説明

魚介類と海藻類のハイブリッド飼育システム

【課題】既存の飼育システムにおけるような海上や自然界の外的影響を受けにくく、山奥や都会のビルと言った場所に依存せずに、広い敷地や建屋を必要とせず、大規模な水槽、大量の水量、多くの機材やそれを動かす大量の電力を削減できて、飼育面積を増やせ、手軽に移動を可能にすることより、生産コストや運用コストを削減ができるハイブリッド飼育システムを提供する。
【解決手段】1つ以上の魚介類飼育水槽20と1つ以上の海藻飼育水槽30と1つ以上の生物濾過水槽40の各水槽をスライド収納可能とし、各水槽に着脱自在に接続可能とした給水配管16と排水配管17とこれらに結合された給排水ポンプ60とを備えた、多段式のスライドラック10からなるハイブリッド飼育装置を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水産資源の養殖飼育技術に係る、飼育電力自動切替ユニットを装備した飼育生物に最適環境の装置と飼育システムに関する。
【背景技術】
【0002】
既存の養殖事業は、海上養殖と陸上養殖に大別され、海上養殖に於いては、電力供給が難しく活用事例が少なく、自然環境の影響(たとえば、津波・台風・強風・海中の毒素等)や事故災害の影響(たとえば、汚染流出・原油流出・放射能流出)を受け易く、養殖作業は殆どが船上や養殖生簀・筏にて環境設置・種付け(放流)・給餌・清掃・収穫の作業を行うが、天候や時間により大きく影響を受け、水温変化により飼育物の成長が悪化したり、発病したり、死滅する事も多い。
それに比べ陸上養殖(たとえば、特許文献1、2 参照)では、掛け流し方式と閉鎖式方式に大別され、自然界の災害を受ける可能性は少なく、生産物の安定供給が望めるが、初期の施設コストと運用コストが高い事が最大の欠点でもあり、陸上養殖が発展しない理由でもある。
【0003】
掛け流し方式は、海の近くと場所が限定され、海から距離が離れる分だけ、供給パイプを伸ばし、大型の汲み上げポンプにて海水や深層水を汲み上げ、紫外線殺菌装置で除菌処理を行い飼育する養殖者もいるが装置コストがかさみ、海水に手お加えす活用している養殖者も多い。
閉鎖式養殖に於いては、汲み上げ海水や人工海水等を濾過水槽で浄化し、循環ポンプで飼育水槽に送られ、殆んどが電力装置により各種飼育装置を動かし、飼育環境を維持している。
このように、陸上養殖に於ける養殖施設の主動力源の殆んどが、商用電力を中心に運用を行っており、災害やマシントラブルが発生時には、予備装置にて一時的対応を行っており、また、大量の飼育のために施設設備(たとえば、大型飼育水槽とその飼育水を浄化する浄化装置・給排水ポンプや循環ポンプ・飼育用照明装置・水温調整機・ブロアー・水流発生機等)が大型で、設置数量も大量に必要となり、その結果、消費電力も増大する状況に成り、緊急災害が発生した場合に、予備電源が確保出来なかったり、大規模な発電装置を事前に用意して置く事で、運用コストに跳ね返り、生産コストが高額と成っている。
【0004】
また飼育装置に於いても、大型水槽で大量の海水を循環させ、多くの装置を設置しており、装置が大きいため設置した水槽や装置は容易に移動する事が出来ず、清掃や作業操作に負担や制約が付いて回る事になる。
それと、飼育する生物に於いては、水質や飼料(たとえば、特許文献3 参照)がそれぞれ飼育生物により異なる事は言うまでも無く、飼育生物に最適な水質環境と最適飼料の技術進展がみられ、従来の飼育環境に於いては、大量飼育する為に、広い敷地、大規模な水槽、大量の水量、多くの機械装置、大量の電力を使用し、殆どが海に近くの場所である事の制約があり、各水槽や装置も大重量で据え置きのため、清掃や作業に制限があり、運用効率も悪い傾向にあり、水質改善も行い難く、給餌も進展が少ない、飼育品のストレス、飼育品の味、飼育期間、販売コスト等の問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−178382号公報
【特許文献2】特許3493357号公報
