説明

魚釣用リール

【課題】一度で調整できるドラグ調整範囲、特に一度で回動させることができるドラグ操作ノブの回動操作範囲を拡大させることができるハンドルを備えた魚釣用リールを提供する。
【解決手段】本発明の魚釣用リールのハンドル9aは、その幅がドラグ調整ノブ側へ向かって徐々に狭くなるように、その幅方向の両端面63,64がテーパ状に形成されている。ハンドル9aは、長手方向に対して垂直な方向で切断したその断面の角部68,69が所定の曲率半径を有する円弧状に形成されている。ドラグ調整ノブ側に位置する角部68の曲率半径は、その反対側に位置する角部69の曲率半径よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣用リールに係わり、特に、スタードラグに適するハンドル形状に特徴を有する魚釣用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、魚釣用リールは、釣糸巻回用のスプールの回転にドラグ力を付与するドラグ機構を備えており、該ドラグ機構によるドラグ力の調整を行なうための操作ノブがハンドルの近傍に設けられる。特に両軸受型リールでは、そのようなドラグ調整ノブとして星型を成したノブ(そのようなノブを伴うドラグを、一般に、「スタードラグ」と称する)が知られている。
【0003】
前記スタードラグの操作ノブ(以下、単に、スタードラグと称する)は、通常、ハンドルの内側に、該ハンドルに隣接して位置されており、釣糸巻き取り機構に結合されたハンドル軸を中心に回転可能に取り付けられる。したがって、ハンドルから手を離すことなくスタードラグを調整操作することが可能である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−28916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、スタードラグの調整操作は、スタードラグの周方向に沿って間隔を隔てて配設された複数の羽根状の操作突部のうちの1つに指を引っ掛けてスタードラグを回動させることによりなされるが、その際、ハンドルが邪魔になって、一度で調整できるドラグ調整範囲、すなわち、一度で回動させることができるスタードラグの回動操作範囲が制限を受ける。
【0006】
本発明は、前記事情に着目してなされたものであり、その目的とするところは、一度で調整できるドラグ調整範囲、特に一度で回動させることができるドラグ操作ノブの回動操作範囲を拡大させることができるハンドルを備えた魚釣用リールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、リール本体に釣糸巻回用のスプールが回転可能に取り付けられて成るとともに、前記スプールに釣糸を巻き取るための釣糸巻き取り機構と、前記スプールの回転にドラグ力を付与するドラグ機構と、前記釣糸巻き取り機構に結合するハンドル軸に回転可能に結合されるハンドルと、前記リール本体と前記ハンドルとの間に位置される前記ドラグ機構のドラグ調整ノブとを備える魚釣用リールであって、前記ハンドルは、前記ハンドル軸に対して略直交する長手方向に沿って所定の長さで延びるとともに、前記ハンドル軸の軸方向に沿う所定の厚さと、長手方向および厚さ方向に対して略直交する方向に沿う所定の幅とを有し、また、前記ハンドルは、厚さ方向に対向するその両側面のうち、前記ドラグ調整ノブに対向する面を第1の面、その反対側の面を第2の面とすると、第2の面から第1の面へ向けて幅が小さくなるように幅方向のその両端面がテーパ状に形成されていることを特徴とする。
【0008】
この請求項1に記載の発明によれば、ハンドルの幅が前記ドラグ調整ノブ側へ向かって徐々に狭くなるようにハンドルの幅方向のその両端面がテーパ状に形成されているため、このテーパ部により、ハンドルを握る手の指をハンドルとリール本体との間の空間の更に内側へと潜り込ませることができる。したがって、ドラグ調整ノブを操作する使用者の指の動かせる空間が更に拡大され、一度(1回の操作)で調整できるドラグ調整範囲、すなわち、一度で回動させることができるドラグ操作ノブの回動操作範囲を拡大させることができる(ドラグ操作がし易くなる)。これは、特に、広い調整領域にわたって素早い調整が必要となる、例えば大物の魚が掛かった際に有益である。また、逆に、このようなテーパ構造は、ハンドルの前記第2の面の幅を広くすることを意味し、それにより、十分な剛性、強度を確保することができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記ハンドルは、長手方向に対して垂直な方向で切断したその断面の角部が所定の曲率半径を有する円弧状に形成されていることを特徴とする。
【0010】
