説明

魚釣用リール

【課題】回転性能を低下させることなく、リール本体の支持部内の防水を確実かつ簡単に行うことができる魚釣用リールを提供すること。
【解決手段】リール本体12に形成した支持部80に、ハンドル32の回転操作に連動する駆動軸22の回転状態を制御する一方向クラッチ82を配置し、この支持部80に装着した固定部材108により、この一方向クラッチ82を抜け止めする魚釣用リールであって、支持部80は、前方に開口して一方向クラッチを収容する収容部78bと、この収容部を囲むリール本体の前端部に凹設されて軸方向外方に開口する開口周縁部94とを有し、固定部材108は、この開口周縁部94に接触してリール本体12側をシールするフランジ部116と駆動軸22の外周側をシールするシール縁部112とを一体形成したシール部材114を、支持部80の開口周縁部94に装着する魚釣用リール10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リール本体に形成した支持部に、ハンドルの回転操作に連動する駆動軸を回転自在に支持する軸受又は回転状態を制御する一方向クラッチを配置し、この支持部に装着した固定部材により、これらの軸受又は一方向クラッチを抜け止めする魚釣用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、魚釣用リールでは、ハンドルの回転操作で連動回転する駆動軸が、リール本体に突設した支持部内の軸受や転がり式一方向クラッチにより、回転自在に支持され、回転状態を制御される状態で支持されている。これらの軸受や一方向クラッチを装着する支持部は、リール本体の前部に位置する筒状構造を有し、この筒状の支持部の前部に取り付け固定される固定部材により、軸受や一方向クラッチの抜け止めがされている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、筒状の支持部内を防水構造に維持し、内部の軸受等の機器を保護するため、駆動軸の外周側と固定部材の内周側との間にシール部材を介挿したものもある(特許文献2参照)。このシール部材はゴムで形成される。
【特許文献1】特開2000−166436
【特許文献2】特開2003−325528
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のように、固定部材で軸受又は一方向クラッチを抜け止め支持する魚釣用リールでは、固定部材は軸受や一方向クラッチを抜き止め支持するに過ぎず、リール本体の前部に突設した筒状の支持部内を防水することができない。このため、周囲環境の厳しい釣場での実釣中に、海水、水、砂等の異物が支持部内に侵入し、支持部内に配置した軸受や駆動部に付着しあるいはこの内部にまで侵入して、錆びの発生や混入した異物等の影響で機能が害される可能性がある。
【0005】
また、特許文献2に記載のように、支持部内を防水するシール部材を設けた魚釣用リールは、ゴム製であるため、駆動軸が高速回転すると、固定部材の内周側に接触するゴム製のシール部材が駆動軸と一体回転するシール部材の遠心力の影響で拡径する状態に変形して接触圧が変化する。このため、安定した防水効果が得られない。更に、このシール部材が駆動軸の外周側に基部を装着し、先端部を固定部材の中央孔の内周に接触させるため、シール部材の接触径が大きく、大きな摺接抵抗で回転性能が低下する。
【0006】
本発明はこのような事情に基づいてなされたもので、回転性能を低下させることなく、リール本体の支持部内の防水を確実かつ簡単に行うことができる魚釣用リールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明の魚釣用リールは、リール本体に形成した支持部に、ハンドルの回転操作に連動する駆動軸を回転自在に支持する軸受又は回転状態を制御する一方向クラッチを配置し、この支持部に装着した固定部材により、これらの軸受又は一方向クラッチを抜け止めする魚釣用リールであって、前記支持部は、前方に開口して前記軸受又は一方向クラッチを収容する収容部と、この収容部を囲むリール本体の前端部に凹設されて軸方向外方に開口する開口周縁部とを有し、前記固定部材は、この開口周縁部に接触してリール本体側をシールする基部と前記駆動軸の外周側をシールするシール縁部とを一体形成したシール部材を、前記支持部の開口周縁部に装着することを特徴とする。
