説明

駆動装置

【課題】電子回路を露出することなく、モータ部とコントロールユニットとの分解および組み付けが可能な駆動装置を提供する。
【解決手段】モータ部2を駆動制御するコントロールユニット3は、電子回路を有するパワー基板42、およびそのパワー基板42を覆う外カバー60を有する。基板用端子51は、パワー基板42に電気的に接続している。ステータ91に巻回された巻線95に電気的に接続されたモータ端子73は、基板用端子側へ延びている。ボルト57は、外カバー60がパワー基板42等を覆った状態で、基板用端子51とモータ端子73とを、外カバー60およびコンポーネントキャリア70の内側で接続または離脱することが可能である。これにより、基板用端子51とモータ端子73とを接続または離脱する際、外カバー60からパワー基板42の電子回路等が露出することが防がれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータとその駆動を制御するコントロールユニットとを一体にした駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運転者の操舵をモータの駆動力によってアシストする電動パワーステアリングシステム(以下「EPS」という。)に用いられる駆動装置において、モータとそのモータの駆動を制御するコントロールユニットとを一体にした機電一体型の駆動装置が知られている。
特許文献1に記載の駆動装置は、モータの巻線に電気的に接続されたモータ端子(特許文献1では「モータ側ターミナル74U〜74W」)と、コントロールユニットの回路基板に接続する基板用端子(特許文献1では「インサート導体52」)とが接合されている(特許文献1の明細書の段落「0034」、図2及び図3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−37324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、駆動装置は、モータまたはコントロールユニットのいずれか一方が故障した場合、モータとコントロールユニットとを分解し、その後に故障した一方のみを交換し再度組み付けることが修理費用の低減に望ましい。
しかしながら、特許文献1に記載の駆動装置は、モータとコントロールユニットとの分解および組み付けをする場合にモータ端子と基板用端子とを離脱および接続する際、コントロールユニットの回路基板が露出する。このため、回路基板に形成された電子回路に異物が混入するおそれがある。また、基板用端子とモータ端子とを着脱する工具によって電子回路が破損することが懸念される。また、作業者の手から静電気が流れることによって電子回路が破損するおそれがある。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、電子回路を露出することなく、モータ部とコントロールユニットとの分解および組み付けが可能な駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明によると、駆動装置は、モータ部、コントロールユニット、基板用端子、モータ端子および接続手段を備える。
モータ部は、外郭を形成する筒状のモータケース、このモータケースの径内側に設けられ複数相を構成する巻線が巻回されたステータ、およびステータの径内側でステータに対して相対回転可能に設けられたロータを有する。
コントロールユニットは、ステータの巻線に電力を供給する駆動素子、この駆動素子と電気的に接続する電子回路を有する回路基板、および回路基板を覆うことで電子回路を保護するハウジングを有し、モータケースの軸方向の一方に着脱可能に設けられる。
基板用端子は、回路基板の電子回路に電気的に接続する。モータ端子は、ステータに巻回された巻線に電気的に接続され、基板用端子側へ延びる。
接続手段は、ハウジングが回路基板を覆った状態で基板用端子とモータ端子とをハウジングの外側または内側で接続または離脱することが可能である。
これにより、モータ部とコントロールユニットとの分解および組み付け時に、基板用端子とモータ端子とを接続または離脱する際、ハウジングから回路基板が露出することが防がれる。したがって、電子回路に異物が混入することを防ぐことができる。また、基板用端子とモータ端子とを着脱する工具によって電子回路が破損することを防ぐことができる。
