説明

2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合物含有組成物の製造方法

【課題】一級アミン含量が組成物の全量に対して1質量%以下である2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合物含有組成物の製造方法として、より簡便な方法が望まれている。
【解決手段】2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン及びその重合物、並びに、これらの合計100質量部に対して一級アミンを2〜6質量部含む混合物と、該一級アミン1モルに対して3〜10モルのカルボン酸無水物とを接触させる工程を含む、一級アミン含量が組成物の全量に対して1質量%以下である2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合物含有組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一級アミン含量が組成物の全量に対して1質量%以下である2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合物含有組成物の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
一級アミン含量が組成物の全量に対して1質量%以下である2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合物含有組成物の製造方法としては、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン及びその重合物から2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンを蒸留により取り出す工程と、前記工程により得られた2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンを重合させる工程とを含む方法が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−228375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一級アミン含量が組成物の全量に対して1質量%以下である2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合物含有組成物の製造方法として、より簡便な方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の発明を含む。
[1] 2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン及びその重合物、並びに、これらの合計100質量部に対して一級アミンを2〜6質量部含む混合物と、該一級アミン1モルに対して3〜10モルのカルボン酸無水物とを接触させる工程を含む、一級アミン含量が組成物の全量に対して1質量%以下である2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合物含有組成物の製造方法。
【0006】
[2] アセトンとアニリンとを反応させて、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン及びその重合物、並びに、これらの合計100質量部に対して一級アミン2〜6質量部を含む混合物を得る工程と、
得られた混合物と、該一級アミン1モルに対して3〜10モルのカルボン酸無水物とを接触させる工程と、
を含む[1]記載の製造方法。
【0007】
[3] [1]又は[2]記載の製造方法により得られる2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合物含有組成物であり、以下の調製方法により成形物を得たとき、当該成形物を100℃で1時間保温した後の600nmの光の透過率が0.5%以下となることを特徴とする2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合物含有組成物。
<成形物の調製方法>
ブタジエンゴム100質量部に2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合物含有組成物2質量部と不溶性イオウ2質量部とを配合することにより配合物を得、該配合物から厚さ2mmの成形物を調製する。
【0008】
[4] 天然ゴム及びジエン系ゴムからなる群より選ばれる原料ゴム100質量部に対して、不溶性イオウ2〜10質量部と、[1]又は[2]記載の製造方法により得られる2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合物含有組成物0.5〜5質量部とを配合して得られるゴム組成物。
