説明

3成分樹脂の合成

【課題】高温で固体インク中の顔料粒子を安定化するのに有用な固体インクジェットインクおよび顔料樹脂状化合物又はその塩を提供する。
【解決手段】顔料樹脂状化合物又はその塩は、顔料粒子表面に吸着させるための繰り返し数1から12の置換基を有しても良いポリアルキレンアミンを含み、末端のアミノ基を、固体インク中の顔料粒子安定化するために、少なくとも10個の炭素原子を有する長鎖脂肪族のエステル基を有する脂肪族ジカルボン酸でアミド化したものであり、場合により、もう一方の末端を長鎖脂肪族のヒドロキシカルボン酸でアミド化したしても良い、約50℃〜約150℃の融点と約700〜約1500ダルトンの分子量を有する顔料樹脂状化合物、又はアルキル化剤で4級化して得られる塩を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体インクジェットインクおよび顔料樹脂状化合物に関し、特に、高温で固体インク中の顔料粒子を安定化するのに有用な組成物と適合するか、またはこのような組成物として有用な、顔料樹脂状化合物に関する。いくつかの実施形態では、顔料樹脂状化合物は、固体インク中の顔料粒子安定化するために、少なくとも10個の炭素原子を有する長鎖を含み、さらに、顔料粒子表面に吸着させるためのアミンを含む。
【背景技術】
【0002】
顔料は、凝集して大きな構造になる傾向があるため、ほとんどの媒体に分散させることが困難であることが知られている。それに加え、印刷ヘッドは、典型的には、高温(例えば、115℃〜120℃)で操作され、顔料分散物を不安定化させる影響を有している。
【0003】
市販のポリマー分散剤の多くは、水系インク用または溶媒系インク用に設計されており、したがって、疎水性ワックス系固体インクには適合しない。さらに、これらのポリマー分散剤は、液体またはペーストの形態であり、したがって、プリンター内の過度な温度に長期間耐えることができない。最後に、固体インク中でポリマーを使用することは、望ましくない。なぜなら、(a)ポリマーは、レオロジー特性に悪い影響を与え、非ニュートン挙動が起こり、粘度が上昇するため、(b)ポリマーは、繊維を形成する傾向があり、これにより、吐出中のインク液滴の生成に影響を与えるため(すなわち、インクの小さな液滴が生成)である。
【0004】
化学的に安定であり、固体インク配合物と適合性であり、高温で、固体インク内で顔料粒子を効果的に分散させ、長期間安定化することが可能な、樹脂状化合物を安定化する顔料の必要性が存在する。
【0005】
図1は、顔料を安定化する樹脂状化合物2が、顔料粒子1に固定されていることを示す。顔料を安定化する樹脂状化合物(または樹脂状化合物、または3成分樹脂)2は、2成分(すなわち、分子の尾部に、固体インク中の顔料粒子を立体的に安定化するために、ブラシとして知られるか、または尾部を安定化する炭化水素またはポリマー長鎖、分子の中央部に鎖伸長部)を含有するワックス状の鎖を含む。安定化する尾部をもっと長くすると、固体インク中の顔料の安定化が向上するため、薬伸長剤が、ワックス状鎖の長さを伸ばすのに役立つ。したがって、主にポリエチレンワックスから構成される固体インクの場合、ある実施形態では、適切なブラシは、ポリエチレンワックスなどに由来していてもよいが、ブラシのために他の材料を用いてもよい。顔料を安定化する樹脂状化合物(または樹脂状化合物または3成分樹脂)2は、さらに、官能基5を含み、限定されないが、水素結合によって顔料粒子表面に強く吸着し、顔料を安定化する(または固定する)ことが可能な種々のアミンが挙げられ、その結果、顔料は、ほとんどの固体インクプリンターで使用される高温(>100℃)に耐えることができる。インクの顔料粒子の安定化などに関するいくつかの場合では、安定化する樹脂状化合物2を顔料粒子1に吸着させることによって安定化し、安定化する樹脂状化合物2の官能基5が、顔料に固定されることによって、顔料粒子が安定化されることが有益な場合がある。安定化する樹脂状化合物2のワックス状鎖3および/または4は、分子量およびインクキャリアとの混和性の両方について、安定化する樹脂状化合物が顔料粒子の凝集を防ぐのに有効な立体障壁を与えるような様式で、最適になるように選択される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、下式の化合物
【化1】


またはその塩に関し、
は、−XC(O)OR、−XOC(O)Rまたは−XOHであり、
は、R、−C(O)R、−C(O)XC(O)OR、または−C(O)XOC(O)Rであり、
は、炭素原子を10〜80個有するアルキルであり、
は、独立して、炭素原子を2〜40個有するアルキルであり、
およびRは、それぞれ独立して、水素、アルキル、アリールアルキルまたはアルキルアリールであり、Rが、Rと同じ窒素原子に接続している場合、Rと接続して環を形成していてもよく、
各Rおよび各Rは、独立して、水素またはアルキルであり、
は、式(CRt1を有する直鎖または分枝鎖のアルキレン基、または式(CRt2−Ar−(CRt3を有する直鎖または分枝鎖の芳香族アルキレン基であり、
は、式(CR10u1を有する直鎖または分枝鎖のアルキレン基、または式(CR10u2−Ar−(CR10u3を有する直鎖または分枝鎖の芳香族アルキレン基であり、
t1は、1〜20の整数であり、
t2およびt3は、独立して、0〜20の整数であり、
u1は、1〜30の整数であり、
u2およびu3は、独立して、0〜30の整数であり、
各Rおよび各Rは、独立して、水素、アルキル、アルコキシルであるか、または、隣接する炭素原子上の任意の2個のRがあわさって、構造(CR=CR)を有するアルケンを形成し、
各Rおよび各R10は、独立して、水素、アルキルまたはアルコキシルであり、
Arは、置換されているか、または置換されていない芳香族部分であり、
pは、1〜5の整数であり、
qは、1〜12の整数である。
【0007】
いくつかの実施形態では、Gは、−XC(O)ORである。ある特定の実施形態では、Gは、−XOC(O)Rである。ある特定の実施形態では、Gは、−C(O)Rである。ある特定の実施形態では、Gは、−C(O)XC(O)ORである。ある特定の実施形態では、Gは、−C(O)XOC(O)Rである。
【0008】
いくつかの実施形態では、Rは、炭素原子を30〜50個含むアルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、炭素原子を4〜20個含むアルキルである。いくつかの実施形態では、Xは、式(CRt1を有する直鎖または分枝鎖のアルキレン基である。いくつかの実施形態では、Xは、式(CR10u1を有する直鎖または分枝鎖のアルキレン基である。一実施形態では、Rは、水素である。一実施形態では、Gは、Rである。一実施形態では、Rは、水素である。一実施形態では、Rは、アルキルである。一実施形態では、Rは、メチルである。一実施形態では、各Rおよび各Rは、水素である。いくつかの実施形態では、pは、2〜3の整数である。いくつかの実施形態では、qは、1〜8の整数である。
【0009】
いくつかの実施形態では、樹脂状化合物は、下式を有するか、
【化2】


