説明

魚釣用リール

【課題】本発明は、軸部材に過酷な曲げが加わるのを防止でき、係合部材の作動性を良好に維持できるとともに、軽量でコンパクトな魚釣用リールを得ることにある。
【解決手段】魚釣用リールは、リール本体(2)に支持されるとともに、ハンドル(30)の回転操作により回転する回転軸筒(12)と、回転軸筒(12)と一体に回転可能に設けられた逆転防止体(34)と、リール本体(2)に軸部材(50)を介して回動可能に支持された係合部材(35)とを備えている。係合部材(35)は、逆転防止体(34)に係合することで釣糸を巻き取る方向とは逆方向への回転軸筒(12)の回転を制限する。軸部材(50)は、係合部材(35)を相対的に回動可能に貫通するとともに、係合部材(35)を間に挟んだ軸方向に沿う二箇所でリール本体(2)に支持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドルの回転操作により回転する回転軸やロータの逆回転を防ぐストッパー機構を備えた魚釣用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、魚釣用スピニングリールは、スプールから釣糸が繰り出される時に、ロータが釣糸を巻き取る方向とは逆方向に回転するのを防ぐストッパー機構を装備している。
【0003】
従来のストッパー機構は、例えば特許文献1および特許文献2に開示されているように、ロータと一体に回転するラチェット車と、このラチェット車に係合する逆転防止爪とを備えている。ラチェット車は、ロータに直結された回転軸筒の外周面に固定されて、この回転軸筒と一緒に回転するようになっている。回転軸筒は、リール本体の前壁を貫通するとともに、この前壁に軸受を介して回転自在に支持されている。
【0004】
逆転防止爪は、ラチェット車に係合する爪先と、爪先の反対側に位置するカム受けと、爪先とカム受けとの間に位置するボス部とを有している。逆転防止爪のボス部は、リール本体の前壁にねじを介して支持されている。逆転防止爪の爪先は、ラチェット車と噛み合うとともに、ストッパー爪のカム受けは、操作軸のカムに接している。
【0005】
逆転防止爪は、ねじを支点として爪先がラチェット車に噛み合う係合位置と、爪先がラチェット車から離脱する係合解除位置との間で回動可能となっている。逆転防止爪は、釣人が操作軸を操作することで、係合位置および係合解除位置のいずれかに保持される。
【0006】
この結果、逆転防止爪が係合位置に回動されている限り、逆転防止爪の爪先がラチェット車と噛み合った状態を維持し、これにより回転軸筒ひいてはロータの逆回転が阻止されるようになっている。
【特許文献1】実開昭58−125985号公報
【特許文献2】実開昭60−5364号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1および特許文献2に開示されたストッパー機構によると、逆転防止爪をリール本体に支持するねじは、逆転防止爪のボス部を貫通してリール本体の前壁にねじ込まれている。そのため、ねじは、リール本体に対し片持ちの状態で逆転防止爪を支えている。
【0008】
このような構成によると、ねじの軸方向に沿う一端のみがリール本体に支持され、ねじの他端は単に逆転防止爪に引っ掛かっているに止まっている。このため、例えば逆転防止爪がラチェット車に対し強い力で噛み合った場合に、ねじに集中荷重が加わるのを避けられず、ねじがリール本体にねじ込まれた一端を基点とする大きな曲げを受けることになる。
【0009】
この結果、ねじが変形したり損傷することがあり、逆転防止爪の作動不良を招く一つの要因となる。
【0010】
ねじの変形を防止する対策としては、ねじの径を太くすることが考えられる。しかしながら、ねじを太くすると、逆転防止爪が大型化したり、ねじを受ける前壁のボスの径を大きくする必要があり、これが原因でロータの径およびスプールの径が共に大きくなる。
【0011】
したがって、スピニングリールのコンパクト化が妨げられてしまい、ねじの変形を防ぐ有効な解決策とはなり得ない。
【0012】
本発明の目的は、軸部材に過酷な曲げが加わるのを防止でき、係合部材の作動性を良好に維持することができるとともに、軽量でコンパクトな魚釣用リールを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の一つの形態に係る魚釣用リールは、