【特許文献3】特開1995−203868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、既存の海上養殖に於ける自然環境の影響(たとえば、津波・台風・強風・海中の毒素等)や事故災害の影響(たとえば、汚染流出・原油流出・放射能流出)を受け易いという問題点がなく、また、従来の陸上養殖に於ける広い敷地、大規模な水槽、大量の水量、多くの機械装置、大量の電力を使用し、初期の施設コストと運用コストが高い等の欠点を克服することを課題としてなされたものであり、
多数の小型水槽をスライド収納可能とした多段ラックにより飼育生産効率が高く、少量の流量で溶存酸素を上げた事と、飼育水と飼育飼料の養分配合の調整により飼育生物の品質向上がはかれ、飼育ラックの移動性と容易に組換えの自由度による作業者の作業効率と運用効率の向上を高め、コンパクトで省電力で、かつ商用電力がダウン時にも対応する事が可能である等の数々の画期的な利点を有する魚介類と海藻類のハイブリッド飼育システムを提供するものである。
【0007】
すなわち、本発明は、既存の広い敷地や建屋を必要とせず、大規模な水槽、大量の水量、多くの機材やそれを動かす大量の電力を削減させる為に、
1)小型水槽にて多段スロープシェルターと多段ラックにより飼育生産効率を上げる、
2)少量の水量と少ない装置と掛かる電気代を削減する、
3)海岸近隣以外で飼育、空き事務所、高架下、空きコンテナ、空き工場等を活用する、
4)飼育生物に良好な水温・水流・水量・水質・溶存酸素量を安定供給する、
5)飼育水と飼育飼料の養分配合の調整による飼育生物の品質向上する、
6)飼育ラックの移動性と容易に組換による作業者の作業効率と運用効率の向上する、
7)コンパクトで商用電力がダウン時にでも電力供給する、
事を実現させる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の構成からなるもので、
(I)1つ以上の魚介類飼育水槽(20)と1つ以上の海藻飼育水槽(30)と1つ以上の生物濾過水槽(40)の各水槽をスライド収納可能とし、各水槽に着脱自在に接続可能とした給水配管(16)と排水配管(17)とこれらに連結された給排水ポンプ(60)とを備えた、多段式のスライドラック(10)からなるハイブリッド飼育装置において、
1)魚介類飼育水槽(20)は、有孔の底板(22)により飼育層(23)と汚物集積層(21)に分離されており、汚物集積層(21)には給水口(25)から供給する水温を10℃〜35℃の範囲に、且つ該供給の溶存酸素を7.43〜10.92(mg−O/L)の範囲に制御し、スロープシェルター(24)による飼育管理し、該供給水の水流により汚物集積層(21)に堆積する汚物を強制排水口(27)、オーバーフロー排水口(26)より排出させるように構成した、魚介類飼育水槽(20)であり、
2)上記海藻飼育水槽(30)は、有孔の底板(38)と水透過性の海藻飼育床(37)により飼育層(35)と排水集積層(36)に分離されており、排水集積層(36)には上記、魚介類飼育水槽(20)の強制排水口(27)、オーバーフロー排水口(26)より排出された排水を給水口(33)又は(34)より取込み、飼育層(35)にて人工照明(31)で海藻の光合成により取込んだ排水を浄化させた浄化水を飼育層(35)の排水口(32)より排出させるように構成した海藻飼育水槽(30)であり、
3)上記生物濾過水槽(40)は、物理濾過槽(41)〜(43)と生物濾過槽(44)〜(45)と水質調整槽(47)と養分調整槽(48)と貯水槽(49)からなる浄化槽とマイクロバブル装置(70)、及び水質測定装置(46a)と温度制御装置(46b)が設けられ、上記魚介類飼育水槽(20)の飼育層(23)の強制排水口(27)と汚物集積層(21)のオーバーフロー排水口(26)からの排水と、上記海藻飼育水槽(30)の飼育層(35)の排水口(32)からの排水が上記排水配管(17)を介して、給水口(40a)から取込み物理濾過槽(41)〜(43)と生物濾過槽(44)〜(45)と水質調整槽(47)と養分調整槽(48)と貯水槽(49)を通過して浄化された浄化水に水質調整と水温調整した浄化水を生成するように構成した生物濾過水槽(40)であり、
