説明

(メタ)アクリル酸の製造方法

【課題】(メタ)アクリル酸の製造方法において、続いて行なわれる(メタ)アクリル酸の結晶化を困難とすることなく不純物を容易に分離させること。
【解決手段】最初に粗製(メタ)アクリル酸を生成し、次に粗製(メタ)アクリル酸を連続的に精製し、当該連続的な精製が、a)(メタ)アクリル酸及び不純物を含む組成物中で、不純物を組成物から結晶として析出させる工程と、b)組成物から析出させた結晶不純物を分離する工程と、を含む方法。該方法によって得られる(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸の製造装置、該装置又は(メタ)アクリル酸を製造するための精製装置の使用、(メタ)アクリル酸、吸水性ポリマー、吸水性ポリマーの使用、繊維、シート、発泡体、複合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル酸の製造方法、本発明の方法によって得られる(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸の製造装置、本発明の装置又は精製装置の(メタ)アクリル酸を製造するための使用、(メタ)アクリル酸、吸水性ポリマー、吸水性ポリマーの使用、繊維、シート、発泡体、複合体に関する。
【0002】
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」という用語は、「メタクリル酸」及び「アクリル酸」という命名法上の名称を有する化合物について使用する。これらの2つの化合物のうち、本発明に係る方法及び本発明に係る化学製品との関連においてはアクリル酸が好ましい。
【背景技術】
【0003】
現在、化学出発物質及び中間体、特にポリマーを製造するための出発物質が非常に大量に製造されている。益々高まっている品質に対する要求を満たすためには、これらの製品は実質的に不純物を含有しないことが求められる。これは、例えば衛生用品に使用される吸水性ポリマーを製造するためにアクリル酸を使用する場合に特に当てはまる。アクリル酸に含まれる不純物は、重合に不利な影響を与える。従って、アクリル酸に含まれる不純物の量が増加すると、アクリル酸ポリマー内における残留モノマーの量が増加するだけではなく、使用するアクリル酸に含まれる不純物がアクリル酸からなる吸水性ポリマーの吸水性に不利な影響を与える。
【0004】
アクリル酸は、通常は酸素含有ガスによるプロピレンの接触気相酸化によって得られる。二段階の処理においては、まずプロピレンを触媒を使用してアクロレインに酸化させ、第二の工程においてアクロレインを同様に触媒を使用してアクリル酸に転化させる。得られたアクリル酸は、水による吸収によって水溶液として気体反応混合物から取り除く。次に、得られたアクリル酸水溶液に含まれる水を蒸留、例えば添加溶媒(entrainer)を用いた蒸留によって分離して、粗製アクリル酸を生成し、アクリル酸含有塔底製品(=粗製アクリル酸)を得る。
【0005】
メタクリル酸もアクリル酸と同様に接触気相酸化によって製造することができ、C出発化合物、例えば、イソブテン、イソブタン、tert−ブタノール又はメタクロレインを使用する。C出発化合物の接触気相酸化によって得られたメタクリル酸の精製では、アクリル酸の精製と同様に、適当な溶媒にメタクリル酸を吸収させ、溶媒を分離することで、粗製メタクリル酸を得る。
【0006】
また、C又はC出発化合物の接触気相酸化では、アクリル酸又はメタクリル酸以外に、ポリアクリル酸塩からなる吸水性ポリマーを製造する場合に重合を妨げ、吸収性ポリマーの吸水性に不利な影響を与えるその他の酸化生成物、例えば、無水マレイン酸も生成する。そのため、(メタ)アクリル酸をさらに精製しなければならない。従来技術から公知の精製処理、例えば、蒸留又は結晶化によって粗製(メタ)アクリル酸を精製するが、結晶化の場合には、懸濁結晶化と層結晶化に技術的に区別される(Wintermantelら、Chem.Ing.Tech.、1991年、第63巻、881〜891頁;Steinerら、Chem.Ing.Tech.、1985年、第57巻、91〜102頁)。
【0007】
結晶化は、蒸留によって除去できない不純物を除去できる場合が多いという点で蒸留に対して利点を有する。さらに、結晶化は蒸留と比べてかなり低温で行うことができるため
、精製処理時の(メタ)アクリル酸二量体又は(メタ)アクリル酸オリゴマーの生成を減少させることができる。しかし、結晶化には、溶融物中に存在しうる不純物、特にフマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が結晶化時に析出するという不都合がある。結晶化時に(メタ)アクリル酸中の母液又は溶融物が枯渇するため、母液中の不純物が濃縮され続ける。溶解限度に達すると、これらの化合物は母液から結晶として析出する。静的層結晶化の場合には、これらの望ましくない結晶が結晶化装置の底部や壁に形成される。結晶が表面に付着するため、非結晶溶融物を排出する際に、これらの不純物が結晶化装置に残存してしまう。その後、分離された結晶層を溶解することによって通常は2種以上の留分が形成されるが、結晶化装置の底部や壁に存在する析出した結晶不純物は温められた溶融物に再び取り込まれる。その結果、不純物は完全に除去されることなく、結晶化装置内で濃縮される。大規模な精製プラントでは、1日でかなりの量のマレイン酸等の不純物が蓄積され、(メタ)アクリル酸の精製装置の導管や弁が詰まってしまうことがある。また、不純物は結晶化装置の壁や底部で固体コーティングとして濃縮する場合もある。これらの堆積物は閉塞を引き起こすだけではなく、(メタ)アクリル酸の精製プラントの生産能力を低下させる。すなわち、例えば、プラント内に位置するタンクの体積のかなりの部分が析出した結晶で占められてしまうからである。
【0008】
そのため、堆積物を分離する必要がある。
【0009】