ハンドルを有するリール本体と、
上記リール本体に支持され、上記ハンドルの回転操作により回転する回転軸と、
上記回転軸と一体に回転可能に設けられた逆転防止体と、
上記リール本体に軸部材を介して回動可能に支持され、上記逆転防止体に係合することで釣糸を巻き取る方向とは逆方向への上記回転軸の回転を制限する係合部材と、を備えている。
上記軸部材は、上記係合部材を相対的に回動可能に貫通するとともに、上記係合部材を間に挟んだ軸方向に沿う二箇所で上記リール本体に支持されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、軸部材が片持ち状態から両持ち状態に移行するので、係合部材が回転軸あるいはロータの逆回転を防止する時に、軸部材に局部的な曲げが加わり難くなる。このため、軸部材の変形や損傷を防止することができ、係合部材の作動性が良好となって回転軸あるいはロータの逆回転を確実に防止できる。
【0015】
しかも、軸部材を太くする必要もなくなり、リールの構成要素の大型化を回避することができる。この結果、軽量・コンパクトで使い易い魚釣用リールを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下本発明の第1の実施の形態を、図1ないし図4に基づいて説明する。
【0017】
図1は、魚釣用のスピニングリール1を開示している。スピニングリール1は、リール本体2を備えている。リール本体2は、例えばマグネシウム合金あるいはアルミニウム合金のような金属材料で造られている。リール本体2は、上向きに延びる脚部3を有している。脚部3の上端に釣竿のリールシートに固定される固定片4が形成されている。
【0018】
リール本体2は、脚部3と一体化されたケース5と、このケース5の左側面にねじ止めされたサイドカバー6とを備えている。ケース5およびサイドカバー6は、互いに協働してギヤボックス7を形成している。
【0019】
リール本体2は、ギヤボックス7の前端に位置する前壁8を有している。前壁8は円盤状をなしており、この前壁8の中央部に貫通孔9が形成されている。貫通孔9はギヤボックス7の内部に連なっている。
【0020】
図1および図2に示すように、リール本体2の前壁8に円筒状の筒部10が一体に形成されている。筒部10は、前壁8からリール本体2の前方に向けて突出するとともに、貫通孔9に同軸状に連なっている。
【0021】
筒部10の内側に回転軸筒12が同軸状に挿通されている。回転軸筒12は、筒状の回転軸を構成しており、ボール軸受13を介して筒部10に回転自在に支持されている。回転軸筒12は、その基本外径を有する筒本体14と、筒本体14よりも大径な嵌合部15と、嵌合部15よりもさらに大径なフランジ部16とを有している。筒本体14、嵌合部15およびフランジ部16は、回転軸筒12の軸方向に並んでいる。
【0022】
このため、筒本体14と嵌合部15との境界部分に、回転軸筒12の径方向に沿う第1の段差17が形成されている。同様に、嵌合部15とフランジ部16との境界部分に、回転軸筒12の径方向に沿う第2の段差18が形成されている。
【0023】
ボール軸受13の内輪13aは、回転軸筒12の嵌合部15の外周に嵌合されて、第2の段差18に突き当たっている。ボール軸受13の外輪13bは、筒部10の内側に嵌合されて、筒部10の開口端部に位置している。
【0024】
回転軸筒12の前部は、筒部10の前端からリール本体2の前方に突出している。回転軸筒12の前部にロータ20が取り付けられている。ロータ20は、回転軸筒12の筒本体14が貫通するロータボス21を有している。ロータボス21は、回転軸筒12の前端にねじ込まれたロックナット22を介して回転軸筒12に保持されている。これにより、ロータ20が回転軸筒12に同軸状に固定されて、回転軸筒12と一体に回転するようになっている。さらに、ロータ20は、リール本体2の前壁8や筒部10を同軸状に取り囲んでいる。
【0025】
ロータ20は、一対のアーム23a,23bを有している。アーム23a,23bは、ロータ20の後端からリール本体2の前方に向けて延びている。これらアーム23a,23bの前端の間に釣糸案内装置24が取り付けられている。
【0026】
図1に示すように、回転軸筒12の後端部は、貫通孔9を通じてギヤボックス7の内部に導かれている。この回転軸筒12の後端部にピニオンギヤ25が形成されている。
