説明

高機能内装材

【課題】健康や環境に優しく、居住者の精神安定に役立つような癒し効果を長期に亘って安定して維持することができる高機能内装材を提供する。
【解決手段】この高機能内装材は、植物抽出液若しくは飲料からなる注入液を、木材に加圧注入してなる。注入液は、木材に対して香り付けを行う芳香効果、木材に対して色付けを行う着色効果、木材に対して防カビ機能を付与するカビ抑制効果の3つの効果のうちの2つ以上の効果を併せ持っている。このような注入液としては、緑茶、柿の葉、イチジクの葉、スギ粉、ヒノキ粉、キハダ、蘇木、ウコンといった各種植物の水又はアルコールによる抽出液やその抽出液に対してアルカリ水溶液を添加した液、さらには柿渋、カテキン水溶液、赤ワイン、白ワインが挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主として住宅等の建物に設ける高機能内装材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、防腐剤や防蟻剤、難燃剤等の各種の改質剤を木材に塗布又は加圧注入して耐久性を高めるようにした各種建材が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、木材を乾留して得られる抽出成分を防腐防蟻剤として加圧注入してなる建材が開示されている。このような天然由来成分を加圧注入した建材を用いることで、化学物質が揮散したり、焼却処理等の廃棄処分時に有害物質が発生することがなく、健康や環境への負荷を軽減しながら、耐久性を長期に亘って維持することができる。
【0004】
【特許文献1】特開2002−307405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年においては、建材自体の耐久性等を高めるものだけでなく、特に住宅等の居住空間に設置する内装材としては、健康や環境に優しく、しかも居住者の精神安定に役立つような癒し効果のあるものの開発が望まれている。
【0006】
そこで、この発明は、健康や環境に優しく、居住者の精神安定に役立つような癒し効果を長期に亘って安定して維持することができる高機能内装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、この発明の高機能内装材は、植物抽出液若しくは飲料からなる注入液を、木材に加圧注入してなるものであって、前記注入液は、前記木材に対して香り付けを行う芳香効果、前記木材に対して色付けを行う着色効果、前記木材に対して防カビ機能を付与するカビ抑制効果の3つの効果のうちの2つ以上の効果を併せ持つことを特徴とする。
【0008】
具体的に、前記注入液は、芳香効果及び着色効果を少なくも有する、柿渋、カテキン水溶液、イチジクの葉の水又はアルコールによる抽出液、赤ワイン、白ワインのうちのいずれかである。
【0009】
また、前記注入液は、芳香効果及びカビ抑制効果を少なくとも有する、柿渋、カテキン水溶液、イチジクの葉の水又はアルコールによる抽出液、スギ粉の水又はアルコールによる抽出液、ヒノキ粉の水又はアルコールによる抽出液、赤ワイン、白ワインのうちのいずれかである。
【0010】
さらに、前記注入液は、着色効果及びカビ抑制効果を少なくとも有する、柿渋、カテキン水溶液、緑茶の水又はアルコールによる抽出液、柿の葉の水又はアルコールによる抽出液、イチジクの葉の水又はアルコールによる抽出液、キハダの水又はアルコールによる抽出液にアルカリ水溶液を添加した液、蘇木の水又はアルコールによる抽出液にアルカリ水溶液を添加した液、ウコンの水又はアルコールによる抽出液、赤ワイン、白ワインのうちのいずれかである。
【0011】
さらにまた、前記注入液は、芳香効果、着色効果及びカビ抑制効果を併せ持つ柿渋、カテキン水溶液、イチジクの葉の水又はアルコールによる抽出液、赤ワイン、白ワインのうちのいずれかである。
【発明の効果】
【0012】
