説明

高水分含有具材入りチョコレート

【課題】長期保存に適し、チョコレートの食感が経時劣化しにくい高水分含有具材入りチョコレートを提供すること。
【解決手段】高水分含有具材をチョコレート生地に添加し、成形して得られる高水分含有具材入りチョコレートであって、前記高水分含有具材の水分活性が0.40〜0.64であり、前記チョコレート生地の水分活性が0.40〜0.64である高水分含有具材入りチョコレートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長期保存に適し、食感が経時劣化しにくい高水分含有具材入りチョコレートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コーンフレークやパフ等の膨化菓子、ウエハースやビスケット等の焼菓子、アーモンド等のナッツ類を、チョコレート生地に添加し、成形して得られる菓子が知られている。これらの菓子は、チョコレート生地の食味とともに、具材の食味、食感が加わることから市場にて好評を博している。
【0003】
また、近年、消費者の多様なニーズに対応するため、比較的水分含有量の高い具材を含むチョコレート菓子の開発が試みられている。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、生の果実をチョコレート中に封入した後、超高圧処理して得られた生の果実入りチョコレート菓子が開示されている。
【0005】
また、下記特許文献2には、マーブル模様を表面に有するチョコレート加工品であって、該マーブル模様を構成する筋状部分が発泡生地からなり、それ以外の基材部分が主としてチョコレートからなることを特徴とするチョコレート加工品が開示されている。
【特許文献1】特開2004−357647号公報
【特許文献2】特開2006−158310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、具材の水分含有量が、チョコレート生地の水分含有量よりも高いと、保存中に、具材側からチョコレート生地側へ水分が移行してしまい、具材の食感が固くなったり、チョコレートの食感が経時劣化してボソボソになったり、チョコレートの色や艶が低下して外観が経時劣化し易かった。
このため、水分活性の高い具材を用いた、具入りチョコレートにおいて、食感が経時劣化しにくく、長期保存に適した常温流通菓子は、これまで知られていなかった。
【0007】
したがって、本発明の目的は、チョコレート生地の食感が経時劣化しにくく、常温での長期保存に適した高水分含有具材入りチョコレートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の高水分含有具材入りチョコレートは、高水分含有具材をチョコレート生地に添加し、成形して得られる高水分含有具材入りチョコレートであって、前記高水分含有具材の水分活性が0.40〜0.64であり、前記チョコレート生地の水分活性が0.40〜0.64であることを特徴とする。
【0009】
本発明の高水分含有具材入りチョコレートは、高水分含有具材の水分活性が0.40〜0.64で、チョコレート生地の水分活性が0.40〜0.64であるので、具材のみずみずしさと、チョコレート生地の滑らかさを同時に堪能できる新規な食感が得られる。また、微生物抑制が可能な、一般流通食品として十分な保存性を有している。そして、チョコレート生地の水分活性が高いので、具材側からチョコレート生地側へ水分が移行しても、チョコレート及び具材の食感や外観が経時劣化しにくい。
【0010】
本発明の高水分含有具材入りチョコレートは、前記チョコレート生地が、乳化剤を含有することが好ましい。そして、乳化剤としては、ポリグリセリン不飽和脂肪酸エステルが好ましい。通常のチョコレートの水分活性は0.1〜0.3程度であり、水分活性を高くするに伴いチョコレートの食感は低下する傾向にあるが、チョコレート生地に乳化剤を含有させることで、チョコレート生地の食感を損なうことなく、チョコレート生地の水分活性、言い換えると、含水量を高めることができ、より水分活性の高い具材を用いることができる。
【0011】
本発明の高水分含有具材入りチョコレートは、前記高水分含有具材が、マシュマロ、半生菓子、果実加工品(ドライフルーツ、ゼリー、マロングラッセなど)から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0012】
また、本発明の高水分含有具材入りチョコレートは、前記高水分含有具材がマシュマロであって、該マシュマロ中の糖類全体の10〜50質量%が単糖で、10〜30質量%が糖アルコールで、かつ、該マシュマロの水分活性が0.55〜0.60であることが好ましい。