【0006】
請求項2に係る発明によると、駆動装置は、モータ端子を保持するホルダを備える。
接続手段は、ボルトおよびナットの一方からなる第1接続手段と、ボルトおよびナットの他方からなる第2接続手段とから構成される。
第1接続手段は、モータ端子とともにホルダに保持される。
第2接続手段が、基板用端子およびモータ端子を挟んで第1接続手段に螺合することで、基板用端子とモータ端子とが接続される。
これにより、モータ端子と第1接続手段とがホルダによって位置決めされた状態で、第2接続手段を第1接続手段に容易に接続または離脱することができる。
【0007】
請求項3に係る発明によると、ハウジングは、回路基板、駆動素子、基板用端子、モータ端子およびホルダを覆うものである。
第2接続手段は、ハウジングが回路基板、駆動素子、基板用端子、モータ端子およびホルダを覆った状態で、ハウジングの外側から挿入され、ハウジングの内側でホルダに保持された第1接続手段に螺合する。
これにより、モータ部とコントロールユニットとの分解および組み付け時に、基板用端子とモータ端子とを接続または離脱する際、ハウジングから回路基板、駆動素子、基板用端子、モータ端子およびホルダが露出することを防ぐことができる。したがって、基板用端子とモータ端子とを接続または離脱する作業者の手から静電気が流れることによって電子回路が破損することを防ぐことができる。
【0008】
請求項4に係る発明によると、ハウジングは、ホルダを保持するホルダ保持部を有するコンポーネントキャリアと、コンポーネントキャリアの外側を覆う外カバーとから構成される。
これにより、ホルダを保持する機能を有するコンポーネントキャリアと、回路基板等の外側を覆う機能を有する外カバーとを分けることで、外カバーの構成を簡素にすることができる。また、コンポーネントキャリアと外カバーとを異なる材質から形成することが可能になる。
【0009】
請求項5に係る発明によると、コンポーネントキャリアは、外気側からホルダ側に凹む凹部を有する。凹部の底にはコンポーネントキャリアの内側と外側を通じる孔が設けられる。
第2接続手段は、凹部の底の孔から挿入され、コンポーネントキャリアの内側で第1接続手段に螺合する。
これにより、基板用端子およびモータ端子に電気的に接続する第2接続手段が凹部に収容される。したがって、第2接続手段から基板用端子を経由して電子回路に電流が流れることを防ぐことができる。
【0010】
請求項6に係る発明によると、駆動装置は、コンポーネントキャリアの凹部に対応する位置に設けられた外カバーの開口を塞ぐ蓋部材を有する。
これにより、凹部内に異物が混入することが防がれるので、第2接続手段から基板用端子を経由して電子回路に電流が流れることを確実に防ぐことができる。
【0011】
請求項7に係る発明によると、コンポーネントキャリアは、凹部の底の孔に対応する位置で基板用端子を固定することの可能な固定部を有する。固定部とホルダ保持部とは一体に形成される。
これにより、基板用端子がコンポーネントキャリアの固定部によって固定され、さらに基板用端子とホルダとの位置関係が定まる。このため、第2接続手段を第1接続手段に容易に接続または離脱することができる。
【0012】
請求項8に係る発明によると、ハウジングは、基板用端子、モータ端子およびホルダを覆うことなく、回路基板および駆動素子を覆うものである。
第2接続手段は、ハウジングが回路基板および駆動素子を覆った状態で、ハウジングの外側で第1接続手段に螺合する。
これにより、モータ部とコントロールユニットとの分解および組み付け時に、基板用端子とモータ端子とを接続または離脱する際、ハウジングから回路基板および駆動素子が露出することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態による駆動装置の構成図および回路図。
【図2】本発明の第1実施形態による駆動装置の側面図。
【図3】図2のIII−III線の断面図。
【図4】本発明の第1実施形態による駆動装置のコントロールユニットの要部拡大図。
【図5】本発明の第1実施形態による駆動装置のコントロールユニットの分解斜視図。
【図6】本発明の第1実施形態による駆動装置のコンポーネントキャリアの部分断面図。
【図7】本発明の第1実施形態によるコンポーネントキャリア、ホルダ及びモータ端子の分解斜視図。