この請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、ハンドルの前記テーパ形状に起因して鈍角となる前記角部をR形状とすることにより、操作の際の角部への指の食い込みを抑制し、指のフィット感を向上させることができる。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記ドラグ調整ノブ側に位置する前記角部の曲率半径は、その反対側に位置する前記角部の曲率半径よりも大きいことを特徴とする。
【0012】
この請求項3に記載の発明によれば、請求項2に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、ドラグ調整ノブ側に位置する角部の曲率半径をその反対側に位置する角部の曲率半径よりも大きくしたため、ドラグ調整ノブ操作時の角部への指の食い込みを更に抑制できるだけでなく、操作領域の更なる拡大も図れるため、請求項1の作用効果を更に促進させることができる。一方、反対側の角部の曲率半径を小さくしたことにより、十分な剛性および強度も確保できる。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の発明において、前記ハンドルが炭素繊維強化プラスチックによって形成されることを特徴とする。
【0014】
この請求項4に記載の発明によれば、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、ハンドルが比強度・比剛性の高い炭素繊維強化プラスチックによって形成されるため、ハンドルの軽量化が可能になる。
【0015】
また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記ハンドルは、2つの方向に引き揃えられた繊維束同士が織布状に交差して成る表層間に繊維が一方向に引き揃えられて成る中間層を配置することによって構成される積層構造を成し、前記表層の繊維は、前記ハンドルの長手方向に対して30°以上60°以下の角度を成して引き揃えられていることを特徴とする。
【0016】
この請求項5に記載の発明によれば、請求項4に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、ハンドルの表層として繊維同士が交差する層を用いているため好ましい意匠性が得られる。また、表層は、一方向に繊維が引き揃えられた中間層に比べてせん断強度が高いため、鋭利なものが衝突した場合でもその衝撃に耐えることができる。また、万一、表層が破損した場合でも、ササクレが立ちにくく、安全性が高い。また、本構成では、中間層として一方向に繊維が引き揃えられた層を用いているため、繊維比率が高く、比剛性を高めるのに都合が良い。また、繊維方向を制御し易く、目的に応じ易い。更に、本構成では、表層の繊維が、ハンドルの長手方向に対して30°以上60°以下の角度を成して引き揃えられているため、捻り負荷に対して剛性および強度を共に高くできる。また、万一の破損時においても、回転方向(ハンドルの長手方向に対して直角な方向)に向いたササクレが発生しにくくなる。
【0017】
また、請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記中間層は、繊維が前記ハンドルの長手方向と略平行に引き揃えられた第1の層と、繊維が前記ハンドルの長手方向に対して45±15°または−45±15°の角度を成す第2の層と、繊維が前記ハンドルの長手方向に対して略90°の角度を成す第3の層とを有し、前記第1の層の厚さをT1、前記第2の層の厚さをT2、前記第3の層の厚さをT3とすると、0≦T3<T1、かつ、0≦T3<T2が成り立つことを特徴とする。
【0018】
この請求項6に記載の発明によれば、請求項5に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、0≦T2<T1、かつ、0≦T3<T1が満たされることにより、ハンドルの破損時においても、回転方向(ハンドルの長手方向に対して直角な方向)に向いた亀裂が発生しにくくなる。また、同方向に向いたササクレも発生しにくくなり、安全性が高い。
【0019】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の発明において、前記ハンドルが開口を有し、この開口は、ハンドルの第2の面から第1の面へ向けてその開口幅が広がるようにテーパ形状に形成されていることを特徴とする。
【0020】
この請求項7に記載の発明によれば、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、開口によってハンドルの軽量化を図ることができ、また、開口のテーパ形状により外側から開口を通じてリール内側(例えばハンドル軸)に水が浸入するのを効果的に防止できる。
【0021】
また、請求項8に記載の発明は、請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の発明において、前記ハンドルは、その長手方向の一部が前記ドラグ調整ノブ側へ向けて屈曲されていることを特徴とする。
