説明

4−アシルアミノピリジン誘導体を介した神経新生

本開示は、神経新生を促進または増加することにより中枢および末梢神経系の疾患および状態を治療する方法を記載する。本発明としては、新生神経細胞の形成を促進または活性化する4−アシルアミノピリジン誘導体の使用に基づいた方法が挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本発明は、2006年2月7日に提出された米国仮出願番号60/771,090の利益を主張し、本明細書への参照により全体に援用する。
【0002】
発明の技術分野
本発明は、4−アシルアミノピリジン誘導体を介した神経新生を促進しまたは増大させることによる中枢および末梢神経系の疾患および状態の治療方法に関連する。本発明として、新生神経細胞の形成を促進するためまたは活性化するために、4−アシルアミノピリジン誘導体の適用に基づく方法を含む。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
神経新生は、動物およびヒトの脳における生命過程であり、それ故、新生神経細胞は、生命体の一生を通して継続的に生産される。新たに誕生した細胞は、中枢神経系の機能細胞に分化して、脳内の既存の神経回路に組み込れ得る。神経新生は、哺乳類の脳の2つの領域(側脳室の脳室下帯(SVZ)および海馬の歯状回)において成年期を通して続くことが知られている。それらの部位において、多分化性神経前駆細胞(NPCs)は、分裂して、新たな機能性ニューロンおよびグリア細胞を生み続ける(総説としてGage 2000)。様々な要因が、成人海馬神経新生(例、副腎摘出、自発運動、高密度環境、海馬依存性学習および抗うつ)を促進し得ることが示されている(Yehuda 1989, van Praag 1999, Brown J 2003, Gould 1999, Malberg 2000, Santarelli 2003)。他の要素(例えば、副腎ホルモン、ストレス、年齢および薬物の乱用)は、神経新生(Cameron 1994, McEwen 1999, Kuhn 1996, Eisch 2004)に悪影響を与える。
【0004】
米国特許5,397,785には、多くの4−アシルアミノピリジン誘導体およびそれらを包含する組成物、ならびに老年性認知症およびアルツハイマー病の治療におけるそれらの使用が記載されている。米国特許6,884,805には、4−アシルアミノピリジン誘導体の結晶多形および記憶喪失障害と関連する異常コリン作動性ニューロン(malfunctioned cholinergic neuron)を活性化でのそれらの使用が記載されている。それらのいずれの特許も、神経新生に関連して4−アシルアミノピリジン誘導体の使用に関わらない。
上記文献の引用は、前記のいかなるものも関連する先行技術であることを容認するものとして意図するものではない。全ての日付に関する言及またはこれらの文献の内容に関する表現は、出願人に利用可能な情報に基づいており、日付またはこれらの文献の内容の正当性に関するいかなる容認も構成するものではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明の簡単な概要
本明細書は、神経新生を促進または増加することによる、中枢および末梢神経系の疾患、状態および損傷の予防および治療方法を開示する。本発明の側面として、神経系の疾患、障害、または状態の場合の神経新生の増加が挙げられる。本発明の具体的態様としては、神経変性障害、脳または中枢神経系外傷および/もしくはその回復を含む神経外傷、うつ病、不安、精神病、学習および記憶障害、ならびに中枢および/または神経系の虚血の治療方法が挙げられる。
【0006】
一つの側面において、本発明として、神経新生を促進または増大する方法が挙げられる。神経新生は、細胞または組織のレベルであり得る。細胞または組織は、動物被検体またはヒト、あるいは、その代わりにin vitroまたはex vivoの設定で存在し得る。いくつかの具体的態様において、神経新生は、神経細胞または組織(例えば動物またはヒトの中枢または末梢神経系のそれ)において促進されまたは増大される。
【0007】
動物またはヒトの場合において、当該方法は、動物またはヒトの被検体に存在するような神経系の1つ以上の疾患、障害、または状態に関連して実施され得る。それ故に、本発明の具体的態様としては、本明細書に記載の通り、神経薬剤(neurogenic agent)の投与による疾患、障害、または状態の治療方法が挙げられる。
【0008】
その他の側面において、本発明として、神経新生を増大する神経薬剤として化学物質の使用方法が挙げられる。いくつかの具体的態様において、化学物質は、米国特許5,397,785に記載されているような4−アシルアミノピリジン誘導体であって、それは、十分に説明されているように本明細書に明示的に援用される。一つの限定されない具体的態様において、該誘導体は、2−(2−オキシピロリジン−l−イル)−N−(2,3−ジメチル−5,6,7,8−テトラヒドロフロ(2,3−b)キノリン−4−イル)アセトアミドである。他の具体的態様において、該誘導体は、米国特許6,884,805に記載されている結晶多形の形態であり、十分に説明されているように明示的に本明細書に援用される。もちろん本発明として、複数の誘導体の使用が挙げられる。更なる具体的態様において、本発明は、その他の神経薬剤と組み合わせた1つ以上の誘導体の使用を提供する。
【0009】
その他の側面において、該方法として、1つ以上の疾患、障害、または状態、あるいはその症状を患った患者を同定して、本明細書に記載される神経薬剤の少なくとも1つを該患者に投与することが挙げられる。一つの限定されない例として、該薬剤は、何ら限定されない例として2−(2−オキシピロリジン−1−イル)−N−(2,3−ジメチル−5,6,7,8−テトラヒドロフロ(2,3−b)キノリン−4−イル)アセトアミドのような、4−アシルアミノピリジン誘導体である。いくつかの具体的態様において、本発明は、神経新生の増大が必要な被検体の同定を含む方法、および本明細書に記載の神経薬剤の1つ以上を被検体に投与することを提供する。他の具体的態様において、該被検体は、例えばヒトの患者のような患者である。
【0010】