【0008】
前記シール部材は、前記固定部材に一体的に設けることもできる。
【発明の効果】
【0009】
このような魚釣用リールによると、軸受又は転がり式一方向クラッチを抜け止めする固定部材を、リール本体の支持部の開口周縁部に装着することにより、シール部材による支持部の開口の閉塞、および、駆動軸の外周側に対するシール縁部によるシールが可能となり、このシール縁部による弾性接触で、駆動軸の回転性能を低下させることなく、リール本体の支持部内の防水を確実かつ簡単に行うことができる。
【0010】
また、シール部材が固定部材に一体的に設けられる場合には、シール部材と固定部材とを一体部材して取り扱うことができ、組み込み作業の効率を極めて高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1から図8は、本発明の好ましい実施形態による魚釣用リールを概略的に示す。
【0012】
図1および図2に示すように、本実施形態の魚釣用リールはスピニングリールとして形成してあり、この魚釣用スピニングリール10は、剛性構造のリールボディ12aの側部開口14aを蓋体12bで閉塞したリール本体12を備え、この蓋体12bの固定ネジ16を取外すことで、内部空間Sを外部に露出させることができる。また、リールボディ12aの後端側には、切欠き14bを形成し、この切欠き14bを後部キャップ18で閉じてあり、この後部キャップ18の固定ネジ20を取外すことにより、後端側でも内部空間Sを開閉することができる。このリール本体12は、リールボディ12aから上方に延出する脚部12cの端部に形成された竿取付部12dを介して図示しない釣竿に取り付けられる。
【0013】
リール本体12内には、通常のスピニングリールと同様に、後述するロータを駆動するための中空駆動軸22を回転駆動する駆動機構24およびこの中空駆動軸22内に挿通されたスプール軸26をこの軸方向に沿って一定のストロークで前後方向に往復動する公知のオシレーティング機構28が収容されており、このオシレーティング機構28の摺動子28aが止めネジ30でスプール軸26の後端部に固定されている。これらの駆動機構24およびオシレーティング機構28は、一端にハンドル32が連結されるハンドル軸34により、互いに同期して作動される。
【0014】
本実施形態のハンドル軸34は中空構造を有し、それぞれリールボディ12aと蓋体12bとに設けられた軸受36a,36bを介してリール本体12で回転自在に支持されている。このハンドル軸34には、後述する駆動歯車34aが一体に形成される。このハンドル軸34の両端部には、雌ネジを形成してあり、一方の端部に、ハンドル32に基端部を枢着ピン38で枢着されたネジ部材40の先端部が螺合することで装着される。したがって、ハンドル軸34は軸受36a,36bと共にハンドル装着部を形成する。
【0015】
このハンドル32を装着するためのネジ部材40は、スタンド部材42に挿通されており、ハンドル32を介してハンドル軸34内に締付けられると、スタンド部材42の内周側突条42aがハンドル軸34の端面に当接し、ネジ部材40の締付け力で、ハンドル32およびスタンド部材42をハンドル軸34に強固に固定する。スタンド部材42は、ハンドル32をリール本体12から離隔させ、後述するロータとの干渉を防止しつつ自由に回転可能とする。また、この内周側突条42aの外周側に配置した外周側突条42bは、リール本体12から突出する環状突起13aを僅かな間隙を介して囲み、リール本体12の内部空間S内に異物が侵入するのを防止する。
【0016】
このネジ部材40を緩め、スタンド部材42とハンドル32との間に間隙を形成すると、枢着ピン38を中心としてハンドル32を回転し、持運びあるいは保管に便利な折り畳み状態とすることができる。この折り畳み状態からハンドル32を介してネジ部材40をハンドル軸34内に締め込むとことで簡単に、釣糸巻取り状態に復帰させることができる。