またはその塩であり、式中、
は、炭素原子を10〜80個有するアルキルであり、
およびRは、それぞれ独立して、水素、アルキル、アリールアルキルまたはアルキルアリールであり、Rが、Rと同じ窒素原子に接続している場合、Rと接続して環を形成していてもよく、
各Rおよび各Rは、独立して、水素またはアルキルであり、
は、式(CRt1を有する直鎖または分枝鎖のアルキレン基、または式(CRt2−Ar−(CRt3を有する直鎖または分枝鎖の芳香族アルキレン基であり、
t1は、1〜20の整数であり、
t2およびt3は、独立して、0〜20の整数であり、
各Rおよび各Rは、独立して、水素、アルキル、アルコキシルであり、
Arは、置換されているか、または置換されていない芳香族部分であり、
pは、1〜5の整数であり、
qは、1〜12の整数である。
【0010】
いくつかの実施形態では、樹脂状化合物は、融点が約50℃〜約150℃である。いくつかの実施形態では、樹脂状化合物は、分子量が約700〜約1500ダルトンである。
【0011】
いくつかの実施形態では、樹脂状化合物は、下式を有し、
【化3】


式中、
は、−XC(O)OR、−XOC(O)R、または−XOHであり、
は、R12、−C(O)R、−C(O)XC(O)OR、または−C(O)XOC(O)Rであり、
は、炭素原子を10〜80個有するアルキルであり、
は、独立して、炭素原子を2〜40個有するアルキルであり、
各Rは、独立して、水素、アルキル、アリールアルキルまたはアルキルアリールであり、
11およびR12は、それぞれ独立して、アルキル、アリールアルキル、アルキルアリールであるか、または、R11とR12とが接続して環を形成していてもよく、
各Rおよび各Rは、独立して、水素または低級アルキルであり、
は、式(CRt1を有する直鎖または分枝鎖のアルキレン基、または式(CRt2−Ar−(CRt3を有する直鎖または分枝鎖の芳香族アルキレン基であり、
は、式(CR10u1を有する直鎖または分枝鎖のアルキレン基、または式(CR10u2−Ar−(CR10u3を有する直鎖または分枝鎖の芳香族アルキレン基、
t1は、1〜20の整数であり、
t2およびt3は、独立して、0〜20の整数であり、
u1は、1〜30の整数であり、
u2およびu3は、独立して、0〜30の整数であり、
各Rおよび各Rは、独立して、水素、アルキル、アルコキシルであり、
各Rおよび各R10は、独立して、水素、アルキルまたはアルコキシルであり、
Arは、置換されているか、または置換されていない芳香族部分であり、
pは、1〜5の整数であり、
qは、1〜12の整数であり、
は、Cl、Br、I、HSO、HSO、CHSO、NO、HCOO、CHCOO、HPO、SCN、BF、ClO、SSO、PF、SbClからなる群から選択され、
Jは、アルキル、アリールアルキル、またはアルキルアリールである。一実施形態では、Jはメチルである。
【0012】
ある特定の実施形態では、Gは、−XC(O)ORである。
【0013】
ある特定の実施形態では、R11およびR12は、独立して、メチルまたはエチルである。
【0014】
いくつかの実施形態では、本開示の樹脂状化合物は、分子量が、約700〜約1500ダルトン、または約900〜約1200ダルトンの低分子量オリゴマー分散剤である。いくつかの実施形態では、本開示の樹脂状化合物は、融点が約50℃〜約150℃、約70℃〜約120℃、または約90℃〜約115℃であり、インク(例えば、固体インクジェットインク)に組み込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】顔料粒子に固定している顔料を安定化する樹脂状化合物を示す図である。
【図2】実施例2の化合物番号1のIRスペクトルを示すである。
【図3】実施例2の化合物番号1のエステル酸中間体である9−((オクタテトラコンチルオキシ)カルボニル)ノナン酸のIRスペクトルを示す図である。
【図4】実施例7の化合物番号5のIRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(定義)
用語「アルキレン」は、直鎖または分枝鎖の鎖である炭化水素基を指す。アルキレン基は、場合により、例えば、ヒドロカルビル置換基またはヘテロヒドロカルビル置換基で置換されていてもよい。用語「ヒドロカルビル」は、1個以上の炭素原子と、1個以上の水素原子とを有する置換基を指し、用語「ヘテロヒドロカルビル」は、1個以上の炭素原子と、1個以上の水素原子と、1個以上のヘテロ原子(すなわち、炭素でもなく、水素でもない1個以上の原子)とを有する置換基を指す。用語「芳香族アルキレン」は、芳香族部分を含む、直鎖または分枝鎖の鎖である炭化水素基を指す。「場合により置換された」基の置換基としては、限定されないが、以下の基または特定の示されている基の群からなる群から独立して選択される1個以上の置換基が挙げられる。低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、低級アルカノイル、低級ヘテロアルキル、低級ヘテロシクロアルキル、低級ハロアルキル、低級ハロアルケニル、低級ハロアルキニル、低級ペルハロアルキル、低級ペルハロアルコキシ、低級シクロアルキル、フェニル、アリール、アリールオキシ、低級アルコキシ、低級ハロアルコキシ、オキソ、低級アシルオキシ、カルボニル、カルボキシル、低級アルキルカルボニル、低級カルボキシエステル、低級カルボキサミド、シアノ、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、低級アルキルアミノ、アリールアミノ、アミド、ニトロ、チオール、低級アルキルチオ、アリールチオ、低級アルキルスルフィニル、低級アルキルスルホニル、アリールスルフィニル、アリールスルホニル、アリールチオ、スルホネート、スルホン酸、三置換シリル、N、SH、SCH、C(O)CH、COCH、COH、ピリジニル、チオフェン、フラニル、低級カルバメート、低級尿素。
【0017】
用語「脂肪族」は、芳香族ではなく、芳香族成分を含まない化学部分を記述する。脂肪族鎖は、直鎖、分岐、環状、飽和または部分的に不飽和のヒドロカルビル基であってもよく、アルキレン基、例えば、ポリメチレン基(例えば、−(CH−)(nは、1〜約100の整数である)、シクロアルキレン基が挙げられる。アルキレン基は、置換されていてもよく、置換されていなくてもよい。適切なアルキレン置換基としては、ヒドロキシル基およびハロゲン基(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)が挙げられる。また、アルキレン基は、場合により、1箇所以上で、酸素原子、窒素原子または硫黄原子のようなヘテロ原子で中断されていてもよい。また、脂肪族スペーサー基は、部分的に不飽和な基であってもよく、例えば、置換されているか、または置換されていないC〜C100アルケニレン基、または1箇所以上でヘテロ原子によって中断されているC〜C100アルケニレン基であってもよい。
【0018】
用語「アルキル」は、直鎖または分枝鎖のアルキル基を指す。アルキル基は、本明細書に定義されているように、場合により置換されていてもよい。用語「低級アルキル」は、炭素原子が1〜8個、または1〜6個、または1〜3個の直鎖または分枝鎖のアルキル基を指す。
【0019】
用語「アリールアルキル」は、アルキル基を介して親分子部分に接続するアリール基を指す。
【0020】
用語「アルキルアリール」は、アリールを介して親分子部分に接続するアルキル基を指す。
【0021】
用語「芳香族」は、単独で、または別の基の一部分として本明細書で使用される場合、場合により置換されたホモ環またはヘテロ環の芳香族基を示す。これらの芳香族基は、環部分に5〜12個の原子を含む単環基または二環基であってもよい。用語「芳香族」は、以下に定義される「アリール」基および「ヘテロアリール」基を包含する。
【0022】
用語「アリール」は、単独で、または別の基の一部分として本明細書で使用される場合、場合により置換されたホモ環の芳香族基を示し、好ましくは、環部分に5〜12個の原子を含む単環基または二環基を示す(例えば、フェニル、ビフェニル、ナフチル、置換フェニル、置換ビフェニルまたは置換ナフチル)。
【0023】
本実施形態の分子に関する実施形態は、当業者に既知の標準的な合成技術を用いて合成することができる。本実施形態の樹脂状化合物は、スキームI〜VIに記載の一般的な合成手順を用いて合成することができる。
【0024】
【化4】

