高圧放電灯点灯装置、プロジェクタ及び高圧放電灯の始動方法
【課題】高圧放電灯の始動において、アーク放電移行時のアークの広がりによる黒化現象を防止する。
【解決手段】交流出力回路(30)及びイグナイタ回路(40)を備えた高圧放電灯点灯装置において、交流出力回路が駆動周波数を出力する制御部(35、60)及び共振電圧を出力する共振回路(36−37)を備え、イグナイタ回路が、共振電圧を増幅するn倍電圧回路(41−46)、n倍電圧回路の出力電圧が印加される放電ギャップ(48)、1次巻線が放電ギャップに直列接続され2次巻線が高圧放電灯に直列接続されたパルストランス(47)、及び放電ギャップのブレークダウン及び高圧放電灯の放電開始を検知する電圧検知回路(49)を備え、制御部が、駆動周波数を第1の周波数(fs)から降下させ、ブレークダウンが検出されずに放電開始が検出された場合、駆動周波数を第2の周波数(fa)まで下げてから第3の周波数(fh´)に上げて維持するように構成される。
【解決手段】交流出力回路(30)及びイグナイタ回路(40)を備えた高圧放電灯点灯装置において、交流出力回路が駆動周波数を出力する制御部(35、60)及び共振電圧を出力する共振回路(36−37)を備え、イグナイタ回路が、共振電圧を増幅するn倍電圧回路(41−46)、n倍電圧回路の出力電圧が印加される放電ギャップ(48)、1次巻線が放電ギャップに直列接続され2次巻線が高圧放電灯に直列接続されたパルストランス(47)、及び放電ギャップのブレークダウン及び高圧放電灯の放電開始を検知する電圧検知回路(49)を備え、制御部が、駆動周波数を第1の周波数(fs)から降下させ、ブレークダウンが検出されずに放電開始が検出された場合、駆動周波数を第2の周波数(fa)まで下げてから第3の周波数(fh´)に上げて維持するように構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概略として高圧放電灯点灯装置に関し、具体的には高圧放電灯の始動動作に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は一般的な高圧放電灯点灯装置の図である。高圧放電灯点灯装置は降圧チョッパ回路20、フルブリッジ回路30及びイグナイタ回路40で構成され、これらを組合せた動作により高圧放電灯(以下、「ランプ」という)50を高周波始動又は矩形波始動させ、その後、低周波矩形波で安定に点灯させる。
【0003】
図1の回路の動作を説明する。降圧チョッパ回路20を構成するPWM制御回路28の制御において、抵抗26によってランプ電圧に比例したランプ電圧信号が検出され、抵抗27によってランプ電流に比例したランプ電流信号が検出される。ランプ電流信号とランプ電圧信号を乗算器にて乗算した電圧信号またはマイコンにて演算した電圧信号と、ランプ50の定格ランプ電圧時に定格ランプ電力で点灯できるように予め設定した基準電圧とが誤差増幅器にて比較され、ランプ電流信号とランプ電圧信号を乗算した電圧信号またはマイコンにて演算した電圧信号が一定となるようにトランジスタ21のデューティ比がパルス幅制御される。これによってランプ50が所望の電力で点灯される。
【0004】
次に、フルブリッジ回路30において、トランジスタ31及び34とトランジスタ32及び33がブリッジ制御回路35から出力される駆動周波数で交互に導通・非導通される。これにより、降圧チョッパ回路20の直流出力が交流電流に変換され、ランプ50に供給される。
ここでランプ50を高周波始動する場合、駆動周波数が数十kHzまで高められると、トランジスタ31及び34とトランジスタ32及び33の中点に接続されたチョークコイル36とコンデンサ37の直列共振回路(以下、「共振回路36−37」という)が共振し、これにより、チョークコイル36のインダクタンスとコンデンサ37の容量で決まる共振周波数(図3のf0参照)とブリッジ制御回路35の駆動周波数で決まる正弦波の共振電圧がチョークコイル36及びコンデンサ37端にそれぞれ発生する。この高周波の共振電圧はコンデンサ37に並列に接続されているランプ50の両端にも印加される。
【0005】
PWM制御回路28の動作とブリッジ制御回路35の動作はマイコン等の制御手段(CPU)60によって連動される。即ち、降圧チョッパ回路20及びフルブリッジ回路30で電力供給手段が構成され、それがCPU60によって制御される。なお、フルブリッジ回路30の駆動周波数について、CPU60が駆動周波数を決定し、ブリッジ制御回路35はドライバとして動作するが、その役割分担は適宜定められる。
【0006】
次に、ランプ50を始動させるためのイグナイタ回路40の動作を説明する。前述したように、イグナイタ回路40は、ブリッジ回路30が数十kHzの高周波で動作しているときにコンデンサ37端に発生する高周波の正弦波電圧を受ける。チョークコイル36とコンデンサ37の接続点側がプラス電位のときにダイオード41、抵抗43、コンデンサ45の向きに電流が流れコンデンサ45が充電され、極性が反転し、チョークコイル36とコンデンサ37の接続点がマイナス電位のときはコンデンサ46、抵抗44、ダイオード42の向きに電流が流れコンデンサ46が充電される。この動作を繰り返すことにより、コンデンサ45とコンデンサ46の直列回路端の電位は徐々に上昇していく。一般的にはコンデンサ37端に発生する電圧は共振回路36−37の共振周波数に対するフルブリッジ回路30の駆動周波数によって決まる。その周波数特性を図3に示す。通常、ランプを点灯する際に基本共振周波数の5分の1の周波数(図3におけるf0)付近の周波数特性が用いられる(例えば、特許文献1)。
【0007】
コンデンサ45とコンデンサ46の電位差が所定値を超えると放電ギャップ48がブレークダウンする。放電ギャップ48のブレークダウンによってパルストランス47の一次巻線に上記の電位差が印加される。パルストランス47の二次巻線には、一次巻線に印加された電圧に対して昇圧比に応じたパルス電圧が発生し、パルス電圧がフルブリッジ回路30の出力電圧に重畳される。このパルス電圧によりランプ50の電極間が絶縁破壊され、放電が開始される。
【0008】
電圧検知回路49はコンデンサ45又はコンデンサ46の電圧を検出することによって放電ギャップ48のブレークダウン及びランプ50の放電開始を検出できる。
放電ギャップ48がブレークダウンしてパルス電圧が発生してもランプ50が点灯しなかった場合(パルス電圧が継続している場合)、コンデンサ45及び46は充放電を繰り返すことになる。即ち、放電ギャップ48はブレークダウンを繰り返すことになり、その両端電圧も図2(a)に示すように変動を繰り返す。