【0017】
また、ハンドル軸34の反対側には、蓋体12bに形成した環状突起13bを囲む軸受キャップ44を取り付けてあり、異物の侵入が防止されている。この軸受キャップ44を取り外して、ハンドル32およびスタンド部材42を取付けることにより、ハンドル32をリール本体12の一側から他側に自由に付け換えることができる。いずれの場合も、釣糸巻回方向にネジ部材40を締め付けることにより、ハンドル32とハンドル軸34とが一体化され、釣糸巻取り状態とすることができる。
【0018】
リール本体12の内部空間S内では、ハンドル軸34と一体に形成された駆動歯車34aと共に駆動機構24を形成するピニオン22aが、ハンドル軸34と直交する方向に延設された中空駆動軸22の外周部に形成されており、このピニオン22aは駆動歯車34aと常時噛合した状態に配置されている。このピニオン22aを形成した中空駆動軸22は、ハンドル軸34の軸受36a,36bを配置したハンドル装着部から前方に突出する前部F内で前方に延び、ハンドル軸34に近接した後端側を軸受46aを介してリール本体12で支えられ、前方部位を、リール本体12の前部F内に配置した軸受46bを介して支えられ、前端側がこの前部Fから突出し、リール本体12に対して自由に回転することができる。この中空駆動軸22は、軸方向に貫通する内孔内に、先端部にスプール50を装着するスプール軸26を前後方向に摺動自在に案内する。
【0019】
このスプール軸26は、中空駆動軸22の先端側から突出する先端部に断面非円形部26aと、ネジ部26bとを順に形成してあり、この断面非円形部26aにストッパ48aを介して装着されたスプール50が、袋ナット状に形成した締付けネジ48bにより、スプール軸26の先端部に取外し可能に装着される。
【0020】
本実施形態では、ストッパ48aは断面非円形部26aに対応した挿通孔を有する板状に形成してあり、この断面非円形部26aの後端部に回り止めされた状態で係止され、後方すなわちリール本体12側への移動を阻止されている。そして、スプール50は、円筒状あるいはテーパ状の周面を有する胴部52の前後に、径方向外方に突出するフランジ部52a,52bを形成し、この胴部52の前端側を閉じる前壁部54の中央部から、後方の開口側に向けて、短軸部56が突出する。
【0021】
この短軸部56には、断面非円形部26aに対応する断面形状を有する挿通孔が軸方向に貫通しており、この断面非円形部26a上で回り止めされた状態でスプール軸26に装着され、締め付けネジ48bをネジ部26bに締付けることにより、ストッパ48aに締付けられ、固定される。
【0022】
また、短軸部56が配置される前壁部54には、短軸部56を囲んで、多数の軸方向貫通孔55を等間隔に形成してある。これらの貫通孔55は、スプール50を軽量化すると共に、魚釣り操作時の空気抵抗を小さくする構造に形成してあり、外方に開口する後端側には、釣糸が内部に入り込むのを防止するスカートあるいは内側フランジ部58が形成される。なお、胴部52に、周方向に沿って多数の凹溝を形成してもよく、この場合には、スプール50に巻き取った釣糸が移動して緩むのを防止することができる。
【0023】
このスプール50をスプール軸26に取付ける締付けネジ48bは、釣糸が引っ掛かるのを防止するために、前壁部54からの突出量をできる限り小さくし、また、その周部は可能な限り滑らかな外面で形成することが好ましい。
【0024】
スプール50に釣糸を巻回するロータ60は、後方に向けて凹部62を開口させた周壁部64有し、前壁部66に設けた筒状の駆動部68を介して中空駆動軸22に連結される。この駆動部68を囲む周壁部64には、後方開口端すなわちハンドル軸34側の径方向に対向した部位で、一対の腕部70,70が径方向外方に突設されている。これらの腕部70,70は、ロータ60の後方開口端から前方に向けてスプール軸26の軸方向に沿って先細状に延び、周壁部64との間に、スプール50の胴部52を受け入れる間隙を形成する。
【0025】
