高温化防止装置
【課題】ヒートアイランド現象の緩和手段として、緑化などの場合に比較して維持管理の手間が少なく、施工が容易であり、専門知識を有しない人でも設置が可能で低コストな高温化防止装置を得る。
【解決手段】建物の屋上などに設置する高温化防止装置であって、保水性基盤材1からなる基盤3を形成し、基盤3の敷設面6に到達する通水孔2と前記敷設面6に達しない通水孔2とを上部から下部に向けて設け、また、複数の保水性基盤材1を垂直方向に重層して基盤3を形成し、各層に達する通水孔2と基盤3の敷設面6に到達する通水孔2とを上層から下層に向けて設けた。
【解決手段】建物の屋上などに設置する高温化防止装置であって、保水性基盤材1からなる基盤3を形成し、基盤3の敷設面6に到達する通水孔2と前記敷設面6に達しない通水孔2とを上部から下部に向けて設け、また、複数の保水性基盤材1を垂直方向に重層して基盤3を形成し、各層に達する通水孔2と基盤3の敷設面6に到達する通水孔2とを上層から下層に向けて設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建物の屋上の下の空間が高温にならないよう、屋上が高温化することを防止する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物の屋上や人工地盤などは通常、押えコンクリートやアスファルト舗装などの仕上げが施される。日射により特に夏季には温度が非常に上昇するとともに蓄熱されることから、都市部などにおけるヒートアイランド現象を引き起こす要因のひとつとなっている。さらに、建物内部の温度も上昇し、室内環境が悪化することから、冷房などの空調負荷やエネルギー消費の増大が問題となっている。
【0003】
このような屋上の熱吸収によって階下の空間が高温になる状態を解決する方法として、屋上緑化や屋上床面に反射による高温化を低減する塗料の塗布がある。これらの方法をクールルーフと称し、その普及が進められている。
【0004】
しかし屋上緑化では、緑化に必要な根付け用の土やそれを支える構造物、さらには植物の維持管理に経費が必要となり、また、耐久年数が経過した屋上の防水工事では緑化成分を撤去する必要もあり、手間を費用を要する。
【0005】
緑化には癒しの効果があり必要とされるが、デパートや集客で成り立つ建物以外では、屋上の利用はほとんどなく、給水、冷房装置の置場でしかない。このような現状の屋上に対して本当に緑化する必要性があるかは疑問である。
【0006】
低温化塗料についても、60℃に対し10℃程度の低温作用であり、塗布費用に対し低温化効果が低い状況がある。さらに次の防水工事での対応について塗料をそのままにするか、剥離するかについての決定はされておらず、課題が残る。
【0007】
そこで、緑化や低温化塗料によらずに、屋上の温度上昇を抑えることのできるシステムがあり、これは例えば、マンションなどの建築物の屋上スラブの上部に積層される防水層と、防水層の上部に積層される水を拡散させる機能を有する素材からなる導水材層と、導水材層の上部に積層される導水性、揚水性および保水性を有する素材からなる揚水材層と、導水材層に水を供給する吸水手段とからなる(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−126993号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特開2005−126993号に記載の発明は、屋上スラブの上に、防水層、導水材層および揚水材層を順次積層し、導水材層に水を供給する給水手段によって、両層の協働により全体に湿潤させる湿潤性システムであり、複数の異なる性質の層を組み合わせる必要があり、また、この積層したものに給水手段で給水する必要もある。
【0009】
このため、システムが複雑となり、種々の異なる材質の層を用意する必要があるだけでなく、施工もこれらの層を順次積層する必要があり、手間を要する。
【0010】
本発明は前記従来例の不都合を解消し、ヒートアイランド現象の緩和手段として、緑化などの場合に比較して維持管理の手間が少なく、施工が容易であり、専門知識を有しない人でも設置が可能で低コストな高温化防止装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の発明は、建物の屋上などに設置する高温化防止装置であって、保水性基盤材からなる基盤を形成し、基盤の敷設面に到達する通水孔と前記敷設面に達しない通水孔とを上部から下部に向けて設けたことを要旨とするものである。
【0012】
請求項2記載の発明は、建物の屋上などに設置する高温化防止装置であって、複数の保水性基盤材を垂直方向に重層して基盤を形成し、各層に達する通水孔と基盤の敷設面に到達する通水孔とを上層から下層に向けて設けたことを要旨とするものである。
【0013】
請求項1、請求項2記載の本発明によれば、保水性基盤材を単層もしくは重層して基盤を形成するだけの構造で保水できるから、施工が容易で、特別の技術を要しない。また、基盤材も容易に入手できる。
【0014】
そして、重層した基盤材に垂直方向に貫通する通水孔を設けるだけでよいから、この通水孔に上方から流下した水(雨水を含む)が各層に達し、さらに各層の間の隙間に流れることで拡散し吸水面積が増し、また、底面に到達した水はさらには基盤の底部全体に拡散した後、各層に揚水されて吸収されるから、大きな保水量を確保できる。
【0015】
そして、保水された水分は、徐々に減少し、蒸発散することで屋上の低温化が図れる。
【0016】
請求項3記載の発明は、前記基盤上部を金属製素材で被覆し、この金属製素材に前記基盤に設けた通水孔に連通する孔を穿設することを要旨とするものである。
【0017】
請求項3記載の本発明によれば、基盤の上面に金属製素材を設けることで、この金属製素材が風によって冷却されることにより、その裏面に存在する水を含んだ基盤の低温化が促進される。そして、金属製素材によって基盤表面からの水の蒸発散が低減され、保水時間を延長できる。