一方、ランプ50が点灯した場合、電流はコンデンサ37よりもインピーダンスの低いランプ50に通電されることになり、もはや高い共振電圧は発生しない。そのため、コンデンサ45、46の電位は上昇せず、図2(b)のように放電ギャップ48の両端電圧も上昇しなくなる。
このように、電圧検知回路49は、放電ギャップ48の両端電圧が大きく変動することを検出することによって放電ギャップ48がブレークダウンしていることを検出し、一定期間電圧が上昇しないことを検出することによってランプ50が点灯したことを検出することができる。
【0009】
図2(a)は通常の始動動作におけるシーケンスを示す。フルブリッジ回路30の駆動周波数は、例えばスタート周波数fs(図3参照)で開始され、その後共振周波数f0に向かう方向に、最低周波数faを限度として下げられる。これにより、共振電圧は図3の周波数特性に応じて曲線的に上昇していく。例えば、周波数fh(電圧Vh)で放電ギャップ48がブレークダウンしたことが電圧検知回路49で検出されると、CPU60によってフルブリッジ回路30の駆動周波数が上記fhに固定され、図2(a)に示すように、一定間隔のパルス電圧が継続して発生することになる。このパルス電圧によってランプの点灯が開始される。
まとめると、ブリッジ制御回路35による駆動周波数はfsからfaを限度として降下され、電圧検知回路49によって放電ギャップ48のブレークダウンが検出されると、その時点での駆動周波数fhに一定期間固定される。
【0010】
ここで、図4に液晶プロジェクタ用光源装置に用いられる放電灯の発光管の一例を示す。電極3の根元側に放熱コイル4が形成される。電極3の根元3a側のコイルエンド4aから放電管5の内壁5aまでの距離Lが大きいと、封止部6に埋設された電極3の根元3a周辺が温まらずに水銀の蒸発が遅れるために始動立ち上がり時間がかかり、プロジェクタ装置の電源投入後(放電開始後)から画面が所定の明るさに達するまでの所要時間が長引いてしまう。そのため、距離Lは1mm以下に設計されている。
【0011】
上記発光管内の現象を以下に説明する。
アーク放電時の高周波ランプ電流値は、フルブリッジ回路30からの矩形波高周波電圧を受け、下記式のように、チョークコイル36及びパルストランス47のインダクタンス値と駆動周波数により決まる値に限流される。
I(高周波ランプ電流)=(Vc(矩形波高周波電圧)−VI(ランプ電圧))/(2π*f(フルブリッジ駆動周波数)*(Lh(チョークコイル36にインダクタンス)+Lp(パルストランス47のインダクタンス)))
なお、図3に示す破線のカーブはアーク放電開始以降後の共振カーブを示す。即ち、駆動周波数fhはアーク放電開始前の共振電圧の発生にも、アーク放電開始後のアーク放電にも有用な周波数である。
【0012】
液晶プロジェクタ等に使用される放電灯は一般的に空冷条件下で使用される。また、一方の電極が反射鏡のネック側に、他方が開口部側に取り付けられるため、両電極近傍の熱容量が異なり、かつ空冷の受け方も異なるので、ランプ消灯時の電極近傍の温度の下がり方に差が生じる。そして、図5Aに示すように、温度が早く低下する側の電極Cの近傍に、蒸発していた水銀が偏って液化し付着することになる。
【0013】
図5Aの状態で電極間にパルス電圧が印加され、絶縁破壊が起こるとグロー放電が開始される。このグロー放電は電極Cに偏っていた水銀の影響を受ける。具体的には、熱容量の小さい方、すなわち水銀のない側の電極Hが先に加熱されていく。特に、図5Bに示すように、電極Hの外側コイルのエッジのように熱容量の小さい部分が先に温度が上昇し、その部分が充分加熱されると、その点をスポットとして熱電子放射であるアーク放電が開始される。
【0014】
アーク放電が開始されても、電極Hが陰極となる方向で半波でしか電流は流れないが、半波のアーク放電を持続させることにより、電極Cの水銀も徐々に蒸発していく。その後、両電極の温度が上昇し、非対称ながらも全波で電流が流れ始め、十分温度が上昇すると対称な全波ランプ電流が形成される。
そして、対称な高周波ランプ電流となった後に、50〜400Hzの低周波の矩形波電流での点灯へ移行させることにより、その時点での立ち消えや電極への必要以上のスパッタを防止することが可能となる。
【0015】
通常設計では、放電ギャップがミニマム電圧でブレークダウンした時の駆動周波数で決まる高周波ランプ電流での点灯を継続し、高周波ランプ電流が非対称な状態から対称な状態になるまで3〜5秒間程度を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2004−127656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ところで、水銀の電極への付着状態によっては絶縁破壊が起こり易くなり、放電ギャップ48がブレークダウンする前にランプ50が放電開始してしまうことがある(即ち、パルス電圧が印加される前に共振電圧のみで絶縁破壊が起こる)。
この場合に、図2(a)と同じ処理フローを適用すると図2(b)のようなシーケンスが得られる。即ち、フルブリッジ回路30の駆動周波数はfsから降下され、電圧検出回路49はブレークダウンを検出しないので駆動周波数は予め設定された最低駆動周波数fa(fa<f0)にまで降下され、その後、周波数faに固定される。駆動周波数が周波数faで固定されると、上記の式に示すように高周波ランプ電流は増加する。
【0018】
このときのランプ電流の変化を図9に示す。期間Aでグロー放電が継続し、期間Aの終了時にアーク放電に移行するが期間Bでは上述のように半波放電状態が継続し、期間Cにおいて半波放電から全波放電に移行し、期間Dで全波放電が継続された後に期間Eで低周波点灯に移行する。
【0019】
期間Bの増加したランプ電流によって(特に破線部分Xの電流によって)アークが瞬間的に広がる。距離Lを1mm以下としたランプでは、図5Cに示すようにアークスポットが放電管5の内壁5aに近い場合には、広がったアークが内壁5aに接触することがある。この接触により電極構成材料であるタングステンが内壁に付着して黒化現象が起こることがある。この黒化によって早期に照度低下が生じ、黒化が激しい場合には内壁への熱的な負荷が増大して放電管が破損し、ランプ寿命が短縮してしまうという問題があった。
【0020】
上記問題を回避するために、共振周波数f0の3分の1の周波数f3h(f3>f5)を用いて上記図2(a)と同じシーケンスで高周波点灯させれば、図10(期間B)に示すようにアーク放電移行後のピーク電流を低減することができる。即ち、図3において、アーク放電移行前の実線の共振カーブにおいてはfhと同等の共振電圧が得られるが、アーク放電移行後の破線の共振カーブにおいてはfhよりも少ない電流を流すことができる。これにより、アーク放電移行時の半波放電におけるアークの広がりがあっても、アークが内壁5aに接触しないようにすることができる。しかし、このようにアーク放電移行後の電流値を全体的に下げた場合、電極への予熱が不充分となり得る。つまり、半波点灯時に陽極側となっていた電極の温度が上昇せず、その状態から低周波矩形波点灯に移行した際に、図10の破線Yの部分でアーク放電を行えずに必要以上にスパッタを起こしたり、立ち消えを起したりする場合がある。