これらの腕部70,70の先端部に取付けられたベール72は、図1に示す釣糸巻取位置と図示しない釣糸放出位置との間を自在に反転することができる。このベール72の一方の端部は、釣糸案内部72aを装着した支持脚73を介して腕部70に取り付けられ、図2に一部を概略的に示す振り分けバネ機構74により、釣糸巻取位置と釣糸放出位置との一方に保持され、ハンドル32を釣糸巻回方向に反転後、ベール72を手動操作で釣糸巻取位置へ復帰させたり、図示しない反転復帰機構により、図1に示す釣糸巻取位置へ自動復帰される。。
【0026】
このロータ60の前壁部66には、駆動部68の周部に沿って軸方向貫通孔65が等間隔に形成してあり(図2)、この前壁部66の外周部には、例えば、スプール50の後方から内側に落込んだ釣糸のスプール軸への巻き込みを防止する薄肉構造の筒状のガードリング76が前方に突出する状態で螺合、接着等の手段で取り付け固定されている。また、駆動部68を囲む周壁部64は、前端側を前壁部66で閉じた円筒状部として形成してあり、軸方向の中間部位の屈曲部64aを挟んで、前方よりも後方側でより大きな角度で径方向外方に向けて拡径する。この周壁部64の後方開口端に隣接する部位には、この周壁部64を径方向に貫通する開口部63が形成されており、この開口部63は、周壁部64の後方開口端から屈曲部64aを超えて前壁部66側の位置まで、開口幅を狭めつつ軸方向に沿って延びる。
【0027】
なお、ガードリング76は、ロータ60およびスプール50のそれぞれの前壁部66,54に形成した貫通孔65,55を介する空気の流れを阻害しあるいは閉塞しないものであれば、適宜の形状に形成することが可能であり、その周部に、開口を設けても良い。また、ロータ60に一体化することも可能である。
【0028】
本実施形態のロータ60は、4つの径方向開口部63が、周壁部64の後方開口端に隣接した部位で径方向に対向させて形成してあり、各腕部70にも周壁部64の径方向開口部63に対応した径方向開口部71が形成してある。この腕部70の径方向開口部71は、周壁部64の径方向開口部63と径方向に整合した位置に配置されており、後方に向けて開口する。したがって、腕部70に形成した径方向開口部71は、周壁部64の対応する径方向開口部63と連続した開口部を形成する。これにより、いずれの径方向開口部63,71も、内部に配置したリール本体12の前部Fを外部に大きく露出し、この径方向開口部63,71を介して、外部から例えば蓋体12bの固定ネジ16を締付けあるは取外すことができる。
【0029】
一方、周壁部64の腕部70,70間に形成された2つの径方向開口部63の内の一方は、弧状の連結片67をその後端部に設けてあり、この周壁部64と一体形成される部位によって、ベール72および釣糸案内部72a等のアンバランス部材に対するバランス化を図り、ロータ60を滑らかに回転させることができる。リール本体12から突出する軸受キャップ44及びハンドル軸34に連結するスタンド部材42を、リール本体12の前部Fにフランジ部が形成されていないので、従来のような形状的な制約が少なくなり、ロータ60の後端部の極近接する位置まで、ロータ60の凹部62内にリール本体12の前部Fを挿入することが可能となり、魚釣用スピニングリール10の軸方向寸法を可級的に短くすることができる。
【0030】
このように形成されるロータ60の凹部62内に挿入されるリール本体12の前部Fは、脚部12cから前方に向けて、上下方向の寸法が次第に減少する。なお、本明細書中で、リール本体12の前部Fは、特に限定した場合を除き、ハンドル装着部すなわちハンドル軸34を支える軸受36a,36bを配した部位よりもロータ60側の前部に配置されるリールボディ12aおよび蓋体12bの部分を指す。したがって、これらの軸受36a,36bと上下方向にほぼ整合した位置に配置される脚部12c、ハンドル軸34、スタンド部材42および軸受キャップ44は、この前部Fに含まれない。
【0031】
図2に示すように、このリール本体12の前部F内では、中空駆動軸22のピニオン22aよりも前方部位が、断面非円形の外面形状を有してロータ60の駆動部68を回り止め嵌合する作動部22bとして形成してあり、この作動部22bの後端部に、前側軸受46bであるボール軸受が装着される。この軸受46bの内輪が作動部22bの後端で支えられ、外輪はリール本体12のリールボディ12aに形成した環状段部78a内に収容され、後方への移動を阻止される。
