説明

1−デオキシガラクトノジリマイシンの製造方法、合成中間体およびその製造方法

【課題】より短工程かつ高収率で1-デオキシガラクトノジリマイシンを合成する方法の提供。
【解決手段】1-デオキシノジリマイシンのN-保護体の6位水酸基の保護工程;2位と3位の水酸基の保護工程;4位水酸基の酸化工程;立体選択的還元工程;すべての保護基の脱保護工程により、1-デオキシノジリマイシンのN-保護体から1-デオキシガラクトノジリマイシンを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1-デオキシガラクトノジリマイシンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ノジリマイシンは、ストレプトミセス属放線菌の培養液から取得されたアミノ糖に分類される抗生物質であり(非特許文献1)、その誘導体である1-デオキシガラクトノジリマイシンは、難病として知られるファブリー病の治療に有効であることが知られている。
【0003】
1-デオキシガラクトノジリマイシンの合成方法としては、1-デオキシノジリマイシンを多段階で保護した後、4位水酸基の反転を行い、脱保護を行う方法が報告されている(非特許文献2)。この方法では、1-デオキシノジリマイシンの保護の方法として、窒素をまず保護し、次いで2位と3位の水酸基を保護し、最後に6位の水酸基を保護する方法を採用している。非特許文献2に記載の方法では、その後、4位水酸基の反転を行い、後に各々の保護基を脱保護し、合計10工程を経て、収率7.9%で1-デオキシノジリマイシンから1-デオキシガラクトノジリマイシンへの変換を達成している。
【0004】
非特許文献2に記載の方法は、目的物である1-デオキシガラクトノジリマイシンを得るまでに10工程を要し、収率も工業的な側面から考えて満足出来るものではない。特に目的の4位水酸基以外を保護する工程に5工程、反転後の脱保護に3工程を要しており、多工程で煩雑である。さらに工程数の増加と共に収率も低くなり、反応も長時間となる。そのため、1-デオキシガラクトノジリマイシンを効率的かつ高収率で製造する方法が求められていた。
【非特許文献1】J.Anitibiotics,1966,19,288
【非特許文献2】カルボハイドレートリサーチ、1990,203,314
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる状況下、本発明は、より短工程かつ高収率で1-デオキシガラクトノジリマイシンを合成する方法を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する手段は、以下の通りである。
[1]式(V)
【化1】

(式中、Wはカルボニル基または式(C)で表わされる基
【化2】

(但し、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基または置換基を有していてもよいC6−C14アリール基を表わす)を表わし、
Raは、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基または置換基を有していてもよいC4−C14へテロアラルキル基を表わし、
Rcは、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基、置換基を有していてもよいC4−C14へテロアラルキル基、−CORc1(但しRc1は、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC6−C14アリール基、置換基を有していてもよいC1−C22アルコキシ基または置換基を有していてもよいC7−C22アラルキルオキシ基を表わす)、または−Si(Rc2)(Rc3)(Rc4)(但し、Rc2、Rc3およびRc4は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、iso-プロピル基、tert-ブチル基またはフェニル基を表わす)で表わされる化合物の製造方法であって、
(a)式(I)
【化3】

(式中、Raは上記と同義である)で表わされる化合物を、塩基の存在下、溶媒中で式(A)
【化4】

(式中、Rcは上記と同義であり、Xはハロゲン原子を表わす)で表わされる化合物と反応させ、式(II)
【化5】

(式中、RaおよびRcは上記と同義である)で表わされる化合物を製造する工程、
(b)工程(a)によって得られた式(II)で表わされる化合物を、塩基の存在下、溶媒中で式(B)
【化6】

(式中、Wは上記と同義であり、X1およびX2はそれぞれ独立にハロゲン原子またはトリクロロメチルオキシ基を表わす)で表わされる化合物と反応させ、式(III)
【化7】

(式中、W、RaおよびRcは上記と同義である)で表わされる化合物を製造する工程、
(c)工程(b)によって得られた式(III)で表わされる化合物を、溶媒中で酸化剤と反応させ、式(IV)
【化8】

(式中、W、RaおよびRcは上記と同義である)で表わされる化合物を製造する工程ならびに、
(d)工程(c)によって得られた式(IV)で表わされる化合物を、溶媒中で還元剤と反応させ、前記式(V)で表わされる化合物を製造する工程、
を含む方法。
[2]式(II)
【化9】

(式中、Raは置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基または置換基を有していてもよいC4−C14へテロアラルキル基を表わし、
Rcは、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基、置換基を有していてもよいC4−C14へテロアラルキル基、−CORc1(但しRc1は、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC6−C14アリール基、置換基を有していてもよいC1−C22アルコキシ基または置換基を有していてもよいC7−C22アラルキルオキシ基を表わす)、または−Si(Rc2)(Rc3)(Rc4)(但し、Rc2、Rc3およびRc4は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、iso-プロピル基、tert-ブチル基またはフェニル基を表わす)で表わされる化合物。
[3]式(I)
【化10】

(式中、Raは、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基または置換基を有していてもよいC4−C14へテロアラルキル基を表わす)で表わされる化合物を、塩基の存在下、溶媒中で式(A)
【化11】

(式中、Rcは、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基または置換基を有していてもよいC4−C14へテロアラルキル基、−CORc1(但しRc1は、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC6−C14アリール基、置換基を有していてもよいC1−C22アルコキシ基または置換基を有していてもよいC7−C22アラルキルオキシ基を表わす)、または−Si(Rc2)(Rc3)(Rc4)(但し、Rc2、Rc3およびRc4は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、iso-プロピル基、tert-ブチル基またはフェニル基を表わし、Xはハロゲン原子を表わす))で表わされる化合物と反応させ、式(II)
【化12】

(式中、RaおよびRcは上記と同義である)で表わされる化合物を製造する方法。
[4]式(III)
【化13】

(式中、Wは、カルボニル基または式(C)で表わされる基
【化14】

(但し、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基または置換基を有していてもよいC6−C14アリール基を表わす)を表わし、
Raは、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基または置換基を有していてもよいC4−C14へテロアラルキル基を表わし、
Rcは、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基、置換基を有していてもよいC4−C14へテロアラルキル基、−CORc1(但しRc1は、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC6−C14アリール基、置換基を有していてもよいC1−C22アルコキシ基または置換基を有していてもよいC7−C22アラルキルオキシ基を表わす)、または−Si(Rc2)(Rc3)(Rc4)(但し、Rc2、Rc3およびRc4は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、iso-プロピル基、tert-ブチル基またはフェニル基を表わす))で表わされる化合物。
[5]式(II)
【化15】

(式中、Raは、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基または置換基を有していてもよいC4−C14へテロアラルキル基を表わし、
Rcは、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基または置換基を有していてもよいC4−C14へテロアラルキル基、−CORc1(但しRc1は、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC6−C14アリール基、置換基を有していてもよいC1−C22アルコキシ基または置換基を有していてもよいC7−C22アラルキルオキシ基を表わす)、または−Si(Rc2)(Rc3)(Rc4)(但し、Rc2、Rc3およびRc4は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、iso-プロピル基、tert-ブチル基またはフェニル基を表わす))で表わされる化合物を、塩基の存在下、溶媒中で式(B)
【化16】

