶ動力伝達経路に、内燃機関11の側から順に、入力軸I、クラッチCS、回転電機12、変速機構13、出力軸Oを備えて構成されている。変速機構13は、例えば、遊星歯車機構やCVT(continuously variable transmission)により構成される。
【0018】
内燃機関11は、機関内部における燃料の燃焼により駆動されて動力を取り出す原動機である。内燃機関11としては、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等を用いることができる。内燃機関11は入力軸Iと一体回転するように駆動連結されている。本形態では、内燃機関11のクランクシャフト等の出力軸が入力軸Iに駆動連結されている。内燃機関11は、クラッチCSを介して回転電機12に駆動連結されている。クラッチCSは、内燃機関11と回転電機12との間の駆動連結を解除可能に設けられている。クラッチCSは、入力軸Iと中間軸Mとを選択的に駆動連結する摩擦係合装置であり、内燃機関切離用クラッチとして機能する。クラッチCSとしては、湿式多板クラッチや乾式単板クラッチ等を用いることができる。
【0019】
回転電機12は、モータ(電動機)及びジェネレータ(発電機)としての機能する。回転電機12のロータは中間軸Mと一体回転するように駆動連結されている。また、回転電機12は、インバータ27を介して直流電源28に電気的に接続されている。直流電源28としては、バッテリやキャパシタ等を用いることができる。また、直流電源28は、バッテリなどの蓄電装置の出力を昇圧するコンバータを含んで構成されていてもよい。回転電機12は、直流電源28から電力の供給を受けて力行する。あるいは、内燃機関11の出力トルク(以下、適宜「エンジントルクTe」と称する。)や車両の慣性力により発電した電力を直流電源28に回生する。回生された電力は、直流電源28の蓄電装置に蓄電される。中間軸Mは、変速機構13に駆動連結されている。変速機構13から出力軸Oに伝達されたトルクは、出力用差動歯車装置14を介して左右2つの車輪15に分配されて伝達される。これにより、駆動装置1は、内燃機関11及び回転電機12の一方又は双方のトルクを車輪15に伝達して車両を走行させることができる。
【0020】
図1に示すように、車両の各部には、複数のセンサ(Se1〜Se6)が備えられている。各センサ(Se1〜Se6)による検出結果を示す情報は、駆動装置制御ユニット2へ出力される。入力軸回転速度センサSe1は、入力軸Iの回転速度を検出するセンサである。入力軸回転速度センサSe1により検出される入力軸Iの回転速度は、内燃機関11の回転速度(エンジン回転速度Ne)に等しい。中間軸回転速度センサSe2は、中間軸Mの回転速度を検出するセンサである。中間軸回転速度センサSe2により検出される中間軸Mの回転速度は、回転電機12のロータの回転速度(モータ回転速度Nm)に等しい。中間軸回転速度センサSe2は、例えばレゾルバなどで構成され、回転電機12のロータの回転角度(ロータ位置)も検出する。出力軸回転速度センサSe3は、出力軸Oの回転速度を検出するセンサである。駆動装置制御ユニット2は、出力軸回転速度センサSe3により検出される出力軸Oの回転速度に基づいて、車両の走行速度である車速を導出することもできる。電流センサSe4は、回転電機12のステータコイルを流れる電流を検出する。駆動装置制御ユニット2は、電流センサSe4により検出された電流値を用いて、回転電機12を電流フィードバック制御する。直流電圧センサSe5は、直流電源28の電圧、つまり、インバータ27の直流側の電圧を検出するセンサである。アクセル操作量検出センサSe6は、アクセルペダル17の操作量を検出するセンサである。
【0021】
駆動装置制御ユニット2は、内燃機関11を制御する内燃機関制御部3と、回転電機12を制御する回転電機制御部4と、脈動トルク算出部5と、出力可能制振トルク算出部6と、制振制御管理部7と、を有して構成されている。詳細は、後述するが、内燃機関11の出力トルク(エンジントルクTe)には、脈動トルクTrが重畳される場合がある。この脈動トルクTrは、振動や、こもり音(booming noise)と称される異音の要因となり、乗員の乗り心地を損ねる場合がある。駆動装置制御ユニット2は、出力軸Oにおいて要求される出力トルクを出力させるために内燃機関11及び回転電機12を制御するだけでなく、エンジントルクTeに含まれる脈動トルクTrを抑制するための制振制御も実行する。制振制御は、内燃機関制御部3及び回転電機制御部4の一方又は双方を中核として実行される。制振制御管理部7は、脈動トルク算出部5及び出力可能制振トルク算出部6と協働して、内燃機関制御部3及び回転電機制御部4の一方又は双方を利用した制振制御を管理する機能部である。
【0022】
駆動装置制御ユニット2は、マイクロコンピュータなどの論理プロセッサを中核として、ハードウェアとソフトウェア(プログラムや各種パラメータなど)との協働によってその機能を実現する。内燃機関制御部3、回転電機制御部4などの上述した各機能部は、機能としての区別を示しており、共通のハードウェアや共通のソフトウェアを利用して実現される場合もある。
【0023】
内燃機関制御部3は、基本的には、内燃機関11の燃料消費率が最も高くなるエンジン回転速度NeとエンジントルクTeとの関係を規定した最適効率ラインL1の上に動作点が乗るように、内燃機関11の動作状態を設定して、内燃機関11を制御する(図2参照)。本実施形態において、動作点は、エンジントルクTeとエンジン回転速度Neとで定まる動作状態である。但し、パワーモードなど、高トルクを出力するような運転モードが設定可能な車両では、図2に一点鎖線で示すような高トルク動作ラインL3の上に内燃機関11の動作点が乗るように、内燃機関11の動作状態が設定される場合もある。
【0024】
回転電機制御部4は、回転電機12に対する目標トルク、ロータの回転速度(モータ回転速度Nm)及び回転角度θ(電気角)、回転電機12のステータコイルを流れる各相電流に基づいてフィードバック制御を行って回転電機12を駆動制御する。本実施形態では、回転電機制御部4は、公知のベクトル制御法を用いた電流フィードバック制御を行って、インバータ27を介して回転電機12を制御する。目標トルクは、図示しない車両制御部等からの要求信号として回転電機制御部4に入力される。回転電機制御部4は、直流電圧、目標トルク、変調率に基づいてステータコイルに流す電流の目標値である電流指令を演算する。変調率は、直流電力に対する3相交流電力の実効値の割合を示す指標である。ここでは、直流電源28の電圧である直流電圧に対し、インバータ27から出力される3相交流電圧の線間電圧の実効値の割合を示す指標である。
【0025】
回転電機制御部4は、スイッチング素子を備えて構成される公知のインバータ27をスイッチング制御することによって回転電機12を駆動制御する。スイッチング制御の方式には、正弦波パルス幅変調制御や空間ベクトルパルス幅変調制御などの通常変調制御や、不連続パルス幅変調制御(2相変調制御を含む)や矩形波制御などの過変調制御がある。これらの制御方式は、回転電機の回転速度や要求トルクなどに応じて選択される。一般的に、低回転速度領域では、通常パルス幅変調制御が実施され、高回転速度領域では過変調パルス幅変調制御が実施される。最も一般的なパルス幅変調である正弦波パルス幅変調による変調率の最大値は約0.61である。また、近年主流として用いられる基本的なパルス幅変調である空間ベクトルパルス幅変調による変調率の最大値は約0.71である。概ね、変調率が0.71程度までの変調を伴う制御をここでは通常変調と称する。モータトルクTmとモータ回転速度Nmとの関係を示す図3において符号M1で示す領域が通常変調領域である。
【0026】
不連続パルス幅変調制御(2相変調制御を含む)では、0.71以上の変調率での変調が可能であり、理論的には最大の変調率は約0.78である。変調率が0.78に達すると矩形波制御となる。ここで、2相変調制御とは、3相交流を生成する場合に、3相の内の1相を固定して他の2相をパルス幅変調する制御方式であり、矩形波制御は、電気角の1周期につき1つの矩形波パルスを用いて制御する方式である。ここでは、変調率が0.71以上となる制御を過変調制御と称する。図3において符号M2で示す領域は、不連続パルス幅変調制御領域であり、符号M3で示す領域は、矩形波制御領域である。また、符号M4で示す領域は過変調領域である。
【0027】
上述したように、駆動装置制御ユニット2は、出力軸Oにおいて要求される出力トルクを出力させるために内燃機関11及び回転電機12を制御するだけでなく、エンジントルクTeに含まれる脈動トルクTrを抑制するための制振制御も実行する。駆動装置制御ユニット2は、第1の制振制御として、回転電機12によりエンジントルクTeに含まれる脈動トルクTrを打ち消す方向の制振トルクTnを発生させて脈動トルクTrを抑制する。詳細は、後述するが、内燃機関11の脈動トルクTrを打ち消す方向の制振トルクTnを回転電機12が充分に発生できない場合には、第2の制振制御として、内燃機関11の動作状態を変更することによって、内燃機関11が発生する脈動トルクTr自体を減少させる制振制御を実行する。詳細は後述するが、例えば図4に示すように、内燃機関11が最適効率ラインL1の上の動作点Pe1で駆動制御されている場合に、内燃機関11の仕事率を維持しつつエンジントルクTeを低下させる方向、つまり動作点Pe2の方向に内燃機関11の動作状態を変化させる。仕事率とは、エンジントルクTeとエンジン回転速度Neとの積である。図4において破線は等仕事率ラインLpを示しており、等仕事率ラインLpに沿って動作点Peを変化させると仕事率が一定に維持される。
【0028】