国際公開第WO−A−00/45928号は、溶媒又は溶媒混合物を添加することで、アクリル酸の精製処理における不純物の析出を防止することを提案しており、溶媒又は溶媒混合物は不純物が溶液内に保持される量で添加する。好ましくは、水を溶媒として使用する。しかし、この処理の欠点は、マレイン酸及び無水マレイン酸が母液から分離されずに、母液中で濃縮され続けることである。また、溶媒又は溶媒混合物で母液を希釈すると、後続して取り付けられた結晶化装置において溶媒の添加によりアクリル酸の結晶化が困難となってしまう。
【特許文献1】国際公開第WO−A−00/45928号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、従来技術に記載されている欠点を克服する方法を提供することにある。
【0011】
本発明の目的は、特に、(メタ)アクリル酸の精製処理を含む(メタ)アクリル酸の製造方法であって、続いて行なわれる(メタ)アクリル酸の結晶化を困難とすることなく不純物、特にフマル酸、マレイン酸又は無水マレイン酸を容易な方法で分離させることができる方法を提供することにある。
【0012】
また、本発明の目的は、従来技術に記載されている(メタ)アクリル酸と比べて、不純物、例えば、フマル酸、マレイン酸又は無水マレイン酸等の含有量が特に少ない(メタ)アクリル酸を提供することにある。
【0013】
本発明のさらなる目的は、不純物、例えば、フマル酸、マレイン酸又は無水マレイン酸等の含有量が特に少なく、皮膚耐性の点で特に有利な吸水性ポリマーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
これらの目的は、(メタ)アクリル酸の製造方法であって、最初に粗製(メタ)アクリル酸を生成し、次に粗製(メタ)アクリル酸を好ましくは連続的に精製し、粗製(メタ)アクリル酸の好ましくは連続的な精製が、
a)(メタ)アクリル酸及び不純物を含む組成物内で、不純物を組成物から結晶として析出させる工程と、
b)組成物から析出させた結晶不純物を分離する工程と、
を含む方法によって達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に係る方法の好ましい実施形態では、不純物は、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸又はこれらの化合物の混合物である。本発明に係る方法の別の好ましい実施形態では、不純物は、(メタ)アクリル酸の製造において、合成処理とそれに続く精製処理時に(メタ)アクリル酸ポリマーの形成を防止するために添加される、例えば、フェノチアジン、ヒドロキノンモノメチルエーテル又はヒドロキノンなどの重合阻害剤である。
【0016】
不純物が無水マレイン酸である場合には、工程a)において、無水マレイン酸の少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、特に好ましくは少なくとも96%、さらにより好ましくは少なくとも99.99%を加水分解してマレイン酸を生成し、マレイン酸及び/又はフマル酸を組成物から結晶として析出させることによって無水マレイン酸を組成物から分離することが好ましい。
【0017】
有利なことに、マレイン酸(及びフマル酸)は、(メタ)アクリル酸の溶解性が無水マレイン酸よりも低いため、加水分解及び加水分解の結果として生じるマレイン酸(状況によっては、ゆっくりとした異性化によって少なくとも部分的にフマル酸に変化することもある)の生成によって、(メタ)アクリル酸と無水マレイン酸とを含む組成物から無水マレイン酸を簡単な方法で分離させることができることが分かった。また、(メタ)アクリル酸と、無水マレイン酸と、水との量比率が異なる組成物に対する徹底した実験によって、無水マレイン酸又は無水マレイン酸の加水分解の結果として生じるマレイン酸及び/又はフマル酸が析出するまでに数時間又は数日かかり得ることが分かった。
【0018】
本発明では、無水物を可能な限り完全に加水分解させて無水マレイン酸を十分に分離するために、工程a)における無水マレイン酸の加水分解を、1〜250時間、特に好ましくは2〜100時間、さらに好ましくは5〜50時間にわたって、−70〜+130℃、特に好ましくは−30〜+100℃、さらに好ましくは−10〜+20℃の温度で行なう。加水分解処理の継続時間は、例えば、組成物の温度、組成物の各成分(水、(メタ)アクリル酸、他の不純物)の相対的な量比率、無水マレイン酸の加水分解を促進させる触媒の存在等の様々な要素に応じて決定する。当業者は、サンプリング、例えば、(加水分解が進行すると減少する)含水量の測定によって組成物における加水分解の進行度を確認する適当な所定の実験によって加水分解処理に必要な継続時間を決定することができる。
【0019】
分離する不純物が無水マレイン酸である場合には、組成物のpH及び組成物に含まれる無水マレイン酸の濃度に応じて、必要とされる加水分解の規模にとって十分な量の水が組成物に含まれている状態で不純物を制御下で加水分解させることが好ましい。従って、組成物は、組成物の総重量に対して0.01〜50重量%、特に好ましくは0.1〜20重量%、さらに好ましくは1〜10重量%、さらに好ましくは2〜5重量%の水を含むことが好ましい。ただし、組成物中の水の量は、組成物中のマレイン酸の重量に対して最大10重量%、特に好ましくは最大5重量%、さらに好ましくは最大1重量%、さらに好ましくは最大0.1重量%のマレイン酸が水に溶解した状態で存在する量に限定され、水の最大量は組成物の温度に応じて異なる。
【0020】
本発明に係る方法の特に好ましい実施形態では、組成物は、組成物に含まれる無水マレイン酸の少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、特に好ましくは少なくとも96%、さらにより好ましくは99%が加水分解されてマレイン酸及び/又はフマル酸を生
成する量の水を含む。当業者は、組成物中の無水マレイン酸の量に従って加水分解の進行度を測定する簡単な試験によって水の必要量を決定することができる。
【0021】