【0027】
回転軸筒12の内側にスプール軸26が同軸状に挿通されている。スプール軸26は、軸方向に直線的に往復動可能にリール本体2のケース5に支持されている。スプール軸26の前部は、ロータ20の前方に突出している。
【0028】
スプール軸26の前部にスプール27が固定されている。スプール27は、釣糸案内装置24によって案内された釣糸を巻き付ける巻胴部28を有するとともに、スプール軸26と一緒に軸方向に直線的に往復動が可能となっている。
【0029】
図1に示すように、ギヤボックス7の内部にドライブギヤ29が収容されている。ドライブギヤ29は、リール本体2の側方に位置するハンドル30と一緒に回転するとともに、ギヤボックス7の内部でピニオンギヤ25と噛み合っている。釣人がハンドル30を手で回すと、ドライブギヤ29およびピニオンギヤ25を介して回転軸筒12が回転する。これにより、回転軸筒12に直結されたロータ20が釣糸を巻き取る方向に回転する。
【0030】
さらに、ギヤボックス7は、図示しないオシレート機構を収容している。オシレート機構は、ハンドル30の回転運動を往復直線運動に変換してスプール軸26に伝達する。このため、ハンドル30の操作によりロータ20が回転すると、これに同期してスプール27がスプール軸26の軸方向に直線的に往復動するようになっている。
【0031】
図1ないし図4に示すように、スピニングリール1は、スプール27から釣糸が繰り出される時に、ロータ20が釣糸を巻き取る方向とは逆方向に回転するのを防ぐストッパー機構33を装備している。ストッパー機構33は、ラチェット車34と、ストッパー爪35とを備えている。
【0032】
ラチェット車34は、逆転防止体の一例であって、その外周部に複数の係合歯36を有している。係合歯36は、ラチェット車34の周方向に間隔を存して並んでいる。ラチェット車34は、回転軸筒12の筒本体14の外周に嵌合されて、回転軸筒12の第1の段差17とロータ20のロータボス21との間で挟み込まれている。これにより、回転軸筒12に対するラチェット車34の位置決めがなされ、このラチェット車34が筒部10の前端開口部の直前に位置している。
【0033】
さらに、回転軸筒12の筒本体14は、その外周面上に図2に示すような二面幅部37を有している。二面幅部37は、ラチェット車34の中央部に位置する嵌合孔38に嵌合している。この嵌合により、ラチェット車34が回転軸筒12に追従して回転するようになっている。
【0034】
一方、上記ストッパー爪35は、係合部材の一例である。図2に示すように、ストッパー爪35は、ラチェット車34の係合歯36に引っ掛かる爪先39と、爪先39の反対側に位置するカム受け40と、爪先39とカム受け40との間に位置するボス部41とを一体に有している。
【0035】
ストッパー爪35は、リール本体2の筒部10に支持されている。このストッパー爪35の支持構造について、図2ないし図4を参照して説明する。
【0036】
図2および図3に示すように、筒部10の外周面に第1の支持部43および第2の支持部44が一体に形成されている。第1の支持部43は、筒部10の外周面から筒部10の径方向外側に張り出すとともに、筒部10の軸方向に沿うねじ孔45を有している。
【0037】
第2の支持部44は、円盤状をなすとともに、筒部10の軸方向に沿うねじ挿通孔46を有している。第2の支持部44は、リール本体2の前壁8から突出する支持壁47に一体に形成されている。支持壁47は、第1の支持部43の上方を通して筒部10の前方に突出しており、この支持壁47の突出端に第2の支持部44が位置している。このため、第2の支持部44は、第1の支持部43よりも筒部10の前方に位置している。
【0038】
言い換えると、第1の支持部43と第2の支持部44とは、筒部10の軸方向に互いに間隔を存して向かい合っており、これら支持部43,44の間に隙間48が形成されている。隙間48は、ラチェット車34の真上に位置している。さらに、ねじ孔45とねじ挿通孔46とは、筒部10の軸方向に同軸状に並んでいる。
【0039】
図3に示すように、ストッパー爪35のボス部41は、第1および第2の支持部43,44の間の隙間48に介在されて、これら支持部43,44に軸部材としてのねじ50を介して支持されている。ボス部41は、ねじ50が通る挿通孔51を有し、この挿通孔51の内側にカラー52が取り付けられている。カラー52は、第1の支持部43と第2の支持部44との間に介在されている。
