説明

魚釣用リール

【課題】本体部材に対する蓋部材のズレを確実に防止して高性能の回転性能を得ることができる魚釣用リールを提供すること。
【解決手段】リール本体の側枠14aと側板16aとで巻取り駆動機構22を収容するギヤボックスGを形成し、巻取り駆動機構22に連結されるハンドル34の回転操作で釣糸をスプール20に巻回可能とした魚釣用リールであって、側枠14aと側板16aとの互いに対向する接合面の一方に形成した丸ピンの凸部50aと他方に形成した長穴の長凹部50bとで第1合わせ部50を形成し、側枠14aと側板16aとの互いに対向する接合面の一方に形成した丸ピンの凸部52aと他方に形成した丸穴の短凹部52bとで第2合わせ部52を形成し、これらの第1,第2合わせ部50,52とそれぞれ周方向に近接した位置に、ネジを取付ける挿通孔47a,47bおよびネジ孔48a,48bを配置した魚釣用リール10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣用リールに関し、特に、本体部材と蓋部材とで巻取り駆動機構を収容するギヤボックスを形成した魚釣用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、魚釣用リールは、本体部材と蓋部材とで巻取り駆動機構を収容するギヤボックスを形成し、この巻取り駆動機構に連結されるハンドルの回転操作で釣糸をスプールに巻回するようになっている。これらの本体部材と蓋部材は、金型成形や切削加工等の適宜の方法で所定の形状や寸法に形成され、組立て部品として完成される。
【0003】
巻取り駆動機構の駆動軸は、このような本体部材と蓋部材とで回転自在に支持され、スプール又はロータを回転駆動するピニオンに噛合する駆動歯車が、これらの本体部材と蓋部材との間のギヤボックス内に配置された部位に設けられ、巻取り駆動するハンドルがギヤボックスの外側に配置された部位に装着されている。
【0004】
このような駆動歯車を回転駆動する駆動軸を、ギヤボックス内で傾きやガタ付きのない状態に組込み、支持するため、本体部材であるフレームに配置した2つの位置決めピンを、蓋部材であるサイドプレートに形成した位置決め穴に嵌合して、双方の部材を高精度で組込むことができるようにしたものがある(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−145442
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、本体部材と蓋部材とに形成されて組込みの際の位置決めを行う位置決めピンと位置決め穴との双方は、本体部材と蓋部材との2つの部材を締付固定するネジ部材の螺合位置から離間した位置に設けられているため、ネジの締付時やハンドルを回転する巻取り操作時に2つの部材を相互に捩り又はこじるように作用する負荷が加わると、本体部材に対する蓋部材のズレあるいは移動が生じ易い。
【0006】
また、位置決めピンおよび位置決め穴、両部材のネジ止め部、および、本体部材と蓋部材との間の合わせ面等が、それぞれ異なる高さあるいは平面内に配置されているため、本体部材に蓋部材を締付け、固定する際に撓みが生じ易い。
【0007】
更に、2つの位置決めピンに嵌合する2つの位置決め穴の双方の断面形状が円形であるため、一方の位置決め穴の寸法を、対応する位置決めピンよりも大きな寸法に形成し、位置決めしつつ組み込む際に、一方の位置決め穴で、位置決めピンの逃げを可能とする必要があり、この結果、本体部材と蓋部材との間にズレが生じ易い。
【0008】