本発明は、更に、1つ以上の神経薬剤を、不十分な量、または不適切な水準の神経新生の効果を示す被検体に投与することを含む方法が提供される。いくつかの具体的態様において、該被検体は、神経新生を減少または阻害する薬剤に付されている者であり得る。神経新生阻害剤の何ら限定されない例としては、オピオイド受容体作動薬(例えば、モルヒネのようなミュー受容体サブタイプ作動薬)が挙げられる。関連した様式において、本発明は、1つ以上の神経薬剤を、神経新生を減少または阻害する薬剤に付されるあろう被検体または患者への投与を提供する。いくつかの具体的態様において、該被検体または患者は、モルヒネまたは他のオピオイド受容体作動薬(その他のアヘン剤等)が投与されようとし、神経新生の減少または阻害を受けようとしている者であり得る。何ら限定されない例としては、被検体が外科的処置と組み合わせてモルヒネまたは他のアヘン剤を投与される前、同時、または後において神経薬剤を該被検体に投与する方法が挙げられる。
【0011】
同様に、in vitroで神経幹細胞(NSCs)の集団を培養して、培養された神経幹細胞を少なくとも1つの本発明の神経薬剤と接触させることを包含する、移植に適した神経幹細胞の集団を調製する方法も開示する。いくつかの具体的態様において、該幹細胞は、調製された後、続いて受容者の動物またはヒトに移植される。調製における何ら限定されない例としては、1)細胞が目視検査または細胞数集計による同定されるような神経新生を経験するまでの神経薬剤との接触、または2)細胞が十分に刺激され、あるいは神経新生に向かってまたはそれに誘導されるまでの神経薬剤との接触が挙げられる。そのような何ら限定されない様式で調製された細胞は、随意に、神経薬剤の被検体への投与と同時、ほぼ同時、または後に、該被検体に移植される。神経幹細胞がvitro培養液または細胞系での形態であり得る一方、他の具体的態様において、当該細胞は、被検体へ続いて移植される組織の部分であり得る。
【0012】
その上のその他の側面において、本発明は、4−アシルアミノピリジン誘導体および1つ以上の追加の神経薬剤を投与することにより、被検体における神経新生を促進するまたは増大する方法を含む。いくつかの具体的態様において、該神経新生は、新生細胞が循環系にアクセスすることを可能にする血管形成の促進と組み合わせて起こる。
【0013】
更なる本発明の具体的態様の詳細を、添付の図面および以下の記載において説明する。本発明の他の特徴、対象、および利点は、図面および詳細な説明、ならびに特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【0014】
発明の実施態様の詳細な説明
「神経新生」は、本明細書中in vivoまたはin vitroでの神経細胞の増殖、分化、遊走および/または生存として定義される。様々な具体的態様において、神経細胞は、成熟、胎児、または胚神経幹細胞、あるいは細胞集団である。当該細胞は、動物またはヒトにおいて、中枢神経系またはその他にあってもよい。当該細胞は、神経組織のような組織にも存在してもよい。いくつかの具体的態様において、当該神経細胞は、成熟、胎児、または胚前駆細胞、あるいは細胞集団または幹細胞および前駆細胞の混合物を包含する細胞集団である。神経細胞として、全ての脳幹細胞(brain stem cells)、全ての脳前駆細胞(brain progenitor cells)、および全ての脳前駆細胞(all brain precursor cells)が挙げられる。神経新生としては、正常な発達の間に起こるような神経新生、ならびに、疾患、損傷または本明細書に記載されているような治療による治療的介入に続いて起こる神経再生も含まれる。
【0015】
「神経薬剤」は、薬剤または試薬の不存在における、神経新生の量、程度、または性質と比較して、in vivoまたはex vivoあるいはin vitroにおいて、神経新生の量、程度、または性質を、促進、刺激、またさもなければ、増加することができる化学薬剤または試薬として定義される。いくつかの具体的態様において、神経薬剤での治療は、神経新生を同定または決定するために用いられる方法の状態下において、薬剤の不存在における、神経新生の量、程度、または性質と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約100%、少なくとも約500%、またはより多くまで神経新生を促進するならば、神経新生を増加させている。何ら限定されない例として、当該薬剤は、4−アシルアミノピリジン誘導体である小有機分子(small organic molecule)であってよい。
【0016】
用語「幹細胞」(または、神経幹細胞(NSC))は、本明細書中、自己再生、ならびにニューロン、星状細胞および/または乏突起膠細胞(oligodendrocytes)への分化できる未分化細胞を指す。
【0017】
用語「前駆細胞(progenitor cell)」(例、神経前駆細胞(neural progenitor cell))は、本明細書中、それ自体は幹細胞ではない幹細胞から生じる細胞を意味する。幾つかの前駆細胞は、2つ以上の細胞型に分化可能な後代を生産することができる。
【0018】
本発明として、神経薬剤として4−アシルアミノピリジン誘導体との細胞接触により神経新生を増加する方法が挙げられる。当該細胞は、in vitroまたはin vivoであり得、被検体動物またはヒトの器官または臓器に存在する細胞が挙げられる。4−アシルアミノピリジン誘導体は、神経新生を促進または増加させるどのようなものでもあり得る。1つの何ら限定されない例において、当該誘導体は、2−(2−オキシピロリジン−l−イル)−N−(2,3−ジメチル−5,6,7,8−テトラヒドロフロ(2,3−b)キノリン−4−イル)アセトアミド(MKC−231、またはコルラセタムとしても知られ、CAS登録番号135463−81−9で識別される)である。当該細胞は、例えば、直接分化または増殖分化のいずれによろうとも、分化した神経またはグリア細胞となるような神経新生が可能なものである。本発明に用いる他の4−アシルアミノピリジン誘導体化合物の典型的で何ら限定されない例は、下の実施例の欄で提供される。
【0019】
理論にとらわれることなく、いくつかの4−アシルアミノピリジン誘導体がアセチルコリンエステラーゼ(AChE)活性の阻害に関連して意図されているものの、MKC−231はそのような活性を有しないので、本発明がAChE阻害に関係しているとは思われない。同様に、本発明は、ムスカリンまたはニコチン受容体に結合する誘導体とは無関係であると思われる。しかしながら、MKC−231の神経性作用は、AMPA増強または感作を通してであり得ると思われる。これらの所信は、本発明の理解を高めるために提供され、必ずしも本発明を制限するものではない。
