説明

魚釣用リール

【課題】ハンドルアームの軽量化を図りつつ、巻き取り回転方向における強度だけでなく、リール本体側に作用する押圧力に対する強度も十分に確保できる魚釣用リールの提供を目的としている。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1において、ハンドル7は、その基端部50が巻き取り駆動機構の駆動軸部に対して連結支持され且つその先端部52にツマミ60が設けられたハンドルアーム7aを有し、ハンドルアーム7aには、前記駆動軸部のほぼ軸方向で開口する貫通長孔70が、基端部50側から先端部52側へと向かうハンドルアームの長手方向に沿って形成され、貫通長孔70の開口面70aに沿うハンドルアーム7aの幅寸法WAは、先端部52から基端部50に向かって漸次的に大きくなるように設定されている(W1<W2<W3)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リール本体内の巻き取り駆動機構に連結されて巻き取り駆動操作されるハンドルを備えた魚釣用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、魚釣用リールのハンドルアームは、その一端部(基部)がリール本体内の巻き取り駆動機構の駆動軸部に対して起倒可能に連結支持されるとともに、他端部(先端部)に回転可能なツマミを有しており、ハンドルアームと前記駆動軸部との間にロック部材(ハンドルスタンド)を介在させてネジの締め付け力を強弱調節することにより、起立状態と折り畳み状態とに切り換えることができるようになっている。
【0003】
ところで、近年、リール製品の軽量化の要求が高まるにつれて、また、ハンドル側の重量偏倚抑制の目的からも、ハンドル自体の軽量化が図られるようになってきている。これに関連して、例えば特許文献1には、ハンドルアームの長手方向の中程に貫通長孔を形成することによりハンドルの軽量化を図るようにした魚釣用リールが開示されている。
【特許文献1】特開2004−236571号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハンドルアームは、巻き取り回転操作されるものであることから、それが連結される駆動軸部に対して回転方向の強度が必要なことは勿論のこと、実釣時の巻き取り操作においては、強負荷巻き取りや魚釣用リールの姿勢及び巻き取り位置の変化等に起因して、ツマミを握持保持しながらハンドルアームをリール本体側に押圧しながら巻き取り操作する場合があることから、リール本体側方向、すなわち、駆動軸部の軸方向においても十分な強度が要求される。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されているハンドルアームは、駆動軸部に連結されるその基部からツマミが支持される先端部にかけての形態が全長にわたって幅(巻き取り回転方向の幅)がほぼ等しい板状を成しており、その等幅板状体の長手方向に前述したように軽量化のための貫通長孔が形成されていることから、回転方向においては強度的に満足できるものの、リール本体側(駆動軸部の軸方向)に作用する押圧力に対しては強度的に弱く、したがって、操作の仕方によってはハンドルアームが変形してしまうことも考えられる。
【0006】
本発明は、前記事情に着目してなされたものであり、その目的とするところは、ハンドルアームの軽量化を図りつつ、巻き取り回転方向における強度だけでなく、リール本体側に作用する押圧力に対する強度も十分に確保できる魚釣用リールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、リール本体内の巻き取り駆動機構に連結されて巻き取り駆動操作されるハンドルを備えた魚釣用リールにおいて、前記ハンドルは、その基端部が前記巻き取り駆動機構の駆動軸部に対して連結支持され且つその先端部にツマミが設けられたハンドルアームを有し、前記ハンドルアームには、前記駆動軸部のほぼ軸方向で開口する貫通長孔が、前記基端部側から前記先端部側へと向かうハンドルアームの長手方向に沿って形成され、前記貫通長孔の開口面に沿う前記ハンドルアームの幅寸法は、前記先端部から前記基端部に向かって漸次的に大きくなるように設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、駆動軸部のほぼ軸方向で開口する貫通長孔が基端部側から先端部側へと向かうハンドルアームの長手方向に沿って形成されているため、ハンドルアームの軽量化を図ることができるとともに、貫通長孔の開口面に沿うハンドルアームの幅寸法が先端部から基端部に向かって漸次的に大きくなるように設定されているため、巻き取り回転方向における強度だけでなく、リール本体側に作用する押圧力に対する強度も十分に確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1に示されるように、本発明の一実施形態に係る魚釣用リールとしてのスピニングリール1は、公知の巻き取り駆動機構9を収容するリール本体2を備えている。