【0022】
この請求項8に記載の発明によれば、請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、ハンドルの長手方向の一部がドラグ調整ノブ側へ向けて屈曲されているため、ドラグ調整ノブとハンドルとの間の距離を更に近づけて、ハンドルを握る手の指をハンドルとリール本体との間の空間の更に内側へと潜り込ませることができる。したがって、請求項1の作用効果を更に促進させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の魚釣用リールによれば、ハンドルに特徴的なテーパ形状を設けることにより、一度で調整できるドラグ調整範囲、特に一度で回動させることができるドラグ操作ノブの回動操作範囲を拡大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る両軸受型リールとしての魚釣用リールの断面図である。
【図2】(a)は図1の魚釣用リールのハンドルの側面図、(b)はハンドルの平面図である。
【図3】図2の(a)のA−A線に沿う断面図である。
【図4】図1の魚釣用リールをハンドル側から見た概略側面図であり、ドラグ調整ノブの回動操作の開始点を示す図である。
【図5】図1の魚釣用リールをハンドル側から見た概略側面図であり、ドラグ調整ノブの回動操作の終端を示す図である。
【図6】図5のB−B線に沿う断面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る両軸受型リールとしての魚釣用リールの断面図である。
【図8】図7の魚釣用リールをハンドル側から見た概略側面図である。
【図9】(a)は図7の魚釣用リールのハンドルの側面図、(b)はハンドルの平面図である。
【図10】図9の(a)のC−C線に沿う断面図である。
【図11】ハンドルの積層構造を構成する各層を分離して示した斜視的な模式図である。
【図12】ハンドルの積層構造の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して本発明に係る魚釣用リールの実施形態について説明する。
図1〜図6は本発明の第1の実施形態を示している。図1に示されるように、本発明に係る魚釣用リール1は、両軸受型リールであり、左右フレーム2a,2bと、これら左右フレーム2a,2bに装着される円形状の左右側板3a,3bとによってリール本体が構成されている。左右フレーム2a,2bは、複数の支柱を介して一体化されている。
【0026】
左右フレーム2a,2b(左右側板3a,3b)間には、スプール軸5が軸受6を介して回転可能に支持されており、このスプール軸5には、釣糸が巻回されるスプール5aが一体に取り付けられている。
【0027】
右フレーム2bおよび右側板3bには軸受8を介してハンドル軸9(駆動力伝達機構10に結合される)が回転可能に支持されており、ハンドル軸9の端部にはハンドル9aが回転可能に装着されている。この場合、ハンドル9aを回転操作すると、その操作力は、スプール5aに釣糸を巻き取るための釣糸巻き取り機構としての駆動力伝達機構10を介してスプール5aに伝達され、スプール5aを回転駆動するようになっている。なお、ハンドル軸9は、右側板3bとの間に介在された転がり式の一方向クラッチ11(逆転防止機構)によって、釣糸巻取方向にのみ回転可能となっている。
【0028】
また、右フレーム2bと右側板3bとの間には、駆動力伝達機構10の駆動力の伝達を継脱するクラッチ機構12と、魚釣時にスプール5aから釣糸が繰り出された際にスプール5aの回転にドラグ力を付与する公知のドラグ機構13とが収容されている。
【0029】
なお、ハンドル9aの近傍、具体的には、リール本体とハンドル9aとの間には、ドラグ機構13によるドラグ力の調整を行なうための星型のドラグ調整ノブ(スタードラグ)13aが設けられており、また、スプール5aの前側には、スプール5aに対して釣糸を均一に平行巻きするためのレベルワインド機構50が設けられている。
【0030】
駆動力伝達機構10は、ハンドル軸9に回転可能に支持された駆動歯車14と、この駆動歯車14に噛合するピニオン15とを備えている。ピニオン15は、スプール軸5と同軸的に延出し且つ右側板3bに軸受を介して回転可能に支持されたピニオン軸5bに設けられており、このピニオン軸5bに沿って軸方向に移動できる。また、ピニオン軸5bの外周には円周溝29が形成されており、この円周溝29には、ピニオン15を軸方向に移動させるクラッチ機構12の作動部材(ヨーク)22が係合している。
【0031】