(式中、Wは、カルボニル基または式(C)で表わされる基
【化17】

(但し、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基または置換基を有していてもよいC6−C14アリール基を表わし、X1およびX2はそれぞれ独立にハロゲン原子またはトリクロロメチルオキシ基を表わす)で表わされる化合物と反応させ、式(III)
【化18】

(式中、W、RaおよびRcは上記と同義である)で表わされる化合物を製造する方法。
[6]前記式(II)で表わされる化合物が[3]に記載の方法で製造されたものである、[5]に記載の方法。
[7]式(IV)
【化19】

(式中、Wは、カルボニル基または式(C)で表わされる基
【化20】

(但し、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基または置換基を有していてもよいC6−C14アリール基を表わす)を表わし、
Raは、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基または置換基を有していてもよいC4−C14へテロアラルキル基を表わし、
Rcは、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基、置換基を有していてもよいC4−C14へテロアラルキル基、−CORc1(但しRc1は、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC6−C14アリール基、置換基を有していてもよいC1−C22アルコキシ基または置換基を有していてもよいC7−C22アラルキルオキシ基を表わす)、または−Si(Rc2)(Rc3)(Rc4)(但し、Rc2、Rc3およびRc4は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、iso-プロピル基、tert-ブチル基またはフェニル基を表わす))で表わされる化合物。
[8]式(III)
【化21】

(式中、Wは、カルボニル基または式(C)で表わされる基
【化22】

(但し、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基または置換基を有していてもよいC6−C14アリール基を表わす)を表わし、
Raは、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基または置換基を有していてもよいC4−C14へテロアラルキル基を表わし、
Rcは、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基、置換基を有していてもよいC4−C14へテロアラルキル基、−CORc1(但しRc1は、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC6−C14アリール基、置換基を有していてもよいC1−C22アルコキシ基または置換基を有していてもよいC7−C22アラルキルオキシ基を表わす)、または−Si(Rc2)(Rc3)(Rc4)(但し、Rc2、Rc3およびRc4は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、iso-プロピル基、tert-ブチル基またはフェニル基を表わす))で表わされる化合物を、溶媒中で酸化剤と反応させ、式(IV)
【化23】

(式中、W、RaおよびRcは上記と同義である)で表わされる化合物を製造する方法。
[9]前記式(III)で表わされる化合物が[5]または[6]に記載の方法で製造されたものである、[8]に記載の方法。
[10]式(V)
【化24】

(式中、Wは、カルボニル基または式(C)で表わされる基
【化25】

(但し、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基または置換基を有していてもよいC6−C14アリール基を表わす)を表わし、
Raは、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基または置換基を有していてもよいC4−C14へテロアラルキル基を表わし、
Rcは、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基、置換基を有していてもよいC4−C14へテロアラルキル基、−CORc1(但しRc1は、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC6−C14アリール基、置換基を有していてもよいC1−C22アルコキシ基または置換基を有していてもよいC7−C22アラルキルオキシ基を表わす)、または−Si(Rc2)(Rc3)(Rc4)(但し、Rc2、Rc3およびRc4は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、iso-プロピル基、tert-ブチル基またはフェニル基を表わす))で表わされる化合物。[11]式(IV)
【化26】

(式中、Wは、カルボニル基または式(C)で表わされる基
【化27】

(但し、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基または置換基を有していてもよいC6−C14アリール基を表わす)を表わし、
Raは、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基または置換基を有していてもよいC4−C14へテロアラルキル基を表わし、
Rcは、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基、置換基を有していてもよいC4−C14へテロアラルキル基、−CORc1(但しRc1は、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC6−C14アリール基、置換基を有していてもよいC1−C22アルコキシ基または置換基を有していてもよいC7−C22アラルキルオキシ基を表わす)、または−Si(Rc2)(Rc3)(Rc4)(但し、Rc2、Rc3およびRc4は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、iso-プロピル基、tert-ブチル基またはフェニル基を表わす))で表わされる化合物を、溶媒中で還元剤と反応させ、式(V)
【化28】

(式中、W、RaおよびRcは上記と同義である)で表わされる化合物を製造する方法。
[12]前記式(IV)で表わされる化合物が[8]または[9]に記載の方法で製造されたものである、[11]に記載の方法。
[13]式(V)
【化29】

(式中、Wは、カルボニル基または式(C)で表わされる基
【化30】

(但し、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基または置換基を有していてもよいC6−C14アリール基を表わす)を表わし、
Raは、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基または置換基を有していてもよいC4−C14へテロアラルキル基を表わし、
Rcは、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基、置換基を有していてもよいC4−C14へテロアラルキル基、−CORc1(但しRc1は、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC6−C14アリール基、置換基を有していてもよいC1−C22アルコキシ基または置換基を有していてもよいC7−C22アラルキルオキシ基を表わす)、または−Si(Rc2)(Rc3)(Rc4)(但し、Rc2、Rc3およびRc4は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、iso-プロピル基、tert-ブチル基またはフェニル基を表わす))で表わされる化合物を、酸および貴金属触媒の存在下、溶媒中で接触還元して脱保護させることを特徴とする、式(VI)
【化31】

