2画面表示装置
【課題】遮光バリアーの開口の位置を第2視認方向にずらすことにより第2画像の視認範囲を第1視認方向から遠ざけられた2画面表示パネルにおいて、第1視認方向側の隣接サブ画素からの光漏れが増大することを低減し、両隣接サブ画素からの光漏れの誤差を低減して、光漏れの補正を容易にする。
【解決手段】本発明の2画面表示装置10Cは、第1画像と第2画像をそれぞれ第1視認方向と第2視認方向に判別可能にするスリット状の開口14を備えた遮光バリアー13を有し、サブ画素の第1視認方向側の画像領域34Cを狭くする補正遮光部35Cを備えている。
【解決手段】本発明の2画面表示装置10Cは、第1画像と第2画像をそれぞれ第1視認方向と第2視認方向に判別可能にするスリット状の開口14を備えた遮光バリアー13を有し、サブ画素の第1視認方向側の画像領域34Cを狭くする補正遮光部35Cを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカーナビゲーション装置等の表示装置等に用いられる2画面表示パネルに関する。詳しくは、本発明は、遮光バリアーの開口の位置をずらすことにより、第1画像の視認範囲と第2画像の視認範囲を非対称にした2画面表示パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネルや有機ELパネルなどのFPD(Flat Panel Display)は、CRT(Cathode Ray Tube:陰極線管)と比較して軽量、薄型、低消費電力という特徴があるため、表示用として多くの電子機器に使用されている。その一方で、近年の電子機器の多様化に伴い、複数の異なる画像をそれぞれ異なる視方向に判別可能に表示する2画面表示パネルが開発されてきている。この2画面表示パネルは、異なる画像の最小単位であるサブ画素が交互に隣接して表示され、異なる視方向に判別可能に分離するものである。この表示画像を2画面に分離する技術の例としては、レンチキュラーレンズによるもの、信号線に対向する位置の両側に設けられたストライプ状の突起パターンによるもの、液晶シャッターの遮光パターンによるもの、遮光部材の遮光パターンによるもの等が知られている。
【0003】
2画面表示パネルの用途としては、左右の目を異なる視方向とした立体画像表示装置、教師と生徒が表示パネルを挟んで向き合う教材用の表示装置、運転席と助手席の2方向を異なる視方向とする表示装置等がある。特に、運転の安全性を確保するため、運転中には運転席方向にテレビジョン受信画像やDVD再生画像等の表示を禁止するために、運転席と助手席の2方向を異なる視方向とする表示装置が多く市販されている。
【0004】
ところが、運転者が、運転中に助手席側に表示されているテレビジョン受信画像やDVD再生画像を見ようとして、助手席側に表示されている画像を覗き込むことが懸念される。そこで、より運転の安全性を確保するために、助手席側の画像の視野範囲を運転席から遠ざけることが考えられた。このような助手席側の画像の視野範囲を運転席から遠ざける容易な方法として、下記特許文献1に示されているように、遮光パターンをずらす方法がある。この方法は、下記特許文献2に示されているような、教師と生徒が表示パネルを挟んで向き合う2画面表示装置に適用して、生徒が教師の画像を見え難くする場合にも適用可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−184860公報
【特許文献2】特開2005−091561公報
【特許文献3】特開2009−080237公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、液晶表示パネルにおいては、所定の階調の電圧が印加されても隣接サブ画素の階調が異なるときは、電気的なクロストークが発生して、異なる輝度になることがある。この電気的なクロストークの原因は、走査線の電圧が切り替わることに伴って発生したスパイクが、画素電極に印加されている電圧実効値を変動させるためと考えられている。特に、上述の複数の異なる画像をそれぞれ異なる視方向に判別可能に表示する電子機器においては、隣接サブ画素に異なる画像が入力されるために、電気的なクロストークが多く発生する。
【0007】
このため、液晶表示パネルを使用する液晶表示装置では、電気的なクロストーク補正を行った電圧を液晶表示パネルに印加するようにしている。この補正方法は、予め被補正サブ画素の各階調と隣接サブ画素の各階調の全組み合わせの補正データを実験的に求めて電気的な補正テーブル(以降、「補正テーブル」をLUT(Lookup Table)と称する)を作成し、液晶表示装置のEEPROMなどに記憶させておく。液晶表示装置は、補正サブ画素の階調と隣接サブ画素の階調に対応する補正データを電気的なLUTから読み取り、これを補正サブ画素の階調に加算して液晶表示パネルに出力するようにしている。
【0008】
また、2画面表示装置等のように、遮光パターンを有する電子機器においては、遮光パターンのスリットに起因する光学的なクロストークも発生する。この光学的なクロストークの原因は、隣接画素の同色のサブ画素からの光が遮光パターンのスリットで回折して起こる光漏れによるものである。この補正方法は、予め被補正サブ画素の各階調と隣接画素の同色のサブ画素の各階調の全組み合わせの補正データを実験的に求めておき、光学的なLUTを作成して液晶表示装置のEEPROMなどに記憶させておく。液晶表示装置は、補正サブ画素の階調と隣接画素の同色のサブ画素の階調に対応する補正データを光学LUTから読み取って、これを補正サブ画素の階調に加算して液晶表示パネルに出力するものである。
【0009】
上述のように、遮光パターンでは光の回折などにより光漏れが生じるが、運転席側から助手席側の画像を視認し難くするために遮光パターンをずらすと、一方の隣接サブ画素からの光漏れが増大するという問題が生じる。すなわち、図12Aに示すように、遮光パターンをずらさない場合には、左右の隣接サブ画素からの光漏れの量が同じとなる。つまり、運転席側用のサブ画素Bに対し左右の隣接サブ画素G、Rは助手席側用のサブ画素であるが、このときサブ画素Bはこの左右の隣接サブ画素G、Rからの多少の光漏れの影響を受けてしまう。反対に助手席側用のサブ画素Rに対し左右の隣接サブ画素B、Gは運転席側用のサブ画素であるが、サブ画素Rはこの左右の隣接サブ画素B、Gからの多少の光漏れの影響を受けてしまう。この時左右の隣接サブ画素からの光漏れの影響は、運転席側であっても、助手席側であっても、基本的には同じである。
【0010】
一方、図12Bに示すように、スリット状の開口を助手席側にずらすと、運転席側用のサブ画素Bに対し、左側に隣接する助手席側用のサブ画素Gからの光漏れの影響が大きくなり、右側に隣接する助手席側用のサブ画素Rからの光漏れの影響が小さくなる。また助手席側用のサブ画素Rに対し、左側に隣接する運転席側用のサブ画素Bからの光漏れの影響が大きくなり、右側に隣接する運転席側用のサブ画素Gからの光漏れの影響が小さくなる。
【0011】
つまり、運転席側で考えると、遮光パターンをずらさない場合には、サブ画素Bは略青色となるが、遮光パターンを助手席側にずらした場合には、サブ画素Bは緑色(G)の影響を強く受けた色となってしまう。また助手席側で考えると、遮光パターンをずらさない場合には、サブ画素Rは略赤色となるが、遮光パターンを助手席側にずらした場合には、サブ画素Rは青色(B)の影響を強く受けた色となってしまう。
【0012】
このように、左右の隣接サブ画素からの光漏れ量が異なると、上記特許文献3に示されているように、実験的に得た光漏れ量の補正テーブルを使用して光漏れの補正を行う2画面表示装置では、実験的に2倍の補正テーブルを取得する必要があり、また、補正テーブルの記憶容量が増大してコストアップの要因となる。
【0013】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、遮光バリアーの開口の位置をずらすことにより、第1画像の視認範囲と、第2画像の視認範囲を非対称とした2画面表示パネルにおいて、隣接サブ画素からの光漏れの増大化を抑制し、また、両隣接サブ画素からの光漏れの誤差を低減して、光漏れの補正を容易にした2画面表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の2画面表示装置は、第1画像が表示されるサブ画素と第2画像が表示されるサブ画素が交互に隣接配置された表示パネルと、前記第1画像と前記第2画像をそれぞれ第1視認方向と第2視認方向に判別可能にする開口を備えた遮光バリアーと有し、前記開口の中心が隣接するサブ画素の両画像領域の間の中心からずれている2画面表示装置であって、前記サブ画素の前記第1視認方向側の画像領域を狭くする補正遮光部を備えたことを特徴とする。
【0015】
