説明

(Z)−リグスチリドの製造方法

【課題】これまでの合成法に比べ比較的単純な合成操作で、かつ収率良く目的物である(Z)−リグスチリドを製造することができる方法を提供する。また、この製造方法において必要な新規な中間体を提供する。
【解決手段】メチル5−ヒドロキシ−2−(1−ペンチニル)−1−シクロヘキサンカルボキシレートを加水分解した後、銀触媒により環化反応を行い、(3Z)−3−ブチリデン−6−ヒドロキシ−4,5,6,7−テトラヒドロ−2−ベンゾフラン−1(3H)−オンを得る工程と、得られた(3Z)−3−ブチリデン−6−ヒドロキシ−4,5,6,7−テトラヒドロ−2−ベンゾフラン−1(3H)−オンを、トリフルオロメタンスルホン酸無水物を用いて脱離化反応させてリグスチリドを得る工程と、を含む(Z)−リグスチリドの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(Z)−リグスチリドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(Z)−リグスチリドは、センキュウ(Cnidium officinale Makino)の精油から単離された主成分であり、抗コリン作用、鎮痙作用、平滑筋弛緩作用、抗真菌作用などの生理活性を有しているとともに、他のフタリド類の合成中間体としても重要である。また、日本薬局方への漢方処方収載に際し、センキュウ含有処方の確認試験に使用する標準品としてリグスチリドがあり、その立体選択的製造を行うことが望まれている。
【0003】
この(Z)−リグスチリドの立体選択的な合成方法は、非特許文献1において報告されており、既に一般に知られている。即ち、この合成方法によると、以下の合成経路1に従い、1,4−シクロヘキサジオンモノエチレンケタール(化合物1)を出発物質とし、化合物2から化合物7までを経て最終目的化合物である(Z)−リグスチリド(化合物8)を製造することができることが知られている。
【0004】
合成経路1

【非特許文献1】Y. Ogawa, M. Maruno, and T. Wakamatsu, Synlett, 871(1995)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記非特許文献1に報告されている(Z)−リグスチリドの立体選択的な合成方法は、製造工程数が長い上に、一部の製造工程での収率が満足できるものではなかった。また、製造過程で得られる中間体の中には構造的に不安定なものも多く、スケールアップに適用するには困難であった。即ち、上記反応式において、化合物7における生成物の収率が十分とはいえず、また、化合物6および化合物7は、いずれもシクロヘキサジエン構造を有しており、構造的に不安定である。
【0006】
そこで、本発明の目的は、これまでの合成法に比べ比較的単純な合成操作で、かつ収率良く目的物である(Z)−リグスチリドを製造することができる方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、その(Z)−リグスチリドの製造方法において必要な新規な中間体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、新規中間体化合物の合成工程を経ることにより前記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本願発明の(Z)−リグスチリドの製造方法は、メチル5−ヒドロキシ−2−(1−ペンチニル)−1−シクロヘキサンカルボキシレートを加水分解した後、銀触媒により環化反応を行い、(3Z)−3−ブチリデン−6−ヒドロキシ−4,5,6,7−テトラヒドロ−2−ベンゾフラン−1(3H)−オンを得る工程と、
得られた(3Z)−3−ブチリデン−6−ヒドロキシ−4,5,6,7−テトラヒドロ−2−ベンゾフラン−1(3H)−オンを、トリフルオロメタンスルホン酸無水物を用いて脱離化反応させてリグスチリドを得る工程と、
を含むことを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明は、(3Z)−3−ブチリデン−6−ヒドロキシ−4,5,6,7−テトラヒドロ−2−ベンゾフラン−1(3H)−オンである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、工程収率の改善と構造的に不安定な中間体を経由する反応工程を経ることなく、これまでの合成操作に比べ単純な合成操作にて(Z)−リグスチリドを高収率で製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態につき具体的に説明する。
本発明の方法は、下記の合成経路2に示すように、前記非特許文献1等において既知であるメチル5−ヒドロキシ−2−(1−ペンチニル)−1−シクロヘキサンカルボキシレート(化合物5)を出発物質とし、新規中間体である(3Z)−3−ブチリデン−6−ヒドロキシ−4,5,6,7−テトラヒドロ−2−ベンゾフラン−1(3H)−オン(化合物9)を合成する工程Eを経由して、この化合物9から(Z)−リグスチリド(化合物8)を高収率で得る(工程F)ものである。
【0012】
合成経路2