【図8】本発明の第1実施形態による駆動装置のコントロールユニットとモータの分解斜視図。
【図9】本発明の第2実施形態による駆動装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による駆動装置を図1〜図8に基づいて説明する。駆動装置1は、車両などに搭載される電動パワーステアリング装置(以下、「EPS」という。)に適用される。
図1および図2に示すように、駆動装置1は、モータ部2およびコントロールユニット3を備えている。モータ部2は、車両のステアリングホイール4に連結されたステアリングシャフト5を回転させる減速ギヤ6にその出力端100が噛合うように設けられている。
運転者によってステアリングホイール4が操舵されると、その操舵によってステアリングシャフト5に生じるトルクがトルクセンサ7により検出される。駆動装置1は、トルクセンサ7から出力される信号、および図示しないCAN(Control Area Network)から伝送される車速信号などに基づき、ステアリングホイール4の操舵をアシストするためのトルクを発生する。このトルクは、減速ギヤ6を経由してステアリングシャフト5に伝達される。
【0015】
まず、コントロールユニット3の電気的構成について、図1を参照して説明する。
コントロールユニット3は、モータ部2を駆動する電流が流れるパワー部11と、そのパワー部11の動作を制御する制御部30とから構成され、モータ部2を駆動制御する。
パワー部11は、第1コンデンサ12、チョークコイル13、複数のインバータ回路14、15を形成する複数のスイッチング素子16〜21および第2コンデンサ22などから構成される。スイッチング素子16〜21は、特許請求の範囲に記載の「駆動素子」に相当する。
【0016】
パワー部11には、駆動装置1の外部に設けられる電源8から電力が供給される。パワー部11の備える第1コンデンサ12およびチョークコイル13は、フィルタ回路を構成し、電源8を共有する他の装置からパワー部11に伝わるノイズを低減するとともに、パワー部11から電源8を共有する他の装置へ伝わるノイズを低減する。また、チョークコイル13は、電源8と電源リレー23、24との間に直列接続され、電圧変動を減衰する。
【0017】
パワー部11は、2個のインバータ回路14、15を備えている。一方のインバータ回路14と他方のインバータ回路15とは、実質的に同一の構成であるので、ここでは、一方のインバータ回路14の構成のみを説明する。
電源リレー23、24およびスイッチング素子16〜21は、MOSFETであり、ゲート電圧により、ソース−ドレイン間がオンオフ制御される。電源リレー23、24は、スイッチング素子16〜21とチョークコイル13との間に設けられ、異常時にスイッチング素子16〜21を経由してモータ部2へ流れる電流を遮断可能である。
【0018】
電源側の3個のスイッチング素子16〜18は、ドレインが電源側に接続され、ソースが電源側の3個のスイッチング素子16〜18のそれぞれに対応するグランド側の3個のスイッチング素子19〜21のドレインに接続されている。グランド側の3個のスイッチング素子19〜21のソースは、シャント抵抗25を経由してグランドに接続されている。電源側のスイッチング素子16〜18と、それに対応するグランド側のスイッチング素子19〜21との接続点は、それぞれモータ部2の三相巻線に接続されている。
シャント抵抗25は、スイッチング素子19〜21とグランドとの間に接続されている。シャント抵抗25に印加される電圧または電流を検出することにより、モータ部2に流れる電流を検出可能である。
【0019】
第2コンデンサ22は、スイッチング素子16〜21の電源側の配線とグランド側の配線とに接続されている。つまり、第2コンデンサ22は、スイッチング素子16〜21と並列接続されている。第2コンデンサ22は、電荷を蓄えることでスイッチング素子16〜21への電力供給を補助し、また、電流の切り替えにより生じるリップル電流を吸収する。
【0020】
制御部30は、カスタムIC31、回転角センサ32、マイコン33およびプリドライバ34、35等から構成される。
カスタムIC31は、レギュレータ36、回転角センサ信号増幅部37および検出電圧増幅部38等を含む半導体集積回路である。