【0021】
また、上記において、アーク放電移行後の期間(図10の期間B)を長くして予熱不足を補うことも検討される。しかし、再始動(発光管が冷えていない段階での始動)させた時、点灯当初から発光管内の圧力が高いため、発光管内に圧力の高い部分と低い部分の定在波が成長し、期間Bにおいて音響的共鳴現象によるチラツキや立ち消えの原因となってしまう場合がある。
【0022】
そこで、放電ギャップ48がブレークダウンする前にランプ50が放電開始した場合に、アーク放電移行時のアークの広がりによる黒化現象を効果的に防止することが課題となる。また、この課題解決を一般的な点灯装置の回路構成を変更せずに制御の変更により行なうのがコスト、汎用性等の観点から好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の第1の側面は、高圧放電灯に交流電圧を印加する交流出力回路(30)及び交流電圧にパルス電圧を重畳するイグナイタ回路(40)を備えた高圧放電灯点灯装置であって、交流出力回路が交流電圧の駆動周波数を出力する制御部(35、60)及び交流電圧を共振させて共振電圧を出力する共振回路(36、37)を備え、イグナイタ回路が、共振電圧を増幅するn倍電圧回路(41−46)、n倍電圧回路の出力電圧が印加される放電ギャップ(48)、1次巻線が放電ギャップに直列接続され2次巻線が高圧放電灯に直列接続されたパルストランス(47)、及び放電ギャップのブレークダウンの有無及び高圧放電灯の放電開始の有無を検知する電圧検知回路(49)を備え、制御部が、駆動周波数を第1の周波数(fs)から降下させ、電圧検知回路においてブレークダウンが検出されずに放電開始が検出された場合、駆動周波数を第2の周波数(fa)まで下げてから第2の周波数よりも高い第3の周波数(fh´)に上げて維持するように構成された高圧放電灯点灯装置である。
さらに、電圧検知回路においてブレークダウンが検出された場合、制御部が駆動周波数を、ブレークダウンが検出された時点の周波数(fh)に維持するように構成することもできる。
【0024】
本発明の第2の側面は、上記の高圧放電灯点灯装置(71)、高圧放電灯(50)、高圧放電灯が取り付けられるリフレクタ(72)、並びに高圧放電灯点灯装置及びリフレクタを内包する筐体(73)を備えたプロジェクタである。
【0025】
本発明の第3の側面は、交流電圧を出力する交流出力回路(30)及び交流電圧にパルス電圧を重畳するイグナイタ回路(40)を用いた高圧放電灯の始動方法であって、交流出力回路が交流電圧の駆動周波数を制御する制御部(35、60)及び交流電圧を共振させて共振電圧を出力する共振回路(36、37)を備え、イグナイタ回路が共振電圧を増幅するn倍電圧回路(41−46)、n倍電圧回路の出力電圧が印加される放電ギャップ(48)、1次巻線が放電ギャップに直列接続され2次巻線が高圧放電灯に直列接続されたパルストランス(47)、及び放電ギャップのブレークダウンの有無及び高圧放電灯の放電開始の有無を検知する電圧検知回路(49)を備え、(A)制御部が駆動周波数を第1の周波数(fs)から降下させるステップ、及び(B)電圧検知回路においてブレークダウンが検出されずに放電開始が検出された場合、制御部が駆動周波数を第2の周波数(fa)まで下げてから第2の周波数よりも高い第3の周波数(fh´)に上げて維持するステップからなる始動方法である。
さらに、(C)電圧検知回路においてブレークダウンが検出された場合、制御部が駆動周波数を、ブレークダウンが検出された時点の周波数(fh)に維持するステップを備えることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】一般的な高圧放電灯点灯装置の図である。
【図2】従来及び本発明のランプ始動動作を説明する図である。
【図3】共振回路の周波数特性を説明する図である。
【図4】ランプの構成を説明する図である。
【図5A】ランプ始動時の発光管内の現象を説明する図である。
【図5B】ランプ始動時の発光管内の現象を説明する図である。
【図5C】ランプ始動時の発光管内の現象を説明する図である。
【図6】本発明の始動動作を説明する図である。
【図7】本発明の光源装置を示す図である。
【図8】本発明のランプ始動方法を示すフローチャートである。
【図9】従来のランプ始動動作を説明する図である。
【図10】従来のランプ始動動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の高圧放電灯点灯装置の回路構成(ハード)は図1と同様である。即ち、本発明は一般的な回路構成においてその制御(ソフト)を工夫している。また、図2(a)のシーケンス、即ち、ランプ50の放電開始の前に放電ギャップ48のブレークダウンが起こる通常の場合のシーケンスは従来例と同様である。即ち、放電ギャップ48のブレークダウンが起こったことが電圧検知回路49によって検出された場合には、制御部によって駆動周波数がその時点の周波数fhに維持される。
【0028】
一方、放電ギャップ48のブレークダウンの前にランプ50の放電開始が起こった場合の制御が従来例とは異なる。
図2(c)に、放電ギャップ48のブレークダウンの前にランプ50の放電開始が起こった場合の本発明のシーケンスを示す。図2(a)及び(c)いずれの場合も、まず、CPU60及びブリッジ制御回路35(以下、まとめて「制御部」という)によって、駆動周波数が図3の実線の共振カーブにおいてスタート周波数fsから下げられる。
【0029】
一方、ブレークダウンより前に放電開始が起こったことが検出された場合には、制御部によって駆動周波数が最低周波数faまで下げられ、最低周波数faに達した瞬間に周波数fh´に戻され、所定の期間その周波数fh´が維持される。なお、図2(a)における周波数fhと図2(c)における周波数fh´とは近い周波数とはなるが(同一の周波数ともなり得るが)、周波数fh´は予め設定された値であるのに対して周波数fhは検出される周波数であるため、両者は必ずしも同一の周波数になるとは限らない。
【0030】
図2(c)に対応するランプ電流の変化を図6に示す。図6に示すように、期間Aでグロー放電が行われる。この間も駆動周波数は降下している。期間Aから期間Bにかけてグロー放電からアーク放電に移行する。期間Aではアークは未だ半波状態である。期間Aの始めにおいては、駆動周波数の低下とともに電流値が上昇していくが、駆動周波数は最低周波数faとなった瞬間にアーク放電用の周波数fh´に上げられてそこに維持される。期間Cにおいて、アークは半波状態から全波状態に移行する。期間Dにおいて全波での放電が継続した後に期間Eで低周波矩形波点灯に移行する。