【0040】
ねじ50は、リール本体2の前方から第2の支持部44のねじ挿通孔46およびカラー52を貫通するとともに、第1の支持部43のねじ孔45にねじ込まれている。ねじ50の頭部50aは、第2の支持部44の前面に突き当たっている。このため、ねじ50は、回転軸筒12と平行に筒部10の軸方向に延びて、第1の支持部43と第2の支持部44との間に跨っている。
【0041】
言い換えると、ねじ50は、ストッパー爪35のボス部41を相対的に回動可能に貫通するとともに、このボス部41を間に挟んだ軸方向に沿うニ箇所でリール本体2の筒部10に支持されている。したがって、ねじ50は、両持ち状態で筒部10に支持されている。
【0042】
ストッパー爪35は、ねじ50を支点としてラチェット車34に噛み合う係合位置と、ラチェット車34から離脱する係合解除位置との間で回動可能となっている。このストッパー爪35の回動方向は、回転軸筒12や筒部10と直交している。さらに、ストッパー爪35は、ねじりコイルばね53を介して常時係合位置に向けて付勢されている。
【0043】
図2および図4において、実線で示すストッパー爪35は、このストッパー爪35が係合位置に回動された状態を示している。係合位置では、ストッパー爪35の爪先39がラチェット車34の一つの係合歯36と噛み合っている。この噛み合いにより、ロータ20の逆回転が阻止されている。
【0044】
図2および図4において、二点鎖線で示すストッパー爪35は、このストッパー爪35が係合解除位置に回動された状態を示している。係合解除位置では、ストッパー爪35の爪先39がラチェット車34の係合歯36から離脱している。そのため、ラチェット車34に直結されたロータ20は、釣糸を巻き取る方向および釣糸を巻き取る方向とは逆方向のいずれの方向にも自由に回転し得る状態に保持される。
【0045】
図1に示すように、ストッパー機構33は、ストッパー爪35を係合位置又は係合解除位置に切り換える操作軸55を備えている。操作軸55は、リール本体2に回動可能に支持されて、ギヤボックス7の上部をリール本体2の前後方向に貫通している。操作軸55の前端は、リール本体2の前壁8を貫通して筒部10とロータ20との間の空間に導かれている。操作軸55の前端に円柱状のストッパーカム56が形成されている。ストッパーカム56は、ストッパー爪35のカム受け40に対応する位置に切り欠き57を有している。
【0046】
操作軸55の後端は、リール本体2の後方に突出している。操作軸55の後端に操作レバー58が取り付けられている。操作レバー58は、ストッパーカム56の切り欠き57がストッパー爪35のカム受け40と向かい合う第1の操作位置と、ストッパーカム56の外周面がストッパー爪35のカム受け40に接する第2の操作位置との間で回動可能となっている。
【0047】
操作レバー58を第1の操作位置にセットすると、図2および図4に実線で示すように、ストッパーカム56の切り欠き57にストッパー爪35のカム受け40が入り込む。これにより、ストッパー爪35がねじりコイルばね53の付勢力を受けて係合位置に回動する。
【0048】
操作レバー58を第2の操作位置にセットすると、ストッパーカム56が略90°の角度範囲に亘って回動する。この回動により、図2および図4に二点鎖線で示すように、ストッパーカム56の外周面がストッパー爪35のカム受け40に接触する。そのため、カム受け40がねじりコイルばね53の付勢力に抗して押し下げられ、ストッパー爪35が係合位置から係合解除位置に向けて回動する。
【0049】
図3に示すように、ストッパー爪35を支持するねじ50が貫通するカラー52は、フランジ部60を有している。フランジ部60は、第1の支持部43とストッパー爪35のボス部41との間に介在されている。フランジ部60の外周縁部は、第1の支持部43の外側に張り出すとともに、この外周縁部の一部がボール軸受13の外輪13bに引っ掛かっている。
【0050】
図2ないし図4に示すように、リール本体2の筒部10は、その外周面から突出するボス部61を有している。ボス部61は、第1の支持部43に対し筒部10の径方向に沿う反対側に位置するとともに、筒部10の軸方向に沿うねじ孔62を有している。
【0051】