【0018】
また、表面を金属製素材で覆っても、これには孔が穿設してあるから基盤への水の拡散と空気の流通を発生させ、むれることを防げる。
【0019】
さらに金属の光沢により太陽光を反射して熱吸収を低下させ、高温化が低減される。
【0020】
金属の有する耐久性、変形しにくい特質により、基盤の劣化を防ぎ、耐久性が強化される。
【0021】
請求項4記載の発明は、前記基盤の表面に断熱塗料を塗布することを要旨とするものである。
【0022】
請求項4記載の本発明によれば、断熱塗料を塗布することで金属製素材を被覆した場合と同様の断熱効果が発揮できる。
【0023】
請求項5記載の発明は、前記基盤を、隙間を介して水平方向に複数並べ、この隙間を敷設面に到達する通水孔としてなることを要旨とするものである。
【0024】
請求項5記載の本発明によれば、複数枚の基盤材を隙間を介して水平方向に並べるだけで、この隙間によって敷設面に到達する通水孔が形成されるから、敷設面に到達する通水孔を別途格別に穿設する必要がなく、加工、施工が容易である。
【0025】
請求項6記載の発明は、保水性基盤材は平板状の紙製、コンクリート製またはセラミックス製であることを要旨とするものである。
【0026】
請求項6記載の本発明によれば、ダンボールなどの使用が可能となり、基盤材の材料の入手が容易である。
【発明の効果】
【0027】
以上述べたように本発明の高温化防止装置は、屋上の温度上昇を抑える手段として、ダンボールなどの単一材料による平板を単層もしくは重層し、これに通水用の孔を設けるだけでよいから、緑化などの場合に比較して維持管理が少なく、施工が容易で専門性がなく、特別の技術を有しない一般の人でも施工が可能であり、また、材料に保水性を有するものを使用したから、緑化同等の低温が保てるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面について本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は本発明の高温化防止装置の実施形態を示す縦断正面図、図2は同上要部の基盤材の平面図、図3は同上単層の状態を示す縦断側面図、図4は同上要部の状態を示す正面図で、本発明の高温化防止装置は、例えば建物の屋上などの床面に敷設するもので、ダンボールやコンクリート、セラミックスなどを材質とする平板を基盤材1とする。
【0029】
基盤3は、図1のように重層構造であり、複数の基盤材1を垂直方向に重層して形成されている。また、図3のように厚みを有する基盤材1を基盤3とし、単層構造とすることもできる。
【0030】
基盤材1の材料としてダンボールやコンクリート、またはセラミックスを採用した理由は、これらが、軽量で導水性、揚水性、透水性および保水性を一体化して備えるものであるからである。
【0031】
この基盤材1に例えば図2のように放射方向に配列される多数の通水孔2を上下の垂直方向に穿設する。この通水孔2としては、浅いもの、深いもの、底部まで貫通するものなど、深さの異なるものが複数穿設されている。通水孔2は基盤材1の最上面となる表面面積の25%以内がよく、それ以上の場合、基盤材1の型崩れが生じる。
【0032】
そして、かかる平板状の基盤材1の複数枚を垂直方向に重層して基盤3を形成するとともに、水平方向に並列させて基盤集合体3aを構成する(図1、4参照)。この状態で、各基盤材1に穿設してある通水孔2が垂直方向で連通し、全体として浅いもの、深いもの、屋上の床面などの敷設面6に到達して貫通するものなど、深度の異なる通水孔2が基盤3に形成される。
【0033】
各基盤材1を重層するとき、基盤材1の間には接合面に水の通路となる隙間4を設け、また、基盤材1と敷設面6との間にも同様の隙間4を設けることができる。この隙間4は例えばスペーサとなる部材を配置して形成されている。隙間4の大きさは数mmであり、基盤材1の性状などに応じて調整する。なお、基盤材1の表面が粗面状であるような場合には、自然に隙間4が生じるので、新たに隙間4を設けなくてもよい。これらの隙間4を介して水は移動し、基盤3における給水路や揚水路の役割を果す。
【0034】
さらに各基盤材1(基盤3)を水平方向に連続させ繋げるときも、図4のように各基盤材1の間に隙間7を設けることで、この隙間7が敷設面6に到達する通水用の貫通孔(通水孔2)として形成される。
【0035】
以上のようにして複数の基盤材1が重層されるとともに水平方向にも連続して並設されて構成された基盤3(基盤集合体3a)は、通水孔2と隙間4および隙間7によって各層への保水と底部への給水とが可能になり、上部からの給水(雨水を含め)と下部からの揚水が生じる。これにより、基盤3全体の保水によって基盤重量の40%保水が可能となり、また、その保水した水分は徐々に減少し、全体の水分が蒸発し基盤3内から外へ出るのは5〜10日程度必要となり、十分な保水機能を備えるものとなる。
【0036】
ダンボール製の基盤3の吸水・保水率は重量に対し100%以上を示すが、紙であるため、持ち上げると、型崩れが生じる欠点がある。これに対しては、前記のように重層(例えば3枚重ねる)構造とすることで強度を増す。この場合、重層構造を維持するために基盤3全面で各層を固定する必要はある。
【0037】
このダンボール製の基盤3の特性は吸水率のよさと、乾燥が速いことであり、高温風によって蒸発散が速く、水分の保持力は小さい。それは土のように保水率10%でもその維持は3日間継続するのとは異なり、10%の保水率は気温30℃、風力4mでの状態で6時間以内で消失する。
【0038】
しかし、保水の継続性に関しては水分の保持力をもった屋上緑化には劣る。そこでこの課題に対し、ダンボール製の基盤3に一旦含まれた水分を徐々に蒸発散させる方法が必要となる。その方法は、保水性の基盤3表面にアルミニウムなどの、太陽光を反射し、高熱性がない(伝熱性の高い)金属製素材で覆うことにある。金属製素材は薄膜状の金属薄板として用いるのがよい。