また、ピニオン軸5b(ピニオン15)は、スプール軸5の端部に形成された断面が非円形の係合部と嵌合する嵌合部を端部に有しており、作動部材22によってスプール5a側に移動されると、前記嵌合部がスプール軸5の前記係合部に嵌合状態で係合してハンドル9aの操作力(駆動歯車14の回転駆動力)をスプール軸5(スプール5a)に伝達する(クラッチON状態(釣糸巻取状態))とともに、作動部材22によって右側板3b側に移動されると、前記嵌合部がスプール軸5の前記係合部から外れてハンドル9aの操作力をスプール軸5(スプール5a)に伝達しない(クラッチOFF状態(釣糸放出状態))。
【0032】
図2および図3に示されるように、ハンドル9aは、ハンドル軸9に対して略直交する長手方向(図2に矢印Lで示される方向)に沿って所定の長さで延びるとともに、ハンドル軸9の軸方向に沿う所定の厚さTと、長手方向および厚さ方向に対して略直交する方向に沿う所定の幅Wとを有しており、例えばステンレス、アルミ合金、繊維強化樹脂によって形成される。
【0033】
また、ハンドル9aは、厚さ方向に対向するその両側面として、ドラグ調整ノブ13aに対向する第1の面60、その反対側の第2の面61とを有する。そして、ハンドル9aは、図3に明確に示されるように、第2の面61から第1の面60へ向けて幅Wが小さくなるように幅方向のその両端面63,64がテーパ状に形成されている。更に、ハンドル9aは、長手方向に対して垂直な方向で切断したその断面(図3に示される断面)の角部68,69が所定の曲率半径を有する円弧状に形成されている。この場合、ドラグ調整ノブ13a側に位置する内側角部68の曲率半径R1は、その反対側に位置する外側角部69の曲率半径R2よりも大きく設定される(例えば、R1=1.5〜2.5mm、R2=0.5〜1.0mm)。
【0034】
なお、本実施形態において、幅方向の両端面63,64のテーパ角θは、3°≦θ≦45°に設定される。テーパ角θが3°未満では、ドラグ調整ノブ13aを動かせる効果が少なく、また、テーパ角θが45°を超えると、外側角部69が鋭角になり過ぎてしまい、操作する指に食い込んでフィット感が低下するからである。特に好ましいテーパ角θは、5°≦θ≦30°である。
【0035】
以上のように、本実施形態によれば、ハンドル9aの幅がドラグ調整ノブ13a側へ向かって徐々に狭くなるようにハンドル9aの幅方向に対向するその両端面63,64がテーパ状に形成されているため、このテーパ部により、図4〜図6に示されるように、ハンドル9aを握る手70の指71をハンドル9aとリール本体との間の空間Sの更に内側へと潜り込ませることができる(特に図6参照)。すなわち、図5に示されるように、ドラグ調整ノブ13aの側辺80がハンドル9aの側辺81よりも内側にくるまでドラグ調整ノブ13aを回動させることができる。つまり、ドラグ調整ノブ13aの周方向に沿って間隔を隔てて配設された複数の羽根状の操作突部75のうちの1つに指71を引っ掛けてドラグ調整ノブ13aを回動操作する際に指71の動かせる空間が更にテーパ分(図6にXで示される距離分)だけ拡大され、一度(1回の操作)で調整できるドラグ調整範囲、すなわち、一度で回動させることができるドラグ操作ノブの回動操作範囲を拡大させることができる(ドラグ操作がし易くなる)。これは、特に、広い調整領域にわたって素早い調整が必要となる、例えば大物の魚が掛かった際に有益である。また、逆に、このようなテーパ構造は、ハンドルの厚さ方向に対向する両側面のうち第2の面61の幅を広くすることを意味し、それにより、十分な剛性、強度を確保することができる。
【0036】
また、本実施形態では、ハンドル9aの前記テーパ形状に起因して鈍角となる角部68,69をR形状としているため、操作の際の角部68,69への指の食い込みを抑制し、指71のフィット感を向上させることができる。更に、本実施形態では、ドラグ調整ノブ13a側に位置する角部68の曲率半径R1をその反対側に位置する角部69の曲率半径R2よりも大きくしたため、ドラグ調整ノブ操作時の角部68への指71の食い込みを更に抑制できるだけでなく、操作領域の更なる拡大も図れるため、前述した作用効果を更に促進させることができる。一方、反対側の角部69の曲率半径R2を小さくしたことにより、十分な剛性および強度も確保できる。
【0037】
図7〜図12は本発明の第2の実施形態を示している。本実施形態は、前述した第1の実施形態の構成に加えて(したがって、第1の実施形態と同様の構成要素については、同一符号を付してその説明を省略する)、更に、ハンドル9aの長手方向の一部がドラグ調整ノブ13a側へ向けて屈曲されている。すなわち、ハンドル9aは、長手方向の一部にそのような屈曲部90を有している。また、これに対応して、ドラグ調整ノブ13aもほぼ同じ方向に屈曲される屈曲部91を有する。
【0038】
また、本実施形態において、ハンドル9aは、その長手方向の一部(本実施形態では、屈曲部90)に、開口93を有している。これらの開口93は、図10に明確に示されるように、ハンドル9aの第2の面61から第1の面60へ向けてその開口幅が広がるようにテーパ状に形成されている。そして、そのテーパ角θ1は、3°≦θ1≦30°に設定される。この角度範囲から外れると、ハンドル9aに必要な剛性が得られなくなり、また、開口93を通じた水の浸入を抑制できない。