遮光バリアーの開口が第2視認方向側にずれると、サブ画素の第1視認方向側の光漏れが大きくなり、第2視認方向側の光漏れが小さくなる。そこで、本発明の2画面表示装置では、サブ画素の第1視認方向側の画像領域を狭くしている。これにより、全体の光漏れを少なくするとともに、第1視認方向と第2視認方向の光漏れの誤差を低減することができるようになる。なお、本発明の2画面表示装置においては、補正遮光部にスイッチング素子や柱状スペーサーなど、遮光性のものがあってもよい。
【0016】
また、本発明の2画面表示装置においては、前記補正遮光部は前記第2視認方向から前記第1視認方向へと徐々に広くなる形状であることが好ましい。
【0017】
本発明の2画面表示装置によれば、補正遮光部が第2視認方向から第1視認方向へと徐々に広くなっているので、視認方向が設計の位置から僅かにずれたとき、極度に輝度が変化することがないので、バラツキの少ない2画面表示装置が得られる。
【0018】
また、本発明の2画面表示装置においては、前記補正遮光部は、前記サブ画素の前記第1視認方向側の列方向を部分的に遮光する形状とすることができる。
【0019】
2画面表示装置のサブ画素は、スイッチング素子等の存在のため、元々開口部の形状が左右非対称になっている。本発明の2画面表示装置によれば、このような左右非対称なサブ画素の形状を利用して、開口度を大きく落とすことなく、第1視認方向側の画像領域を所望の程度となるように狭くすることができるようになる。
【0020】
また、本発明の2画面表示装置においては、前記補正遮光部の形状は、前記第1視認方向側と第2視認方向側との光漏れ量が等しくなるように形成されていることが好ましい。
【0021】
本発明の2画面表示装置においては、サブ画素の第1視認方向側の画像領域を狭くすることにより、第1視認方向と第2視認方向の光漏れ量が等しくなるようになされているので、第1視認方向に対応する補正対象のサブ画素の補正データと第2視認方向に対応する補正対象のサブ画素の補正データを同一にすることができる。そのため、本発明の2画面表示装置によれば、補正テーブルの取得時間が2倍になることを回避でき、また、補正テーブルの記憶容量の増大化を抑制することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】液晶表示パネルの画素配列を示す図である。
【図2】2画面の合成原理を示す図である。
【図3】図3Aは2画面の画像分離の原理を示す断面図であり、図3Bは遮光層の遮光パターンを示す平面図である。
【図4】クロストークの発生を示す平面図である。
【図5】2画面表示装置の要部を示すブロック図である。
【図6】図5のクロストーク補正部の要部を示すブロック図である。
【図7】図7Aは白基準のLUTを示す図であり、図7Bは自身基準のLUTを示す図であり、図7Cは黒基準のLUTを示す図である。
【図8】図8Aは4フレームを1周期とするFRC(Frame Rate Control)のサブ画素配置の例を示す図であり、図8Bはその補正値を示す表である。
【図9】図9Aは比較例1の補正遮光部を示す平面図であり、図9Bは比較例2の補正遮光部を示す平面図である。
【図10】図10Aは実施形態の補正遮光部を示す平面図であり、図10Bは図10Aの光漏れ状態を説明する図である。
【図11】図11Aは変形例1の遮光バリアーの平面図であり、図11Bは変形例2の平面図である。
【図12】図12Aは遮光パターンをずらさない場合の光漏れ状態を説明する図であり、図12Bは遮光パターンを助手席側にずらした場合の光漏れ状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、実施形態、比較例及び図面を参照して本発明を実施するための形態を説明するが、以下に示す実施形態は、本発明をここに記載したものに限定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。なお、この明細書における説明のために用いられた各図面においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせて表示しており、必ずしも実際の寸法に比例して表示されているものではない。
【0024】
本実施形態の2画面液晶表示装置及び各比較例の2画面表示装置は、共に運転席方向にナビゲーション画像を、助手席方向にDVD再生画像を判別可能に表示する表示装置である。そして、本実施形態の2画面液晶表示装置と比較例の2画面表示装置との構成の差異は、後述するように、遮光バリアーの開口の形状のみである。そのため、まず、図1〜図8を用いて、一般的な2画面表示装置の動作原理について説明する。
【0025】
図1は、2画面表示装置の一例である液晶表示パネル11の表示領域12の各サブ画素を示す図である。表示領域12は走査線(図示省略)の延在方向(行方向)に例えば800画素、信号線(図示省略)の延在方向(列方向)に例えば480画素からなっているカラー表示のWVGAタイプのものである。1画素は行方向に整列したR(赤)・G(緑)・B(青)の3つのサブ画素からなり、1画素は略正方形であり、1画素の色は3つのサブ画素の混色によって定まる。図2に示すように、表示領域12に表示される画像は、右ハンドル車での運転席方向(本発明における第1視認方向)に表示される第1画像と右ハンドル車での助手席方向(本発明における第2視認方向)に表示される第2画像がサブ画素単位で市松模様に取捨選択された合成画像である。
【0026】
図3Aに示すように、2画面表示装置10の液晶表示パネル11には表示面側に遮光バリアー13が形成されており、遮光バリアー13には、図3Bに示すように、市松模様状のスリット状の開口14の遮光パターンが形成されている。遮光バリアー13のスリット状の開口14によって、交互に隣接して表示される第1画像のサブ画素と第2画像のサブ画素は、右ハンドル車の運転席R方向では第2画像が視認できずに第1画像のみ視認され、右ハンドル車の助手席L方向では第1画像が視認できずに第2画像のみ視認されるようになる。例えば、運転席R方向ではナビゲーション画面のみが視認され、助手席L方向ではDVD画面のみが視認されるようになっている。ここでは、運転席R方向は液晶表示パネル11の表示面と直角方向に対して所定角(ここでは+30度)になっており、助手席L方向は液晶表示パネル11の表示面と直角方向に対して運転席R方向と対称の方向(ここでは−30度)になっている。
【0027】
図2に示すように、異なる画像が隣接した合成画像では、それぞれが単独で表示された場合と比較して、隣接サブ画素に異なる階調の電圧が印加されることが多くなる。隣接サブ画素に異なる階調の電圧が印加されると電気的なクロストーク(E−XT)が発生し易くなる。電気的なクロストークの原因は、走査線の電圧が切り替わることに伴って発生したスパイクが、画素に印加されている電圧実効値を変動させるためと考えられている。例えば、図4に示すように、左視方向の画像が中間調グレーの背景に中央が黒で、右視方向の画像が中間調グレーベタのときは、右視方向の画像の中央が電気的なクロストークによって電圧が変動してしまう等の影響により少し濃い中間調グレーになって表示される。
【0028】
電気的なクロストークは上述の合成画像の場合に限らず、隣接サブ画素の階調が異なるときに発生するが、特に、合成画像では異なる画像のサブ画素が隣接するために非常に大きなクロストークとなる。このために、2画面表示装置10では電気的なクロストークの補正が必要である。また、図3Aに示すように、遮光バリアー13のスリット状の開口14で光の回折が生じて、隣接画素の同色のサブ画素からの光が漏れる。この光学的なクロストーク(O−XT)の補正も必要である。
【0029】
図5はこれらの電気的なクロストークの補正と光学的なクロストークの補正を行うクロストーク補正部を備えた2画面表示装置10を示すブロック図である。2画面表示装置10は、ナビゲーション部15、DVD再生部16、選択部17、2画面合成部18、EEPROM19、EEPROMコントローラー20、クロストーク補正部21、出力信号生成部22、液晶表示部23を有している。
【0030】
ナビゲーション部15は合成前のナビゲーション画像を出力し、DVD再生部16は合成前のDVD再生画像を出力する。選択部17は、図2に示す合成前の第1画像としてナビゲーション部15から出力されるナビゲーション画像かDVD再生部16から出力されるDVD再生画像かを選択し、また、第2画像としてナビゲーション部15から出力されるナビゲーション画像かDVD再生部16から出力されるDVD再生画像かを選択して出力する。例えば、車両が停止しているときは、選択部17は第1画像も第2画像もDVD再生画像を選択し、車両が走行中は、第1画像としてナビゲーション画像を選択し、第2画像としてDVD再生画像を選択することができるようになされている。
【0031】