不純物としての無水マレイン酸を分離する本発明に係る好ましい方法では、工程a)において、必要な量の水を平衡状態で含む組成物を使用すれば、必要とされる加水分解度に達し、マレイン酸及び/又はフマル酸が組成物から析出する。しかし、適当な時間を置いて必要な加水分解度を達成するために十分な水分量が組成物に含まれていない場合には、平衡状態において所望の加水分解度に達し、マレイン酸及び/又はフマル酸が析出する量の水を組成物に添加することが本発明において好ましい。ただし、水の添加に加えて、無水マレイン酸の加水分解を促進させる触媒、例えば、無機酸又は有機酸等を添加したり、例えば、組成物の温度を上昇させる等の他のプロセスパラメータを変更することによって必要な加水分解度を調整することも可能である。触媒を使用する場合には、組成物中の無水マレイン酸の全量に対して1〜10,000ppm、特に好ましくは10〜5,000ppm、さらに好ましくは100〜1,000ppmの量で触媒を使用することが好ましい。
【0022】
(メタ)アクリル酸と不純物としての無水マレイン酸とを含む組成物の精製を非連続的に行なう場合には、組成物を容器に入れ、組成物を上述した時間にわたって容器に保存し、次に析出したマレイン酸及び/又はフマル酸を分離させるための適切な分離装置、例えばフィルタに供給する。(メタ)アクリル酸及び無水マレイン酸とを含む組成物の精製を連続的に行なう場合には、例えば、適当な結晶化装置によって組成物を結晶懸濁液内に移動させ、結晶懸濁液を洗浄塔において(メタ)アクリル酸結晶と母液に分離し、母液を結晶化装置に部分的に供給し、母液を十分な時間にわたって循環させることで、母液に残存する無水マレイン酸を十分に加水分解させることができる。
【0023】
従って、本発明によれば、例えば、マレイン酸又は無水マレイン酸等の不純物は、国際公開第WO−A−00/45928号に記載されているように溶液内に不純物を保持することなく組成物から析出させるため、分離する不純物が無水マレイン酸である場合には、無水マレイン酸を制御下で加水分解させて析出させる。不純物としての無水マレイン酸の分離において、必要な水の添加量は国際公開第WO−A−00/45928号に記載された方法と比較すると少量であるため、本発明に係る方法では、組成物を水によって著しく希釈することにより後続する精製工程で行なわれる組成物からの(メタ)アクリル酸の結晶化を困難とすることなく、(メタ)アクリル酸を含む組成物から特に無水マレイン酸を選択的に分離することができる。
【0024】
工程b)においては、固体及び液体材料を分離することができる任意の方法によって、マレイン酸及び/又はフマル酸を分離することができる。結晶化マレイン酸及び/又は結晶フマル酸の分離は、濾過、沈降分離又は遠心分離によって行なうことが好ましい。
【0025】
本発明に係る方法の好ましい実施形態では、工程a)に係る(メタ)アクリル酸及び不純物を含む組成物は、冷却相として得られた(メタ)アクリル酸水溶液、好ましくはアクリル酸水溶液を、冷却相から水を除去するために、第一の蒸留工程において、添加溶媒の存在下、好ましくはトルエンの存在下で蒸留することで得られる塔底製品S2である。第一の蒸留工程で得られる冷却相と比較すると水の含有量が少ない(メタ)アクリル酸含有塔底製品S1は、例えば、酢酸等の低沸点成分を分離するために、第二の蒸留工程において蒸留する。第二の蒸留工程では、(メタ)アクリル酸含有塔底製品S2(=純粋ではない粗製(メタ)アクリル酸流液(stream))を得る。このようにして塔底製品S2に存在する(メタ)アクリル酸を例えば結晶化によって分離する前であっても、塔底製品S2から無水マレイン酸、マレイン酸又はフマル酸を分離することができる。また、最初に塔底製品S2に存在する(メタ)アクリル酸を結晶化によって分離し、保持された母液
からマレイン酸、無水マレイン酸又はフマル酸を分離することもできる。その後、なお存在している(メタ)アクリル酸をさらに分離するために、母液を次の精製工程に供給することができる。
【0026】
本発明に係る方法の別の好ましい実施形態では、工程a)で使用する(メタ)アクリル酸及び不純物を含む組成物は、
A)(メタ)アクリル酸の製造方法によって得られる純粋ではない粗製(メタ)アクリル酸流液、好ましくは塔底製品S2から(メタ)アクリル酸を結晶化させ、好ましくは第一の懸濁液生成器によって結晶懸濁液を形成する工程と、
B)好ましくは第一の分離装置、好ましくは第一の洗浄塔によって結晶懸濁液から(メタ)アクリル酸結晶を分離し、母液を保持する工程と、
C)工程B)によって得られた第一の母液から(メタ)アクリル酸を再結晶化し、好ましくは第二の懸濁液生成器によって第二の結晶懸濁液を形成する任意の工程と、
D)好ましくは別の分離装置、好ましくは別の洗浄塔において、第二の結晶懸濁液から工程C)で得られた(メタ)アクリル酸結晶を分離し、第二の母液を保持する任意の工程と、
を含む方法による、
I.工程B又は工程Dで得られる(メタ)アクリル酸結晶、好ましくは少なくとも部分的に溶解した(メタ)アクリル酸結晶又は母液、又は
II.工程A又は工程Cで得られる結晶懸濁液である。
【0027】
本発明において、本明細書で使用する「母液」という用語は結晶以外の全ての層を意味する。結晶懸濁液の場合には、母液という用語は、結晶懸濁液から結晶を分離して得られる全ての液相を意味する。
【0028】
工程A)において、本発明に係る方法の本実施形態で使用される純粋ではない粗製(メタ)アクリル酸流液は、好ましくは、
(αl)50〜99.9重量%、特に好ましくは60〜99.6重量%、さらに好ましくは90〜99.5重量%の(メタ)アクリル酸と、
(α2)0.01〜50重量%、特に好ましくは0.03〜10重量%、さらに好ましくは0.05〜1重量%の水と、
(α3)0.01〜5重量%、特に好ましくは0.05〜1重量%、さらにより好ましくは0.1〜0.5重量%の無水マレイン酸と、
(α4)0.01〜5重量%、特に好ましくは0.03〜1重量%、さらにより好ましくは0.05〜0.5重量%のその他の不純物と、
からなる((α1)から(α4)の成分の全体量は100重量%である)。
【0029】