ボス部61のねじ孔62にリール本体2の前方からねじ63がねじ込まれている。ねじ63は、円盤状の頭部63aを有している。頭部63aの外周縁部は、ボス部61の外側に張り出すとともに、この外周縁部の一部がボール軸受13の外輪13bに引っ掛かっている。
【0052】
そのため、ねじ63の頭部63aは、カラー52のフランジ部60と協働してボール軸受13の外輪13bを筒部10との間で挟み込んで保持している。
【0053】
このような第1の実施の形態では、リール本体2の筒部10に互いに間隔を存して向かい合う第1および第2の支持部43,44が形成され、これら支持部43,44の間にストッパー爪35のボス部41が介在されている。ストッパー爪35は、そのボス部41を貫通するとともに第1および第2の支持部43,44の間に跨るねじ50を介して筒部10に回動可能に支持されている。
【0054】
この構成によると、ストッパー爪35を支えるねじ50は、ストッパー爪35を間に挟んだ軸方向に沿う二箇所で筒部10に支持される。すなわち、第1の支持部43は、ねじ50の軸方向に沿う一端を支持し、第2の支持部44は、ねじ50の軸方向に沿う他端を支持している。
【0055】
このため、ねじ50が両持ち状態に移行するので、例えばストッパー爪35がラチェット車34に対し強い力で噛み合った時のように、過大な衝撃がねじ50に作用するような場合でも、ねじ50はストッパー爪35から伝わる荷重を分布荷重として受け止めることになる。
【0056】
したがって、ねじ50に局部的な曲げが加わり難くなり、ねじ50の変形や損傷を防止することができる。この結果、ストッパー爪35の作動性が良好となり、ロータ20の逆回転を確実に防止できる。
【0057】
それとともに、従来の片持ち状態のねじとの比較においては、ねじ50の荷重負担が減少するので、直径が1サイズ小さいねじ50を選択することができる。このため、ストッパー爪35を始めとして第1および第2の支持部43,44のようなスピニングリール1の主要な構成要素の大型化を回避することができる。
【0058】
したがって、スプニングリール1の軽量化やコンパクト化を推し進めることができ、スピニングリール1の使い勝手が向上するといった利点がある。
【0059】
本発明は上記第1の実施の形態に特定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施可能である。
【0060】
図5ないし図7は、本発明の第2の実施の形態を開示している。この第2の実施の形態は、ストッパー爪35をリール本体2の筒部10に支持する部分の構成が上記第1の実施の形態と相違している。これ以外のスピニングリール1の構成は、基本的に上記第1の実施の形態と同様である。そのため、第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同一の構成部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0061】
図6に最もよく示されるように、ストッパー爪35は、専用の支持部材70を介してリール本体2の筒部10に支持されている。支持部材70は、リール本体2とは別の部品であり、例えばリール本体2と同じ金属材料で造られている。
【0062】
支持部材70は、固定部71と軸部72とを一体に備えている。固定部71は、筒部10に沿うように湾曲する板状をなしている。固定部71は、一対の連結部73a,73bと軸支持部74とを有している。連結部73a,73bは、固定部71の両端部に一体に形成されて、固定部71の外側縁部から筒部10の径方向外側に向けて張り出すような円盤状をなしている。各連結部73a,73bの中央部にねじ挿通孔75が形成されている。
【0063】
軸支持部74は、連結部73a,73bの間に位置している。軸支持部74は、固定部71の中間部に一体に形成されて、固定部71の外側縁部から筒部10の径方向外側に向けて張り出すような円盤状をなしている。さらに、軸支持部74の突出端部にリール本体2の前壁8に向けて突出する脚部76が一体に形成されている。
【0064】
軸部72は、軸支持部74の中央部に一体に形成されて、軸支持部74から筒部10の軸方向に突出している。軸部72は、軸支持部74に連なる第1の端部72aと、第1の端部72aの反対側に位置する第2の端部72bとを有している。
【0065】