この第2の制振制御は、脈動トルクTrの内、抑制することが求められる制振対象脈動トルクTtが、回転電機12が出力することが可能な出力可能制振トルクTaよりも大きい場合に実施される。この条件を判定するために、駆動装置制御ユニット2は、制振対象脈動トルクTt及び出力可能制振トルクTaを求める必要がある。脈動トルク算出部5は、制振対象脈動トルクTtを算出する機能部であり、出力可能制振トルク算出部6は、出力可能制振トルクTaを算出する機能部である。具体的には、脈動トルク算出部5は、内燃機関11の現在の動作状態と、現在の脈動トルクTrとに基づいて、脈動トルクTrの内で制振対象となる大きさの制振対象脈動トルクTtを算出する。また、出力可能制振トルク算出部6は、回転電機12の現在の動作状態と、回転電機12の動作状態に関して予め設定された制振制御可能域とに基づいて、回転電機12の現在の動作状態において回転電機12が出力可能な制振トルクTnの最大値である出力可能制振トルクTaを算出する。
【0029】
図5は、エンジントルクTeと脈動トルクTrの振幅との関係を示しており、図6は、脈動トルクTrの振幅と制振対象脈動トルクTtの振幅との関係を模式的に示している。図5に示すように、内燃機関11の脈動トルクTrの振幅は、ベースとなるエンジントルクTeが大きいほど大きな振幅となる。また、図6に示すように、この脈動トルクTrの内、制振対象となる制振対象脈動トルクTtは、当然ながら脈動トルクTrの振幅が大きいほど大きくなる。脈動トルクTrの全振幅を打ち消す必要はなく、乗員が異音や振動などを感じない程度の脈動トルクTrの残留は許容されてもよい。図5及び図6に示す例では、振幅Tr1は許容されることを示している。もちろん、脈動トルクTrの全振幅が制振対象脈動トルクTtであることを妨げるものではない。尚、制振対象脈動トルクTtを打ち消すための制振トルクTnの振幅は、制振対象脈動トルクTtと同一である。
【0030】
図5から明らかなように、エンジントルクTeから、脈動トルクTrが推定できる。脈動トルク算出部5は、例えば、エンジントルクTeを引数としたマップを参照することによって、内燃機関11の現在の動作状態に応じた脈動トルクTrを算出することができる。そして、図6から明らかなように、脈動トルクTrから制振トルクTnを算出することができる。図7に示すように、回転電機12の現在の動作状態が動作点Pm1である場合には、この動作点Pm1において制振トルクTnを発生させればよい。回転電機制御部4は、動作点Pm1において脈動トルクTrを打ち消す方向に制振トルクTnを発生させて脈動トルクTrを抑制する制振制御を行う。
【0031】
但し、図3に示すように、回転電機12が出力可能なトルク(モータトルクTm)には制限がある。動作点PmにおけるモータトルクTmに制振トルクTnを重畳させた場合に、回転電機12が出力可能なトルクの範囲を超える場合には、当該動作点Pmにおいて制振トルクTnを発生させることができない。例えば、図8に示すように、動作点Pm2において制振トルクTnを発生させると、最大トルクTm(max)を超えてしまう。この場合には、当該動作点Pm2において制振トルクTnを発生させることはできない。制振トルクTnは最大トルクTm(max)で制限され、回転電機12が出力可能な制振トルクTnの振幅の最大値は動作点Pm2から最大トルクTm(max)までとなる。つまり、出力可能制振トルクTaは、動作点Pmから最大トルクTm(max)までの振幅を有するトルクとなる。
【0032】
また、最大トルクTm(max)による制限を受けず、回転電機12が出力可能なトルクの範囲内であっても、回転電機12の制御形態によっては、回転電機12を利用した制振制御が充分に実施できない場合がある。つまり、過変調領域M4においては、回転電機12の応答性が制振トルクTnの変化(周波数)に対して充分ではなく、回転電機12を用いた制振制御を充分に実施できない場合がある。例えば、図8に示すように、動作点Pm3において制振トルクTnを発生させる場合、モータトルクTmの変動域が、過変調領域M4に入ってしまう。この場合、制振トルクTnは、実質的に過変調領域M4と通常変調領域M1との境界において制限される。回転電機12が出力可能な制振トルクTnの最大値は、動作点Pm3から、過変調領域M4と通常変調領域M1との境界までとなる。つまり、出力可能制振トルクTaは、動作点Pmから、過変調領域M4と通常変調領域M1との境界までの振幅を有するトルクとなる。
【0033】
出力可能制振トルク算出部6は、このような出力可能制振トルクTaを算出する機能部である。つまり、出力可能制振トルク算出部6は、回転電機12の現在の動作状態(ここでは動作点Pm)と、回転電機12の動作状態(ここでは動作点Pm)に関して予め設定された制振制御可能域(ここでは通常変調領域M1)とに基づいて、回転電機12の現在の動作状態(ここでは動作点Pm)において回転電機12が出力可能な制振トルクTnの最大値である出力可能制振トルクTaを算出する。尚、出力可能制振トルク算出部6は、動作点Pmを規定するモータトルクTm及びモータ回転速度Nm以外の動作状態、例えば、直流電源28の電源電圧や回転電機12の各部の温度などに基づいて出力可能制振トルクTaを算出してもよい。
【0034】
内燃機関制御部3は、制振対象脈動トルクTtが出力可能制振トルクTaよりも大きい場合には、仕事率を維持した状態で内燃機関11の動作状態(動作点Pe)を変化させることによって、脈動トルクTrを抑制する。つまり、制振制御管理部7は、制振対象脈動トルクTtと出力可能制振トルクTaとを比較し、制振対象脈動トルクTtが出力可能制振トルクTaよりも大きい場合には、内燃機関制御部3を中核とした第2の制振制御を実行させる。内燃機関制御部3は、内燃機関11の仕事率を維持しつつ内燃機関11の出力トルク(エンジントルクTe)を低下させる方向に、内燃機関11の動作状態(動作点Pe)を変化させる。例えば、図4に示すように、内燃機関制御部3は、現在の動作点Pe1からエンジントルクTeを低下させる方向である動作点Pe2の方向へ、等仕事率ラインLpに沿って内燃機関11の動作点Peを変化させる。
【0035】
図4における符号L2は、快適性優先ラインである。快適性優先ラインL2よりもエンジントルクTeが大きい領域では、脈動トルクTrによる異音や振動が、乗員の快適性を損なう可能性がある。図4において、最適効率ラインL1と快適性優先ラインL2とに囲まれた領域は、脈動トルクTrを抑制する必要がある回避必要振動領域Rである。尚、図2を用いて上述したように、最適効率ラインL1よりも大きいエンジントルクTeが規定された高トルク動作ラインL3が存在する場合、高トルク動作ラインL3と快適性優先ラインL2とに囲まれた領域も、脈動トルクTrを抑制する必要がある回避必要振動領域Rとなる。つまり、回避必要振動領域Rは、エンジン回転速度Neと、エンジントルクTeとの関係で予め設定されていればよい。制振対象脈動トルクTtがゼロではない場合、内燃機関11の動作点Peは、回避必要振動領域Rの中である。従って、内燃機関制御部3は、回避必要振動領域Rの外側まで、等仕事率ラインLpに沿ってエンジントルクTeを低下させる方向に動作点Peを変化させる。
【0036】
ところで、内燃機関11のエンジントルクTeを、動作点Pe1から動作点Pe2に向かって低下させていくと、エンジントルクTeの低下に伴って脈動トルクTrも低下する。図9は、内燃機関11の等仕事率ラインLp上の複数の動作点Peを示しており、図10は、図9の各動作点Peにおける制振トルクTnの振幅を例示している。図9に示すように、内燃機関11の動作点Pe1は、最適効率ラインL1の上であり、回避必要振動領域Rの中である。この動作点Pe1において生じる脈動トルクTrに対して、回転電機12が動作点Pm2において制振トルクTn1を発生させようとすると、図10に示すように、回転電機12の最大トルクTm(max)により制限を受ける。この場合には、上述したように、内燃機関制御部3が、エンジントルクTeを等仕事率ラインLpに沿って低下させる。エンジントルクTeが、図9に示す動作点Pe3まで低下すると、脈動トルクTrも小さくなる。その結果、動作点Pe3での脈動トルクTrに対する制振トルクTn3の振幅は、図10に示すように、動作点Pe1での脈動トルクTrに対する制振トルクTn1の振幅よりも小さくなる。そして、この制振トルクTn3は、図10に示すように、回転電機12の最大トルクTm(max)による制限を受けなくなる。
【0037】
このように、内燃機関制御部3は、必ずしも回避必要振動領域Rの外側まで内燃機関11の動作点Peを変化させなくてもよい。回避必要振動領域Rの中であっても、回転電機12により制振トルクTnを生成可能な動作状態(動作点Pe)まで、エンジントルクTeを低下させる方向に、内燃機関11の動作状態を変化させれば充分である。
【0038】
但し、エンジントルクTeが動作点Pe3の近傍で増減すると、出力可能制振トルクTaが制振対象脈動トルク以上となる状態と、出力可能制振トルクTaが制振対象脈動トルク未満となる状態とが、エンジントルクTeの増減に応じて入れ替わることになる。その結果、異音や振動が抑制される状態と、抑制が不充分な状態とが頻繁に入れ替わり、乗員の快適性を損なう可能性がある。このため、例えば、エンジントルクTeを低下させていく途上においては、エンジントルクTeがさらに低くなる動作点Pe4まで、動作状態を変化させると好適である。つまり、出力可能制振トルクTaが、制振トルクTn(制振対象脈動トルクTt)に対して、所定の第1緩衝幅Tb1以上大きくなるまで、エンジントルクTeを低下させると好適である。つまり、出力可能制振トルクTaと制振トルクTn(制振対象脈動トルクTt)との差ΔT1が所定の第1緩衝幅Tb1以上となるまでエンジントルクTeを低下させると好適である。
【0039】
上記においては、制振制御管理部7は、制振対象脈動トルクTtと出力可能制振トルクTaとを比較し、制振対象脈動トルクTtが出力可能制振トルクTaよりも大きい場合には、内燃機関制御部3を中核とした第2の制振制御を実行させると説明した。しかし、制振制御管理部7は、制振対象脈動トルクTtと出力可能制振トルクTaとを比較し、制振対象脈動トルクTtの振幅が、出力可能制振トルクTaの振幅から所定の第1緩衝幅Tb1を減じた値よりも大きい場合に、内燃機関制御部3を中核とした第2の制振制御を実行させてもよい。尚、第1緩衝幅Tb1がゼロの場合には、制振制御管理部7は、制振対象脈動トルクTtが出力可能制振トルクTaよりも大きい場合に、内燃機関制御部3を中核とした第2の制振制御を実行させることとなる。