【0013】
また、本発明の高水分含有具材入りチョコレートは、前記高水分含有具材がドライフルーツであって、該ドライフルーツが糖類を40〜90質量%含有し、かつ、該ドライフルーツの水分活性が0.40〜0.60であることが好ましい。
【0014】
また、本発明の高水分含有具材入りチョコレートは、前記チョコレート生地が、ホイップ処理の施された含気チョコレート生地であることが好ましい。これによれば、チョコレート生地の口解けの良い滑らかな食感を実現できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高水分含有具材の水分活性が0.40〜0.64で、チョコレート生地の水分活性が0.40〜0.64であるので、具材のみずみずしさと、チョコレート生地の滑らかさを同時に堪能できる新規な食感が得られ、かつ、微生物抑制が可能な、一般流通食品として十分な保存性を有しており、チョコレート生地の水分活性が高いので、具材側からチョコレート生地側へ水分が移行しても、チョコレート及び具材の食感や外観が経時劣化しにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(チョコレート生地)
本発明において、チョコレート生地としては、例えば、純チョコレート生地、準チョコレート生地、ミルクチョコレート生地、準ミルクチョコレート生地、純ミルクチョコレート生地、ホワイトチョコレート生地、その他の一般的に用いられているチョコレート生地を採用することができるが、該チョコレート生地の水分活性が0.40〜0.64となるように水分含有量が調整されたものが用いられる。チョコレート生地の水分活性は、0.40〜0.55が好ましい。チョコレート生地の水分活性が0.64を超えると、長期保存によって食感がボソボソになりやすく、更には菌の増殖速度が早まり、常温での十分な日持ち性を持たせることが困難である。また、チョコレート生地の水分活性が0.40を下回ると、具材側からチョコレート生地側に水分が移行しやすくなり、長期保存によってチョコレート生地の食感や外観が経時劣化しやすくなる。
なお、水分活性とは、食品中の水の存在状態を示す単位であって、例えば、卓上型温湿度測定器ハイグロラボ(ロトロニック社製、20℃)により測定することができる。
【0017】
また、本発明において、チョコレート生地は、ホイップ処理が施されて気泡を含むものが好ましく、チョコレート生地の比重が、1.0g/cm以下、好ましくは、0.8g/cm以下となるように気泡を含有するものが好ましい。チョコレート生地に気泡を含有させることで、口解けの良いなめらかな食感を実現できる。
【0018】
また、本発明において、チョコレート生地には、副原料として、ナッツ類破砕物、チョコレートチップ等を含有させることもできる。
【0019】
このようなチョコレート生地は、通常のチョコレートに使用されているカカオマス及び/又はココア、糖類、粉乳、乳化剤、ココアバター及び/又はココアバター代用脂、香料等を主原料とし、更に必要に応じて上記副原料を用いて、製造することができる。
【0020】
糖類としては、例えば、砂糖に、必要に応じて乳糖等の他の糖類や、糖アルコールなどを配合したものが好ましく用いられる。
【0021】
粉乳としては、例えば、全脂粉乳、脱脂粉乳等を用いることができる。
【0022】
乳化剤としては、ポリグリセリン不飽和脂肪酸エステルが好ましく用いられ、ポリグリセリン不飽和脂肪酸エステルとショ糖不飽和脂肪酸エステルとを併用することが特に好ましい。ポリグリセリン不飽和脂肪酸エステルを用いることで、チョコレートの口溶けの良さを向上させることができる。また、ショ糖不飽和脂肪酸エステルを用いることで、油脂分と水分との乳化が促進され、チョコレート生地の含水量を増加でき、チョコレート生地の水分活性が調整しやすくなり、具材としてより水分活性の高いものを選択しやすくなる。
【0023】
上記ポリグリセリン不飽和脂肪酸エステルとしては、HLBが5.5〜8.5のポリグリセリン不飽和脂肪酸エステルが特に好ましい。このポリグリセリン不飽和脂肪酸エステルは、特許第3587578号にその詳細が記載されている。
【0024】
また、上記ショ糖不飽和脂肪酸エステルとしては、平均エステル化度が3〜8の親油性ショ糖不飽和脂肪酸ポリエステル、結合脂肪酸が炭素原子数20〜26である低HLBのショ糖不飽和脂肪酸エステルが特に好ましい。このショ糖不飽和脂肪酸エステルは、特公平6−87744号、特許第2811772号にその詳細が記載されている。