【0013】
以下、本発明の製造方法における工程Eおよび工程Fの好適条件等について説明する。
(工程E)
化合物5を水、アルコール、好ましくはメタノール、または水とアルコールとの混合液中にて水酸化ナトリウム等のアルカリにより加水分解した後、銀触媒により環化反応を行うことにより、(3Z)−3−ブチリデン−6−ヒドロキシ−4,5,6,7−テトラヒドロ−2−ベンゾフラン−1(3H)−オン(化合物9)を得ることができる。
【0014】
加水分解反応は、室温にて行うことができ、好ましくは12〜24時間反応させる。また、環化反応は、得られた加水分解物であるカルボン酸をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解した溶液に銀触媒を作用することにより行うことができる。この反応は、室温にて行うことができ、好ましくは16〜24時間反応させる。
【0015】
(工程F)
この工程では、化合物9を脱水反応するにあたり、トリフルオロメタンスルホン酸無水物を脱離化剤として用いることが肝要である。脱離化能が低いメタンスルホネートを脱離化剤として用いた場合、下記反応式に見られるように、比較的高い温度でなくては脱離反応が進行しないために脱離の方向性を規定することができなくなり、5,6位で脱離した目的とする(Z)−リグスチリド(化合物8)の他に、4,5位で脱離した化合物10が生成する。この生成した化合物10は、高温条件では、比較的不安定であり自動酸化によって芳香環化した化合物11が生成する。

【0016】
そこで、試薬の脱離化能に着目し、トリフルオロメタンスルホン酸無水物を脱離化剤として用いることにより、より低温下で脱離化能の高い中間体を経由し脱離反応を行うことが可能となり、4,5位脱離に勝って5,6位脱離が進行し選択性が向上するのではないかとの考えのもとに鋭意検討した結果、トリフルオロメタンスルホン酸無水物を用いた反応では、速やかにトリフルオロメタンスルホナートに変換し、−20℃という低温条件下でも速やかに5,6位脱離した化合物8を高選択的(例えば、化合物8:化合物10=13.5:1)に高収率で得ることができることが分かった。
【0017】
また、この際、反応溶媒としては塩化メチレンが好ましく、これにより、−20℃での1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)によるトリフルオロメタンスルホネートの脱離反応の速度が低下することが分かった。このことから、DBUの添加量を検討することによって、より選択的かつ高収率で目的とする化合物8を得ることが可能となった。
【0018】
なお、本発明における出発物質である化合物5は、前記非特許文献1にも記載されているように、1,4−シクロヘキサジオンモノエチレンケタール(化合物1)を原料として以下の合成経路3による工程A〜Dにより得ることができる。
【0019】
合成経路3