【0032】
図3から図6は、この筒状の前部Fに形成されて、軸受46bの前方に転がり式一方向クラッチ82を配置する支持部80を示す。
【0033】
本実施形態の支持部80は、前部軸受46bを収容する第1の収容部を構成する環状段部78aの前方に位置する前端部に、環状段部78aよりも大きな内径に形成された第2の収容部を構成する前部段部78bを有し、この前部段部78b内に転がり式一方向クラッチ82が収容支持されている。この一方向クラッチ82は、中空駆動軸22の作動部22bに回り止め嵌合された内輪部材84と、後述する保護キャップを92介して前部段部78b内に嵌合された外輪部材86との間に保持器88aで保持されたローラ状の複数の転がり部材88を配置し、この保持器88aにより転がり部材88を自由回転領域と回転規制領域との間で移動することができる。
【0034】
この保持器88aは、図5に示すように、外方に延びる一体構造の作動アーム88bを有し、この作動アーム88bに切換カム90が連結される。この切換カム90は、リール本体12内を前後に延びる図示しない作動機構を介して、リール本体12の後端部に配置した操作レバーL(図1参照)に連結されており、この操作レバーLを切換操作することにより、保持器88aを自由回転領域と回転規制領域との間を移動し、釣糸繰り出し方向への中空駆動軸22、つまりロータ60の逆回転を阻止する逆転防止状態と、正回転および逆回転を許容する規制解除状態とに自由に切換えることができる。
【0035】
この転がり式一方向クラッチ82と前部段部78bとの間に配置する保護キャップ92は、例えばステンレス鋼製の外輪部材82が、例えばマグネシウム合金あるいはアルミニウム合金で形成されるリールボディ12aに直接接触し、電気化学作用で腐食するのを防止する。この保護キャップ92は、特に、リールボディ12aをマグネシウム合金で形成される場合、マグネシウム合金との電位差の少ない材質、例えばアルミニウム材で形成することで電食の発生を防止できるが、樹脂材の絶縁材で形成することにより、電食の発生を確実に防止することが可能となる。いずれの場合も、径方向外方に耳部92aを折り曲げ形成し、後述する突部98を介して支持部80に固定することにより、容易に位置決めし、所要位置に保持することができる。
【0036】
このように転がり式一方向クラッチ82を配置する支持部80は、径方向に対向した部位から周部に突出する一対の耳部80aと、これらの耳部80a間で径方向外方に突出するカム収容部80bとを有し、一方向クラッチ82を囲むリール本体12の先端部を凹設して軸方向外方に開口させた開口周縁部94を先端に形成してある。この開口周縁部94は、中空駆動軸22に対して垂直な平面内に配置されており、外周側は周壁部96で取り巻かれ、内周側は一方向クラッチ82を収容する前部段部78bに連続し、この前部段部78bの開口端との間に段部を形成する。
【0037】
この開口周縁部94は、カム収容部80b内で保持器88の作動アーム88bが切換カム90に連結し、この切換カム90を作動する作動機構が、この開口周縁部94に開口する軸方向孔89(図6)を介して後方に延びる。そして、径方向に対向する耳部80a内では、突部98が軸方向に突出する。この突部98は、軸方向に沿ってネジ孔98a(図6)を形成した円筒状形状を有し、周壁部96を超えてリール本体12の前方に突出する(図3参照)。
【0038】
図3および図5に示すように、一方向クラッチ82の外輪部材86を高精度で回り止めするため、一方向クラッチ82の外輪部材86の周縁部に形成した係合部86aと回り止め係合する回り止め部材100をこの突部98に装着してある。なお、符号86bは、外輪部材86の周縁部に形成した切欠き部であり、この切欠き部86bを介して保持器88aと一体の作動アーム88bが外輪部材86と干渉することなくカム収容80b内に突出する。この回り止め部材100を金属で形成する場合には、開口周縁部94との間に保護キャップ92の耳部92aを介挿し、電食を防止することが好ましい。
