説明

駆動装置

【課題】内燃機関から電動機への熱的影響を調整し、電動機が加熱により高温になり不具合に至るのを未然に防ぐ駆動装置を提供する。
【解決手段】いずれかの駆動輪に動力を伝達する内燃機関3と、その内燃機関3から動力が伝達される駆動輪以外の車輪5に動力を与える電動機4とを備え、それら内燃機関3と電動機4とが隣接して配置されている車両における駆動装置であって、前記電動機4は前記内燃機関3に対して接近・離隔する方向に移動可能に配置されるとともに、前記内燃機関3の温度に感応して伸縮する熱感応部材である距離可変装置2が前記電動機4に連結され、前記内燃機関3の温度が上昇した場合に前記電動機4が前記距離可変装置2によって前記内燃機関3から離れる方向に移動させられるように構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関と電動機との間に熱感応部材を設けた駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の駆動装置として、車輪を電動モータにて駆動する駆動装置等が広く知られている。しかしながら、車輪を電動モータにて駆動する場合、その電動モータの冷却を必要とするなどの課題がある。そこで、従来、電動モータの冷却を行う機構が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、インホイールモータの温度と周辺部材の温度を検出し、インホイールモータと周辺部材との接触面積を変更してインホイールモータの熱を外へ逃がす構成が記載されている。また、特許文献2には燃料電池セルスタックと燃料ヒータを断熱材で覆い冷却されない構成が記載されている。そして、特許文献3には、ロアアームの揺動方向に電動モータが取り付けられることにより慣性モーメントを低減して車両の乗り心地や車輪の接地性の悪化を抑える構成が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−211764号公報
【特許文献2】特開2002−362470号公報
【特許文献3】特開2006−27529号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示されている構成は、インホイールモータの温度と周辺部材の温度とを比較しながらそのインホイールモータと周辺部材との接触面積を変化させているとともに、さらにインホイールモータで発生した熱を一旦蓄熱してから周辺部材側へ熱伝導させているので熱伝導効率が劣る可能性があり、また内燃機関であるいわゆるエンジンからインホイールモータへ熱が伝達する構成はなんら記載されていない。
【0006】
また、特許文献2に示されている構成は、燃料電池セルスタックと燃料ヒータを断熱材で覆い、走行風導入口から走行風排出口が設けられているので、走行風が流れるようにしている。しかし、前記したように燃料電池セルスタックと燃料ヒータを断熱材で覆っているので冷却効率が向上しない可能性がある。
【0007】
さらに、特許文献3に示されている構成は、ロアアームの揺動方向には移動可能だが、ロアアームの揺動方向と直角な方向には移動が不可能であるので内燃機関と電動モータの間の距離がロアアームの熱膨張した分わずかに短くなり、その分内燃機関からの熱的影響を大きく受けてしまう。そして、内燃機関がオーバーヒートして高温になると、電動モータは内燃機関より熱の影響を大きく受けてしまうので電動モータが高温になり不具合が発生してしまう可能性がある。
【0008】
この発明は、上記の技術的課題に着目してなされたものであり、内燃機関から電動機への熱の伝達を熱感応部材によって調整することにより熱的影響を小さくすることができるために電動機が加熱によって高温になり不具合となるのを未然に防ぐことを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、いずれかの駆動輪に動力を伝達する内燃機関と、その内燃機関から動力が伝達される駆動輪以外の車輪に動力を与える電動機とを備え、それら内燃機関と電動機とが隣接して配置されている車両における駆動装置において、前記電動機は前記内燃機関に対して接近・離隔する方向に移動可能に配置されるとともに、前記内燃機関の温度に感応して伸縮する熱感応部材が前記電動機に連結され、前記内燃機関の温度が上昇した場合に前記電動機が前記熱感応部材によって前記内燃機関から離れる方向に移動させられるように構成されていることを特徴とする駆動装置である。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載の発明において、前記電動機と前記熱感応部材との間にこれら電動機と熱感応部材との熱伝達を防止するための断熱材が設けられていることを特徴とする駆動装置である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、前記熱感応部材を備えることにより内燃機関が高温時に内燃機関から電動機への熱の伝達を調整することにより内燃機関から電動機への熱的影響を小さく抑えることができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明による効果に加えて、熱感応部材と電動機との間に断熱材を設けることにより、内燃機関が高温時に前記熱感応部材と電動機との間を直接接触させることを防ぐので熱伝達を防止し、前記電動機が高温になることを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明を実施する最良の形態について説明する。図1は、この発明に係る駆動装置の実施例を模式的に示す概略正面図である。図1において、符号1はこの発明における駆動装置であって、ここでは、たとえば車両に搭載される内燃機関から車輪までの間に配置される。
【0014】