【0020】
化合物1から化合物5を得るまでの工程A〜Dは前記非特許文献1に準拠して行うことができるが、以下にその好適条件等につき説明する。
(工程A)
非特許文献1では、市場で容易に入手し得る化合物1を−20℃でリチウムジイソプロピルアミド(LDA)処理してリチウムエノラートとした後、同温でシアノギ酸メチルを作用させることで化合物2を得ることが開示されている。原料の化合物1を−80〜−60℃の低温でLDA処理した後、反応混合物にシアノギ酸メチルを作用させることが好ましく、これにより非特許文献1よりもさらに良好な収率でメチル5,5−エチレンジオキシ−2−シクロヘキサノンカルボキシレート(化合物2)を得ることができる。また、この際、室温まで反応温度を昇温しなくても比較的良好な収率で化合物2を得ることができる。
【0021】
(工程B)
非特許文献1記載の合成方法に準拠して4,4−エチレンジオキシ−2−メトキシカルボニル−1−シクロヘキシニルトリフルオロメタンスルホネート(化合物3)を好適に合成することができるが、反応試薬であるトリフルオロメタンスルホン酸無水物の当量(1.1当量)を1.2当量程度まで高めることにより収率の改善を図ることができ、好ましい。
【0022】
(工程C)
非特許文献1記載の条件ではStilleらのカップリング方法(W. J Scott and J. K. Stille, J. Am. Chem. Soc.,1986, 108, 3033)によってメチル5,5−エチレンジオキシ−2−(−ペンチニル)−1−シクロヘキサンカルボキシレート(化合物4)を得ることができることが示されている。しかし、この反応で用いるスタニル試薬を使用せずに、1−ペンチンと銅を用いる反応条件(M. Azad Hossain, Tetrahedron lett., 1997, 38, 49-52.)を採用しても良好な収率で化合物4を得ることができ、好ましい。
【0023】
(工程D)
非特許文献1記載の反応条件の他、脱ケタール化に用いる酸触媒として、好ましくはピリジンp−トルエンスルホン酸塩およびp−トルエンスルホン酸を挙げることができ、より好ましくはp−トルエンスルホン酸を挙げることができる。また、脱保護後のテトラヒドロホウ素化ナトリウムによる還元反応は、低温下でも速やかに進行し、良好な収率を得ることができる。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例に基づき説明する。
(合成例1)
工程A:メチル5,5−エチレンジオキシ−2−シクロヘキサノンカルボキシレート(化合物2)の合成

【0025】
ジイソプロピルアミン21.5mL(87.1mmol)の無水テトラヒドロフラン(100.0mL)溶液に、窒素雰囲気下、−20℃(内部温度)で、n−ブチルリチウム97.3mL(153.7mmol)を添加した。反応混合物を−20℃(内部温度)で0.5時間攪拌した。無水テトラヒドロフラン(160mL)に1,4−シクロヘキサンジオンモノエチレンケタール20.0g(128mmol)を溶解し、攪拌している反応混合物に30分間に亘り−65℃(内部温度)で添加し、次いで、攪拌を0℃で0.5時間行った(LDA処理)。無水テトラヒドロフラン(100.0mL)にシアノギ酸メチル12.2mL(153.7mmol)を溶解し、−70℃(内部温度)で30分に亘り混合物に滴下し、次いで、攪拌を−20℃(内部温度)で1時間継続した。
【0026】
攪拌している反応混合物に酢酸(18mL)および水(50mL)を−20℃で添加した。反応混合物を酢酸エチル(450mL)で抽出した。一緒にした有機相を飽和食塩水(150mL)で洗浄し、次いで、無水硫酸マグネシウム(20g)で乾燥した。有機相を減圧下で留去した後、残留物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(400g,ヘキサン:酢酸エチル(4:1))で精製し、淡黄色固体として化合物2を得た。この化合物2を真空乾燥した(r.t/10mmHg)。
【0027】
収率:化合物2、淡黄色固体11.98g(43.6%)
1H-NMR(CDCl3) δ: 1.84 (t, J=6.7Hz,2H), 2.46-2.54 (m, 4H), 3.75 (s, 3H), 3.95-4.07 (m, 4H), 12.15 (s, 1H)
【0028】
(合成例2)
工程B:4,4−エチレンジオキシ−2−メトキシカルボニル−1−シクロヘキシニルトリフルオロメタンスルホネート(化合物3)の合成

【0029】
塩化メチレン(CHCl)(125mL)に前記化合物2 11.9g(55.5mmol)および2,6−ジ−テトラ−ブチル−4−メチルピリジン13.8g(67.2mmol)を溶解し、トリフルオロメタンスルホン酸無水物10.8mL(64.4mmol)を室温にて滴下した。次いで、反応混合物を室温で39時間攪拌した。
【0030】
得られた反応混合物をジエチルエーテル(250mL)で希釈した後、この反応混合物の沈殿物をろ過により除去した。ろ液を飽和食塩水(250mL)で洗浄した。次いで、有機相を無水硫酸マグネシウム(20g)で乾燥した。有機相を減圧下で留去した後、粗生成物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(400g,ヘキサン:酢酸エチル(4:1))で精製し、淡黄色の粘性油状物質として化合物3を得た。この化合物3を真空乾燥した(r.t/10mmHg)。
【0031】
収率:化合物3、淡黄色粘性油状物質17.7g(92.1%)
1H-NMR(CDCl3) δ:1.91 (t, J=6.6Hz, 2H), 2.59-2.67 (m, 4H), 3.80 (s, 3H), 3.93-4.07(m, 4H)
【0032】
(合成例3)
工程C:メチル5,5−エチレンジオキシ−2−(1−ペンチニル)−1−シクロヘキサンカルボキシレート(化合物4)の合成