一方、リール本体2の筒部10は、一対の座部78a,78bと軸受部79とを有している。座部78a,78bは、固定部71の連結部73a,73bを受け止めるためのものである。座部78a,78bは、筒部10の外周面から突出するとともに、筒部10の径方向に互いに向かい合っている。各座部78a,78bは、筒部10の軸方向に沿うねじ孔80を有している。
【0066】
軸受部79は、筒部10の外周面から突出している。軸受部79は、軸部72の第2の端部72bが嵌合可能な嵌合孔81を有し、筒部10の外周面上において丁度座部78a,78bの間に位置している。このため、軸受部79と座部78a,78bとは、筒部10の周方向に間隔を存して配置されている。
【0067】
図7に示すように、固定部71の連結部73a,73bは、夫々ねじ82を介して座部78a,78bに固定されている。ねじ82は、連結部73a,73bのねじ挿通孔75を貫通した後、座部78a,78bのねじ孔80にねじ込まれている。このねじ込みにより、固定部71が筒部10に固定され、軸部72の第2の端部72bが軸受部79の嵌合孔81に嵌まり込むとともに、脚部76の先端がリール本体2の前壁8に突き当たる。
【0068】
支持部材70をリール本体2の筒部10に固定した状態では、支持部材70の軸部72がストッパー爪35のボス部41およびカラー52を貫通して筒部10側の嵌合孔81に嵌まり込んでいる。そのため、支持部材70の軸部72は、第1の端部72aと第2の端部72bとの間でストッパー爪35を回動可能に支持している。
【0069】
言い換えると、支持部材70の軸部72は、ストッパー爪35のボス部41を相対的に回動可能に貫通するとともに、ボス部41を間に挟んだ軸方向に沿う二箇所でリール本体2の筒部10に支持されている。
【0070】
このような構成によると、ストッパー爪35を支える軸部72は、第1の端部72aが固定部71を介して筒部10に固定され、第2の端部72bが筒部10側の嵌合孔81に直接嵌まり込んでいる。
【0071】
このため、軸部72がリール本体2に対し両端支持の状態に移行し、ストッパー爪35から軸部72に加わる荷重を分布荷重として受け止めることができる。したがって、軸部72に局部的な曲げが加わり難くなり、この軸部72を太くすることなく軸部72の変形や損傷を防止することができる。よって、ストッパー爪35の作動性がが良好となり、ロータ20の逆回転を確実に防止することができる。
【0072】
図8ないし図11は、本発明の第3の実施の形態を開示している。
【0073】
この第3の実施の形態は、ストッパー爪35をリール本体2の筒部10に支持する部分の構成が上記第1の実施の形態と相違している。これ以外のスピニングリール1の構成は、基本的に上記第1の実施の形態と同様である。そのため、第3の実施の形態において、第1の実施の形態と同一の構成部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0074】
図8および図9に示すように、リール本体2の筒部10は、その軸方向に沿う中間部に開口部91を有している。開口部91は、筒部10の上面に開口するように切り欠かれているとともに、筒部10の周方向に延びている。
【0075】
筒部10の外周面に一対の軸受部92,93が形成されている。軸受部92,93は、開口部91を間に挟んで筒部10の軸方向に向かい合っている。一方の軸受部92は、リール本体2の前壁8に連なるとともに、筒部10の軸方向に沿うねじ孔94を有している。他方の軸受部93は、筒部10の前端部に位置するとともに、筒部10の軸方向に沿うねじ挿通孔95を有している。ねじ孔94とねじ挿通孔95とは、筒部10の軸方向に同軸状に並んでいる。
【0076】
筒部10を同軸状に貫通する回転軸筒12は、基本外径を有する筒本体97と、筒本体97よりも大径な嵌合部98と、嵌合部98よりもさらに大径なフランジ部99とを有している。筒本体12、嵌合部98およびフランジ部99は、回転軸筒12の軸方向に並んでいる。
【0077】
このため、筒本体97と嵌合部98との間には、回転軸筒12の径方向に沿う第1の段差100が形成されている。同様に、嵌合部98とフランジ部99との間には、回転軸筒12の径方向に沿う第2の段差101が形成されている。
【0078】