アクリル酸を製造する場合には、他の不純物(α4)としては、アクロレイン、酢酸、プロピオン酸、ホルムアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド等のアルデヒド、プロトアネモニン、重合及び重合により生じるアクリル酸二量体又はアクリル酸オリゴマーの生成を防止するためにプロピレンの接触気相酸化で得られる反応生成物の蒸留精製において添加される、HQME(ヒドロキノンモノメチルエーテル)、HQ(ヒドロキノン)、フェノチアジン等の重合阻害剤が挙げられる。メタクリル酸を製造する場合には、他の不純物(α4)とは、例えば、ヒドロキシイソブタン酸、イソブタン酸、メタクリルアミド、メタクリル酸メチル、メタクロレイン、酢酸、アクリル酸、プロピオン酸、HQME、HQである。
【0030】
二段階の精製処理(工程A〜D)の場合には、本発明の方法の一実施形態によれば、第二の工程において結晶懸濁液とした結晶生成物を工程Aの懸濁液生成器に供給するために、工程Dで使用される分離装置の上部に供給された粗製(メタ)アクリル酸を工程Aにお
いて使用することが好ましい。この変形は、第二の工程で溶融を省略することができると共に第一の工程において存在する結晶を再結晶化させる必要がないため、エネルギー利用効率の点で有利である。
【0031】
組成物I又はIIを工程a)で使用する本発明に係る方法の好ましい実施形態では、結晶化は、多工程、好ましくは二工程結晶化で行なう(工程A〜D)。有利なことに多工程処理は逆流原理に従って行われ、結晶化後の各工程において結晶を母液から分離し、より低い温度で母液を各工程に供給する。
【0032】
第一の工程の結晶化に用いられる結晶化処理及び第二の工程において分離に用いられる分離処理は、国際公開第WO99/14181 A1号に記載されている結晶化処理及び分離処理に有利に対応し、国際公開第WO99/14181 A1号の開示内容は、この参照によって本明細書の開示内容の一部をなすものとする。
【0033】
特に、上述したように制御下で無水マレイン酸を加水分解させてマレイン酸及び/又はフマル酸を生成することによって不純物としての無水マレイン酸を分離する場合には、懸濁結晶化処理、特に本発明に係る方法を連続的に行なうことを可能とする懸濁結晶化処理を用いることが好ましい。懸濁結晶化は、攪拌槽型結晶化装置、スクラッチ結晶化装置(scratch crystalliser)、冷却板結晶化装置、スクリュー式結晶化装置、ドラム型結晶化装置、パイプバンドル型結晶化装置(pipe bundle crystalliser)等において有利に行うことができる。ここでは、連続的に運転することができる結晶化装置が特に有利である。結晶化装置は冷却板結晶化装置又はスクラッチ冷却器であることが好ましい(ポシュマン(Poschmann)の学位論文「有機溶融物の懸濁結晶化及び発汗又は洗浄による結晶の後処理(suspension crystallisation of organic melts and post−treatment of the crystals by sweating or washing)」、ブレーメン大学学位論文、シェカー出版社(Shaker Verlag)、アーヘン、1996年を参照)。結晶化にはスクラッチ冷却器を使用することが最も好ましい。
【0034】
結晶化時の溶融物の温度が−30〜+14℃、特に−15〜+14℃であることが有利である。結晶化装置における固形分は、組成物100g当たり0〜85g、好ましくは20〜40gであることが有利である。
【0035】
工程A及び工程Cで得られた結晶懸濁液からの(メタ)アクリル酸結晶の分離は洗浄塔によって行うことが好ましい。本発明に係る方法の好ましい実施形態では、塔の上部に設けられた油圧式洗浄塔に懸濁液を供給する。母液をフィルタを使用して塔から排出させ、密に充填された結晶床を形成する。結晶床及び母液は、洗浄塔の底部に向かって流れる。
【0036】
塔の底部には、高密度で充填された結晶床から懸濁液を再び生成するための移動式、好ましくは回転式スクラッチ装置又はスクラッチャーが位置している。懸濁液はポンプで導入し、溶融装置、好ましくは熱交換器によって溶融させる。溶融物の一部は、例えば洗浄溶融物として供する。溶融物は次に塔内へポンプで再導入し、好ましくは逆の方向に移動する結晶床を洗浄する。すなわち、結晶化(メタ)アクリル酸を、再供給される(メタ)アクリル酸の逆流で洗浄する。洗浄溶融物は結晶を洗浄すると共に、溶融物は結晶上で少なくとも部分的に結晶化する。結晶化エンタルピーによって塔の洗浄領域内の結晶床が加熱される。このようにして、結晶の発汗に類似する精製効果が達成される。ここでは、ドイツ特許出願第10242746 Al号並びにドイツ特許出願第10149353 Al号を参照し、これらの文献における結晶懸濁液からの(メタ)アクリル酸結晶の分離に関する開示内容はこの参照によって本明細書の開示内容の一部をなすものとする。
【0037】
一段階の精製処理(工程A及び工程B)のみを行う本発明に係る(メタ)アクリル酸の製造方法の一実施形態では、工程Bで得られた母液の少なくとも一部が工程Aに再供給される。このようにして、母液を精製装置内で循環させることができる。従って、不純物としての無水マレイン酸を分離する際には、組成物中の水の量だけではなく、工程Aに再供給される母液の量の調整、好ましくは連続精製処理における母液の滞留時間によって無水マレイン酸の加水分解度が影響を受ける。
【0038】
また、ドイツ特許出願第10211686 A1号に記載されているように、工程Bで得られた(メタ)アクリル酸結晶の少なくとも一部を結晶の状態で工程Aに供給することもできる。
【0039】
本発明に係る方法を二段階の精製(工程A〜D)によって行う場合には、本発明では、工程B及び/又は工程Dで得られた結晶状及び/又は少なくとも部分的に溶解した(メタ)アクリル酸又は工程C及び工程Dで得られた母液を、少なくとも部分的に工程A〜Dの一つに再供給することが好ましく、二段階の精製処理の場合に結晶又は溶解(メタ)アクリル酸又は母液を再供給する方法はドイツ特許出願第10211686 A1号に記載されている。また、二段階の精製処理の場合におけるドイツ特許出願第10211686 A1号に記載された実施形態は、工程A〜Dによる精製処理を含む本発明に係る(メタ)アクリル酸の製造方法の場合においても特に好ましい。