【0031】
このように、グロー放電からアーク放電に移行した後に駆動周波数faでの半波放電が継続されないので、アークの広がりに起因する黒化を防止することができる。また、アーク放電として適切な周波数fh´(≒fh)が維持されるので予熱も十分行なうことができ、低周波点灯移行時の過度のスパッタや立ち消えを防止することができる。さらに、高周波点灯期間Bを長く設ける必要がないので音響共鳴現象の発生も回避できる。しかも、一般的な点灯回路のハード部分を変更せずにソフト的な変更のみで上記効果を達成できるので、本発明は従来技術と同等のコストで実施することができ、汎用性にも優れる。
【0032】
図7は本発明の高圧放電灯点灯装置を用いたアプリケーションとしてのプロジェクタを示す。図7において、71は上記で説明した実施例の高圧放電灯点灯装置、72は高圧放電灯50が取り付けられるリフレクタ、73は高圧放電灯点灯装置71、高圧放電灯50及びリフレクタ72を内蔵する筐体である。なお、図は実施例を模擬的に図示したものであり、寸法、配置などは図面通りではない。そして、図示されない映像系の部材等を筐体73内に適宜配置してプロジェクタが構成される。
これにより、ランプ始動性が良くかつランプの寿命が長く信頼性の高いプロジェクタを得ることができる。
【0033】
図8に本発明の高圧放電灯点灯装置における始動方法のフローチャートを示す。
ステップS10において、制御部が駆動周波数をスタート周波数fsとする。
ステップS15において、制御部が駆動周波数を降下させる。
ステップS20において、電圧検知回路49によって放電ギャップ48のブレークダウンの有無が判断され、ブレークダウンがあればステップS25に進み、なければステップS30に進む。
ステップS25において、ブレークダウンを検出した時点の駆動周波数fhが維持される。
ステップS30において、電圧検知回路49によってランプ50の放電開始の有無が判断され、放電開始がなければステップS15に戻り、放電開始があればステップS35に進む。なお、ステップS15において駆動周波数が最低周波数faに達してしまった場合には保護動作を行なうようにしてもよい。
【0034】
ステップS35において、制御部が駆動周波数を降下させる。
ステップS40において、制御部において駆動周波数が最低周波数faに到達したか否かを判断し、到達していなければステップS35に戻り、到達していればステップS45に進む。
ステップS45において、制御部が駆動周波数をアーク放電用の周波数fh´(fa<fh´)に上昇させ、一定期間周波数fh´を維持する。
ステップS50において、定常点灯用の低周波点灯に移行する。なお、音響共鳴現象さえ回避できるのであればそのまま高周波点灯を継続して定常点灯を行なってもよい。
以上により、本発明の始動方法が達成される。
【0035】
上記実施例では最も好適な例を示したが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で以下のように変形可能である。
(1)イグナイタ回路40においては倍電圧回路(41−46)を示したが、これを周知のn倍電圧回路として、共振回路36−37の出力電圧をn倍して放電ギャップ48に印加する構成としてもよい。
(2)実施例ではランプ50の放電開始有無の判断をイグナイタ回路40の電圧検知回路49を用いて行なっているが、降圧チョッパ回路20の抵抗27に流れる電流(即ち、ランプ電流)を点Bの電圧によって検出して判断するようにしてもよい。但し、例えば図6の期間Aのような微小電流の有無を検出するよりも、図2(a)のギャップ端電圧のような大きな変動を検出する方が、誤検出が起こり難く好ましい。
【符号の説明】
【0036】
10:直流電源
20:チョッパ回路
30:フルブリッジ回路
31、32、33、34:トランジスタ
35:ブリッジ制御回路
36:チョークコイル
37:コンデンサ
40:イグナイタ回路
41、42:ダイオード
43、44:抵抗
45、46:コンデンサ
47:パルストランス
48:放電ギャップ
49:電圧検知回路
50:高圧放電灯(ランプ)
60:制御手段(CPU)
71:高圧放電灯点灯装置
72:リフレクタ
73:筐体
【技術分野】
【0001】
本発明は概略として高圧放電灯点灯装置に関し、具体的には高圧放電灯の始動動作に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は一般的な高圧放電灯点灯装置の図である。高圧放電灯点灯装置は降圧チョッパ回路20、フルブリッジ回路30及びイグナイタ回路40で構成され、これらを組合せた動作により高圧放電灯(以下、「ランプ」という)50を高周波始動又は矩形波始動させ、その後、低周波矩形波で安定に点灯させる。
【0003】
図1の回路の動作を説明する。降圧チョッパ回路20を構成するPWM制御回路28の制御において、抵抗26によってランプ電圧に比例したランプ電圧信号が検出され、抵抗27によってランプ電流に比例したランプ電流信号が検出される。ランプ電流信号とランプ電圧信号を乗算器にて乗算した電圧信号またはマイコンにて演算した電圧信号と、ランプ50の定格ランプ電圧時に定格ランプ電力で点灯できるように予め設定した基準電圧とが誤差増幅器にて比較され、ランプ電流信号とランプ電圧信号を乗算した電圧信号またはマイコンにて演算した電圧信号が一定となるようにトランジスタ21のデューティ比がパルス幅制御される。これによってランプ50が所望の電力で点灯される。
【0004】
次に、フルブリッジ回路30において、トランジスタ31及び34とトランジスタ32及び33がブリッジ制御回路35から出力される駆動周波数で交互に導通・非導通される。これにより、降圧チョッパ回路20の直流出力が交流電流に変換され、ランプ50に供給される。
ここでランプ50を高周波始動する場合、駆動周波数が数十kHzまで高められると、トランジスタ31及び34とトランジスタ32及び33の中点に接続されたチョークコイル36とコンデンサ37の直列共振回路(以下、「共振回路36−37」という)が共振し、これにより、チョークコイル36のインダクタンスとコンデンサ37の容量で決まる共振周波数(図3のf0参照)とブリッジ制御回路35の駆動周波数で決まる正弦波の共振電圧がチョークコイル36及びコンデンサ37端にそれぞれ発生する。この高周波の共振電圧はコンデンサ37に並列に接続されているランプ50の両端にも印加される。
【0005】