【0020】
動物またはヒトへの応用において、本発明は、当該薬剤の非存在下と比較して、神経新生の増加を引き起させる形で、細胞を神経薬剤、または、有効量の薬剤と接触させる方法に関連する。何ら限定されない例は、動物またはヒトへの薬剤の投与である。神経薬剤は、細胞または組織への外生的供給と考えられ得る。
【0021】
いくつかの具体的態様において、用語「動物」または「動物被検体」は、ヒトではない哺乳類(例えば、霊長類、犬科、または猫科)を指す。他の具体的態様において、当該用語は、飼い慣らされた(例、家畜)あるいはさもなくば、ヒトの世話および/または保全(例、動物園の動物および展覧のための動物)の支配下にある動物を指す。その他の何ら限定されない例において、当該用語は、反芻動物または肉食動物(例、イヌ、ネコ、トリ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、海洋動物および哺乳類、ペンギン、シカ、ワピチ(elk)、ならびにキツネ)を指す。
【0022】
本発明は、1つ以上の神経薬剤を投与することによって、中枢および/または末梢神経系(それぞれ、CNSおよびPNS)の疾患、障害、および状態を治療する方法にも関する。本明細書中、「治療」としては、治療される疾患、障害、または状態、あるいは治療される疾患、障害、または状態の1つ以上の症状の予防、改善、緩和、および/または除去、同様に、客観および/または主観的な基準で測定される患者の総合的な改善が挙げられる。いくつかの具体的態様において、治療は、中枢および/または末梢神経系の疾患、障害または状態の、もしくはその進行からの、望ましくないもしくは悪影響を及ぼす効果を、逆進、減弱、最小化、抑制、もしくは停止するために用いられる。他の具体的態様において、治療方法は、何ら限定されない例として、更なる神経新生が、傷害または疾患による細胞の損失の数を元に戻す、補充する、または、増加させる場合に有利に用いられ得る。
【0023】
本明細書に記載の方法で治療され得る症状の何ら限定されない例として、異常行動、異常運動、多動、幻覚、急性妄想、攻撃性、敵対心、拒絶症、引きこもり、隔離(seclusion)、記憶障害、感覚障害、認知障害、および緊張が挙げられる。異常行動の何ら限定されない例として、興奮性、衝動調節の不足、注意力の散漫性、および攻撃性が挙げられる。
【0024】
いくつかの具体的態様において、本発明の方法は、神経薬剤として4−アシルアミノピリジン誘導体を用いることを包含する。それ故、本発明として、細胞と4−アシルアミノピリジン誘導体とを接触し、または被検体にそのような誘導体を投与して、神経新生を引き起こす方法が挙げられる。いくつかの具体的態様において神経薬剤として、MKC−231のような一つの誘導体、または、MKC−231およびその他の誘導体のような2つもしくはそれより多くの誘導体の組み合わせの使用を包含する。
【0025】
いくつかの具体的態様において、本明細書に記載の方法で用いられる神経薬剤は、何ら限定されない例として、ムスカリン受容体、ニコチン受容体、ドーパミン受容体、およびオピオイド受容体のような他の受容体について事実上不活性である。
【0026】
いくつかの具体的態様において、4−アシルアミノピリジン誘導体は、神経新生をもたらすために、動物またはヒト被検体に投与される。4−アシルアミノピリジン誘導体は、このように本明細書に記載される疾患、障害、または状態を治療するために用いられ得る。他の具体的態様において、4−アシルアミノピリジン誘導体は、in vitroで神経新生を増加させるために用いられ得る。
【0027】
本発明の具体的態様で用いられる神経薬剤として、上記に記載されるMKC−231が挙げられる。それは、以下の構造で表される:
【0028】
【化1】

【0029】
いくつかの具体的態様において、4−アシルアミノピリジン誘導体は、米国特許5,536,728に開示されているものまたは米国特許6,884,805に開示されている結晶多形形態である。
【0030】
そのような化合物の、構造、生物活性データ、生物活性データを取得方法、合成法、投与形態および医薬製剤は、その中に開示されている。
神経新生の性質および/または程度の変化を同定、神経新生修飾剤を識別、神経幹細胞を単離し培養、および移植もしくは他の目的に神経細胞を調製するための、in vivoおよびin vitroでの神経新生の性質および/または程度を評価する方法が開示される(例えば、米国仮出願番号60/697,905ならびに米国特許番号2005/0009742および2005/0009847、20050032702、2005/0031538、2005/0004046、2004/0254152、2004/0229291、および2004/0185429,(すべてそれらの全体を参照することにより本明細書中に援用される))。
【0031】
神経新生としては、異なった可能性を有した系(different potential lineages)での神経細胞の分化が挙げられる。本発明のいくつかの具体的態様において、神経幹細胞または前駆細胞の分化は、随意に星状細胞系での分化を除いた、神経および/またはグリア細胞系による。
【0032】
本明細書に記載の神経薬剤として、医薬上許容され得る塩、誘導体、プロドラッグ、および該薬剤の代謝物が挙げられる。様々な薬剤の、塩、誘導体、プロドラッグ、および代謝物を調製および投与する方法は、当業界に周知である。
【0033】
不斉中心を包含する本明細書中の化合物として、2つのエナンチオマーのラセミ混合物を包含する組成物、ならびに他のエナンチオマーが実質上存在しない、それぞれのエナンチオマーを独立して包含する組成物を含む、全ての可能な当該化合物が挙げられる。それ故、例えば、本明細書中に意図するものは、Rエナンチオマーが実質上存在しない、Sエナンチオマーの化合物、または、Sエナンチオマーが実質上存在しない、Rエナンチオマーの化合物を包含する化合物である。指定した化合物が2つ以上の不斉中心を有するならば、本開示の範囲として、当該ジアステレオマーの間の様々な割合の混合物を包含する組成物、ならびに1つ以上の他のジアステレオマーが事実上存在しない1つ以上のジアステレオマーを包含する組成物も挙げられる。「実質上存在しない」により、組成物が、25%、15%、10%、8%、5%、3%未満、または、1%未満の少数のエナンチオマーまたはジアステレオマーを包含することを意味する。様々な立体異性体を合成、単離、調製、および投与する方法は、当業界で公知である。