【0040】
本発明に係る方法において、工程B又は工程Dで(メタ)アクリル酸と不純物とを含む組成物として分離された母液を工程a)で使用する場合には、工程b)に従って不純物を分離するための対応する分離装置、例えばフィルタへ母液を少なくとも部分的に直接供給する。
【0041】
本発明に係る方法において、(メタ)アクリル酸と不純物とを含む組成物として工程B又は工程Dで得られた(メタ)アクリル酸を工程a)で使用する場合には、本発明では、不純物を分離するための分離装置における(メタ)アクリル酸結晶の分離をできる限り少なく維持し、収率の低下をできる限り防止するために、不純物の分離装置に少なくとも部分的に溶解した状態又は溶解状態で(メタ)アクリル酸結晶を供給することが好ましい。(メタ)アクリル酸の純度を高めるために(メタ)アクリル酸結晶を部分的に溶解させ、工程A〜Dの1つに溶解した(メタ)アクリル酸を供給する場合(ドイツ特許出願第10211686 A1号に記載された方法に関連する上記詳細を参照)には、溶解した(メタ)アクリル酸からの不純物の分離は、直接又は不純物を分離するための分離装置による別の製品循環装置を使用して、溶解した(メタ)アクリル酸流液を供給することによって有利に達成することができる。
【0042】
本発明に係る方法において、工程A又は工程Cで得られた結晶懸濁液を(メタ)アクリル酸及び不純物を含む組成物として工程a)で使用する場合には、本発明では、これらの工程で得られた結晶懸濁液を少なくとも部分的に溶解した状態又は溶解状態で不純物を分離するための分離装置に供給することが好ましい。その後、溶解した結晶懸濁液を結晶化装置に再び供給することができる。
【0043】
一段階の精製処理(工程A及び工程B)の場合には、(メタ)アクリル酸と不純物、好ましくは無水マレイン酸とを含む組成物として、工程a)では、好ましくは以下の組成物から選択される組成物を使用する。
(1)工程Bで得られ、工程Aに少なくとも部分的に再供給される母液
(2)工程Bで得られた少なくとも部分的に溶解した(メタ)アクリル酸結晶
(3)工程Aで得られた少なくとも部分的に溶解した結晶懸濁液
【0044】
組成物(1)、(2)又は(3)の1つのみから不純物を分離するだけではなく、一段階の精製処理の場合には、精製処理の2以上の場所や、2以上の異なる組成物から不純物を分離することもできる。従って、母液(組成物(1))並びに部分的に溶解した(メタ)アクリル酸結晶(組成物(2))から不純物を分離することができる。また、組成物(1)〜(3)の全てから不純物を分離することも可能である。工程Bで得られ、母液が工程Aに少なくとも部分的に再供給される母液から不純物を分離することが最も好ましい。
【0045】
二段階の精製処理(工程A〜D)の場合には、工程a)における(メタ)アクリル酸と不純物とを含む組成物として、好ましくは以下の組成物から選択される組成物を使用する。
(4)工程Bで得られ、工程Cに供給される母液
(5)工程Bで得られ、少なくとも部分的に工程Aに再供給される母液
(6)工程Dで得られ、好ましくは工程Cに少なくとも部分的に再供給される母液
(7)工程Bで得られた少なくとも部分的に溶解した(メタ)アクリル酸結晶
(8)工程Dで得られ、工程Aに少なくとも部分的に再供給される、好ましくは少なくとも部分的に溶解した(メタ)アクリル酸結晶
(9)結晶懸濁液、好ましくは工程Aで得られた少なくとも部分的に溶解した結晶懸濁液(10)結晶懸濁液、好ましくは工程Cで得られた少なくとも部分的に溶解した結晶懸濁液
(11)工程Aで使用され、第二の洗浄塔の塔頂に供給された粗製(メタ)アクリル酸
【0046】
二段階の精製処理に関しても、組成物(4)〜(11)の1つのみからだけではなく、これらの組成物の少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ、特に好ましくは少なくとも4つから不純物を分離することができ、組成物(8)からの分離、組成物(10)からの分離、組成物(4)からの分離、組成物(5)からの分離、組成物(7)からの分離の順番で分離を行なうことが最も好ましい。
【0047】
工程b)において組成物(1)〜(11)の1以上から分離する不純物が無水マレイン酸の場合には、本発明に係る方法では、連続精製処理においてマレイン酸を十分に加水分解させるために組成物が十分な量の水を含有している必要があり、連続精製処理では、分離した母液及び/又は分離した(メタ)アクリル酸結晶を少なくとも部分的に工程A又は工程B(二段階の精製処理においては工程A〜Dの1つ)へ再供給する。組成物が無水マレイン酸を分離するために十分な量の水を含有していない場合には、本発明に係る方法では水を添加することができる。工程Aの前に、(メタ)アクリル酸の製造工程から得られ、工程Aで使用する純粋ではない粗製(メタ)アクリル酸の流液に水を添加することもできる。組成物中の水の量を増加させると、連続精製処理において組成物(1)〜(6)及び組成物(8)〜(11)の含水量が影響を受けるため、工程Aで使用する出発組成物の含水量によって、これらの組成物中のマレイン酸及び/又はフマル酸の結晶化度を調整することができる。また、各組成物(1)〜(11)に水を直接添加してもよい。
【0048】
組成物中の水の量によって無水マレイン酸の加水分解度に影響を与えるだけではなく、連続精製処理において母液及び/又は(メタ)アクリル酸を再供給することによって無水マレイン酸を精製装置内に供給することにより、経時的に加水分解度を調節することもできる。継続時間は、母液又は必要に応じて溶解した(メタ)アクリル酸結晶を各工程に再供給する相対量によって異なる。当業者は、簡単な所定の実験によって組成物からマレイン酸及び/又はフマル酸を十分に析出させるために必要な各プロセスパラメータを決定することができる。
【0049】
また、本発明は、アクリル酸の製造装置であって、流体輸送式(fluid−cond