【0025】
いくつかの実施形態では、樹脂状化合物は、まず、脂肪族長鎖アルコール(R−OH)または(R’−OH)(2または2’)と、ジカルボン酸(HOC(O)XC(O)OH)または(HOC(O)X1’C(O)OH)(1または1’)とを反応させ、エステル−酸中間体(3または3’)を得て、次いで、このエステル酸中間体(3または3’)と、ジアミン(HN−[(CR−NR−H)(4)を反応させることによって、スキームIにしたがって調製することができる。ここで、RまたはR’は、独立して、炭素原子が約10〜約80個、約20〜約60個、約30〜50個有するアルキル基であり、各Rおよび各Rは、独立して、水素、または低級アルキルのようなアルキルまたは水素であり、pは、アルキレン繰り返し単位の数をあらわし、1〜5、または2〜3であってもよく、qは、アルキレンアミン繰り返し単位の数をあらわし、1〜10、1〜8、または1〜4であってもよく、各Rは、独立して、水素、アルキル、アリールアルキルまたはアルキルアリールであり、一実施形態では、各Rは、水素であってもよく、一実施形態では、末端窒素に接続したRは水素ではなく、アルキル、例えば、メチルであってもよく、いくつかの実施形態では、Xまたは1’は、独立して、直鎖または分枝鎖のアルキレン基であり、一実施形態では、Xは、式(CRt1を有する直鎖または分枝鎖のアルキレン基であり、いくつかの実施形態では、Xまたは1’は、独立して、式(CRt2−Ar−(CRt3を有する直鎖または分枝鎖の芳香族アルキレン基であり、t1は、1〜20、3〜15、または5〜10の整数であり、t2およびt3は、独立して、0〜20、0〜10、または1〜5の整数であり、各Rおよび各Rは、独立して、水素、アルキル、またはアルコキシルであり、Arは、置換されているか、または置換されていない芳香族部分である(ベンジル、フェニル、ナフチル、ビフェニルなどを含む)。一実施形態では、各Rおよび各Rのうち、少なくとも1つが低級アルキルであるか、または、各Rおよび各Rは水素である。
【0026】
本実施形態で有用な長鎖アルコール2または2’は、飽和または不飽和の直鎖、または飽和または不飽和の分枝鎖に炭素原子を少なくとも10個有しており、テトラデカノール、ウンデカノール、ステアリルアルコール、2−デカノール、デカノール、2−ドデカノール、トリデカノール、ヘキサデカノール、2−ウンデカノール、2−テトラデカノール、ヘプタデカノール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、セチルアルコール、ミリスチルアルコール、ラウリルアルコール、ヘキサデシルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、カプリルアルコール、ヘンエイコサン−1−オール、ドコサン−1−オール、トリコサン−1−オール、テトラコサン−1−オール、ペンタコサン−1−オール、ヘキサコサン−1−オール、ヘプタキソサン−1−オール、オクタコサン−1−オール、ノナコサン−1−オール、トリアコンタン−1−オール、ヘントリアコンタン−1−オール、ドトリアコンタン−1−オール、トリトリアコンタン−1−オール、テトラトリアコンタン−1−オール、ヘキサトリアコンタン−1−オール、ヘプタトリアコンタン−1−オール、オクタトリアコンタン−1−オール、ノナトリアコンタン−1−オール、テトラコンタン−1−オール、ヘンテトラコンタン−1−オール、ドテトラコンタン−1−オール、トリテトラコンタン−1−オール、テトラテトラコンタン−1−オール、ペンタテトラコンタン−1−オール、ヘキサテトラコンタン−1−オール、ヘプタテトラコンタン−1−オール、オクタテトラコンタン−1−オール、2−ヘキシル−1−デカノール、2−オクチル−1−ドデカノールが挙げられる。炭素原子を48個有するUNILIN 700アルコールを、本実施形態で用いてもよい。
【0027】
エステル−酸中間体を調製する際に、任意の適切なジカルボン酸を用いてもよく、例えば、シュウ酸(エタン二酸)、マロン酸(プロパン二酸)、コハク酸(ブタン二酸)、グルタル酸(ペンタン二酸)、アジピン酸(ヘキサン二酸)、ピメリン酸(ヘプタン二酸、スベリン酸(オクタン二酸)、アゼライン酸(ノナン二酸)、セバシン酸(デカン二酸)、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸(トリデカン二酸)、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、タプス酸(デキサデカン二酸)、オクタデカン二酸が挙げられる。少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有するジカルボン酸の非限定的な例としては、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、シトラコン酸が挙げられる。エステル−酸中間体を調製するのに適切な芳香族二酸の非限定的な例としては、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、例えば、2,6−ナフタレンジカルボン酸、チアントレン二酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸などが挙げられる。
【0028】
いくつかの実施形態では、エステル−酸中間体3は、1モル当量より多い脂肪族長鎖アルコール2と、1当量のジカルボン酸1とを反応させることによって調製される。いくつかの実施形態では、エステル−酸中間体2は、少なくとも1〜約5モル当量の脂肪族長鎖アルコール2と、1当量のジカルボン酸1とを反応させることによって調製される。
【0029】
いくつかの実施形態では、ジアミン4は、アルキレン単位を約10個まで、または1〜6個、2〜4個、または2〜4個含むポリアルキレンポリアミンであってもよい。ポリエチレンポリアミンは、エチレン単位を2〜約10個含む一連のエチレンジアミンである。ポリエチレンポリアミンの例としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ヘプタエチレンオクタミン、ノナエチレンデカミン、ペンタエチレンヘキサミン、エチレンイミンE−100などが挙げられる。ポリプロピレンポリアミンは、プロピレン単位を2〜10個含む一連のプロピレンジアミンである。他の実施形態では、ジアミン4は、アルキル化ジアミンであってもよく、例えば、1,6−ヘキシルジアミン、1,8−オクチルジアミン、1,10−デシルジアミン、1,12−ドデシルジアミン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)−メタン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、cis−1,5−ジアミノシクロオクタンであってもよい。さらに他の実施形態では、ジアミン4は、芳香族ジアミンであってもよく、例えば、1,2−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、1,4−ジアミノベンゼン、ナフタレン−1,4−ジアミン、ナフタレン−1,5−ジアミン、ナフタレン−1,8−ジアミン、ナフタレン−2,3−ジアミン、p−キシリレンジアミン、[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン、ビス−(4−アミノフェニル)−メタンであってもよく、ジアミン4は、他の実施形態では、ポリエーテルジアミン、例えば、4,7,10−トリオキサトリデカン−1,13−ジアミン、3M Company製のDynamar(商標)ポリエーテルジアミンHC1101、Huntsman Corporation製の末端がジアミンのポリプロピレングリコールであるJEFFAMINE D Seriesであってもよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、脂肪族長鎖アルコールと、ジカルボン酸との上述の反応は、沸点が約80℃〜約200℃、または約100℃〜約130℃の高沸点溶媒中で行われる。この反応に適した高沸点溶媒の非限定的な例は、水、トルエン、キシレン、ベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAまたはDMAc)、およびこれらの混合物である。適切な脂肪族共溶媒は、示している物質の溶解を助けるように選択されてもよい。例えば、高沸点溶媒と組み合わせて使用するのに適した共溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、アセトニトリル、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0031】
いくつかの実施形態では、脂肪族長鎖アルコールとジカルボン酸との反応は、触媒存在下で行われる。上述の反応に適した触媒の非限定的な例は、FASCAT 4100、FASCAT 4350、FASCAT 9100である。
【0032】
次いで、エステル酸中間体3をジアミン4と反応させ、樹脂状化合物5および6を得る。片方の末端に長鎖脂肪族の尾部を有する樹脂状化合物5は、1モル当量のエステル酸中間体3と、2モル当量のジアミン4とを反応させることによって調製することができる(スキームI(a))。両端に同じ長鎖脂肪族の尾部を有する樹脂状化合物6は、1モル当量のエステル酸中間体3と、2モル当量のジアミン4とを反応させることによって調製することができる(スキームI(b))。異なる長鎖脂肪族の尾部をそれぞれの端に有する樹脂状化合物7は、1モル当量の樹脂状化合物6と、1モル当量の異なるエステル−酸中間体3’とを反応させることによって調製することができる(スキームI(c))。
【0033】
【化5】