で表わされる1−デオキシガラクトノジリマイシンの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、従来の半分程度の工程数で1-デオキシガラクトノジリマイシンを合成することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明において記載された各種の用語・記号等について説明する。
本発明において用いる「C1−C22アルキル基」とは、炭素数が1ないし22個の直鎖または分枝状アルキル基を表わし、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、n-ヘキシル基、1-エチル-2-メチルプロピル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2-エチルブチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等が挙げられる。
【0009】
本発明において用いる「C1−C6アルキル基」とは、炭素数が1ないし6個の直鎖または分枝状アルキル基を表わし、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。
【0010】
本発明において用いる「C2−C22不飽和アルキル基」とは、炭素数2ないし22個の直鎖もしくは分枝状アルケニル基、または炭素数が2ないし22個の直鎖または分枝状アルキニル基を表わし、例えばビニル基、アリル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基、2-メチル-1-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、1-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、1,3-ヘキサンジエニル基、1,5-ヘキサンジエニル基、エチニル基、1-プロピニル基、1-ペンチニル基、1-ヘキシニル基、1,3-ヘキサンジインイル基、1,5-ヘキサンジインイル基等が挙げられる。
【0011】
本発明において用いる「C2−C6不飽和アルキル基」とは、炭素数2ないし6個の直鎖または分枝状アルケニル基あるいは炭素数が2ないし6個の直鎖または分枝状アルキニル基を表わし、例えばビニル基、アリル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基、3-メチル-2-ブテニル基、エチニル基、1-プロピニル基、3-メチル-1-プロピニル基等が挙げられる。
【0012】
本発明において用いる「C6−C14アリール基」とは、6ないし14個の炭素原子で構成された芳香族炭化水素環式基を意味し、単環式基、二環式基または三環式基等の縮合環も含まれる。例えばフェニル基、インデニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、インダセニル基、アセナフチル基、フルオレニル基、フェナレニル基、フェナントレニル基、アントラセニル基等が挙げられる。
【0013】
本発明における「C4−C14ヘテロアリール基」とは、窒素原子、硫黄原子および酸素原子からなる群より選ばれる複素原子を1個以上含んでなる単環式、二環式または三環式の5ないし14員芳香族複素環式基をいう。具体的には、含窒素芳香族複素環式基としては、例えば、インドリル基等;含硫黄芳香族複素環式基としては、例えばチエニル基、ベンゾチエニル基等;含酸素芳香族複素環式基としては、例えばフリル基、ピラニル基、シクロペンタピラニル基、ベンゾフリル基、イソベンゾフリル基等が挙げられる。
【0014】
本発明において用いる「C7−C22アラルキル基」とは、前記定義の「C1−C22アルキル基」において、置換可能な部分が前記定義の「C6−C14アリール基」で置換された基を意味し、例えばベンジル基、ジフェニルメチル基、トリチル基、1-フェネチル基、1-フェニルプロピル基、1-フェニルブチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0015】
本発明において用いる「C4−C14へテロアラルキル基」とは、前記定義の「C1−C22アルキル基」において、置換可能な部分が前記定義の「C4−C14ヘテロアリール基」で置換された基を意味し、例えばチエニルメチル基、フリルメチル基等が挙げられる。
【0016】
本発明において用いる「C1−C22アルコキシ基」とは、前記定義の「C1−C22アルキル基」において、その末端に酸素原子が結合した基を意味し、例えばメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、iso-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、iso-ペンチルオキシ基、sec-ペンチルオキシ基、n-ヘキソキシ基、iso-ヘキソキシ基、1,1-ジメチルプロピルオキシ基、1,2-ジメチルプロポキシ基、2,2-ジメチルプロピルオキシ基、1-エチル-2-メチルプロポキシ基、1,1,2-トリメチルプロポキシ基、1,2,2-トリメチルプロポキシ基、1,1-ジメチルブトキシ基、1,2-ジメチルブトキシ基、2,2-ジメチルブトキシ基、2,3-ジメチルブチルオキシ基、1,3-ジメチルブトキシ基、2-エチルブトキシ基、2-メチルペントキシ基、3-メチルペントキシ基等が挙げられる。
【0017】
本発明において用いる「C7−C22アラルキルオキシ基」とは、前記定義の「C7−C22アラルキル基」において、その末端に酸素原子が結合した基を意味し、例えばベンジルオキシ基、1-ナフチルオキシ基等が挙げられる。
【0018】
本発明において用いる「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を意味する。
【0019】
本発明において用いる「置換基を有していてもよい」の置換基とは、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、水酸基、チオール基、アルキルチオ基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシスルホニル基またはアミノ基を意味する。
【0020】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
本発明によれば、以下の工程により、1-デオキシノジリマイシンのN-保護体(以下、単にN-保護体ともいう)から1-デオキシガラクトノジリマイシンを得ることができる。
[工程(a)]式(I)で表わされる、1-デオキシノジリマイシンのN-保護体の6位水酸基を保護して式(II)で表わされる化合物を得る工程;
[工程(b)]式(II)で表わされる化合物の2位と3位の水酸基を保護して式(III)で表わされる化合物を得る工程;
[工程(c)]式(III)で表わされる化合物の4位水酸基を酸化して式(IV)で表わされる化合物を得る工程;
[工程(d)]式(IV)で表わされる化合物を立体選択的に還元して式(V)で表わされる化合物を得る工程;
[工程(e)]式(V)で表わされる化合物のすべての保護基を脱保護し、1-デオキシガラクトノジリマイシンを得る工程。
上記反応スキームを以下に表わす。
【0021】
【化32】

【0022】
以下、上記各工程について説明する。
[工程(a)]
本発明は、工程(a)にかかる、式(II)で表わされる化合物の製造方法に関する。工程(a)は、式(I)で表わされる、1-デオキシノジリマイシンのN-保護体の6位水酸基を選択的に保護する工程である。
工程(a)では、式(I)
【化33】