ucting fashion)に互いに接続された構成要素として、アクリル酸反応器と、冷却塔と、蒸留装置と、精製装置とを含み、精製装置が不純物を分離するための分離装置を含み、分離装置が以下の特徴(ε1)〜(ε4)を含む装置に関する。
(ε1)装置ユニットが、好ましくは結晶懸濁液生成器を含む結晶化領域と、好ましくは洗浄塔を含む分離領域と、分離装置と、少なくとも2つのガイドと、必要に応じて少なくとも1つの溶解装置と、を含む。
(ε2)結晶化領域が少なくとも1つの入口ε2E_1及び出口ε2A_1を含み、出口ε2A_1が第一のガイドによって分離領域ε3の入口ε3E_1と接続されている。
(ε3)分離領域が少なくとも1つの入口ε3E_1及び少なくとも1つの出口ε3A_1を含み、分離領域ε3の入口ε3E_1が第一のガイドによって結晶化領域の出口ε2A_1に接続され、出口ε3A_1が分離領域で分離する母液のための第二のガイドに接続されている。
(ε4)溶融装置が入口ε4E及び出口ε4Aを含み、溶融装置の入口ε4Eが第三のガイドによって(メタ)アクリル酸結晶を取り出すための分離領域の出口ε3A_2に接続され、出口ε4Aが第四のガイドによって溶解した(メタ)アクリル酸結晶を分離領域に再供給するための分離領域の入口ε3E_2に接続され、溶融装置の入口ε4Eが第五のガイドによって結晶懸濁液を取り出すための結晶化領域の出口ε3A_2に接続され、出口ε4Aが第六のガイドによって結晶化領域の入口ε2E_2に接続されている。
(ε5)第二のガイド、第四のガイド又は第六のガイドが分離装置内を通り、好ましくは、第二、第四又は第六のガイドに供給される組成物から結晶化不純物を分離することができるように、第二、第四又は第六のガイドが分離装置内を通るように設けられている。
【0050】
本発明では、分離装置(ε5)がフィルタ、遠心分離機、沈降分離装置又はハイドロサイクロンであることが好ましく、フィルタが最も好ましい。フィルタとして、連続的又は非連続的に、好ましくは連続的に、組成物から析出する不純物を分離することができるあらゆるフィルタを使用することができる。本明細書では、特に好ましい連続式フィルタは、特に、礫又は砂フィルタ、吸込フィルタ、キャンドルフィルタ、円形又は軸リーフ等のリーフフィルタ、例えば、洗浄フィルタ又は残留フィルタ等の遠心ディスクフィルタ、フィルタプレスを含む。好ましい連続式フィルタには、特に、真空回転フィルタ、圧力回転フィルタ又はドラムフィルタ等の回転フィルタ、回転加圧フィルタ、特に、動的クロスフロー濾過の原理によって動作するフィルタ、真空ベルトフィルタ、ベルトセルフィルタ、キャピラリーベルトフィルタ又はペーパーマットベルトフィルタ等のベルトフィルタが含まれる。
【0051】
本発明に係る方法において好ましく使用されるフィルタは、充填床並びに層フィルタを含むことができる。充填物又は層フィルタの材料としては、特に(メタ)アクリル酸による化学腐食に対して十分な耐性を有する当業者に公知のあらゆる材料を使用することができる。
【0052】
層フィルタを使用する場合には、層フィルタが、0.1〜10,000μm、好ましくは10〜1,000μm、特に好ましくは100〜500μmのメッシュサイズを有するステンレス鋼からなる篩を含むフィルタであることが好ましい。
【0053】
本発明に係る装置の好ましい実施形態では、装置は上述した精製装置を2つ含み、第一の精製装置の分離領域の出口ε3A_1に接続された第二のガイドが、第二の精製装置の結晶化装置の入口ε2E_1に接続され、第二の精製装置の分離領域において、第七のガイドによって、分離された(メタ)アクリル酸結晶を第二の分離装置の分離領域から取り除き、第一の精製装置の結晶化領域に供給することができるように、2つの精製装置が互いに流体輸送方式に接続されている。
【0054】
また、本発明は、上述した装置、上述した精製装置、上述した方法の、(メタ)アクリル酸の製造、好ましくは不純物を含有するアクリル酸に対して90重量%を超える純度、好ましくは95重量%を超える純度、特に99.5重量%を超える純度を有するアクリル酸の製造への使用に関する。
【0055】
また、本発明は、上述した方法で得られる(メタ)アクリル酸に関する。
【0056】
また、本発明は、50ppm未満、好ましくは10ppm未満、さらにより好ましくは1ppm未満の無水マレイン酸含有量を有する(メタ)アクリル酸に関する。
【0057】
また、本発明は、上述したアクリル酸の重合によって得られる吸水性ポリマーに関する。
【0058】
さらに、本発明は、これらの吸水性ポリマー又は上述した(メタ)アクリル酸、特に上述したアクリル酸の、繊維、シート、発泡体、複合体における使用、並びに上述した吸水性ポリマー又は上述した(メタ)アクリル酸、特に上述したアクリル酸を含む繊維、シート、発泡体、複合材に関する。
【0059】
非限定的な図面によって本発明をさらに詳細に説明する。
【0060】
図1に示す本発明に係る方法の基本的な解決手段によれば、(メタ)アクリル酸と不純物、特に無水マレイン酸とを含む貯蔵容器1に貯蔵された組成物を、無水マレイン酸が十分に加水分解されるまで保存する。(メタ)アクリル酸の精製を連続結晶化処理で行なう場合には、貯蔵容器1は、結晶化不純物、特に結晶化マレイン酸及び/又はフマル酸を分離する組成物に応じて、結晶懸濁液、結晶懸濁液から分離した結晶化(メタ)アクリル酸又は母液の懸濁液生成器、洗浄塔、供給ライン又は排出ラインに対応する。
【0061】
製品循環装置2によって、連続的又は非連続的に組成物を貯蔵容器1から取り出し、製品循環装置は製品循環ポンプ3によって運転する。製品循環装置2から、さらなる製品循環装置4によって分離装置を通過させ組成物を送り、分離装置内では、結晶化不純物、特に結晶化マレイン酸及び/又はフマル酸を排出部8によって分離する。次に、結晶化不純物を含まない組成物を製品循環装置2に再供給し、製品循環装置2を介して貯蔵容器1に再供給する。図1に示す手順以外に、製品循環装置2に供給された組成物を分離装置5に(分離製品循環装置4を通さずに)直接供給することも可能である。
【0062】
図2Aは、本発明に係る方法の処理過程を示し、一段階の精製処理では、洗浄塔10での分離後に得られた少なくとも部分的に溶解した(メタ)アクリル酸から不純物を分離する。