PWM制御回路28の動作とブリッジ制御回路35の動作はマイコン等の制御手段(CPU)60によって連動される。即ち、降圧チョッパ回路20及びフルブリッジ回路30で電力供給手段が構成され、それがCPU60によって制御される。なお、フルブリッジ回路30の駆動周波数について、CPU60が駆動周波数を決定し、ブリッジ制御回路35はドライバとして動作するが、その役割分担は適宜定められる。
【0006】
次に、ランプ50を始動させるためのイグナイタ回路40の動作を説明する。前述したように、イグナイタ回路40は、ブリッジ回路30が数十kHzの高周波で動作しているときにコンデンサ37端に発生する高周波の正弦波電圧を受ける。チョークコイル36とコンデンサ37の接続点側がプラス電位のときにダイオード41、抵抗43、コンデンサ45の向きに電流が流れコンデンサ45が充電され、極性が反転し、チョークコイル36とコンデンサ37の接続点がマイナス電位のときはコンデンサ46、抵抗44、ダイオード42の向きに電流が流れコンデンサ46が充電される。この動作を繰り返すことにより、コンデンサ45とコンデンサ46の直列回路端の電位は徐々に上昇していく。一般的にはコンデンサ37端に発生する電圧は共振回路36−37の共振周波数に対するフルブリッジ回路30の駆動周波数によって決まる。その周波数特性を図3に示す。通常、ランプを点灯する際に基本共振周波数の5分の1の周波数(図3におけるf0)付近の周波数特性が用いられる(例えば、特許文献1)。
【0007】
コンデンサ45とコンデンサ46の電位差が所定値を超えると放電ギャップ48がブレークダウンする。放電ギャップ48のブレークダウンによってパルストランス47の一次巻線に上記の電位差が印加される。パルストランス47の二次巻線には、一次巻線に印加された電圧に対して昇圧比に応じたパルス電圧が発生し、パルス電圧がフルブリッジ回路30の出力電圧に重畳される。このパルス電圧によりランプ50の電極間が絶縁破壊され、放電が開始される。
【0008】
電圧検知回路49はコンデンサ45又はコンデンサ46の電圧を検出することによって放電ギャップ48のブレークダウン及びランプ50の放電開始を検出できる。
放電ギャップ48がブレークダウンしてパルス電圧が発生してもランプ50が点灯しなかった場合(パルス電圧が継続している場合)、コンデンサ45及び46は充放電を繰り返すことになる。即ち、放電ギャップ48はブレークダウンを繰り返すことになり、その両端電圧も図2(a)に示すように変動を繰り返す。
一方、ランプ50が点灯した場合、電流はコンデンサ37よりもインピーダンスの低いランプ50に通電されることになり、もはや高い共振電圧は発生しない。そのため、コンデンサ45、46の電位は上昇せず、図2(b)のように放電ギャップ48の両端電圧も上昇しなくなる。
このように、電圧検知回路49は、放電ギャップ48の両端電圧が大きく変動することを検出することによって放電ギャップ48がブレークダウンしていることを検出し、一定期間電圧が上昇しないことを検出することによってランプ50が点灯したことを検出することができる。
【0009】
図2(a)は通常の始動動作におけるシーケンスを示す。フルブリッジ回路30の駆動周波数は、例えばスタート周波数fs(図3参照)で開始され、その後共振周波数f0に向かう方向に、最低周波数faを限度として下げられる。これにより、共振電圧は図3の周波数特性に応じて曲線的に上昇していく。例えば、周波数fh(電圧Vh)で放電ギャップ48がブレークダウンしたことが電圧検知回路49で検出されると、CPU60によってフルブリッジ回路30の駆動周波数が上記fhに固定され、図2(a)に示すように、一定間隔のパルス電圧が継続して発生することになる。このパルス電圧によってランプの点灯が開始される。
まとめると、ブリッジ制御回路35による駆動周波数はfsからfaを限度として降下され、電圧検知回路49によって放電ギャップ48のブレークダウンが検出されると、その時点での駆動周波数fhに一定期間固定される。
【0010】
ここで、図4に液晶プロジェクタ用光源装置に用いられる放電灯の発光管の一例を示す。電極3の根元側に放熱コイル4が形成される。電極3の根元3a側のコイルエンド4aから放電管5の内壁5aまでの距離Lが大きいと、封止部6に埋設された電極3の根元3a周辺が温まらずに水銀の蒸発が遅れるために始動立ち上がり時間がかかり、プロジェクタ装置の電源投入後(放電開始後)から画面が所定の明るさに達するまでの所要時間が長引いてしまう。そのため、距離Lは1mm以下に設計されている。
【0011】
上記発光管内の現象を以下に説明する。
アーク放電時の高周波ランプ電流値は、フルブリッジ回路30からの矩形波高周波電圧を受け、下記式のように、チョークコイル36及びパルストランス47のインダクタンス値と駆動周波数により決まる値に限流される。
I(高周波ランプ電流)=(Vc(矩形波高周波電圧)−VI(ランプ電圧))/(2π*f(フルブリッジ駆動周波数)*(Lh(チョークコイル36にインダクタンス)+Lp(パルストランス47のインダクタンス)))
なお、図3に示す破線のカーブはアーク放電開始以降後の共振カーブを示す。即ち、駆動周波数fhはアーク放電開始前の共振電圧の発生にも、アーク放電開始後のアーク放電にも有用な周波数である。
【0012】
液晶プロジェクタ等に使用される放電灯は一般的に空冷条件下で使用される。また、一方の電極が反射鏡のネック側に、他方が開口部側に取り付けられるため、両電極近傍の熱容量が異なり、かつ空冷の受け方も異なるので、ランプ消灯時の電極近傍の温度の下がり方に差が生じる。そして、図5Aに示すように、温度が早く低下する側の電極Cの近傍に、蒸発していた水銀が偏って液化し付着することになる。
【0013】
図5Aの状態で電極間にパルス電圧が印加され、絶縁破壊が起こるとグロー放電が開始される。このグロー放電は電極Cに偏っていた水銀の影響を受ける。具体的には、熱容量の小さい方、すなわち水銀のない側の電極Hが先に加熱されていく。特に、図5Bに示すように、電極Hの外側コイルのエッジのように熱容量の小さい部分が先に温度が上昇し、その部分が充分加熱されると、その点をスポットとして熱電子放射であるアーク放電が開始される。
【0014】
アーク放電が開始されても、電極Hが陰極となる方向で半波でしか電流は流れないが、半波のアーク放電を持続させることにより、電極Cの水銀も徐々に蒸発していく。その後、両電極の温度が上昇し、非対称ながらも全波で電流が流れ始め、十分温度が上昇すると対称な全波ランプ電流が形成される。
そして、対称な高周波ランプ電流となった後に、50〜400Hzの低周波の矩形波電流での点灯へ移行させることにより、その時点での立ち消えや電極への必要以上のスパッタを防止することが可能となる。
【0015】