2画面合成部18は、選択部17が選択した第1画像と第2画像を、図2に示すように、市松模様に取捨選択して2つの画像を合成する。EEPROM19にはR、G、Bそれぞれの電気補正テーブルと光学補正テーブルが記憶されている。電気補正テーブルには補正対象のサブ画素の全ての階調に対する全ての隣接サブ画素の階調の電気的な補正データが記憶され、光学補正テーブルには補正対象のサブ画素の全ての階調に対する隣接画素の同色サブ画素の全ての階調の光学的な補正データが記憶されている。この補正データは予め実験によって求められた値である。
【0032】
EEPROMコントローラー20はEEPROM19の入出力を制御する。クロストーク補正部21はEEPROM19に記憶される種々のLUTを用いてクロストーク補正を行う。出力信号生成部22はクロストーク補正部21で補正された信号を液晶表示部23で表示できるように極性やタイミングを制御する。液晶表示部23は、遮光バリアー13を備え、上述の合成画像を表示するとともに第1画像と前記第2画像を夫々異なる視方向に判別可能にさせる液晶表示パネル11と、図示省略したバックライト、ゲートドライバー、ソースドライバーなどを有し、出力信号生成部22からのR・G・Bデータを内部の液晶表示パネル11に表示する。
【0033】
図6はクロストーク補正部21の詳細なブロック図である。クロストーク補正部21は、前処理部24、R処理回路25、G処理回路26、B処理回路27を有する。前処理部24は、同期信号に同期して、2画面合成部18からの合成画像から必要なデータをR処理回路25、G処理回路26、B処理回路27に送出する。R処理回路25、G処理回路26、B処理回路27はそれぞれR、G、Bのクロストーク補正を行う。
【0034】
2画面表示装置10のサブ画素の階調データを6ビットとすると、R・G・Bのそれぞれの輝度は0階調〜63階調の64種類となる。ここで2画面表示装置10をノーマリーブラックモードのものとし、0階調を黒、63階調を白とする。電気的なクロストークの補正テーブルである電気LUTは、補正対象のサブ画素の階調(0〜63)とその右側の隣接サブ画素の階調(0〜63)に基いて求められる補正値のテーブルである。また、光学的なクロストークの補正テーブルである光LUTは、補正対象のサブ画素の階調(0〜63)とその右側の隣接画素の同色サブ画素の階調(0〜63)に基いて求められる補正値のテーブルである。
【0035】
電気LUTと光学LUTは補正データを0にする階調の基準をどこにするかにより、複種類のLUTが形成される。例えば、図7Aは白基準の電気LUTと光LUTであり、電気LUTでは隣接サブ画素の階調が白の63階調のときを補正データ0とし、光LUTでは右側の隣接画素の同色サブ画素の階調が白の63階調のときを補正データ0とする。図7Bは他のサブ画素から影響を受けない状態を基準とする自身基準の電気LUTと光LUTであり、電気LUTでは両方の階調が等しいときを補正データ0とし、光学LUTでは隣接画素の同色サブ画素の階調が光漏れのない黒の0階調のときを補正データ0とする。図7Cは黒基準の電気LUTと光LUTであり、電気LUTでは隣接サブ画素の階調が黒の0階調のときを補正データ0とし、光学LUTでは右側の隣接画素の同色サブ画素の階調が黒の0階調のときを補正データ0とする。白基準のLUTは自身基準のLUTと比較して階調の差が目立つ輝度が低い部分の階調を広く補正することができるという長所がある。自身基準のLUTはコントラストが高いという長所がある。
【0036】
図6に示すように、R処理回路25はR電気LUT28と、R光LUT29と、演算部30と、画素カウンター31と、FRC処理回路32を有する。R電気LUT28は前処理部24から補正対象のサブ画素の階調と右隣のサブ画素の階調を入力して、EEPROM19から転送されて記憶している補正テーブルから電気的な補正データを抽出する。R光LUT29は前処理部24から補正対象のサブ画素の階調と右隣の画素の同色サブ画素の階調を入力して、EEPROM19から転送されて記憶している補正テーブルから光学的な補正データを抽出する。演算部30は、前処理部24からの補正対象のサブ画素の階調に、電気LUT28からの補正データと光LUT29からの補正データを加算する。
【0037】
画素カウンター31は前処理部24からの同期信号に同期して、処理する画素をカウントする。FRC処理回路32は、前処理部24からの補正対象サブ画素の階調に演算部30で合計された補正データを加算するとともに、画素カウンター31に基いて、演算部30から入力されたRのデータを、4フレームを1周期とするFRCを行い、Rデータを出力信号生成部22に出力する。
【0038】
図8AはFRCのサブ画素配置の例を示す図であり、図8Bはその補正値を示す表である。液晶表示パネル11の輝度の駆動制御は1階調単位である。即ち、整数でない階調を指定することはできない。しかしながら、1画面(800画素×480画素)の周期、即ちフレーム周期は60Hzと速いことから、残像を利用し、図8Bに示すように、4フレームを1周期として、1周期中に1階調増加させるフレームを1つにした、見かけ上0.25階調単位のFRCを行う。例えば、1.75階調の期間中は、1周期の4フレーム中、1フレームを1階調にし、残り3フレームを2階調にすれば、残像により1.75階調に見えることとなる。
【0039】
また、フリッカを低減させるために、図8Aに示すように、1階調増加させるサブ画素の位置をフレームの位置を変えて点在させる。G処理回路26とB処理回路27はR処理回路25と同様の構成であり、それぞれ前処理回路からのGデータとBデータを分割領域に対応したLUTを用いてクロストーク補正し、出力信号生成部22に出力する。このように、FRC処理を行うので、きめ細かな表示ができるのはもちろんのこと、分割領域の境界線が見えにくくなる効果もある。
【0040】
次に、上述の構成における2画面表示装置10の画像処理について説明する。2画面表示装置10の電源スイッチ(図示省略)がONにされると、EEPROMコントローラー20はEEPROM19のR,G,Bそれぞれの電気補正テーブルと光学補正テーブルをクロストーク補正部21に転送する。図5に示すように、選択部17は、第1画像としてナビゲーション部15から出力されるナビゲーション画像かDVD再生部16から出力されるDVD再生画像かを選択し、また、第2画像としてナビゲーション部15から出力されるナビゲーション画像かDVD再生部16から出力されるDVD再生画像かを選択する。2画面合成部18は、選択部17から入力される第1画像(800画素×480画素)と第2画像(800画素×480画素)をサブ画素の市松模様に取捨選択して、1つの画像(800画素×480画素)を合成する。
【0041】
クロストーク補正部21の前処理部24は、同期信号に同期して、2画面合成部18から入力された合成画像から必要なデータをR処理回路25、G処理回路26、B処理回路27に送出する。R電気LUT28は前処理部24から補正対象のサブ画素の階調と右隣のサブ画素の階調を入力して、EEPROM19から転送されて記憶している補正テーブルから電気的な補正データを抽出する。R光LUT29は前処理部24から補正対象のサブ画素の階調と右隣の画素の同色サブ画素の階調を入力して、EEPROM19から転送されて記憶している補正テーブルから光学的な補正データを抽出する。演算部30は、前処理部24からの補正対象のサブ画素の階調に、電気LUT28からの補正データと光LUT29からの補正データを加算する。FRC処理回路32は、前処理部24からの補正対象サブ画素の階調に演算部30で合計された補正データを加算するとともに、画素カウンター31に基いて、演算部30から入力されたRのデータを、4フレームを1周期とするFRCを行い、Rデータを出力信号生成部22に出力する。
【0042】
G処理回路26とB処理回路27はR処理回路25と同様の処理を行い、それぞれGデータとBデータを出力信号生成部22に出力する。出力信号生成部22はクロストーク補正部21で補正された信号を液晶表示部23で表示できるように極性やタイミングを制御する。液晶表示部23は出力信号生成部22からのR・G・Bデータを内部の液晶表示パネル11に表示する。
【0043】
次に、遮光バリアー13のスリット状のスリット状の開口14がずれていない比較例1の2画面表示装置10A(図9A参照)と、スリット状の開口14がずれている比較例2の2画面表示装置10B(図9B参照)の相違点について説明する。図9Aに示すように、スリット状の開口14がずれていない2画面表示装置10Aの表示領域12には遮光材料からなるBM(ブラックマトリクス)33が信号線(図示省略)と走査線(図示省略)の位置に対応して行方向及び列方向に形成されている。このBM33で仕切られた領域が画像として表示する画像領域34Aである。スリット状の開口14がずれていない2画面表示装置10Aの画像領域34Aは、左右対称の同じ形状で形成されている。
【0044】