【0034】
本明細書に記載の方法を、神経新生を増進あるいは、さもなければ促進または増加するのが有益などのような疾患または状態を治療するためにも用いることができる。本明細書に記載の方法の一つの重点は、老年性認知症、アルツハイマー病、または記憶障害/記憶喪失を治療することに対して、神経新生を増加することにより治療結果を得ようとするものである。それ故、ある本明細書に記載の方法を、神経新生を増加することによる治療の影響を受けやすいどのような疾患または状態をも治療するために用いることができる。例えば、いくつかの具体的態様において、本明細書に記載の方法は、ドーパミン作動性ニューロンの変性により特徴付けられるパーキンソン疾患のような重篤な認知症または記憶の問題と関連しない疾患または状態を治療するために用いられる。それ故、一形態において、本発明は、4−アシルアミノピリジン誘導体のための新たな治療指標の発見に関する。
【0035】
いくつかの具体的態様において、治療される疾患または状態は、疼痛および/または依存症に関連するが、公知の方法と対照的に、本発明の治療は、神経新生を増加することにより実質上なされる。例えば、いくつかの具体的態様において、本明細書に記載の方法として、ex vivoで神経新生を増加して、そうして続いて、神経幹細胞、神経前駆細胞、および/または分化した神経細胞を包含する組成物を、疾患または状態を治療するために個々に投与することができるようなことが挙げられる。いくつかの具体的態様において、本明細書に記載の方法は、直接ニューロンおよび/またはグリア細胞を補充し(replenishing)、復元し(replacing)、および/または補う(supplementing)ことにより治療される疼痛、中毒、および/またはうつ病よって特徴付けられる疾患の治療を可能にする。更なる具体的態様において、本明細書に記載の方法は、現存する神経細胞の成長および/または生存を強化し、かつ/または神経変性状態におけるそのような細胞の損失を遅らせるもしくは好転させる。
【0036】
本明細書に記載の方法により治療可能な疾患および状態の例として、神経変性障害(例えば、パーキンソン疾患、パーキンソン障害、ハンチントン疾患(ハンチントン舞踏病)、ルー ゲーリック疾患、多発性硬化症、ピック疾患、パーキンソニズム認知症症候群、進行性皮質下膠症、進行性核上性麻痺、視床(thalmic)変性症候群、先天的失語症、筋萎縮性側索硬化症、シャイ−ドレーガー症候群、およびレヴィー小体疾患)が挙げられるが、限定されない。
【0037】
本発明は、細胞変性、精神状態、細胞外傷および/または傷害、あるいは他の神経関連状態に関連する神経系障害の治療も提供する。実際には、本発明は、どのような組み合わせにおいてでも1つ以上の中枢または末梢神経系障害に苦しめられている、または診断されている被検体または患者に適用される。診断は、これらの神経系障害を他の状態から識別および/または区別する公知および慣例の方法を用いて適用される分野の当業者により行われる。
【0038】
細胞変性に関連する神経系障害の何ら限定されない例として、神経変性障害、神経幹細胞障害、神経前駆細胞障害、網膜の変性疾患、および虚血性障害が挙げられる。いくつかの具体的態様において、虚血性障害は、酸素または血管形成の不足または欠乏を包含し、限定されない例として、脊髄虚血、虚血性脳卒中、脳梗塞、多発脳梗塞性認知症が挙げられる。こうした状態は、被検体または患者に個々に存在してもよい一方、本発明は、どのような組み合わせにおいてでも、2つ以上のこうした状態に苦しめられ、または診断されている被検体または患者の治療も提供する。
【0039】
精神状態に関する神経系障害の何ら限定されない具体的態様として、神経精神障害および情動障害が挙げられる。本明細書中、情動障害とは、気分障害(例えば、限定されずに、うつ病、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、軽躁病、パニック発作、過度の高揚感、双極性うつ病、双極性障害(躁うつ病)、および季節性気分(または情動)障害)を指す。
【0040】
他の何ら限定されない具体的態様として、統合失調症および他の精神病、脳回欠損症候群、不安症候群、不安障害、恐怖症、ストレスおよび関連症候群、認知機能障害、攻撃性、薬物およびアルコールの乱用、脅迫性行動症候群、境界性人格障害、非老年性認知症、疼痛後うつ病、産後うつ病、ならびに脳性麻痺が挙げられる。
【0041】
細胞または組織外傷および/または傷害に関連する神経系障害の例としては、神経外傷および損傷、手術に関連する外傷および/または傷害、網膜傷害および外傷、てんかんに関連する傷害、脊髄傷害、脳傷害、脳外科手術、脳傷害に関連する外傷、脊髄傷害に関連する外傷、癌治療に関連する脳傷害、癌治療に関連する脊髄傷害、感染症に関連する脳傷害、炎症に関連する脳傷害、感染症に関連する脊髄傷害、炎症に関連する脊髄傷害、環境有害物質に関連する脳傷害、および環境有害物質に関連する脊髄傷害が挙げられるが、限定されない。
【0042】
他の神経関連状態に関する神経系障害の何ら限定されない例として、学習障害、記憶障害、加齢による記憶障害(AAMI)または加齢による記憶力劣化、自閉症、注意欠陥障害、ナルコレプシー、睡眠障害、認知障害、てんかん、および側頭葉てんかんが挙げられる。
【0043】
加えて、本発明は、アヘン剤またはオピオイドを基本とした鎮痛剤の抗神経性効果に起因する状態にある被検体または患者を治療する神経薬剤の使用を提供する。本発明のいくつかの具体的態様において、被検体または患者へのアヘン剤またはオピオイドを基本とした鎮痛剤(例えば、モルヒネのようなアヘン剤または他のオピオイド受容体作動薬)の投与は、神経新生を減少または阻害をもたらす。アヘン剤またはオピオイドを基本とした鎮痛剤との組み合わせでの本発明の神経薬剤の投与は、抗神経性効果を減弱させるであろう。1つの何ら限定されない例は、術後におけるオピオイド受容体作動薬(例えば、手術後の疼痛の治療のため)との組み合わせでの本発明の神経薬剤の投与である。
【0044】
同様に、本発明として、本発明の神経薬剤と、アヘン剤またはオピオイドを基本とした鎮痛剤との組み合わせた投与による被検体または患者での手術後疼痛の治療方法が挙げられる。当該鎮痛剤は、4−アシルアミノピリジン誘導体の前、同時、または後に投与され得る。いくつかの場合において、当該鎮痛剤またはオピオイド受容体作動薬は、モルヒネまたはその他のアヘン剤(opiate)である。