【0034】
いくつかの実施形態では、樹脂状化合物は、まず、酸−アルコール(HOXC(O)OH)8と、ジアミン(HN−[(CR−NR−H)4とを反応させ、アミド−アルコール中間体9または12を得ることによってスキームIIにしたがって調製することができる。ここで、R、R、R、p、qは、上に定義されるとおりであり、いくつかの実施形態では、Xは、式(CR10u1を有する直鎖または分枝鎖のアルキレン基であり、いくつかの実施形態では、Xは、式(CR10u2−Ar−(CR10u3を有する直鎖または分枝鎖の芳香族アルキレン基であり、u1は、1〜30、5〜20、または8〜16の整数であり、u2およびu3は、独立して、0〜30、0〜10、または1〜5の整数であり、各Rおよび各R10は、独立して、水素、アルキル、またはアルコキシルであってもよく、Arは、置換されているか、または置換されていない芳香族部分である(ベンジル、フェニル、ナフチル、ビフェェニルなどを含む)。一実施形態では、各Rおよび各R10のうち、少なくとも1つが低級アルキルである。任意の適切な酸−アルコール8を、アミド−アルコール中間体9または12を調製するのに使用してもよい。特に、本実施形態で使用するのに適した酸−アルコール8としては、ω−ヒドロキシ酸が挙げられる。ω−ヒドロキシ酸は、炭素原子n個の長さを有し、1位にカルボキシル基と、n位にヒドロキシル基とを有する、天然に存在する直鎖脂肪族有機酸の一種である。酸−アルコール8の非限定的な例としては、2−ヒドロキシ酢酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、4−ヒドロキシブタン酸、5−ヒドロキシペンタン酸、6−ヒドロキシヘキサン酸、7−ヒドロキシヘプタン酸、8−ヒドロキシオクタン酸、9−ヒドロキシノナン酸、10−ヒドロキシデカン酸、11−ヒドロキシウンデカン酸、12−ヒドロキシドデカン酸、13−ヒドロキシトリデカン酸、14−ヒドロキシテトラデカン酸、15−ヒドロキシペンタデカン酸、16−ヒドロキシヘキサデカン酸、17−ヒドロキシヘプタデカン酸、18−ヒドロキシオクタデカン酸が挙げられる。芳香族ヒドロキシルカルボン酸の非限定的な適切な例としては、2−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−5−メチル安息香酸、(3−ヒドロキシフェニル)酢酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、4’−ヒドロキシビフェニル−4−カルボン酸が挙げられる。
【0035】
アルコール末端基と、アミノ末端基とをそれぞれの端に有するアミド−アルコール中間体9は、1モル当量の酸−アルコール8と、1モル当量のジアミン4とを反応させることによって調製することができる(スキームII(a))。両端にアルコール末端基を有するアミド−アルコール中間体12は、2モル当量の酸−アルコール8と、1モル当量のジアミン4とを反応させることによって調製することができる(スキームII(b))。
【0036】
樹脂状化合物11および13は、アミド−アルコール中間体9または12と、長鎖モノカルボン酸(RCOOH)10とを反応させることによって調製することができ、ここで、Rは、炭素原子が約2〜約40個、約4〜約20個、約6〜10個のアルキル基である。樹脂状化合物11は、1モル当量のアミド−アルコール中間体9と、1モル当量の長鎖モノカルボン酸(RCOOH)10とを反応させることによって調製することができる。樹脂状化合物13は、1モル当量のアミド−アルコール中間体12と、1モル当量の長鎖モノカルボン酸(RCOOH)10とを反応させることによって調製することができる。
【0037】
【化6】