【0040】
上記においては、エンジントルクTeを低下させることによって制振対象脈動トルクTtの振幅が小さくなり、回転電機12を用いた第1の制振制御が可能となる場合について説明した。このケース以外にも、回転電機12の動作状態が変化して、出力可能制振トルクTaが大きくなり、回転電機12を用いた第1の制振制御が可能となる場合もある。例えば、図11に示すように、回転電機12の動作状態が変化して、動作点Pm2から、動作点Pm2よりも最大トルクTm(max)の値が大きい動作点Pm4となった場合、動作点Pm4での出力可能制振トルクTa4は、動作点Pm2での出力可能制振トルクTa2よりも大きい値となる。動作点Pm4での出力可能制振トルクTa4が、制振トルクTn(制振対象脈動トルクTt)よりも、所定の第2緩衝幅Tb2以上大きい場合には、内燃機関制御部3は、内燃機関11の仕事率を維持しつつ、内燃機関11の動作状態を最適効率ラインL1に近づく方向に変化させる。つまり、制振制御管理部7は、出力可能制振トルクTa4が、制振対象脈動トルクTtよりも、所定の第2緩衝幅Tb2以上大きい場合には、内燃機関11を中核とする第2の制振制御の割合を減少させ、回転電機12を中核とする第1の制振制御の割合を増加させる。尚、第2緩衝幅Tb2は、第1緩衝幅Tb1よりも大きい値であると好適である。
【0041】
例えば、図9及び図10に示したように、内燃機関11の動作状態を動作点Pe4まで変化させた場合、回転電機12は、動作点Pm2において制振トルクTn4を発生させる。このとき、動作点Pm2での出力可能制振トルクTa2と制振トルクTn4(制振対象脈動トルクTt)とは、差ΔT1を有する。この差ΔT1が第1緩衝幅Tb1以上であると、内燃機関制御部3は、エンジントルクTeをこれ以上低下させない。回転電機制御部4は、回転電機12の動作点Pm2において充分に生成可能な制振トルクTn4を発生させて制振制御を実行する。つまり、内燃機関11を中核とする第2の制振制御と、回転電機12を中核とする第1の制振制御とが協働する。
【0042】
ここで、図11に示すように、回転電機12の動作状態が動作点Pm2から動作点Pm4に変化すると、動作点Pm4での出力可能制振トルクTa4と制振トルクTn4(制振対象脈動トルクTt)とは、差ΔT1よりも大きい差ΔT2を有することになる。この差ΔT2が、所定の第2緩衝幅Tb2以上大きい場合、内燃機関制御部3は、内燃機関11の仕事率を維持しつつ、内燃機関11の動作状態を最適効率ラインL1に近づく方向に変化させる。これによりエンジントルクTeは大きくなるので、脈動トルクTrも大きくなり、制振対象脈動トルクTtも大きくなる。当然ながら、制振トルクTnも大きくなる。つまり、内燃機関11を中核とする第2の制振制御の割合が減少する一方、回転電機12を中核とする第1の制振制御の割合が増加する。
【0043】
内燃機関制御部3は、最大で、動作点Peが最適効率ラインL1に達するまで動作状態を変化させる。つまり、図11に示すように、回転電機12の動作点Pm4での出力可能制振トルクTa4と、最適効率ラインL1の上の動作点Pe1での脈動トルクTrに対応する制振トルクTn1(制振対象脈動トルクTt)との差ΔT3が、所定の第2緩衝幅Tb2以上大きい場合には、内燃機関制御部3は、動作点Peが最適効率ラインL1に達するまで動作状態を変化させる。この場合には、内燃機関11を中核とする第2の制振制御が終了され、回転電機12を中核とする第1の制振制御のみが実行される。内燃機関11は、最適効率ラインL1上において制御される。
【0044】
好適な実施形態と例示して上述したように、本発明によれば、回転電機12を利用した内燃機関11の制振制御(第1の制振制御)と、内燃機関11の動作状態の設定による脈動トルクの抑制制御(第2の制振制御)との関係が最適化される。以下、図12のフローチャートも利用して、駆動装置制御ユニット2による制振制御の流れを説明する。
【0045】
駆動装置制御ユニット2の制振制御管理部7は、各種センサ(Se1〜Se6)の検出結果や、内燃機関制御部3及び回転電機制御部4などの機能部の制御状態に基づいて、内燃機関11及び回転電機12の動作状態(動作点Pe及びPm)を取得する(#1)。次に、制振制御管理部7は、取得した内燃機関11の動作点Peに基づいて、脈動トルク算出部5に、動作点Peにおける脈動トルクTrを算出させる(#3)。さらに、制振制御管理部7は、脈動トルク算出部5に、動作点Peにおける制振対象脈動トルクTtを算出させる(#4)。また、制振制御管理部7は、取得した回転電機12の動作状態(動作点Pm)に基づいて、出力可能制振トルク算出部6に、動作点Pmにおける出力可能制振トルクTaを算出させる(#5)。
【0046】
次に、制振制御管理部7は、制振対象脈動トルクTtと出力可能制振トルクTaとを比較し、出力可能制振トルクTaよりも制振対象脈動トルクTtの方が大きいか否かを判定する(#6)。この際、上述したように、第1緩衝幅Tb1を利用して、出力可能制振トルクTaから第1緩衝幅Tb1を減じた値よりも、制振対象脈動トルクTtの方が大きいか否かを判定するように構成されていてもよい。出力可能制振トルクTaよりも制振対象脈動トルクTtの方が大きい場合(ステップ#6の論理式が“真”の場合)、制振制御管理部7は、内燃機関制御部3に、仕事率を維持した状態でエンジントルクTeを低下させる制御を実行させる(#7)。
【0047】
ステップ#6の論理式が“偽”の場合、制振制御管理部7は、出力可能制振トルクTaから第2緩衝幅Tb2を減じた値よりも、制振対象脈動トルクTtの方が小さいか否かを判定する(#8)。ステップ#8の論理式が“偽”の場合には、制振対象脈動トルクTtの振幅に比べて出力可能制振トルクTaがまだ充分に大きい訳ではないので、制振制御管理部7は、内燃機関制御部3に、エンジントルクTeを維持する制御を実行させる(#11)。ステップ#8の論理式が“真”の場合には、制振制御管理部7は、内燃機関11の動作状態(動作点Pe)が最適効率ラインL1の上か否かを判定する(#10)。動作点Peが最適効率ラインL1の上ではない場合には、制振制御管理部7は、内燃機関制御部3に、仕事率を維持した状態でエンジントルクTeを上昇させる制御を実行させる(#12)。ステップ#8の論理式が“真”であったので、制振対象脈動トルクTtの振幅に比べて出力可能制振トルクTaの振幅は充分に大きく、エンジントルクTeが上昇して脈動トルクTrが大きくなっても充分な制振トルクTnを生成することができる。動作点Peが最適効率ラインL1の上である場合は、最適な動作点Peで内燃機関11が制御されているので、制振制御管理部7は、内燃機関制御部3に、エンジントルクTeを維持する制御を実行させる(#11)。
【0048】
尚、特にステップ#7、#11、#12においては、内燃機関制御部3が実行する制御についてのみ言及しているが、当然ながら回転電機制御部4は、それぞれのステップにおいて対応する制振トルクTnを発生させる制御を実行する。
【0049】
〔その他の実施形態〕
以下、本発明のその他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0050】
(1)上記実施形態においては、1モータパラレル方式のハイブリッド車両用の駆動装置に本発明を適用する例を用いて説明した。しかし、駆動装置の構成はこれに限定されるものではない。例えば、内燃機関の出力トルクを車輪と第一回転電機とに分配する動力分配用の差動歯車装置を備えると共に、当該差動歯車装置より車輪側に第二回転電機を備えた、いわゆる2モータスプリット方式のハイブリッド自動車用の駆動装置にも本発明を適用することが可能である。この場合、第一回転電機と第二回転電機の一方又は双方が、本発明における制振トルクを出力する構成とされる。また、内燃機関に駆動連結された発電機と、車輪に駆動連結された電動機とを備え、内燃機関と車輪とが駆動連結されていない、いわゆる2モータシリーズ方式のハイブリッド車両用の駆動装置にも本発明を適用することができる。この場合、発電機が、本発明における制振トルクを出力する構成とされる。
【0051】
(2)上記実施形態では、回転電機制御部4を中核とした第1の制振制御と、内燃機関制御部3を中核とした第2の制振制御とが、共に実施されることがある形態を例示して説明した。しかし、第1の制振制御と第2の制振制御とが選択的に実行される形態であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、内燃機関と当該内燃機関に駆動連結された回転電機とを制御対象とし、この回転電機により内燃機関の脈動トルクを打ち消す方向の制振トルクを発生させて当該脈動トルクを抑制する駆動装置の制御装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 :駆動装置
2 :駆動装置制御ユニット(駆動装置の制御装置)
3 :内燃機関制御部
4 :回転電機制御部
5 :脈動トルク算出部
6 :出力可能制振トルク算出部
11 :内燃機関
12 :回転電機
27 :インバータ
28 :直流電源
L1 :最適効率ライン
Ne :エンジン回転速度(内燃機関の回転速度)
Nm :モータ回転速度(回転電機の回転速度)
Pe,Pe1,Pe2,Pe3,Pe4:動作点(内燃機関の動作状態)
Pm,Pm1,Pm2,Pm3,Pm4:動作点(回転電機の動作状態)
R :回避必要振動領域
Ta,Ta2,T4:出力可能制振トルク
Tb1 :第1緩衝幅
Tb2 :第2緩衝幅(所定の緩衝幅)
Te :エンジントルク(内燃機関の出力トルク)
Tm :モータトルク(回転電機の出力トルク)