【0045】
本発明の他の具体的態様において、本発明は、オピオイド受容体作動薬の使用を伴う他の場合における神経新生の減少または阻害を治療または予防する方法を提供する。何ら限定されない例として、神経新生を減少または阻害するオピオイド受容体作動薬、ならびに、薬物依存、薬物リハビリテーション、および/または依存再発予防を伴う場合が挙げられる。いくつかの具体的態様において、オピオイド受容体作動薬は、モルヒネ、アヘンまたはその他のアヘン剤である。
【0046】
本発明の方法により特定される化合物を、PNSニューロパシー(例、血管ニューロパシー、糖尿病性ニューロパシー、アミロイドニューロパシー、など)、神経痛、新生物、ミエリン関連疾患、等が挙げられるが限定されない末梢神経系(PNS)の疾患を治療するためにも用いることもできる。
【0047】
神経新生の増加により有益に治療することができる他の状態は、当業界で公知である(例、米国特許番号20020106731、2005/0009742および2005/0009847、20050032702、2005/0031538、2005/0004046、2004/0254152、2004/0229291、ならびに2004/0185429(それら全体を参照することにより本明細書中に援用される)参照のこと)。
【0048】
いくつかの具体的態様において、本明細書に記載の方法で用いられる神経薬剤は、少なくとも1つの医薬上許容され得る賦形剤を含む医薬上の組成物を包含する。本明細書中、用語「医薬上許容され得る賦形剤」として、医薬上の利用に適しているとして当業界に公知のどのような賦形剤も挙げられる。医薬上適した賦形剤および製剤は、当業界で公知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences (19th ed.) (Genarro, ed. (1995) Mack Publishing Co., Easton, Pa.)に記載されている。好ましくは、医薬上の担体は、神経薬剤の意図された投与形態に基づいて選択される。医薬上許容され得る担体として、例えば、崩壊剤、結合剤、潤滑剤、滑沢剤、軟化剤、保湿剤、増粘剤、シリコン、香料添加剤および水が挙げられ得る。
【0049】
当該神経薬剤を、賦形剤に組み込み、体内に摂取可能な錠剤、口腔錠、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、ウエハース、医薬技術で公知の他のどのような形式の形態においても投与し得る。本発明の医薬上の組成物は、徐放性製剤で製剤されてもよい。徐放性組成物、腸溶コーティングなどは、当業界で公知である。あるいは、当該組成物は、速放性製剤であり得る。
【0050】
いくつかの具体的態様において、本発明に記載の治療方法は、治療の標的とされる状態を治療するために十分な期間および濃度で哺乳動物に本明細書に定義した神経薬剤を投与する処置を包含する。本発明の方法を、神経変性、神経損傷および/または神経脱髄に関連する障害を有しているか、発現し易い個体に適用することができる。いくつかの具体的態様において、本明細書に記載の方法は、患者の母集団もしくは亜母集団を選択し、または治療の影響を受けやすい、かつ/もしくは同様の疾患もしくは状態を有する他の患者より副作用の影響が少ない個々の患者を選択する段階を包含する。例えば、いくつかの具体的態様において、患者の亜集団は、予期される患者からの細胞または組織サンプルを得、当該サンプルから神経細胞を単離および培養し、さらに、神経新生の程度および性質についての1つ以上の神経薬剤の効果を決定し、その結果、当該治療薬剤が神経新生についての実質的な効果を有する患者の抽出を可能にすることにより、神経薬剤での神経新生の影響をより受けやすいとして識別される。有利には、当該選択段階は同様または類似の化合物を用いる方法が公知の疾患または状態により有効な治療をもたらす。
【0051】
他の具体的態様において、当該治療方法は、ex vivoで1つ以上の神経薬剤を用いて神経細胞を識別し、産生し、および/または増殖すること、ならびに被検体に該細胞を移植することを包含する。その他の具体的態様において、当該治療方法は、神経新生を促進するために、前駆細胞の神経幹細胞を1つ以上の神経薬剤と接触させて、治療が必要な患者に当該細胞を移植する段階を包含する。in vitroで神経幹細胞(NSCs)集団を培養し、培養された神経幹細胞を本発明の少なくとも1つの神経薬剤と接触させることを包含する、移植に適した神経幹細胞集団を調製する方法もまた開示する。本発明としてさらに、被検体または患者にそのような細胞を移植することによる、本明細書に記載の、疾患、障害、および状態の治療方法が挙げられる。
【0052】
本明細書に記載の方法は、有効量の化合物または医薬上の組成物を被検体に投与することを包含し得る。一般的に、本発明に記載の化合物の有効量は、治療当該化合物がない場合と比較したときに、対象とされる被検体における神経新生を促進または増加するために十分な量である。組成物の有効量は、活性化合物の活性、被検体の生理学的特徴、治療されるべき状態の性質、ならびに投与経路および/または方法が挙げられるが、限定されない様々な要因に基づいて変化し得る。本発明の方法は、0.001ng/kg/day乃至500ng/kg/dayの投与域で、好ましくは、0.05乃至200ng/kg/dayの投与域で、本発明の薬剤の投与を典型的に伴う。有利には、本明細書に記載の方法は、副作用、投与水準、投与頻度、治療期間、耐性、および/または他の要因の減少を示す治療を可能にする。
【0053】
本明細書に記載の方法のいくつかの具体的態様において、選択的活性を有する神経薬剤の使用は、既存の治療と比較して、実質的により少ないおよび/またはより低い重篤な副作用での有効な治療を可能とし得る。例えば、CNSでの選択性を有した神経薬剤は、意図された標的組織/器官の外部のオピオイド受容体での活性に関連した副作用を減弱することができる。オピオイド受容体に対する活性を有する化合物を用いた、CNSおよびPNSの様々な状態を治療する確立された方法は、発汗、下痢、顔面紅潮、低血圧、徐脈、気管支収縮、膀胱収縮、吐き気、嘔吐、パーキンソニズム、および死亡危険率の上昇が挙げられるが、限定されない副作用を引き起こすことが知られている。いくつかの具体的態様において、本明細書に記載の方法は、これらの副作用を最少とする服用で、ある状態を治療することを可能にする。
