説明

魚釣用リール

【課題】リール取付脚部を介して釣竿に取付けられるリール本体の固定保持状態を安定させることのできる魚釣用リールを提供すること
【解決手段】リール本体18と一体成形されたリール取付脚部34を有し、このリール取付脚部34を介して釣竿8に装着される魚釣用リール10であって、釣竿8のリールシート8aに載置される前記リール取付脚部34の底面40,42に、この底面の内側から先端に向けて溝部44が形成されている魚釣用リール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リール本体と一体成形されたリール取付脚部を介して釣竿に装着される魚釣用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば両軸受型リールである魚釣用リールは、釣糸を巻回するスプールをリール本体で回転自在に支えると共に、このリール本体のフレーム下部に設けたリール取付脚部を釣竿のリール脚装着部に取付け固定するのが一般的である。
【0003】
このようなリール取付脚部には、リール本体のフレームとは別体部材として形成し、これをフレーム下部に例えばカシメ固定するものの他に、特に小型の魚釣用リールの場合等には、金型成形により、リール取付脚部をフレームと一体成形するものがある(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、リール本体と釣竿を可能な限り近接させて配置するために、リール取付脚部を分割し、前部取付脚部と後部取付脚部との間の長手方向中央部に形成した間隙部によりスプールとの干渉を防止し、魚釣用リールの全体を小型化するようにしたものもある(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】実公平2−29911号公報
【特許文献2】実公平6−39585号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、リール取付脚部を固定する釣竿の装着部は、周方向に沿う中央部が外方に突出した中高構造のリール脚載置面と、リール取付脚部のそれぞれの端部を収容してこのリール取付脚部をリール脚載置面に押圧固定する固定フードおよび移動フードが設けられている。このため、リール取付脚部を、独立した部材として形成するのではなく、リール本体のフレームと一体成形することにより、小型の魚釣用リールを軽量化し、更に、リール取付脚部を分割構造とすることによって、より軽量化しつつ魚釣用リール全体の小型化を図ることが可能となるとしても、リール取付脚部のそれぞれの端部は、釣竿の装着部に設けられた固定フードおよび移動フードの収容部の形状に適応させるために、先端に向けて薄肉状に形成される。
【0006】
このため、リール取付脚部は、成形時の肉厚の相違による熱収縮の影響を受け、薄肉に形成される先端側が変形し易い(成形時のヒケによる変形)。リール取付脚部が変形すると、このリール取付脚部に一体化されたリール本体の釣竿に対する固定保持状態が安定せず、魚釣り操作に支障を来す等の不都合がある。
【0007】
本発明は、このような事情に基づいてなされたもので、リール取付脚部を介して釣竿に取付けられるリール本体の固定保持状態を安定させることのできる魚釣用リールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明によると、リール本体と一体成形されたリール取付脚部を有し、このリール取付脚部を介して釣竿に装着される魚釣用リールであって、釣竿の装着部に載置される前記リール取付脚部の底面に、この底面の内側から先端に向けて溝部が形成されている魚釣用リールが提供される。
【0009】
前記溝部が形成されるリール取付脚部は、釣竿の前後方向に沿って分割形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の魚釣用リールによると、リール取付脚部の底面に内側から先端に向けて形成された溝部が、成形時の肉厚変化によって生じやすいヒケによる変形を抑制し、これにより、リール取付脚部を釣竿の装着部に確実に取付固定することが可能となり、このリール取付脚部を通して釣竿と一体化されるリール本体の固定保持状態を安定させると共に、このような溝部で軽量化され、魚釣操作性が向上する。
【0011】
また、リール取付脚部に形成される溝部によって厚肉部の肉取りが可能となるため、釣竿の装着部からリール取付脚部を介してリール本体に伝達される魚信(魚の当たりによる微細な振動)の検知感度が向上する。