【0039】
図5、図6はその一例を示し、基盤3の少なくとも上部、すなわち最上層の基盤材1の表面に、多数の通水用の孔8を穿ったアルミホイルなどの軽量で加工しやすく、低価格の金属薄板9を設置する。金属薄板9は、金属製素材の温まってすぐ冷める性質、特に風によって冷却される機能を有し、かかる金属薄板9で基盤材1の表面(上面および側面)を覆うことで、表側は温められても裏側に水分を含んだ基盤材1の低温化が促進される。
【0040】
次に作用について説明する。建物の屋上の床面などの敷設面6に本発明の基盤3を敷設した場合、上部からの給水(雨水を含む)では水が下方へ移動する特性を利用し、基盤3上面から底面に貫通する通水孔2、また、上面から各層に達する通水孔2や隙間7を利用する通水孔2を設けてあるから、これらの通水孔2に流下した水がさらに隙間4を通って各層に浸透するとともに底面に達しここに給水され、さらに敷設面6との隙間4を介して底面全体に水平方向に拡散し、それが再び基盤3に吸収(揚水)されて保水量が増す。
【0041】
また、重層構造による層と層の接合面を密着しない構造によって、その隙間4に水が拡散し吸水面積が増して吸水速度を高め、上部からの給水を基盤3全体に無駄なく拡散させる。
【0042】
そして、多数の通水孔2および隙間4、隙間7は基盤3への水の拡散と、空気の流通を起し、蒸れることや嫌気状態になることを防ぐ。
【0043】
また、基盤3表面からの蒸発散の低減を行い、保水の継続時間を延長させる働きがある。
【0044】
さらにアルミホイルなどの光反射の大きい金属薄板9で表面を被覆してあるから、その光沢は太陽光に反射し、熱吸収を低下させ高温化を低減する。また、基盤3が吸水し保水した水分の蒸発散を緩やかにする。さらに、金属製素材(金属薄板9)の表側で生じる冷却機能により基盤3への熱の伝達を遅らせ、基盤3に対して熱量を低減し低温化の促進を行う。
【0045】
また、金属製素材の堅牢性や耐水性によって、ダンボール製の基盤3を表面から保護し、劣化や型崩れを防止して耐久性を向上させる。
【0046】
なお、ダンボール製の基盤3の乾燥時重量は3層の場合、2Kg/m2以上で水を100%吸水した場合は4Kg/m2以下である。これは屋上緑化の荷重条件さらには一般的な屋上やバルコニーに積載可能な荷重の基準内にある。
【0047】
このダンボール基盤3は工業製品化した場合はロール状として、絨毯と同様の扱いで敷くことができる。人手での製作は例えば空きダンボール箱を解体して平板状としてそれを水平方向に複数並べ、風などでの移動を防止するためにアンカーもしくは置石などで固定し、雨水だけでなく必要に応じて打ち水することで基盤3の低温化を促進できる。
【0048】
そして、ダンボール製の基盤3は紙製であるから、使用後不要になれば資源ゴミとして、金属薄板9は金属ゴミとしてそれぞれリサイクルされる。
【0049】
図7は、アルミホイルで被覆したダンボール製の基盤3による低温化効果の実験結果である。日中に打ち水することでコンクリート床の表面温度に対しアルミダンボール(基盤3)の表面で−6℃、アルミダンボール下コンクリート床(敷設面6)では−4℃を示し、午前中の熱蓄積があり、基盤3が高温化してしまった場合であっても低温化することが示された。このときのダンボール製の基盤3の保水率は83%、約3時間で16%減少し、この減少による気化熱が低温化を促進させたと考えられる(図7参照)。
【0050】
午前中、コンクリート床や基盤3が高温化する前に打ち水をして熱蓄積を低減させたのが図8で、コンクリート床の表面温度が最高47℃に対し、アルミダンボール(基盤3)の表面は42℃、アルミダンボール下コンクリート床(敷設面6)の表面は38℃を示し、低温化されることがわかった。
【0051】
この図7、図8には示されていないが、アルミホイルなどの金属製素材の被覆による低温効果はアルミホイルなどで被覆しない場合と比較すると、顕著であった。図9に保水性基盤材1として、後述する軽量・ソフトコンクリート製の基盤3による実施例を示す。アルミホイルで覆わない態様の基盤3(ソフトコンクリート平板)に対してアルミホイルで表面を覆った基盤3(ソフトコンクリート平板表面アルミホイル)の表面温度では5〜7℃の低温を示した。基盤3の表面温度も敷設面6も目標とする範囲にあり、コンクリート製基盤3による本発明の高温化防止装置でも低温化を促進することが明らかになった。
【0052】
なお、断熱効果を発揮する材料としては、アルミホイルなどの金属性素材(金属薄板9)に限定されるものではなく、同様の断熱効果を発揮する断熱または熱反射塗料を基盤3の表面に塗布することもできる。このような断熱塗料としては、例えば特開2002−105385号公報に記載されたアルミノ珪酸ソーダガラス含有の塗布式断熱材が挙げられる。またこれに相当する断熱塗料は商品名ガイナとして市場で入手できる。
【0053】
このように簡易的にはダンボールや厚紙などの紙製でも基盤3が成り立つが、紙製では基盤3の耐久性に乏しい。耐水性不足による基盤3の型崩れという問題があることから、基盤3としては、紙製より強度を持ち耐久性が高く、基盤3に含んだ水分が徐々に蒸発散する性状を有するコンクリートやセラミックスを用いるとよい。
【0054】
コンクリートを採用する場合、保水性コンクリート製とするのが好ましい。保水性コンクリートの一例は、軽量粗骨材および軽量細骨材を配合した軽量コンクリートのセメントマトリックス硬化体中に、植物繊維で軽量粗骨材の粒子間が連絡された通水網組織を形成してなる軽量・ソフトコンクリートである(特開2007−314367号公報参照)。この軽量・ソフトコンクリートは、乾燥重量をW1、飽水重量をW2としたとき、含水率(%)(=100×(W2−W1)/W1)が60%以上を示し且つ含水率60%のときの比重が1以下である。軽量粗骨材としてはゼオライト、軽量細骨材としてはバーミキュライト、セメントとしてはMgOおよびP2O5を主成分とする低pHセメント、植物繊維としては綿、をそれぞれ用いるとよい。