【0025】
ココアバター及び/又はココアバター代用脂としては、ヤシ油、パーム油、パーム核油を原料としたハードバター、エライジン酸を構成脂肪酸とするトランス型ハードバター等のノンテンパリング型の油脂、ココアバター等のテンパリング型油脂を用いることができる。
【0026】
本発明のチョコレート生地は、例えば、カカオマス及び/又はココア0〜50質量%、糖類0〜50質量%、粉乳0〜50質量%、乳化剤0.1〜5.0質量%、ココアバター及び/又はココアバター代用脂10〜50質量%、香料0〜3.0質量%等の配合からなる原料を用い、水分活性が0.40〜0.64となるように、加水量を調整する以外は、常法にしたがって製造することができる。
【0027】
すなわち、常法に従って上記原料をミキシングし、リファイニングを行った後、コンチングを行うことで製造できる。また、必要に応じて、コンチング工程後、加熱、冷却、加圧、減圧しながら激しく撹拌する、いわゆるホイップ処理を施して、気泡を含有させてもよい。撹拌は、例えば、ミキサー、含気ミキサー装置等を用いて行うことができる。
【0028】
(高水分含有具材)
本発明において、高水分含有具材としては、特に限定はなく、マシュマロ、半生素材、果実加工品(ドライフルーツ、ゼリー、マロングラッセなど)を採用することができるが、水分活性が0.40〜0.64となるように調整されたものが用いられる。高水分含有具材の水分活性は、0.50〜0.60が好ましい。高水分含有具材の水分活性が0.64を超えると、みずみずしさは増すものの、菌の増殖速度が早まり、常温での十分な日持ち性を持たせることが困難になる傾向にあるばかりか、チョコレート生地側へ水分が移行して、チョコレート生地の食感や外観を損なうおそれがある。また、高水分含有具材の水分活性が0.40を下回ると、みずみずしさが損なわれてしまう。
【0029】
高水分含有具材の水分活性を上記範囲に調整するには、具材を適宜乾燥させて、上記水分活性に調製する方法や、高水分含有具材の製造時における加水量を調整して、上記水分活性となるようにする方法が挙げられる。
【0030】
ドライフルーツなどの具材の場合においては、具材の乾燥時間を調整することや、糖類の濃度を上げる事、又グリセリン添加などで容易に達成することができる。そして、ドライフルーツの場合においては、糖類の含有量が40〜90質量%となるように、ドライフルーツの製造時に糖類を添加することが好ましい。ドライフルーツが糖類を40〜90質量%含有することで、菌の増殖速度を遅らせる他、風味を増したり、常温での十分な日持ちを持たせる事が可能となる。
【0031】
一方、マシュマロのような、ホイップ工程が必要とされる気泡を含有する具材の場合、上述したような水分活性の調製方法では、独特の食感が失われてしまう。
すなわち、マシュマロの場合を例にとって具体的に説明すると、一般的なマシュマロは、砂糖30〜50質量%、水飴0〜50質量%含む糖溶液を煮詰めてブリックスを85未満とし、次いで、煮詰め後の糖溶液にゼラチンを3質量%以上添加し、40〜80℃で、10秒〜5分間ホイップ処理を行って比重を0.45g/cm以下に調整し、その後、所定の形状に成形し、乾燥することで得られる。こうして得られるマシュマロの水分含有量は、15〜20質量%で、水分活性は0.70〜0.85である。マシュマロの水分活性を低下、すなわち水分含有量を低減させるにあたり、煮詰め後の糖溶液のブリックスを高めることが考えられるが、煮詰め後の糖溶液のブリックスを上げると、同時にゼラチン添加後の粘度も上昇してしまうので、その後のホイップ処理によって、気泡を十分含有させることができなくなり、食感が固くなってしまう。
【0032】
本発明においては、マシュマロのような、ホイップ工程が必要とされる気泡含有具材の場合、原料として用いる糖類の一部又は全部を、単糖及び糖アルコールに置換して、水分含有量を低減させることが好ましい。
【0033】
単糖は、水分活性を低減させる作用があり、糖アルコールは、粘度を低減させる作用がある。したがって、原料として用いる糖類の一部又は全部を、単糖及び糖アルコールに置換することで、ホイップ処理に必要な粘度を有しつつ、水分含有量を低減できるので、具材の風味及び食感を損なうことなく、水分活性を、0.40〜0.64、好ましくは0.55〜0.6に調整することができる。
【0034】
上記単糖としては、ブドウ糖、ラクトース等が挙げられ、特にブドウ糖が好ましい。
そして、単糖の含有量は、糖類全体の10〜50質量%であることが好ましく、25〜35質量%がより好ましい。単糖の含有量が10質量%未満であると、水分活性の低減効果を十分得ることができず、50質量%を超えると、風味が損なわれるおそれがある。