筒部10に回転軸筒12を回転自在に支持するボール軸受13は、筒部12の前端部と筒本体97との間に介在されている。ボール軸受13aの内輪13aは、回転軸筒12の第1の段差100とロータ20のロータボス21との間で挟み込まれている。ボール軸受13の外輪13bは、その全周が筒部10の内面によって保持されている。
【0079】
ストッパー機構33のラチェット車34は、回転軸筒12の嵌合部98に取り付けられて、筒部10により取り囲まれている。嵌合部98は、その外周面上に図10に示すような二面幅部102を有している。二面幅部102は、ラチェット車34の嵌合孔38に嵌合している。
【0080】
この嵌合により、ラチェット車34が回転軸筒12に追従して回転するとともに、嵌合孔38の開口縁部が回転軸筒12の第2の段差101に押し付けられている。ラチェット車34の係合歯36は、筒部10の内側において開口部91と向かい合っている。
【0081】
一方、ストッパー爪35のボス部41は、軸受部91,92の間に介在されるとともに、これら軸受部91,92に軸部材としてのねじ104を介して支持されている。ボス部41の挿通孔51に取り付けられたカラー52は、軸受部91,92の間に介在されている。
【0082】
ねじ104は、リール本体2の前方から軸受部93のねじ挿通孔95およびカラー52を貫通するとともに、軸受部92のねじ孔94にねじ込まれている。このため、ねじ104は、回転軸筒12と平行に筒部10の軸方向に延びて、軸受部92,93の間に跨っている。
【0083】
言い換えると、ねじ104は、ストッパー爪35のボス部41を相対的に回動可能に貫通するとともに、このボス部41を間に挟んだ軸方向に沿うニ箇所でリール本体2の筒部10に支持されている。したがって、ねじ104は、両持ち状態で筒部10に支持されている。
【0084】
図10に示すように、ストッパー爪35は、ねじ104を支点としてラチェット車34に噛み合う係合位置と、ラチェット車34から離脱する係合解除位置との間で回動可能となっている。このストッパー爪35の回動方向は、回転軸筒12や筒部10と直交している。
【0085】
さらに、ストッパー爪35が図10に二点鎖線で示す係合解除位置に回動された状態では、ストッパー爪35の爪先39が丁度開口部91の内側に位置している。このことから、開口部91は、ストッパー爪35の回動を許容するように切り欠かれた形状を有している。
【0086】
この構成によると、ストッパー爪35を支えるねじ104は、ストッパー爪35を間に挟んだ軸方向に沿う二箇所で筒部10に支持される。すなわち、筒部10の一方の軸受部92は、ねじ104の軸方向に沿う一端を支持し、筒部10の他方の軸受部93は、ねじ104の軸方向に沿う他端を支持している。
【0087】
したがって、ねじ104がリール本体2の筒部10に対し両端支持の状態に移行し、ストッパー爪35からねじ104に加わる荷重を分布荷重として受け止めることができる。この結果、ねじ104に局部的な曲げが加わり難くなり、このねじ104を太くすることなくねじ104の変形や損傷を防止することができる。
【0088】
よって、ストッパー爪35の作動が安定し、ロータ20の逆回転を確実に防止することができる。
【0089】
上記第1および第3の実施の形態では、ストッパー爪を係合位置と係合解除位置との間で回動させる操作軸をギヤボックスの上部に配置したが、本発明はこれに限らない。例えば、操作軸をギヤボックスの下部に配置し、この操作軸の後端に固定される操作レバーをリール本体の脚部とは反対側の後端下部に配置してもよい。
【0090】
この構成によれば、釣竿のリールシートと隣り合うリール本体の後端上部に操作レバーが突出することはなく、リール本体の上部がすっきりとした形状となる。そのため、実際に釣りをする際に、リール本体に釣糸が絡み付くのを防止できる。
【0091】
さらに、本発明に係る魚釣用リールは、スピニングリールに特定されるものではない。例えばハンドルの操作でスプールが回転して釣糸を巻き取る両軸リールや片軸リール等においても、その回転軸の逆転を防止するストッパー機構としての適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るスピニングリールの断面図。
【図2】図1のF2-F2線に沿う断面図。
【図3】図2のF3-F3線に沿う断面図。
【図4】図3のF4-F4線に沿う断面図。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係るスピニングリールの断面図。