上記水質調整と水温調整された浄化水が上記給水配管(16)を介して、上記魚介類飼育水槽(20)の給水口(25)に供給されるように構成した、魚介類と海藻類のハイブリッド飼育システム。
(II)上記生物濾過水槽(40)の水質調整槽(47)にて脱塩海水調製と、養分調整槽(48)にて飼育生物に合った植物性プランクトン及びオリゴ糖、ビタミンやアミノ酸を投入することにより、成長促進を飼育水を供給することを特徴とする上記(I)に記載の魚介類と海藻類のハイブリッド飼育システム、
(III)上記ハイブリッド飼育装置が、給排水ポンプ(60)と人工照明(31)と水質測定装置(46a)や温度制御装置(46b)を作動させる飼育電源ユニット(50)が、商用電力(52a)と自家蓄電電力(52b)の切替を行う自動電力切替装置(51)を有する事と、自動制御監視を特徴と、各種計測装置により測定する水量・水質・水温・照明・室温や飼育状況のデータや監視カメラ等を自動制御して遠隔監視を行う自動制御監視機能とを有することを特徴とする、上記(I)又は(II)に記載の、魚介類と海藻類のハイブリッド飼育システム、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る魚介類と海藻類のハイブリッド飼育システムは、既存の海上養殖に於ける自然環境の影響(たとえば、津波・台風・強風・海中の毒素等)や事故災害の影響(たとえば、汚染流出・原油流出・放射能流出)を受け易いという問題点がなく、また、従来の陸上養殖に於ける広い敷地、大規模な水槽、大量の水量、多くの機械装置、大量の電力を使用し、初期の施設コストと運用コストが高い等の欠点を克服されたものであり、
飼育装置を多数の小型水槽をスライド収納可能とした多段ラックにより構成した点に大きな特徴があり、多段式でコンパクトにスライド収納が出来る事で、
1)平米(m)当り於ける、飼育数量(たとえば、あわび、さざえ、はまぐり、うに等)が増える事による飼育生産効率を増大させる効果がある。
2)使用する、水量・各装備代・掛かる電気代の節減する効果がある。
3)飼育場所に依存せず、空き地・事務所利用等の効果がある。
4)飼育生物へ良好な水温・水流・水量・水質・溶存酸素量を維持安定する効果がある。
5)養分投与により免疫力を活性化させ、ストレス低減、発病率低減、天然生物と遜色ない程の高品質の身質・味の向上する効果がある。
6)軽量で自由に配置変更の拡張性を持ち容易に移動を可能する効果がある。
7)入荷・清掃はもとより出荷時はラック毎・飼育水槽単位で配送車で客先迄へ配送する事も可能でえ、効率運用の効果がある。
8)飼育生物や作業者に優しく安全・安心で安定した飼育提供の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ハイブリッド飼育装置(正面図) 本発明に係る魚介類と海藻類のハイブリッド飼育システムの正面斜視図。
【図2】ハイブリッド飼育装置(背面図) 本発明に係る魚介類と海藻類のハイブリッド飼育システムの背面斜視図。
【図3】ハイブリッド飼育装置(連結図) 本発明に係る3ラック連結正面斜視図及び飼育電源安定供給関連図。
【図4】魚介類飼育水槽(正面図) 本発明に係る魚介類飼育水槽の正面斜視図(a)と背面斜視図(b)。
【図5】魚介類飼育水槽(詳細図) 本発明に係る魚介類飼育水槽の左側面図(a)、背面図(b)、平面図(c)、正面図(d)、右側面図(e)。
【図6】海藻飼育水槽(正面図) 本発明に係る海藻飼育水槽の正面斜視図(a)と背面斜視図(b)。
【図7】海藻飼育水槽(詳細図) 本発明に係る海藻飼育水槽の左側面図(a)、背面図(b)、平面図(c)、正面図(d)、右側面図(e)。
【図8】生物濾過水槽(正面図) 本発明に係る生物濾過水槽の正面斜視図(a)と背面斜視図(b)。