【0035】
上記糖アルコールとしては、還元水飴、還元澱粉糖化物が挙げられる。
そして、糖アルコールの含有量は、糖類全体の10〜30質量%であることが好ましく、20〜25質量%がより好ましい。糖アルコールの含有量が10質量%未満であると、粘度低減効果が十分発揮されず、30質量%を超えると、風味が損なわれるおそれがある。
【0036】
例えば、マシュマロの場合を例にとると、原料として用いる糖類として、糖類全体の25〜35質量%を単糖、20〜25質量%を糖アルコールとして、常法により製造することで、得られるマシュマロの水分活性は、0.55〜0.60となる。
【0037】
また、マシュマロの場合、原料として用いるゼラチンは、少量の水分で膨潤し、且つ、溶解性が良く、bloom強度の高いものが好ましい。これらのゼラチンは、給水力が高いので、少量の水で容易に膨潤でき、具材の水分含有量をより低減できるので、具材の水分活性を0.55〜0.60に調整しやすくなる。
【0038】
(高水分含有具材入りチョコレート)
本発明の高水分含有具材入りチョコレートは、上記チョコレート生地に、上記高水分含有具材を添加し、所定の形状に成形して得られるものであって、全体の水分活性が、0.40〜0.64であり、具材の食感を損なわない範囲で安定するよう調整されている。全体の水分活性が0.40以下に達すると、具材側からチョコレート生地側に水分が移行して、チョコレートの食感や外観が経時劣化しやすく、さらには、具材側の食感もみずみずさが損なわれたものになりやすく、常温での長期保存に適した高水分含有具入りチョコレートとすることができない。
【0039】
本発明の高水分含有具材入りチョコレートは、例えば、所定の形状に成形した上記高水分含有具材と、チョコレート生地とを混合し、所定の形状のモールド等に充填して、冷却固化することで得られる。
【0040】
また、チョコレート生地と、高水分含有具材との水分活性の差が、0.10以下となるように、チョコレート生地と高水分含有具材を選択することが好ましく、0.05以下が特に好ましい。水分活性の差を上記範囲にすることで、長期にわたってチョコレートの食感や外観を良好にでき、また、具材のみずみずしさを保つことができる。
【0041】
このようにして得られる本発明の高水分含有具材入りチョコレートは、具材のみずみずしさと、チョコレート生地の滑らかさを同時に堪能できる新規な食感を有する。また、微生物抑制が可能な一般流通食品として十分な保存性を有しており、賞味期限を10〜12ヶ月とすることができる。また、チョコレート生地の水分活性が高いため、具材側からチョコレート生地側へ水分が移行しても、チョコレート生地の食感や外観が経時劣化しにくいため、常温での長期保存に適している。
【実施例】
【0042】
以下、実施例を用いて本発明を更に詳しく説明する。
【0043】
[チョコレート生地の製造]
(製造例1−1)
表1に示す割合で各原料を配合し、常法に従って混合し、リファイニングを行った後、常法でコンチングを行ってチョコレート生地原液を調製し、その後、常法により、ホイップ処理を行って、水分活性0.15、比重0.8g/cmのチョコレート生地を製造した。なお、表中の数値は質量部単位である。
【0044】
【表1】

【0045】
(製造例1−2)
製造例1−1において、コンチング工程後のチョコレート生地原液に、水を2.1質量%添加した以外は、製造例1−1と同様にして、水分活性0.40、比重0.8g/cmのチョコレート生地を製造した。
【0046】
(製造例1−3)
製造例1−1において、コンチング工程後のチョコレート生地原液に、水を2.4質量%添加した以外は、製造例1−1と同様にして、水分活性0.55、比重0.8g/cmのチョコレート生地を製造した。
【0047】
(製造例1−4)
製造例1−1において、コンチング工程後のチョコレート生地原液に、水を3.6質量%以上添加した以外は、製造例1−1と同様にして、水分活性0.70、比重0.8g/cmのチョコレート生地を製造した。
【0048】
(製造例1−5)
表2に示す割合で各原料を配合し、常法に従って混合し、リファイニングを行った後、常法でコンチングを行ってチョコレート生地原液に、水を2.4質量%添加し、グリセリン脂肪酸エステルを投入しない以外は、製造例1−1と同様にして、水分活性0.55、比重0.8g/cmのチョコレート生地を製造した。なお、表中の数値は質量部単位である。
【0049】
【表2】

【0050】
[マシュマロの製造]
(製造例2−1)