リール本体2には、釣竿に装着されるリール脚2aが一体形成されており、その前方には、回転可能に支持されたロータ3と、ロータ3の回転運動と同期して前後動可能に支持された図示しない公知のスプールとが配設されている。また、リール本体2には、巻き取り駆動機構9の駆動軸部6が軸受6aを介して回転可能に支持されており、その突出端には、ハンドル7が装着されている。そして、駆動軸部6に取り付けられたフェースギヤ8に前記巻取り駆動機構9が連結されている。したがって、ハンドル7を回転操作(釣り糸巻き取り駆動操作や釣糸繰り出し回転操作)すると、フェースギヤ8および巻取り駆動機構9を介して、ロータ3が回転駆動され、それにより、前記スプールが往復駆動される。
【0011】
ハンドル7は、ハンドルアーム7aと、巻き取り駆動機構9の駆動軸部6に着脱自在に結合され且つハンドルアーム7aを回動可能に支持する連結軸部7bと、連結軸部7bの外周に設けられ且つ後述するようにハンドルアーム7aを起立位置と倒伏位置との間で回動できるように連結軸部7bに対してその軸方向にスライド可能な円筒状のハンドルスタンド7cとを有している。
【0012】
具体的には、ハンドルアーム7aは、連結軸部7bに支持される(連結軸部7bを介して巻き取り駆動機構9の駆動軸部6に対して連結支持される)基端部50と、手の指によって摘まれるハンドルノブ(ツマミ)60が設けられた先端部52とを有している。また、連結軸部7bは、駆動軸部6に着脱自在に結合される結合端部20と、ハンドルアーム7aを回動可能に支持する支持端部21とを有しており、結合端部20を駆動軸部6の有底円筒状の突出端部の内孔31に挿入して結合端部20の外周に形成された雄ネジ部23を駆動軸部6の内孔31の内周面に形成された雌ネジ部30に螺合させることにより駆動軸部6に対して着脱自在に取り付けられるようになっている。そして、連結軸部7bは、駆動軸部6に取り付けられることにより、この駆動軸部6と一体で回転できるようになる。
【0013】
また、連結軸部7bの支持端部21は、これに装着された支持ピン22を介して、ハンドルアーム7aを起立位置(図1および図2の位置)と折り畳み位置(倒伏位置)(図3の位置)との間で回動させることができるように支持している。この場合、駆動軸部6に対するハンドルアーム7aの前記折り畳み位置と前記起立位置との間での切換えは、以下のようにして行なわれる。すなわち、連結軸部7bの結合端部20を駆動軸部6の内孔31の奥端まで完全に螺合させた図1および図2の状態では、ハンドルスタンド7cの先端面40がハンドルアーム7aの基端部50の係合面(基部端面)41に当て付くとともにハンドルスタンド7cの基端面43が駆動軸部6の突出端面44に当て付き、それにより、ハンドルスタンド7cの連結軸部7bに対するスライドが阻止されてハンドルアーム7aが起立位置に保持される(図1および図2参照)。一方、駆動軸部6に対する連結軸部7bの螺合状態を緩め、連結軸部7bを駆動軸部6から軸方向に抜き出していくと、駆動軸部6の内孔31から突出する連結軸部7bの長さが長くなり、ハンドルスタンド7cをスライドさせることができる領域が連結軸部7b上に確保される。そのため、ハンドルスタンド7cをリール本体2側へスライドさせてハンドルスタンド7cの先端面40をハンドルアーム7aの係合面41から離間させることにより、ハンドルアーム7aをピン22を中心に回動させることができるようになり、したがって、ハンドルアーム7aを折り畳み位置へと倒伏させることができる(図3参照)。
【0014】