【図9】生物濾過水槽(詳細図) 本発明に係る生物濾過水槽の左側面図(a)、背面図(b)、平面図(c)、正面図(d)、右側面図(e)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る魚介類と海藻類のハイブリッド飼育システムに関する実施形態を図面に基づいて説明する。
図1と図2に示す様に多段式のラック(10)は、たとえば、アングル形状は、L型・GM型・丸型等で、寸法は高さ1000〜2800mm程度、間口900〜1100mm程度、奥行900〜1100mm程度、素材は、腐食防止と水槽重量の観点からメタル・強化ステンレス・溶融亜鉛メッキの鋼材等からなるものである。
魚介類飼育水槽(20)や海藻飼育水槽(30)と生物濾過水槽(40)は、コンパクトで軽量素材(たとえば、FRP:強化プラスチック、アクリル、発泡スチロール、軽量ガラス等)でコンパクト水槽(たとえば、外寸で、縦700〜1000mm、横700〜1000mm、高さ100〜800mm)からなるものである。
多段式のラック(10)には、1つ以上の魚介類飼育水槽(20)や1つ以上の海藻飼育水槽(30)と1つ以上の生物濾過水槽(40)を収納するスライドレール(11)(スチール製 C301−23)と、飼育水槽を支える市販品のL型シャーシ(11a)又は籠式の水槽受け(11b)を取り付け、移動させる際に作業し易い取手(12)を中央部に取り付け、ストッパー付きキャスター(13)をラック底に設置し、ラックの後部には各水槽間を繋ぎ込むジョイント接続管(14)とジャバラ接続ホース(15)、(18)と給水配管(16)や排水配管(17)と供給水量の調整を行う、バルブ(19)をステンレスのナット・ビスで装着する事で、軽量で自由に配置を変える事を可能とし、給排水ポンプ(60)(たとえば、レイシーのRMDシリーズや三相電機のPMDSシリーズ等)にて各水槽へ供給水を送る事が出来るように構成されている。
【0012】
また、図3に示す様に、1ラックを魚介類飼育水槽(20)だけにするとか、1ラックには複数の海藻飼育水槽(30)と複数の生物濾過水槽(40)のみという様に、1ラック単位で水槽構成を組み換えが可能であり、魚介類飼育水槽(20)においても、飼育生物や飼育サイズや病気発生時の飼育物隔離等、必要に応じて飼育水槽を分別する事が可能により拡張性を増大できる。
しかも、飼育生物が成長して出荷する際は、ラック毎で配送車へ積み込んだり、必要な水槽だけをジョイント接続管より着脱させ客先迄へ配送する事も可能となり、その後に清掃や片付けも容易に行う事が可能です。
ゆえに本発明の水槽もラックも飼育環境や飼育生物等による用途に応じた組換えを可能とし、それにより飼育生物の移動時、飼育スペースの配置に対応時、飼育生物の隔離や飼育研究時、飼育生物の入出荷時、飼育ラックの清掃時等で容易に増設・分割、移動を可能とした飼育者に優しく、安全で安心な画期的な飼育ラックシステムである。
【0013】
図4と図5に示す魚介類飼育水槽(20)の特徴は、水槽低層部に有孔(以下、メッシュと言う。)形態の底板(22)(たとえば、腐食防止性の観点からプラスチックネット版やセラミックネット版やスチールネットや竹・木材・石材等の素材)による、飼育生物のサイズに合わせたメッシュ形態の板(たとえば、飼育生物のサイズが50mmであれば、5〜10mm程度、100mmであれば、10mm〜20mm程度の有孔)と飼育水槽の水分が蒸発する事を抑え、水槽内の状況を確認する水槽蓋(28)を配置して、飼育層(23)と汚物集積層(21)に分離させ、汚物集積層(21)の水槽底面は傾斜(たとえば、3〜15度のゆるやかな傾斜)させており、飼育層(23)の飼育生物が排出する、残餌や糞などの排泄物による沈殿沈濁粒子を一方向に堆積させ、飼育生物に有毒なアンモニアや亜硝酸を排除するために、給排水ポンプ(60)からバルブ(19)にて水量を調整された飼育水を給水口(25)から取込、給水口(25)の先に、無電力で水量・水力により動作するマイクロバブル装置(70)(BT−50:特許第3682286号)を装着する事で、水槽内の溶存酸素を高めた噴出水とエアレーションの噴出力を利用して、発生する水流により汚物集積層(21)に溜まった沈殿沈濁物を、オーバーフロー排水口(26)及び強制排水口(27)へ速やかに運び排出させる事を可能にしており、飼育層(23)を飼育水の劣化を防止を行いつつ、飼育環境を清潔にして飼育生物に有毒なアンモニアや亜硝酸の発生を抑えて飼育生物のストレスや病気の発生を減らす。