【0055】
実施例で使用した保水性コンクリート製の基盤3は、平板状に成形された基盤材1により形成されている。構造的にはダンボール製の基盤3と同様、通水孔2や隙間4、7を有している。通水孔2としては、浅いもの、深いもの、底部まで貫通するものなど、深さの異なるものが複数穿設されている(図1、3参照)。通水孔2は基盤3の最上面となる表面面積の60%以内にすることでより速い吸水を導きだすようにした。
【0056】
さらにダンボール製の基盤3がもつ軽量性も要求される。実施例で使用した保水性コンクリート製の基盤3は3cm厚で乾燥時重量11Kg/m2、含水率50%時重量16Kg/m2であり、屋上緑化での荷重条件の範囲内にある。屋上緑化の荷重例として、土壌厚10〜15cm+排水層5cmのケイソイル・草花名人工法の場合、110〜150Kg/m2(十分に水分を含んだ状態)である。
【0057】
図10は、軽量・ソフトコンクリート製基盤3の表面にセラミック断熱塗料(商品名シスタコート)を塗布した実施例である。断熱塗料を塗布した基盤3の表面温度(塗布有)は塗布しないもの(通常)より10℃前後低下し、屋上の表面温度(比較地点屋上)より15℃前後低下することが明らかになった。発明者の観察では、断熱塗料は基盤3の表面(上面と側面)に塗布するとともに、裏面に塗布するのも有効であった。
【0058】
さらに、断熱塗料を塗布した保水性コンクリート製基盤3に雨水や打ち水などで吸水させることにより低温化がいっそう促進する。実施例によれば、含水率30重量%に保水した状態の基盤3の表面温度(塗料表・ウェット)が、屋上の表面温度(比較地点屋上)に対し20℃前後低下した。また屋上床下の室内天井温度は、基盤3を設置しない部分(比較地点天井裏)と比較し、基盤3を設置した部分(ブロック下天井裏)は5℃前後低下した。(図10参照)。
【0059】
保水性基盤材1としては、セラミックスを用いることもできる。セラミックスを採用する場合、多孔質セラミックス製とするのが好ましい。多孔質セラミックスとしては例えば、特開2005−239467号公報に記載された内部に扁平状の連続貫通気孔を持つスポンジ状のセラミックス(発泡セラミックス)が挙げられる。またこれに相当する製品は商品名ハイセラとして市場で入手できる。
【0060】
コンクリート製やセラミックス製の基盤3においても、重層構造を維持するため、各層がずれないように一体化されることが望ましい。例えば、基盤3を建物の屋上などに設置する際、金具などの固定部材を利用して基盤3を位置決めし固定する。図11に固定部材によって基盤3を折板屋根に設置する施工例を示す。折板屋根10の凸部10aにはベース金具11が設けられており、基盤3はベース金具11で支持されている。ベース金具11には固定部材となる端金具12の一端が固定される。端金具12の他端は基盤3の端縁部を位置決めして固定するとともに、基盤3の上部に被覆される金属製素材(金属薄板9)が風などで移動するのを防止する機能も有する。各基盤3の間に隙間7を設けることで、この隙間7は通水孔2として形成される。このように敷設面6となる建物の屋上などが凹凸を有する場合であっても、基盤3を設置することができる。
【0061】
図11の施工例はダンボール製の基盤3にも適用可能である。また、折板屋根10の凹部10bに仕切りを設けて貯水空間13を形成し、基盤3への給水手段を構成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の高温化防止装置の実施形態を示す縦断正面図である。
【図2】本発明の高温化防止装置の実施形態を示す要部の基盤材の平面図である。
【図3】本発明の高温化防止装置の実施形態を示す要部の単層の状態を示す縦断側面図である。
【図4】本発明の高温化防止装置の実施形態を示す要部の状態を示す正面図である。
【図5】本発明の高温化防止装置の実施形態を示す基盤材に金属薄板を被覆した状態の斜視図である。
【図6】本発明の高温化防止装置の実施形態を示す基盤材に金属薄板を被覆した状態の正面図である。
【図7】ダンボール製基盤に日中、打ち水をした場合の低温化を示すグラフである。
【図8】ダンボール製基盤に午前中、打ち水をした場合の低温化を示すグラフである。
【図9】保水性コンクリート製基盤に金属薄板を被覆した場合と被覆しない場合の低温化を比較するグラフである。
【図10】保水性コンクリート製基盤に断熱塗料を塗布した場合と塗布しない場合の低温化を比較するグラフである。
【図11】固定部材によって基盤を折板屋根に設置した状態を示す縦断正面図である。
【符号の説明】
【0063】
1 基盤材 2 通水孔
3 基盤 4 隙間
3a 基盤集合体
6 敷設面 7 隙間
8 孔 9 金属薄板(金属製素材)
10 折板屋根
10a 凸部 10b 凹部
11 ベース金具 12 端金具(固定部材)
13 貯水空間
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建物の屋上の下の空間が高温にならないよう、屋上が高温化することを防止する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物の屋上や人工地盤などは通常、押えコンクリートやアスファルト舗装などの仕上げが施される。日射により特に夏季には温度が非常に上昇するとともに蓄熱されることから、都市部などにおけるヒートアイランド現象を引き起こす要因のひとつとなっている。さらに、建物内部の温度も上昇し、室内環境が悪化することから、冷房などの空調負荷やエネルギー消費の増大が問題となっている。
【0003】
このような屋上の熱吸収によって階下の空間が高温になる状態を解決する方法として、屋上緑化や屋上床面に反射による高温化を低減する塗料の塗布がある。これらの方法をクールルーフと称し、その普及が進められている。