Tm(max):最大トルク(内燃機関が出力可能な最大トルク)
Tn,Tn1,Tn3,Tn4:制振トルク
Tr :脈動トルク
Tt :制振対象脈動トルク
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関と当該内燃機関に駆動連結された回転電機とを制御対象とし、この回転電機により内燃機関の脈動トルクを打ち消す方向の制振トルクを発生させて当該脈動トルクを抑制する駆動装置の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、内燃機関は、出力すべき目標パワー(仕事率)である動作状態を、例えばトルクと回転数との関係によって規定した動作ラインに応じて制御されている。このような動作ラインには、燃料消費率を優先した動作状態で規定された燃料消費率優先動作ラインや、出力(パワー)の大きさを優先したパワー優先動作ライン、車両の場合には乗員に伝わる内燃機関のトルクの脈動に起因する振動や異音を抑制して乗り心地を優先する乗り心地優先動作ラインなどがある。特開2005−180331号公報(特許文献1)に開示された自動車の制御装置は、これらの動作ラインの何れかを選択して動作モードを切り換える。例えば、この制御装置では、乗り心地優先動作ラインに応じた乗り心地優先動作モードを、運転者のスイッチ操作により選択することができる(第26,37段落、図3,5,7等)。但し、乗り心地優先動作ラインでの動作を選択すると、当然ながら燃料消費率優先動作ラインでの動作に比べて内燃機関の燃料消費率は低下する。
【0003】
ところで、近年、化石燃料の消費による環境負荷を軽減するべく、内燃機関のみを駆動源とする自動車に比べて環境負荷が小さいハイブリッド自動車が実用化されている。ハイブリッド自動車は、例えば、内燃機関と交流の回転電機とが駆動連結されて構成される。このようなハイブリッド自動車では、内燃機関のトルクの脈動による振動や異音を抑制するために回転電機を利用することができる。例えば燃料消費率優先ラインに基づいて内燃機関を動作させつつ、内燃機関のトルクの脈動を打ち消す制振トルクを回転電機に出力させることによって、振動や異音を抑制することができる。
【0004】
但し、回転電機を利用したこのような制振制御では、回転電機のトルクの応答性が制振性能に大きく影響する。例えば、回転電機のトルク制御の応答性が低いと、高い制振効果が得られない場合がある。自動車のように、回転電機に、広い回転速度域及び広い要求トルク域での利用が求められる場合、回転電機の制御の方式は、回転電機の動作状態(トルクや回転速度などの組み合わせ)に応じて異なる場合がある。ハイブリッド自動車などで用いられる交流の回転電機は、バッテリなどの直流電源から供給される直流電力をインバータにより交流に変換して駆動される。インバータを介した3相の交流回転電機の制御方式には、例えば、3相パルス幅変調制御、2相変調制御、矩形波制御などがある。3相パルス幅変調制御は、3相のそれぞれをパルス幅変調によって制御する方式である。2相変調制御は、3相の内の1相を固定して他の2相をパルス幅変調する方式である。矩形波制御は、電気角の1周期に付き1つの矩形波パルスを用いて制御する方式である。これらの制御方式は、回転電機の回転速度や要求トルクなどに応じて選択される。これらの制御方式は、それぞれ応答性が異なり、制振制御に適さないものもある。従って、回転電機による制振トルクに依存しすぎると充分な制振効果を得られない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−180331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記背景に鑑みて、内燃機関に駆動連結された回転電機を利用した内燃機関の制振制御と、内燃機関の動作状態の設定によるトルクの脈動の抑制制御との関係を最適化する技術が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に鑑みた本発明に係る駆動装置の制御装置の特徴構成は、
内燃機関と当該内燃機関に駆動連結された回転電機とを制御対象とし、前記回転電機により前記内燃機関の脈動トルクを打ち消す方向の制振トルクを発生させて前記脈動トルクを抑制する駆動装置の制御装置であって、
前記内燃機関の現在の動作状態と、現在の前記脈動トルクとに基づいて、制振対象となる前記脈動トルクである制振対象脈動トルクを算出する脈動トルク算出部と、
前記回転電機の現在の動作状態と、前記回転電機の動作状態に関して予め設定された制振制御可能域とに基づいて、前記回転電機の現在の動作状態において前記回転電機が出力可能な前記制振トルクの最大値である出力可能制振トルクを算出する出力可能制振トルク算出部と、
前記制振対象脈動トルクが前記出力可能制振トルクよりも大きい場合、前記内燃機関の仕事率を維持しつつ前記内燃機関の出力トルクを低下させる方向に、前記内燃機関の動作状態を変化させる内燃機関制御部と、を備える点にある。
【0008】
制振対象脈動トルクが出力可能制振トルクよりも大きい場合には、回転電機を利用して内燃機関の脈動トルクを充分に打ち消すことができないが、本特徴構成によれば、内燃機関制御部が、内燃機関の動作状態を変化させることによって脈動トルクを抑制することが可能である。この際、内燃機関制御部は、内燃機関の仕事率を維持しつつ、内燃機関の動作状態を変化させるので、脈動トルクを抑制するとともに必要な出力を得ることができる。尚、仕事率とは、内燃機関の回転速度と出力トルクとの積である。一般的には、脈動トルクの振幅は内燃機関の出力トルクが大きいほど大きくなる。内燃機関制御部は、出力トルクを低下させる方向に内燃機関の動作状態を変化させるので、脈動トルクの振幅を小さくし、脈動トルクを抑制することができる。このように、本特徴構成によれば、回転電機により内燃機関の脈動トルクを打ち消す方向の制振トルクを発生させて脈動トルクを抑制するだけでなく、必要に応じて内燃機関の動作状態を変化させて脈動トルクを抑制することができる。従って、内燃機関に駆動連結された回転電機を利用した内燃機関の制振制御と、内燃機関の動作状態の設定によるトルクの脈動の抑制制御との関係を最適化することができる。
【0009】
内燃機関と当該内燃機関に駆動連結された回転電機とを有して駆動装置が構成されている場合、駆動装置としての出力トルクに回転電機の出力トルクも加算されている場合がある。この場合、回転電機は、駆動装置の出力トルクとなるトルクを出力すると共に、制振トルクも出力する必要がある。回転電機が出力可能なトルクは有限の値であるから、回転電機は、制振トルクの振幅が大きい場合には、駆動装置の出力トルクとなるトルクを充分に出力できない場合もある。視点を変えれば、回転電機は、駆動装置の出力トルクとなるトルクを出力すると、必要とされる制振トルクを出力できない場合もある。従って、上述した、回転電機の制振制御可能域は、回転電機が、その動作状態において出力可能な最大トルクに応じて規定されると好適である。
【0010】
また、回転電機に、広い回転速度域及び広い要求トルク域での利用が求められる場合、回転電機の制御の方式は、回転電機の動作状態(トルクや回転速度などの組み合わせ)に応じて異なる場合がある。例えば、インバータを介した交流回転電機の制御方式には、パルス幅変調方式であっても、正弦波パルス幅変調や空間ベクトルパルス幅変調などの通常変調制御と、不連続パルス幅変調などの過変調制御とがある。これらの変調方式は、それぞれ直流電力から交流電力への変換率である変調率が異なる。一般的に、変調率は、直流電圧に対する交流電圧の実効値の割合によって表される。例えば、直流電力から3相交流電力へ変換する場合、理論的には、正弦波パルス幅変調では約0.61、空間ベクトルパルス幅変調では約0.71、過変調パルス幅変調では約0.78が変調率の最大値となる。また、矩形波制御方式では、変調率は約0.78で一定となる。但し、一般的には変調率が高い変調方式ほど、3相交流波形に歪みが生じたり、制御の応答性が低下したりする傾向がある。このため、変調方式によっては、制振トルクの出力に適さない場合もある。従って、制振制御可能域は、回転電機の変調方式や、変調方式を定める1つの要因となる変調率などに応じて設定されると好適である。
【0011】
上述したように、1つの態様として、本発明に係る駆動装置の制御装置が制御対象とする前記回転電機が、直流電源の電力がインバータを介して交流電力に変換されて供給されるように構成され、前記直流電源の電圧である直流電圧に対する交流電圧の実効値の割合を表す指標が変調率であり、本発明に係る駆動装置の制御装置における前記制振制御可能域は、回転速度に応じて前記回転電機が出力可能な最大トルクと、回転速度に応じて予め定められた変調率に前記回転電機が達するトルクと、のいずれか小さい方によって規定される動作状態の領域であると好適である。
【0012】
内燃機関制御部は、内燃機関の動作状態を、例えば、内燃機関の回転速度とトルクとの関係で規定されたマップを用いて制御することが多い。このマップ上には、回転速度とトルクとの関係で、回避が必要な大きさの脈動トルクが発生する領域を設定することも可能である。この領域は、脈動トルクを抑制する必要がある回避必要振動領域ということができる。制振制御が必要な場合には、内燃機関の回転速度とトルクとで規定される動作状態が、この回避必要振動領域内にあるということになる。従って、内燃機関制御部は、内燃機関の仕事率を維持しつつ、回避必要振動領域の外側まで、内燃機関の出力トルクを低下させる方向に内燃機関の動作状態を変化させることによって脈動トルクを抑制することが可能である。1つの好適な態様として、本発明に係る駆動装置の制御装置の前記内燃機関制御部は、前記制振対象脈動トルクが前記出力可能制振トルクよりも大きい場合、前記内燃機関の回転速度とトルクとの関係で予め設定された回避必要振動領域の外側まで前記内燃機関の動作状態を変化させるとよい。
【0013】