通常設計では、放電ギャップがミニマム電圧でブレークダウンした時の駆動周波数で決まる高周波ランプ電流での点灯を継続し、高周波ランプ電流が非対称な状態から対称な状態になるまで3〜5秒間程度を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2004−127656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ところで、水銀の電極への付着状態によっては絶縁破壊が起こり易くなり、放電ギャップ48がブレークダウンする前にランプ50が放電開始してしまうことがある(即ち、パルス電圧が印加される前に共振電圧のみで絶縁破壊が起こる)。
この場合に、図2(a)と同じ処理フローを適用すると図2(b)のようなシーケンスが得られる。即ち、フルブリッジ回路30の駆動周波数はfsから降下され、電圧検出回路49はブレークダウンを検出しないので駆動周波数は予め設定された最低駆動周波数fa(fa<f0)にまで降下され、その後、周波数faに固定される。駆動周波数が周波数faで固定されると、上記の式に示すように高周波ランプ電流は増加する。
【0018】
このときのランプ電流の変化を図9に示す。期間Aでグロー放電が継続し、期間Aの終了時にアーク放電に移行するが期間Bでは上述のように半波放電状態が継続し、期間Cにおいて半波放電から全波放電に移行し、期間Dで全波放電が継続された後に期間Eで低周波点灯に移行する。
【0019】
期間Bの増加したランプ電流によって(特に破線部分Xの電流によって)アークが瞬間的に広がる。距離Lを1mm以下としたランプでは、図5Cに示すようにアークスポットが放電管5の内壁5aに近い場合には、広がったアークが内壁5aに接触することがある。この接触により電極構成材料であるタングステンが内壁に付着して黒化現象が起こることがある。この黒化によって早期に照度低下が生じ、黒化が激しい場合には内壁への熱的な負荷が増大して放電管が破損し、ランプ寿命が短縮してしまうという問題があった。
【0020】
上記問題を回避するために、共振周波数f0の3分の1の周波数f3h(f3>f5)を用いて上記図2(a)と同じシーケンスで高周波点灯させれば、図10(期間B)に示すようにアーク放電移行後のピーク電流を低減することができる。即ち、図3において、アーク放電移行前の実線の共振カーブにおいてはfhと同等の共振電圧が得られるが、アーク放電移行後の破線の共振カーブにおいてはfhよりも少ない電流を流すことができる。これにより、アーク放電移行時の半波放電におけるアークの広がりがあっても、アークが内壁5aに接触しないようにすることができる。しかし、このようにアーク放電移行後の電流値を全体的に下げた場合、電極への予熱が不充分となり得る。つまり、半波点灯時に陽極側となっていた電極の温度が上昇せず、その状態から低周波矩形波点灯に移行した際に、図10の破線Yの部分でアーク放電を行えずに必要以上にスパッタを起こしたり、立ち消えを起したりする場合がある。
【0021】
また、上記において、アーク放電移行後の期間(図10の期間B)を長くして予熱不足を補うことも検討される。しかし、再始動(発光管が冷えていない段階での始動)させた時、点灯当初から発光管内の圧力が高いため、発光管内に圧力の高い部分と低い部分の定在波が成長し、期間Bにおいて音響的共鳴現象によるチラツキや立ち消えの原因となってしまう場合がある。
【0022】
そこで、放電ギャップ48がブレークダウンする前にランプ50が放電開始した場合に、アーク放電移行時のアークの広がりによる黒化現象を効果的に防止することが課題となる。また、この課題解決を一般的な点灯装置の回路構成を変更せずに制御の変更により行なうのがコスト、汎用性等の観点から好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の第1の側面は、高圧放電灯に交流電圧を印加する交流出力回路(30)及び交流電圧にパルス電圧を重畳するイグナイタ回路(40)を備えた高圧放電灯点灯装置であって、交流出力回路が交流電圧の駆動周波数を出力する制御部(35、60)及び交流電圧を共振させて共振電圧を出力する共振回路(36、37)を備え、イグナイタ回路が、共振電圧を増幅するn倍電圧回路(41−46)、n倍電圧回路の出力電圧が印加される放電ギャップ(48)、1次巻線が放電ギャップに直列接続され2次巻線が高圧放電灯に直列接続されたパルストランス(47)、及び放電ギャップのブレークダウンの有無及び高圧放電灯の放電開始の有無を検知する電圧検知回路(49)を備え、制御部が、駆動周波数を第1の周波数(fs)から降下させ、電圧検知回路においてブレークダウンが検出されずに放電開始が検出された場合、駆動周波数を第2の周波数(fa)まで下げてから第2の周波数よりも高い第3の周波数(fh´)に上げて維持するように構成された高圧放電灯点灯装置である。
さらに、電圧検知回路においてブレークダウンが検出された場合、制御部が駆動周波数を、ブレークダウンが検出された時点の周波数(fh)に維持するように構成することもできる。
【0024】
本発明の第2の側面は、上記の高圧放電灯点灯装置(71)、高圧放電灯(50)、高圧放電灯が取り付けられるリフレクタ(72)、並びに高圧放電灯点灯装置及びリフレクタを内包する筐体(73)を備えたプロジェクタである。
【0025】
本発明の第3の側面は、交流電圧を出力する交流出力回路(30)及び交流電圧にパルス電圧を重畳するイグナイタ回路(40)を用いた高圧放電灯の始動方法であって、交流出力回路が交流電圧の駆動周波数を制御する制御部(35、60)及び交流電圧を共振させて共振電圧を出力する共振回路(36、37)を備え、イグナイタ回路が共振電圧を増幅するn倍電圧回路(41−46)、n倍電圧回路の出力電圧が印加される放電ギャップ(48)、1次巻線が放電ギャップに直列接続され2次巻線が高圧放電灯に直列接続されたパルストランス(47)、及び放電ギャップのブレークダウンの有無及び高圧放電灯の放電開始の有無を検知する電圧検知回路(49)を備え、(A)制御部が駆動周波数を第1の周波数(fs)から降下させるステップ、及び(B)電圧検知回路においてブレークダウンが検出されずに放電開始が検出された場合、制御部が駆動周波数を第2の周波数(fa)まで下げてから第2の周波数よりも高い第3の周波数(fh´)に上げて維持するステップからなる始動方法である。
さらに、(C)電圧検知回路においてブレークダウンが検出された場合、制御部が駆動周波数を、ブレークダウンが検出された時点の周波数(fh)に維持するステップを備えることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】一般的な高圧放電灯点灯装置の図である。
【図2】従来及び本発明のランプ始動動作を説明する図である。
【図3】共振回路の周波数特性を説明する図である。
【図4】ランプの構成を説明する図である。