【0033】
無水テトラヒドロフラン−トリエチルアミン(4:1,300mL)に前記化合物3 17.7g(51.1mmol)を溶解し、1−ペンチン6.04mL(61.3mmol)、ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウム(II)1.78g(3.05mmol)およびヨウ化銅(I)0.96g(5.05mmol)を添加した。反応混合物を室温で1時間攪拌した。
【0034】
得られた反応混合物の有機溶媒を減圧下で留去した。残留物に酢酸エチル(100mL)および飽和食塩水(200mL)を添加した。有機相を分離し、水相を酢酸エチル(300mL)で抽出した。一緒にした有機相を無水硫酸マグネシウム(20g)で乾燥した。
【0035】
有機溶媒を減圧下で留去した後、残留物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(400g,ヘキサン:ジエチルエーテル(3:1))で精製し、赤褐色の油状物質として化合物4を得た。化合物4を真空乾燥した(r.t/10mmHg)。
【0036】
収率:化合物4、赤褐色油状物質13.57g(定量的収率)
1H-NMR(CDCl3) δ:1.02 (t, J=7.3Hz, 3H),1.57 (m, 2H), 1.76 (t, J=6.6Hz, 2H), 2.38 (t, J=6.9Hz, 2H), 2.51-2.59 (m, 4H),3.75 (s, 3H), 3.96-4.02 (m, 4H)
【0037】
(合成例4)
工程D:メチル5−ヒドロキシ−2−(1−ペンチニル)−1−シクロヘキサンカルボキシレート(化合物5)の合成

【0038】
アセトン−水(9:1,500mL)に化合物4 13.6g(51.4mmol)を溶解し、p−トルエンスルホン酸1.90g(13.9mmol)を添加した。反応混合物90℃で16時間攪拌した。この反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(250mL)を添加した。水相を酢酸エチル(400mL)で抽出し、無水硫酸マグネシウム(10g)で乾燥した。
【0039】
有機溶媒を減圧下で留去し、粗ケトン(11.1g)を得た。この粗ケトンの無水メタノール(250mL)溶液に、テトラヒドロホウ素化ナトリウム1.90g(50.2mmol)の無水メタノール(250mL)溶液を0℃で10分間に亘り滴下し、次いで室温で15分間攪拌した。
【0040】
有機溶媒を減圧下で留去した。飽和食塩水(250mL)を残留物に添加し、酢酸エチル(400mL)で抽出した。一緒にした有機相を無水硫酸マグネシウム(15g)で乾燥した。
【0041】
減圧下で有機溶媒を留去した後、残留物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(400g,ヘキサン:酢酸エチル3:1→1:1)で精製し、淡黄色の粘性油状物質として化合物5を得た。化合物5を真空乾燥した(r.t/10mmHg)。
【0042】
収率:化合物5、淡黄色粘性油状物質7.84g(68.6%)
1H-NMR(CDCl3) δ:1.02 (t, J=7.2Hz, 3H),1.50-2.04 (m, 6H), 2.30-2.79 (m, 5H), 3.76 (s, 3H), 4.00 (brs, 1H)
【0043】
(合成例5)
工程E:(3Z)−3−ブチリデン−6−ヒドロキシ−4,5,6,7−テトラヒドロ−2−ベンゾフラン−1(3H)−オン(化合物9)の合成