また、ハンドル7を構成する前記ハンドルスタンド7cは、連結軸部7bに対して回り止め嵌合されており、連結軸部7bに対してスライド可能に保持されつつ連結軸部7bと一体で回転できるようになっている。特に、本実施形態において、ハンドルスタンド7cは、リールを把持する手の指を掛けることができる円筒状の指掛け部62と、指掛け部62の両側に位置され且つ指掛け部62よりも大径のフランジ部63,64とから成っている。つまり、ハンドルスタンド7cは、小径円筒状の指掛け部62両側に大径鍔部としてのフランジ部63,64を有する鋲形態を成しており、言い換えると、円筒部材において指掛け部62に対応する部分の肉厚を削ることにより小径円筒部と大径鍔部とを形成して成るものであり、これにより、ハンドル7全体の軽量化を図ることができる。この場合、効率的且つ機能的な軽量化を図るべく、ハンドルスタンド7cのフランジ部63,64の外径D(D1〜D2)(図2参照)に対する指掛け部62の外径α(α1〜α2)の比率α/Dは、40%〜90%、好ましくは48%〜75%に設定される。
【0015】
また、本実施形態のハンドルスタンド7cは、指掛け部62を有しているため、ロータ3の釣糸繰り出し方向の回転を可能にした状態で例えば釣竿の穂先からの釣糸の垂らし長さを調節する際にロータ3の回転にブレーキを掛けるべく指掛け部62を介した親指の腹部でのサミング操作が可能となる。すなわち、ロータ3の釣糸繰り出し方向の回転を可能にした状態では、ロータ3に結合された駆動軸部6およびこれに連結された連結軸部7b(したがって、ハンドルスタンド7cおよびハンドルアーム7a)もロータ3と一体で釣糸繰り出し方向に回転できるため、この回転に対してハンドルスタンド7cの指掛け部62からブレーキを掛けることで、いわゆるサミング操作を簡単且つ効率的に行なうことができる。
【0016】
なお、ハンドルスタンド7cの一方側のフランジ部、特に、リール本体2側に位置する幅広のフランジ部63の外周には、ハンドルスタンド7cを回転操作し易いように、すなわち、ハンドルスタンド7cの回転操作に伴う駆動軸部6に対する連結軸部7bの螺合操作を容易にするべく、摩擦領域(粗面領域)が形成されており、特に本実施形態では、周方向に所定の間隔をもって溝65が形成されている。
【0017】
また、図4〜図7に明確に示されるように、ハンドルアーム7aには、駆動軸部6のほぼ軸方向で開口する貫通長孔70が、基端部50側から先端部52側へと向かうハンドルアーム7aの長手方向に沿って形成されている。この場合、貫通長孔70の開口面70aに沿うハンドルアーム7aの幅寸法WAは、先端部52から基端部50に向かって漸次的に大きくなるように設定されている(W1<W2<W3)。このことは、先端部52側に位置する図4のB−B線に沿うハンドルアーム7aの部位(幅寸法W1)の断面図である図6と、基端部50側に位置する図4のA−A線に沿うハンドルアーム7aの部位(幅寸法W2)の断面図である図5とを比較すれば容易に理解できる。また、本実施形態において、貫通長孔70は、ハンドルアーム7aの外形に沿う開口形状をほぼ成して、先端部52から基端部50に向かって漸次的に幅広になっている。このような寸法設定により、巻き取り回転方向における強度だけでなく、リール本体2側に作用する押圧力に対する強度も十分に確保できる。
【0018】
また、ハンドルアーム7aは、貫通長孔70を挟んでハンドルアーム7aの幅方向で対向する一対の側端壁72,74を有している。これらの側端壁72,74は、図7に明確に示されるように、板状の支柱形態を成すとともに、貫通長孔70の開口面70aに沿うその寸法Tよりも前記開口面と略直交する駆動軸部6の軸方向に沿うその寸法Hの方が大きく設定されている。特に、本実施形態では、前記寸法T,Hの比率T/Hが5%〜50%、好ましくは11%〜36%に設定されている。また、本実施形態においては、ハンドルアーム7aの長手方向全体で見ても、前記開口面70aと略直交する駆動軸部6の軸方向に沿うハンドルアーム7aの幅寸法WBも、先端側52に位置する棒状部75よりも、貫通長孔70を含む基端部50側部位の方が大きく幅広に設定されている。このような寸法設定により、リール本体2側に作用する押圧力に対する強度を更に大きく確保できる。
【0019】
以上説明したように、本実施形態においては、駆動軸部6のほぼ軸方向で開口する貫通長孔70が基端部50側から先端部52側へと向かうハンドルアーム7aの長手方向に沿って形成されているため、ハンドルアーム7aの軽量化を図ることができるとともに、貫通長孔70の開口面70aに沿うハンドルアーム7aの幅寸法WAが先端部52から基端部50に向かって漸次的に大きくなるように設定されているため、巻き取り回転方向における強度だけでなく、リール本体2側に作用する押圧力に対する強度も十分に確保できる(リール本体2側へ駆動軸部6の軸方向で押圧力を加えて巻き取り操作を行なう際に、ハンドルアーム7aの基端部50側に強い押圧力が掛かっても、強度的に十分に耐えることができる)。また、これに加え、本実施形態において、ハンドルアーム7aは、貫通長孔70を挟んでハンドルアーム7aの幅方向で対向する一対の側端壁72,74を有し、これらの側端壁72,74は、貫通長孔70の開口面70aに沿うその寸法Tよりも前記開口面と略直交する駆動軸部6の軸方向に沿うその寸法Hの方が大きく設定されている。そのため、リール本体2側に作用する押圧力に対する強度を更に大きく確保できる。