【0039】
この回り止め部材100は外輪部材86の内径よりも外径が小さく形成されたリング状部102を有し、このリング状部102の径方向に対向した部位から突出する舌片部104に、突部98に嵌合する装着孔104aを形成してある。本実施形態では、この舌片部104のリング状部102に近接した部位を幅狭に形成し、外輪部材86の係合部86aに密に嵌合した状態に係合させてあるが、外輪部材86の移動を阻止できるものであれば、このような幅狭部としなくてもよい。
【0040】
このように、転がり式一方向クラッチ82を収容する支持部80の開口周縁部94から突部98を突出し、この突部98に回り止め部材100の装着孔104aを嵌合することにより、回り止め部材100がリール本体12で直接回り止めされ、回り止め部材100の位置決めを高精度で安定して行うことができ、転がり式一方向クラッチ82の性能低下を長期にわたって防止できると共に、組付け作業が安定し、作業性を良好にすることができる。
【0041】
また、支持部80の耳部80a内で軸方向に開口する開口周縁部94に、回り止め部材100の舌片部104が収容されることにより、特に軸方向におけるコンパクト化を図り、安定した強度を維持することができる。
【0042】
図3および図4に示すように、回り止め部材100で外輪部材86を高精度で回り止めされる一方向クラッチ82は、突部98のネジ孔98aに螺合する固定ネジ106で固定される固定部材108により、回り止め部材100と共に軸方向移動を阻止され、支持部80から抜け止めすることができる。
【0043】
本実施形態の固定部材108は、支持部80の外形に対応した外形形状を有する、例えば金属や硬質樹脂製の板状構造に形成してあり、耳部80aおよびカム収容部80bを含む支持部80の前端部の周縁部が周壁部96に重なる状態に配置される。この支持部80の耳部80aに重なる部位には、突部98の外周面に嵌合される装着孔108aを形成してあり、固定ネジ106を突部98のネジ孔98a(図6)に螺合することにより、この固定ネジ106の頭部で突部98から抜け出るのを防止することができる。
【0044】
更に、この固定部材108には、前部段部78bの内径よりも僅かに小径に形成した中央開口110を有し、この中央開口110の内周側から、前方かつ半径方向内方に向けて傾斜した状態にシール縁部112を突出させたシール部材114が開口周縁部94側に装着されている。このシール縁部112は、先端すなわち内周側に向けて肉厚が次第に減少し、内周縁部は丸められて駆動部68に対するシールリップ部を形成する。これにより、シール縁部112がどの位置にあっても、相手方のロータ60の駆動部68の外周面に損傷を与えることなくわずかに内周が拡開変形して弾力的にシール係合する。これにより、前部Fの内部が密封される。
【0045】
このシール部材114は、外形形状が固定部材108の外形と重なるフランジ部116の内周側に厚肉部118を形成し、この厚肉部118の外面側すなわち開口周縁部94から離隔した側からシール縁部112が延び、内面側からフランジ部16が延びる。また、厚肉部118の外周部には、固定部材108の内周縁部すなわち中央開口110の周部が嵌合する溝120を形成してある。
【0046】
このシール部材114のフランジ部116には、固定部材108の装着孔108aと対応する装着孔116aが形成してあり、固定部材108にシール部材114を装着し、双方の外形を整合させたときに、それぞれの装着孔108a,116aが同軸上に整合する。図7は、このように固定部材108にシール部材114を装着した状態を示す。
【0047】
尚、シール部材114は、溝120を弾性変形させて、固定部材108の中央開口110の周部を取外すことができ、固定部材108にシール部材114は着脱可能となっている。
【0048】
このようにシール部材114を装着した固定部材108を開口周縁部94に載置し、固定ネジ106を突部98のネジ孔98aに螺合し、締付けると、この固定ネジ106の頭部が固定部材108を介してシール部材114のフランジ部116、回り止め部材100の舌片部104、および保護キャップ92の耳部92aを開口周縁部94に押圧する。シール部材114のフランジ部116は、開口周縁部94に接触してリール本体12側をシールするシール部材114の基部として作用し、その弾力により、回り止め部材100および固定部材108が金属等の硬質材料で形成されている場合でも、確実に締め付けることができる。