【0009】
[5] [1]又は[2]記載の製造方法により得られる2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合物含有組成物のタイヤ用老化防止剤としての使用。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、より簡便に、一級アミン含量が組成物の全量に対して1質量%以下である2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合物含有組成物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン及びその重合物、並びに、これらの合計100質量部に対して一級アミンを2〜6質量部含む混合物(以下「未精製混合物」と記載することがある。)>
2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン及びその重合物は、主に下式で示される構造のものである。

(式中、nは0以上の整数を表す。nは0〜5が好ましい。)
【0012】
2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン及びその重合物は、アセトンとアニリンとを反応させることにより製造されることが好ましく、酸性触媒の存在下、アニリンにアセトンを加熱状態で反応させる脱水重縮合反応によって製造されることがより好ましい。かかる反応において、アニリン1モルに対してアセトン2〜20モルを使用することが好ましい。アニリンおよび酸性触媒を混合した後、ついで過剰のアセトンを連続的に供給し、未反応分は生成水と共に蒸留により回収することが、常圧下での反応温度保持の点で好ましい。
【0013】
アセトンとアニリンとの反応は、通常、酸性触媒の存在下で実施される。酸性触媒としては、例えば、塩化水素、臭化水素、フッ化水素等のハロゲン化水素;有機スルホン酸等の有機酸;フッ化ホウ素等のルイス酸;等が挙げられる。好ましくはハロゲン化水素であり、より好ましくは塩化水素である。酸性触媒は、水溶液として使用してもよいし、水溶液以外の液体として用いてもよいし、固体として用いてもよいし、気体として反応系中に導入してもよい。ハロゲン化水素を用いる場合は、水溶液として使用することが好ましい。塩酸を用いる場合は、その濃度が15〜35質量%であることが好ましい。酸性触媒の使用量は、アニリン1モルに対して0.05〜0.5モルが好ましい。
酸性触媒の使用量が0.05モル以上であれば、反応時間が短くてすみ、0.5モル以下であれば、上記式においてnが2以上の重合物の量が少なくなるため老化防止性能が向上する。
【0014】
アセトンとアニリンとの反応は、アセトンとアニリンとの反応に不活性な有機溶媒の存在下で実施してもよいが、有機溶媒を実質的に用いることなく実施することが好ましい。反応温度は100〜150℃の範囲が好ましい。反応温度が100℃以上であると、未反応のアニリンの量が少なくなり、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン及びその重合物の量が増加する。反応温度が150℃以下であると、アセトンの使用量が少なくてすみ、経済的に好ましい。
かかる反応は、通常は2時間〜16時間の反応時間で完結する。比較的大量の酸性触媒を用いると反応時間が比較的短くなる。
反応終点は、反応混合物中のアニリン含量を高速液体クロマトグラフィーやガスクロマトグラフィー等の通常の分析手段により分析して、適宜決定すればよい。
反応終了後、中和等の方法によって触媒を除去し、次いでこれを減圧下に蒸留して有機溶媒と未反応のアニリンを除去することによって、未精製混合物を反応混合物より単離することが好ましい。
【0015】
得られる反応混合物には、通常、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン及びその重合物、並びに、これらの合計100質量部に対して一級アミンが2〜6質量部含まれており、これをそのまま未精製混合物として本発明の製造方法に使用してもよいし、中和、洗浄、濃縮等の後処理により上記酸性触媒を除去して得られる混合物を、未精製混合物として本発明の製造方法に使用してもよい。
【0016】
本明細書における「一級アミン」は、主としてアニリンに起因して生成し、各種の構造をとりうるが、代表例としては下式の構造の二つが挙げられる。

(式中、mは0以上の整数を表す。)

【0017】
