説明

高電圧対応多極プラグコネクター

【課題】多芯ケーブルを接続する多極プラグコネクターは、電源などに用いる高圧の電気的性能を確保する為に、隣接する端子間に長大な絶縁距離を設ける必要があり、コンパクト化、実装面積の狭小化の阻げとなっていた。
【解決手段】突起部2の端面3及び周面4に信号用端子の接触部5が設けられていると共に、突起部の端面から軸心と平行に、基部1側に向かって、端面側及び周面側が開口した一対の対向した角柱状の切欠溝6が形成され、切欠溝の底面16に高圧電流用端子の接触部が設けられている多極プラグAと、内径側に多極プラグの突起部が挿入嵌合される凹穿部が形成されており、凹穿部の底面及び内周面のそれぞれ対応する位置に信号用端子の接触部が設けられていると共に、底面からは、角柱状突起が形成されており、角柱状突起の端面の対応する位置に、高圧電流用端子の接触部が形成されている多極ソケット、とから高電圧対応プラグコネクターを構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高電圧対応多極プラグコネクター、詳しくは実装スペースの狭小化の要求に応えることが出来る、コンパクトな高電圧対応多極プラグコネクターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
多極コネクターは、多極プラグとこれを挿入嵌合させる多極ソケットからなる電気的接続具であり、自動車、産業機器、医療機器等の各種電子機器に広く用いられているが、これら電子機器には高電圧端子を有するものも多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】なし
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】なし
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の多極プラグコネクターにおいては、その電気的性能を維持するため、隣接する端子間の絶縁距離は、平面上の距離を伸張することによって確保するのが普通であった。又、端子間の平面上に梁の様な段差を設け、これによって端子間の沿面距離を大きくして電気的性能を確保する試みもなされていた。
【0006】
しかしながら、端子間の絶縁距離を大きくするには、平面上の実装面積を大きく取る必要があり、一方、端子間に梁のような段差を設けて沿面距離を大きくするには、厚さを大きくしなければならず、いずれの方法を取るにしても、サイズの大型化は免れず、それに伴い、実装面積も大きくなり、機器の小型化、実装面積の狭小化の要求には十分応えられなかった。
【0007】
特に、複数の端子の中に電源等に用いる高圧線を有する多極プラグコネクターの場合、その電気的性能を確保するためには、長大な絶縁距離を設ける必要があり、この絶縁距離を平面上の空間距離や沿面距離によって確保しようとすると、その実装面積は不都合なほど、大きくならざるを得なかった。
【0008】
この発明は、この高圧線を有する多極プラグコネクターにおける上記問題点を解決せんとしてなされたものであり、十分な電気的性能を持ちながら、コンパクトで、実装面積の狭小化の要求に十分応えることが出来る多極プラグコネクターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
中空筒状をなした基部の先端側に、絶縁性素材からなる柱状の突起部が形成され、該突起部の端面及び周面の適当位置に信号用端子の接触部が設けられていると共に、該突起部の端面から軸心と平行に、基部側に向かって、端面側及び周面側が開口した一対の対向した角柱状の切欠溝が形成され、該切欠溝の底面に高圧電流用端子の接触部が設けられている多極プラグと; 筒状をなし、内径側に前記多極プラグの突起部が挿入嵌合される凹穿部が形成されており、該凹穿部の底面及び内周面のそれぞれ対応する位置に前記多極プラグの信号用端子の接触部と接触して電気的に導通させる信号用端子の接触部が設けられていると共に、底面からは、前記多極プラグの切欠溝が嵌り込む角柱状突起が形成されており、該角柱状突起の端面の対応する位置に、高圧電流用端子の接触部が形成されている多極ソケット;とから高電圧対応プラグコネクター構成することにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0010】
多極ソケットAの凹穿部9に多極プラグBの突起部2を挿入嵌合し、それぞれの信号用端子の接触部5と12,高圧電流用端子の接触部7と15とを圧接させて、これらを電気的に通電させるものであるが、多極プラグAの高圧電流用端子の接触部7は切欠溝6の底面16に形成されているので、他の信号用端子の接触部の固定箇所との間には段差が形成されていることになり、これにより、接触部間には十分な沿面距離が確保され、平面上で絶縁距離を確保する場合に比べ、多極プラグA及び多極ソケットBの全体の寸法を小型化出来、実装面積の狭小化が実現されている。
【0011】
又、突起部2に形成されている一対の切欠溝6、6を非対称形状にした場合には、多極プラグAの多極ソケットBへの誤嵌合を防止することが出来る様になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明に係る高電圧対応プラグコネクターの実施例1の全体の斜視図。
【図2】この発明の構成要素である多極プラグAの要部の拡大斜視図。
【図3】同じく、その構成要素である多極ソケットBの要部の拡大斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