【0004】
しかし屋上緑化では、緑化に必要な根付け用の土やそれを支える構造物、さらには植物の維持管理に経費が必要となり、また、耐久年数が経過した屋上の防水工事では緑化成分を撤去する必要もあり、手間を費用を要する。
【0005】
緑化には癒しの効果があり必要とされるが、デパートや集客で成り立つ建物以外では、屋上の利用はほとんどなく、給水、冷房装置の置場でしかない。このような現状の屋上に対して本当に緑化する必要性があるかは疑問である。
【0006】
低温化塗料についても、60℃に対し10℃程度の低温作用であり、塗布費用に対し低温化効果が低い状況がある。さらに次の防水工事での対応について塗料をそのままにするか、剥離するかについての決定はされておらず、課題が残る。
【0007】
そこで、緑化や低温化塗料によらずに、屋上の温度上昇を抑えることのできるシステムがあり、これは例えば、マンションなどの建築物の屋上スラブの上部に積層される防水層と、防水層の上部に積層される水を拡散させる機能を有する素材からなる導水材層と、導水材層の上部に積層される導水性、揚水性および保水性を有する素材からなる揚水材層と、導水材層に水を供給する吸水手段とからなる(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−126993号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特開2005−126993号に記載の発明は、屋上スラブの上に、防水層、導水材層および揚水材層を順次積層し、導水材層に水を供給する給水手段によって、両層の協働により全体に湿潤させる湿潤性システムであり、複数の異なる性質の層を組み合わせる必要があり、また、この積層したものに給水手段で給水する必要もある。
【0009】
このため、システムが複雑となり、種々の異なる材質の層を用意する必要があるだけでなく、施工もこれらの層を順次積層する必要があり、手間を要する。
【0010】
本発明は前記従来例の不都合を解消し、ヒートアイランド現象の緩和手段として、緑化などの場合に比較して維持管理の手間が少なく、施工が容易であり、専門知識を有しない人でも設置が可能で低コストな高温化防止装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の発明は、建物の屋上などに設置する高温化防止装置であって、保水性基盤材からなる基盤を形成し、基盤の敷設面に到達する通水孔と前記敷設面に達しない通水孔とを上部から下部に向けて設けたことを要旨とするものである。
【0012】
請求項2記載の発明は、建物の屋上などに設置する高温化防止装置であって、複数の保水性基盤材を垂直方向に重層して基盤を形成し、各層に達する通水孔と基盤の敷設面に到達する通水孔とを上層から下層に向けて設けたことを要旨とするものである。
【0013】
請求項1、請求項2記載の本発明によれば、保水性基盤材を単層もしくは重層して基盤を形成するだけの構造で保水できるから、施工が容易で、特別の技術を要しない。また、基盤材も容易に入手できる。
【0014】
そして、重層した基盤材に垂直方向に貫通する通水孔を設けるだけでよいから、この通水孔に上方から流下した水(雨水を含む)が各層に達し、さらに各層の間の隙間に流れることで拡散し吸水面積が増し、また、底面に到達した水はさらには基盤の底部全体に拡散した後、各層に揚水されて吸収されるから、大きな保水量を確保できる。
【0015】
そして、保水された水分は、徐々に減少し、蒸発散することで屋上の低温化が図れる。
【0016】
請求項3記載の発明は、前記基盤上部を金属製素材で被覆し、この金属製素材に前記基盤に設けた通水孔に連通する孔を穿設することを要旨とするものである。
【0017】
請求項3記載の本発明によれば、基盤の上面に金属製素材を設けることで、この金属製素材が風によって冷却されることにより、その裏面に存在する水を含んだ基盤の低温化が促進される。そして、金属製素材によって基盤表面からの水の蒸発散が低減され、保水時間を延長できる。
【0018】
また、表面を金属製素材で覆っても、これには孔が穿設してあるから基盤への水の拡散と空気の流通を発生させ、むれることを防げる。
【0019】
さらに金属の光沢により太陽光を反射して熱吸収を低下させ、高温化が低減される。
【0020】
金属の有する耐久性、変形しにくい特質により、基盤の劣化を防ぎ、耐久性が強化される。
【0021】
請求項4記載の発明は、前記基盤の表面に断熱塗料を塗布することを要旨とするものである。
【0022】
請求項4記載の本発明によれば、断熱塗料を塗布することで金属製素材を被覆した場合と同様の断熱効果が発揮できる。
【0023】
請求項5記載の発明は、前記基盤を、隙間を介して水平方向に複数並べ、この隙間を敷設面に到達する通水孔としてなることを要旨とするものである。
【0024】
請求項5記載の本発明によれば、複数枚の基盤材を隙間を介して水平方向に並べるだけで、この隙間によって敷設面に到達する通水孔が形成されるから、敷設面に到達する通水孔を別途格別に穿設する必要がなく、加工、施工が容易である。
【0025】
請求項6記載の発明は、保水性基盤材は平板状の紙製、コンクリート製またはセラミックス製であることを要旨とするものである。
【0026】
請求項6記載の本発明によれば、ダンボールなどの使用が可能となり、基盤材の材料の入手が容易である。
【発明の効果】
【0027】