このように、一級アミンは複数種の化合物の総称であり、本明細書において一級アミンの含有量は、全ての一級アミンをアニリン(分子量:93.13)と見なすことにより表される量である。即ち、アミノ基(−NH)1モルを一級アミン93.13gとして換算する。かかる一級アミンの含有量は、具体的には、混合物をクロロホルムに溶解させ、さらに塩酸及びp−ジメチルアミノベンズアルデヒドを加えて試料溶液を調製し、得られた試料溶液の吸光度を測定し、アニリンを用いた検量線により求められる。
【0018】
<一級アミン含量が組成物の全量に対して1質量%以下である2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合物含有組成物(以下「精製後組成物」と記載することもある。)及びその製造方法>
未精製混合物と、該混合物に含まれる一級アミン1モルに対して3〜10モルのカルボン酸無水物とを接触させることにより、精製後組成物が得られる。
【0019】
カルボン酸無水物としては、例えば、無水フタル酸、無水ピロメリット酸等の芳香族ジカルボン酸の分子内無水物;無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸等の脂肪族ジカルボン酸の分子内無水物;無水酢酸等の脂肪族カルボン酸の分子間無水物;無水安息香酸等の芳香族カルボン酸の分子間無水物;等が挙げられる。これらのうち、芳香族ジカルボン酸の分子内無水物又は脂肪族ジカルボン酸の分子内無水物が好ましく、芳香族ジカルボン酸の分子内無水物がより好ましく、無水フタル酸がさらに好ましい。
【0020】
カルボン酸無水物の使用量は、未精製混合物に含まれる一級アミン1モルに対して3〜10モルであり、好ましくは3〜5モルである。
【0021】
未精製混合物とカルボン酸無水物との接触は、未精製混合物とカルボン酸無水物との反応に不活性な溶媒の存在下で実施してもよいし、かかる溶媒を実質的に用いることなく実施してもよい。かかる溶媒としては、例えば、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素溶媒;ヘプタン、オクタン、ジメチルヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒;等が挙げられる。溶媒を使用する場合、その使用量は、未精製混合物1質量部に対して、通常0.5〜10質量部、好ましくは0.5〜2質量部である。
【0022】
未精製混合物とカルボン酸無水物との接触は、硫黄成分の非存在下で実施することが好ましい。
未精製混合物とカルボン酸無水物との接触は、ゴム成分の非存在下で実施することが好ましい。
【0023】
未精製混合物とカルボン酸無水物とを接触させる際の温度は、100〜150℃が好ましい。反応終点は、例えば、高速クロマトグラフィー等を用いて反応混合物を分析することにより決定することができる。
【0024】
得られた混合物に、必要に応じて中和、洗浄、濃縮等の後処理を施して、精製後組成物を取り出すことができる。
【0025】
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、天然ゴム及びジエン系ゴムからなる群より選ばれる原料ゴム100質量部に対して、不溶性イオウ2〜10質量部と、精製後組成物0.5〜5質量部とを配合して得られる。
【0026】
天然ゴムとしては、例えば、未変性の天然ゴム、エポキシ化天然ゴム、脱蛋白天然ゴムおよびその他の変性天然ゴム等が挙げられる。
【0027】
ジエン系ゴムとしては、例えば、スチレン・ブタジエン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム等の高不飽和性ゴムが挙げられる。
【0028】
不溶性イオウとは、二硫化炭素に不溶な無定形の高分子状の硫黄であり、その使用量は、原料ゴム100質量部に対して、通常2〜10質量部、好ましくは3〜6質量部である。
【0029】
精製後組成物の使用量は、原料ゴム100質量部に対して、通常0.5〜5質量部、好ましくは0.5〜2質量部である。
【0030】
本発明のゴム組成物は、さらに、充填剤、加硫促進剤、酸化亜鉛、脂肪酸類、コバルト塩等を含んでいてもよい。
【0031】
充填剤としては、ゴム分野で通常使用されているカーボンブラック、シリカ、タルク、クレイ、水酸化アルミニウム、酸化チタン等が例示されるが、カーボンブラック及びシリカが好ましく用いられ、更にはカーボンブラックが特に好ましく使用される。かかる充填剤の使用量は特に限定されるものではないが、原料ゴム100質量部あたり5〜100質量部の範囲が好ましい。特に好ましくは30〜80質量部である。
【0032】
カーボンブラックとしては、例えば、日本ゴム協会編「ゴム工業便覧<第四版>」の494頁に記載されるものが挙げられ、HAF(High Abrasion Furnace)、SAF(Super Abrasion Furnace)、ISAF(Intermediate SAF)、FEF(Fast Extrusion Furnace)、MAF、GPF(General Purpose Furnace)、SRF(Semi-Reinforcing Furnace)等のカーボンブラックが好ましい。