【0012】
このようなリール取付脚部が分割形成される場合には、リール本体の小型化および軽量化を図りながら、釣竿に対する安定した固定保持状態が得られるため、釣竿と共に魚釣用リールを保持しながら行う魚釣り操作の操作性が更に向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1および図2は、本発明の好ましい実施形態による魚釣用リール10を示す。
本実施形態の魚釣用リール10は、握持した手の掌に包み込んだ状態に保持して操作するパーミング性や親指を用いて釣糸の繰出しを操作するサミング性を容易とする小型の両軸受型手巻きリールとして形成してある。
【0014】
この魚釣用リール10は、釣糸が巻回されるスプール12と、このスプール12を釣糸巻取方向に回転するハンドル14とを有する。このスプール12は、左右に延びるスプール軸16上に一体的に装着され、このスプール軸16を介してリール本体18に回転可能に支持されている。このスプール軸16は、一対の軸受(図示しない)を介してリール本体18に回転支持される。
【0015】
本実施形態のリール本体18は、左右に延びる複数の連結部材20aで左右のディスク状部20b,20cを一体成形により形成したフレーム20と、このフレーム20のディスク状部20b,20cの外側に、例えば複数のネジで締結された左右の側板22a,22bとを有し、スプール軸16のそれぞれの端部を、リール本体18に設けた図示しない軸受で支えている。この右側の側板22b内には、通常と同様に、スプール軸16のハンドル14の回転をスプール12に伝達する駆動機構と、この駆動機構とスプール12との間に介挿されて一定限度以上の荷重が釣糸に作用したときにスプール12を空転させるドラグ機構とが収容されており、操作レバー24を回転操作することにより、ドラグ力を調整することができる。
【0016】
また、スプール12の前方側には、スプール12上に釣糸を均等に巻回するレベルワインド機構26が配置されている。このレベルワインド機構26は、右側の側板22b内の駆動機構と連動するウォームシャフト28が、係合子30を左右に移動することにより、ハンドル14の回転操作にともなって、釣糸をスプール12上に均等に巻き取ることができる。符号32は、スプール12と駆動機構との間に介挿されたクラッチ機構をオン・オフするクラッチレバーを示し、このクラッチレバー32を押下げてオフの状態とすると、スプール12が自由に回転して、釣糸を放出することができる。なお、釣糸放出時のバックラッシュを防止するバックラッシュ防止機構が、例えば左側の側板22a内に設けられている。
【0017】
このように形成される魚釣用リール10は、釣竿8に設けられたリール脚装着部8aに取付けるための前後方向に延びるリール取付脚部34を有する。本実施形態のリール取付脚部34は、下部に配置された連結部20aを介してフレーム20に一体成形されており、前後に2分割された前脚部36と後脚部38とで形成されている。このリール取付脚部34を形成する前脚部36と後脚部38とは、上述の連結部材20aおよびディスク状部20b,20cと共に、例えばアルミニウム合金又はマグネシウム合金等の軽量金属材料あるいは硬質樹脂材料から金型成形により、一体成形されている。
【0018】
このリール取付脚部34を形成する前側脚部36と後側脚部38とは、フレーム20の連結部材20aから釣竿8の前方および後方に向けてそれぞれの先端部を延出させ、基端部間に間隙Sを形成する。この間隙Sは、例えば、フレーム20の一側に形成された開口部(図示しない)から、このフレーム20内にスプール12を装着する際に、スプール12の端部のフランジ部12a(図2参照)と干渉するのを防止し、このフレーム20の小型化および軽量化を可能とする。
【0019】
一方、釣竿8には、リール取付脚部34を介して、魚釣用リール10を取付けるための装着部としてリールシート8aが設けられている。このリールシート8aは、リール取付脚部34が載置される取付脚載置面6の後方に、リール取付脚部34の後側脚部38の先端部を受入れる固定カバー4を配置し、移動カバー2に前側脚部36の先端部を受入れる移動カバー2を前方に配置してある。この移動カバー2はリールシート8aに螺合されており、回動することにより、取付脚載置面6上を固定カバー4に向けて移動し、あるいはこれから離隔することができる。また、このリール取付脚部34を載置する取付脚載置面6は、平坦形状ではなく、周方向に沿う中央部が外方に突出した中高構造の湾曲面形状を有し、その横断面形状は円弧状に形成される。