以上述べたように本発明の高温化防止装置は、屋上の温度上昇を抑える手段として、ダンボールなどの単一材料による平板を単層もしくは重層し、これに通水用の孔を設けるだけでよいから、緑化などの場合に比較して維持管理が少なく、施工が容易で専門性がなく、特別の技術を有しない一般の人でも施工が可能であり、また、材料に保水性を有するものを使用したから、緑化同等の低温が保てるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面について本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は本発明の高温化防止装置の実施形態を示す縦断正面図、図2は同上要部の基盤材の平面図、図3は同上単層の状態を示す縦断側面図、図4は同上要部の状態を示す正面図で、本発明の高温化防止装置は、例えば建物の屋上などの床面に敷設するもので、ダンボールやコンクリート、セラミックスなどを材質とする平板を基盤材1とする。
【0029】
基盤3は、図1のように重層構造であり、複数の基盤材1を垂直方向に重層して形成されている。また、図3のように厚みを有する基盤材1を基盤3とし、単層構造とすることもできる。
【0030】
基盤材1の材料としてダンボールやコンクリート、またはセラミックスを採用した理由は、これらが、軽量で導水性、揚水性、透水性および保水性を一体化して備えるものであるからである。
【0031】
この基盤材1に例えば図2のように放射方向に配列される多数の通水孔2を上下の垂直方向に穿設する。この通水孔2としては、浅いもの、深いもの、底部まで貫通するものなど、深さの異なるものが複数穿設されている。通水孔2は基盤材1の最上面となる表面面積の25%以内がよく、それ以上の場合、基盤材1の型崩れが生じる。
【0032】
そして、かかる平板状の基盤材1の複数枚を垂直方向に重層して基盤3を形成するとともに、水平方向に並列させて基盤集合体3aを構成する(図1、4参照)。この状態で、各基盤材1に穿設してある通水孔2が垂直方向で連通し、全体として浅いもの、深いもの、屋上の床面などの敷設面6に到達して貫通するものなど、深度の異なる通水孔2が基盤3に形成される。
【0033】
各基盤材1を重層するとき、基盤材1の間には接合面に水の通路となる隙間4を設け、また、基盤材1と敷設面6との間にも同様の隙間4を設けることができる。この隙間4は例えばスペーサとなる部材を配置して形成されている。隙間4の大きさは数mmであり、基盤材1の性状などに応じて調整する。なお、基盤材1の表面が粗面状であるような場合には、自然に隙間4が生じるので、新たに隙間4を設けなくてもよい。これらの隙間4を介して水は移動し、基盤3における給水路や揚水路の役割を果す。
【0034】
さらに各基盤材1(基盤3)を水平方向に連続させ繋げるときも、図4のように各基盤材1の間に隙間7を設けることで、この隙間7が敷設面6に到達する通水用の貫通孔(通水孔2)として形成される。
【0035】
以上のようにして複数の基盤材1が重層されるとともに水平方向にも連続して並設されて構成された基盤3(基盤集合体3a)は、通水孔2と隙間4および隙間7によって各層への保水と底部への給水とが可能になり、上部からの給水(雨水を含め)と下部からの揚水が生じる。これにより、基盤3全体の保水によって基盤重量の40%保水が可能となり、また、その保水した水分は徐々に減少し、全体の水分が蒸発し基盤3内から外へ出るのは5〜10日程度必要となり、十分な保水機能を備えるものとなる。
【0036】
ダンボール製の基盤3の吸水・保水率は重量に対し100%以上を示すが、紙であるため、持ち上げると、型崩れが生じる欠点がある。これに対しては、前記のように重層(例えば3枚重ねる)構造とすることで強度を増す。この場合、重層構造を維持するために基盤3全面で各層を固定する必要はある。
【0037】
このダンボール製の基盤3の特性は吸水率のよさと、乾燥が速いことであり、高温風によって蒸発散が速く、水分の保持力は小さい。それは土のように保水率10%でもその維持は3日間継続するのとは異なり、10%の保水率は気温30℃、風力4mでの状態で6時間以内で消失する。
【0038】
しかし、保水の継続性に関しては水分の保持力をもった屋上緑化には劣る。そこでこの課題に対し、ダンボール製の基盤3に一旦含まれた水分を徐々に蒸発散させる方法が必要となる。その方法は、保水性の基盤3表面にアルミニウムなどの、太陽光を反射し、高熱性がない(伝熱性の高い)金属製素材で覆うことにある。金属製素材は薄膜状の金属薄板として用いるのがよい。
【0039】
図5、図6はその一例を示し、基盤3の少なくとも上部、すなわち最上層の基盤材1の表面に、多数の通水用の孔8を穿ったアルミホイルなどの軽量で加工しやすく、低価格の金属薄板9を設置する。金属薄板9は、金属製素材の温まってすぐ冷める性質、特に風によって冷却される機能を有し、かかる金属薄板9で基盤材1の表面(上面および側面)を覆うことで、表側は温められても裏側に水分を含んだ基盤材1の低温化が促進される。
【0040】
次に作用について説明する。建物の屋上の床面などの敷設面6に本発明の基盤3を敷設した場合、上部からの給水(雨水を含む)では水が下方へ移動する特性を利用し、基盤3上面から底面に貫通する通水孔2、また、上面から各層に達する通水孔2や隙間7を利用する通水孔2を設けてあるから、これらの通水孔2に流下した水がさらに隙間4を通って各層に浸透するとともに底面に達しここに給水され、さらに敷設面6との隙間4を介して底面全体に水平方向に拡散し、それが再び基盤3に吸収(揚水)されて保水量が増す。
【0041】
また、重層構造による層と層の接合面を密着しない構造によって、その隙間4に水が拡散し吸水面積が増して吸水速度を高め、上部からの給水を基盤3全体に無駄なく拡散させる。
【0042】
そして、多数の通水孔2および隙間4、隙間7は基盤3への水の拡散と、空気の流通を起し、蒸れることや嫌気状態になることを防ぐ。
【0043】
また、基盤3表面からの蒸発散の低減を行い、保水の継続時間を延長させる働きがある。
【0044】
さらにアルミホイルなどの光反射の大きい金属薄板9で表面を被覆してあるから、その光沢は太陽光に反射し、熱吸収を低下させ高温化を低減する。また、基盤3が吸水し保水した水分の蒸発散を緩やかにする。さらに、金属製素材(金属薄板9)の表側で生じる冷却機能により基盤3への熱の伝達を遅らせ、基盤3に対して熱量を低減し低温化の促進を行う。