砂糖20g、水飴18g、糖アルコール(商品名「アマミール」 東和化成製)17.5g、無水結晶ブドウ糖25.6g、水10.65gを混合し、加熱溶解して、ブリックス85の糖溶液を得た。
次に、ゼラチン3.4gに、水4.08gを加えてゼラチンを膨潤させたのち、上記糖溶液に添加し、更に香料0.01g添加した後、常法によりホイップ処理を行った。なお、ゼラチンを添加直後の糖溶液のBL粘度計による測定粘度は、糖溶液の温度が70℃の時25Pa・Sであった。
ホイップ処理後、スターチモールドで乾燥・成形して、水分活性0.57、比重0.3g/cmのマシュマロを得た。
【0051】
(製造例2−2)
砂糖35.5g、水飴35.5g、麦芽糖10.1g、水10.65gを混合し、加熱溶解して、ブリックス83の糖溶液を得た。
次に、ゼラチン3.4gに、水4.76gを加えてゼラチンを膨潤させたのち、上記糖溶液に添加し、更に香料0.01g添加した後、常法によりホイップ処理を行った。なお、ゼラチンを添加直後の糖溶液のBL粘度計による測定粘度は、糖溶液の温度が70℃の時26Pa・Sであった。
ホイップ処理後、スターチモールドで乾燥、成形して、水分活性0.70、比重0.3g/cmのマシュマロを得た。
【0052】
(製造例2−3)
砂糖20g、水飴18g、糖アルコール(商品名「アマミール」 東和化成製)17.5g、無水結晶ブドウ糖25.6g、水10.65gを混合し、加熱溶解して、ブリックス84の糖溶液を得た。
次に、ゼラチン3.4gに、水4.08gを加えてゼラチンを膨潤させたのち、上記糖溶液に添加し、更に香料0.01g添加した後、常法によりホイップ処理を行った。なお、ゼラチンを添加直後の糖溶液のBL粘度計による測定粘度は、糖溶液の温度が70℃の時20Pa・Sであった。
ホイップ処理後、スターチモールドで乾燥・成形して、水分活性0.64、比重0.3g/cmのマシュマロを得た。
【0053】
[具材入りチョコレートの製造]
(実施例1)
チョコレート生地として製造例1−3で得られたチョコレート生地(水分活性0.55)100質量部と、具材として製造例2−1で得られたマシュマロ(水分活性0.57)20質量部とをそれぞれ混合し、具材をセンター成型して、具材入りチョコレートを得た。この具材入りチョコレートを20℃で、330日間保存した後喫食したところ、チョコレート生地側に具材から水分が若干移行していたが、チョコレート生地の滑らかな食感と、マシュマロの軽い食感を同時に堪能でき、また、カビなども認められなかった。
【0054】
(実施例2)
チョコレート生地として製造例1−3で得られたチョコレート生地(水分活性0.55)100質量部と、具材として製造例2−3で得られたマシュマロ(水分活性0.64)18質量部とをそれぞれ混合し、具材をセンター成型して、具材入りチョコレートを得た。この具材入りチョコレートを20℃で、300日間保存した後喫食したところ、チョコレート生地側に具材から水分が若干移行していたが、チョコレート生地の滑らかな食感と、マシュマロの軽い食感を同時に堪能でき、また、カビなども認められなかった。また、この具材入りチョコレートを20℃で、330日間保存し、チョコレート専門パネラー10人を集めて官能評価を行ったところ、7人のパネラーが、やや具材の独特の食感が失われていると評価した。
【0055】
(実施例3)
チョコレート生地として製造例1−2で得られたチョコレート生地(水分活性0.40)100質量部と、具材として製造例2−1で得られたマシュマロ(水分活性0.57)20質量部とをそれぞれ混合し、具材をセンター成型して、具材入りチョコレートを得た。この具材入りチョコレートを、20℃で、270日間保存した後喫食したところ、チョコレート生地側に具材から水分が若干移行していたが、チョコレート生地の滑らかな食感と、マシュマロの軽い食感を同時に堪能でき、また、カビなども認められなかった。また、この具材入りチョコレートを20℃で、300日間保存し、チョコレート専門パネラー10人を集めて官能評価を行ったところ、8人のパネラーが、やや具材の独特の食感が失われていると評価した。
【0056】
(実施例4)
チョコレート生地として製造例1−3で得られたチョコレート生地(水分活性0.55)100質量部と、具材として常法により製造されたドライフルーツ(水分活性0.50)10質量部とをそれぞれ混合し、具材をセンター成型して、具材入りチョコレートを得た、この具材入りチョコレートを、20℃で300日間保存し、チョコレート専門パネラー10人を集めて官能評価を行ったところ、チョコレート生地の滑らかな食感と、ドライフルーツの柔らかな食感を同時に堪能でき、また、カビなども認められなかった。
【0057】
(比較例1)