【0049】
このように、一方向クラッチ82の軸方向移動を阻止する固定部材108を、回り止め部材100の外側から突部98に装着し、突部98に形成したネジ孔98aに螺合したネジ部材である固定ネジ106により、これらの固定部材108および抜け止め部材100を支持部80から抜け止めすることにより、リール本体12の支持部80に、転がり式一方向クラッチ82を確実かつ安定した状態で抜け止めし、保持することができる。
【0050】
また、固定部材108の中央開口110の周縁部がシール部材114の厚肉部118と共に転がり式一方向クラッチ82の外輪部材88を介して軸方向移動を阻止する。
【0051】
この固定部材108を支持部80の開口周縁部94に装着することにより、シール部材114による支持部80の前部開口の閉塞、および、中空駆動軸22の外周側に対するシール縁部112によるシールが可能となり、このシール縁部112による弾性接触で、中空駆動軸22の回転性能を低下させることなく、リール本体12の支持部80内の防水を確実かつ簡単に行うことができる。
【0052】
また、シール部材114が固定部材108に一体的に設けられる場合には、シール部材114と固定部材108とを一体部材して取り扱うことができ、組み込み作業の効率を極めて高めることができる
この魚釣用リール10によると、ロータ60の後方に開口する凹部62内に配置された駆動部68が、リール本体12内の駆動機構24で駆動される中空駆動軸22に一体的に連結され、この駆動部68の周囲と、中空駆動軸22を回転自在に支える支持部を収容した前部Fの支持部80との間に配置されて固定部材108で保持されたシール部材114が、リール本体12の前部F内を密封することにより、異物の侵入する隙間がなくなり、リール本体12の前部Fの防水および防塵が確実に図られる。また、このシール部材114は、周壁部64で囲まれていることにより、スプール50が最も前方に移動した場合であっても、確実に保護される。
【0053】
これにより、このロータ60の凹部62の後方開口端を閉塞するための従来のフランジ部をリール本体12に設ける必要がなく、しかも、ロータ60およびスプール50のそれぞれの前壁部66,54に貫通孔65,55が形成されていることにより、ロータ60の後方開口端から凹部62内に侵入した空気がこれらの貫通孔65,55を介して外部に流出することができ、空気抵抗が小さくかつ軽量・小型化が可能な魚釣用リール10とすることができる。
【0054】
特に、釣竿と共に勢いよく振り下ろしながら釣糸放出操作を行う飛距離を競う投げ専用リールにおいては、リール本体の後部側から前方側に向く空気抵抗を受け易く、特にこの釣糸放出操作時の風の抵抗が微妙に釣糸放出操作性を低下させる要因となっていたものであるが、上述のようなリール本体12の前部Fのフランジレス構造に加え、ロータ60およびスプールの貫通孔65,55による空気抵抗の減少は、釣糸放出操作性を向上させることを可能とし、投げ専用リールに極めて好適に用いることができる。
【0055】
リール本体12の前部Fのフランジレス構造に加えて、更に、ロータ60の周壁部64が後方開口端側で拡径していることにより、リール本体12の前部Fをハンドル軸34に近接する位置まで凹部62内に配置した場合であっても、リール本体12の側部に突設する、例えば蓋体12bに取付けられる軸受キャップ44の外周部がロータ60と干渉することがなく、したがって、軸方向寸法を短く形成することができる。また、ロータ60の周壁部64および腕部70に径方向開口部63,71が形成され、更に、前壁部66には貫通孔65が形成されていることにより、ロータ60が軽量化され、小さな力でも効率よく回転することができる。また、スプール50の前壁部54に形成した貫通孔55も軽量化を促進する。
【0056】