【0014】
また、飼育層(23)に於いては、飼育生物(たとえば、あわび・さざえ・うに等)の回遊性と成長促進を促すために、メッシュ形態の底板(22)と飼育水槽の水分が蒸発する事を抑え、水槽内の状況を確認する水槽蓋(28)迄の間に、取り外し可能な飼育生物が移動可能な鈍角な角度に傾斜させた(たとえば、傾斜角は5度〜30度で12度を目安)複数枚(たとえば、4枚以上〜7枚目標5枚)のメッシュ形態の底板(22)と同様の素材で有孔(たとえば、3〜30mm程度の穴)を持つ、スロープシェルター(24)を、給水口(25)側から強制排水口(27)オーバーフロー排水口(26)に向けて、移動口が広いスロープシェルター(24)から移動口が小さいスロープシェルター(24)の順で配置する事により、飼育生物が隣のシェルターへ撹拌されながら回遊し易く、また飼育サイズにより戻れなくさせることで、飼育生物のサイズ毎に管理する事が出来、飼育面積を増大させる事で飼育密度を高められ、飼育生物が隠れ易くする事でストレスを削減させる事を可能とした。
【0015】
図6と図7に示す海藻飼育水槽(30)の特徴は、魚介類飼育水槽(20)と同様の素材による、水槽低層部に有孔(メッシュ)形態の底板(38)を配置し、その下に水透過性の海藻飼育床(37)(たとえば、ウールマット又は粗目パッドや活性炭等)を張付配置する事で、飼育層(35)と排水集積層(36)が魚介類飼育水槽(20)からの栄養塩(アンモニウムイオン(NH4+),硝酸イオン(NO3+)および亜硝酸イオン(NO2+))を主に溶存された排水を給水口(34)より必要におうじ取込み、また、定期的にオルトりん酸イオン(PO43−)と,けい酸イオン(SIO4−)を与えて、飼育海藻の肥料養分の肥料床となる排水集積層(36)に添加し、さらに、以下で示す生物濾過水槽(40)で浄化された一定の適正水温(飼育海藻により異なるが、たとえば、10℃〜35℃の範囲以内で目標は20℃)(水温設定に於いて、室温の影響を受け易い為、室温が一定に成る空気温度調整機を備え付ける事が必要である。)と飼育水槽の水分が蒸発する事を抑え、水槽内の状況を確認する水槽蓋(30a)及び、塩分濃度を18〜35PSU(Practical Salinity Unit)の範囲で目標は23PSU以下に抑えた浄化水を、給水口(33)より水槽底面の中央に配置させた、マイクロバブル装置(70)を経由させ溶存酸素(たとえば、7.43〜10.92の範囲で目標では(20℃で8.75〜8.84mg−O/L))を高めた噴出水を送り、有孔(メッシュ)形態の底板(38)に植え付けた、飼育海藻(たとえば、コンブ・ワカメ・海苔・アオサ等)の幼体に水槽側面に配置した発熱で水温が上昇させない防水対応の人工照明(31)(HG−LA300:10,880ml)で光を照射させ光合成を促す事により、排水集積層(36)の沈殿沈濁物に含まれる、飼育魚介類に有毒な要素のアンモニアや亜硝酸等を、飼育海藻によって光合成と酸素により吸収させ成長促進をはかり、飼育水槽内を浄化させた供給水を排水口(32)より排出させる。
【0016】
本発明に係る生物濾過水槽(40)の特徴は、図8と図9に示す魚介類飼育水槽(20)内で発生する、残餌や糞・排泄物の沈殿沈濁物や魚介類に有毒なアンモニアや亜硝酸を排水管(17)経由し、海藻飼育水槽(30)にその一部を供給するとともに、本水槽の給水口(40a)から物理濾過槽(第一浄化槽)(41)に取込み、
物理濾過槽(第一浄化槽)(41)では沈殿物を浄化槽底にて回収し、たとえば、イワムシやゴカイなどの多毛類によりアンモニア窒素を処理し濃度を低く抑えさせ、上部より物理濾過槽(第二浄化槽)(42)へ処理水を送る。
また、大量に沈殿物が溜った場合は、沈殿物排出用の排水口(40c)(40d)より排出し濾過槽内を清掃し、アンモニア窒素の発生を抑える。