【0054】
望まれる臨床結果に応じて、本発明の医薬上の組成物は、所望の効果を得るのに適したどのような手段によっても投与される。様々な送達方法は、当業界で公知であり、試験薬剤を被検体あるいは関心の組織内のNSCsまたは前駆細胞に送達するために用いられうる。当該送達方法は、他の要素の内、例えば、関心の組織、化合物の性質(例、その安定性および血液脳関門の通過能)、ならびに実験の継続期間などの要素に依存するであろう。例えば、浸透圧ミニポンプを、側脳室のような神経形成領域に埋め込むことができる。あるいは、化合物を、脳または脊柱の脳脊髄液、あるいは眼球への直接の注射により投与することができる。化合物を末梢(例えば、静脈または皮下注射、あるいは経口送達など)に投与し、続いて、血液脳関門を越えさせることもできる。
【0055】
様々な具体的態様において、本発明の医薬上の組成物は、それらが側脳室の脳室下帯(SVZ)および/または海馬の歯状回と接触することを可能にする手段で投与される。投与の経路の例として、非経口(例、静脈、皮内、皮下、口腔(例、吸入)、経皮(局所)、経粘膜、および直腸投与)が挙げられる。経鼻投与として、一般的に鼻粘膜、気管、および細気管支への組成物の送達のためのエアゾル懸濁液の吸入が挙げられるが、限定されない。
【0056】
いくつかの具体的態様において、本発明の化合物は、血液脳関門を通過するか、それとも回避するように投与される。血液脳関門を通過する要因となる方法は、当業界で公知であり、要素の大きさを最小限度にすること、通過を促進する疎水性の要素を与えること、神経薬剤または他の薬剤を血液脳関門の通過に十分な透過性を有する担体分子に結合させることが挙げられる。場合によっては、神経薬剤は、外科的処置によりポンプ装置に結合したカテーテルを埋め込んで投与され得る。ポンプ装置を、埋め込んでも、体外に留置することもできる。神経薬剤の投与は、間欠脈でまたは持続注入としてであることができる。脳の個別の領域への投与装置は、当業界で公知である。好ましい具体的態様において、神経薬剤は、例えば、注射によって、脳室、黒質、線条体、青斑(locus ceruleous)、マイネルト基底核、大脳脚橋核、大脳皮質、および/または脊髄に局所投与される。CNSおよびPNSの疾患および状態の治療法が挙げられる送達治療法(delivering therapeutics)のための方法、組成物、および装置は、当業界で公知である。
【0057】
いくつかの具体的態様において、歯状回または脳室下帯のような神経形成領域への神経薬剤の送達または標的化は、同一または類似の化合物との投与を伴う公知の方法と比較して、有効性を強化し、副作用を軽減する。
【0058】
被検体および患者を治療する本発明の具体的態様において、当該方法として、1つ以上の疾患、障害、または状態、あるいはその症状を患った患者を識別し、被検体または患者に、本明細書に記載の神経薬剤の少なくとも1つを投与することが挙げられる。1つ以上の疾患、障害、または状態、あるいはその症状を有した被検体または患者の識別は、当業界で公知のどのような適当な手段を用いて当業者によってなされ得る。
【0059】
本発明の更なる具体的態様において、当該方法は、減少した神経新生または増加した神経変性を示す細胞、組織、または被検体を治療するために用いられ得る。
いくつかの場合において、当該細胞、組織、または被検体は、神経新生を減少または阻害する薬剤に付されているかまたは付されている、あるいは接触するかまたは接触している。1つの何ら限定されない例は、モルヒネあるいは神経新生を減少または阻害する他の薬剤が投与されているヒト被検体である。
他の薬剤の何ら限定されない例として、アヘン剤および神経新生を阻害または減少するミュー受容体サブタイプ作動薬のようなオピオイド受容体作動薬が挙げられる。
【0060】
それ故本発明の更なる具体的態様において、当該方法は、モルヒネまたは神経新生を減少または阻害する他の薬剤からのうつ病または他の引きこもり症状を有するか、または診断されている被検体を治療するために用いられ得る。これは、本明細書に記載のように、精神的性質のようなアヘン剤と無関係のうつ病を有するか、または診断されている被検体の治療とは異なる。更なる具体的態様において、当該方法は、例えば、モルヒネもしくは他のアヘン剤などの1つ以上の薬物中毒もしくは依存を有する被検体を治療するために用いられ得、中毒もしくは依存が神経新生の増加によって改善または緩和する。
【0061】
うつ病の治療を包含する具体的態様において、当該方法は、1つ以上の抗うつ剤の使用をさらに包含し得る。それ故、被検体または患者におけるうつ病の治療において、当該方法は、当業者に公知の1つ以上の抗うつ剤と共に、本明細書に記載の神経薬剤を包含し得る。本発明の神経薬剤と共に使用される抗うつ剤の何ら限定されない例として、SSRI(例えば、フルオキセチン(プロザック(登録商標))、シタロプラム、エスシタロプラム、フルボキサミン、パロキセチン(パキシル(登録商標))、およびセルトラリン(ゾロフト(登録商標))、同様に、ルボックス(登録商標)およびセルゾン(Serozone)(登録商標)が挙げられる公知の薬物の活性成分);セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)(例えば、レボキセチン(エドロナックス(登録商標))およびアトモキセチン(ストラテラ(登録商標)));選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SSNRI)(例えば、ベンラファクシン(エフェクサー)およびデュロキセチン(シンバルタ));ならびにバクロフェン、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、およびDHEA硫酸塩(DHEAS)のような薬剤が挙げられる。いくつかの具体的態様において、カッパオピオイド受容体サブタイプ作動薬およびSSRI、またはバクロフェンの使用が、本発明の実施で用いられる。併用療法は、被検体または患者の状態を改善するために有利に用いられ得る。併用療法の何ら限定されない例として、単独で用いられたときの抗うつ剤の副作用を減弱する用量の使用が挙げられる。例えば、フルオキセチンまたはパロキセチンあるいはセルトラリンのような抗うつ剤は、本発明の神経薬剤との併用において、減少または制限された用量で投与され、場合によっては、投与の頻度も減らせて投与されてもよい。神経薬剤を用いて減らされた用量により、十分な抗うつ効果が仲介されて、抗うつ剤単独の副作用が減弱されるか無くなる。