【0020】
このリールシート8aに魚釣用リール10を取付ける場合は、リール取付脚部34の後側脚部38の先端部を固定カバー内に挿入した状態で、リール取付脚部34を取付脚載置面6上に載置する。この後、移動カバー2を回転させつつ前側脚部36の先端部を移動カバー2内に収容して後方に押込み移動させると、リール取付脚部34は、固定カバー4および移動カバー2間で挟持されつつ取付脚載置面6上に押圧される。これにより、リール取付脚部34がリールシート6に強固に取付けられる。逆に、移動カバー2をねじ戻してリールシート8aの前方に移動することにより、釣竿8のリールシート8aから魚釣用リール10を取外すことができる。
【0021】
図3に詳細に示すように、リール取付脚部34を形成する前側脚部36と後側脚部38とは、それぞれ先端に向けて肉厚が次第に減少すると共に、上面35,37の長手方向に沿う両側の稜線部を湾曲面で形成した偏平構造を有する。また、リールシート8aの取付脚載置面6に対向する底面40,42は幅方向に沿って略円弧状に凹設した半円筒状の湾曲面形状を有し、それぞれの側縁部40a,42aには、幅狭の平坦面が形成されている。この底面40,42の湾曲面はリールシート8aの取付脚載置面6よりも大きな曲率で形成してあり、したがって、取付脚載置面6にリール取付脚部34を載置したときに、底面40,42の幅方向中央部と取付脚載置面6との間に僅かな間隙が形成され、側縁部40a,42aはリールシート8aの取付脚載置面6に確実に当接する。
【0022】
本実施形態のリール取付脚部34は、このように形成された底面40,42のそれぞれに、基端側である内側から先端に向けて1本の溝部44を形成してある。この溝部44は、前側脚部36と後側脚部38とのそれぞれの肉厚の厚い基端側の部位に形成してあり、その断面は、底面40,42で開口する部位が最も大きくなっている。このような溝部44を肉厚の大きい部位の底面40,42に形成することにより、フレーム20を金型成形する際に、基端側から先端側に向けて薄肉化するリール取付脚部34のが成形時の肉厚変化によって生じやすいヒケによる変形を抑制することができる。
【0023】
このため、フレーム20と共にリール取付脚部34を、リールシート8aの取付脚載置面6、移動カバー2および固定カバー4の形状に適合した極めて正確な形状に形成することができる。このようにリール取付脚部34の形状が正確に形成されることで、釣竿8の装着部であるリールシート8aに確実に取付固定することが可能となり、このリール取付脚部34を通して釣竿8と一体化されるリール本体18の固定保持状態を安定させると共に、このような溝部44で軽量化され、魚釣用リール10の魚釣操作性が向上する。
【0024】
また、リール取付脚部34に形成される溝部44によって前側脚部36および後側脚部38の基端側部位の厚肉部の肉取りが可能となるため、魚がヒットしたときに、釣竿8のリールシート8aからリール取付脚部34を介してフレーム20およびリール本体18に伝達される魚信すなわち魚の当たりによる微細な振動の検知感度が向上する。
【0025】
図4から図8は、このような溝部の種々の変形例を示す。なお、以下に示す種々の実施形態は基本的には上述の実施形態と同様であるため、同様な部位には同様な符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0026】
図4は、深さを2段に形成し、肉厚の厚い部位により深く形成した第1の変形例による溝部44aを示す。この場合には軽量化やリール取付脚部34のヒケ防止が可能となる。溝部44aは肉厚の厚い部位の深さを深くし、肉厚の変化に応じて深さを調節することが可能である。勿論、2段構造以外にも、3段以上に形成し、あるいは段部を設けることなく連続的に変化させてもよい。
【0027】
図5は、リール取付脚部34の長さ方向に沿って3本の溝部44bを形成した第2の変形例を示す。この変形例では、各溝部44bの長さおよび溝幅は同じに形成してある。3本に限らず2本あるいは4本以上であってもよい。リール取付脚部34の幅および肉厚に応じて溝部44bの本数を変更してもよい。
【0028】
図6は、肉厚のに応じて深さおよび幅を変化させて形成した3本の溝部44cを配置した第3の変形例を示す。図示の変形例では、中央部の溝部44cが最も長く、かつ、幅と深さとの双方も大きく形成してある。
【0029】