レギュレータ36は、電源8から供給される電力を安定化する安定化回路である。レギュレータ36により、マイコン33は、安定した所定の電圧(例えば5V)で動作する。
回転角センサ信号増幅部37には、回転角センサ32から出力された信号が入力される。回転角センサ32は、モータ部2のシャフトに設けられた磁石の磁界内に設けられ、周囲の磁界の変化を検出する。回転角センサ32の出力する信号は、モータ部2のロータの回転角度に関する信号として回転角センサ信号増幅部37に伝送される。回転角センサ信号増幅部37は、回転角センサ32から伝送された信号を増幅し、マイコン33へ出力する。
検出電圧増幅部38は、シャント抵抗25の両端電圧を検出し、その検出した検出値を増幅し、マイコン33へ出力する。
【0021】
マイコン33は、演算手段としてのCPU、記憶手段としてのROMおよびRAM等を有する小型のコンピュータである。マイコン33には、回転角センサ信号増幅部37からロータの回転角度に関する信号、検出電圧増幅部38からシャント抵抗25の両端電圧、トルクセンサ7から操舵トルク信号、およびCANから車速情報等が入力される。
マイコン33は、これらの信号が入力されると、ロータの回転角度に基づき、車速に応じてステアリング4の操舵をアシストするように、プリドライバ34、35を介してPWM制御により作り出されたパルス信号を生成する。このパルス信号は、2系統のインバータ回路14、15のスイッチング素子16〜21のオンオフの切り替え動作を制御する。また、マイコン33は、検出電圧増幅部38から入力されるシャント抵抗25の両端電圧に基づき、モータ部2へ供給する電流を正弦波に近づけるようインバータ回路14、15を制御する。これにより、モータ部2には、位相の異なる正弦波の駆動電流が供給され、モータ部2のステータの巻線に回転磁界が生じる。この回転磁界によりモータ部2はトルクを発生し、運転者のステアリング4による操舵がアシストされる。
【0022】
次にコントロールユニット3の構成について説明する。コントロールユニット3は、図2に示すように、モータ部2の軸方向の一方に設けられている。
図3〜図5に示すように、コントロールユニット3は、2個のパワーモジュール40、41、パワー基板42、制御基板43、ヒートシンク44、コンポーネントキャリア50および外カバー60などを有する。
一方のパワーモジュール40は、一方のインバータ回路14を形成する電源リレー23、24、スイッチング素子16〜21、シャント抵抗25およびそれらを接続する配線などを樹脂等の封止体で覆うことで構成される。
他方のパワーモジュール41は、他方のインバータ回路15を形成するスイッチング素子などを樹脂等の封止体で覆うことで構成される。一方のパワーモジュール40と他方のパワーモジュール41とは、実質的に同一の構成である。
【0023】
パワー基板42には、上述したパワー部11を構成する第1コンデンサ12、チョークコイル13および第2コンデンサ22等が実装される。また、パワー基板42には、電源8から供給された電流が2個のパワーモジュール40、41のスイッチング素子16〜21を経由し、モータ部2の三相巻線に流れる配線が形成される。これにより、パワー基板42は、電源8からモータ部2へ大電流の流れる電子回路を有する。
一方、制御基板43には、制御部30を構成するカスタムIC31、回転角センサ32、マイコン33およびプリドライバ34、35等が実装される。制御基板43には、2個のパワーモジュール40、41のスイッチング素子16〜21のオンオフの切り替え動作を制御する信号を送信する配線が形成される。これにより、パワー基板42は、スイッチング素子16〜21の動作を制御する電子回路を有する。
パワー基板42および制御基板43は、特許請求の範囲に記載の「回路基板」に相当する。
【0024】
ヒートシンク44は、例えばアルミなどの熱伝導性の高い金属から形成され、2個のパワーモジュール40、41の発する熱を吸収可能である。ヒートシンク44は、モータケースの中心軸を挟んで向き合うように設けられた2個のブロック46、47を有する。一方のブロック46の外壁に一方のパワーモジュール40が取り付けられ、他方のブロック47の外壁に他方のパワーモジュール41が取り付けられる。