【図5A】ランプ始動時の発光管内の現象を説明する図である。
【図5B】ランプ始動時の発光管内の現象を説明する図である。
【図5C】ランプ始動時の発光管内の現象を説明する図である。
【図6】本発明の始動動作を説明する図である。
【図7】本発明の光源装置を示す図である。
【図8】本発明のランプ始動方法を示すフローチャートである。
【図9】従来のランプ始動動作を説明する図である。
【図10】従来のランプ始動動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の高圧放電灯点灯装置の回路構成(ハード)は図1と同様である。即ち、本発明は一般的な回路構成においてその制御(ソフト)を工夫している。また、図2(a)のシーケンス、即ち、ランプ50の放電開始の前に放電ギャップ48のブレークダウンが起こる通常の場合のシーケンスは従来例と同様である。即ち、放電ギャップ48のブレークダウンが起こったことが電圧検知回路49によって検出された場合には、制御部によって駆動周波数がその時点の周波数fhに維持される。
【0028】
一方、放電ギャップ48のブレークダウンの前にランプ50の放電開始が起こった場合の制御が従来例とは異なる。
図2(c)に、放電ギャップ48のブレークダウンの前にランプ50の放電開始が起こった場合の本発明のシーケンスを示す。図2(a)及び(c)いずれの場合も、まず、CPU60及びブリッジ制御回路35(以下、まとめて「制御部」という)によって、駆動周波数が図3の実線の共振カーブにおいてスタート周波数fsから下げられる。
【0029】
一方、ブレークダウンより前に放電開始が起こったことが検出された場合には、制御部によって駆動周波数が最低周波数faまで下げられ、最低周波数faに達した瞬間に周波数fh´に戻され、所定の期間その周波数fh´が維持される。なお、図2(a)における周波数fhと図2(c)における周波数fh´とは近い周波数とはなるが(同一の周波数ともなり得るが)、周波数fh´は予め設定された値であるのに対して周波数fhは検出される周波数であるため、両者は必ずしも同一の周波数になるとは限らない。
【0030】
図2(c)に対応するランプ電流の変化を図6に示す。図6に示すように、期間Aでグロー放電が行われる。この間も駆動周波数は降下している。期間Aから期間Bにかけてグロー放電からアーク放電に移行する。期間Aではアークは未だ半波状態である。期間Aの始めにおいては、駆動周波数の低下とともに電流値が上昇していくが、駆動周波数は最低周波数faとなった瞬間にアーク放電用の周波数fh´に上げられてそこに維持される。期間Cにおいて、アークは半波状態から全波状態に移行する。期間Dにおいて全波での放電が継続した後に期間Eで低周波矩形波点灯に移行する。
【0031】
このように、グロー放電からアーク放電に移行した後に駆動周波数faでの半波放電が継続されないので、アークの広がりに起因する黒化を防止することができる。また、アーク放電として適切な周波数fh´(≒fh)が維持されるので予熱も十分行なうことができ、低周波点灯移行時の過度のスパッタや立ち消えを防止することができる。さらに、高周波点灯期間Bを長く設ける必要がないので音響共鳴現象の発生も回避できる。しかも、一般的な点灯回路のハード部分を変更せずにソフト的な変更のみで上記効果を達成できるので、本発明は従来技術と同等のコストで実施することができ、汎用性にも優れる。
【0032】
図7は本発明の高圧放電灯点灯装置を用いたアプリケーションとしてのプロジェクタを示す。図7において、71は上記で説明した実施例の高圧放電灯点灯装置、72は高圧放電灯50が取り付けられるリフレクタ、73は高圧放電灯点灯装置71、高圧放電灯50及びリフレクタ72を内蔵する筐体である。なお、図は実施例を模擬的に図示したものであり、寸法、配置などは図面通りではない。そして、図示されない映像系の部材等を筐体73内に適宜配置してプロジェクタが構成される。
これにより、ランプ始動性が良くかつランプの寿命が長く信頼性の高いプロジェクタを得ることができる。
【0033】
図8に本発明の高圧放電灯点灯装置における始動方法のフローチャートを示す。
ステップS10において、制御部が駆動周波数をスタート周波数fsとする。
ステップS15において、制御部が駆動周波数を降下させる。
ステップS20において、電圧検知回路49によって放電ギャップ48のブレークダウンの有無が判断され、ブレークダウンがあればステップS25に進み、なければステップS30に進む。
ステップS25において、ブレークダウンを検出した時点の駆動周波数fhが維持される。
ステップS30において、電圧検知回路49によってランプ50の放電開始の有無が判断され、放電開始がなければステップS15に戻り、放電開始があればステップS35に進む。なお、ステップS15において駆動周波数が最低周波数faに達してしまった場合には保護動作を行なうようにしてもよい。
【0034】
ステップS35において、制御部が駆動周波数を降下させる。
ステップS40において、制御部において駆動周波数が最低周波数faに到達したか否かを判断し、到達していなければステップS35に戻り、到達していればステップS45に進む。
ステップS45において、制御部が駆動周波数をアーク放電用の周波数fh´(fa<fh´)に上昇させ、一定期間周波数fh´を維持する。
ステップS50において、定常点灯用の低周波点灯に移行する。なお、音響共鳴現象さえ回避できるのであればそのまま高周波点灯を継続して定常点灯を行なってもよい。
以上により、本発明の始動方法が達成される。
【0035】
上記実施例では最も好適な例を示したが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で以下のように変形可能である。
(1)イグナイタ回路40においては倍電圧回路(41−46)を示したが、これを周知のn倍電圧回路として、共振回路36−37の出力電圧をn倍して放電ギャップ48に印加する構成としてもよい。
(2)実施例ではランプ50の放電開始有無の判断をイグナイタ回路40の電圧検知回路49を用いて行なっているが、降圧チョッパ回路20の抵抗27に流れる電流(即ち、ランプ電流)を点Bの電圧によって検出して判断するようにしてもよい。但し、例えば図6の期間Aのような微小電流の有無を検出するよりも、図2(a)のギャップ端電圧のような大きな変動を検出する方が、誤検出が起こり難く好ましい。
【符号の説明】
【0036】
10:直流電源
20:チョッパ回路
30:フルブリッジ回路
31、32、33、34:トランジスタ
35:ブリッジ制御回路
36:チョークコイル
37:コンデンサ
40:イグナイタ回路
41、42:ダイオード
43、44:抵抗
45、46:コンデンサ
47:パルストランス
48:放電ギャップ