本発明は、このような事情に基づいてなされたもので、本体部材に対する蓋部材のズレを確実に防止して高性能の回転性能を得ることができる魚釣用リールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明によると、本体部材と蓋部材とで巻取り駆動機構を収容するギヤボックスを形成し、巻取り駆動機構に連結されるハンドルの回転操作で釣糸をスプールに巻回可能とした魚釣用リールであって、前記本体部材と蓋部材との互いに対向する接合面の一方に形成した丸ピンの凸部と他方に形成した長穴の長凹部とで回り止め基準となる第1合わせ部を形成し、前記本体部材と蓋部材との互いに対向する接合面の一方に形成した丸ピンの凸部と他方に形成した丸穴の短凹部とで位置決め基準となる第2合わせ部を形成し、これらの第1,第2合わせ部とそれぞれ周方向に近接した位置に、ネジを取付ける第1,第2締付部を配置した魚釣用リールが提供される。
【0010】
前記本体部材と蓋部材とは、互いに異なる平面内に配置される第1,第2接合部を有し、前記第1,第2合わせ部と第1,第2締付部とが配置される接合面は、第1,第2接合部の一方に配置されることが好ましい。
【0011】
前記長穴は、長軸に沿って均等な幅に形成された平行部を有し、この長穴の長軸の延長線上に前記丸穴が配置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
この魚釣用リールによると、組込む際の回り止めおよび位置決め基準となる第1,第2合わせ部により、蓋部材と本体部材とをガタ付きなく位置決めができて本体部材に対する蓋部材のズレを防止することができ、これらの第1,第2合わせ部とそれぞれ周方向に近接した位置に、ネジを取付ける第1,第2締付部を配置することにより、ネジの締付力をそれぞれの合わせ部に集約させることで、ネジ締付部を中心として合わせ部に作用するトルクを小さくすることができ、本体部材に対する蓋部材のズレを確実に防止し、高性能の回転性能を得ることができる。
【0013】
互いに異なる平面内に配置される第1,第2接合部の一方に、第1,第2合わせ部と第1,第2締付部とが配置される接合面が位置する場合には、複数のネジの締付力が同一の平面内で作用し、本体部材と蓋部材との撓みの発生を防止することができる。
【0014】
長穴が長軸に沿って均等な幅に形成された平行部を有し、この長穴の長軸の延長線上に前記丸穴が配置される場合には、合わせ部の配置位置が変化しても、丸穴と長穴との相対位置に係わりなく、第1,第2合わせ部を介して、本体部材に蓋部材をガタ付きを生じさせることなく、確実に組み込むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1から図4は、本発明の好ましい実施形態による魚釣用リール10を示す。
【0016】
この魚釣用リール10は両軸受リールとして形成してある。この魚釣用リール10のリール本体12は、支柱13等で一体化される左右一対の側枠14a,14bで形成されるフレーム14を本体部材として有し、この側枠14a,14bのそれぞれの外側に、蓋部材である外側板16a,16bを取付けて、ハウジングとして形成され、取付脚部18を介して釣竿に固定される。右側の蓋部材である右側板16bは円形又は円筒状に形成してあり、左側の蓋部材である左側板16aは、図2に示すように、円筒状部の一部を径方向外方に膨出させた異形形状に形成してある。なお、本明細書中で、左右は、図1の紙面における左右をいう。
【0017】
釣糸が巻回されるスプール20は、左右の外側板16a,16b間に回転自在に支持され、このスプール20を回転駆動する巻取り駆動機構22が、左側板16aと左側枠14aで区画されるギヤボックスGの内部空間内に収容される。このギヤボックスGの内部空間内には、この巻取り駆動機構22の他にも、巻取り駆動機構22に連動回転して側枠14a,14b間に延びる図示しないガイド軸で案内されつつ筒体26上でラインガイド26aを左右に往復動し、スプール20上に釣糸を均等に巻回するレベルワインド機構の動力伝達部や、ドラグ機構等の各種部材が収容される。
【0018】