【0063】
貯蔵容器1に保存され、(メタ)アクリル酸及び不純物を含む組成物を結晶懸濁液生成器8に供給する。形成された結晶懸濁液を供給路9によって分離装置(例えば洗浄塔)10に供給する。分離装置10では、(メタ)アクリル酸結晶を母液から分離する。また、(メタ)アクリル酸結晶の一部を結晶懸濁液に再び供給し、製品循環ポンプ12によって運転される製品循環装置11に結晶懸濁液を供給する。製品循環装置11では、(メタ)アクリル酸結晶を熱交換器13によって溶解し、(メタ)アクリル酸の純度を高めるために、少なくとも一部を洗浄液として洗浄塔10内の逆流洗浄部に供給する。従って、洗浄塔10は固体と液体とを分離すると共に置換洗浄(displacement washing)を行い、洗浄液を失うことなく置換洗浄を行なうことができる。(メタ)アクリル酸の残部は系を出て、生成容器14内へ流れる(図2Aに示す一段階の精製方法によって得られた(メタ)アクリル酸の純度が十分ではない場合には、(メタ)アクリル酸結晶
をさらなる精製工程に供給することができる)。少なくとも部分的に溶解した(メタ)アクリル酸結晶は、不純物を分離するための分離装置5を通過させる。図2Bによれば、少なくとも部分的に溶解した(メタ)アクリル酸結晶を分離製品循環装置によって分離装置に供給することも可能である。分離した不純物を排出ライン6を介して除去し、不純物を含まない組成物を分離装置10に再供給する。このような一段階の精製処理の好ましい実施形態では、洗浄塔10内で分離した母液の少なくとも一部を供給路15を介して懸濁液生成器8に送り、母液の残部を廃液として母液容器16に供給する。
【0064】
図2C及び図2Dは、図2Aに対応する一段階の精製処理を示すが、洗浄塔10内での分離後に得られた少なくとも部分的に溶解した(メタ)アクリル酸結晶だけではなく、懸濁液生成器8で得られた結晶懸濁液(図2D)又は懸濁液生成器8に再び供給された分離装置5の母液も供給される。
【0065】
図3は、二段階の生成処理を示し、洗浄塔8内で分離した母液を少なくとも部分的にさらなる懸濁液生成器17に供給する。懸濁液生成器17で得られた結晶懸濁液をさらなる洗浄塔18に送り、(メタ)アクリル酸結晶を母液から分離する。第二の洗浄塔18内で分離した(メタ)アクリル酸結晶を結晶の状態又は熱交換機によって少なくとも部分的に溶解した状態で、供給ライン20を介して第一の懸濁液生成器に供給する。また、二段階の精製方法においては、第二の工程で削り取られた結晶生成物を結晶懸濁液として工程Aの懸濁液生成器内に供給するために、粗製(メタ)アクリル酸を貯蔵容器1から第二の洗浄塔の塔頂に供給することが好ましい。この変形は、第二の工程で溶融物を分配することができ、第一の工程において存在する結晶を再び結晶化させる必要がないため、エネルギー的に有利である。
【0066】
図3は、分離装置22によって結晶化不純物、特に結晶化マレイン酸及び/又はフマル酸を分離することができる場所を示す。
【0067】
次に、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。
【0068】
(実施例)
塔から得られ、表1に示す組成を有する塔底製品113.5gを1.6gの水と共に三角フラスコに入れた。混合物を室温で42時間放置した後、真空フィルタによって濾過した。これにより、表1に示す組成を有する濾液108.5gを得た。次に、フィルタに残存する固体を毎分4,000回転(rpm)で5分間遠心分離し、3.6gの固体を得た。分析のために、得られた固体を129.0gの高純度アクリル酸に溶解した。固体の組成を表1に示す(組成物に含まれる成分はガスクロマトグラフィー及びカールフィッシャー滴定によって分析した。これらの組成物について得られた分析データは四捨五入しているため、塔底製品、濾過液、固体における成分の相対量は正確には100重量%とはならない)。
【0069】
【表1】

1)メチルヒドロキノン
2)無水マレイン酸/マレイン酸
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明に係る方法の基本的な解決手段を示し、容器内に保存した組成物から結晶化不純物を連続的に分離する。
【図2A】本発明に係る方法の処理過程を示し、一段階の精製処理では、結晶化懸濁液の分離後に得られた溶解(メタ)アクリル酸から不純物を分離する。
【図2B】図2Aに示す処理過程を示すが、不純物の分離を製品循環装置内で直接行なわず、製品循環装置に接続された分離循環装置によって行なう。
【図2C】本発明に係る処理過程を示し、一段階の精製処理では、結晶化装置内で得られ、製品循環装置によって少なくとも部分的に溶解され、結晶化装置に再供給される結晶懸濁液から不純物を分離する。
【図2D】本発明に係る方法の処理過程を示し、一段階の精製処理では、洗浄塔10における結晶化(メタ)アクリル酸の分離時に得られ、結晶化装置内に少なくとも部分的に再供給される母液から不純物を分離する。
【図3】二段階の精製処理において、本発明に係る不純物の分離を行なうことができる場所を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸の製造方法であって、最初に粗製(メタ)アクリル酸を生成し、次に前記粗製(メタ)アクリル酸を好ましくは連続的に精製することを含み、前記粗製(メタ)アクリル酸の前記好ましくは連続的な精製が、
a)(メタ)アクリル酸及び不純物を含む組成物内で、前記不純物を前記組成物から結晶として析出させる工程と、
b)前記組成物から析出させた前記結晶不純物を分離する工程と、
を含む方法。
【請求項2】