【図6】図5のF6-F6線に沿う断面図。
【図7】図5のF7-F7線に沿う断面図。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係るスピニングリールの断面図。
【図9】本発明の第3の実施の形態において、リール本体の筒部とストッパー爪との位置関係を示すスピニングリールの斜視図。
【図10】図8のF10-F10線に沿う断面図。
【図11】図10のF11-F11線に沿う断面図。
【符号の説明】
【0093】
1…スピニングリール、2…リール本体、12…回転軸(回転軸筒)、20…ロータ、30…ハンドル、34…逆転防止体(ラチェット車)、35…係合部材(ストッパー爪)、50,104…軸部材(ねじ),70…支持部材、71…固定部、72…軸部、91…開口部、92,93…軸受部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドルを有するリール本体と、
上記リール本体に支持され、上記ハンドルの回転操作により回転する回転軸と、
上記回転軸と一体に回転可能に設けられた逆転防止体と、
上記リール本体に軸部材を介して回動可能に支持され、上記逆転防止体に係合することで釣糸を巻き取る方向とは逆方向への上記回転軸の回転を制限する係合部材と、を備える魚釣用リールであって、
上記軸部材は、上記係合部材を相対的に回動可能に貫通するとともに、上記係合部材を間に挟んだ軸方向に沿う二箇所で上記リール本体に支持されていることを特徴とする魚釣用リール。
【請求項2】
ハンドルを有するリール本体と、
上記リール本体に支持され、上記ハンドルの回転操作に同期して回転する回転軸筒と、
上記回転軸筒と一体に回転するロータと、
上記回転軸筒に設けられ、上記ロータに追従して回転する逆転防止体と、
上記リール本体に軸部材を介して回動可能に支持され、上記逆転防止体に係合することで釣糸を巻き取る方向とは逆方向への上記ロータの回転を制限する係合部材と、を備える魚釣用リールであって、
上記軸部材は、上記係合部材を相対的に回動可能に貫通するとともに、上記係合部材を間に挟んだ軸方向に沿う二箇所で上記リール本体に支持されていることを特徴とする魚釣用リール。
【請求項3】
請求項1又は請求項2の記載において、上記リール本体は、上記軸部材の軸方向に沿う一端を支持する第1の支持部と、上記軸部材の軸方向に沿う他端を支持する第2の支持部とを有し、これら第1の支持部と第2の支持部との間に上記係合部材が介在されていることを特徴とする魚釣用リール。
【請求項4】
請求項1又は請求項2の記載において、上記リール本体は、上記軸部材の軸方向に離間した第1および第2の支持部を有し、これら第1の支持部と第2の支持部との間に上記係合部材が介在されているとともに、上記軸部材は上記係合部材を貫通して上記第1の支持部と上記第2の支持部との間に跨ることを特徴とする魚釣用リール。
【請求項5】
ハンドルを有するリール本体と、
上記リール本体に支持され、上記ハンドルの回転操作に同期して回転する回転軸筒と、
上記回転軸筒と一体に回転するロータと、
上記回転軸筒に設けられ、上記ロータに追従して回転する逆転防止体と、
上記リール本体に軸部材を介して回動可能に支持され、上記逆転防止体に係合することで釣糸を巻き取る方向とは逆方向への上記ロータの回転を制限する係合部材と、を備える魚釣用リールであって、
上記リール本体は、上記回転軸筒および上記逆転防止体を取り囲む筒部を有し、この筒部に上記逆転防止体を露出させる開口部と、この開口部を間に挟んで向かい合う一対の軸受部とを形成し、上記係合部材は上記軸受部の間に介在されるとともに、上記軸部材は、上記係合部材を貫通して上記軸受部の間に跨ることを特徴とする魚釣用リール。
【請求項6】
請求項5の記載において、上記係合部材は、上記軸部材を支点として上記逆転防止体に係合する係合位置と、上記逆転防止体から離脱する係合解除位置との間で回動可能であり、上記開口部は、上記係合部材の回動を許容するように切り欠かれた形状を有することを特徴とする魚釣用リール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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