【0017】
物理濾過槽(第二浄化槽)(42)では、物理濾過槽(第一浄化槽)(41)の上部よりオーバーフローで送られて来た処理水の、水面表層ゴミを粗目パッドやウールマットにて定期的に付着したゴミを回収処理し、下部より物理濾過槽(第三浄化槽)(43)へ処理水を送る。
【0018】
物理濾過槽(第三浄化槽)(43)では、浄化槽底からマイクロバブル(70)のエアリフト気泡を活用し、たとえば、発泡スチロールや浮遊性のウールマット等を浮遊させ事により、水中の浮遊物を付着させ回収し、上部より物理濾過槽(第二浄化槽)(42)へ戻す。また、下部より生物濾過槽(第四浄化槽)(44)へ処理水を送る。
【0019】
生物濾過槽(第四浄化槽)(44)では、ウールマット・プラスチック濾過材等の物理濾過材のバイオフィルタに、生物濾過素材の好気性バクテリア(ニトロソモナス・ニトロバクター等)を付着・生息させ増殖させ、飼育魚介類に有害である水中のアンモニアを亜硝酸や硝酸に分解させ、吸着剤の、たとえば活性炭・ゼオライト・モルデナイト・貝殻等を投入して、アンモニアや亜硝酸の濃度を低下させ、生物濾過槽(第五浄化槽)(45)へ処理水を送る。
生物濾過槽(第五浄化槽)(45)では、生物濾過槽(第四浄化槽)と同様の浄化を行い、下部より水質調整槽(第七浄化槽)(47)へ処理水を送る。
生物濾過槽(第四浄化槽)(44)と生物濾過槽(第五浄化槽)(45)にて清掃を行う場合、一度に好気性バクテリアが付着した物理濾過材を洗浄すると生物濾過素材の効力が失われるため、清掃時には第五浄化槽で使用した物理濾過材を、第四浄化槽へそのまま移し、第五浄化槽へ新しい物理濾過材をいれるローテーションにより、好気性バクテリアの削減を抑える。
【0020】
水質調整槽(第七浄化槽)(47)では、水質計測をPH・導電率の水質測定装置(46a)を行い、脱塩海水(塩分濃度を18〜35PSUの範囲で目標は23PSU以下に抑えた)に、麦飯石やミネラル成分を含んだ素材による飼育生物に合った調整成分等を投入し、マイクロバブル(70)にて溶存酸素を高めた後、上部より養分調整槽(第八浄化槽)(48)へ処理水を送る。
【0021】
養分調整槽(第八浄化槽)(48)では、水温測定を行い温度制御装置(46b)にて水温調整を行い、飼育生物に栄養素材(たとえば、鉄・植物性プランクトン・オリゴ糖・ビタミン剤)を定期的に投入し、上部より貯水槽(第九貯水槽)(49)へ処理水を送り第八貯水槽では、安定した飼育水を浄化排水口(40b)より各飼育槽へ循環ポンプ(60)でくみ上げ供給する。
また、水温に影響を及ぼす室温は、飼育場所(倉庫・事務所・コンテナ等)は出来るだけ一定の室温が望ましく、生物濾過水槽の水分蒸発による温度変化を抑えるためと、水槽内の状況を確認する水槽蓋(49a)を配置して、飼育水温が10℃〜35℃の範囲以内で目標は20℃であれば、それに近い値に成る様に空気温度調整機を備え付ける事が必要となる。
【0022】
本発明に係る飼育環境の特徴2つ目として、図4の生物濾過水槽(40)の水質調整槽(第七浄化槽)(47)に於いて、脱塩海水、基本的に紫外線殺菌した海水や海洋深層水や市販の人工海水に対して、塩分濃度を18〜35PSUの範囲で目標は23PSU以下に抑えた上に、硫酸マグネシウム7水塩・塩化カリウム・臭化ナトリウム・ホウ酸・炭酸水素ナトリウム・塩化マグネシウム・塩化カルシウム等を調整追加した、脱塩海水を供給する。
【0023】
また、飼育飼料は、上記の生物濾過水槽(40)の養分調整槽(第八浄化槽)(48)にて、飼育する魚介類の成長(たとえば、特許文献3 参照)に合わせてた、たとえば、人工飼料の他に、販売出来ない色落ちした天然海藻や飼育水の中に植物性プランクトン(浮遊珪藻 (キートセロス) 付着珪藻 ( ナビキュラ・ニッチア等) ハプト藻 (パブロバ・イソクリシス等) プラシノ藻(テトラセルミス) 真眼点藻 (ナンノクロロプシス) 緑藻 (アオサ・ウミブドウ)等)や大豆オリゴ糖・ゲルチオリゴ糖:(乳果オリゴ糖(フィッシュオリゴ・L55、塩水港精糖(株)製を10lに10g程度の溶液)(〔明治製菓(株)製、商品名「メイオリゴ」市販飼料の1%を飽食量給餌した)や病原菌を防止し菌の繁殖を抑える為に、ビタミン要素(ビタミンB12、チアミン、ビオチンなど)、やアミノ酸類(グリシン、グルタミン酸など)を定期に投入する事で、飼育魚介類の腸内活動を活発にし、よりよい成長促進を促し・飼育期間の短縮・飼育物の味(風味、香り、色艶等)の向上をはかることができる。