【0038】
樹脂状化合物の塩16は、まず、エステル−酸中間体3と、官能化ジアミン(HN−[(CR− NRq−1−(CR−NR1112)14とを反応させて樹脂状化合物15を得て、次いで、樹脂状化合物15を塩析剤(JA)で処理することによって調製することができ、ここで、R、R、R、R、p、qは、上に定義されるとおりであり、R11およびR12は、独立して、アルキル、アリールアルキルまたはアルキルアリールであり、一実施形態では、R11もR12も、低級アルキル、例えば、メチルである。この反応に適した塩析剤の非限定的な例としては、ジメチルサルフェートが挙げられる。AΘは、アニオンであり、適切なアニオンの例としては、限定されないが、Cl、Br、I、HSO、HSO、CHSO、NO、HCOO、CHCOO、HPO、SCN、BF、ClO、SSO、PF、SbClなどが挙げられる。Jは、アルキル、アリールアルキルまたはアルキルアリールである。いくつかの実施形態では、Jは、低級アルキル、例えば、メチル基またはエチル基である。
【0039】
ジアミン14は、ジアミン4と似ているが、ただし、ジアミン14は、分子の片方の端に末端三級アミンを含んでいる。ジアミン14は、アルキレン単位を約10個まで含んでいるか、または1〜6個、2〜4個、または2〜4個含むポリアルキレンポリアミンであってもよい。ポリエチレンポリアミンは、エチレン単位を2〜約10個含む一連のエチレンジアミンである。ポリプロピレンポリアミンの例としては、N−メチル−1,3−プロパンジアミンなどが挙げられる。ポリプロピレンポリアミンの特定の例としては、Huntsman製のEthylenimine E−100、Aldrich製のMw=25,000およびMw=800のポリエチレンイミンが挙げられる。
【0040】
【化7】

【0041】
一実施形態では、樹脂状化合物15をジメチルサルフェートで処理し、樹脂状化合物16’を得ることができる。R、R、R、R、R11、R12、p、qは、上に定義されるとおりである。
【0042】
【化8】

【0043】
樹脂状化合物の塩19は、まず、酸−アルコール中間体8と、官能化ジアミン(HN−[(CR−NR11−R12)14とを反応させてアミド−アルコール中間体17を得て、次いで、アミド−アルコール中間体17と、長鎖モノカルボン酸10とを反応させて樹脂状化合物18を得て、最後に、樹脂状化合物18と塩析剤とを反応させることによって調製することができる。R、R、R、R、R11、R12、p、q、A、Jは、上に定義されるとおりである。
【0044】
【化9】

【0045】
一実施形態では、樹脂状化合物18を、ジメチルサルフェートで処理し、樹脂状化合物19’を得ることができる。R、R、R、R、R11、R12、p、qは、上に定義されるとおりである。
【実施例】
【0046】
(一般的な方法)
化合物サンプルの赤外線(IR)スペクトル測定は、FTIR Microscopeの透過モードで、ダイアモンドセルを用いて行った。
−Spectro−Tech Micro Sample Plan with Diamond Window,P.N.0042−444
−NicPlan IR Microscope、MCT/A検出器、100スキャン @ 4cm−1 Reflectachromat(商標) 対物15倍を取り付けたもの。
【0047】
示差走査熱量測定(DSC)技術によるデータを、各サンプルを−20℃から200℃まで加熱および冷却の速度10℃/分で加熱し、冷却して、TA Instrumentsから入手可能なQ−1000装置から得た。結晶化の熱データを第1の冷却加熱サイクルから得て、溶融データを、第2の加熱サイクルから得た。
【0048】
(実施例1)
スキームIにしたがって化合物を調製する一般的な方法
エステル化(エステル−酸中間体の調製)−1L樹脂製ケトルに機械撹拌と、加熱マントルと、温度コントローラーと、アルゴン注入口と、Dean−Starkトラップと、還流コンデンサとを取り付け、わずかに過剰量のBaker Petrolite製のUNILIN 700樹脂と、トルエン溶媒と、触媒と、対応する量のセバシン酸とを入れた。アルゴンを流しつつ、ケトル内の温度を100℃まで上げ、UNILIN 700樹脂を溶融させた。反応混合物が均一になった(UNILIN 700が完全に溶融した)ら、撹拌しつつ、温度を120℃まで徐々に上げ、滴定結果によって、反応を26〜30時間進めた。Dean−Starkトラップに水を集めた。酸価が一定値になったら、温度を140℃まで上げ、トルエンを留去した。蒸留終了時に、反応を停止させ、ケトルを空にした。
【0049】
アミド結合の生成−この実施例の工程1に記載したのと同じ設定を用い、ケトルに、エステル−酸中間体(または前駆体)と、対応する量のジアミンを入れた。アルゴンを流しつつ、ケトル内の温度を100℃まで上げ、化合物の混合物を溶融させた。反応混合物が均一になったら、撹拌しつつ、温度を180℃まで徐々に上げ、滴定結果によって示されるとおりに、反応を5時間進めた。Dean−Starkトラップに水を集めた。ケトルを冷却し、生成物をアルミニウムトレイに取りだした。
【0050】
(実施例2)
化合物番号1、オクタテトラコンチル 9−(2−(2−(2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ)エチルアミノ)エチルカルバモイル)ノナノエートの調製(試薬:UNILIN 700:セバシン酸:TEPA(1:1:1)を用いる)
【0051】
工程1(エステル化−エステル−酸中間体9−((オクタテトラコンチルオキシ)カルボニル)ノナン酸):
【化10】

【0052】
1L樹脂製ケトルに機械撹拌と、加熱マントルと、温度コントローラーと、アルゴン注入口と、Dean−Starkトラップと、還流コンデンサとを取り付け、375.6gのBaker Petrolite製のUNILIN 700樹脂と、100gのセバシン酸(Aldrich)と、0.1gのFASCAT 4100とを入れた。アルゴンを流しつつ、ケトル内の温度を100℃まで上げ、成分を溶融させた。反応混合物が均一になったら、撹拌しつつ、温度を180℃まで上げ、反応を26時間進めた。Dean−Starkトラップに水(3mL)を集めた。反応を停止させ、100℃まで冷却し、ベージュ色の樹脂状生成物(210g、50%)をアルミニウムトレイに取りだした。この中間体化合物について決定した酸価は、65.02であった。
【0053】
工程2(アミド結合生成−化合物番号1、オクタテトラコンチル 9−(2−(2−(2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ)エチルアミノ)エチルカルバモイル)ノナノエート、MW=1046):
【化11】