【0062】
治療体重減少を誘発するためのおよび/または体重増加の治療の具体例において、本発明の神経薬剤を、体重減少を誘発するおよび/または体重増加を治療する他の薬剤との併用で用いてもよい。体重減少を誘発するおよび/または体重増加を治療する他の薬剤の何ら限定されない例として、様々な市販のやせ薬が挙げられる。
【0063】
併用療法を包含する他の具体的態様において、本発明の方法は、4−アシルアミノピリジン誘導体および、1つ以上の追加の神経薬剤または1つ以上の神経新生調整剤の投与により被検体または患者における神経新生を増加することを包含する。従って、本発明の神経薬剤は単独の活性医薬剤として投与することができる一方、それらは、その他の神経薬剤(随意にその他の機序によって作用するもの)のような1つ以上の追加の活性薬剤と併用して用いることができる。併用で投与されるとき、当該治療薬剤を、同時または異なった時間に連続して投与される別々の組成物として製剤することもでき、あるいは当該治療薬剤を単一の組成物として与えることもできる。本発明は、連続投与に限定されない。
【0064】
追加の神経薬剤は、オピオイドまたは非オピオイド剤(オピオイド受容体と独立して活性を示す)であり得る。いくつかの具体的態様において、追加の神経薬剤は、1つ以上のオピオイド受容体に拮抗するもの、または少なくとも1つのオピオイド受容体の逆作動薬である。本発明のオピオイド受容体拮抗薬または逆作動薬は、オピオイド受容体サブタイプに対して特異的または選択的(あるいはその代わり非特異的または非選択的)であってよい。それで、拮抗薬は、OP1、OP2、およびOP3(それぞれデルタまたはカッパあるいは、およびミューまたはμとしても知られる)として識別される3つの公知のオピオイド受容体サブタイプのうち2つ以上に拮抗する非特異的または非選択的であり得る。それ故、これらのサブタイプのいずれの2つもしくは3つ全てに拮抗するオピオイド、あるいはこれらのサブタイプのいずれの2つもしくは3つ全てに特異的または選択的である逆作動薬が本発明の実施において用いられ得る。
【0065】
あるいは、何ら限定されない例として、拮抗薬または逆作動薬は、3つのサブタイプのうちカッパサブタイプのような1つに特異的または選択的であり得る。
【0066】
いくつかの具体的態様において、本明細書に記載の方法で用いられる追加の神経薬剤は、1つ以上の他のオピオイド受容体サブタイプに対する活性の程度および/または性質に関して、ある状態下での1つ以上のオピオイド受容体サブタイプに対する「選択的」活性(例えば、拮抗薬または逆作動薬の場合)を有する。例えば、いくつかの具体的態様において、神経薬剤は、1つ以上のサブタイプに対して拮抗薬効果、他のサブタイプに対して大幅に弱い効果または実質上の無効果を有する。その他の例として、本明細書に記載の方法にいて用いられる当該追加の神経薬剤は、1つ以上のオピオイド受容体サブタイプの作動薬および1つ以上の他のオピオイド受容体サブタイプの拮抗薬として作用し得る。いくつかの具体的態様において、神経薬剤は、カッパオピオイド受容体に対する活性を有する、一方、実質上デルタおよびミュー受容体サブタイプのうち一つまたは両方に対しより小さい活性を有する。他の具体的態様において、神経薬剤は、カッパおよびデルタサブタイプのような2つのオピオイド受容体サブタイプに対して活性を有する。何ら限定されない例として、薬剤ナロキソンおよびナルトレキソンは、2つ以上のオピオイド受容体サブタイプに対して非選択的拮抗薬活性を有する。ある具体的態様において、1つ以上のオピオイド拮抗薬の選択的活性は、有効性の増強、副作用の減弱、有効用量の減少、服用頻度の減少、または他の望ましい特性を引き起こす。
【0067】
オピオイド受容体拮抗薬は、オピオイド受容体または受容体サブタイプの1つ以上の特徴的反応を阻害することができる薬剤である。何ら限定されない例として、拮抗薬は、受容体の機能を阻害するために、競合的にまたは非競合的に、オピオイド受容体、作動薬もしくは受容体の部分作動薬(または他のリガンド)、および/または下流シグナル伝達分子と結合し得る。
【0068】
オピオイド受容体の構成的活性を遮断または阻害することができる逆作動薬も用い得る。逆作動薬は、競合的にまたは非競合的にオピオイド受容体および/または下流シグナル伝達分子に結合し、受容体の機能を阻害し得る。
【0069】
本発明の実施に用いられる逆作動薬の限定されない例として、ICI−174864(N,N-diallyl-Tyr-Aib-Aib-Phe-Leu)、RTI−5989−1、RTI−5989−23、およびRTI−5989−25(see Zaki et al. J. Pharmacol. Exp. Therap. 298(3): 1015-1020, 2001)が挙げられる。
【0070】
他の具体的態様において、当該追加の神経薬剤は、ムスカリン受容体のモジュレーターであり得る。そのような薬剤の何ら限定されない例として、ムスカリン作動薬ミラメリン(CI−979)およびキサノメリン;ムスカリン剤アルバメリン(LU 25−109)、2,8−ジメチル−3−メチレン−l−オキサ−8−アザスピロ[4,5]デカン(YM−796)もしくはYM−954、セビメリン(AF102B)、サブコメリン(SB 202026)、タルサクリジン(WAL 2014 FU)、CD−0102((5−(3−エチル−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル)−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジントリフルオロ酢酸)、1−メチル−1,2,5,6−テトラヒドロピリジル−1,2,5−チアジアゾール誘導体(例えば、テトラ(エチレングリコール)(4−メトキシ−1,2,5−チアジアゾール−3−イル)[3−(1−メチル−1,2,5,6−テトラヒドロピリド−3−イル)−1,2,5−チアジアゾール−4−イル]エーテル)、あるいは1−メチル−1,2,5,6−テトラヒドロピリジル−1,2,5−チアジアゾール誘導体、ベシピルジン(besipiridine)、SR−46559、L−689,660、S−9977−2、AF−102、およびチオピロカルフィン(thiopilocarpine)に機能的または構造的に関連する化合物、シクロザピン(clozapine)もしくはジアリール[a,d]シクロヘプタンの類縁体(例えば、そのアミノ置換形態)、ベンズイミダゾリジノン誘導体、およびスピロアザ環状化合物(例えば、1−オキサ−3,8−ジアザ−スピロ[4,5]デカン−2−オン)、テトラヒドロキノリン類縁体;ならびに55−LH−3B、55−LH−25A、55−LH−30B、55−LH−4−1A、40−LH−67、55−LH−15A、55−LH−16B、55−LH−11C、55−LH−31A、55−LH−46、55−LH−47,55−LH−4−3Aから選択されるムスカリンm受容体作動薬が挙げられる。