この発明の高機能内装材は、芳香効果、着色効果、カビ抑制効果の2つ以上を有する植物抽出液や飲料からなる注入液を、木材に加圧注入してなるものであるから、健康や環境に優しく、居住者の精神安定に役立つような癒し効果を長期に亘って安定して維持することができる。従って、このような高機能内装材を居住空間に設けることで、癒し効果の高い居住環境を長期間に亘って良好に維持することができる。しかも、1種類の注入液によって、2つ以上の効果を有効に発揮させているので、簡単且つ経済的に性能の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
この発明の一実施形態に係る高機能内装材は、例えば住宅の居住空間に設けられて、癒し効果の高い居住環境を提供するもので、人体に悪影響を与えることがなく、焼却処理等の廃棄処分時にも有害な物質を発生することのない植物抽出液や飲料からなる注入液を、基材となる木材に加圧注入することで製造される。
【0014】
注入液としては、木材に対して香り付けを行う芳香効果、木材に対して色付けを行う着色効果、木材に対して防カビ機能の付与するカビ抑制効果の3つの効果のうちの2つ以上の効果を有するものが用いられている。このように、2つ以上の効果を有する注入液を用いることで、1種類の注入液を木材に対して加圧注入するだけで、2つ以上の効果を有効に発揮させることができ、簡単且つ経済的に内装材の性能を高めることができる。
【0015】
具体的に、芳香効果及び着色効果を少なくとも有する注入液としては、柿渋、カテキン水溶液、イチジクの葉の水又はアルコールによる抽出液、赤ワイン、白ワインが好適に用いられる。
【0016】
芳香効果及びカビ抑制効果を少なくとも有する注入液としては、柿渋、カテキン水溶液、イチジクの葉の水又はアルコールによる抽出液、スギ粉の水又はアルコールによる抽出液、ヒノキ粉の水又はアルコールによる抽出液、赤ワイン、白ワインが好適に用いられる。
【0017】
着色効果及びカビ抑制効果を少なくとも有する注入液としては、柿渋、カテキン抽出物の水溶液、緑茶の水又はアルコールによる抽出液、柿の葉の水又はアルコールによる抽出液、イチジクの葉の水又はアルコールによる抽出液、キハダの水又はアルコールによる抽出液にアルカリ水溶液を添加した液、蘇木の水又はアルコールによる抽出液にアルカリ水溶液を添加した液、ウコンの水又はアルコールによる抽出液、赤ワイン、白ワインが好適に用いられる。ここで、抽出液にアルカリ水溶液を添加した液とは、抽出液に対して水酸化ナトリウムの1%水溶液を50:1の割合で添加して、より鮮やかに呈色させたものである。
【0018】
芳香効果、着色効果及びカビ抑制効果の3つの効果を併せ持つ注入液としては、柿渋、カテキン水溶液、イチジクの葉の水又はアルコールによる抽出液、赤ワイン、白ワインが好適に用いられる。
【0019】
基材となる木材としては、一般に仕上げ材として用いられている高級材だけではなく、成長が早くて注入液の浸透性に優れた針葉樹や小径木の国産材を始めとして、これまで内装材としてあまり用いられていなかった樹種も用いられる。また、着色効果を有する注入液を加圧注入する場合には、木材内部まで着色が十分に施されるので、木材表面に少々の傷や汚れが付いてもそれらは目立ち難くなり、表面が軟らかくて傷や汚れが付き易い例えばスギ等の木材であっても、基材として問題なく用いることができる。
【0020】
なお、木材としては、天然木材だけでなく、合板等の加工木材も含まれる。また、木材の形状としては、内装材の用途に応じて板状や柱状等に加工される。
【0021】
上記構成の高機能内装材の製造に際しては、まず、基材となる木材を乾燥させてから密閉タンク内に入れる。このとき、木材への注入液の浸透を効率良く行うために、外観を損ねない程度に木材表面に穿孔処理を施しても良い。次に、木材に注入液が浸透し易いように、真空ポンプによって密閉タンク内を所定の圧力まで減圧する。続いて、上記の注入液を、加圧送液ポンプによって密閉タンク内に充填するとともに、密閉タンク内が所定の圧力になるまで送り込んで加圧して、注入液を木材の内部にまで注入する。
【0022】
注入が終わると、密閉タンク内の圧力を再び減圧するか又は常圧にし、密閉タンク内の注入液を排出した後、密閉タンク内から木材を取り出す。そして、取り出した木材を所定の含水率となるように乾燥させることで、所望の高機能内装材が得られる。
【0023】