【0045】
また、金属製素材の堅牢性や耐水性によって、ダンボール製の基盤3を表面から保護し、劣化や型崩れを防止して耐久性を向上させる。
【0046】
なお、ダンボール製の基盤3の乾燥時重量は3層の場合、2Kg/m2以上で水を100%吸水した場合は4Kg/m2以下である。これは屋上緑化の荷重条件さらには一般的な屋上やバルコニーに積載可能な荷重の基準内にある。
【0047】
このダンボール基盤3は工業製品化した場合はロール状として、絨毯と同様の扱いで敷くことができる。人手での製作は例えば空きダンボール箱を解体して平板状としてそれを水平方向に複数並べ、風などでの移動を防止するためにアンカーもしくは置石などで固定し、雨水だけでなく必要に応じて打ち水することで基盤3の低温化を促進できる。
【0048】
そして、ダンボール製の基盤3は紙製であるから、使用後不要になれば資源ゴミとして、金属薄板9は金属ゴミとしてそれぞれリサイクルされる。
【0049】
図7は、アルミホイルで被覆したダンボール製の基盤3による低温化効果の実験結果である。日中に打ち水することでコンクリート床の表面温度に対しアルミダンボール(基盤3)の表面で−6℃、アルミダンボール下コンクリート床(敷設面6)では−4℃を示し、午前中の熱蓄積があり、基盤3が高温化してしまった場合であっても低温化することが示された。このときのダンボール製の基盤3の保水率は83%、約3時間で16%減少し、この減少による気化熱が低温化を促進させたと考えられる(図7参照)。
【0050】
午前中、コンクリート床や基盤3が高温化する前に打ち水をして熱蓄積を低減させたのが図8で、コンクリート床の表面温度が最高47℃に対し、アルミダンボール(基盤3)の表面は42℃、アルミダンボール下コンクリート床(敷設面6)の表面は38℃を示し、低温化されることがわかった。
【0051】
この図7、図8には示されていないが、アルミホイルなどの金属製素材の被覆による低温効果はアルミホイルなどで被覆しない場合と比較すると、顕著であった。図9に保水性基盤材1として、後述する軽量・ソフトコンクリート製の基盤3による実施例を示す。アルミホイルで覆わない態様の基盤3(ソフトコンクリート平板)に対してアルミホイルで表面を覆った基盤3(ソフトコンクリート平板表面アルミホイル)の表面温度では5〜7℃の低温を示した。基盤3の表面温度も敷設面6も目標とする範囲にあり、コンクリート製基盤3による本発明の高温化防止装置でも低温化を促進することが明らかになった。
【0052】
なお、断熱効果を発揮する材料としては、アルミホイルなどの金属性素材(金属薄板9)に限定されるものではなく、同様の断熱効果を発揮する断熱または熱反射塗料を基盤3の表面に塗布することもできる。このような断熱塗料としては、例えば特開2002−105385号公報に記載されたアルミノ珪酸ソーダガラス含有の塗布式断熱材が挙げられる。またこれに相当する断熱塗料は商品名ガイナとして市場で入手できる。
【0053】
このように簡易的にはダンボールや厚紙などの紙製でも基盤3が成り立つが、紙製では基盤3の耐久性に乏しい。耐水性不足による基盤3の型崩れという問題があることから、基盤3としては、紙製より強度を持ち耐久性が高く、基盤3に含んだ水分が徐々に蒸発散する性状を有するコンクリートやセラミックスを用いるとよい。
【0054】
コンクリートを採用する場合、保水性コンクリート製とするのが好ましい。保水性コンクリートの一例は、軽量粗骨材および軽量細骨材を配合した軽量コンクリートのセメントマトリックス硬化体中に、植物繊維で軽量粗骨材の粒子間が連絡された通水網組織を形成してなる軽量・ソフトコンクリートである(特開2007−314367号公報参照)。この軽量・ソフトコンクリートは、乾燥重量をW1、飽水重量をW2としたとき、含水率(%)(=100×(W2−W1)/W1)が60%以上を示し且つ含水率60%のときの比重が1以下である。軽量粗骨材としてはゼオライト、軽量細骨材としてはバーミキュライト、セメントとしてはMgOおよびP2O5を主成分とする低pHセメント、植物繊維としては綿、をそれぞれ用いるとよい。
【0055】
実施例で使用した保水性コンクリート製の基盤3は、平板状に成形された基盤材1により形成されている。構造的にはダンボール製の基盤3と同様、通水孔2や隙間4、7を有している。通水孔2としては、浅いもの、深いもの、底部まで貫通するものなど、深さの異なるものが複数穿設されている(図1、3参照)。通水孔2は基盤3の最上面となる表面面積の60%以内にすることでより速い吸水を導きだすようにした。
【0056】
さらにダンボール製の基盤3がもつ軽量性も要求される。実施例で使用した保水性コンクリート製の基盤3は3cm厚で乾燥時重量11Kg/m2、含水率50%時重量16Kg/m2であり、屋上緑化での荷重条件の範囲内にある。屋上緑化の荷重例として、土壌厚10〜15cm+排水層5cmのケイソイル・草花名人工法の場合、110〜150Kg/m2(十分に水分を含んだ状態)である。
【0057】
図10は、軽量・ソフトコンクリート製基盤3の表面にセラミック断熱塗料(商品名シスタコート)を塗布した実施例である。断熱塗料を塗布した基盤3の表面温度(塗布有)は塗布しないもの(通常)より10℃前後低下し、屋上の表面温度(比較地点屋上)より15℃前後低下することが明らかになった。発明者の観察では、断熱塗料は基盤3の表面(上面と側面)に塗布するとともに、裏面に塗布するのも有効であった。
【0058】
さらに、断熱塗料を塗布した保水性コンクリート製基盤3に雨水や打ち水などで吸水させることにより低温化がいっそう促進する。実施例によれば、含水率30重量%に保水した状態の基盤3の表面温度(塗料表・ウェット)が、屋上の表面温度(比較地点屋上)に対し20℃前後低下した。また屋上床下の室内天井温度は、基盤3を設置しない部分(比較地点天井裏)と比較し、基盤3を設置した部分(ブロック下天井裏)は5℃前後低下した。(図10参照)。