【0054】
この実施例の工程1に記載したのと同じ設定を用い、ケトルに、103.54gのエステル−酸中間体および22.68gのTEPAを入れた。アルゴンを流しつつ、ケトル内の温度を100℃まで上げ、化合物の混合物を溶融させた。反応混合物が均一になったら、撹拌しつつ、温度を180℃まで徐々に上げ、滴定結果によって示されるとおりに、反応を5時間進めた。Dean−Starkトラップに水(2mL)を集めた。ケトルを冷却し、生成物とエラストマー(底部に沈降)の混合物を含むケトル内容物を容器に取り出した。生成物(上部)をデカンテーションした後、3成分樹脂66g(54%)を得た。
【0055】
(実施例3)
化合物番号2、オクタテトラコンチル 9−(3−(メチルアミノ)プロピルカルバモイル)ノナノエート(試薬:UNILIN 700:セバシン酸:N−メチル−1,3−プロパンジアミン(1:1:1)を用いる)
【0056】
工程1 (エステル化−エステル−酸中間体9−((オクタテトラコンチルオキシ)カルボニル)ノナン酸):
【化12】

【0057】
エステル−酸を実施例2の工程1に記載した手順にしたがって調製した。
【0058】
工程2(アミド結合生成−化合物番号2、オクタテトラコンチル 9−(3−(メチルアミノ)プロピルカルバモイル)ノナノエート、MW=945):
【化13】


エステル化と同じ設定を用い、ケトルに、103.54gのエステル−酸中間体と、10.58gのN−メチル−1,3−プロパンジアミンとを入れた。アルゴンを流しつつ、ケトル内の温度を100℃まで上げ、成分を溶融させた。反応混合物が均一になったら、撹拌しつつ、温度を180℃まで上げ、滴定結果によって示されるとおりに、反応を5時間進めた。Dean−Starkトラップに水(2mL)を集めた。ケトルを冷却し、生成物とエラストマー(底部に沈降)の混合物を含むケトル内容物を容器に取り出した。生成物(上部)をデカンテーションした後、3成分樹脂80g(71%)を得た。
【0059】
(実施例4)
化合物番号3、オクタテトラコンチル 9−(2−アミノエチルカルバモイル)ノナノエートの調製の調製(試薬:UNILIN 700:セバシン酸:Ethylenimine E−100(1:1:1)を用いる)
工程1(エステル化−エステル−酸中間体9−((オクタテトラコンチルオキシ)カルボニル)ノナン酸):
【化14】

【0060】
1L樹脂製ケトルに機械撹拌と、加熱マントルと、温度コントローラーと、アルゴン注入口と、Dean−Starkトラップと、還流コンデンサとを取り付け、Baker Petrolite製のUNILIN 700樹脂(353.3g)と、セバシン酸(94g)と、トルエン(500mL)と、FASCAT 4100(1.1g)とを入れた。アルゴンを流しつつ、ケトル内の温度を100℃まで上げ、成分を溶融させた。反応混合物が均一になったら、撹拌しつつ、温度を120℃まで上げ、反応を26時間進めた。Dean−Starkトラップに水(3mL)を集めた。ケトル内の温度を130℃まで上げ、トルエンを蒸留した。蒸留終了時に、反応を停止させ、100℃まで冷却し、ベージュ色の樹脂状生成物(310g、76%)をアルミニウムトレイに取りだした。この中間体化合物について決定した酸価は、65.02であった。
【0061】
工程2(アミド結合生成−化合物番号3):
【化15】

【0062】
この実施例の工程1に記載したのと同じ設定を用い、ケトルに、118.54gの上述の前駆体と、Ethylenimine E−100(31.8g)とを入れた。アルゴンを流しつつ、ケトル内の温度を100℃まで上げ、成分を溶融させた。反応混合物が均一になったら、撹拌しつつ、温度を180℃まで上げ、滴定結果によって示されるとおりに、反応を5時間進めた。Dean−Starkトラップに水(1.5mL)を集めた。ケトルを冷却し、生成物とエラストマー(底部に沈降)の混合物を含むケトル内容物を容器に取り出した。成物(上部)をデカンテーションした後、3成分樹脂70g(47%)を得た。
【0063】
(実施例5)
スキームIIIまたはIVにしたがって化合物を調製するための一般的な方法
化合物番号4の調製(試薬UNILIN 700:セバシン酸:N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン(1:1:1)を用いる)
1000mLの樹脂製ケトルに、加熱マントルと、温度コントローラーと、アルゴン注入口と、Dean−Starkトラップと、還流コンデンサとを取り付け、8.89gのN,Nジメチルプロパンジアミンと、95.7gのUnilin 700セバシン酸エステルとを入れた。アルゴンを流しつつ、ケトル内の温度を100℃まで上げ、化合物の混合物を溶融させた。反応混合物が均一になったら、撹拌しつつ、温度を180℃まで上げ、滴定結果によって示されるとおりに、反応を5時間進めた。Dean−Starkトラップに水を集めた。滴定によって反応が終了したと判断されたら、温度を120℃まで下げ、滴下漏斗によってジメチルサルフェート5mLを反応混合物に加えた。加え終わったら、反応をこの温度で1時間進めた。最後に、混合物の温度を180℃まで上げ、生成物を樹脂製ケトルから熱いままで取り出す。生成物をベージュ色固体として得た(98g)。
【0064】
(実施例6)
スキームIIにしたがって化合物を調製する一般的な方法
150mLの樹脂製ケトルに機械撹拌と、加熱マントルと、温度コントローラーと、アルゴン注入口と、Dean−Starkトラップと、還流コンデンサとを取り付け、上述のジアミンと、酸アルコール誘導体とを入れた。アルゴンを流しつつ、ケトル内の温度を100℃まで上げ、化合物の混合物を溶融させた。反応混合物が均一になったら、撹拌しつつ、温度を180℃まで上げ、滴定結果によって示されるとおりに、反応を5時間進めた。Dean−Starkトラップに水を集めた。滴定によって反応が終了したと判断されたら、第2の酸について同じ手順を繰り返す。滴定によって反応が終了したことが示されたら、反応を停止させ、生成物をアルミニウムトレイに取り出す。
【0065】
(実施例7)
化合物番号5の調製(試薬:12−ヒドロキシドデカン酸:TEPA:Unicid 700(1:1:1)を用いる)
【化16】