なお、高機能内装材の表面は、傷が付き易いため、注入液の放散を阻害しないような被膜層で覆うようにしても良い。また、加圧注入の方法は、上記方法に限定されるものでなく、木材の種類や注入液の種類等に応じて適当な方法を採用すれば良い。
【0024】
このようにして製造された高機能内装材は、例えば回り縁、家具や内部収納等における板材、ドアやシステムキッチン等における面材、手摺、取手、居住空間の露出した状態で施工される柱や梁、ウッドデッキ等の様々な用途に用いられる。
【0025】
そして、このような高機能内装材を用いることで、居住空間において香気が持続的に放散されたり、居住空間を居住者の好みに応じた色合いとしたり、居住空間においてカビの発生を抑えることができ、癒し効果の高い居住環境を長期に亘って提供することができる。
【0026】
また、着色効果を有する注入液を加圧注入した高機能内装材にあっては、その内部にまで自然な着色が施されているので、表面に傷や汚れが付くようなことがあっても、それら傷や汚れが目立ち難く、また傷や汚れがひどくなった表面部分を削るだけで、その表面部分と同色の新たな着色面が露出して新品同様となるので、メンテナンスも容易である。従って、意匠性の高い居住環境を長期に亘って提供することができる。
【0027】
なお、この発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正及び変更を加え得ることは勿論である。
【実施例】
【0028】
各種の植物抽出液や飲料を選出して、それらを基材となる木材に加圧注入したときの「芳香効果」、「着色効果」、「カビ抑制効果」を実験により確認した。
【0029】
この実験に使用する植物抽出液として、緑茶、ほうじ茶、しょうが、唐辛子、柿の葉、イチジクの葉、ゴーヤの葉、スギ粉、ヒノキ粉、ヒノキチオール、キハダ、紫蘇、ダイオウ、蘇木、ベニバナ、ハイビスカス、ローズ、阿仙薬、ウコンといった各種植物の水又はアルコールによる抽出液やその抽出液に対して水酸化ナトリウムの1%水溶液を50:1の割合で添加した液、さらには柿渋、カテキン水溶液を選出した。飲料としては、赤ワイン、白ワインを選出した。そして、これら各種の植物抽出液及び飲料を、上述した高機能内装材の製造工程と同様の工程で基材となる木材に加圧注入した。
【0030】
図1は、実験結果を示している。「芳香効果」については、注入当初は殆どすべての注入液を使用したときにも香りを確認することができるが、1週間前後で多くのものは「芳香効果」が失われる。但し、渋柿、カテキン水溶液、赤ワイン、白ワイン、イチジクの葉の水又はアルコールによる抽出液、スギ粉の水又はアルコールによる抽出液、ヒノキ粉の水又はアルコールによる抽出液を使用したときには、3ヶ月経過してもなお香りを確認することができた。
【0031】
「着色効果」については、カテキン水溶液、及び、阿仙薬の水又はアルコールによる抽出液にアルカリ水溶液を添加した液が最も優れており、これらに続いて、柿渋、白ワイン、キハダの水又はアルコールによる抽出液にアルカリ水溶液を添加した液、ダイオウの水又はアルコールによる抽出液にアルカリ水溶液を添加した液、蘇木の水又はアルコールによる抽出液にアルカリ水溶液を添加した液、ベニバナの水又はアルコールによる抽出液にアルカリ水溶液を添加した液、ハイビスカスの水又はアルコールによる抽出液も良好な着色効果を発揮し、その他に緑茶の水又はアルコールによる抽出液、ほうじ茶の水又はアルコールによる抽出液、赤ワイン、柿の葉の水又はアルコールによる抽出液、イチジクの葉の水又はアルコールによる抽出液、ローズの水又はアルコールによる抽出液にアルカリ水溶液を添加した液、阿仙薬の水又はアルコールによる抽出液、ウコンの水又はアルコールによる抽出液を使用したときにも着色を確認することができた。
【0032】
「カビ抑制効果」については、唐辛子の水又はアルコールによる抽出液、ヒノキ粉の水又はアルコールによる抽出液、ヒノキチオールの水又はアルコールによる抽出液が最も優れており、これらに続いて、カテキン水溶液、柿渋、しょうがの水又はアルコールによる抽出液、柿の葉の水又はアルコールによる抽出液、ゴーヤの葉の水又はアルコールによる抽出液、スギ粉の水又はアルコールによる抽出液も良好なカビ抑制効果を発揮し、その他に緑茶の水又はアルコールによる抽出液、イチジクの葉の水又はアルコールによる抽出液、キハダの水又はアルコールによる抽出液にアルカリ水溶液を添加した液、紫蘇の水又はアルコールによる抽出液、蘇木の水又はアルコールによる抽出液にアルカリ水溶液を添加した液、ウコンの水又はアルコールによる抽出液、赤ワイン、白ワインを使用したときにもカビ抑制効果を確認することができた。