制振対象脈動トルクが、出力可能制振トルク以下である場合には、回転電機を用いて制振制御を行うことが可能である。内燃機関は、燃料消費率が最も高くなる回転速度とトルクの関係を規定した最適効率ライン上で動作するように制御されることが好ましい。従って、制振制御が必要でない場合や、回転電機を用いて制振制御が可能な場合には、内燃機関制御部は、内燃機関の動作状態を最適効率ライン上に設定して内燃機関を制御する。内燃機関が最適効率ライン上で制御されておらず、制振対象脈動トルクが出力可能制振トルク以下である場合には、内燃機関制御部は、内燃機関の動作状態が最適効率ラインに近づくように、内燃機関の動作状態を変化させるとよい。但し、制振対象脈動トルクと出力可能制振トルクとの値が近く、両者の大小関係が頻繁に入れ替わり、それに伴って内燃機関の動作状態を変化させる方向が頻繁に入れ替わると、制御の安定性が損なわれる可能性がある。従って、所定の干渉幅を設けて、制振対象脈動トルクが出力可能制振トルクに対してこの緩衝幅以上小さい場合に、内燃機関制御部が内燃機関の動作状態を最適効率ラインに近づく方向に変化させるとよい。
【0014】
つまり、1つの態様として、本発明に係る駆動装置の制御装置の前記内燃機関制御部は、前記制振対象脈動トルクが前記出力可能制振トルク以下である場合、前記内燃機関の燃料消費率が最も高くなる前記内燃機関の回転速度とトルクとの関係を規定した最適効率ライン上となるように前記内燃機関の動作状態を設定し、前記内燃機関の現在の動作状態が前記最適効率ライン上でなく、前記制振対象脈動トルクが前記出力可能制振トルクに対して所定の緩衝幅以上小さい場合、前記内燃機関の仕事率を維持しつつ前記内燃機関の動作状態を前記最適効率ラインに近づく方向に変化させると好適である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】駆動装置及び駆動装置ユニットの構成を模式的に示すブロック図
【図2】内燃機関の制御の基準となる動作ラインの一例を示す図
【図3】モータトルクTmとモータ回転速度Nmとの関係を示す特性図
【図4】等仕事率ライン上で内燃機関の動作点を変化させる例を示す図
【図5】エンジントルクと脈動トルクとの関係の一例を模式的に示すグラフ
【図6】脈動トルクと制振対象脈動トルクとの関係の一例を模式的に示すグラフ
【図7】回転電機が制振トルクを発生可能な場合の例を示す図
【図8】回転電機が制振トルクを発生できない場合の例を示す図
【図9】内燃機関の動作点を変化させる例を示す図
【図10】内燃機関の動作点の変化に伴い変化する制振トルクの振幅の例を示す図
【図11】回転電機の動作点の変化に伴って変化する出力可能制振トルクの振幅の一例を示す図
【図12】制振制御の流れの一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、内燃機関と当該内燃機関に駆動連結された回転電機とを備える駆動装置を駆動源とする車両において、当該駆動装置を制御対象とする制御装置を例として、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の説明において、「駆動連結」は、2つの回転要素(例えば、内燃機関と回転電機)が駆動力を伝達可能に連結された状態を意味する。また、「駆動連結」は、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、あるいは当該2つの回転要素が1又は2以上の電動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む概念として用いられる。このような伝動部材には、回転を同速で又は変速して伝達する各種部材(例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等)が含まれる。また、ここで「駆動力」は「トルク」と同義である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態において、駆動装置制御ユニット2(駆動装置の制御装置)による制御対象となる駆動装置1は、いわゆる1モータパラレル方式のハイブリッド車両用の駆動装置である。駆動装置制御ユニット2は、少なくとも、内燃機関11と内燃機関11に駆動連結された回転電機12とを制御対象とする。本実施形態において、駆動装置1は、内燃機関11に駆動連結される入力軸Iと車輪15に駆動連結される出力軸Oとを結ぶ動力伝達経路に、内燃機関11の側から順に、入力軸I、クラッチCS、回転電機12、変速機構13、出力軸Oを備えて構成されている。変速機構13は、例えば、遊星歯車機構やCVT(continuously variable transmission)により構成される。
【0018】
内燃機関11は、機関内部における燃料の燃焼により駆動されて動力を取り出す原動機である。内燃機関11としては、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等を用いることができる。内燃機関11は入力軸Iと一体回転するように駆動連結されている。本形態では、内燃機関11のクランクシャフト等の出力軸が入力軸Iに駆動連結されている。内燃機関11は、クラッチCSを介して回転電機12に駆動連結されている。クラッチCSは、内燃機関11と回転電機12との間の駆動連結を解除可能に設けられている。クラッチCSは、入力軸Iと中間軸Mとを選択的に駆動連結する摩擦係合装置であり、内燃機関切離用クラッチとして機能する。クラッチCSとしては、湿式多板クラッチや乾式単板クラッチ等を用いることができる。
【0019】
回転電機12は、モータ(電動機)及びジェネレータ(発電機)としての機能する。回転電機12のロータは中間軸Mと一体回転するように駆動連結されている。また、回転電機12は、インバータ27を介して直流電源28に電気的に接続されている。直流電源28としては、バッテリやキャパシタ等を用いることができる。また、直流電源28は、バッテリなどの蓄電装置の出力を昇圧するコンバータを含んで構成されていてもよい。回転電機12は、直流電源28から電力の供給を受けて力行する。あるいは、内燃機関11の出力トルク(以下、適宜「エンジントルクTe」と称する。)や車両の慣性力により発電した電力を直流電源28に回生する。回生された電力は、直流電源28の蓄電装置に蓄電される。中間軸Mは、変速機構13に駆動連結されている。変速機構13から出力軸Oに伝達されたトルクは、出力用差動歯車装置14を介して左右2つの車輪15に分配されて伝達される。これにより、駆動装置1は、内燃機関11及び回転電機12の一方又は双方のトルクを車輪15に伝達して車両を走行させることができる。
【0020】
図1に示すように、車両の各部には、複数のセンサ(Se1〜Se6)が備えられている。各センサ(Se1〜Se6)による検出結果を示す情報は、駆動装置制御ユニット2へ出力される。入力軸回転速度センサSe1は、入力軸Iの回転速度を検出するセンサである。入力軸回転速度センサSe1により検出される入力軸Iの回転速度は、内燃機関11の回転速度(エンジン回転速度Ne)に等しい。中間軸回転速度センサSe2は、中間軸Mの回転速度を検出するセンサである。中間軸回転速度センサSe2により検出される中間軸Mの回転速度は、回転電機12のロータの回転速度(モータ回転速度Nm)に等しい。中間軸回転速度センサSe2は、例えばレゾルバなどで構成され、回転電機12のロータの回転角度(ロータ位置)も検出する。出力軸回転速度センサSe3は、出力軸Oの回転速度を検出するセンサである。駆動装置制御ユニット2は、出力軸回転速度センサSe3により検出される出力軸Oの回転速度に基づいて、車両の走行速度である車速を導出することもできる。電流センサSe4は、回転電機12のステータコイルを流れる電流を検出する。駆動装置制御ユニット2は、電流センサSe4により検出された電流値を用いて、回転電機12を電流フィードバック制御する。直流電圧センサSe5は、直流電源28の電圧、つまり、インバータ27の直流側の電圧を検出するセンサである。アクセル操作量検出センサSe6は、アクセルペダル17の操作量を検出するセンサである。
【0021】
駆動装置制御ユニット2は、内燃機関11を制御する内燃機関制御部3と、回転電機12を制御する回転電機制御部4と、脈動トルク算出部5と、出力可能制振トルク算出部6と、制振制御管理部7と、を有して構成されている。詳細は、後述するが、内燃機関11の出力トルク(エンジントルクTe)には、脈動トルクTrが重畳される場合がある。この脈動トルクTrは、振動や、こもり音(booming noise)と称される異音の要因となり、乗員の乗り心地を損ねる場合がある。駆動装置制御ユニット2は、出力軸Oにおいて要求される出力トルクを出力させるために内燃機関11及び回転電機12を制御するだけでなく、エンジントルクTeに含まれる脈動トルクTrを抑制するための制振制御も実行する。制振制御は、内燃機関制御部3及び回転電機制御部4の一方又は双方を中核として実行される。制振制御管理部7は、脈動トルク算出部5及び出力可能制振トルク算出部6と協働して、内燃機関制御部3及び回転電機制御部4の一方又は双方を利用した制振制御を管理する機能部である。
【0022】
駆動装置制御ユニット2は、マイクロコンピュータなどの論理プロセッサを中核として、ハードウェアとソフトウェア(プログラムや各種パラメータなど)との協働によってその機能を実現する。内燃機関制御部3、回転電機制御部4などの上述した各機能部は、機能としての区別を示しており、共通のハードウェアや共通のソフトウェアを利用して実現される場合もある。
【0023】
内燃機関制御部3は、基本的には、内燃機関11の燃料消費率が最も高くなるエンジン回転速度NeとエンジントルクTeとの関係を規定した最適効率ラインL1の上に動作点が乗るように、内燃機関11の動作状態を設定して、内燃機関11を制御する(図2参照)。本実施形態において、動作点は、エンジントルクTeとエンジン回転速度Neとで定まる動作状態である。但し、パワーモードなど、高トルクを出力するような運転モードが設定可能な車両では、図2に一点鎖線で示すような高トルク動作ラインL3の上に内燃機関11の動作点が乗るように、内燃機関11の動作状態が設定される場合もある。