【0033】
シリカとしては、CTAB比表面積50〜180m/gのシリカや、窒素吸着比表面積50〜300m2/gのシリカが例示され、東ソー・シリカ(株)社製「AQ」、「AQ−N」、デグッサ社製「ウルトラジル(登録商標)VN3」、「ウルトラジル(登録商標)360」、「ウルトラジル(登録商標)7000」、ローディア社製「ゼオシル(登録商標)115GR」、「ゼオシル(登録商標)1115MP」、「ゼオシル(登録商標)1205MP」、「ゼオシル(登録商標)Z85MP」、日本シリカ社製「ニップシール(登録商標)AQ」等の市販品が好ましい。また、pHが6〜8であるシリカやナトリウムを0.2〜1.5質量%含むシリカ、真円度が1〜1.3の真球状シリカ、ジメチルシリコーンオイル等のシリコーンオイルやエトキシシリル基を含有する有機ケイ素化合物、エタノールやポリエチレングリコール等のアルコールで表面処理したシリカ、二種類以上の異なった窒素吸着比表面積を有するシリカを配合することも好ましい。
【0034】
シリカを配合する場合、原料ゴム100質量部あたり、カーボンブラックを5〜50質量部配合することが好ましく、シリカ/カーボンブラックの配合比率は0.7/1〜1/0.1が特に好ましい。また通常充填剤としてシリカを用いる場合にはビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(デグッサ社製「Si−69」)、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(デグッサ社製「Si−75」)等、シリカと結合可能なケイ素等の元素またはアルコシキシラン等の官能基を有する化合物、いわゆるシランカップリング剤を添加することが好ましい。
【0035】
水酸化アルミニウムとしては、窒素吸着比表面積5〜250m2/gの水酸化アルミニウムや、DOP給油量50〜100ml/100gの水酸化アルミニウムが例示される。
【0036】
加硫促進剤の例としては、ゴム工業便覧<第四版>(平成6年1月20日社団法人 日本ゴム協会発行)の412〜413ページに記載されているチアゾール系加硫促進剤、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤が挙げられる。
【0037】
具体的には、例えば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(BBS)、N,N−ジシクロへキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、ジフェニルグアニジン(DPG)が挙げられる。また、公知の加硫剤であるモルフォリンジスルフィドを用いることもできる。充填剤としてカーボンブラックを用いる場合には、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(BBS)、N,N−ジシクロへキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)のいずれかとジフェニルグアニジン(DPG)とを併用することが好ましく、充填剤としてシリカとカーボンブラックとを併用する場合には、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(BBS)、N,N−ジシクロへキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)のいずれかとジフェニルグアニジン(DPG)とを併用することが好ましい。
【0038】
かかる加硫促進剤の使用量は特に限定されるものではないが、原料ゴム100質量部あたり0.5〜5質量部の範囲が好ましい。特に好ましくは0.5〜2質量部である。
【0039】
酸化亜鉛の使用量は、原料ゴム100質量部あたり1〜15質量部の範囲内であることが好ましく、3〜8質量部の範囲内であることがより好ましい。
【0040】
脂肪酸類としてはステアリン酸が好ましく、その使用量は、原料ゴム100質量部あたり1〜15質量部の範囲内であることが好ましく、1〜7質量部の範囲内であることがより好ましい。
【0041】
コバルト塩としてはナフテン酸コバルトが例示される。その使用量は、コバルト分として原料ゴム100質量部あたり0.02〜2質量部の範囲内であることが好ましく、0.1〜0.5質量部の範囲内であることがより好ましい。
【0042】
さらには、ゴム工業で通常使用されている各種ゴム薬品、例えば劣化防止剤、架橋剤、リターダー、しゃく解剤、軟化剤、石油樹脂、滑剤、可塑剤、粘着付与剤、レゾルシンやレゾルシン系樹脂のような接着剤を必要に応じて併用してもよい。
【0043】