【0039】
また、本実施形態(前述した第1の実施形態も同様)において、ハンドル9aは、炭素繊維強化プラスチック(プリプレグ)によって形成されており、図11および図12に示されるように、2つの方向に引き揃えられた繊維束同士が織布状に交差して成る表層100,100間に繊維が一方向に引き揃えられて成る中間層102(102A,102B,102C)を多数(本実施形態では、図12に示されるように11個の中間層)配置することによって構成される積層構造を成す。中間層102は、繊維がハンドル9aの長手方向と略平行に引き揃えられた(ハンドルの長手方向を0°として(以下、同様)、0°±15°の向きに引き揃えられた)6つの第1の中間層102A(厚みt1)と、繊維がハンドル9aの長手方向に対して+45±15°および−45±15°の角度を成す4つの第2の中間層102B(+45±15°),102B’(−45±15°)(共に厚みt2)と、繊維が前記ハンドルの長手方向に対して略90°±15°の角度を成す1つの中心部の第3の中間層102C(厚みt3)とを有する。なお、表層100の繊維方向は、ハンドル9aの長手方向に対して30°以上60°以下の角度(本実施形態では、+45°および−45°)を成している。また、この場合、第1の中間層102A全体の厚さをT1、第2の中間層102B全体の厚さをT2、第3の中間層102C全体の厚さをT3とすると、0≦T2<T1、かつ、0≦T3<T1が成り立つようになっている。
【0040】
このような積層構造のハンドル9aは、例えば、前述した各層(プリプレグ)100,102A,102B,102Cを図11および図12に示される配列形態で積層した状態で金型に入れ、加圧工程および熱硬化工程を施した後、金型から取り出すことにより製造され、更に、切削加工およびショットブラスト工程を施すことにより前述したテーパ面63,64を有するハンドル形態が得られる。この場合、使用できる表層100の材料としては、弾性率23.5〜60tonf/mm2、密度1.7〜2.0、引張強度300〜700kgf/mm2の炭素繊維を用い、その繊維束を織布状とし、エポキシ樹脂に含浸したプリプレグを用いることができ、例えば東レ社のトレカ(登録商標)クロス品番CO6343のプリプレグ(厚み0.25mm)を挙げることができ、また、使用できる第1の中間層102A、第2の中間層102B,102B’、および、第3の中間層102Cの材料としては、弾性率23.5〜60tonf/mm2、密度1.7〜2.0、引張強度300〜700kgf/mm2の炭素繊維を用い、一方向に引き揃えられ、エポキシ樹脂に含浸したプリプレグを用いることができ、例えば東レ社のトレカ(登録商標)プリプレグ品番3252S−25の一方向炭素繊維プリプレグ(厚み0.24mm)を挙げることができる。これにより、T1=t1×6=0.24mm×6=1.44mm、T2=t2×4=0.24mm×4=0.96mm、T3=t3×1=0.24mmとなり、0≦T2<T1、かつ、0≦T3<T1が成り立つ。
【0041】
以上説明したように、本実施形態によれば、ハンドル9aが比強度・比剛性の高い炭素繊維強化プラスチックによって形成されるため、ハンドル9aの軽量化が可能になる。また、本実施形態によれば、ハンドル9aの表層100として繊維束同士が織布状に交差する層を用いているため好ましい意匠性が得られる。また、表層100は、一方向に繊維が引き揃えられた中間層102に比べてせん断強度が高いため、鋭利なものが衝突した場合でもその衝撃に耐えることができる。また、万一、表層100が破損した場合でも、ササクレが立ちにくく、安全性が高い。また、本実施形態では、中間層102として一方向に繊維が引き揃えられた層を用いているため、繊維比率が高く、比剛性を高めるのに都合が良い。また、繊維方向を制御し易く、目的に応じ易い。更に、本実施形態では、表層100の繊維が、ハンドル9aの長手方向に対して30°以上60°以下の角度を成して引き揃えられているため、捻り負荷に対して剛性および強度を共に高くできる。また、万一の破損時においても、回転方向(ハンドル9aの長手方向に対して直角な方向)に向いたササクレが発生しにくくなる。
【0042】
また、本実施形態によれば、0≦T2<T1、かつ、0≦T3<T1が満たされることにより、ハンドル9aの破損時においても、回転方向(ハンドルの長手方向に対して直角な方向)に向いた亀裂が発生しにくくなる。また、同方向(回転方向)に向いた繊維層を他の繊維方向層に比して少なくしているので、同方向に向いたササクレも発生しにくくなり、安全性が高い。また、本実施形態によれば、開口93によってハンドル9aの軽量化を図ることができ、また、開口93のテーパ形状により外側から開口93を通じてリール内側(例えばハンドル軸9)に水が浸入するのを効果的に防止できる。更に、本実施形態によれば、ハンドル9aの長手方向の一部がドラグ調整ノブ13a側へ向けて屈曲されているため、ドラグ調整ノブ13aとハンドル9aとの間の距離を更に近づけて(図7に示される距離L1を小さくできる)、ハンドル9aを握る手の指をハンドル9aとリール本体との間の空間の更に内側へと潜り込ませることができる(図7に示されるように、ハンドル9aからリール本体側に突出する指の部分の長さL2を長く確保できる)。