で表わされる化合物を、塩基の存在下、溶媒中で式(A)
【化34】

で表わされる化合物と反応させ、式(II)
【化35】

で表わされる化合物(以下、保護体(1)ともいう)を製造する。
【0023】
式(I)中、Raは、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基または置換基を有していてもよいC4−C14へテロアラルキル基を表わす。
【0024】
具体的には、Raとして、4-メトキシベンジル基、3,4-ジメトキシベンジル基、3-メトキシベンジル基、3,5-ジメトキシベンジル基、2-ニトロベンジル基、4-ニトロベンジル基、ベンジル基、フェネチル基、ジフェニルメチル基、トリチル基、3-フェニルプロピル基、1-ナフチルメチル基、4-メトキシベンジル基、4-クロロベンジル基、チエニルメチル基、フリルメチル基等が挙げられ、好ましくは4-メトキシベンジル基、3,4-ジメトキシベンジル基、3-メトキシベンジル基、3,5-ジメトキシベンジル基、2-ニトロベンジル基、4-ニトロベンジル基、4-クロロベンジル基、ベンジル基等の基を挙げることができる。
【0025】
式(I)で表わされるN-保護体は、公知の方法、例えば、1-デオキシノジリマイシンに塩基の存在下、保護基を導入させる方法により得ることができる。なお、好適な例であるN-ベンジル体の製造方法の詳細については、カルボハイドレートリサーチ、1987,164,141を参照することができる。
【0026】
工程(a)では、前記N-保護体を、塩基の存在下、溶媒中で式(A)で表わされる化合物と反応させ、N-保護体の6位水酸基を選択的に保護する。
式(A)中、Rcは、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基、置換基を有していてもよいC4−C14へテロアラルキル基、−CORc1(但しRc1は、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC6−C14アリール基、置換基を有していてもよいC1−C22アルコキシ基または置換基を有していてもよいC7−C22アラルキルオキシ基を表わす)、または−Si(Rc2)(Rc3)(Rc4)(但し、Rc2、Rc3およびRc4は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、iso-プロピル基、tert-ブチル基またはフェニル基を表わす)を表わす。
【0027】
具体的には、Rcとして、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、1-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、1,3-ヘキサンジエニル基、エチニル基、1-プロピニル基、1-ブチニル基、ベンジル基、1-フェネチル基、ジフェニルメチル基、トリチル基、1-フェニルプロピル基、1-ナフチルメチル基、4-メトキシベンジル基、4-クロロベンジル基、4-ニトロベンジル基、チエニルメチル基、フリルメチル基、アセチル基、プロピオニル基、n-ブチリル基、iso-ブチリル基、n-バレリル基、iso-バレリル基、ピバロイル基、カプロイル基、デカノイル基、ラウロイル基、トリクロロアセチル基、ベンゾイル基、1-ナフトイル基、フロイル基、チオフェンカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、1-ナフチルオキシカルボニル基、4-ニトロフェニルオキシカルボニル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ-iso-プロピルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、等の基を挙げることができる。中でも、ジフェニルメチル基、トリチル基、トリ-iso-プロピルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、1-ナフトイル基が好ましく、位置選択性と安定性の点を考慮すると、トリチル基が最も好ましい。
【0028】
式(A)中、Xはハロゲン原子を表わす。中でも、入手の容易さの点を考慮すると、Xは塩素原子、臭素原子であることが好ましい。
式(A)で表わされる化合物は、公知の方法で合成することができ、また、市販品として入手可能なものもある。
【0029】
式(A)で表わされる化合物の具体例としては、アリルブロマイド、ジフェニルメチルブロマイド、トリチルクロライド、ベンジルブロマイド、1-ナフチルメチルブロマイド、4-メトキシベンジルブロマイド、4-クロロベンジルブロマイド、4-ニトロベンジルブロマイド、アセチルクロライド、プロピオニルクロライド、n-ブチリルクロライド、iso-ブチリルクロライド、n-バレリルクロライド、iso-バレリルクロライド、ピバロイルクロライド、カプロイルクロライド、ベンゾイルクロライド、1-ナフトイルクロライド、tert-ブトキシカルボニルクロライド、ベンジルオキシカルボニルクロライド、トリメチルシリルクロライド、トリエチルシリルクロライド、トリ-iso-プロピルシリルクロライド、tert-ブチルジメチルシリルクロライド、tert-ブチルジフェニルシリルクロライドが挙げられる。
【0030】
工程(a)において使用する溶媒としては、N-保護体を溶解でき、反応に影響しないものであれば特に限定されないが、ジメチルスルフィド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)等の極性溶媒、アセトニトリル等のニトリル溶媒およびテトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン等のエーテル系溶媒が好ましく、THFが最も好ましい。また、二種以上の混合溶媒を使用することもできる。
【0031】
工程(a)において使用する塩基としては、ピリジン、イミダゾール、N-エチルジイソプロピルアミン、トリエチルアミン等の有機アミン類、ブリルリチウム、メチルリチウム等のアルキルリチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム等の水素化アルカリ金属、等を挙げることができる。中でも、水素化ナトリウムを使用することが好ましい。
【0032】
工程(a)における反応溶液中のN-保護体の濃度は、約1〜10重量%とすることが好ましく、約2〜5重量%とすることがより好ましい。また、式(A)で表わされる化合物は、N-保護体に対して約0.9〜1.1モル当量で使用でき、好ましくは約0.9〜1.0モル当量である。また、塩基は、N-保護体に対して約1〜5モル当量で使用でき、好ましくは約2〜3モル当量である。
【0033】
工程(a)における反応温度は、氷冷から室温の範囲、例えば、0〜30℃の範囲に設定することが好ましい。特に、室温下で反応を行うことが好ましい。反応を促進させるために、反応途中で昇温することもできる。また、反応は攪拌下で行うことが好ましい。反応時間は、例えば3〜24時間、好ましくは8〜20時間とすることができる。また、工程(a)において、N-保護体、式(A)で表わされる化合物、塩基の溶媒への添加順序は特に限定されない。
【0034】
以上の工程により、6位水酸基が保護された、式(II)で表わされる保護体(1)が得られる。保護体(1)は、通常用いられる精製方法、例えばカラムクロマトグラフィー、結晶化、液液分配等を単独または組み合わせて単離精製できるが、これに限定されないことはいうまでもない。
なお、目的物である保護体(1)が生成されたことは、TLC(薄層クロマトグラフィー)、NMR(核磁気共鳴装置)等により容易に確認することができる。
【0035】
本発明は、式(II)
【化36】

で表わされる化合物にも関する。式(II)で表わされる化合物は、前述の工程によって得ることができる。
【0036】
式(II)中、Raは、前記式(I)で定義したものと同義であり、Rcは前記式(A)で定義したものと同義である。
【0037】
式(II)で表わされる化合物の具体例としては、以下のものを例示できる。
【化37】

【0038】
[工程(b)]
本発明は、工程(b)にかかる、式(III)で表わされる化合物の製造方法にも関する。工程(b)は、式(II)で表わされる保護体(1)の2位と3位の水酸基を保護する工程である。工程(b)では、式(II)で表わされる保護体(1)を、塩基の存在下、溶媒中で式(B)
【化38】

で表わされる化合物と反応させ、式(III)
【化39】

で表わされる化合物(以下、保護体(2)ともいう)を製造する。
【0039】
式(B)中、Wは、カルボニル基または式(C)で表される基
【化40】

を表わす。
【0040】
式(C)中、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基、または置換基を有していてもよいC6−C14アリール基である。好ましくは、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4はそれぞれ独立に置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基、C2−C6不飽和アルキル基またはフェニル基である。また、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4は、同じであっても異なっていてもよい。
【0041】
具体的には、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、フェニル基が挙げられるが、保護体(2)の単離精製の容易さ並びに収率の点からメチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基が好ましい。
【0042】
式(B)中、X1およびX2は、それぞれ独立にハロゲン原子またはトリクロロメチルオキシ基を表わす。中でも、入手の容易さの点を考慮すると、X1、X2は、塩素原子または臭素原子であることが好ましい。なお、X1、X2は同じであっても異なっていてもよい。なお、式(B)で表わされる化合物は、保護用試薬として公知であり、その詳細については、例えば、T.W.グリーン著、プロテクティブグループス イン オルガニック シンセシス 第3版、ウイリーインターサイエンス社を参照することができる。また、市販品として入手可能なものもある。但し、この保護用試薬を、1-デオキシノジリノマイシン類に適用することは今まで行われていなかった。本発明では、式(B)で表わされる化合物を用いることにより、保護体(1)の2位と3位の水酸基を選択的に保護することができる。
【0043】
式(B)で表わされる化合物の具体例としては、ホスゲン、トリホスゲン、1,3-ジクロロ-1,1,3,3,-テトラメチルジシロキサン、1,3-ジクロロ-1,1,3,3,-テトライソプロピルジシロキサン等が挙げられる。
【0044】
工程(b)において使用される溶媒は、前記保護体(1)を溶解できるものであれば特に限定されない。使用可能な溶媒としては、ジメチルホルムアミド(DMF)、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン(THF)、ピリジン、2,6-ルチジン、1,4-ジオキサンを挙げることができる。中でも、DMFを使用することが好ましい。なお、二種以上の溶媒を使用することも可能である。また、工程(b)において使用される塩基としては、イミダゾール、ピリジン、2,6-ルチジン、トリエチルアミン(TEA)等の有機アミン類が好ましく、イミダゾールが特に好ましい。
【0045】
工程(b)における反応溶液中の保護体(1)の濃度は、好ましくは約1〜10重量%でより好ましくは約5重量%である。式(B)で表わされる化合物は、保護体(1)に対して約1〜2.0モル当量で使用でき、好ましくは約1.2〜1.7モル当量である。また、塩基は、保護体(1)に対して約2〜7モル当量で使用でき、好ましくは約3〜6モル当量である。
【0046】
反応温度は、氷冷から室温の範囲、例えば、0〜30℃の範囲に設定することが好ましい。特に、室温下で反応を行うことが好ましい。反応を完結させるために、反応途中で氷冷から室温へ昇温することもできる。また、反応は攪拌下で行うことが好ましい。反応時間は、例えば5〜30時間、好ましくは10〜20時間とすることができる。また、工程(b)における保護体(1)、式(B)で表わされる化合物、および塩基の溶媒への添加順序は特に限定されない。
【0047】
以上の工程により、式(III)で表わされる保護体(2)が得られる。保護体(2)は、通常用いられる精製方法、例えばカラムクロマトグラフィー、結晶化、液液分配等を単独または組み合わせ単離精製ができるが、これに限定されないのはいうまでもない。
なお、目的物である保護体(2)が生成されたことは、TLC、NMR等により容易に確認することができる。
【0048】
本発明は、式(III)
【化41】