【0059】
保水性基盤材1としては、セラミックスを用いることもできる。セラミックスを採用する場合、多孔質セラミックス製とするのが好ましい。多孔質セラミックスとしては例えば、特開2005−239467号公報に記載された内部に扁平状の連続貫通気孔を持つスポンジ状のセラミックス(発泡セラミックス)が挙げられる。またこれに相当する製品は商品名ハイセラとして市場で入手できる。
【0060】
コンクリート製やセラミックス製の基盤3においても、重層構造を維持するため、各層がずれないように一体化されることが望ましい。例えば、基盤3を建物の屋上などに設置する際、金具などの固定部材を利用して基盤3を位置決めし固定する。図11に固定部材によって基盤3を折板屋根に設置する施工例を示す。折板屋根10の凸部10aにはベース金具11が設けられており、基盤3はベース金具11で支持されている。ベース金具11には固定部材となる端金具12の一端が固定される。端金具12の他端は基盤3の端縁部を位置決めして固定するとともに、基盤3の上部に被覆される金属製素材(金属薄板9)が風などで移動するのを防止する機能も有する。各基盤3の間に隙間7を設けることで、この隙間7は通水孔2として形成される。このように敷設面6となる建物の屋上などが凹凸を有する場合であっても、基盤3を設置することができる。
【0061】
図11の施工例はダンボール製の基盤3にも適用可能である。また、折板屋根10の凹部10bに仕切りを設けて貯水空間13を形成し、基盤3への給水手段を構成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の高温化防止装置の実施形態を示す縦断正面図である。
【図2】本発明の高温化防止装置の実施形態を示す要部の基盤材の平面図である。
【図3】本発明の高温化防止装置の実施形態を示す要部の単層の状態を示す縦断側面図である。
【図4】本発明の高温化防止装置の実施形態を示す要部の状態を示す正面図である。
【図5】本発明の高温化防止装置の実施形態を示す基盤材に金属薄板を被覆した状態の斜視図である。
【図6】本発明の高温化防止装置の実施形態を示す基盤材に金属薄板を被覆した状態の正面図である。
【図7】ダンボール製基盤に日中、打ち水をした場合の低温化を示すグラフである。
【図8】ダンボール製基盤に午前中、打ち水をした場合の低温化を示すグラフである。
【図9】保水性コンクリート製基盤に金属薄板を被覆した場合と被覆しない場合の低温化を比較するグラフである。
【図10】保水性コンクリート製基盤に断熱塗料を塗布した場合と塗布しない場合の低温化を比較するグラフである。
【図11】固定部材によって基盤を折板屋根に設置した状態を示す縦断正面図である。
【符号の説明】
【0063】
1 基盤材 2 通水孔
3 基盤 4 隙間
3a 基盤集合体
6 敷設面 7 隙間
8 孔 9 金属薄板(金属製素材)
10 折板屋根
10a 凸部 10b 凹部
11 ベース金具 12 端金具(固定部材)
13 貯水空間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の屋上などに設置する高温化防止装置であって、保水性基盤材からなる基盤を形成し、基盤の敷設面に到達する通水孔と前記敷設面に達しない通水孔とを上部から下部に向けて設けたことを特徴とする高温化防止装置。
【請求項2】
建物の屋上などに設置する高温化防止装置であって、複数の保水性基盤材を垂直方向に重層して基盤を形成し、各層に達する通水孔と基盤の敷設面に到達する通水孔とを上層から下層に向けて設けたことを特徴とする高温化防止装置。
【請求項3】
前記基盤上部を金属製素材で被覆し、この金属製素材に前記基盤に設けた通水孔に連通する孔を穿設する請求項1または請求項2に記載の高温化防止装置。
【請求項4】
前記基盤の表面に断熱塗料を塗布する請求項1または請求項2に記載の高温化防止装置。
【請求項5】
前記基盤を、隙間を介して水平方向に複数並べ、この隙間を敷設面に到達する通水孔としてなる請求項1から請求項4のいずれかに記載の高温化防止装置。
【請求項6】
前記保水性基盤材は平板状の紙製、コンクリート製またはセラミックス製である請求項1から請求項5のいずれかに記載の高温化防止装置。
【請求項1】
建物の屋上などに設置する高温化防止装置であって、保水性基盤材からなる基盤を形成し、基盤の敷設面に到達する通水孔と前記敷設面に達しない通水孔とを上部から下部に向けて設けたことを特徴とする高温化防止装置。
【請求項2】
建物の屋上などに設置する高温化防止装置であって、複数の保水性基盤材を垂直方向に重層して基盤を形成し、各層に達する通水孔と基盤の敷設面に到達する通水孔とを上層から下層に向けて設けたことを特徴とする高温化防止装置。
【請求項3】
前記基盤上部を金属製素材で被覆し、この金属製素材に前記基盤に設けた通水孔に連通する孔を穿設する請求項1または請求項2に記載の高温化防止装置。
【請求項4】
前記基盤の表面に断熱塗料を塗布する請求項1または請求項2に記載の高温化防止装置。
【請求項5】
前記基盤を、隙間を介して水平方向に複数並べ、この隙間を敷設面に到達する通水孔としてなる請求項1から請求項4のいずれかに記載の高温化防止装置。
【請求項6】
前記保水性基盤材は平板状の紙製、コンクリート製またはセラミックス製である請求項1から請求項5のいずれかに記載の高温化防止装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−174240(P2009−174240A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−16060(P2008−16060)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】
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