スリット状の開口14がずれていない比較例1の2画面表示装置10Aでは、スリット状の開口14の中心C1が隣接する両画像領域34の間のBM33の中心C2と一致している。このために、運転席Rからの視野範囲を、視方向の内側をR1、外側をR2とし、助手席Lからの視野範囲を、視方向の内側をL1、外側をL2とすると、R1=L1、R2=L2となり、運転席Rと助手席Lの視野範囲が対称になる。また、R1=R2、L1=L2となっており、運転席、助手席それぞれの視方向が、それぞれの視野範囲のだいたい中心となるようになっている。このとき、画像領域34Aは左右対称となるように略矩形状に設計され、上述した図12Aに示したように、光の透過量は画像領域34Aの助手席L側(第2視認方向側)となる左側の領域と、運転席側R(第1視認方向側)となる右側の領域とで同じとなる。
【0045】
一方、スリット状の開口14がずれている比較例2の画面表示装置10Bでは、図9Bに示すように、交通安全上、運転者が助手席L側の第2画像を覗き見ることを防止するために、スリット状の開口14が図9Aの位置から助手席L側にΔLだけずらされる。このために、運転席Rからの視野範囲を、視方向の内側をR3、外側をR4とし、助手席Lからの視野範囲を、視方向の内側をL3、外側をL4とすると、R3>R4、L4>L3となる。このときR1+R2≒R3+R4、L1+L2≒L3+L4となる。
【0046】
つまり運転席側、助手席側ともに、スリット状の開口がずれていてもずれていなくても、それぞれの側の視野範囲はそれ程大きくは変わらないが(ただし、スリット状の開口を大きくずらした場合は別である)、むしろスリット状の開口をずらしたことにより、運転席側の視野範囲は助手席側の方へ寄り、反対に助手席側の視野範囲は運転席側から遠ざかる方へ寄ることになる。これが助手席Lの視野範囲が運転席Rから遠ざかるということである。このように、図9Bに示した比較例2の2画面表示装置10Bは図9Aに示した比較例1の2画面表示装置10Aよりも、運転者が助手席側の画像を視認し難くなる(つまり運転者が少々顔を助手席側へ移動させたとしても、助手席側の画像は視認できない)ので、安全性が向上する。
【0047】
しかしながら、比較例2の2画面表示装置10Bにおいて、画像領域34Bを図9Aの場合と同様に左右対称にすると、運転席Rと助手席Lからの視方向では、いずれも視野範囲が助手席L側に寄るために、図12Bに示したように、ずらした側(この場合は左側)に隣接するサブ画素からの光漏れが増大し(反対に右側に隣接するサブ画素からの光漏れは減少)、左右の隣接サブ画素からの光漏れの量に差異が生じる。光漏れの量に差異が生じると、光クロストーク補正の補正データである光LUTを、運転席側用と助手席側用の2種類取得しなければならず、開発に手数が掛かる。また、補正テーブルの記憶容量が増大してコストアップとなる。
【0048】
そこで、本実施形態の2画面表示装置10Cでは、液晶表示パネル11に対して、図10Aに示すように、画像領域34Cを、画像領域34Cに楔状の遮光部材からなる補正遮光部35Cを2つ設けることにより、平面視で画像領域34Cは助手席L側(開口14をずらす方向で、この場合は各サブ画素の左側)の辺を長辺とし、運転席R側(開口14をずらす方向と反対方向で、この場合は各サブ画素の右側)を短辺とする台形に形成している。この補正遮光部35CはBM33を延在して形成してもよく、信号線(図示省略)や走査線(図示省略)と同一工程、同一材料で形成してもよい。さらに、この補正遮光部35Cを形成するための別工程を追加して形成してもよい。
【0049】
これにより、各サブ画素の画像領域34Cでは、補正遮光部材35Cによって、開口14をずらす方向と反対の方向の領域(各サブ画素の右側の領域)は開口14をずらす方向の領域(各サブ画素の左側の領域)よりも光の透過量が少なくなる。そしてこのような液晶表示パネル11を用い、遮光バリアー13を上述のように、助手席L側にΔLだけずらすと、図10Bに示すように、運転席R側では、運転席側用のサブ画素Bに対して左側に隣接するサブ画素Gは助手席側用のサブ画素であるが、この時サブ画素Gは右側の領域の光の透過量が補正遮光部材35Cの影響で少なくなっている。
【0050】
したがって、図12Bに示した運転席側用の光漏れとは異なり、隣接サブ画素Gからの光漏れは少なくなり、サブ画素Bは必然的に隣接サブ画素Gから受ける光漏れの影響を低減することができる。これによりサブ画素Bは緑色(G)の影響を大幅に低減でき、略青色の表示が可能となる。また助手席L側では、助手席側用のサブ画素Rに対して左側に隣接するサブ画素Bは運転席側用のサブ画素であるが、この時サブ画素Rは右側の領域の光の透過量が補正遮光部材35Cの影響で少なくなっている。したがって図12Bに示した助手席側用の光漏れとは異なり、隣接サブ画素Bからの光漏れは少なくなり、サブ画素Rは必然的に隣接サブ画素Bから受ける光漏れの影響を低減することができる。これによりサブ画素Rは青色(B)の影響を大幅に低減でき、略赤色の表示が可能となる。このように、運転席側から見たときの隣接サブ画素からの光漏れと、助手席側から見たときの隣接サブ画素からの光漏れのバランスを、遮光バリアーをずらしていないときと同じようにすることができる。
【0051】
したがって、光クロストーク補正の補正データである光LUTを、画像領域34Cの左右の光漏れ用として2種類取得することなく、1種類ですむようになる。また、補正テーブルの記憶容量の増大を防止することができる。更に、補正遮光部35Cが助手席L側から運転席R側へと徐々に広くなっているので、視認方向が設計の位置から僅かにずれても、極度に輝度が変化することがなくなるという利点も有する。なお、画像領域34Cの左右の調整に関しては、画像領域34Cの台形の寸法を設定することが好ましい。また隣接サブ画素からの光漏れの量が等しくなるように、画素領域34Cにおける補正遮光部材35Cを設定することが好ましい。
【0052】
[変形例]
上述の実施形態の2画面表示装置10Cは、画像領域34Cが台形となるように形成することで、運転席R側の光漏れが低減するようにした。しかしながら、画像領域が台形の場合のみでなくとも、同様の作用効果を生じる。たとえば、図11Aに示すように、変形例1の2画面表示装置10Dのように、2つの矩形の補正遮光部35Dをサブ画素の右側の上下のコーナーに設けることで画像領域34Cの右側が狭くなるようにしてもよい。
【0053】
また、図11Bに示すように、変形例2の2画面表示装置10Eのように、1つの矩形の補正遮光部35Eをサブ画素の右側の下のコーナーに設けることで画像領域34Eの右側が狭くなるようにしてもよい。なお、これらの補正遮光部35C〜35E部分にスイッチング素子としての薄膜トランジスターTFTや液晶層の厚みを保持するフォトペーサーなどの遮光物が配設されていてもよい。
【0054】
なお、上述の実施形態の2画面表示装置は液晶表示パネルの場合について説明したが、有機ELパネルなど、他の表示パネルの場合についても本発明を適用することができる。また、本発明はモノクロ表示あるいはモノカラーなど、1画素が1サブ画素で構成される表示装置にも適用することができる。また、本発明は左ハンドル用の2画面表示装置や、上記特許文献2に示されているような、教師と生徒が表示パネルを挟んで向き合う2画面表示装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
10A〜10E…2画面表示装置 11…液晶表示パネル 12…表示領域 13…遮光バリアー 14…遮光バリアーの開口 15…ナビゲーション部 16…DVD再生部 17…選択部 18…2画面合成部 19…EEPROM 20…EEPROMコントローラー 21…クロストーク補正部 22…出力信号生成部 23…液晶表示部 24…前処理部 25…R処理回路 26…G処理回路 27…B処理回路 28…R電気LUT 29…R光LUT 30…演算部 31…画素カウンター 32…FRC処理回路 33…BM 34A〜34E… 画素領域 35C〜35E… 補正遮光部 E−XT…電気的なクロストーク O−XT…光学的なクロストーク L…右ハンドル車の助手席 R…右ハンドル車の運転席
【技術分野】
【0001】
本発明はカーナビゲーション装置等の表示装置等に用いられる2画面表示パネルに関する。詳しくは、本発明は、遮光バリアーの開口の位置をずらすことにより、第1画像の視認範囲と第2画像の視認範囲を非対称にした2画面表示パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネルや有機ELパネルなどのFPD(Flat Panel Display)は、CRT(Cathode Ray Tube:陰極線管)と比較して軽量、薄型、低消費電力という特徴があるため、表示用として多くの電子機器に使用されている。その一方で、近年の電子機器の多様化に伴い、複数の異なる画像をそれぞれ異なる視方向に判別可能に表示する2画面表示パネルが開発されてきている。この2画面表示パネルは、異なる画像の最小単位であるサブ画素が交互に隣接して表示され、異なる視方向に判別可能に分離するものである。この表示画像を2画面に分離する技術の例としては、レンチキュラーレンズによるもの、信号線に対向する位置の両側に設けられたストライプ状の突起パターンによるもの、液晶シャッターの遮光パターンによるもの、遮光部材の遮光パターンによるもの等が知られている。