【0066】
150mLの樹脂製ケトルに機械撹拌と、加熱マントルと、温度コントローラーと、アルゴン注入口と、Dean−Starkトラップと、還流コンデンサとを取り付け、TEPA(12.29g)と、12−ヒドロキシドデカン酸(14.9g)とを入れた。アルゴンを流しつつ、ケトル内の温度を100℃まで上げ、化合物の混合物を溶融させた。反応混合物が均一になったら、撹拌しつつ、温度を180℃まで上げ、滴定結果によって示されるとおりに、反応を5時間進めた。Dean−Starkトラップに水(0.7mL)を集めた。この中間体の酸価は2.47であり、反応が終了していると判断され、反応を停止させた。Unicid 700(43g)について同じ手順を繰り返す。最終生成物を滴定することによって示された酸価は5.29であり、反応が終了していると判断され、反応を停止させた。生成物(60.49g、81%)をアルミニウムトレイに取り出した。化合物番号5のMWは、1088である。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【0069】
【表3】

【0070】
樹脂状化合物を示差走査熱量測定(DSC)、赤外線分光法(IR)、滴定によって特性決定し、酸価およびアミン価を決定した。上述の酸価およびアミン価、または生成した生成物の酸価およびアミン価を決定することによって、種々の反応の進行を評価することが簡便であった。酸価を決定するために、既知の量の生成物を、n−ブタノール、トルエン、イソプロピルアルコールの加熱した溶液と混合し、数滴のフェノール指示薬溶液を加え、次いで、規定度が既知のメタノール性水酸化カリウム溶液で滴定した。終点まで滴定を進め、酸価は、サンプル1gを中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数であると定義される。酸価=(A×N×56.1)/W。式中、Aは、滴定で消費された滴定剤の容積(mL)であり、Nは、水酸化カリウム溶液の規定度であり、Wは、滴定されるサンプルの重量である。アミン価を決定するために、既知の量の生成物を、n−ブタノール、トルエン、イソプロピルアルコールの加熱した溶液と混合し、数滴のフェノール指示薬溶液を加え、次いで、規定度が既知のメタノール性塩酸溶液で滴定した。終点まで滴定を進め、アミン価は、サンプル1gを中和するのに必要な塩酸のmg数であると定義される。アミン価=(A×N×36.5)/W。式中、Aは、滴定で消費された滴定剤の容積(mL)であり、Nは、塩酸溶液の規定度であり、Wは、滴定されるサンプルの重量である。
【0071】
反応物のサンプルを、1時間に1回抜き取り、サンプルの酸価およびアミン価を測定することによって、反応終了を評価した。エステル生成の場合、酸価は、120℃で数時間加熱した後でも一定値のままであり、反応は終了したと判断された。アミド結合生成の場合、酸価およびアミン価は、180℃で5時間加熱した後に、一定値のままであった。最終生成物のDSCおよび滴定の特性決定結果を表2に記載している。
【0072】
【表4】

【0073】
調製したサンプルのIRスペクトルを図2〜図4に示している。
【0074】
図2は、実施例2の化合物番号1のIRスペクトルを示す。領域10は、二級アミドのN−H伸縮バンド(3370〜3270cm−1)、二級アミン、一級アミンのNH伸縮バンド(3450〜3250cm−1)を示す。ピーク11は、脂肪族の非対称CH伸縮を示す。ピーク12は、脂肪族の対称CH伸縮を示す。ピーク13は、飽和脂肪族エステルのC=O伸縮を示す。ピーク14は、二級アミドのn個のC=O伸縮を示す(アミドIバンド)。ピーク15は、一級アミンに由来するN−H変形バンドを示す(1650〜1580cm−1)。ピーク16は、トランス型の−CO−NH−のN−H屈曲およびC−N伸縮を組み合わせた二級アミドを示す(アミドIIバンド)。また、ピーク16は、二級アミンのN−H変形も示す。ピーク17は、脂肪族鎖のCHハサミ型を示す。領域18は、脂肪族エステルのC−O−C伸縮、二級脂肪族アミンのC−N伸縮(2つのバンドは、1190〜1170cm−1と、1145〜1130cm−1)、一級アミンのC−N伸縮(1090〜1020cm−1)を示す。ピーク19は、CHロッキングを示す。
【0075】
図3は、実施例2の化合物番号1のエステル酸中間体9−((オクタテトラコンチルオキシ)カルボニル)ノナン酸のIRスペクトルを示す。領域20は、カルボン酸のブロードなOH伸縮を示す(3300〜2500cm−1)。ピーク21は、脂肪族の非対称CH伸縮を示す。ピーク22は、脂肪族の対称CH伸縮を示す。ピーク23は、飽和脂肪族エステルのC=O伸縮を示す。ピーク24は、カルボン酸のC=O伸縮を示す。ピーク25は、脂肪族鎖のCHハサミ型を示す。ピーク26は、おそらく、カルボン酸のC−O伸縮とO−H変形の組み合わせを示す(弱い1440〜1395cm−1)か、または、カルボン酸の−CH−CO−変形(1410〜1405cm−1)を示す。ピーク27は、CH対称変形を示す。領域28は、脂肪族エステルのC−O−C伸縮を示す。領域29は、カルボン酸のOH…Oの変形面の外側にあるため、ブロードな非対称バンド(またはH結合変形)を示す。
【0076】
化合物番号1、オクタテトラコンチル 9−(2−(2−(2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ)エチルアミノ)エチルカルバモイル)ノナノエートのIRスペクトル(図2)、およびそのエステル−酸中間体である9−((オクタテトラコンチルオキシ)カルボニル)ノナン酸のIRスペクトル(図3)から、化合物番号1が生成していることがわかる。エステル−酸中間体のIRスペクトルから、カルボン酸に由来するカルボニルに対応する1707cm−1のピークと、エステル基に由来するカルボニルに対応する1737cm−1のピークとが存在することが示され、一方、化合物番号1のIRスペクトルから、カルボン酸カルボニルに対応するピークが、アミドカルボニルに対応する1656cm−1のピークに置き換わっていることが示される。
【0077】
図4は、実施例7の化合物番号5のIRスペクトルを示す。領域40は、二級アミドのN−H伸縮バンド(3370〜3270cm−1)、二級アミン、一級アミンのNH伸縮バンド(3450〜3250cm−1)を示す。ピーク41は、脂肪族の非対称CH伸縮を示す。ピーク42は、脂肪族の対称CH伸縮を示す。ピーク43は、二級アミドのC=O伸縮を示す(アミドIバンド)。ピーク44は、トランス型の−CO−NH−のN−H屈曲およびC−N伸縮を組み合わせた二級アミドを示す(アミドIIバンド)。また、ピーク44は、二級アミンのN−H変形も示す。ピーク45は、脂肪族鎖のCHハサミ型を示す。領域46は、二級アミンのCN伸縮を示す。ピーク47は、CHロッキングを示す。
【0078】
化合物番号5のIRスペクトル(図4)から、二級アミドのC=O伸縮(アミドI)バンドに対応する1656cm−1のピークと、2914cm−1(非対称)および2849cm−1(対称)付近のアルカンのCH伸縮バンドとが存在することが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式の樹脂状化合物
【化1】