で表わされる化合物にも関する。式(III)で表わされる化合物は、前述の工程によって得ることができる。
【0049】
式(III)中、Raは、前記式(I)で定義したものと同義であり、Rcは前記式(A)で定義したものと同義であり、Wは前記式(B)で定義したものと同義である。
【0050】
式(III)で表わされる化合物の具体例としては、以下のものを例示できる。
【化42】

【0051】
[工程(c)]
本発明は、工程(c)にかかる、式(IV)で表わされる化合物の製造方法にも関する。工程(c)は、式(III)で表わされる保護体(2)の4位水酸基を酸化する工程である。工程(c)では、式(III)で表わされる保護体(2)を、溶媒中で酸化剤と反応させ、式(IV)
【化43】

で表わされる化合物(以下、4位ケト体ともいう)を製造する。式(IV)中、Raは、前記式(I)で定義したものと同義であり、Rcは前記式(A)で定義したものと同義であり、Wは前記式(B)で定義したものと同義である。
【0052】
工程(c)において使用される酸化剤としては、活性化されたジメチルスルホキシド、過マンガン酸カリウム、二酸化マンガン、重クロム酸カリウム、三酸化クロム、クロロクロム酸ピリジニウム(PCC),ニクロム酸ピリジニウム(PDC)等を挙げることができる。特に、高収率で目的の4位ケト体が得るためには、活性化されたジメチルスルホキシド(DMSO)による、いわゆるDMSO酸化を用いることが好ましい。ジメチルスルホキシドの活性化剤としては、塩化オキサリルの他、塩化チオニル、三塩化リン、三塩化オキソリン、塩化スルフニル、三酸化硫黄-ピリジン錯体、無水トリフルオロ酢酸、無水酢酸、ジシクロヘキシルカルボジイミド等が挙げられる。
なお、工程(c)において使用される酸化剤は、市販品として入手可能である。また、公知の方法で合成することもできる。
【0053】
工程(c)において使用される溶媒としては、前記保護体(2)を溶解できるものであれば特に限定されない。例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトン、アセトニトリル、ジエチルエーテル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ベンゼン、トルエンを用いることができる。また、二種以上の溶媒を用いることも可能である。中でも、反応性の点からは、ジクロロメタンを用いることが好ましい。
【0054】
工程(c)における反応溶液中の保護体(2)の濃度は、好ましくは約1〜10重量%、より好ましくは約2〜6重量%である。酸化剤(DMSO酸化の場合はDMSO)は、保護体(2)に対して約1〜5モル当量で使用でき、好ましくは約2〜3モル当量である。また、DMSO酸化の場合、ジメチルスルホキシドの活性化剤は、保護体(2)に対して約1〜4モル当量で使用でき、好ましくは約1.5〜2.5モル当量である。
【0055】
工程(c)において、反応温度は、特に、DMSO酸化を用いる場合、例えば-30℃〜-75℃の範囲とすることができ、-40℃〜-75℃の範囲にすることが好ましい。反応は、攪拌下で行うことが好ましい。反応時間は、例えば1〜5時間、好ましくは1〜1.5時間とすることができる。
【0056】
保護体(2)と酸化剤の溶媒への添加順序は特に限定されない。DMSO酸化を用いる場合は、ジメチルスルホキシドの活性化剤を溶媒に溶解した溶液に、DMSOを溶媒と混合した溶液を滴下し、十分攪拌混合した後に、保護体(2)を溶媒に溶解した溶液を滴下することが好ましい。
【0057】
以上の工程により、式(IV)で表わされる4位ケト体が得られる。4位ケト体は、通常用いられる精製方法、例えばカラムクロマトグラフィー、結晶化、液液分配等を単独または組み合わせ単離精製ができるが、これに限定されないのはいうまでもない。なお、目的物である4位ケト体が生成されたことは、TLC、NMR等により容易に確認することができる。
【0058】
本発明は、式(IV)
【化44】

で表わされる化合物にも関する。式(IV)で表わされる化合物は、前述の工程によって得ることができる。
【0059】
式(IV)中、Raは、前記式(I)で定義したものと同義であり、Rcは前記式(A)で定義したものと同義であり、Wは前記式(B)で定義したものと同義である。
【0060】
式(IV)で表わされる化合物の具体例としては、以下のものを例示できる。
【化45】

【0061】
[工程(d)]
本発明は、工程(d)にかかる、式(V)で表わされる化合物の製造方法にも関する。工程(d)は、式(IV)で表わされる4位ケト体を立体選択的に還元して式(V)で表わされる化合物を得る工程である。工程(d)では、式(IV)で表わされる4位ケト体を、溶媒中で還元剤と反応させ、式(V)
【化46】

で表わされる化合物(以下、4位反転体ともいう)を製造する。式(V)中、Raは、前記式(I)で定義したものと同義であり、Rcは前記式(A)で定義したものと同義であり、Wは前記式(B)で定義したものと同義である。
【0062】
工程(d)において使用される還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素亜鉛、トリ第二ブチル水素化ホウ素リチウム(L-Selectride)、水素化アルミニウムリチウム等を挙げることができる。中でも、4位の立体選択性が高いことから水素化ホウ素ナトリウムを使用することが好ましい。
【0063】
工程(d)において使用される溶媒としては、式(IV)で表わされる4位ケト体を溶解できるものであれば特に限定されない。例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、ジオキサン、THF等のエーテル類、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素等を挙げることができる。中でも、水素化ホウ素ナトリウムを使用するときは、メタノールが好ましい。
【0064】
反応温度は、-75℃〜氷冷の範囲、好ましくは-75〜-30℃の範囲とすることができる。還元反応時の温度は、反応の立体選択性に影響を与えるので、温度以外が同一の反応条件下では、低温で反応を実施した方が、より高い立体選択性で目的物を得ることができる。反応は攪拌下で行うことが好ましく、反応時間は、例えば3〜24時間、好ましくは5〜15時間とすることができる。
【0065】
工程(d)における反応溶液中の4位ケト体の濃度は、好ましくは約1〜10重量%、より好ましくは約3〜6重量%である。還元剤は、4位ケト体に対して約1〜10モル当量で使用でき、好ましくは約3〜6モル当量である。また、4位ケト体、還元剤の溶媒への添加順序は特に限定されない。
【0066】
以上の工程により、式(V)で表わされる4位反転体が得られる。4位反転体は、通常用いられる精製方法、例えばカラムクロマトグラフィー、結晶化、液液分配等を単独または組み合わせて単離精製することができるが、これに限定されないのはいうまでもない。なお、目的物である4位反転体が生成されたことは、TLC、NMR等により容易に確認することができる。
【0067】
本発明は更に、式(V)
【化47】