チョコレート生地として製造例1−1で得られたチョコレート生地(水分活性0.15)100質量部と、具材として製造例2−1で得られたマシュマロ(水分活性0.57)20質量部とをそれぞれ混合し、具材をセンター成型して、具材入りチョコレートを得た。この具材入りチョコレートを20℃で、30日間保存し、チョコレート専門パネラー10人を集めて官能評価を行ったところ、6人のパネラーが、チョコレート生地側に具材側から水分が移行しており、具材独特の食感が失われていると、評価した。
【0058】
(比較例2)
チョコレート生地として製造例1−4で得られたチョコレート生地(水分活性0.70)100質量部と、具材として製造例2−1で得られたマシュマロ(水分活性0.57)20質量部とをそれぞれ混合し、具材をセンター成型して、具材入りチョコレートを得た。この具材入りチョコレートを、20℃で、30日間保存し、チョコレート専門パネラー10人を集めて官能評価を行ったところ、8人のパネラーがチョコレート側の食感が悪くなっていると評価した。
【0059】
(比較例3)
チョコレート生地として製造例1−1で得られたチョコレート生地(水分活性0.15)100質量部と、具材として製造例2−2で得られたマシュマロ(水分活性0.70)20質量部とをそれぞれ混合し、具材をセンター成型して、具材入りチョコレートを得た。この具材入りチョコレートを、20℃で、15日間保存し、チョコレート専門パネラー10人を集めて官能評価を行ったところ、15日目に9人のパネラーがマシュマロ独特の食感が失われていると評価した。
【0060】
(比較例4)
チョコレート生地として製造例1−1で得られたチョコレート生地(水分活性0.15)100質量部と、具材として常法により製造されたドライフルーツ(水分活性0.50)10質量部とをそれぞれ混合し、具材をセンター成型して、具材入りチョコレートを得た。この具材入りチョコレートを、20℃で20日間保存し、チョコレート専門パネラー10人を集めて官能評価を行ったところ、7人のパネラーが具材の独特の柔らかな食感が失われていると評価した。
【0061】
(比較例5)
チョコレート生地として製造例1−4で得られたチョコレート生地(水分活性0.70)100質量部と、具材として常法により製造されたドライフルーツ(水分活性0.50)10質量部とをそれぞれ混合し、具材をセンター成型して、具材入りチョコレートを得た。この具材入りチョコレートを、20℃で30日間保存し、チョコレート専門パネラー10人を集めて官能評価を行ったところ、7人のパネラーがチョコレート側の食感が悪くなっていると評価した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高水分含有具材をチョコレート生地に添加し、成形して得られる高水分含有具材入りチョコレートであって、
前記高水分含有具材の水分活性が0.40〜0.64であり、前記チョコレート生地の水分活性が0.40〜0.64であることを特徴とする高水分含有具材入りチョコレート。
【請求項2】
前記チョコレート生地が、乳化剤を含有する請求項1に記載の高水分含有具材入りチョコレート。
【請求項3】
前記乳化剤が、ポリグリセリン不飽和脂肪酸エステルである請求項2に記載の高水分含有具材入りチョコレート。
【請求項4】
前記高水分含有具材が、マシュマロ、半生素材、果実加工品から選ばれる1種以上である請求項1〜3のいずれか一つに記載の高水分含有具材入りチョコレート。
【請求項5】
前記高水分含有具材がマシュマロであって、該マシュマロ中の糖類全体の10〜50質量%が単糖で、10〜30質量%が糖アルコールで、かつ、該マシュマロの水分活性が0.55〜0.60である請求項1〜3のいずれか一つに記載の高水分含有具材入りチョコレート。
【請求項6】
前記高水分含有具材がドライフルーツであって、該ドライフルーツが糖類を40〜90質量%含有し、かつ、該ドライフルーツの水分活性が0.40〜0.60である請求項1〜3のいずれか一つに記載の高水分含有具材入りチョコレート。
【請求項7】
前記チョコレート生地が、ホイップ処理の施された含気チョコレート生地である請求項1〜6のいずれか一つに記載の高水分含有具材入りチョコレート。

【公開番号】特開2008−263853(P2008−263853A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−111125(P2007−111125)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(000006116)森永製菓株式会社 (130)
【Fターム(参考)】