一般に、ゴムの配合は2つの工程で行われる。すなわち、原料ゴム、充填剤、精製後組成物および必要に応じて酸化亜鉛等を比較的高温で配合する第1の工程、不溶性イオウおよび必要に応じて加硫促進剤等を比較的低温で配合する第2の工程である。
【0044】
第1の工程の配合温度は80〜200℃が好ましく、更に好ましくは110〜160℃の範囲である。
【0045】
第2の工程の配合温度は60〜110℃が好ましい。
【0046】
かくして配合された本発明のゴム組成物は、特に自動車用タイヤの内部部材に好適に用いられる。自動車用タイヤの内部部材としてはベルト、カーカス、インナーライナー、アンダートレッド等が例示される。
【0047】
本発明のゴム組成物において、精製後組成物はタイヤ用老化防止剤として使用される。
【0048】
本発明のゴム組成物は、特定の状態に加工された後、加硫することにより目的とする製品となる。
【0049】
加硫の条件は目的とする製品により異なるが、通常は120〜200℃程度、1分〜2時間程度の範囲から選択される。
【0050】
精製後組成物は、組成物全量に対する一級アミン含量が1質量%以下であることにより、上記第2の工程において不溶性イオウは溶解せずゴム組成物中に均一に分散し、加硫の段階で初めて溶解するため、イオウがゴム組成物表面に偏在(以下「ブルーム」と記載することもある。)し難く、その結果、ゴム組成物内部で十分な加硫効果が得られ易いという利点がある。
【0051】
<不溶性イオウの溶解性評価>
不溶性イオウの溶解性は、精製後組成物による影響が大きく、次のようにして評価できる。即ち、以下の調製方法により成形物を得たとき、当該成形物を100℃で1時間保温した後の600nmの光の透過率が0.5%以下であれば、不溶性イオウは殆ど溶解しておらず、そのような精製後組成物が好ましい。
<成形物の調製方法>
ブタジエンゴム100質量部に精製後組成物2質量部と不溶性イオウ2質量部とを配合することにより配合物を得、該配合物から厚さ2mmの成形物を調製する。
【実施例】
【0052】
以下、実施例、試験例及び製造例等を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0053】
以下の製造例において、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン(以下「TMDQ」という場合がある)量及びTMDQダイマー量は、カラムとしてEclipse XDB-C18Aを、A液として水を、B液としてメタノールを用い、グラジエント法による高速液体クロマトグラフィーにより分析した。
【0054】
各実施例及び製造例における一級アミン含量は、未精製混合物又は精製後組成物をクロロホルムに溶解させ、さらに塩酸およびp−ジメチルアミノベンズアルデヒドを加えて試料溶液を調製し、この試料溶液の吸光度を分光光度計(測定波長440nm)にて測定し、アニリンを用いた検量線より求めた。
【0055】
製造例1
温度計、攪拌機及び蒸留装置を装備した300mL丸底フラスコに、アニリン46.5g、35質量%塩酸4.4gを仕込み110℃に昇温した。そこにアセトン290.4gを110℃〜140℃で16時間かけて滴下した後、135℃〜140℃で4時間保温した。その後、反応混合物を90℃まで冷却し、トルエンで希釈、水酸化ナトリウム水溶液で中和後、静置分液して水層を除去した。油層中のトルエンを留去した後、さらに内温200℃、減圧度2mmHgで蒸留して低沸点成分を留去することにより、未精製混合物80.3gを得た。得られた未精製混合物は、実質的にアニリンとアセトンとの縮合物からなり、TMDQ0.1質量%、TMDQダイマー14質量%をそれぞれ含有していた。また、一級アミン含量は3.2質量%であった。
【0056】
実施例1
温度計、攪拌機、ディーンスターク管及びコンデンサーを備えた100mL四つ口丸底フラスコに、製造例1で得た未精製混合物20.0g、無水フタル酸4.83g及びキシレン100mlを仕込み、140℃で5時間保温した。溶媒を留去し、精製後組成物を得た。得られた精製後組成物は、アニリンとアセトンとの縮合物に由来する成分以外は、実質的に、無水フタル酸、及び、一級アミンと無水フタル酸との反応物からなり、一級アミン含量は0.1質量%であった。
【0057】
実施例2
実施例1において、無水フタル酸4.83gに代えて無水コハク酸3.26gを用い、保温条件を140℃で3時間にする以外は実施例1と同様にして精製後組成物を得た。得られた精製後組成物は、アニリンとアセトンとの縮合物に由来する成分以外は、実質的に、無水フタル酸、及び、一級アミンと無水フタル酸との反応物からなり、一級アミン含量は0.1質量%であった。
【0058】
実施例3