またはその塩であって、式中、
は、−XC(O)OR、−XOC(O)Rまたは−XOHであり、
は、R、−C(O)R、−C(O)XC(O)OR、または−C(O)XOC(O)Rであり、
は、炭素原子を10〜80個有するアルキルであり、
は、炭素原子を2〜40個有するアルキルであり、
およびRは、それぞれ独立して、水素、アルキル、アリールアルキルまたはアルキルアリールであり、Rが、Rと同じ窒素原子に接続している場合、Rと接続して環を形成していてもよく、
各Rおよび各Rは、独立して、水素またはアルキルであり、
は、式(CRt1を有する直鎖または分枝鎖のアルキレン基、または式(CRt2−Ar−(CRt3を有する直鎖または分枝鎖の芳香族アルキレン基であり、
は、式(CR10u1を有する直鎖または分枝鎖のアルキレン基、または式(CR10u2−Ar−(CR10u3を有する直鎖または分枝鎖の芳香族アルキレン基であり、
t1は、1〜20の整数であり、
t2およびt3は、独立して、0〜20の整数であり、
u1は、1〜30の整数であり、
u2およびu3は、独立して、0〜30の整数であり、
各Rおよび各Rは、独立して、水素、アルキル、またはアルコキシルであり、
各Rおよび各R10は、独立して、水素、アルキルまたはアルコキシルであり、
Arは、置換されているか、または置換されていない芳香族部分であり、
pは、1〜5の整数であり、
qは、1〜12の整数である、樹脂状化合物。
【請求項2】
が−XC(O)ORである、請求項1に記載の樹脂状化合物。
【請求項3】
が、炭素原子を30〜50個含むアルキルである、請求項1に記載の樹脂状化合物。
【請求項4】
が、炭素原子を4〜20個含むアルキルである、請求項1に記載の樹脂状化合物。
【請求項5】
各Rが水素である、請求項1に記載の樹脂状化合物。
【請求項6】
がRである、請求項1に記載の樹脂状化合物。
【請求項7】
が水素である、請求項6に記載の樹脂状化合物。
【請求項8】
がアルキルである、請求項6に記載の樹脂状化合物。
【請求項9】
がメチルである、請求項8に記載の樹脂状化合物。
【請求項10】
各Rおよび各Rが水素である、請求項1に記載の樹脂状化合物。
【請求項11】
pが、2〜3の整数である、請求項1に記載の樹脂状化合物。
【請求項12】
qが、1〜8の整数である、請求項1に記載の樹脂状化合物。
【請求項13】
下式を有するか、
【化2】


またはその塩であり、式中、
は、炭素原子を10〜80個有するアルキルであり、
およびRは、それぞれ独立して、水素、アルキル、アリールアルキルまたはアルキルアリールであり、Rが、Rと同じ窒素原子に接続している場合、Rと接続して環を形成していてもよく、
各Rおよび各Rは、独立して、水素またはアルキルであり、
は、式(CRt1を有する直鎖または分枝鎖のアルキレン基、または式(CRt2−Ar−(CRt3を有する直鎖または分枝鎖の芳香族アルキレン基であり、
t1は、1〜20の整数であり、
t2およびt3は、独立して、0〜20の整数であり、
各Rおよび各Rは、独立して、水素、アルキル、またはアルコキシルであり、
Arは、置換されているか、または置換されていない芳香族部分であり、
pは、1〜5の整数であり、
qは、1〜12の整数である、請求項1に記載の樹脂状化合物。
【請求項14】
約50℃〜約150℃の融点を有する、請求項1に記載の樹脂状化合物。
【請求項15】
約700〜約1500ダルトンの分子量を有する、請求項1に記載の樹脂状化合物。
【請求項16】
下式の樹脂状化合物の塩であって、
【化3】


式中、
は、−XC(O)OR、−XOC(O)Rまたは−XOHであり、
は、R12、−C(O)R、−C(O)XC(O)OR、または−C(O)XOC(O)Rであり、
は、炭素原子を10〜80個有するアルキルであり、
は、炭素原子を2〜40個有するアルキルであり、
各Rは、独立して、水素、アルキル、アリールアルキルまたはアルキルアリールであり、
11およびR12は、それぞれ独立して、アルキル、アリールアルキル、アルキルアリールであるか、または、R11とR12とをあわせて環を形成していてもよく、
各Rおよび各Rは、独立して、水素または低級アルキルであり、
は、式(CRt1を有する直鎖または分枝鎖のアルキレン基、または式(CRt2−Ar−(CRt3を有する直鎖または分枝鎖の芳香族アルキレン基であり、
は、式(CR10u1を有する直鎖または分枝鎖のアルキレン基、または式(CR10u2−Ar−(CR10u3を有する直鎖または分枝鎖の芳香族アルキレン基であり、
t1は、1〜20の整数であり、
t2およびt3は、独立して、0〜20の整数であり、
u1は、1〜30の整数であり、
u2およびu3は、独立して、0〜30の整数であり、
各Rおよび各Rは、独立して、水素、アルキル、またはアルコキシルであり、
各Rおよび各R10は、独立して、水素、アルキルまたはアルコキシルであり、
Arは、置換されているか、または置換されていない芳香族部分であり、
pは、1〜5の整数であり、
qは、1〜12の整数であり、
は、Cl、Br、I、HSO、HSO、CHSO、NO、HCOO、CHCOO、HPO、SCN、BF、ClO、SSO、PF、SbClからなる群から選択され、
Jは、アルキル、アリールアルキル、またはアルキルアリールである、樹脂状化合物の塩。
【請求項17】
が−XC(O)ORである、請求項16に記載の樹脂状化合物の塩。
【請求項18】
11およびR12が、独立して、メチルまたはエチルである、請求項16に記載の樹脂状化合物の塩。
【請求項19】
がHSOである、請求項16に記載の樹脂状化合物の塩。
【請求項20】
Jがメチルである、請求項16に記載の樹脂状化合物の塩。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−72137(P2012−72137A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199810(P2011−199810)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】