で表わされる化合物にも関する。式(V)で表わされる化合物は、前述の工程によって得ることができる。
【0068】
式(IV)中、Raは、前記式(I)で定義したものと同義であり、Rcは前記式(A)で定義したものと同義であり、Wは前記式(B)で定義したものと同義である。
【0069】
式(V)で表わされる化合物の具体例としては、以下のものを例示できる。
【化48】

【0070】
本発明は、更に、工程(a)〜(d)を含む、式(V)で表わされる化合物の製造方法にも関する。各工程の詳細は、前述の通りである。
【0071】
[工程(e)]
本発明は、工程(e)にかかる、式(V)で表わされる化合物の製造方法にも関する。工程(e)は、式(V)で表わされる4位反転体のすべての保護基を脱保護し、1-デオキシガラクトノジリマイシンを得る工程である。工程(e)では、式(V)で表わされる化合物を、酸および貴金属触媒の存在下、溶媒中で接触還元して脱保護させる。この工程は、2位、3位および6位の保護基を酸性条件下での脱保護と、窒素上の保護基の接触還元による脱保護を一工程で行うものである。
【0072】
工程(e)において使用される酸は、酢酸等の有機酸、塩酸等の無機酸のいずれであってもよい。また、2種以上の酸を混合して使用こともできる。中でも、反応性の点からは、塩酸-酢酸を混合して使用することが好ましい。
【0073】
工程(e)において使用される触媒としては、パラジウム、白金、ニッケル、ロジウム等を挙げることができる。触媒は、担体に担持させて使用することが好ましい。担体としては、活性炭、アルミナ等を用いることができる。特に、工程(e)では、パラジウムを担持した活性炭を使用することが好ましい。
【0074】
工程(e)において使用される溶媒としては、酸と均一に混和する溶媒であれば特に限定されない。例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類、THF等のエーテル類等を用いることができる。また、酸成分と溶媒を兼ねることが可能な有機酸、例えば酢酸等を使用することもできる。
【0075】
工程(e)における反応溶液中の4位反転体の濃度は、好ましくは約1〜10重量%で、より好ましくは約2〜6重量%である。酸は、例えば酢酸-6mol/L塩酸(1:1)では、4位反転体に対して約10〜50倍量で使用でき、好ましくは約20〜40倍量である。また、触媒は、例えば10%Pd-Cでは4位反転体に対して約0.1〜1.5倍量で使用でき、好ましくは約0.5〜1.3倍量である。
【0076】
工程(e)では、水素によってRa基を接触還元して脱保護させる。反応への水素の添加は、常圧下で行うこともでき、加圧下(例えば2〜10atm)で行うこともできる。工程(e)では、常圧下で水素を添加することで反応を完結させることもできる。
【0077】
反応温度は、例えば50〜100℃とすることができ、60〜80℃とすることが好ましい。反応は、攪拌下で行うことが好ましい。反応時間は、例えば24〜72時間、好ましくは36〜48時間とすることができる。4位反転体、酸、触媒の溶媒への添加順序は特に限定されない。
【0078】
以上の工程により、式(VI)で表わされる1-デオキシガラクトノジリマイシンが得られる。1-デオキシガラクトノジリマイシインは、通常用いられる精製方法、例えばカラムクロマトグラフィー、結晶化、液液分配等を単独または組み合わせ単離精製することができるが、これに限定されないのはいうまでもない。なお、目的物である1-デオキシガラクトノジリマイシンが生成されたことは、TLC、NMR等により容易に確認することができる。
【0079】
以上説明した方法により、1-デオキシノジリマイシンのN-保護体から1-デオキシガラクトノジリマイシンを得ることができる。本発明によれば、従来報告されていない4位ケト体の立体選択的還元を含む方法により、従来法の半分程度の工程で1-デオキシガラクトノジリマイシンを得ることができる。また、使用する反応試薬等は、いずれも入手容易なものであり、反応条件も温和なものである。このように、本発明の方法は、きわめて効率的かつ工業化可能な方法である。
【実施例】
【0080】
以下、本発明を実施例により説明する。但し、本発明は、以下の態様に限定されるものではない。
[実施例1]
保護体(1)の合成
1-デオキシノジリマイシン(400mg, 2.5mmol)、炭酸カリウム(333mg, 2.4mmol)、 ベンジルブロミド(300μl, 2.4mmol)、ジメチルホルムアミド(5ml)を室温下で15時間混合攪拌した。反応終了後、反応液をろ過し、液層を濃縮した。得られた固形物(N-ベンジル体)にテトラヒドロフラン(5ml)を加えた。氷冷下で水素化ナトリウム(290mg, 7.3mmol)のテロラヒドロフラン溶液(3ml)を滴下し、20分撹拌した後、トリチルクロリド(670mg, 2.5mmol)を加え室温下で15時間、混合攪拌した。反応終了後、10%含水テトラヒドロフラン(5ml)を滴下し濃縮した。得られた固体をメタノール(30ml)に懸濁した後濾過濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン/0.7mol/lアンモニア−メタノール=20/1)で分離精製すると、以下に表わす保護体(1)が白色粉体として得られた(773mg、収率64%)。
【0081】
【化49】

【0082】
1H-NMR(MeOD)δ(ppm):1.86(t, 1H, J=11Hz), 2.38(m, 1H), 2.83(dd, 1H, J=5 and 11Hz), 2.92(d, 1H, J=13Hz), 3.16(t, 1H, J=9Hz), 3.36(m, 1H), 3.39(dd, 1H, J=4 and 10Hz), 3.45(t, 1H, J=9Hz), 3.61(dd, 1H, J=2 and 10Hz), 3.86(d, 1H, J=13Hz), 7.09〜7.49(m, 20H)。
【0083】
[実施例2]
保護体(2)の合成
実施例1で得た保護体(1)(773mg, 1.6mmol)、イミダゾール(634mg, 9.4mmol)をジメチルホルムアミド(20ml)に加えた。氷冷下で1,3-ジクロロ-1,1,3,3,-テトライソプロピルジシロキサン(885μl, 2.8mmol)を滴下した。滴下後反応を室温に戻し、反応を20時間行った。反応終了後、反応液を濃縮した。酢酸エチル(70ml)で希釈した後、水、5%炭酸水素ナトリウム水、飽和塩化ナトリウム水で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後濾過濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(0.1%トリエチルアミン-ヘキサン/酢酸エチル=30/1)で分離精製すると、以下に表わす保護体(2)が白色粉体として得られた(990mg、収率86%)。
【化50】

【0084】
1H-NMR(CDCl3)δ(ppm):1.04(m, 28H), 1.95(dd, 1H, J=10 and 12Hz), 2.41(d, 1H, J=2Hz), 2.44(m, 1H), 2.85(dd, 1H, J=5 and 12Hz), 3.06(d, 1H, J=14Hz), 3.39(dd, 1H, J=4 and 10Hz), 3.45(t, 1H, J=9Hz), 3.54(dt, 1H, J=2 and 9Hz), 3.64(m, 2H), 3.96(d, 1H, J=14Hz) , 7.09〜7.49(m, 20H)。
【0085】
[実施例3]
4位ケト体の合成
オキザリルクロライド(47μl, 0.54mmol)をジクロロメタン(0.8ml)に加えた。-75℃でジメチルスルホキシド(50μl, 0.70mmol)のジクロロメタン溶液(1.0ml)を滴下し1時間混合撹拌した後、実施例2で得た保護体(2)(200mg, 0.27mmol)のジクロロメタン溶液(2.2ml)を滴下し、-75℃から-40℃で2時間混合撹拌した。次いで、トリエチルアミン(300μl, 2.2mmol)を滴下し-40℃から室温で2時間混合撹拌した。水(200μl)を加えた後反応液を濃縮した。クロロホルム(20ml)で希釈した後、5%炭酸水素ナトリウム水、飽和塩化ナトリウム水で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後濾過濃縮したところ、以下に表わす4位ケト体が微黄色粉として得られた(200mg(quant.))。
【化51】