【0024】
回転電機制御部4は、回転電機12に対する目標トルク、ロータの回転速度(モータ回転速度Nm)及び回転角度θ(電気角)、回転電機12のステータコイルを流れる各相電流に基づいてフィードバック制御を行って回転電機12を駆動制御する。本実施形態では、回転電機制御部4は、公知のベクトル制御法を用いた電流フィードバック制御を行って、インバータ27を介して回転電機12を制御する。目標トルクは、図示しない車両制御部等からの要求信号として回転電機制御部4に入力される。回転電機制御部4は、直流電圧、目標トルク、変調率に基づいてステータコイルに流す電流の目標値である電流指令を演算する。変調率は、直流電力に対する3相交流電力の実効値の割合を示す指標である。ここでは、直流電源28の電圧である直流電圧に対し、インバータ27から出力される3相交流電圧の線間電圧の実効値の割合を示す指標である。
【0025】
回転電機制御部4は、スイッチング素子を備えて構成される公知のインバータ27をスイッチング制御することによって回転電機12を駆動制御する。スイッチング制御の方式には、正弦波パルス幅変調制御や空間ベクトルパルス幅変調制御などの通常変調制御や、不連続パルス幅変調制御(2相変調制御を含む)や矩形波制御などの過変調制御がある。これらの制御方式は、回転電機の回転速度や要求トルクなどに応じて選択される。一般的に、低回転速度領域では、通常パルス幅変調制御が実施され、高回転速度領域では過変調パルス幅変調制御が実施される。最も一般的なパルス幅変調である正弦波パルス幅変調による変調率の最大値は約0.61である。また、近年主流として用いられる基本的なパルス幅変調である空間ベクトルパルス幅変調による変調率の最大値は約0.71である。概ね、変調率が0.71程度までの変調を伴う制御をここでは通常変調と称する。モータトルクTmとモータ回転速度Nmとの関係を示す図3において符号M1で示す領域が通常変調領域である。
【0026】
不連続パルス幅変調制御(2相変調制御を含む)では、0.71以上の変調率での変調が可能であり、理論的には最大の変調率は約0.78である。変調率が0.78に達すると矩形波制御となる。ここで、2相変調制御とは、3相交流を生成する場合に、3相の内の1相を固定して他の2相をパルス幅変調する制御方式であり、矩形波制御は、電気角の1周期につき1つの矩形波パルスを用いて制御する方式である。ここでは、変調率が0.71以上となる制御を過変調制御と称する。図3において符号M2で示す領域は、不連続パルス幅変調制御領域であり、符号M3で示す領域は、矩形波制御領域である。また、符号M4で示す領域は過変調領域である。
【0027】
上述したように、駆動装置制御ユニット2は、出力軸Oにおいて要求される出力トルクを出力させるために内燃機関11及び回転電機12を制御するだけでなく、エンジントルクTeに含まれる脈動トルクTrを抑制するための制振制御も実行する。駆動装置制御ユニット2は、第1の制振制御として、回転電機12によりエンジントルクTeに含まれる脈動トルクTrを打ち消す方向の制振トルクTnを発生させて脈動トルクTrを抑制する。詳細は、後述するが、内燃機関11の脈動トルクTrを打ち消す方向の制振トルクTnを回転電機12が充分に発生できない場合には、第2の制振制御として、内燃機関11の動作状態を変更することによって、内燃機関11が発生する脈動トルクTr自体を減少させる制振制御を実行する。詳細は後述するが、例えば図4に示すように、内燃機関11が最適効率ラインL1の上の動作点Pe1で駆動制御されている場合に、内燃機関11の仕事率を維持しつつエンジントルクTeを低下させる方向、つまり動作点Pe2の方向に内燃機関11の動作状態を変化させる。仕事率とは、エンジントルクTeとエンジン回転速度Neとの積である。図4において破線は等仕事率ラインLpを示しており、等仕事率ラインLpに沿って動作点Peを変化させると仕事率が一定に維持される。
【0028】
この第2の制振制御は、脈動トルクTrの内、抑制することが求められる制振対象脈動トルクTtが、回転電機12が出力することが可能な出力可能制振トルクTaよりも大きい場合に実施される。この条件を判定するために、駆動装置制御ユニット2は、制振対象脈動トルクTt及び出力可能制振トルクTaを求める必要がある。脈動トルク算出部5は、制振対象脈動トルクTtを算出する機能部であり、出力可能制振トルク算出部6は、出力可能制振トルクTaを算出する機能部である。具体的には、脈動トルク算出部5は、内燃機関11の現在の動作状態と、現在の脈動トルクTrとに基づいて、脈動トルクTrの内で制振対象となる大きさの制振対象脈動トルクTtを算出する。また、出力可能制振トルク算出部6は、回転電機12の現在の動作状態と、回転電機12の動作状態に関して予め設定された制振制御可能域とに基づいて、回転電機12の現在の動作状態において回転電機12が出力可能な制振トルクTnの最大値である出力可能制振トルクTaを算出する。
【0029】
図5は、エンジントルクTeと脈動トルクTrの振幅との関係を示しており、図6は、脈動トルクTrの振幅と制振対象脈動トルクTtの振幅との関係を模式的に示している。図5に示すように、内燃機関11の脈動トルクTrの振幅は、ベースとなるエンジントルクTeが大きいほど大きな振幅となる。また、図6に示すように、この脈動トルクTrの内、制振対象となる制振対象脈動トルクTtは、当然ながら脈動トルクTrの振幅が大きいほど大きくなる。脈動トルクTrの全振幅を打ち消す必要はなく、乗員が異音や振動などを感じない程度の脈動トルクTrの残留は許容されてもよい。図5及び図6に示す例では、振幅Tr1は許容されることを示している。もちろん、脈動トルクTrの全振幅が制振対象脈動トルクTtであることを妨げるものではない。尚、制振対象脈動トルクTtを打ち消すための制振トルクTnの振幅は、制振対象脈動トルクTtと同一である。
【0030】
図5から明らかなように、エンジントルクTeから、脈動トルクTrが推定できる。脈動トルク算出部5は、例えば、エンジントルクTeを引数としたマップを参照することによって、内燃機関11の現在の動作状態に応じた脈動トルクTrを算出することができる。そして、図6から明らかなように、脈動トルクTrから制振トルクTnを算出することができる。図7に示すように、回転電機12の現在の動作状態が動作点Pm1である場合には、この動作点Pm1において制振トルクTnを発生させればよい。回転電機制御部4は、動作点Pm1において脈動トルクTrを打ち消す方向に制振トルクTnを発生させて脈動トルクTrを抑制する制振制御を行う。
【0031】
但し、図3に示すように、回転電機12が出力可能なトルク(モータトルクTm)には制限がある。動作点PmにおけるモータトルクTmに制振トルクTnを重畳させた場合に、回転電機12が出力可能なトルクの範囲を超える場合には、当該動作点Pmにおいて制振トルクTnを発生させることができない。例えば、図8に示すように、動作点Pm2において制振トルクTnを発生させると、最大トルクTm(max)を超えてしまう。この場合には、当該動作点Pm2において制振トルクTnを発生させることはできない。制振トルクTnは最大トルクTm(max)で制限され、回転電機12が出力可能な制振トルクTnの振幅の最大値は動作点Pm2から最大トルクTm(max)までとなる。つまり、出力可能制振トルクTaは、動作点Pmから最大トルクTm(max)までの振幅を有するトルクとなる。
【0032】
また、最大トルクTm(max)による制限を受けず、回転電機12が出力可能なトルクの範囲内であっても、回転電機12の制御形態によっては、回転電機12を利用した制振制御が充分に実施できない場合がある。つまり、過変調領域M4においては、回転電機12の応答性が制振トルクTnの変化(周波数)に対して充分ではなく、回転電機12を用いた制振制御を充分に実施できない場合がある。例えば、図8に示すように、動作点Pm3において制振トルクTnを発生させる場合、モータトルクTmの変動域が、過変調領域M4に入ってしまう。この場合、制振トルクTnは、実質的に過変調領域M4と通常変調領域M1との境界において制限される。回転電機12が出力可能な制振トルクTnの最大値は、動作点Pm3から、過変調領域M4と通常変調領域M1との境界までとなる。つまり、出力可能制振トルクTaは、動作点Pmから、過変調領域M4と通常変調領域M1との境界までの振幅を有するトルクとなる。
【0033】
出力可能制振トルク算出部6は、このような出力可能制振トルクTaを算出する機能部である。つまり、出力可能制振トルク算出部6は、回転電機12の現在の動作状態(ここでは動作点Pm)と、回転電機12の動作状態(ここでは動作点Pm)に関して予め設定された制振制御可能域(ここでは通常変調領域M1)とに基づいて、回転電機12の現在の動作状態(ここでは動作点Pm)において回転電機12が出力可能な制振トルクTnの最大値である出力可能制振トルクTaを算出する。尚、出力可能制振トルク算出部6は、動作点Pmを規定するモータトルクTm及びモータ回転速度Nm以外の動作状態、例えば、直流電源28の電源電圧や回転電機12の各部の温度などに基づいて出力可能制振トルクTaを算出してもよい。
【0034】
内燃機関制御部3は、制振対象脈動トルクTtが出力可能制振トルクTaよりも大きい場合には、仕事率を維持した状態で内燃機関11の動作状態(動作点Pe)を変化させることによって、脈動トルクTrを抑制する。つまり、制振制御管理部7は、制振対象脈動トルクTtと出力可能制振トルクTaとを比較し、制振対象脈動トルクTtが出力可能制振トルクTaよりも大きい場合には、内燃機関制御部3を中核とした第2の制振制御を実行させる。内燃機関制御部3は、内燃機関11の仕事率を維持しつつ内燃機関11の出力トルク(エンジントルクTe)を低下させる方向に、内燃機関11の動作状態(動作点Pe)を変化させる。例えば、図4に示すように、内燃機関制御部3は、現在の動作点Pe1からエンジントルクTeを低下させる方向である動作点Pe2の方向へ、等仕事率ラインLpに沿って内燃機関11の動作点Peを変化させる。