【0043】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できることは言うまでもない。例えば、前述した実施形態では、本発明がスタードラグに適用されているが、本発明はレバードラグを用いた両軸受型リールにも適用可能である。また、前述した第2の実施形態には、ハンドルの積層構造として第3の中間層102Cが含まれるが、この層は無くてもよい。
【符号の説明】
【0044】
5a スプール
9 ハンドル軸
9a ハンドル
10 駆動力伝達機構(釣糸巻き取り機構)
13 ドラグ機構
13a ドラグ調整ノブ
60 第1の面
61 第2の面
63,64 ハンドルの幅方向の両端面
68,69 角部
93 開口
100 表層
102 中間層
102A 第1の中間層(第1の層)
102B 第2の中間層(第2の層)
102C 第3の中間層(第3の層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体に釣糸巻回用のスプールが回転可能に取り付けられて成るとともに、前記スプールに釣糸を巻き取るための釣糸巻き取り機構と、前記スプールの回転にドラグ力を付与するドラグ機構と、前記釣糸巻き取り機構に結合するハンドル軸に回転可能に結合されるハンドルと、前記リール本体と前記ハンドルとの間に位置される前記ドラグ機構のドラグ調整ノブとを備える魚釣用リールであって、
前記ハンドルは、前記ハンドル軸に対して略直交する長手方向に沿って所定の長さで延びるとともに、前記ハンドル軸の軸方向に沿う所定の厚さと、長手方向および厚さ方向に対して略直交する方向に沿う所定の幅とを有し、
前記ハンドルは、厚さ方向に対向するその両側面のうち、前記ドラグ調整ノブに対向する面を第1の面、その反対側の面を第2の面とすると、第2の面から第1の面へ向けて幅が小さくなるように幅方向のその両端面がテーパ状に形成されていることを特徴とする魚釣用リール。
【請求項2】
前記ハンドルは、長手方向に対して垂直な方向で切断したその断面の角部が所定の曲率半径を有する円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用リール。
【請求項3】
前記ドラグ調整ノブ側に位置する前記角部の曲率半径は、その反対側に位置する前記角部の曲率半径よりも大きいことを特徴とする請求項2に記載の魚釣用リール。
【請求項4】
前記ハンドルが炭素繊維強化プラスチックによって形成されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の魚釣用リール。
【請求項5】
前記ハンドルは、2つの方向に引き揃えられた繊維束同士が織布状に交差して成る表層間に繊維が一方向に引き揃えられて成る中間層を配置することによって構成される積層構造を成し、前記表層の繊維は、前記ハンドルの長手方向に対して30°以上60°以下の角度を成して引き揃えられていることを特徴とする請求項4に記載の魚釣用リール。
【請求項6】
前記中間層は、繊維が前記ハンドルの長手方向と略平行に引き揃えられた第1の層と、繊維が前記ハンドルの長手方向に対して45±15°または−45±15°の角度を成す第2の層と、繊維が前記ハンドルの長手方向に対して略90°の角度を成す第3の層とを有し、前記第1の層の厚さをT1、前記第2の層の厚さをT2、前記第3の層の厚さをT3とすると、0≦T2<T1、かつ、0≦T3<T1が成り立つことを特徴とする請求項5に記載の魚釣用リール。
【請求項7】
前記ハンドルが開口を有し、この開口は、ハンドルの第2の面から第1の面へ向けてその開口幅が広がるように形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の魚釣用リール。
【請求項8】
前記ハンドルは、その長手方向の一部が前記ドラグ調整ノブ側へ向けて屈曲されていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の魚釣用リール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−155871(P2011−155871A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18918(P2010−18918)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】