【0086】
1H-NMR(CDCl3)δ(ppm):1.07(m, 28H), 2.51(dd, 1H, J=9 and 13Hz), 3.10(dd, 1H, J=5 and 13Hz), 3.21(dd, 1H, J=3 and 5Hz), 3.31(d, 1H, J=14Hz), 3.43 (dd, 1H, J=6 and 11Hz), 3.77(d, 1H, J=14Hz), 3.84(dd, 1H, J=3 and 11Hz), 3.97(m, 1H), 4.31(d, 1H, J=9Hz), 7.20〜7.49(m, 20H)。
【0087】
[実施例4]
4位反転体の合成
実施例3で得た4位ケト体(50.0mg, 0.068mmol)をメタノール(1ml)に加えた。-78℃で水素化ホウ素ナトリウム(14.4mg, 0.38mmol)を加え室温に戻した。反応を15時間行った後、水(200μl)を加え濃縮した。クロロホルム(15ml)で希釈した後、5%炭酸水素ナトリウム水、飽和塩化ナトリウム水で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後濾過濃縮すると、以下に表わす4位反転体が白色粉体として得られた(45.4mg、収率91%)。
【化52】

【0088】
1H-NMR(CDCl3)δ(ppm):1.07(m, 28H), 2.51(dd, 1H, J=9 and 13Hz), 3.10(dd, 1H, J=5 and 13Hz), 3.21(dd, 1H, J=3 and 5Hz), 3.31(d, 1H, J=14Hz), 3.43 (dd, 1H, J=6 and 11Hz), 3.77(d, 1H, J=14Hz), 3.84(dd, 1H, J=3 and 11Hz), 3.97(m, 1H), 4.31(d, 1H, J=9Hz), 7.20〜7.49(m, 20H)。
【0089】
[実施例5]
4位反転体からの1-デオキシガラクトノジリマイシンの合成
実施例4で得た4位反転体(45.4mg, 0.061mmol)、10%パラジウム炭素(50%wet)(40.0mg)、6mol/l塩酸(1ml)、酢酸(1ml)を水素気流下、60℃で混合攪拌した。反応を48時間行った後、液層を分離した。その後、液層を濃縮し、水(1ml)を加え、次いでヘキサン(1.5ml)で洗浄した。1mol/l NaOH(40μl)を加えた後、アンバーライトIR-120Hカラム(0.5mol/lアンモニア水)にて分離精製し、1-デオキシガラクトノジリマイシンを白色紛体として得た(7.3mg、収率71%)。
【0090】
1H-NMR(D2O)δ(ppm):2.49(dd, 1H, J=11 and 13Hz), 2.90(t, 1H, J=6Hz), 3.21(dd, 1H, J=5 and 13Hz), 3.50(dd, 1H, J=3 and 10Hz), 3.66(m, 2H), 3.81(ddd, 1H, J=5, 10 and 11Hz), 4.03(dd, 1H)。
【0091】
以上の反応スキームを以下に表わす。
【0092】
【化53】

【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明によれば、短工程かつ高収率で1-デオキシノジリマイシンから1-デオキシガラクトノジリマイシンを得ることができる。本発明の方法は、従来法と比較し効率的な保護法、立体選択的還元法、効率的な脱保護法を特徴とする、1-デオキシガラクトノジリマイシンの新規製造方法として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(V)
【化1】

(式中、Wはカルボニル基または式(C)で表わされる基
【化2】

(但し、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基または置換基を有していてもよいC6−C14アリール基を表わす)を表わし、
Raは、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基または置換基を有していてもよいC4−C14へテロアラルキル基を表わし、
Rcは、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基、置換基を有していてもよいC4−C14へテロアラルキル基、−CORc1(但しRc1は、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC6−C14アリール基、置換基を有していてもよいC1−C22アルコキシ基または置換基を有していてもよいC7−C22アラルキルオキシ基を表わす)、または−Si(Rc2)(Rc3)(Rc4)(但し、Rc2、Rc3およびRc4は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、iso-プロピル基、tert-ブチル基またはフェニル基を表わす)で表わされる化合物の製造方法であって、
(a)式(I)
【化3】

(式中、Raは上記と同義である)で表わされる化合物を、塩基の存在下、溶媒中で式(A)
【化4】

(式中、Rcは上記と同義であり、Xはハロゲン原子を表わす)で表わされる化合物と反応させ、式(II)
【化5】

(式中、RaおよびRcは上記と同義である)で表わされる化合物を製造する工程、
(b)工程(a)によって得られた式(II)で表わされる化合物を、塩基の存在下、溶媒中で式(B)
【化6】

(式中、Wは上記と同義であり、X1およびX2はそれぞれ独立にハロゲン原子またはトリクロロメチルオキシ基を表わす)で表わされる化合物と反応させ、式(III)
【化7】

(式中、W、RaおよびRcは上記と同義である)で表わされる化合物を製造する工程、
(c)工程(b)によって得られた式(III)で表わされる化合物を、溶媒中で酸化剤と反応させ、式(IV)
【化8】

(式中、W、RaおよびRcは上記と同義である)で表わされる化合物を製造する工程ならびに、
(d)工程(c)によって得られた式(IV)で表わされる化合物を、溶媒中で還元剤と反応させ、前記式(V)で表わされる化合物を製造する工程、
を含む方法。
【請求項2】
式(II)
【化9】

(式中、Raは置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基または置換基を有していてもよいC4−C14へテロアラルキル基を表わし、
Rcは、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基、置換基を有していてもよいC4−C14へテロアラルキル基、−CORc1(但しRc1は、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC6−C14アリール基、置換基を有していてもよいC1−C22アルコキシ基または置換基を有していてもよいC7−C22アラルキルオキシ基を表わす)、または−Si(Rc2)(Rc3)(Rc4)(但し、Rc2、Rc3およびRc4は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、iso-プロピル基、tert-ブチル基またはフェニル基を表わす)で表わされる化合物。
【請求項3】
式(I)
【化10】

(式中、Raは、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基または置換基を有していてもよいC4−C14へテロアラルキル基を表わす)で表わされる化合物を、塩基の存在下、溶媒中で式(A)
【化11】

(式中、Rcは、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基または置換基を有していてもよいC4−C14へテロアラルキル基、−CORc1(但しRc1は、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC6−C14アリール基、置換基を有していてもよいC1−C22アルコキシ基または置換基を有していてもよいC7−C22アラルキルオキシ基を表わす)、または−Si(Rc2)(Rc3)(Rc4)(但し、Rc2、Rc3およびRc4は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、iso-プロピル基、tert-ブチル基またはフェニル基を表わし、Xはハロゲン原子を表わす))で表わされる化合物と反応させ、式(II)
【化12】