本実施形態のスプール20は、このリール本体12の側枠14a,14bを貫通するスプール軸20aで支えられており、このスプール軸20aは、両端部が、例えばボール軸受30a,30bを介してリール本体12に回転自在に支持され、このスプール20と共に回転する。このスプール軸20aの一端側から左側枠14aを通して突出する端部は、このスプール軸20aと一体で同軸状に配置されるピニオン軸32aとして形成してあり、このピニオン軸32a上にハンドル34で回転駆動されるピニオン32が移動可能に支持されている。
【0019】
このピニオン32は、ピニオン軸32aを挿通する筒状構造を有し、左側枠14aおよび左側板16aで支えられた軸受(図示しない)により、リール本体12に対して回転可能かつ軸方向に移動可能に支持されている。図示しないクラッチレバーを介してクラッチ機構をON/OFF操作することにより、ピニオン32は、スプール軸20aに嵌合してスプール軸20aと一体的に回転する係合位置と、スプール軸20aとの係合状態が解除された非係合位置との間を、ピニオン軸32aに沿って移動することができる。
【0020】
このピニオン32の移動は、ピニオン32の周溝32bに係合するヨーク36を、クラッチ機構のON/OFF操作に連動させて、ピニオン軸32aに沿って移動することで行うことができ、スプール20が自由に回転できるクラッチOFFの状態で、ハンドル34を回転すると、クラッチONの状態に戻り、釣糸をスプール20に巻き取ることができる。なお、本実施形態では、左側板16aに配置した調節ネジ17を介してピニオン軸32aを押圧し、スプール軸20aに作用する摩擦力を調整することができる。
【0021】
更に、ギヤボックスG内には、一端に締付けナット33でハンドル34を取付けたハンドル軸34aがピニオン軸32aと平行に配置されており、このハンド34を回転することにより、巻取り駆動機構22を介してスプール20が回転駆動される。締付ナット33は、小ネジ等でハンドル34に固定される回り止め33aにより、回り止めすることが好ましい。
【0022】
このハンドル軸34aは、左側枠14aおよび左側板16aにそれぞれ軸受35(左側枠14a側のみを示す)で回転可能に支持されている。このハンドル軸34aをハンドル34側で支える軸受は、左側板16aの略円筒状に突出する突出部38内に設けてあり、この突出部38内には、ハンドル軸34aの釣糸巻回方向への回転を許容し、逆方向の回転を阻止する一方向クラッチが配置されている。
【0023】
なお、図4に示すように、ハンドル軸34aを支える軸受35は、抜け止めプレート35aにより左側枠14a内に保持し、ギヤボックスG内における種々の部材の組み立ておよび保守を容易にしてある。このような抜け止めプレート35aを、他の部材との干渉を避け、容易かつ迅速に取付可能とするため、左側枠14aに、抜け止めプレート35aの外形形状の少なくとも一部に係合する係止部15を形成し、取付用の小ネジ35bと共に回転するのを防止することが好ましい。本実施形態では、この係止部15は抜け止めプレート35aの少なくとも一部を収容する凹部の側面で形成してあり、小ネジ35bを左側枠14aに締付けたときに、回り止めプレート35aの縁部を係止する。2つの小ネジ35bで固定する場合には、それぞれの小ネジ35bの締付け方向で、共回りを阻止することが好ましい。
【0024】
更に、ハンドル軸34aには、ドラグ機構と共に、巻取り駆動機構22の一部を形成するドライブギヤ22aを回転可能に装着してあり、ハンドル軸34aでスタードラグ40を回転することにより、ハンドル軸34aに対するドライブギヤ22aの摩擦結合力を変え、所望のドラグ力に調整することができる。これにより、ハンドル34の回転操作による駆動力は、ドラグ機構を介してドライブギヤ22aに伝達され、このドライブギヤ22aからピニオンギヤ32とスプール軸20aとを介してスプール20に伝達される。魚が掛かったときに、釣糸放出方向にスプール20を回転する力がドラグ力を超えると、ドライブギヤ22aがドラグ力に抗して回転し、スプール20が釣糸繰出し方向に回転し、糸切れを防止する。
【0025】