49:電圧検知回路
50:高圧放電灯(ランプ)
60:制御手段(CPU)
71:高圧放電灯点灯装置
72:リフレクタ
73:筐体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧放電灯に交流電圧を印加する交流出力回路(30)及び該交流電圧にパルス電圧を重畳するイグナイタ回路(40)を備えた高圧放電灯点灯装置であって、
前記交流出力回路が前記交流電圧の駆動周波数を出力する制御部(35、60)及び前記交流電圧を共振させて共振電圧を出力する共振回路(36−37)を備え、
前記イグナイタ回路が、前記共振電圧を増幅するn倍電圧回路(41−46)、該n倍電圧回路の出力電圧が印加される放電ギャップ(48)、1次巻線が該放電ギャップに直列接続され2次巻線が前記高圧放電灯に直列接続されたパルストランス(47)、及び該放電ギャップのブレークダウンの有無及び前記高圧放電灯の放電開始の有無を検知する電圧検知回路(49)を備え、
前記制御部が、前記駆動周波数を第1の周波数(fs)から降下させ、前記電圧検知回路において前記ブレークダウンが検出されずに前記放電開始が検出された場合、前記駆動周波数を第2の周波数(fa)まで下げてから該第2の周波数よりも高い第3の周波数(fh´)に上げて維持するように構成された高圧放電灯点灯装置。
【請求項2】
請求項1の高圧放電灯点灯装置であって、前記電圧検知回路において前記ブレークダウンが検出された場合、前記制御部が前記駆動周波数を、該ブレークダウンが検出された時点の周波数(fh)に維持するように構成された高圧放電灯点灯装置。
【請求項3】
請求項1記載の高圧放電灯点灯装置(71)、高圧放電灯(50)、該高圧放電灯が取り付けられるリフレクタ(72)、並びに該高圧放電灯点灯装置及び該リフレクタを内包する筐体(73)を備えたプロジェクタ。
【請求項4】
交流電圧を出力する交流出力回路(30)及び該交流電圧にパルス電圧を重畳するイグナイタ回路(40)を用いた高圧放電灯の始動方法であって、
前記交流出力回路が前記交流電圧の駆動周波数を制御する制御部(35、60)及び前記交流電圧を共振させて共振電圧を出力する共振回路(36−37)を備え、前記イグナイタ回路が前記共振電圧を増幅するn倍電圧回路(41−46)、該n倍電圧回路の出力電圧が印加される放電ギャップ(48)、1次巻線が該放電ギャップに直列接続され2次巻線が前記高圧放電灯に直列接続されたパルストランス(47)、及び該放電ギャップのブレークダウンの有無及び前記高圧放電灯の放電開始の有無を検知する電圧検知回路(49)を備え、
(A)前記制御部が前記駆動周波数を第1の周波数(fs)から降下させるステップ、及び
(B)前記電圧検知回路において前記ブレークダウンが検出されずに前記放電開始が検出された場合、前記制御部が前記駆動周波数を第2の周波数(fa)まで下げてから該第2の周波数よりも高い第3の周波数(fh´)に上げて維持するステップ
からなる始動方法。
【請求項5】
請求項4の始動方法であって、さらに、
(C)前記電圧検知回路において前記ブレークダウンが検出された場合、前記制御部が前記駆動周波数を、該ブレークダウンが検出された時点の周波数(fh)に維持するステップ
を備える始動方法。
【請求項1】
高圧放電灯に交流電圧を印加する交流出力回路(30)及び該交流電圧にパルス電圧を重畳するイグナイタ回路(40)を備えた高圧放電灯点灯装置であって、
前記交流出力回路が前記交流電圧の駆動周波数を出力する制御部(35、60)及び前記交流電圧を共振させて共振電圧を出力する共振回路(36−37)を備え、
前記イグナイタ回路が、前記共振電圧を増幅するn倍電圧回路(41−46)、該n倍電圧回路の出力電圧が印加される放電ギャップ(48)、1次巻線が該放電ギャップに直列接続され2次巻線が前記高圧放電灯に直列接続されたパルストランス(47)、及び該放電ギャップのブレークダウンの有無及び前記高圧放電灯の放電開始の有無を検知する電圧検知回路(49)を備え、
前記制御部が、前記駆動周波数を第1の周波数(fs)から降下させ、前記電圧検知回路において前記ブレークダウンが検出されずに前記放電開始が検出された場合、前記駆動周波数を第2の周波数(fa)まで下げてから該第2の周波数よりも高い第3の周波数(fh´)に上げて維持するように構成された高圧放電灯点灯装置。
【請求項2】
請求項1の高圧放電灯点灯装置であって、前記電圧検知回路において前記ブレークダウンが検出された場合、前記制御部が前記駆動周波数を、該ブレークダウンが検出された時点の周波数(fh)に維持するように構成された高圧放電灯点灯装置。
【請求項3】
請求項1記載の高圧放電灯点灯装置(71)、高圧放電灯(50)、該高圧放電灯が取り付けられるリフレクタ(72)、並びに該高圧放電灯点灯装置及び該リフレクタを内包する筐体(73)を備えたプロジェクタ。
【請求項4】
交流電圧を出力する交流出力回路(30)及び該交流電圧にパルス電圧を重畳するイグナイタ回路(40)を用いた高圧放電灯の始動方法であって、
前記交流出力回路が前記交流電圧の駆動周波数を制御する制御部(35、60)及び前記交流電圧を共振させて共振電圧を出力する共振回路(36−37)を備え、前記イグナイタ回路が前記共振電圧を増幅するn倍電圧回路(41−46)、該n倍電圧回路の出力電圧が印加される放電ギャップ(48)、1次巻線が該放電ギャップに直列接続され2次巻線が前記高圧放電灯に直列接続されたパルストランス(47)、及び該放電ギャップのブレークダウンの有無及び前記高圧放電灯の放電開始の有無を検知する電圧検知回路(49)を備え、
(A)前記制御部が前記駆動周波数を第1の周波数(fs)から降下させるステップ、及び
(B)前記電圧検知回路において前記ブレークダウンが検出されずに前記放電開始が検出された場合、前記制御部が前記駆動周波数を第2の周波数(fa)まで下げてから該第2の周波数よりも高い第3の周波数(fh´)に上げて維持するステップ
からなる始動方法。
【請求項5】
請求項4の始動方法であって、さらに、
(C)前記電圧検知回路において前記ブレークダウンが検出された場合、前記制御部が前記駆動周波数を、該ブレークダウンが検出された時点の周波数(fh)に維持するステップ
を備える始動方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−113905(P2011−113905A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271165(P2009−271165)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】
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