この駆動装置1を構成する温度に感応して伸縮する熱感応部材である距離可変装置2が内燃機関3と電動機4との間に配置されている。この距離可変装置2は、加えられる熱量によって伸縮可能な、たとえば形状記憶合金でバネ形状に形成されている。そして、いずれかの駆動輪に動力を伝達する内燃機関3と、その内燃機関3から動力が伝達される駆動輪以外の車輪5に動力を与える電動機4とを備え、それら内燃機関3と電動機4とが隣接して配置されている。そして、電動機4は内燃機関3に対して接近・離隔する方向に移動可能に配置されている。さらに、内燃機関3と電動機4との間の距離可変装置2の伸縮の値である距離は電動機4と車輪5との間に配置されるドライブシャフト6の矢印a方向の伸縮可能の度合いによって保たれる。
【0015】
したがって、内燃機関3が高温時になると内燃機関3から電動機4への熱伝達が行われてしまうので、熱的な影響を距離可変装置2で調整するように構成される。そして、後述する案内部7が距離可変装置2を包むように筒状に形成されている。この案内部7は、たとえば温度に感応して伸縮する熱感応部材である形状記憶合金で形成されている。さらに、案内部7は、距離可変装置2よりも短く設定されている。また、後述するように距離可変装置2と電動機4との間には断熱材8が配置されている。この断熱材8は、たとえば硬質ウレタンフォーム等で形成されている。
【0016】
そして、この駆動装置1の作用について説明すると、前記内燃機関3が回転している場合、この内燃機関3が加熱される。そして、この内燃機関3が加熱されると距離可変装置2に熱が伝わりこの距離可変装置2が伸延することとなる。この距離可変装置2の伸延によって電動機4が車輪5側に押される。これにより内燃機関3と電動機4との距離が大きく拡がる。したがって、内燃機関3と電動機4との間の空間が大きくなるので冷却媒体であるたとえば空気の流入量が多くなり電動機4が効率的に冷却される。これにより電動機4が高温になることを抑えることができる。そして、内燃機関3と電動機4とを繋ぐ距離可変装置2の電動機4側には断熱材8が設けられているので、内燃機関3の熱は電動機4には伝達されない。
【0017】
次に、第2の実施例について説明する。ここで、図2は、この発明に係る駆動装置の第2の実施例を模式的に示す概略部分断面図である。図2において、前記第1の実施例に示した構成と同じ構成については同じ符号を付してある。この内燃機関3がまだ低温時には車両は電動駆動であるEV(electric vehicle)走行をする。そのため内燃機関3が停止等しているときには内燃機関3からの熱が発生しないため距離可変装置2は熱膨張によって伸延することがない。したがって、距離可変装置2が電動機4を車輪5側に押すことはない。このとき内燃機関3と電動機4との距離は長く設定されていない。さらに電動機4のみ高温になると距離可変装置2の案内部7が伸びて内燃機関3と電動機4に接触することになる。この案内部7は距離可変装置2を包むように筒状に形成されている。そのため、内燃機関3が電動機4よりも低温のときは案内部7を介して内燃機関3が電動機4の受熱部材として有効に用いられるので電動機4の冷却を効率良く行うことができる。そして、距離可変装置2は前記した断熱材8を介して電動機4と接続しているので伸延することがない。
【0018】
つぎに、内燃機関3がオーバーヒート等で高温になると図3に示すように温度に感応して伸縮する熱感応部材であるたとえば形状記憶合金で形成された距離可変装置2が案内部7に沿って電動機4を車輪5側に矢印b方向に押すことになる。これによりドライブシャフト6が電動機4に押されて車輪5側に縮むこととなる。したがって、内燃機関3と電動機4との距離が大きく開くことになる。そのため、冷却媒体である空気等が流入し易くなるので内燃機関3から電動機4への熱的な影響を小さくすることができる。
【0019】
また、断熱材8を電動機4と距離可変装置2との間に設置することにより内燃機関3から電動機4への熱の伝達を防ぐことができる。そして、内燃機関3と電動機4との間の空気の層を大きくとることにより電動機4を効率よく冷却することができるので電動機4の加熱による故障を防止することが可能となる。さらに、電動機4そのものを停止させても回避できない外的要因による熱の影響を抑えることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明に係る駆動装置の実施例を模式的に示す概略正面図である。
【図2】この発明に係る駆動装置の第2の実施例を模式的に示す概略部分断面図である。
【図3】この発明に係る駆動装置の実施例を模式的に示す構成図である。
【符号の説明】
【0021】
1…駆動装置、 2…距離可変装置、 3…内燃機関、 4…電動機、 5…車輪、 6…ドライブシャフト、 7…案内部、 8…断熱材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
いずれかの駆動輪に動力を伝達する内燃機関と、その内燃機関から動力が伝達される駆動輪以外の車輪に動力を与える電動機とを備え、それら内燃機関と電動機とが隣接して配置されている車両における駆動装置において、
前記電動機は前記内燃機関に対して接近・離隔する方向に移動可能に配置されるとともに、前記内燃機関の温度に感応して伸縮する熱感応部材が前記電動機に連結され、前記内燃機関の温度が上昇した場合に前記電動機が前記熱感応部材によって前記内燃機関から離れる方向に移動させられるように構成されていることを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記電動機と前記熱感応部材との間にこれら電動機と熱感応部材との熱伝達を防止するための断熱材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−83451(P2010−83451A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257657(P2008−257657)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】