図7は、リール取付脚部34の底面に傾斜させて複数本の溝部44dを形成した第4の変形例を示す。これらの溝部44dは図示のように等間隔に配置する他、肉厚等の変化に応じて間隔および溝の大きさ(幅、深さ、長さ等)を調節させることもできる。
【0030】
図8は、互いに交差させた複数の溝部44eを形成した第5の変形例を示す。図示のように2つの溝部44eをX字状に交差させるだけでなく、3本以上の溝部44eを交差させてもよい。また、交差する溝部44eは、溝部の長さ、幅、深さが異なるものであってもよい。
【0031】
このような種々の変形例による溝部44a〜44eをリール取付脚部34の前側脚部36および後側脚部38の底面40,42に形成することにより、リール取付脚部34の成形時における変形が防止されるだけでなく、リール本体18に全体が軽量化され、操作性が向上する。更に、このように種々の溝部44,44a〜44eを形成することにより、魚釣用リール10の外観を向上させることもできる。
【0032】
上述の実施形態および各変形例では、リール取付脚部34は、間に間隙Sを配置して前側脚部36と後側脚部38とに分割形成してあり、これにより、リール本体18の小型化および軽量化を図りながら、釣竿8に対する安定した固定保持状態が得られるため、釣竿8と共に魚釣用リール10を保持しながら行う魚釣り操作の操作性が更に向上する。
【0033】
一方、このようなリール取付脚部34を形成する前側脚部36と後側脚部38とを一体構造とすることも可能である。この場合にも、リール取付脚部34は溝部44,44a〜44eにより、リール本体18の軽量化を図りながら、釣竿8に対する安定した固定保持状態が得られるため、釣竿8と共に魚釣用リール10を保持しながら行う魚釣り操作の操作性を向上させることができる。
【0034】
以上、本発明の好ましい実施形態について種々の変形例と共に説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限るものではなく、例えば、上述のように直線状の溝部だけでなく、曲線状の溝部あるいは種々の形状の溝部を形成することも可能である。また、リール取付脚部34に設ける溝部は、上述の実施形態の溝部44と各変形例の溝部44a〜44eとを種々組合わせることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の好ましい実施形態による魚釣用リールを前方から見た状態説明図。
【図2】図2のII−II線に沿う断面図。
【図3】図1の魚釣用リールのリール取付脚部を示し、(A)は側方から見た状態の図、(B)および(C)は(A)のB−B線およびC−C線に沿う図。
【図4】第1の変形例によるリール取付脚部を示し、(A)は側方から見た状態の図、(B)および(C)は(A)のB−B線およびC−C線に沿う図。
【図5】第2の変形例によるリール取付脚部を示す図4と同様な説明図。
【図6】第3の変形例によるリール取付脚部を示す図4と同様な説明図。
【図7】第4の変形例によるリール取付脚部を示す図4と同様な説明図。
【図8】第5の変形例によるリール取付脚部を示す図4と同様な説明図。。
【符号の説明】
【0036】
8…釣竿、8a…リールシート、10…魚釣用リール、18…リール本体、34…リール取付脚部、40,42…底面、44,44a,44b,44c,44d,44e…溝部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体と一体成形されたリール取付脚部を有し、このリール取付脚部を介して釣竿に装着される魚釣用リールであって、釣竿の装着部に載置される前記リール取付脚部の底面に、この底面の内側から先端に向けて溝部が形成されていることを特徴とする魚釣用リール。
【請求項2】
前記溝部が形成されるリール取付脚部は、釣竿の前後方向に沿って分割形成されている請求項1に記載の魚釣用リール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−202453(P2007−202453A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−23935(P2006−23935)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000002495)ダイワ精工株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】