【0044】
メタノール−水(1:1,60mL)に化合物5 7.84g(35.3mmol)を溶解し、水酸化ナトリウム4.24g(106mmol)を添加した。反応混合物を室温で20時間攪拌した。得られた反応混合物の溶液に1mol/L塩酸(250mL)を添加した。水相を酢酸エチル(400mL)で抽出した。一緒にした有機相を飽和食塩水(250mL)で洗浄し、次いで、無水硫酸マグネシウム(15g)で乾燥した。有機溶媒を減圧下で除去し、粗カルボン酸を白色固体(7.12g)として得た。このカルボン酸を無水ジメチルホルムアミド60mLに溶解した溶液に銀粉419mg(3.88mmol)を添加した。反応混合物を室温で22時間攪拌した。
【0045】
得られた反応混合物中の不溶性触媒をろ過により除去した。ろ液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(250mL)を添加し、水相を酢酸エチル(600mL)で抽出した。一緒にした有機相を飽和食塩水(100mL)で洗浄し、次いで無水硫酸マグネシウム(20g)で乾燥した。有機溶媒を留去した後、残留物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(400g,酢酸エチル−ヘキサン3:2)で精製し、無色の粘性油状物質として化合物9を得た。化合物9を1.5時間真空乾燥した(r.t/10mmHg)。
【0046】
収率:化合物9、淡黄色粘性油状物質4.40g(59.9%)
1H-NMR(CDCl3) δ:0.95 (t, J=7.3Hz, 3H),1.33-1.91 (m, 5H), 2.22-2.70 (m, 6H), 4.12 (m, 1H), 5.16 (t, J=7.8Hz, 1H)
【0047】
(合成例6)
工程F:(Z)−リグスチリド 3−[(Z)−ブチリデン]−4,5−ジヒドロイソベンゾフラン−1(3H)−オン(化合物8)の合成

【0048】
CHCl(100mL)にトリフルオロメタンスルホン酸無水物(TfO)5.10mL(30.3mmol)を溶解し、ピリジン2.45mL(30.3mmol)を−15℃、窒素雰囲気下で添加した。CHCl(100mL)に化合物9 4.02g(19.3mmol)を溶解し、攪拌中の反応混合の溶液に−15℃で20分間に亘り添加した。反応混合物を0℃で1時間攪拌した。
【0049】
攪拌中の反応混合物にDBU6.0mL(40.4mmol)を−15℃で添加し、−15℃で15分間攪拌した。
【0050】
反応混合物に1mol/Lの塩酸(200mL)を添加した。有機相を酢酸エチル(100mL)で抽出した。一緒にした有機相を飽和食塩水(300mL)で洗浄した。次いで、有機相を無水硫酸マグネシウム(20g)で乾燥した。
【0051】
溶媒を留去した後、残留物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(400g,ヘキサン:酢酸エチル(6:1))で精製し、淡黄色粘性油状物質として化合物8を得た。化合物8を1時間真空乾燥した(r.t/10mmHg)。
【0052】
収率:化合物8((Z)−リグスチリド)、淡黄色粘性油状物質3.34g(90.9%),
NMR分離データは、生成物が化合物8の(Z)−リグスチリドと化合物10(異性体)の混合物(混合比22.8:1)であることを示した。
1H-NMR(CDCl3) δ:0.96 (t, J=7.4Hz, 3H),1.41-1.65 (m, 2H), 2.27-2.66 (m, 6H), 5.22 (t, J=8.0Hz, 1H), 6.00 (td, J=3.8,9.6Hz, 1H), 6.30 (td, 2.0, 9.6Hz, 1H)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチル5−ヒドロキシ−2−(1−ペンチニル)−1−シクロヘキサンカルボキシレートを加水分解した後、銀触媒により環化反応を行い、(3Z)−3−ブチリデン−6−ヒドロキシ−4,5,6,7−テトラヒドロ−2−ベンゾフラン−1(3H)−オンを得る工程と、
得られた(3Z)−3−ブチリデン−6−ヒドロキシ−4,5,6,7−テトラヒドロ−2−ベンゾフラン−1(3H)−オンを、トリフルオロメタンスルホン酸無水物を用いて脱離化反応させてリグスチリドを得る工程と、
を含むことを特徴とする(Z)−リグスチリドの製造方法。
【請求項2】
(3Z)−3−ブチリデン−6−ヒドロキシ−4,5,6,7−テトラヒドロ−2−ベンゾフラン−1(3H)−オン。

【公開番号】特開2008−184407(P2008−184407A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−18375(P2007−18375)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【出願人】(000003665)株式会社ツムラ (43)
【Fターム(参考)】