この魚釣用リール10は、キャスティング操作や釣糸の巻取り操作性の向上を図るために、リール本体12の外径をコンパクト化し、回転伝達効率を向上させるために、ドライブギヤ22aを大型化してある。
【0026】
このため、ギヤボックスGを形成する左側枠14aと左側板16aとの外周部は、スプール軸20aを囲む円筒状部42に対して、ドライブギヤ22aを囲む部位を径方向外方に膨出させた異形の周壁からなる膨出部44として形成し、この膨出部44内にドライブギヤ22aの外周部を収容してある。
【0027】
本実施形態では、円筒状部42を左側板16aと一体の周壁42aで形成し、膨出部44を左側枠14aと一体の周壁44aで形成してある。また、左側板16aには、膨出部44に対応する周縁リブ44bを形成し、左側枠14aには、円筒状部42に対応する周縁リブ42bを形成してある。左側板16aの周縁リブ44bと周壁42aとは、左側枠14a側の端面を段差状に形成し、左側枠14aの周壁44aと周縁リブ42bとは、左側板16a側に段差状の端面を接合面として形成する。これらの周壁42a,44aの端面および周縁リブ42b,44bの端面は、スプール軸20aに対して垂直な面内に配置することが好ましい。
【0028】
このように、端面が段差状に形成される左側枠14aと左側板16aとの2つの部材間には、組立てたときに、膨出部44を含む膨出側部位で、左側枠14aの周壁44aが左側板16aの周縁リブ44bに臨む第1の接合部T1が形成され、更に、円筒状部側すなわち反膨出側部位で第2の接合部T2が形成される。具体的には、左側板16aの周縁リブ44bの端面と左側枠14aの周壁44aの端面とを接合面として含む部位で第1の接合部T1が形成される。また、第2の接合部T2は、左側枠14aの周縁リブ42bの端面と左側板16aの周壁42aの端面とで接合面が形成される。これらの第1および第2の接合部T1,T2は、スプール軸20aの軸方向に沿って段差状に形成される。本実施形態では、図4に示すように、第1の接合部T1よりも第2の接合部T2をより広い角度範囲にわたって形成してある。
【0029】
このような段差状の端面配置による第1および第2の接合部T1,T2を形成する左側枠14aと左側板16aは、第2の接合部T2で、本実施形態では3本である複数のネジ46で一体に締結固定してある。これらのネジ46を取付けるため、図3および図4に示すように、左側板16aの円筒状部42を形成する周壁42aの径方向に対向した部位に、第1,第2締付部である挿通孔47a,47bを形成し、更に、これらの間に第3締付部である挿通孔47cを形成してある。また、左側枠14aの円筒状部を形成する周縁リブ42bにも、挿通孔47a,47b,47cと共に締付部を形成するネジ孔48a,48b,48cを形成してあり、挿通孔47a,47b,47cに挿通したネジ46をそれぞれネジ孔48a,48b,48cに螺合することができる。膨出部44には、このような挿通孔やネジ孔は設けてない。
【0030】
更に、図2の(B)および図4に示すように、左側板16aを左側枠14aに対して、特に円筒状部を正確に位置決めして迅速な組込みを可能とするため、円筒状部の接合面を形成する端面のほぼ径方向に対向し、かつ、第1締付部47a,48aおよび第2締付部47b,48bと周方向に近接した部位に、それぞれ組込み基準となる第1合わせ部50および第2合わせ部52を配置してある。本実施形態では、第2合わせ部52は、本体部材に対する蓋部材の位置決め基準を形成し、第1合わせ部50は、第2合わせ部を基点とする本体部材に対する蓋部材の回り止め基準を形成する。
【0031】
本実施形態では、左側板16aに、例えば断面円形状の丸ピンである凸部50a,52aで形成した凸状の第1,第2合わせ部を蓋部材側の組込み基準として配置してある。これらの凸部50a,52aは周壁42aの端面からほぼ垂直に突出することが好ましく、左側板16aと一体に形成してあってもよく、又は、別体で形成した後、左側板16aの端面に植え込んで一体的に形成したものでもよい。
【0032】