更に、ロータ60の凹部62内に浸入した海水、砂、塵埃等の異物は、外部から例えばシャワー等で洗浄し、径方向開口部63,71および貫通孔55,65を介して容易に洗い流すことができると共に、通気性も良くなり、内部に水分、異物等の滞留もなくなり、腐食の誘発や機能部材の作動不良を防止できる。
【0057】
図9は、固定部材108とシール部材114との変形例を示す。この変形例は、シール部材114を固定部材108に例えば、カシメ、接着、溶着等の固着手段により一体化したものである。
【0058】
固定部材108の前面に固着してもよく、あるいは、符号122で示すように、複数箇所を固着してもよい。この場合には、固定部材108に突起122を形成し、この突起122にシール部材114のフランジ部116に形成した小孔を嵌着して固定してもよい。このようにシール部材114が固定部材108に固着されることにより、より強固に一体化され、取扱いが容易になる。
【0059】
なお、上述の実施形態あるいは変形例はリール本体12のフランジ部を省略した魚釣用スピニングリールに関するものであるが、他の形式の魚釣用リールについても適用可能なことは明らかである。又、前部軸受46bと転がり式一方向クラッチ82の第1及び第2の収容部78a,78bをそれぞれ軸方向に併設した構成で説明したが、これらの第1及び第2の収容部78a,78bのいずれか一方の収容部に適用しても良いことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の好ましい実施形態による魚釣用リールの側面図。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図。
【図3】図1の魚釣用リールのリール本体の前方端部を概略的に示す断面図。
【図4】図3の矢印IVの方向から見た図。
【図5】図3のV−V線に沿う断面図。
【図6】図5から一方向クラッチを取り除いた状態の断面図。
【図7】図1の魚釣用リールに用いる固定部材とシール部材とを組立てた状態を示し、(A)は平面図、(B)は(A)のB−B線に沿う断面図。
【図8】図7の固定部材およびシール部材を分離した状態を示し、(A)は固定部材の平面図、(B)はシール部材の平面図。
【図9】変形例による固定部材およびシール部材を示し、(A)は平面図、(B)は(A)のB−B線に沿う断面図。
【符号の説明】
【0061】
10…魚釣用リール、12…リール本体、22…駆動軸、32…ハンドル、46b…軸受、78a,78b…収容部、80…支持部、82…転がり式一方向クラッチ、94…開口周縁部、108…固定部材、112…シール縁部、114…シール部材、116…フランジ部(基部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体に形成した支持部に、ハンドルの回転操作に連動する駆動軸を回転自在に支持する軸受又は回転状態を制御する一方向クラッチを配置し、この支持部に装着した固定部材により、これらの軸受又は一方向クラッチを抜け止めする魚釣用リールであって、
前記支持部は、前方に開口して前記軸受又は一方向クラッチを収容する収容部と、この収容部を囲むリール本体の端部に凹設されて軸方向外方に開口する開口周縁部とを有し、前記固定部材は、この開口周縁部に接触してリール本体側をシールする基部と前記駆動軸の外周側をシールするシール縁部とを一体形成したシール部材を、前記支持部の開口周縁部に装着することを特徴とする魚釣用リール。
【請求項2】
前記シール部材は、前記固定部材に一体的に設けられる請求項1に記載の魚釣用リール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−106232(P2009−106232A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−283895(P2007−283895)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000002495)ダイワ精工株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】