実施例1において、製造例1に準じて得た未精製混合物(一級アミン2.9質量%)10.0g、無水フタル酸1.75g及びキシレン20mlを用い、保温条件を140℃で4時間にする以外は、実施例1と同様にして精製後組成物を得た。得られた精製後組成物は、アニリンとアセトンとの縮合物に由来する成分以外は、実質的に、無水フタル酸、及び、一級アミンと無水フタル酸との反応物からなり、一級アミン含量は0.3質量%であった。
【0059】
実施例4
実施例3において、キシレン20mlに代えてトルエン20mlを用い、保温条件を110℃にする以外は、実施例3と同様にして精製後組成物を得た。得られた精製後組成物は、アニリンとアセトンとの縮合物に由来する成分以外は、実質的に、無水フタル酸、及び、一級アミンと無水フタル酸との反応物からなり、一級アミン含量は0.2質量%であった。
【0060】
実施例5
実施例1において、製造例1に準じて得た未精製混合物(一級アミン3.5質量%)20.0g、無水フタル酸4.24g及びキシレン40gを用い、保温時間を140℃で3時間にする以外は、実施例1と同様にして精製後組成物を得た。得られた精製後組成物は、アニリンとアセトンとの縮合物に由来する成分以外は、実質的に、無水フタル酸、及び、一級アミンと無水フタル酸との反応物からなり、一級アミン含量は0.1質量%であった。
【0061】
実施例6
実施例5において、キシレン40gに代えてトルエン40gを用い、保温条件を110℃にする以外は、実施例5と同様にして精製後組成物を得た。得られた精製後組成物は、アニリンとアセトンとの縮合物に由来する成分以外は、実質的に、無水フタル酸、及び、一級アミンと無水フタル酸との反応物からなり、一級アミン含量は0.1質量%であった。
【0062】
実施例7
温度計、攪拌機、ディーンスターク管及びコンデンサーを備えた100mL四つ口丸底フラスコに、製造例1に準じて得た未精製混合物(一級アミン2.9質量%)20.0g及び無水フタル酸3.46gを仕込み、140℃で2時間保温し、精製後組成物を得た。得られた精製後組成物は、アニリンとアセトンとの縮合物に由来する成分以外は、実質的に、無水フタル酸、及び、一級アミンと無水フタル酸との反応物からなり、一級アミン含量は0.1質量%であった。
【0063】
実施例8
実施例7において、保温条件を120℃で4時間にする以外は実施例7と同様にして精製後組成物を得た。得られた精製後組成物は、アニリンとアセトンとの縮合物に由来する成分以外は、実質的に、無水フタル酸、及び、一級アミンと無水フタル酸との反応物からなり、一級アミン含量は0.2質量%であった。
【0064】
実施例9
実施例7において、製造例1に準じて得た未精製混合物(一級アミン3.5質量%)20.0g及び無水フタル酸4.24gを用いる以外は実施例7と同様にして精製後組成物を得た。得られた精製後組成物は、アニリンとアセトンとの縮合物に由来する成分以外は、実質的に、無水フタル酸、及び、一級アミンと無水フタル酸との反応物からなり、一級アミン含量は0.0質量%であった。
【0065】
参考例
温度計、攪拌機、ディーンスターク管及びコンデンサーを備えた100mL四つ口丸底フラスコに、製造例1に準じて得た未精製混合物(一級アミン2.9質量%)25.0g及び無水フタル酸1.25gを仕込み、140℃で3時間保温した。溶媒を留去し、精製後組成物を得た。得られた精製後組成物は、アニリンとアセトンとの縮合物に由来する成分以外は、実質的に、無水フタル酸、及び、一級アミンと無水フタル酸との反応物からなり、一級アミン含量は1.8質量%であった。
【0066】
【表1】

【0067】
試験例1
ブタジエンゴム100質量部に対して実施例1で得た精製後組成物2質量部と不溶性イオウ2質量部とを配合することにより配合物を得、該配合物をポリエチレンテレフタレート製フィルムに挟んで2mmの厚さに成形した。得られた成形物を100℃で1時間保温した。保温後の成形物の600nmの光の透過率は0.00%であった。
【0068】
試験例2〜9
試験例1において、実施例1で得た精製後組成物に代えて、実施例2〜9でそれぞれ得た精製後組成物を用いる以外は試験例1と同様にして保温後の成形物を得た。保温後の成形物の600nmの光の透過率を試験例1とともに下記表に示す。
【0069】
【表2】

【0070】
参考試験例1
試験例1において、実施例1で得た精製後組成物に代えて、製造例1で得た未精製混合物を用いる以外は試験例1と同様にして保温後の成形物を得た。その600nmの光の透過率は20.07%であった。
【0071】
参考試験例2
試験例1において、実施例1で得た精製後組成物に代えて、参考例で得た組成物を用いる以外は試験例1と同様にして保温後の成形物を得た。その600nmの光の透過率は6.39%であった。
【0072】
実施例10:ゴム組成物の製造
<第1の工程>
バンバリーミキサー(東洋精機製600mlラボプラストミル)を用いて、天然ゴム(RSS#1)100質量部、カーボンブラック(N330)45質量部、含水シリカ(Nipsil AQ)10質量部、ステアリン酸3質量部、酸化亜鉛5質量部および実施例1で得た精製後組成物2質量部を配合混練し、第1工程物を得た。