また、左側枠14aには、本体部材側の組込み基準である凹状の第1合わせ部として、凸部50aが嵌合する長穴である長凹部50bを形成し、凹状の第2合わせ部として凸部52aが嵌合する丸穴である短凹部52b形成してある。この丸穴である短凹部52bは、接合面すなわち周縁リブ42bの端面に沿う断面が、凸部52に対応した円形状に形成されており、長穴すなわち長凹部50bは、この接合面に沿う断面が長円状に形成されている。丸穴すなわち短凹部52bの中心は、長穴すなわち長凹部50bの長軸の延長線E上に位置するのが好ましい。
【0033】
長凹部50bは、長軸方向の中央部位に、凸部50aの径とほぼ等しい一定幅の平行部51を有し、この平行部51の両端に半円形部が配置されている。この長凹部50bの長軸方向の長さは、凸部50aの径よりも大きく、したがって、凸部50aは長凹部50b内で傾動し又は長軸方向に移動することができ、この長軸と直交する短軸方向には移動することができないように形成してある。これにより、凸部50a,52aが長凹部50bと短凹部52bとに嵌合したときに、左側枠14aに対する左側板16aをガタ付きなく位置決めができて、ズレを防止することができる。
【0034】
このような第1合わせ部50を形成する凸部50aと長凹部50b、および、第2合わせ部52を形成する凸部52aと短凹部52bは、それぞれ第1締付部を形成する挿通孔47aとネジ孔48a、および、第2締付部を形成する挿通孔47bとネジ孔48bとに近接した位置に配置される。この場合、ネジ孔48aの中心と長軸50bの長軸との間、および、ネジ孔48bの中心と短凹部52bの中心との間の中心間距離が例えば10mm以内となる位置に配置することが好ましい。
【0035】
このように形成された魚釣用リール10は、ギヤボックスG内に、巻取り駆動機構22、ドラグ機構、レベルワインド機構等の種々の部材を組上げ、ピニオン軸32aおよびハンドル軸34aの位置をそれぞれの軸受部に整合させつつ、左側板16aを左側枠14aに装着する。
【0036】
左側板16aをフレーム14の左側枠14aに組み込む際、長凹部50bが凸部50aの逃げを可能とするため、左側枠14aに対して左側板16aが非平行すなわち傾斜した状態で近づけた状態でも、互いに径方向に対向した位置の凸部50a,52aを、それぞれ長凹部50bと短凹部52bとに極めて迅速かつ容易に位置合わせして嵌合することができる。しかも、長凹部50bの長軸の延長線(短軸の中心を通る)E上に短凹部52bの中心位置が配置されることにより、凸部50aおよび52aが長凹部50bおよび短凹部52bに嵌合した状態では、延長線Eの方向における相対移動が、第2合わせ部52の位置決めとなる短凹部52bに凸部52aが嵌合することで不能であると共に、この延長線Eに交差し、第2合わせ部52を基点とする回動方向における相対移動も、第1合わせ部50の長凹部50bの短軸方向で凸部50aの移動が確実に阻止されて不能となる。これにより、第1,第2合わせ部50,52がどのような位置に配置されて、短凹部52bと長凹部50aとの間の距離が短く又は長く形成された場合であっても、その相対位置に係わりなく、第1,第2合わせ部50,52を介して、フレーム14の左側枠14aに左側板16aをガタ付きを生じさせることなく、確実に組み込むことができる。
【0037】
この後、それぞれのネジ46を左側板16aの挿通孔47a,47b,47cに挿通し、左側枠14aのネジ孔48a,48b,48cに締付け、固定する。反膨出側部位では、円筒状部42を形成する周壁42aの端面と周部リブ42bの端面とが密に当接して締付固定される。これにより、左側板16aが左側枠14aに対して高精度に位置決めされ、スプール軸20aとこれを支える軸受30a、および、ハンドル軸34aとこれを支える軸受35の高精度の同心度等を確保し、ギヤボックスG内に配置する種々の部材を正確に位置決めすることができる。
【0038】