ヒートシンク44のモータ部2と反対側にパワー基板42が取り付けられ、ヒートシンク44のモータ部側に制御基板43が取り付けられる。また、2個のブロック46、47の間に第2コンデンサ22が設けられる。
【0025】
図5に示すように、ヒートシンク44と一体にコネクタ保持部48が設けられている。コネクタ保持部48は、ヒートシンク44からモータケースの径外方向に突出し、モータケースの軸方向に通じるコネクタ挿入孔481を有する。
コネクタ49は、コネクタ挿入孔481に挿通され、コネクタ保持部48にねじ482により取り付けられる。コネクタ49は、パワー端子491および制御端子492を有する。パワー端子491は、一端がコネクタ49の内側に延びており、他端がパワー基板42の配線に接続される。一方、制御端子492は、一端がコネクタ49の内側に延びており、他端が制御基板43の配線に接続される。
【0026】
図3及び図4に示すように、モータ部2のステータ91に巻回された巻線95から取り出される取出線951は、モータケース90の孔からコントロールユニット側に延びている。そのモータケース90の孔にホルダ70が取り付けられている。ホルダ70は、樹脂から形成され、ナット71が嵌め込まれるナット受部72、およびモータ端子73を保持することの可能な溝74を有している。また、図7に示すように、ホルダ70は、その外壁にモータケース90の軸方向に延びる凸条部75を有している。
ホルダ70の溝74にモータ端子73が嵌め込まれている。モータ端子73は、取出線951を挟むことの可能な挟部76、基板用端子51と当接する当接部77、および挟部76と当接部77との間で曲折する曲折部78とを有する。挟部76が取出線951を挟むことで、モータ端子73と取出線951とが電気的および機械的に接続される。当接部77は、ナット受部72に設けられたナット71の基板用端子側に位置する。
【0027】
図3〜図7に示すように、コンポーネントキャリア50は樹脂から形成され、ヒートシンク44の外側に設けられる。コンポーネントキャリア50は、ヒートシンク44にねじ501によって取り付けられる。
コンポーネントキャリア50は、ホルダ保持部52、凹部53、固定部54などを一体に有する。
ホルダ保持部52は、ホルダ70の径外側を覆っている。また、ホルダ保持部52は、その内壁にモータケース90の軸方向に延びる凹条部55を有している。このホルダ保持部52の凹条部55に、ホルダの凸条部75が嵌め込まれることで、ホルダ70が位置決めされる。
凹部53は、モータ部2と反対側からモータ部側に凹むように形成される。凹部53は、コントロールユニット3を軸方向から見て、外カバー60の外周に沿った形状に形成される。凹部53の底には、コンポーネントキャリア50の内側と外側とを通じる孔56が設けられている。1個の凹部53に対し、3個の孔56が設けられている。
固定部54は、基板用端子51をモールドしている。基板用端子51は、一端がパワー基板42に接続され、他端が凹部53の孔56に露出している。その基板用端子51の他端は、凹部53と反対側の端面がモータ端子73の当接部77に当接している。
【0028】
コンポーネントキャリア50の凹部53の孔56にボルト57が挿入される。ボルト57とナット71との間に基板用端子51とモータ端子73とが挟まれた状態で、ボルト57はホルダ70のナット受部72に保持されたナット71と螺合する。これにより、基板用端子51とモータ端子73とが電気的および機械的に接続し、スイッチング素子16〜21からモータ部2の巻線95へ電流が供給される。
本実施形態において、ナット71が特許請求の範囲に記載の「第1接続手段」に相当し、ボルト57が特許請求の範囲に記載の「第2接続手段」に相当する。
【0029】
外カバー60は、樹脂又は金属から有底筒状に形成され、コンポーネントキャリア50などをモータ部2と反対側から覆っている。図8に示すように、外カバー60に設けられた孔61からスルーボルト62が挿入される。スルーボルト62は、ヒートシンク44の円筒部441を挿通し、モータケース90に設けられためねじ63に螺合する。
本実施形態において、コンポーネントキャリア50と外カバー60とが特許請求の範囲に記載の「ハウジング」に相当する。
下カバー80は、制御基板43のモータ部側に設けられている。下カバー80は、下カバー本体81から垂直に立ちあがる爪部82によってヒートシンク44に取り付けられる。
【0030】