【0024】
本発明に係るハイブリッド飼育装置における飼育環境の特徴3つ目として、図3の飼育電源ユニット(50)と商用電力(52a)や自家蓄電電力(52b)と各種の自然エネルギー系発電装置(53)で構成され、飼育環境にて必要不可欠な電源供給を商用電源(たとえば、特許文献1、2 参照)だけに頼るのではなく、たとえば、自然エネルギー系発電装置(53)のソーラー発電・風力発電や、飼育海藻(藻)を活用した海藻バイオ燃料(バイオエタノール)による発電システム、ソーラー熱と地下水による温度差発電、燃料電池発電、あるいは、今後開発が進む新エネルギーのエコ発電電力と、その電力を蓄積する自家蓄電電力(52b)たとえば、鉛蓄電池、NAS電池、リチウムイオン電池、水素電池、燃料電池等により、必要に応じて自家蓄電電力(52b)より飼育施設へ供給を行える自給自足環境を設け、また余剰電力が有れば電力会社へ売電も行える。
また電源切替スケジュール機能により、計画停電時や商用電力を利用せず自家発電利用する事により、電力コストの削減が可能となり、災害時の緊急停電やその後の計画停電時に、商用電力が切断された事を自動的に感知や、商用電源の復旧を感知した際に自動的に復旧切替を行う事で、飼育生物が大量に死滅したり、発病や発育障害を引き起こす事が無い様に、また、飼育被害を最小限に抑えるために、飼育施設に安定電源を供給させる小型の電源制御機能を兼ね備えた自動電力切替装置(51)を有する事と、各種計測装置により測定する水量・水質・水温・照明・室温や飼育状況のデータや監視カメラ等を自動制御して遠隔監視を行う自動制御監視を行う装置とすることもできる。
【符号の説明】
【0025】
10 多段式のスライドラック
11 スライドレール
11a L型シャーシ
11b 籠式の水槽受け
12 取手
13 ストッパー付きキャスター
14 ジョイント接続管
15 ジャバラ接続ホース(給水用)
16 給水配管
17 排水配管
18 ジャバラ接続ホース(排水用)
19 バルブ
20 魚介類飼育水槽
21 魚介類飼育水槽用汚物集積層
22 魚介類飼育水槽用有孔(メッシュ)形態の底板
23 魚介類飼育水槽用飼育層
24 スロープシェルター
25 魚介類飼育水槽用給水口
26 魚介類飼育水槽用オーバーフロー排水口
27 魚介類飼育水槽用強制排水口
28 魚介類飼育水槽用水槽蓋
30 海藻飼育水槽
30a 海藻飼育水槽用水槽蓋
31 人工照明
32 海藻飼育水槽用排水口
33 海藻飼育水槽用給水口(マイクロバブル装置用)
34 海藻飼育水槽用給水口
35 海藻飼育水槽用飼育層
36 海藻飼育水槽用排水集積層
37 海藻飼育水槽用海藻飼育床
38 海藻飼育水槽用有孔(メッシュ)形態の底板
39 海藻飼育水槽用蓋
40 生物濾過水槽(40)
40a 生物濾過水槽用給水口
40b 生物濾過水槽用排水口
40c 生物濾過水槽用排水口(右側沈殿物排出用)
40d 生物濾過水槽用排水口(左側沈殿物排出用)
41 生物濾過水槽用物理濾過槽(第一浄化槽)
42 生物濾過水槽用物理濾過槽(第二浄化槽)
43 生物濾過水槽用物理濾過槽(第三浄化槽)
44 生物濾過水槽用生物濾過槽(第四浄化槽)
45 生物濾過水槽用生物濾過槽(第五浄化槽)
46a 生物濾過水槽用水質測定装置
46b 生物濾過水槽用温度制御装置
47 生物濾過水槽用水質調整槽(第七浄化槽)
48 生物濾過水槽用養分調整槽(第八浄化槽)
49 生物濾過水槽用貯水槽(第九貯水槽)
49a 生物濾過水槽用水槽蓋
50 飼育電源ユニット
51 自動電力切替装置
52a 商用電力
52b 自家蓄電電力
53 自然エネルギー系発電装置
60 給排水ポンプ