【0033】
この結果から明らかなように、「芳香効果」、「着色効果」、「カビ抑制効果」の3つの効果のうち、「芳香効果」及び「着色効果」を少なくとも有する注入液としては、柿渋、カテキン水溶液、イチジクの葉の水又はアルコールによる抽出液、赤ワイン、白ワインが挙げられることが判明した。また、「芳香効果」及び「カビ抑制効果」を少なくとも有する注入液としては、柿渋、カテキン水溶液、イチジクの葉の水又はアルコールによる抽出液、スギ粉の水又はアルコールによる抽出液、ヒノキ粉の水又はアルコールによる抽出液、赤ワイン、白ワインが挙げられることが判明した。さらに、「着色効果」及び「カビ抑制効果」を少なくとも有する注入液としては、柿渋、カテキン水溶液、緑茶の水又はアルコールによる抽出液、柿の葉の水又はアルコールによる抽出液、イチジクの葉の水又はアルコールによる抽出液、キハダの水又はアルコールによる抽出液にアルカリ水溶液を添加した液、蘇木の水又はアルコールによる抽出液にアルカリ水溶液を添加した液、ウコンの水又はアルコールによる抽出液、赤ワイン、白ワインが挙げられることが判明した。さらにまた、「芳香効果」、「着色効果」、「カビ抑制効果」の3つの効果とも有する注入液としては、柿渋、カテキン水溶液、イチジクの葉の水又はアルコールによる抽出液、赤ワイン、白ワインが挙げられることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】各種の植物抽出液や飲料を選出して、それらを基材となる木材に加圧注入したときの芳香効果、着色効果、カビ抑制効果についての実験結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物抽出液若しくは飲料からなる注入液を、木材に加圧注入してなる内装材であって、前記注入液は、前記木材に対して香り付けを行う芳香効果、前記木材に対して色付けを行う着色効果、前記木材に対して防カビ機能を付与するカビ抑制効果の3つの効果のうちの2つ以上の効果を併せ持つことを特徴とする高機能内装材。
【請求項2】
前記注入液は、芳香効果及び着色効果を少なくも有する、柿渋、カテキン水溶液、イチジクの葉の水又はアルコールによる抽出液、赤ワイン、白ワインのうちのいずれかである請求項1記載の高機能内装材。
【請求項3】
前記注入液は、芳香効果及びカビ抑制効果を少なくとも有する、柿渋、カテキン水溶液、イチジクの葉の水又はアルコールによる抽出液、スギ粉の水又はアルコールによる抽出液、ヒノキ粉の水又はアルコールによる抽出液、赤ワイン、白ワインのうちのいずれかである請求項1記載の高機能内装材。
【請求項4】
前記注入液は、着色効果及びカビ抑制効果を少なくとも有する、柿渋、カテキン水溶液、緑茶の水又はアルコールによる抽出液、柿の葉の水又はアルコールによる抽出液、イチジクの葉の水又はアルコールによる抽出液、キハダの水又はアルコールによる抽出液にアルカリ水溶液を添加した液、蘇木の水又はアルコールによる抽出液にアルカリ水溶液を添加した液、ウコンの水又はアルコールによる抽出液、赤ワイン、白ワインのうちのいずれかである請求項1記載の高機能内装材。
【請求項5】
前記注入液は、芳香効果、着色効果及びカビ抑制効果を併せ持つ柿渋、カテキン水溶液、イチジクの葉の水又はアルコールによる抽出液、赤ワイン、白ワインのうちのいずれかである請求項1記載の高機能内装材。

【図1】
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【公開番号】特開2008−119893(P2008−119893A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−304120(P2006−304120)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【Fターム(参考)】