続いてモータ部2について、図3を参照して説明する。
モータ部2は、モータケース90、ステータ91、ロータ92およびシャフト93を有している。
モータケース90は、例えば鉄板をプレス加工して有底筒状に形成され、モータ部2の外郭を形成する。モータケース90は、筒状の周部901と、この周部901の軸方向の一方から径内方向へ延びる底部902とを有している。モータケース90の周部901の他方の側の開口をフレームエンド94が塞いでいる。
モータケース90の周部901の内壁にステータ91が固定されている。ステータ91は、積層鋼板から形成され、突極及び図示しないスロットを周方向に交互に有している。ステータ91のスロットに巻線95が収容されている。巻線95は突極に巻回される。巻線95は、2系統の三相巻線を形成している。巻線95から取り出された取出線951はコントロールユニット側へ延び、モータ端子73と接続している。
【0031】
ロータ92は、積層鋼板から形成され、ステータ91の径内側でステータ91に対し相対回転可能に設けられている。ロータ92には、ロータコアの径外側に異種の磁極が周方向に交互に形成されている。ロータ92の回転中心に形成された軸孔にシャフト93が固定されている。シャフト93は、軸方向の一端がモータケース90の底部902に設けられた軸受97に取り付けられ、他端がフレームエンド94に設けられた軸受98に取り付けられている。これにより、シャフト93は、モータケース90及びフレームエンド94に回転可能に支持される。シャフト93の制御基板43側の端部には、ロータ92の回転角を検出するための磁石99が設けられている。
スイッチング素子16〜21からステータ91の巻線95に通電されると、回転磁界が形成され、ロータ92及びシャフト93はステータ91及びモータケース90に対して正逆回転する。そして、シャフト93のフレームエンド側の出力端100からステアリングシャフト5の減速ギヤ6に駆動力が出力される。
【0032】
次に、駆動装置1の製造方法について、図5〜図8を参照して説明する
まず、ヒートシンク44に、パワーモジュール40、41、電子部品の実装されたパワー基板42、制御基板43、コンポーネントキャリア50、コネクタ49および下カバー80を取り付ける。このとき、コンポーネントキャリア50にモールドされた基板用端子51とパワー基板42の配線とを溶接または半田により接続する。
次に、ヒートシンク44にパワー基板42、制御基板43、コンポーネントキャリア50、コネクタ49および下カバー80が組み付けられたものに、外カバー60を被せる。
【0033】
一方、モータ端子73とナット71を取り付けたホルダ70をモータケース90に設置する。そして、ステータ91の巻線95から取り出された取出線951とモータ端子73の挟部76とを接続する。
続いて、図8に示すように、コントロールユニット3とモータ部2とを接続する。このとき、モータケース90に設置されたホルダ70をコンポーネントキャリア50のホルダ保持部52の内側に挿入する。具体的に、ホルダ70の凸条部75をホルダ保持部52の凹条部55にスライドさせる。これにより、基板用端子51とモータ端子73の当接部77とが当接する。
次に、コンポーネントキャリア50の凹部53の孔56からボルト57を差し込み、そのボルト57をホルダ70に取り付けられたナット71に螺合する。ボルト57を回転させることでナット71が凹部53側へ移動し、基板用端子51とモータ端子73とが機械的および電気的に接続される。
次に、コンポーネントキャリア50の凹部53に対応する位置に設けられた外カバー60の開口66に蓋部材64を取り付ける。蓋部材64は例えばゴムキャップである。
【0034】
続いて、外カバー60に設けられた孔61からスルーボルト62を挿入し、外カバー60とヒートシンク44とをモータケース90に固定する。スルーボルト62は、ヒートシンク44の円筒部441を通り、モータケース90に設けられためねじ63に固定される。
これにより、駆動装置1が完成する。
【0035】
次に、コントロールユニット3とモータ部2との分解方法を説明する。
まず、外カバー60から蓋部材64を取り外す。
次に、コンポーネントキャリア50の凹部53にドライバなどの工具を差し込み、ボルト57を取り外す。これにより、基板用端子51とモータ端子73との接続が外れる。