【0003】
2画面表示パネルの用途としては、左右の目を異なる視方向とした立体画像表示装置、教師と生徒が表示パネルを挟んで向き合う教材用の表示装置、運転席と助手席の2方向を異なる視方向とする表示装置等がある。特に、運転の安全性を確保するため、運転中には運転席方向にテレビジョン受信画像やDVD再生画像等の表示を禁止するために、運転席と助手席の2方向を異なる視方向とする表示装置が多く市販されている。
【0004】
ところが、運転者が、運転中に助手席側に表示されているテレビジョン受信画像やDVD再生画像を見ようとして、助手席側に表示されている画像を覗き込むことが懸念される。そこで、より運転の安全性を確保するために、助手席側の画像の視野範囲を運転席から遠ざけることが考えられた。このような助手席側の画像の視野範囲を運転席から遠ざける容易な方法として、下記特許文献1に示されているように、遮光パターンをずらす方法がある。この方法は、下記特許文献2に示されているような、教師と生徒が表示パネルを挟んで向き合う2画面表示装置に適用して、生徒が教師の画像を見え難くする場合にも適用可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−184860公報
【特許文献2】特開2005−091561公報
【特許文献3】特開2009−080237公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、液晶表示パネルにおいては、所定の階調の電圧が印加されても隣接サブ画素の階調が異なるときは、電気的なクロストークが発生して、異なる輝度になることがある。この電気的なクロストークの原因は、走査線の電圧が切り替わることに伴って発生したスパイクが、画素電極に印加されている電圧実効値を変動させるためと考えられている。特に、上述の複数の異なる画像をそれぞれ異なる視方向に判別可能に表示する電子機器においては、隣接サブ画素に異なる画像が入力されるために、電気的なクロストークが多く発生する。
【0007】
このため、液晶表示パネルを使用する液晶表示装置では、電気的なクロストーク補正を行った電圧を液晶表示パネルに印加するようにしている。この補正方法は、予め被補正サブ画素の各階調と隣接サブ画素の各階調の全組み合わせの補正データを実験的に求めて電気的な補正テーブル(以降、「補正テーブル」をLUT(Lookup Table)と称する)を作成し、液晶表示装置のEEPROMなどに記憶させておく。液晶表示装置は、補正サブ画素の階調と隣接サブ画素の階調に対応する補正データを電気的なLUTから読み取り、これを補正サブ画素の階調に加算して液晶表示パネルに出力するようにしている。
【0008】
また、2画面表示装置等のように、遮光パターンを有する電子機器においては、遮光パターンのスリットに起因する光学的なクロストークも発生する。この光学的なクロストークの原因は、隣接画素の同色のサブ画素からの光が遮光パターンのスリットで回折して起こる光漏れによるものである。この補正方法は、予め被補正サブ画素の各階調と隣接画素の同色のサブ画素の各階調の全組み合わせの補正データを実験的に求めておき、光学的なLUTを作成して液晶表示装置のEEPROMなどに記憶させておく。液晶表示装置は、補正サブ画素の階調と隣接画素の同色のサブ画素の階調に対応する補正データを光学LUTから読み取って、これを補正サブ画素の階調に加算して液晶表示パネルに出力するものである。
【0009】
上述のように、遮光パターンでは光の回折などにより光漏れが生じるが、運転席側から助手席側の画像を視認し難くするために遮光パターンをずらすと、一方の隣接サブ画素からの光漏れが増大するという問題が生じる。すなわち、図12Aに示すように、遮光パターンをずらさない場合には、左右の隣接サブ画素からの光漏れの量が同じとなる。つまり、運転席側用のサブ画素Bに対し左右の隣接サブ画素G、Rは助手席側用のサブ画素であるが、このときサブ画素Bはこの左右の隣接サブ画素G、Rからの多少の光漏れの影響を受けてしまう。反対に助手席側用のサブ画素Rに対し左右の隣接サブ画素B、Gは運転席側用のサブ画素であるが、サブ画素Rはこの左右の隣接サブ画素B、Gからの多少の光漏れの影響を受けてしまう。この時左右の隣接サブ画素からの光漏れの影響は、運転席側であっても、助手席側であっても、基本的には同じである。
【0010】
一方、図12Bに示すように、スリット状の開口を助手席側にずらすと、運転席側用のサブ画素Bに対し、左側に隣接する助手席側用のサブ画素Gからの光漏れの影響が大きくなり、右側に隣接する助手席側用のサブ画素Rからの光漏れの影響が小さくなる。また助手席側用のサブ画素Rに対し、左側に隣接する運転席側用のサブ画素Bからの光漏れの影響が大きくなり、右側に隣接する運転席側用のサブ画素Gからの光漏れの影響が小さくなる。
【0011】
つまり、運転席側で考えると、遮光パターンをずらさない場合には、サブ画素Bは略青色となるが、遮光パターンを助手席側にずらした場合には、サブ画素Bは緑色(G)の影響を強く受けた色となってしまう。また助手席側で考えると、遮光パターンをずらさない場合には、サブ画素Rは略赤色となるが、遮光パターンを助手席側にずらした場合には、サブ画素Rは青色(B)の影響を強く受けた色となってしまう。
【0012】
このように、左右の隣接サブ画素からの光漏れ量が異なると、上記特許文献3に示されているように、実験的に得た光漏れ量の補正テーブルを使用して光漏れの補正を行う2画面表示装置では、実験的に2倍の補正テーブルを取得する必要があり、また、補正テーブルの記憶容量が増大してコストアップの要因となる。
【0013】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、遮光バリアーの開口の位置をずらすことにより、第1画像の視認範囲と、第2画像の視認範囲を非対称とした2画面表示パネルにおいて、隣接サブ画素からの光漏れの増大化を抑制し、また、両隣接サブ画素からの光漏れの誤差を低減して、光漏れの補正を容易にした2画面表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の2画面表示装置は、第1画像が表示されるサブ画素と第2画像が表示されるサブ画素が交互に隣接配置された表示パネルと、前記第1画像と前記第2画像をそれぞれ第1視認方向と第2視認方向に判別可能にする開口を備えた遮光バリアーと有し、前記開口の中心が隣接するサブ画素の両画像領域の間の中心からずれている2画面表示装置であって、前記サブ画素の前記第1視認方向側の画像領域を狭くする補正遮光部を備えたことを特徴とする。
【0015】
遮光バリアーの開口が第2視認方向側にずれると、サブ画素の第1視認方向側の光漏れが大きくなり、第2視認方向側の光漏れが小さくなる。そこで、本発明の2画面表示装置では、サブ画素の第1視認方向側の画像領域を狭くしている。これにより、全体の光漏れを少なくするとともに、第1視認方向と第2視認方向の光漏れの誤差を低減することができるようになる。なお、本発明の2画面表示装置においては、補正遮光部にスイッチング素子や柱状スペーサーなど、遮光性のものがあってもよい。
【0016】
また、本発明の2画面表示装置においては、前記補正遮光部は前記第2視認方向から前記第1視認方向へと徐々に広くなる形状であることが好ましい。
【0017】
本発明の2画面表示装置によれば、補正遮光部が第2視認方向から第1視認方向へと徐々に広くなっているので、視認方向が設計の位置から僅かにずれたとき、極度に輝度が変化することがないので、バラツキの少ない2画面表示装置が得られる。
【0018】
また、本発明の2画面表示装置においては、前記補正遮光部は、前記サブ画素の前記第1視認方向側の列方向を部分的に遮光する形状とすることができる。
【0019】
2画面表示装置のサブ画素は、スイッチング素子等の存在のため、元々開口部の形状が左右非対称になっている。本発明の2画面表示装置によれば、このような左右非対称なサブ画素の形状を利用して、開口度を大きく落とすことなく、第1視認方向側の画像領域を所望の程度となるように狭くすることができるようになる。
【0020】
また、本発明の2画面表示装置においては、前記補正遮光部の形状は、前記第1視認方向側と第2視認方向側との光漏れ量が等しくなるように形成されていることが好ましい。
【0021】