多極プラグAの突起部2に角柱状の切欠溝6を形成し、この切欠溝6の底面16に高圧電流用端子の接触部7を設けることにより、高圧電流用端子の接触部7と信号用端子接触部5との間に段差を設けて、これにより両者間の沿面距離を確保した点に大きな特徴が存する。
【実施例1】
【0014】
この発明に係る高電圧対応多極プラグコネクターは、多極プラグAと、この多極プラグAが挿入嵌合される多極ソケットBとから構成されている。
【0015】
図1及び図2において、1はこの多極プラグAの基部であり、空中円筒状をなし、絶縁性を有する合成樹脂を素材としている。そして、この基部1の先端側には、それより径の小さい絶縁性を有する合成樹脂からなる円柱状の突起部2が同心円状に形成されており、この突起部2の端面3及び周面4の適当位置には信号用端子の接触部5が形成されている。
【0016】
又、突起部2の端面3から軸心と平行に、端面3側及び周面4側が開口した角柱状の切欠溝6,6が、対向して一対形成されている。この該切欠溝6の底面16は、軸心と直角の方向、即ち端面3と平行な向きに形成されている。そして、この底面16には、高圧電流用端子の接触部7が形成されている。なお、一対の切欠溝6,6は非対称に形成しても良く、その場合は後記する多極ソケットBへの誤挿入を阻止することが出来る様にする。
【0017】
更に、円柱状をなした基部1の後端面8を貫通して多芯ケーブル18が挿入されており、該多芯ケーブル18中の信号用導線及び高圧電流用導線は、基部1の内部においてそれぞれ対応する信号用端子及び高圧電流用端子に接続されている。
【0018】
一方、前記多極プラグAと電気的に接続される多極ソケットBは、図3に示す様に、円筒状をなし、基板17にその後端が固定されており、その内径側には前記多極プラグAの突起部2が挿入嵌合される凹穿部9が形成されており、この凹穿部9の底面10及び内周壁11には、多極プラグAの突起部2を挿入嵌合した際に対応する位置に、多極プラグAの接触部5と接触して電気的に導通する信号用端子の接触部12がそれぞれ形成されている。
更に、底面10からは、多極プラグAの切欠溝6が嵌り込む角柱状突起13は形成されており、この角柱状突起13の端面14には、高圧電流用端子の接触部15が設けられている。なお、多極プラグAの切欠溝6,6を非対称に形成したときには、角柱状突起13,13もこれに対応させて非対称に形成することはもちろんである。
【0019】
この実施例は、上記の通りの構成を有するものであり、図1において矢印で示す様に、極ソケットAの凹穿部9に多極プラグBの突起部2を挿入嵌合し、それぞれの信号用端子の接触部5と12,高圧電流用端子の接触部7と15とを圧接させて、これらを電気的に通電させるものであるが、多極プラグAの高圧電流用端子の接触部7は切欠溝6の底面16に形成されているので、他の信号用端子の接触部の固定箇所との間に段差が形成されていることになり、これにより、接触部間には十分な沿面距離が確保され、平面上で絶縁距離を確保する場合に比べ、多極プラグA及び多極ソケットBの全体の寸法を小型化出来、実装面積の狭小化が実現されている。
【0020】
又、突起部2に形成されている一対の切欠溝6を非対称形状にした場合には、多極プラグAの多極ソケットBへの誤嵌合を防止することが出来る様になる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
自動車、産業機器、医療機器等の各種電子機器に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0022】
A 多極プラグ
B 多極ソケット
1 基部
2 突起部
3 端面
4 周面
5 信号用端子の接触部
6 切欠溝
7 高圧電流用端子の接触部
8 後端面
9 凹穿部
10 底面
11 内周壁
12 信号用端子の接触部
13 角柱状突起
14 端面
15 高圧電流用端子の接触部
16 底面
17 基板
18 多芯ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空筒状をなした基部の先端側に、絶縁性素材からなる柱状の突起部が形成され、該突起部の端面及び周面の適当位置に信号用端子の接触部が設けられていると共に、該突起部の端面から軸心と平行に、基部側に向かって、端面側及び周面側が開口した一対の対向した角柱状の切欠溝が形成され、該切欠溝の底面に高圧電流用端子の接触部が設けられている多極プラグと; 筒状をなし、内径側に前記多極プラグの突起部が挿入嵌合される凹穿部が形成されており、該凹穿部の底面及び内周面のそれぞれ対応する位置に前記多極プラグの信号用端子の接触部と接触して電気的に導通させる信号用端子の接触部が設けられていると共に、底面からは、前記多極プラグの切欠溝が嵌り込む角柱状突起が形成されており、該角柱状突起の端面の対応する位置に、高圧電流用端子の接触部が形成されている多極ソケット;とからなることを特徴とする高電圧対応プラグコネクター。
【請求項2】
多極プラグの一対の切欠溝及びこれに対応する一対の多極ソケットの角柱状突起が、それぞれ非対称形状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の高電圧対応プラグコネクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−192140(P2010−192140A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32379(P2009−32379)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(000115142)ユニオンマシナリ株式会社 (38)
【Fターム(参考)】