前記不純物が無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸又はこれらの化合物の混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組成物からの前記無水マレイン酸の分離を、前記工程a)において、前記無水マレイン酸を、加水分解の開始前に前記組成物に含まれる前記無水マレイン酸の全重量に対して少なくとも50モル%の割合で加水分解させてマレイン酸及び/又はフマル酸を生成し、前記マレイン酸及び/又はフマル酸を前記組成物から結晶として析出させることによって行なう、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記工程a)における前記無水マレイン酸の加水分解を1〜250時間にわたって−70〜+130℃の温度で行なう、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記組成物が、
A)(メタ)アクリル酸の製造方法によって得られる純粋ではない粗製(メタ)アクリル酸流液から(メタ)アクリル酸を結晶化させ、第一の懸濁液生成器によって結晶懸濁液を形成する工程と、
B)第一の分離装置によって前記結晶懸濁液から前記(メタ)アクリル酸結晶を分離し、母液を保持する工程と、
C)前記工程B)によって得られた前記第一の母液から(メタ)アクリル酸を再結晶化させ、第二の懸濁液生成器によって第二の結晶懸濁液を形成する任意の工程と、
D)別の分離装置によって、前記第二の結晶懸濁液から前記工程C)で得られた前記(メタ)アクリル酸結晶を分離し、第二の母液を保持する任意の工程と、
を含む方法の前記工程B又は前記工程Dで得られる、好ましくは少なくとも部分的に溶解した状態の(メタ)アクリル酸結晶又は母液である、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が、
A)(メタ)アクリル酸の製造方法によって得られる純粋ではない粗製(メタ)アクリル酸流液から(メタ)アクリル酸を結晶化させ、第一の懸濁液生成器によって結晶懸濁液を形成する工程と、
B)第一の分離装置によって前記結晶懸濁液から前記(メタ)アクリル酸結晶を分離し、母液を保持する工程と、
C)前記工程B)によって得られた前記第一の母液から(メタ)アクリル酸を再結晶化させ、第二の懸濁液生成器によって第二の結晶懸濁液を形成する任意の工程と、
D)別の分離装置によって前記第二の結晶懸濁液から前記工程C)で得られた前記(メタ)アクリル酸結晶を分離し、第二の母液を保持する任意の工程と、
を含む方法の前記工程A又は前記工程Cで得られる、好ましくは少なくとも部分的に溶解した結晶懸濁液である、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
アクリル酸の製造装置であって、流体輸送式に互いに接続された構成要素として、アク
リル酸反応器と、冷却塔と、蒸留装置と、精製装置とを含み、前記精製装置が不純物を分離するための分離装置を含み、前記分離装置が以下の特徴(ε1)〜(ε5)を含む製造装置。
(ε1)前記装置ユニットが結晶化領域と、分離領域と、分離装置と、少なくとも2つのガイドと、必要に応じて溶融装置とを含む。
(ε2)前記結晶化領域が、純粋ではない粗製(メタ)アクリル酸流液のための少なくとも1つの入口ε2E_1及び結晶懸濁液のための出口ε2A_1を含み、前記出口ε2A_1が第一のガイドによって前記分離領域ε3の入口ε3E_1と接続されている。
(ε3)前記分離領域が少なくとも1つの入口ε3E_1及び少なくとも1つの出口ε3A_1を含み、前記分離領域ε3の前記入口ε3E_1が前記第一のガイドによって前記結晶化領域の前記出口ε2A_1に接続され、前記出口ε3A_1が前記分離領域で分離する前記母液のための第二のガイドに接続されている。
(ε4)前記溶融装置が入口ε4E及び出口ε4Aを含み、前記溶融装置の前記入口ε4Eが第三のガイドによって分離された(メタ)アクリル酸結晶を取り出すための前記分離領域の出口ε3A_2に接続され、前記出口ε4Aが第四のガイドによって前記分離領域の入口ε3E_2に接続され、前記溶融装置の入口ε4Eが第五のガイドによって結晶懸濁液を取り出すための前記結晶化領域の出口ε3A_2に接続され、出口ε4Aが第六のガイドによって前記結晶化領域の入口ε2E_2に接続されている。
(ε5)前記第二のガイド、前記第四のガイド又は前記第六のガイドが、前記分離装置内を通るように設けられている。
【請求項8】
前記分離装置(ε5)がフィルタである、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の装置、請求項7又は8に記載の精製装置又は請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法の、不純物を含有する(メタ)アクリル酸に対して90重量%を超える純度、好ましくは95重量%を超える純度、特に好ましくは99.5重量%を超える純度を有する(メタ)アクリル酸を製造するための使用。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法によって得られる(メタ)アクリル酸。
【請求項11】
50ppm未満の無水マレイン酸含有量を有する(メタ)アクリル酸。
【請求項12】
請求項10又は11に記載のアクリル酸の重合によって得られる吸水性ポリマー。
【請求項13】
請求項12に記載の吸水性ポリマー又は請求項10又は11に記載の(メタ)アクリル酸の、繊維、シート、発泡体、複合体における使用
【請求項14】
請求項12に記載の吸水性ポリマー又は請求項10又は11に記載の(メタ)アクリル酸を含む繊維、シート、発泡体、複合体。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−136551(P2012−136551A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−61725(P2012−61725)
【出願日】平成24年3月19日(2012.3.19)
【分割の表示】特願2007−520768(P2007−520768)の分割
【原出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【出願人】(504341139)エボニック ストックハウゼン ゲーエムベーハー (35)
【Fターム(参考)】