本発明の2画面表示装置においては、サブ画素の第1視認方向側の画像領域を狭くすることにより、第1視認方向と第2視認方向の光漏れ量が等しくなるようになされているので、第1視認方向に対応する補正対象のサブ画素の補正データと第2視認方向に対応する補正対象のサブ画素の補正データを同一にすることができる。そのため、本発明の2画面表示装置によれば、補正テーブルの取得時間が2倍になることを回避でき、また、補正テーブルの記憶容量の増大化を抑制することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】液晶表示パネルの画素配列を示す図である。
【図2】2画面の合成原理を示す図である。
【図3】図3Aは2画面の画像分離の原理を示す断面図であり、図3Bは遮光層の遮光パターンを示す平面図である。
【図4】クロストークの発生を示す平面図である。
【図5】2画面表示装置の要部を示すブロック図である。
【図6】図5のクロストーク補正部の要部を示すブロック図である。
【図7】図7Aは白基準のLUTを示す図であり、図7Bは自身基準のLUTを示す図であり、図7Cは黒基準のLUTを示す図である。
【図8】図8Aは4フレームを1周期とするFRC(Frame Rate Control)のサブ画素配置の例を示す図であり、図8Bはその補正値を示す表である。
【図9】図9Aは比較例1の補正遮光部を示す平面図であり、図9Bは比較例2の補正遮光部を示す平面図である。
【図10】図10Aは実施形態の補正遮光部を示す平面図であり、図10Bは図10Aの光漏れ状態を説明する図である。
【図11】図11Aは変形例1の遮光バリアーの平面図であり、図11Bは変形例2の平面図である。
【図12】図12Aは遮光パターンをずらさない場合の光漏れ状態を説明する図であり、図12Bは遮光パターンを助手席側にずらした場合の光漏れ状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、実施形態、比較例及び図面を参照して本発明を実施するための形態を説明するが、以下に示す実施形態は、本発明をここに記載したものに限定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。なお、この明細書における説明のために用いられた各図面においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせて表示しており、必ずしも実際の寸法に比例して表示されているものではない。
【0024】
本実施形態の2画面液晶表示装置及び各比較例の2画面表示装置は、共に運転席方向にナビゲーション画像を、助手席方向にDVD再生画像を判別可能に表示する表示装置である。そして、本実施形態の2画面液晶表示装置と比較例の2画面表示装置との構成の差異は、後述するように、遮光バリアーの開口の形状のみである。そのため、まず、図1〜図8を用いて、一般的な2画面表示装置の動作原理について説明する。
【0025】
図1は、2画面表示装置の一例である液晶表示パネル11の表示領域12の各サブ画素を示す図である。表示領域12は走査線(図示省略)の延在方向(行方向)に例えば800画素、信号線(図示省略)の延在方向(列方向)に例えば480画素からなっているカラー表示のWVGAタイプのものである。1画素は行方向に整列したR(赤)・G(緑)・B(青)の3つのサブ画素からなり、1画素は略正方形であり、1画素の色は3つのサブ画素の混色によって定まる。図2に示すように、表示領域12に表示される画像は、右ハンドル車での運転席方向(本発明における第1視認方向)に表示される第1画像と右ハンドル車での助手席方向(本発明における第2視認方向)に表示される第2画像がサブ画素単位で市松模様に取捨選択された合成画像である。
【0026】
図3Aに示すように、2画面表示装置10の液晶表示パネル11には表示面側に遮光バリアー13が形成されており、遮光バリアー13には、図3Bに示すように、市松模様状のスリット状の開口14の遮光パターンが形成されている。遮光バリアー13のスリット状の開口14によって、交互に隣接して表示される第1画像のサブ画素と第2画像のサブ画素は、右ハンドル車の運転席R方向では第2画像が視認できずに第1画像のみ視認され、右ハンドル車の助手席L方向では第1画像が視認できずに第2画像のみ視認されるようになる。例えば、運転席R方向ではナビゲーション画面のみが視認され、助手席L方向ではDVD画面のみが視認されるようになっている。ここでは、運転席R方向は液晶表示パネル11の表示面と直角方向に対して所定角(ここでは+30度)になっており、助手席L方向は液晶表示パネル11の表示面と直角方向に対して運転席R方向と対称の方向(ここでは−30度)になっている。
【0027】
図2に示すように、異なる画像が隣接した合成画像では、それぞれが単独で表示された場合と比較して、隣接サブ画素に異なる階調の電圧が印加されることが多くなる。隣接サブ画素に異なる階調の電圧が印加されると電気的なクロストーク(E−XT)が発生し易くなる。電気的なクロストークの原因は、走査線の電圧が切り替わることに伴って発生したスパイクが、画素に印加されている電圧実効値を変動させるためと考えられている。例えば、図4に示すように、左視方向の画像が中間調グレーの背景に中央が黒で、右視方向の画像が中間調グレーベタのときは、右視方向の画像の中央が電気的なクロストークによって電圧が変動してしまう等の影響により少し濃い中間調グレーになって表示される。
【0028】
電気的なクロストークは上述の合成画像の場合に限らず、隣接サブ画素の階調が異なるときに発生するが、特に、合成画像では異なる画像のサブ画素が隣接するために非常に大きなクロストークとなる。このために、2画面表示装置10では電気的なクロストークの補正が必要である。また、図3Aに示すように、遮光バリアー13のスリット状の開口14で光の回折が生じて、隣接画素の同色のサブ画素からの光が漏れる。この光学的なクロストーク(O−XT)の補正も必要である。
【0029】
図5はこれらの電気的なクロストークの補正と光学的なクロストークの補正を行うクロストーク補正部を備えた2画面表示装置10を示すブロック図である。2画面表示装置10は、ナビゲーション部15、DVD再生部16、選択部17、2画面合成部18、EEPROM19、EEPROMコントローラー20、クロストーク補正部21、出力信号生成部22、液晶表示部23を有している。
【0030】
ナビゲーション部15は合成前のナビゲーション画像を出力し、DVD再生部16は合成前のDVD再生画像を出力する。選択部17は、図2に示す合成前の第1画像としてナビゲーション部15から出力されるナビゲーション画像かDVD再生部16から出力されるDVD再生画像かを選択し、また、第2画像としてナビゲーション部15から出力されるナビゲーション画像かDVD再生部16から出力されるDVD再生画像かを選択して出力する。例えば、車両が停止しているときは、選択部17は第1画像も第2画像もDVD再生画像を選択し、車両が走行中は、第1画像としてナビゲーション画像を選択し、第2画像としてDVD再生画像を選択することができるようになされている。
【0031】
2画面合成部18は、選択部17が選択した第1画像と第2画像を、図2に示すように、市松模様に取捨選択して2つの画像を合成する。EEPROM19にはR、G、Bそれぞれの電気補正テーブルと光学補正テーブルが記憶されている。電気補正テーブルには補正対象のサブ画素の全ての階調に対する全ての隣接サブ画素の階調の電気的な補正データが記憶され、光学補正テーブルには補正対象のサブ画素の全ての階調に対する隣接画素の同色サブ画素の全ての階調の光学的な補正データが記憶されている。この補正データは予め実験によって求められた値である。
【0032】
EEPROMコントローラー20はEEPROM19の入出力を制御する。クロストーク補正部21はEEPROM19に記憶される種々のLUTを用いてクロストーク補正を行う。出力信号生成部22はクロストーク補正部21で補正された信号を液晶表示部23で表示できるように極性やタイミングを制御する。液晶表示部23は、遮光バリアー13を備え、上述の合成画像を表示するとともに第1画像と前記第2画像を夫々異なる視方向に判別可能にさせる液晶表示パネル11と、図示省略したバックライト、ゲートドライバー、ソースドライバーなどを有し、出力信号生成部22からのR・G・Bデータを内部の液晶表示パネル11に表示する。
【0033】
図6はクロストーク補正部21の詳細なブロック図である。クロストーク補正部21は、前処理部24、R処理回路25、G処理回路26、B処理回路27を有する。前処理部24は、同期信号に同期して、2画面合成部18からの合成画像から必要なデータをR処理回路25、G処理回路26、B処理回路27に送出する。R処理回路25、G処理回路26、B処理回路27はそれぞれR、G、Bのクロストーク補正を行う。
【0034】
2画面表示装置10のサブ画素の階調データを6ビットとすると、R・G・Bのそれぞれの輝度は0階調〜63階調の64種類となる。ここで2画面表示装置10をノーマリーブラックモードのものとし、0階調を黒、63階調を白とする。電気的なクロストークの補正テーブルである電気LUTは、補正対象のサブ画素の階調(0〜63)とその右側の隣接サブ画素の階調(0〜63)に基いて求められる補正値のテーブルである。また、光学的なクロストークの補正テーブルである光LUTは、補正対象のサブ画素の階調(0〜63)とその右側の隣接画素の同色サブ画素の階調(0〜63)に基いて求められる補正値のテーブルである。