70 マイクロバブル装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の魚介類飼育水槽(20)と1つ以上の海藻飼育水槽(30)と1つ以上の生物濾過水槽(40)の各水槽をスライド収納可能とし、各水槽に着脱自在に接続可能とした給水配管(16)と排水配管(17)とこれらに結合された給排水ポンプ(60)とを備えた、多段式のスライドラック(10)からなるハイブリッド飼育装置において、
・ 上記魚介類飼育水槽(20)は、有孔の底板(22)により飼育層(23)と汚物集積層(21)に分離させており、汚物集積層(21)には給水口(25)から供給する供給水の水温を10℃〜35℃の範囲に、且つ該供給水の溶存酸素を7.43〜10.92(mg−O/L)の範囲に制御し、スロープシェルター(24)による飼育管理し、該供給水の水流により汚物集積層(21)に堆積する汚物を強制排水口(27)、オーバーフロー排水口(26)より排出させるように構成した魚介類飼育水槽(20)であり、
・ 上記海藻飼育水槽(30)は、有孔の底板(38)と水透過性の海藻飼育床(37)により飼育層(35)と排水集積層(36)に濾過分離させており、排水集積層(36)には上記魚介類飼育水槽(20)の強制排水口(27)、オーバーフロー排水口(26)より排出された排水を給水口(33)又は(34)より取込み、飼育層(35)にて人工照明(31)で海藻の光合成により取込んだ排水を浄化させた浄化水を飼育層(35)の排水口(32)より排出されるように構成した海藻飼育水槽(30)であり、
・ 上記生物濾過水槽(40)は、物理濾過槽(41)〜(43)と生物濾過槽(44)〜(45)と水質調整槽(47)と養分調整槽(48)と貯水槽(49)からなる浄化槽とマイクロバブル装置(70)、及び水質測定装置(46a)と温度制御装置(46b)が設けられ、上記魚介類飼育水槽(20)の飼育層(23)の強制排水口(27)、オーバーフロー排水口(26)からの排水と上記海藻飼育水槽(30)における飼育層(35)の排水口(32)からの排水が上記排水配管(17)を介して供給され、これらの排水が上記物理濾過槽(41)〜(43)と生物濾過槽(44)〜(45)と水質調整槽(47)と養分調整槽(48)と貯水槽(49)を通過して浄化された浄化水に水質調整と水温調整するように構成した生物濾過水槽(40)であり、
上記水質調整と水温調整した浄化水が上記給水配管(16)を介して、上記魚介類飼育水槽(20)の給水口(25)に供給されるように構成した、魚介類と海藻類のハイブリッド飼育システム。
【請求項2】
上記生物濾過水槽(40)の水質調整槽(47)にて脱塩海水の調整と、養分調整槽(48)にて飼育生物に合った植物性プランクトン及びオリゴ糖、ビタミンやアミノ酸を投入することにより、成長促進の飼育水を供給することを特徴とする、請求項1に記載の魚介類と海藻類のハイブリッド飼育システム。
【請求項3】
上記にて、給排水ポンプ(60)と人工照明(31)と水質測定装置(46a)や温度制御装置(46b)を作動させる飼育電源ユニット(50)が、商用電力(52a)と自家蓄電電力(52b)切替を行う自動電力切替装置(51)を有する事と、自動制御監視を特徴と、各種計測装置により測定する水量・水質・水温・照明・室温や飼育状況のデータや監視カメラ等を自動制御して遠隔監視を行う自動制御監視機能とを有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の、魚介類と海藻類のハイブリッド飼育システム。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−94144(P2013−94144A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242188(P2011−242188)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(711012176)
【Fターム(参考)】