【0035】
図4における符号L2は、快適性優先ラインである。快適性優先ラインL2よりもエンジントルクTeが大きい領域では、脈動トルクTrによる異音や振動が、乗員の快適性を損なう可能性がある。図4において、最適効率ラインL1と快適性優先ラインL2とに囲まれた領域は、脈動トルクTrを抑制する必要がある回避必要振動領域Rである。尚、図2を用いて上述したように、最適効率ラインL1よりも大きいエンジントルクTeが規定された高トルク動作ラインL3が存在する場合、高トルク動作ラインL3と快適性優先ラインL2とに囲まれた領域も、脈動トルクTrを抑制する必要がある回避必要振動領域Rとなる。つまり、回避必要振動領域Rは、エンジン回転速度Neと、エンジントルクTeとの関係で予め設定されていればよい。制振対象脈動トルクTtがゼロではない場合、内燃機関11の動作点Peは、回避必要振動領域Rの中である。従って、内燃機関制御部3は、回避必要振動領域Rの外側まで、等仕事率ラインLpに沿ってエンジントルクTeを低下させる方向に動作点Peを変化させる。
【0036】
ところで、内燃機関11のエンジントルクTeを、動作点Pe1から動作点Pe2に向かって低下させていくと、エンジントルクTeの低下に伴って脈動トルクTrも低下する。図9は、内燃機関11の等仕事率ラインLp上の複数の動作点Peを示しており、図10は、図9の各動作点Peにおける制振トルクTnの振幅を例示している。図9に示すように、内燃機関11の動作点Pe1は、最適効率ラインL1の上であり、回避必要振動領域Rの中である。この動作点Pe1において生じる脈動トルクTrに対して、回転電機12が動作点Pm2において制振トルクTn1を発生させようとすると、図10に示すように、回転電機12の最大トルクTm(max)により制限を受ける。この場合には、上述したように、内燃機関制御部3が、エンジントルクTeを等仕事率ラインLpに沿って低下させる。エンジントルクTeが、図9に示す動作点Pe3まで低下すると、脈動トルクTrも小さくなる。その結果、動作点Pe3での脈動トルクTrに対する制振トルクTn3の振幅は、図10に示すように、動作点Pe1での脈動トルクTrに対する制振トルクTn1の振幅よりも小さくなる。そして、この制振トルクTn3は、図10に示すように、回転電機12の最大トルクTm(max)による制限を受けなくなる。
【0037】
このように、内燃機関制御部3は、必ずしも回避必要振動領域Rの外側まで内燃機関11の動作点Peを変化させなくてもよい。回避必要振動領域Rの中であっても、回転電機12により制振トルクTnを生成可能な動作状態(動作点Pe)まで、エンジントルクTeを低下させる方向に、内燃機関11の動作状態を変化させれば充分である。
【0038】
但し、エンジントルクTeが動作点Pe3の近傍で増減すると、出力可能制振トルクTaが制振対象脈動トルク以上となる状態と、出力可能制振トルクTaが制振対象脈動トルク未満となる状態とが、エンジントルクTeの増減に応じて入れ替わることになる。その結果、異音や振動が抑制される状態と、抑制が不充分な状態とが頻繁に入れ替わり、乗員の快適性を損なう可能性がある。このため、例えば、エンジントルクTeを低下させていく途上においては、エンジントルクTeがさらに低くなる動作点Pe4まで、動作状態を変化させると好適である。つまり、出力可能制振トルクTaが、制振トルクTn(制振対象脈動トルクTt)に対して、所定の第1緩衝幅Tb1以上大きくなるまで、エンジントルクTeを低下させると好適である。つまり、出力可能制振トルクTaと制振トルクTn(制振対象脈動トルクTt)との差ΔT1が所定の第1緩衝幅Tb1以上となるまでエンジントルクTeを低下させると好適である。
【0039】
上記においては、制振制御管理部7は、制振対象脈動トルクTtと出力可能制振トルクTaとを比較し、制振対象脈動トルクTtが出力可能制振トルクTaよりも大きい場合には、内燃機関制御部3を中核とした第2の制振制御を実行させると説明した。しかし、制振制御管理部7は、制振対象脈動トルクTtと出力可能制振トルクTaとを比較し、制振対象脈動トルクTtの振幅が、出力可能制振トルクTaの振幅から所定の第1緩衝幅Tb1を減じた値よりも大きい場合に、内燃機関制御部3を中核とした第2の制振制御を実行させてもよい。尚、第1緩衝幅Tb1がゼロの場合には、制振制御管理部7は、制振対象脈動トルクTtが出力可能制振トルクTaよりも大きい場合に、内燃機関制御部3を中核とした第2の制振制御を実行させることとなる。
【0040】
上記においては、エンジントルクTeを低下させることによって制振対象脈動トルクTtの振幅が小さくなり、回転電機12を用いた第1の制振制御が可能となる場合について説明した。このケース以外にも、回転電機12の動作状態が変化して、出力可能制振トルクTaが大きくなり、回転電機12を用いた第1の制振制御が可能となる場合もある。例えば、図11に示すように、回転電機12の動作状態が変化して、動作点Pm2から、動作点Pm2よりも最大トルクTm(max)の値が大きい動作点Pm4となった場合、動作点Pm4での出力可能制振トルクTa4は、動作点Pm2での出力可能制振トルクTa2よりも大きい値となる。動作点Pm4での出力可能制振トルクTa4が、制振トルクTn(制振対象脈動トルクTt)よりも、所定の第2緩衝幅Tb2以上大きい場合には、内燃機関制御部3は、内燃機関11の仕事率を維持しつつ、内燃機関11の動作状態を最適効率ラインL1に近づく方向に変化させる。つまり、制振制御管理部7は、出力可能制振トルクTa4が、制振対象脈動トルクTtよりも、所定の第2緩衝幅Tb2以上大きい場合には、内燃機関11を中核とする第2の制振制御の割合を減少させ、回転電機12を中核とする第1の制振制御の割合を増加させる。尚、第2緩衝幅Tb2は、第1緩衝幅Tb1よりも大きい値であると好適である。
【0041】
例えば、図9及び図10に示したように、内燃機関11の動作状態を動作点Pe4まで変化させた場合、回転電機12は、動作点Pm2において制振トルクTn4を発生させる。このとき、動作点Pm2での出力可能制振トルクTa2と制振トルクTn4(制振対象脈動トルクTt)とは、差ΔT1を有する。この差ΔT1が第1緩衝幅Tb1以上であると、内燃機関制御部3は、エンジントルクTeをこれ以上低下させない。回転電機制御部4は、回転電機12の動作点Pm2において充分に生成可能な制振トルクTn4を発生させて制振制御を実行する。つまり、内燃機関11を中核とする第2の制振制御と、回転電機12を中核とする第1の制振制御とが協働する。
【0042】
ここで、図11に示すように、回転電機12の動作状態が動作点Pm2から動作点Pm4に変化すると、動作点Pm4での出力可能制振トルクTa4と制振トルクTn4(制振対象脈動トルクTt)とは、差ΔT1よりも大きい差ΔT2を有することになる。この差ΔT2が、所定の第2緩衝幅Tb2以上大きい場合、内燃機関制御部3は、内燃機関11の仕事率を維持しつつ、内燃機関11の動作状態を最適効率ラインL1に近づく方向に変化させる。これによりエンジントルクTeは大きくなるので、脈動トルクTrも大きくなり、制振対象脈動トルクTtも大きくなる。当然ながら、制振トルクTnも大きくなる。つまり、内燃機関11を中核とする第2の制振制御の割合が減少する一方、回転電機12を中核とする第1の制振制御の割合が増加する。
【0043】
内燃機関制御部3は、最大で、動作点Peが最適効率ラインL1に達するまで動作状態を変化させる。つまり、図11に示すように、回転電機12の動作点Pm4での出力可能制振トルクTa4と、最適効率ラインL1の上の動作点Pe1での脈動トルクTrに対応する制振トルクTn1(制振対象脈動トルクTt)との差ΔT3が、所定の第2緩衝幅Tb2以上大きい場合には、内燃機関制御部3は、動作点Peが最適効率ラインL1に達するまで動作状態を変化させる。この場合には、内燃機関11を中核とする第2の制振制御が終了され、回転電機12を中核とする第1の制振制御のみが実行される。内燃機関11は、最適効率ラインL1上において制御される。
【0044】
好適な実施形態と例示して上述したように、本発明によれば、回転電機12を利用した内燃機関11の制振制御(第1の制振制御)と、内燃機関11の動作状態の設定による脈動トルクの抑制制御(第2の制振制御)との関係が最適化される。以下、図12のフローチャートも利用して、駆動装置制御ユニット2による制振制御の流れを説明する。
【0045】
駆動装置制御ユニット2の制振制御管理部7は、各種センサ(Se1〜Se6)の検出結果や、内燃機関制御部3及び回転電機制御部4などの機能部の制御状態に基づいて、内燃機関11及び回転電機12の動作状態(動作点Pe及びPm)を取得する(#1)。次に、制振制御管理部7は、取得した内燃機関11の動作点Peに基づいて、脈動トルク算出部5に、動作点Peにおける脈動トルクTrを算出させる(#3)。さらに、制振制御管理部7は、脈動トルク算出部5に、動作点Peにおける制振対象脈動トルクTtを算出させる(#4)。また、制振制御管理部7は、取得した回転電機12の動作状態(動作点Pm)に基づいて、出力可能制振トルク算出部6に、動作点Pmにおける出力可能制振トルクTaを算出させる(#5)。
【0046】
次に、制振制御管理部7は、制振対象脈動トルクTtと出力可能制振トルクTaとを比較し、出力可能制振トルクTaよりも制振対象脈動トルクTtの方が大きいか否かを判定する(#6)。この際、上述したように、第1緩衝幅Tb1を利用して、出力可能制振トルクTaから第1緩衝幅Tb1を減じた値よりも、制振対象脈動トルクTtの方が大きいか否かを判定するように構成されていてもよい。出力可能制振トルクTaよりも制振対象脈動トルクTtの方が大きい場合(ステップ#6の論理式が“真”の場合)、制振制御管理部7は、内燃機関制御部3に、仕事率を維持した状態でエンジントルクTeを低下させる制御を実行させる(#7)。