また、これらのネジ46が、互いに異なる平面内に配置される膨出部44側の第1の接合部T1と円筒状部42側の第2の接合部T2のうちの第2の接合部T2を形成する接合面に、第1,第2合わせ部50,52と、第1締付部の挿通孔47aおよびネジ孔48a、および,第2締付部の挿通孔7bおよびネジ孔48bとが配置されることにより、複数のネジ46の締付力が同一の平面内で作用し、左側枠14aと左側板16aとの撓みの発生を確実に防止することができる。
【0039】
このように形成した魚釣用リール10は、左側枠14aと左側板16aとで形成する巻取り駆動機構22のギヤボックスGの外周部にドライブギヤ22aの外周部を収容する膨出部を形成することにより、コンパクトでありながら大径のドライブギヤ22aを収容することができ、更に、第1および第2の接合部T1,T2のうち、円筒状部42に形成される一方の第2の接合部T2側を締付固定する基準面として左側枠14aと左側板16aの端面とを密に複数のネジ46により一体に締結固定することにより、他方の第1の接合部T1側の当接面における寸法のバラツキの影響を受けることなくリール本体12を強固な一体構造に形成し、内部に収容する歯車の噛合い性能、耐久性の低下を確実に防止することのできる魚釣用リール10を形成することができる。
【0040】
特に、このような左側枠14aに対する左側板16aの高精度の位置決め固定は、一方の接合部T2側にネジ46による締付力を集約して締付固定の基準面とすることにより、他方の接合部T1側の公差、製造誤差等の影響による精度低下(傾き、撓み等の変形)を防止できる。
【0041】
また、ネジ46で締付固定される第1締付部の挿通孔47aおよびネジ孔48aが、第1合わせ部50に対して膨出部44から離隔する側で周方向に近接した位置に配置され、第2締付部の挿通孔47bおよびネジ孔48bが、第2合わせ部52に対して膨出部44から離隔する側で周方向に近接した位置に配置されることにより、ネジ46の締付力をそれぞれの合わせ部50,52に集約させることで、ネジ締付部を中心として合わせ部に作用するトルクを小さくすることができ、フレーム14に対する左側板16aのズレを確実に防止し、駆動機構22およびスプール20の高性能の回転性能を得ることができる。
【0042】
図5および図6は、他の実施形態による魚釣用リール10を示す。なお、本実施形態も基本的には上述の実施形態と同様であるため、同様な部位には同様な符号を付し、その詳細な説明を省略する。た実施形態を示す。
【0043】
本実施形態では、膨出部44の周壁44aを左側板16aに形成してあり、反膨出側部位で、円筒状部42は上述と同様に、左側板16aに形成した円筒状の周壁42aと左側枠14aに形成した周縁リブ42との端面間で第2の接合部T2が形成される。また、第1の接合部T1は、左側板16aに形成した膨出部の周壁44aと左側枠14aに形成した周縁リブ44bとの端面間で形成される。この左側枠14aの周縁リブ44bは、円筒状部42に隣接した部位にのみ、すなわち膨出部44の両端部にのみ形成してあり、左側枠14aの外形は、側面視(スプール軸の方向)で円形状に形成される。
【0044】
左側枠14aが円形状であるため、膨出部44を形成する左側板16aの周壁44aは、左側枠14a側に開口する開口部が形成される。この開口部は、左側枠14aの周縁リブ44b,44bの内端(膨出部44側の端部)間に配置した閉塞プレート54で閉塞してある。この閉塞プレート54は、例えば3本のネジ56で左側枠14aに固定してあり、その外周縁部は周壁44aの内周面に当接し、又は、極めて僅かな間隙を介して対向配置することが好ましい。
【0045】
この閉塞プレート54は、ネジ56で左側枠14aに固定したときに、左側板16a側の面が左側枠14aの周縁リブ44bの端面と同一面状に配置されることが好ましい。このため、膨出部を形成する左側板16aの周壁44aは、周縁リブ44bに対応する部位から径方向外方に膨出を開始し、少なくとも周壁44aの内周が周縁リブ44bの内端と整合する状態に形成されることが好ましい。