(式中、RaおよびRcは上記と同義である)で表わされる化合物を製造する方法。
【請求項4】
式(III)
【化13】

(式中、Wは、カルボニル基または式(C)で表わされる基
【化14】

(但し、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基または置換基を有していてもよいC6−C14アリール基を表わす)を表わし、
Raは、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基または置換基を有していてもよいC4−C14へテロアラルキル基を表わし、
Rcは、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基、置換基を有していてもよいC4−C14へテロアラルキル基、−CORc1(但しRc1は、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC6−C14アリール基、置換基を有していてもよいC1−C22アルコキシ基または置換基を有していてもよいC7−C22アラルキルオキシ基を表わす)、または−Si(Rc2)(Rc3)(Rc4)(但し、Rc2、Rc3およびRc4は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、iso-プロピル基、tert-ブチル基またはフェニル基を表わす))で表わされる化合物。
【請求項5】
式(II)
【化15】

(式中、Raは、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基または置換基を有していてもよいC4−C14へテロアラルキル基を表わし、
Rcは、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基または置換基を有していてもよいC4−C14へテロアラルキル基、−CORc1(但しRc1は、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC6−C14アリール基、置換基を有していてもよいC1−C22アルコキシ基または置換基を有していてもよいC7−C22アラルキルオキシ基を表わす)、または−Si(Rc2)(Rc3)(Rc4)(但し、Rc2、Rc3およびRc4は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、iso-プロピル基、tert-ブチル基またはフェニル基を表わす))で表わされる化合物を、塩基の存在下、溶媒中で式(B)
【化16】

(式中、Wは、カルボニル基または式(C)で表わされる基
【化17】

(但し、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基または置換基を有していてもよいC6−C14アリール基を表わし、X1およびX2はそれぞれ独立にハロゲン原子またはトリクロロメチルオキシ基を表わす)で表わされる化合物と反応させ、式(III)
【化18】

(式中、W、RaおよびRcは上記と同義である)で表わされる化合物を製造する方法。
【請求項6】
前記式(II)で表わされる化合物が請求項3に記載の方法で製造されたものである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
式(IV)
【化19】

(式中、Wは、カルボニル基または式(C)で表わされる基
【化20】

(但し、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基または置換基を有していてもよいC6−C14アリール基を表わす)を表わし、
Raは、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基または置換基を有していてもよいC4−C14へテロアラルキル基を表わし、
Rcは、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基、置換基を有していてもよいC4−C14へテロアラルキル基、−CORc1(但しRc1は、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC6−C14アリール基、置換基を有していてもよいC1−C22アルコキシ基または置換基を有していてもよいC7−C22アラルキルオキシ基を表わす)、または−Si(Rc2)(Rc3)(Rc4)(但し、Rc2、Rc3およびRc4は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、iso-プロピル基、tert-ブチル基またはフェニル基を表わす))で表わされる化合物。
【請求項8】
式(III)
【化21】

(式中、Wは、カルボニル基または式(C)で表わされる基
【化22】

(但し、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基または置換基を有していてもよいC6−C14アリール基を表わす)を表わし、
Raは、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基または置換基を有していてもよいC4−C14へテロアラルキル基を表わし、
Rcは、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基、置換基を有していてもよいC4−C14へテロアラルキル基、−CORc1(但しRc1は、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC6−C14アリール基、置換基を有していてもよいC1−C22アルコキシ基または置換基を有していてもよいC7−C22アラルキルオキシ基を表わす)、または−Si(Rc2)(Rc3)(Rc4)(但し、Rc2、Rc3およびRc4は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、iso-プロピル基、tert-ブチル基またはフェニル基を表わす))で表わされる化合物を、溶媒中で酸化剤と反応させ、式(IV)
【化23】

(式中、W、RaおよびRcは上記と同義である)で表わされる化合物を製造する方法。
【請求項9】
前記式(III)で表わされる化合物が請求項5または6に記載の方法で製造されたものである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
式(V)
【化24】

(式中、Wは、カルボニル基または式(C)で表わされる基
【化25】

(但し、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基または置換基を有していてもよいC6−C14アリール基を表わす)を表わし、
Raは、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基または置換基を有していてもよいC4−C14へテロアラルキル基を表わし、
Rcは、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基、置換基を有していてもよいC4−C14へテロアラルキル基、−CORc1(但しRc1は、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC6−C14アリール基、置換基を有していてもよいC1−C22アルコキシ基または置換基を有していてもよいC7−C22アラルキルオキシ基を表わす)、または−Si(Rc2)(Rc3)(Rc4)(但し、Rc2、Rc3およびRc4は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、iso-プロピル基、tert-ブチル基またはフェニル基を表わす))で表わされる化合物。
【請求項11】
式(IV)
【化26】

(式中、Wは、カルボニル基または式(C)で表わされる基
【化27】

(但し、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基または置換基を有していてもよいC6−C14アリール基を表わす)を表わし、
Raは、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基または置換基を有していてもよいC4−C14へテロアラルキル基を表わし、
Rcは、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基、置換基を有していてもよいC4−C14へテロアラルキル基、−CORc1(但しRc1は、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC6−C14アリール基、置換基を有していてもよいC1−C22アルコキシ基または置換基を有していてもよいC7−C22アラルキルオキシ基を表わす)、または−Si(Rc2)(Rc3)(Rc4)(但し、Rc2、Rc3およびRc4は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、iso-プロピル基、tert-ブチル基またはフェニル基を表わす))で表わされる化合物を、溶媒中で還元剤と反応させ、式(V)
【化28】

(式中、W、RaおよびRcは上記と同義である)で表わされる化合物を製造する方法。
【請求項12】
前記式(IV)で表わされる化合物が請求項8または9に記載の方法で製造されたものである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
式(V)
【化29】

(式中、Wは、カルボニル基または式(C)で表わされる基
【化30】

(但し、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基または置換基を有していてもよいC6−C14アリール基を表わす)を表わし、
Raは、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基または置換基を有していてもよいC4−C14へテロアラルキル基を表わし、
Rcは、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基、置換基を有していてもよいC4−C14へテロアラルキル基、−CORc1(但しRc1は、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC6−C14アリール基、置換基を有していてもよいC1−C22アルコキシ基または置換基を有していてもよいC7−C22アラルキルオキシ基を表わす)、または−Si(Rc2)(Rc3)(Rc4)(但し、Rc2、Rc3およびRc4は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、iso-プロピル基、tert-ブチル基またはフェニル基を表わす))で表わされる化合物を、酸および貴金属触媒の存在下、溶媒中で接触還元して脱保護させることを特徴とする、式(VI)
【化31】

で表わされる1−デオキシガラクトノジリマイシンの製造方法。

【公開番号】特開2007−55961(P2007−55961A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−245312(P2005−245312)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(000001915)メルシャン株式会社 (48)
【出願人】(000004156)日本新薬株式会社 (46)
【Fターム(参考)】