【0035】
電気LUTと光学LUTは補正データを0にする階調の基準をどこにするかにより、複種類のLUTが形成される。例えば、図7Aは白基準の電気LUTと光LUTであり、電気LUTでは隣接サブ画素の階調が白の63階調のときを補正データ0とし、光LUTでは右側の隣接画素の同色サブ画素の階調が白の63階調のときを補正データ0とする。図7Bは他のサブ画素から影響を受けない状態を基準とする自身基準の電気LUTと光LUTであり、電気LUTでは両方の階調が等しいときを補正データ0とし、光学LUTでは隣接画素の同色サブ画素の階調が光漏れのない黒の0階調のときを補正データ0とする。図7Cは黒基準の電気LUTと光LUTであり、電気LUTでは隣接サブ画素の階調が黒の0階調のときを補正データ0とし、光学LUTでは右側の隣接画素の同色サブ画素の階調が黒の0階調のときを補正データ0とする。白基準のLUTは自身基準のLUTと比較して階調の差が目立つ輝度が低い部分の階調を広く補正することができるという長所がある。自身基準のLUTはコントラストが高いという長所がある。
【0036】
図6に示すように、R処理回路25はR電気LUT28と、R光LUT29と、演算部30と、画素カウンター31と、FRC処理回路32を有する。R電気LUT28は前処理部24から補正対象のサブ画素の階調と右隣のサブ画素の階調を入力して、EEPROM19から転送されて記憶している補正テーブルから電気的な補正データを抽出する。R光LUT29は前処理部24から補正対象のサブ画素の階調と右隣の画素の同色サブ画素の階調を入力して、EEPROM19から転送されて記憶している補正テーブルから光学的な補正データを抽出する。演算部30は、前処理部24からの補正対象のサブ画素の階調に、電気LUT28からの補正データと光LUT29からの補正データを加算する。
【0037】
画素カウンター31は前処理部24からの同期信号に同期して、処理する画素をカウントする。FRC処理回路32は、前処理部24からの補正対象サブ画素の階調に演算部30で合計された補正データを加算するとともに、画素カウンター31に基いて、演算部30から入力されたRのデータを、4フレームを1周期とするFRCを行い、Rデータを出力信号生成部22に出力する。
【0038】
図8AはFRCのサブ画素配置の例を示す図であり、図8Bはその補正値を示す表である。液晶表示パネル11の輝度の駆動制御は1階調単位である。即ち、整数でない階調を指定することはできない。しかしながら、1画面(800画素×480画素)の周期、即ちフレーム周期は60Hzと速いことから、残像を利用し、図8Bに示すように、4フレームを1周期として、1周期中に1階調増加させるフレームを1つにした、見かけ上0.25階調単位のFRCを行う。例えば、1.75階調の期間中は、1周期の4フレーム中、1フレームを1階調にし、残り3フレームを2階調にすれば、残像により1.75階調に見えることとなる。
【0039】
また、フリッカを低減させるために、図8Aに示すように、1階調増加させるサブ画素の位置をフレームの位置を変えて点在させる。G処理回路26とB処理回路27はR処理回路25と同様の構成であり、それぞれ前処理回路からのGデータとBデータを分割領域に対応したLUTを用いてクロストーク補正し、出力信号生成部22に出力する。このように、FRC処理を行うので、きめ細かな表示ができるのはもちろんのこと、分割領域の境界線が見えにくくなる効果もある。
【0040】
次に、上述の構成における2画面表示装置10の画像処理について説明する。2画面表示装置10の電源スイッチ(図示省略)がONにされると、EEPROMコントローラー20はEEPROM19のR,G,Bそれぞれの電気補正テーブルと光学補正テーブルをクロストーク補正部21に転送する。図5に示すように、選択部17は、第1画像としてナビゲーション部15から出力されるナビゲーション画像かDVD再生部16から出力されるDVD再生画像かを選択し、また、第2画像としてナビゲーション部15から出力されるナビゲーション画像かDVD再生部16から出力されるDVD再生画像かを選択する。2画面合成部18は、選択部17から入力される第1画像(800画素×480画素)と第2画像(800画素×480画素)をサブ画素の市松模様に取捨選択して、1つの画像(800画素×480画素)を合成する。
【0041】
クロストーク補正部21の前処理部24は、同期信号に同期して、2画面合成部18から入力された合成画像から必要なデータをR処理回路25、G処理回路26、B処理回路27に送出する。R電気LUT28は前処理部24から補正対象のサブ画素の階調と右隣のサブ画素の階調を入力して、EEPROM19から転送されて記憶している補正テーブルから電気的な補正データを抽出する。R光LUT29は前処理部24から補正対象のサブ画素の階調と右隣の画素の同色サブ画素の階調を入力して、EEPROM19から転送されて記憶している補正テーブルから光学的な補正データを抽出する。演算部30は、前処理部24からの補正対象のサブ画素の階調に、電気LUT28からの補正データと光LUT29からの補正データを加算する。FRC処理回路32は、前処理部24からの補正対象サブ画素の階調に演算部30で合計された補正データを加算するとともに、画素カウンター31に基いて、演算部30から入力されたRのデータを、4フレームを1周期とするFRCを行い、Rデータを出力信号生成部22に出力する。
【0042】
G処理回路26とB処理回路27はR処理回路25と同様の処理を行い、それぞれGデータとBデータを出力信号生成部22に出力する。出力信号生成部22はクロストーク補正部21で補正された信号を液晶表示部23で表示できるように極性やタイミングを制御する。液晶表示部23は出力信号生成部22からのR・G・Bデータを内部の液晶表示パネル11に表示する。
【0043】
次に、遮光バリアー13のスリット状のスリット状の開口14がずれていない比較例1の2画面表示装置10A(図9A参照)と、スリット状の開口14がずれている比較例2の2画面表示装置10B(図9B参照)の相違点について説明する。図9Aに示すように、スリット状の開口14がずれていない2画面表示装置10Aの表示領域12には遮光材料からなるBM(ブラックマトリクス)33が信号線(図示省略)と走査線(図示省略)の位置に対応して行方向及び列方向に形成されている。このBM33で仕切られた領域が画像として表示する画像領域34Aである。スリット状の開口14がずれていない2画面表示装置10Aの画像領域34Aは、左右対称の同じ形状で形成されている。
【0044】
スリット状の開口14がずれていない比較例1の2画面表示装置10Aでは、スリット状の開口14の中心C1が隣接する両画像領域34の間のBM33の中心C2と一致している。このために、運転席Rからの視野範囲を、視方向の内側をR1、外側をR2とし、助手席Lからの視野範囲を、視方向の内側をL1、外側をL2とすると、R1=L1、R2=L2となり、運転席Rと助手席Lの視野範囲が対称になる。また、R1=R2、L1=L2となっており、運転席、助手席それぞれの視方向が、それぞれの視野範囲のだいたい中心となるようになっている。このとき、画像領域34Aは左右対称となるように略矩形状に設計され、上述した図12Aに示したように、光の透過量は画像領域34Aの助手席L側(第2視認方向側)となる左側の領域と、運転席側R(第1視認方向側)となる右側の領域とで同じとなる。
【0045】
一方、スリット状の開口14がずれている比較例2の画面表示装置10Bでは、図9Bに示すように、交通安全上、運転者が助手席L側の第2画像を覗き見ることを防止するために、スリット状の開口14が図9Aの位置から助手席L側にΔLだけずらされる。このために、運転席Rからの視野範囲を、視方向の内側をR3、外側をR4とし、助手席Lからの視野範囲を、視方向の内側をL3、外側をL4とすると、R3>R4、L4>L3となる。このときR1+R2≒R3+R4、L1+L2≒L3+L4となる。
【0046】
つまり運転席側、助手席側ともに、スリット状の開口がずれていてもずれていなくても、それぞれの側の視野範囲はそれ程大きくは変わらないが(ただし、スリット状の開口を大きくずらした場合は別である)、むしろスリット状の開口をずらしたことにより、運転席側の視野範囲は助手席側の方へ寄り、反対に助手席側の視野範囲は運転席側から遠ざかる方へ寄ることになる。これが助手席Lの視野範囲が運転席Rから遠ざかるということである。このように、図9Bに示した比較例2の2画面表示装置10Bは図9Aに示した比較例1の2画面表示装置10Aよりも、運転者が助手席側の画像を視認し難くなる(つまり運転者が少々顔を助手席側へ移動させたとしても、助手席側の画像は視認できない)ので、安全性が向上する。