<第2の工程>
オープンロール機で60〜80℃の温度にて、第1の工程により得られた第1工程物と、加硫促進剤(N,N−ジシクロへキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)0.7質量部、不溶性イオウ6質量部(イオウ分として)およびナフテン酸コバルト2質量部とを配合混練し、本発明のゴム組成物を得た。
<第3の工程>
第2の工程で得たゴム組成物を150℃で加硫処理することにより加硫ゴムを得た。
【0073】
実施例11、12
実施例10において、実施例1で得た精製後組成物に代えて実施例7、8で得た精製後組成物を用いる以外は実施例10と同様にして本発明のゴム組成物および加硫ゴムを得た。
【0074】
試験例10〜12
実施例10〜12でそれぞれ得られたゴム組成物及び加硫ゴムについて、以下の試験を実施した。結果を下記表に示す。
1)反発弾性:JIS K 6255に従い、加硫ゴムの反発弾性を25℃で測定した。
2)硬度:JIS K 6253に従い、デュロメータータイプAを用いて、加硫ゴムの硬度を25℃で測定した。
【0075】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明によれば、一級アミン含量が組成物の全量に対して1質量%以下である2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合物含有組成物を、より簡便に製造することができる。2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合物含有組成物は、タイヤ用老化防止剤として有用である。かかる組成物の全量に対して一級アミン含量が1質量%以下であることにより、タイヤ用ゴム組成物中のイオウがゴム組成物表面に偏在し難く、その結果、ゴム組成物内部で十分な加硫効果が得られ易いという利点がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン及びその重合物、並びに、これらの合計100質量部に対して一級アミンを2〜6質量部含む混合物と、該一級アミン1モルに対して3〜10モルのカルボン酸無水物とを接触させる工程を含む、一級アミン含量が組成物の全量に対して1質量%以下である2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合物含有組成物の製造方法。
【請求項2】
アセトンとアニリンとを反応させて、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン及びその重合物、並びに、これらの合計100質量部に対して一級アミン2〜6質量部を含む混合物を得る工程と、
得られた混合物と、該一級アミン1モルに対して3〜10モルのカルボン酸無水物とを接触させる工程と、
を含む請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の製造方法により得られる2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合物含有組成物であり、以下の調製方法により成形物を得たとき、当該成形物を100℃で1時間保温した後の600nmの光の透過率が0.5%以下となることを特徴とする2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合物含有組成物。
<成形物の調製方法>
ブタジエンゴム100質量部に2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合物含有組成物2質量部と不溶性イオウ2質量部とを配合することにより配合物を得、該配合物から厚さ2mmの成形物を調製する。
【請求項4】
天然ゴム及びジエン系ゴムからなる群より選ばれる原料ゴム100質量部に対して、不溶性イオウ2〜10質量部と、請求項1又は2記載の製造方法により得られる2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合物含有組成物0.5〜5質量部とを配合して得られるゴム組成物。
【請求項5】
請求項1又は2記載の製造方法により得られる2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合物含有組成物のタイヤ用老化防止剤としての使用。

【公開番号】特開2012−197415(P2012−197415A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224675(P2011−224675)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】