【0047】
ステップ#6の論理式が“偽”の場合、制振制御管理部7は、出力可能制振トルクTaから第2緩衝幅Tb2を減じた値よりも、制振対象脈動トルクTtの方が小さいか否かを判定する(#8)。ステップ#8の論理式が“偽”の場合には、制振対象脈動トルクTtの振幅に比べて出力可能制振トルクTaがまだ充分に大きい訳ではないので、制振制御管理部7は、内燃機関制御部3に、エンジントルクTeを維持する制御を実行させる(#11)。ステップ#8の論理式が“真”の場合には、制振制御管理部7は、内燃機関11の動作状態(動作点Pe)が最適効率ラインL1の上か否かを判定する(#10)。動作点Peが最適効率ラインL1の上ではない場合には、制振制御管理部7は、内燃機関制御部3に、仕事率を維持した状態でエンジントルクTeを上昇させる制御を実行させる(#12)。ステップ#8の論理式が“真”であったので、制振対象脈動トルクTtの振幅に比べて出力可能制振トルクTaの振幅は充分に大きく、エンジントルクTeが上昇して脈動トルクTrが大きくなっても充分な制振トルクTnを生成することができる。動作点Peが最適効率ラインL1の上である場合は、最適な動作点Peで内燃機関11が制御されているので、制振制御管理部7は、内燃機関制御部3に、エンジントルクTeを維持する制御を実行させる(#11)。
【0048】
尚、特にステップ#7、#11、#12においては、内燃機関制御部3が実行する制御についてのみ言及しているが、当然ながら回転電機制御部4は、それぞれのステップにおいて対応する制振トルクTnを発生させる制御を実行する。
【0049】
〔その他の実施形態〕
以下、本発明のその他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0050】
(1)上記実施形態においては、1モータパラレル方式のハイブリッド車両用の駆動装置に本発明を適用する例を用いて説明した。しかし、駆動装置の構成はこれに限定されるものではない。例えば、内燃機関の出力トルクを車輪と第一回転電機とに分配する動力分配用の差動歯車装置を備えると共に、当該差動歯車装置より車輪側に第二回転電機を備えた、いわゆる2モータスプリット方式のハイブリッド自動車用の駆動装置にも本発明を適用することが可能である。この場合、第一回転電機と第二回転電機の一方又は双方が、本発明における制振トルクを出力する構成とされる。また、内燃機関に駆動連結された発電機と、車輪に駆動連結された電動機とを備え、内燃機関と車輪とが駆動連結されていない、いわゆる2モータシリーズ方式のハイブリッド車両用の駆動装置にも本発明を適用することができる。この場合、発電機が、本発明における制振トルクを出力する構成とされる。
【0051】
(2)上記実施形態では、回転電機制御部4を中核とした第1の制振制御と、内燃機関制御部3を中核とした第2の制振制御とが、共に実施されることがある形態を例示して説明した。しかし、第1の制振制御と第2の制振制御とが選択的に実行される形態であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、内燃機関と当該内燃機関に駆動連結された回転電機とを制御対象とし、この回転電機により内燃機関の脈動トルクを打ち消す方向の制振トルクを発生させて当該脈動トルクを抑制する駆動装置の制御装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 :駆動装置
2 :駆動装置制御ユニット(駆動装置の制御装置)
3 :内燃機関制御部
4 :回転電機制御部
5 :脈動トルク算出部
6 :出力可能制振トルク算出部
11 :内燃機関
12 :回転電機
27 :インバータ
28 :直流電源
L1 :最適効率ライン
Ne :エンジン回転速度(内燃機関の回転速度)
Nm :モータ回転速度(回転電機の回転速度)
Pe,Pe1,Pe2,Pe3,Pe4:動作点(内燃機関の動作状態)
Pm,Pm1,Pm2,Pm3,Pm4:動作点(回転電機の動作状態)
R :回避必要振動領域
Ta,Ta2,T4:出力可能制振トルク
Tb1 :第1緩衝幅
Tb2 :第2緩衝幅(所定の緩衝幅)
Te :エンジントルク(内燃機関の出力トルク)
Tm :モータトルク(回転電機の出力トルク)
Tm(max):最大トルク(内燃機関が出力可能な最大トルク)
Tn,Tn1,Tn3,Tn4:制振トルク
Tr :脈動トルク
Tt :制振対象脈動トルク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と当該内燃機関に駆動連結された回転電機とを制御対象とし、前記回転電機により前記内燃機関の脈動トルクを打ち消す方向の制振トルクを発生させて前記脈動トルクを抑制する駆動装置の制御装置であって、
前記内燃機関の現在の動作状態と、現在の前記脈動トルクとに基づいて、制振対象となる前記脈動トルクである制振対象脈動トルクを算出する脈動トルク算出部と、
前記回転電機の現在の動作状態と、前記回転電機の動作状態に関して予め設定された制振制御可能域とに基づいて、前記回転電機の現在の動作状態において前記回転電機が出力可能な前記制振トルクの最大値である出力可能制振トルクを算出する出力可能制振トルク算出部と、
前記制振対象脈動トルクが前記出力可能制振トルクよりも大きい場合、前記内燃機関の仕事率を維持しつつ前記内燃機関の出力トルクを低下させる方向に、前記内燃機関の動作状態を変化させる内燃機関制御部と、
を備える駆動装置の制御装置。
【請求項2】
前記回転電機は、直流電源の電力がインバータを介して交流電力に変換されて供給されるように構成され、
前記直流電源の電圧である直流電圧に対する交流電圧の実効値の割合を表す指標が変調率であり、
前記制振制御可能域は、回転速度に応じて前記回転電機が出力可能な最大トルクと、回転速度に応じて予め定められた変調率に前記回転電機が達するトルクと、のいずれか小さい方によって規定される動作状態の領域である請求項1に記載の駆動装置の制御装置。
【請求項3】
前記内燃機関制御部は、前記制振対象脈動トルクが前記出力可能制振トルクよりも大きい場合、前記内燃機関の回転速度とトルクとの関係で予め設定された回避必要振動領域の外側まで前記内燃機関の動作状態を変化させる請求項1又は2に記載の駆動装置の制御装置。
【請求項4】
前記内燃機関制御部は、前記制振対象脈動トルクが前記出力可能制振トルク以下である場合、前記内燃機関の燃料消費率が最も高くなる前記内燃機関の回転速度とトルクとの関係を規定した最適効率ライン上となるように前記内燃機関の動作状態を設定し、前記内燃機関の現在の動作状態が前記最適効率ライン上でなく、前記制振対象脈動トルクが前記出力可能制振トルクに対して所定の緩衝幅以上小さい場合、前記内燃機関の仕事率を維持しつつ前記内燃機関の動作状態を前記最適効率ラインに近づく方向に変化させる請求項1から3のいずれか一項に記載の駆動装置の制御装置。
【請求項1】
内燃機関と当該内燃機関に駆動連結された回転電機とを制御対象とし、前記回転電機により前記内燃機関の脈動トルクを打ち消す方向の制振トルクを発生させて前記脈動トルクを抑制する駆動装置の制御装置であって、
前記内燃機関の現在の動作状態と、現在の前記脈動トルクとに基づいて、制振対象となる前記脈動トルクである制振対象脈動トルクを算出する脈動トルク算出部と、
前記回転電機の現在の動作状態と、前記回転電機の動作状態に関して予め設定された制振制御可能域とに基づいて、前記回転電機の現在の動作状態において前記回転電機が出力可能な前記制振トルクの最大値である出力可能制振トルクを算出する出力可能制振トルク算出部と、
前記制振対象脈動トルクが前記出力可能制振トルクよりも大きい場合、前記内燃機関の仕事率を維持しつつ前記内燃機関の出力トルクを低下させる方向に、前記内燃機関の動作状態を変化させる内燃機関制御部と、
を備える駆動装置の制御装置。
【請求項2】
前記回転電機は、直流電源の電力がインバータを介して交流電力に変換されて供給されるように構成され、
前記直流電源の電圧である直流電圧に対する交流電圧の実効値の割合を表す指標が変調率であり、
前記制振制御可能域は、回転速度に応じて前記回転電機が出力可能な最大トルクと、回転速度に応じて予め定められた変調率に前記回転電機が達するトルクと、のいずれか小さい方によって規定される動作状態の領域である請求項1に記載の駆動装置の制御装置。
【請求項3】
前記内燃機関制御部は、前記制振対象脈動トルクが前記出力可能制振トルクよりも大きい場合、前記内燃機関の回転速度とトルクとの関係で予め設定された回避必要振動領域の外側まで前記内燃機関の動作状態を変化させる請求項1又は2に記載の駆動装置の制御装置。
【請求項4】
前記内燃機関制御部は、前記制振対象脈動トルクが前記出力可能制振トルク以下である場合、前記内燃機関の燃料消費率が最も高くなる前記内燃機関の回転速度とトルクとの関係を規定した最適効率ライン上となるように前記内燃機関の動作状態を設定し、前記内燃機関の現在の動作状態が前記最適効率ライン上でなく、前記制振対象脈動トルクが前記出力可能制振トルクに対して所定の緩衝幅以上小さい場合、前記内燃機関の仕事率を維持しつつ前記内燃機関の動作状態を前記最適効率ラインに近づく方向に変化させる請求項1から3のいずれか一項に記載の駆動装置の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−82400(P2013−82400A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225100(P2011−225100)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】
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