【0047】
しかしながら、比較例2の2画面表示装置10Bにおいて、画像領域34Bを図9Aの場合と同様に左右対称にすると、運転席Rと助手席Lからの視方向では、いずれも視野範囲が助手席L側に寄るために、図12Bに示したように、ずらした側(この場合は左側)に隣接するサブ画素からの光漏れが増大し(反対に右側に隣接するサブ画素からの光漏れは減少)、左右の隣接サブ画素からの光漏れの量に差異が生じる。光漏れの量に差異が生じると、光クロストーク補正の補正データである光LUTを、運転席側用と助手席側用の2種類取得しなければならず、開発に手数が掛かる。また、補正テーブルの記憶容量が増大してコストアップとなる。
【0048】
そこで、本実施形態の2画面表示装置10Cでは、液晶表示パネル11に対して、図10Aに示すように、画像領域34Cを、画像領域34Cに楔状の遮光部材からなる補正遮光部35Cを2つ設けることにより、平面視で画像領域34Cは助手席L側(開口14をずらす方向で、この場合は各サブ画素の左側)の辺を長辺とし、運転席R側(開口14をずらす方向と反対方向で、この場合は各サブ画素の右側)を短辺とする台形に形成している。この補正遮光部35CはBM33を延在して形成してもよく、信号線(図示省略)や走査線(図示省略)と同一工程、同一材料で形成してもよい。さらに、この補正遮光部35Cを形成するための別工程を追加して形成してもよい。
【0049】
これにより、各サブ画素の画像領域34Cでは、補正遮光部材35Cによって、開口14をずらす方向と反対の方向の領域(各サブ画素の右側の領域)は開口14をずらす方向の領域(各サブ画素の左側の領域)よりも光の透過量が少なくなる。そしてこのような液晶表示パネル11を用い、遮光バリアー13を上述のように、助手席L側にΔLだけずらすと、図10Bに示すように、運転席R側では、運転席側用のサブ画素Bに対して左側に隣接するサブ画素Gは助手席側用のサブ画素であるが、この時サブ画素Gは右側の領域の光の透過量が補正遮光部材35Cの影響で少なくなっている。
【0050】
したがって、図12Bに示した運転席側用の光漏れとは異なり、隣接サブ画素Gからの光漏れは少なくなり、サブ画素Bは必然的に隣接サブ画素Gから受ける光漏れの影響を低減することができる。これによりサブ画素Bは緑色(G)の影響を大幅に低減でき、略青色の表示が可能となる。また助手席L側では、助手席側用のサブ画素Rに対して左側に隣接するサブ画素Bは運転席側用のサブ画素であるが、この時サブ画素Rは右側の領域の光の透過量が補正遮光部材35Cの影響で少なくなっている。したがって図12Bに示した助手席側用の光漏れとは異なり、隣接サブ画素Bからの光漏れは少なくなり、サブ画素Rは必然的に隣接サブ画素Bから受ける光漏れの影響を低減することができる。これによりサブ画素Rは青色(B)の影響を大幅に低減でき、略赤色の表示が可能となる。このように、運転席側から見たときの隣接サブ画素からの光漏れと、助手席側から見たときの隣接サブ画素からの光漏れのバランスを、遮光バリアーをずらしていないときと同じようにすることができる。
【0051】
したがって、光クロストーク補正の補正データである光LUTを、画像領域34Cの左右の光漏れ用として2種類取得することなく、1種類ですむようになる。また、補正テーブルの記憶容量の増大を防止することができる。更に、補正遮光部35Cが助手席L側から運転席R側へと徐々に広くなっているので、視認方向が設計の位置から僅かにずれても、極度に輝度が変化することがなくなるという利点も有する。なお、画像領域34Cの左右の調整に関しては、画像領域34Cの台形の寸法を設定することが好ましい。また隣接サブ画素からの光漏れの量が等しくなるように、画素領域34Cにおける補正遮光部材35Cを設定することが好ましい。
【0052】
[変形例]
上述の実施形態の2画面表示装置10Cは、画像領域34Cが台形となるように形成することで、運転席R側の光漏れが低減するようにした。しかしながら、画像領域が台形の場合のみでなくとも、同様の作用効果を生じる。たとえば、図11Aに示すように、変形例1の2画面表示装置10Dのように、2つの矩形の補正遮光部35Dをサブ画素の右側の上下のコーナーに設けることで画像領域34Cの右側が狭くなるようにしてもよい。
【0053】
また、図11Bに示すように、変形例2の2画面表示装置10Eのように、1つの矩形の補正遮光部35Eをサブ画素の右側の下のコーナーに設けることで画像領域34Eの右側が狭くなるようにしてもよい。なお、これらの補正遮光部35C〜35E部分にスイッチング素子としての薄膜トランジスターTFTや液晶層の厚みを保持するフォトペーサーなどの遮光物が配設されていてもよい。
【0054】
なお、上述の実施形態の2画面表示装置は液晶表示パネルの場合について説明したが、有機ELパネルなど、他の表示パネルの場合についても本発明を適用することができる。また、本発明はモノクロ表示あるいはモノカラーなど、1画素が1サブ画素で構成される表示装置にも適用することができる。また、本発明は左ハンドル用の2画面表示装置や、上記特許文献2に示されているような、教師と生徒が表示パネルを挟んで向き合う2画面表示装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
10A〜10E…2画面表示装置 11…液晶表示パネル 12…表示領域 13…遮光バリアー 14…遮光バリアーの開口 15…ナビゲーション部 16…DVD再生部 17…選択部 18…2画面合成部 19…EEPROM 20…EEPROMコントローラー 21…クロストーク補正部 22…出力信号生成部 23…液晶表示部 24…前処理部 25…R処理回路 26…G処理回路 27…B処理回路 28…R電気LUT 29…R光LUT 30…演算部 31…画素カウンター 32…FRC処理回路 33…BM 34A〜34E… 画素領域 35C〜35E… 補正遮光部 E−XT…電気的なクロストーク O−XT…光学的なクロストーク L…右ハンドル車の助手席 R…右ハンドル車の運転席
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1画像が表示されるサブ画素と第2画像が表示されるサブ画素が交互に隣接配置された表示パネルと、前記第1画像と前記第2画像をそれぞれ第1視認方向と第2視認方向に判別可能にする開口を備えた遮光バリアーと有し、前記開口の中心が隣接するサブ画素の両画像領域の間の中心から第2視認方向側にずれている2画面表示装置であって、
前記サブ画素の前記第1視認方向側の画像領域を狭くする補正遮光部を備えたことを特徴とする2画面表示装置。
【請求項2】
前記補正遮光部は前記第2視認方向から前記第1視認方向へと徐々に広くなる形状であることを特徴とする請求項1に記載の2画面表示装置。
【請求項3】
前記補正遮光部は、前記サブ画素の前記第1視認方向側の列方向を部分的に遮光する形状であることを特徴とする請求項1に記載の2画面表示装置。
【請求項4】
前記補正遮光部の形状は、前記第1視認方向側と第2視認方向側との光漏れ量が等しくなるように形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の2画面表示装置。
【請求項1】
第1画像が表示されるサブ画素と第2画像が表示されるサブ画素が交互に隣接配置された表示パネルと、前記第1画像と前記第2画像をそれぞれ第1視認方向と第2視認方向に判別可能にする開口を備えた遮光バリアーと有し、前記開口の中心が隣接するサブ画素の両画像領域の間の中心から第2視認方向側にずれている2画面表示装置であって、
前記サブ画素の前記第1視認方向側の画像領域を狭くする補正遮光部を備えたことを特徴とする2画面表示装置。
【請求項2】
前記補正遮光部は前記第2視認方向から前記第1視認方向へと徐々に広くなる形状であることを特徴とする請求項1に記載の2画面表示装置。
【請求項3】
前記補正遮光部は、前記サブ画素の前記第1視認方向側の列方向を部分的に遮光する形状であることを特徴とする請求項1に記載の2画面表示装置。
【請求項4】
前記補正遮光部の形状は、前記第1視認方向側と第2視認方向側との光漏れ量が等しくなるように形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の2画面表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−186278(P2011−186278A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52784(P2010−52784)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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