【0020】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できることは言うまでもない。例えば、前述した実施形態では、本発明がスピニングリールに対して適用されているが、本発明は両軸受型リールやクローズドフェースリールなどの他の形態のリールにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る魚釣用リール(スピニングリール)の一部断面を有する背面図である。
【図2】起立位置にあるハンドルの一部断面を有する側面図である。
【図3】倒伏位置にあるハンドルの一部断面を有する側面図である。
【図4】ハンドルの正面図である。
【図5】図4のA−A線に沿う断面図である。
【図6】図4のB−B線に沿う断面図である。
【図7】ハンドルの要部斜視図である。
【符号の説明】
【0022】
1 スピニングリール(魚釣用リール)
6 駆動軸部
7 ハンドル
7a ハンドルアーム
7b 連結軸部
7c ハンドルスタンド
9 巻き取り駆動機構
50 基端部
52 先端部
60 ハンドルノブ(ツマミ)
62 指掛け部
63,64 フランジ部
70 貫通長孔
70a 開口面
72,74 側端壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体内の巻き取り駆動機構に連結されて巻き取り駆動操作されるハンドルを備えた魚釣用リールであって、
前記ハンドルは、その基端部が前記巻き取り駆動機構の駆動軸部に対して連結支持され且つその先端部にツマミが設けられたハンドルアームを有し、
前記ハンドルアームには、前記駆動軸部のほぼ軸方向で開口する貫通長孔が、前記基端部側から前記先端部側へと向かうハンドルアームの長手方向に沿って形成され、
前記貫通長孔の開口面に沿う前記ハンドルアームの幅寸法は、前記先端部から前記基端部に向かって漸次的に大きくなるように設定されていることを特徴とする魚釣用リール。
【請求項2】
前記貫通長孔は、ハンドルアームの外形に沿う開口形状を成して、前記先端部から前記基端部に向かって漸次的に幅広になっていることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用リール。
【請求項3】
前記ハンドルアームは、前記貫通長孔を挟んでハンドルアームの幅方向で対向する一対の側端壁を有し、これらの側端壁は、板状の支柱形態を成すとともに、前記貫通長孔の開口面に沿うその寸法よりも前記開口面と略直交する前記駆動軸部の軸方向に沿うその寸法の方が大きく設定されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の魚釣用リール。
【請求項4】
前記ハンドルは、前記巻き取り駆動機構の前記駆動軸部に着脱自在に結合され且つ前記ハンドルアームを回動可能に支持する連結軸部と、この連結軸部の外周に設けられ且つ前記ハンドルアームを起立位置と倒伏位置との間で回動できるように前記連結軸部に対してその軸方向にスライド可能な円筒状のハンドルスタンドとを更に有し、前記ハンドルスタンドは、リールを把持する手の指を掛けることができる円筒状の指掛け部と、指掛け部の両側に位置され且つ指掛け部よりも大径のフランジ部とから成ることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の魚釣用リール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−159834(P2009−159834A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−339855(P2007−339855)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000002495)ダイワ精工株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】