【0046】
このように、左側枠14aを側面視で円形状に形成し、周壁44aが形成する膨出部44の開口部を閉塞プレート50で閉塞することにより、この左側枠14aに異形形状の膨出部を形成する必要がなく、左側枠14aを極めて高精度に形成することができる。
【0047】
なお、上述のそれぞれの実施形態では、膨出部44が、ドライブギヤ22aの周部を収容する大径の円弧状凸部と共に、これよりも小径の円弧状凸部をレベルワインド機構の筒体26の前方に配置した非円形状の異形形状に形成してあるが、膨出部44も円筒状部42の径と等しい円筒状又は径の異なる円筒状に形成してもよいことは明らかである。
【0048】
また、ギヤボックスGを左側枠14aと左側板16aとで形成した実施形態を例に挙げて説明してあるが、このようなギヤボックスGを右側枠14bと右側板16bとで形成した場合も同様である。
【0049】
なお、上述の実施形態では、第1,第2締付部と近接した部位に第1,第2合わせ部50,52を配置したが、一方の合わせ部を第3締付部の挿通孔47cおよびネジ孔48cに近接した部位に配置することも可能である。また、2つの部材間のガタ付きのない位置合わせが必要な部位であれば、上述のような両軸受リールに限らず、スピニングリールに設けることも可能なことは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の好ましい実施形態による魚釣用リールを示す説明図。
【図2】図1に示す魚釣用リールをハンドル側から見た状態を示し、(A)は3つの締付部を示す説明図、(B)は締付部と合わせ部との配置状態を示す説明図。
【図3】左側枠から左側板を分離した状態の説明図。
【図4】左側枠と左側板とを示し、(A)は図3のA−A線方向の図、(B)は図3のB−B線方向の図。
【図5】他の実施形態による魚釣用リールの図1と同様な説明図。
【図6】図5に示す魚釣用リールの左側枠の説明図。
【符号の説明】
【0051】
10…魚釣用リール、14…フレーム(本体部材)、16a,16b…側板(蓋部材)、20…スプール、22…巻取り駆動機構、34…ハンドル、46…ネジ、47a,47b…挿通孔(締付部)、48a,48b…ネジ孔(締付部)、50a,52a…凸部(合わせ部)、50b,52b…凹部(合わせ部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部材と蓋部材とで巻取り駆動機構を収容するギヤボックスを形成し、巻取り駆動機構に連結されるハンドルの回転操作で釣糸をスプールに巻回可能とした魚釣用リールであって、
前記本体部材と蓋部材との互いに対向する接合面の一方に形成した丸ピンの凸部と他方に形成した長穴の長凹部とで回り止め基準となる第1合わせ部を形成し、前記本体部材と蓋部材との互いに対向する接合面の一方に形成した丸ピンの凸部と他方に形成した丸穴の短凹部とで位置決め基準となる第2合わせ部を形成し、これらの第1,第2合わせ部とそれぞれ周方向に近接した位置に、ネジを取付ける第1,第2締付部を配置した魚釣用リール。
【請求項2】
前記本体部材と蓋部材とは、互いに異なる平面内に配置される第1,第2接合部を有し、前記第1,第2合わせ部と第1,第2締付部とが配置される接合面は、第1,第2接合部の一方に配置される請求項1に記載の魚釣用リール。
【請求項3】
前記長穴は、長軸に沿って均等な幅に形成された平行部を有し、この長穴の長軸の延長線上に前記丸穴が配置される請求項3に記載の魚釣用リール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−104276(P2010−104276A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−278550(P2008−278550)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】