続いて、スルーボルト62を取り外す。これにより、コントロールユニット3とモータ部2とを分離することが可能になる。
【0036】
本実施形態では、以下の作用効果を奏する。
本実施形態では、コンポーネントキャリア50の凹部53の内側に設けられたボルト57の着脱により、基板用端子51とモータ端子73とを接続または離脱することが可能である。このとき、外カバー60からパワー基板42、制御基板43、基板用端子51およびモータ端子73が露出することが防がれる。したがって、モータ部2とコントロールユニット3との分解および組み付け時に、基板用端子51とモータ端子73とを接続または離脱する際、パワー基板42および制御基板43に設けられた電子回路に異物が混入することを防ぐことができる。また、基板用端子51とモータ端子73とを着脱する工具によって電子回路が破損することを防ぐことができる。また、作業者の手から基板用端子51またはモータ端子73を通じて電子回路に静電気が流れることによって電子回路が破損することを防ぐことができる。
【0037】
本実施形態では、基板用端子51とモータ端子73とを接続するボルト57が凹部53に収容される。そして凹部53に対応する位置に設けられた外カバー60の開口66を蓋部材64が塞ぐ。これにより、ボルト57から基板用端子51を経由して電子回路に電流が流れることを防ぐことができる。
本実施形態では、基板用端子51がコンポーネントキャリア50に固定され、かつ、モータ端子73とナット71とがホルダ70に位置決めされる。これにより、凹部53からコンポーネントキャリア50の内側にボルト57を挿し込み、コンポーネントキャリア50の内側でボルト57とナット71を容易に接続または離脱することができる。
【0038】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態による駆動装置を図9に示す。第2実施形態において、上述した第1実施形態と実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。第2実施形態では、コンポーネントキャリア50および外カバー60は、基板用端子51、モータ端子73およびホルダ70を覆うことなく、パワー基板42、制御基板43およびパワーモジュール40、41などを覆っている。なお、コンポーネントキャリア50の外側に側部カバー60が取り付けられている。
第2実施形態においても、コンポーネントキャリア50と外カバー60とが特許請求の範囲に記載の「ハウジング」に相当する。
ボルト57は、コンポーネントキャリア50の外側でナット71に螺合し、基板用端子51およびモータ端子73を電気的および機械的に接続している。
第2実施形態では、モータ部2とコントロールユニット3との分解および組み付け時に、側部カバー67のみを取り外した状態で、基板用端子51とモータ端子73とを接続または離脱することが可能である。この場合、コンポーネントキャリア50および外カバー60から、パワー基板42の電子回路、制御基板43の電子回路、及びパワーモジュール40、41が露出することを防ぐことができる。
【0039】
(他の実施形態)
上述した実施形態では、コンポーネントキャリアと外カバーとを別体で形成した。これに対し、他の実施形態では、コンポーネントキャリアと外カバーとは一体で形成してもよい。
上述した実施形態では、ホルダにナットを埋め込み、コンポーネントキャリアの凹部からボルトを取り付けた。これに対し、他の実施形態では、ホルダにボルトを埋め込み、コンポーネントキャリアの凹部にナットを取り付けてもよい。この場合、ボルトが特許請求の範囲に記載の「第1接続手段」に相当し、ナットが特許請求の範囲に記載の「第2接続手段」に相当する。
このように、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 ・・・駆動装置
2 ・・・モータ部
3 ・・・コントロールユニット
16〜21・・・スイッチング素子(駆動素子)
42 ・・・パワー基板(回路基板)
43 ・・・制御基板(回路基板)
44 ・・・ヒートシンク
50 ・・・コンポーネントキャリア(ハウジング)
51 ・・・基板用端子
52 ・・・ホルダ保持部
53 ・・・凹部
54 ・・・固定部
56 ・・・孔
57 ・・・ボルト(第2接続手段)
60 ・・・外カバー(ハウジング)
64 ・・・蓋部材
70 ・・・ホルダ
71 ・・・ナット(第1接続手段)
73 ・・・モータ端子
90 ・・・モータケース
91 ・・・ステータ
92 ・・・ロータ
95 ・・・巻線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外郭を形成する筒状のモータケース、このモータケースの径内側に設けられ複数相を構成する巻線が巻回されたステータ、および前記ステータの径内側で前記ステータに対し相対回転可能に設けられたロータを有するモータ部と、
前記ステータの巻線に電力を供給する駆動素子、この駆動素子と電気的に接続する電子回路を有する回路基板、および前記回路基板を覆うことで前記電子回路を保護するハウジングを有し、前記モータケースの軸方向の一方に着脱可能に設けられたコントロールユニットと、
前記回路基板の前記電子回路に電気的に接続する基板用端子と、
前記ステータに巻回された前記巻線に電気的に接続され、前記基板用端子側へ延びるモータ端子と、
前記ハウジングが前記回路基板を覆った状態で前記基板用端子と前記モータ端子とを前記ハウジングの外側または内側で接続または離脱することの可能な接続手段と、を備えることを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の駆動装置において、前記モータ端子を保持するホルダを備え、
前記接続手段は、ボルトおよびナットの一方からなる第1接続手段と、前記ボルトおよび前記ナットの他方からなる第2接続手段とから構成され、
前記第1接続手段は、前記モータ端子とともに前記ホルダに保持され、
前記第2接続手段が、前記基板用端子および前記モータ端子を挟んで前記第1接続手段に螺合することで、前記基板用端子と前記モータ端子とが接続されることを特徴とする駆動装置。
【請求項3】
前記ハウジングは、前記回路基板、前記駆動素子、前記基板用端子、前記モータ端子および前記ホルダを覆うものであり、
前記第2接続手段は、前記ハウジング前記が回路基板、前記駆動素子、前記基板用端子、前記モータ端子および前記ホルダを覆った状態で、前記ハウジングの外側から挿入され、前記ハウジングの内側で前記ホルダに保持された前記第1接続手段に螺合することを特徴とする請求項1または2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記ハウジングは、前記ホルダを保持するホルダ保持部を有するコンポーネントキャリアと、そのコンポーネントキャリアの外側を覆う外カバーとから構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記コンポーネントキャリアは、外気側から前記ホルダ側に凹む凹部を有し、
前記コンポーネントキャリアの前記凹部の底には前記コンポーネントキャリアの内側と外側を通じる孔が設けられ、
前記第2接続手段は、前記凹部の底の前記孔から挿入され、前記コンポーネントキャリアの内側で前記第1接続手段に螺合することを特徴とする請求項4に記載の駆動装置。
【請求項6】
請求項5に記載の駆動装置において、
前記コンポーネントキャリアの前記凹部に対応する位置に設けられた前記外カバーの開口を塞ぐ蓋部材を備えることを特徴とする駆動装置。
【請求項7】
前記コンポーネントキャリアは、前記基板用端子を固定する固定部を有し、
前記固定部と前記ホルダ保持部とは一体に形成されることを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記ハウジングは、前記基板用端子、前記モータ端子および前記ホルダを覆うことなく、前記回路基板および前記駆動素子を覆うものであり、
前記第2接続手段は、前記ハウジングが前記回路基板および前記駆動素子を覆った状態で、前記ハウジングの外側で前記第1接続手段に螺合することを特徴とする請求項1または2に記載の駆動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−90472(P2013−90472A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229651(P2011−229651)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】