【0071】
更なる具体的態様において、当該追加薬剤は、アセチルコリンのような内因性ムスカリン作動薬のレベルを増加するものであり得る。そのような追加薬剤の何ら限定されない例として、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、タクリン、ドネペジル、イトプリド、リバスティグミン、ガランタミンが挙げられる。
【0072】
その上更なる具体的態様において、当該追加の神経薬剤は、アンドロゲン受容体のモジュレーターであり得る。何ら限定されない例として、アンドロゲン受容体作動薬デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)およびDHEA硫酸塩(DHEAS)が挙げられる。
【0073】
もちろん、併用療法は、本発明の神経薬剤の治療と薬物を基本としない治療とでもあり得る。何ら限定されない例として、精神状態のような本明細書に記載の多くの状態の治療のための心理療法、さらに、体重減少プログラムと関連して用いられるような行動変容療法の使用が挙げられる。
【0074】
本発明を一般的に記載したが、同様の事柄は、実例により提供される次の実施例への参照を通してより容易に理解され、さらに、特に言及しなければ、本発明の限定を意図するものではない。
【実施例】
【0075】
実施例1−ヒト神経幹細胞の神経分化についての効果
ヒト神経幹細胞(hNSCs)を、米国仮出願番号60/697,905(参照することにより援用される)に記載のように、単層培養で単離および成長し、培養し(plated)、様々な濃度のMKC−231(試験化合物)で処理し、TUJ−1抗体で染色した。神経分化に対するポジティブコントロールと一緒のマイトジェン無添加の試験培地を、ネガティブコントロールとして増殖因子を抜いた基本培地と共に用いた。
【0076】
バックグラウンド培地の値を差し引いた後の神経分化の用量反応曲線を示す結果を図1に示す。当該神経ポジティブコントロールの用量反応曲線は参照として挙げられる。当該データは、神経ポジティブコントロールの百分率として表される。当該データは、MKC−231がバックグラウンドレベルを超えて神経分化を促進することを示す。
【0077】
実施例2−hNSCsの星状細胞分化についての効果
星状細胞分化に対するポジティブコントロールが星状細胞分化に対するポジティブコントロールと一緒にマイトジェン無添加の試験培地を含み、細胞をGFAP抗体で染色した以外は、実験を実施例1に記載のように行った。
バックグラウンド培地の値を差し引いた後の星状細胞分化の用量反応曲線を示す結果を図2に示す。MKC−231は、基本培地の値を超えて星状細胞分化における顕著な増加を示さなかった。
【0078】
実施例3−ヒト神経幹細胞についての毒性/栄養効果
実験を、細胞を核染色(Hoechst 33342)した以外、実施例1に記載のように行った。
結果を図3に示す。その中の当該データを、基本培地細胞計数の百分率として示す。毒性のある濃度は、基本細胞計数の80%を下回る。
栄養化合物(Trophic compounds)が、細胞計数が投与量に依存した増加を示した。MKC−231は、31.6μMの濃度に至るまで毒性を示さなかった。
【0079】
実施例4−AMPA作動薬との併用におけるMKC−231のヒト神経幹細胞の分化についての効果
一般的に神経分化の実施例1に記載したように、単独または0.316μMのAMPA作動薬(AMPA)との様々な濃度のMKC−231での実験を行った。バックグラウンド培地の値を差し引いた後の、神経分化の用量反応曲線を示す結果を図4に示す。0.316μMのAMPA作動薬AMPAは、神経薬剤MKC−231により神経分化の促進が増強された。これらのデータは、AMPA作動薬がMKC−231に介在される神経分化の増強剤(potentiator)または増感剤(sensitizer)として作用することを示す。当該データは、同様に、MKC−231は明らかにAMPA増強剤または増感剤としてのいくつかのその神経性の効果を発揮していることを示す。
同様にAMPAとの併用でのBCI−540および神経分化に関する図6も参照のこと。
【0080】
実施例5−AMPA拮抗薬との併用におけるMKC−231のヒト神経幹細胞の分化についての効果
一般的に神経分化の実施例1に記載したように、単独または1.0mMのAMPA拮抗薬(NBQX)との様々な濃度のMKC−231での実験を行った。バックグラウンド培地の値を差し引いた後の神経分化の用量反応曲線を示す結果を図7に示す。1.0mMのAMPA拮抗薬NBQXは、神経薬剤MKC−231により神経分化の促進を阻害する。これらのデータは、AMPA拮抗薬がMKC−231に介在される神経分化の阻害剤として作用することを示す。当該データは、同様にMKC−231がAMPA受容体活性化を経ているようないくつかのその神経効果を発揮することを示す。
【0081】
実施例6−ラットにおける海馬の神経新生の効果
BCI−540を28日間1日1回(1.0および4.0mg/kg/day,p.o.)の経口でのチューブによる栄養投与により雄F344ラットに投与した。BrdUを5日間1日1回(9日目乃至14日目,100mg/kg/day,i.p.)で投与した。動物を28日目に屠殺した。脳を摘出し、神経新生の評価を行った。
【0082】
図8は、賦形剤対照(±SEM)と比較した神経新生の変化を示す。y−軸は、賦形剤対照と比較した百分率変化を示す。x−軸は、100%(黒色棒)に設定された賦形剤ならびに、1.0および4.0mg/kg/day(黒色斜線棒)の投与量でのBCI−540での治療を示す。黒色線は、100%の賦形剤対照を示す。28日間の1.0および4.0mg/kgのBCI−540の1日投与は、歯状回の顆粒細胞層内部の新生ニューロンにおける統計的に大幅な増加という結果であった。
【0083】
実施例7−ラットにおける新規抑制食餌(novelty suppressed feeding)の効果
BCI−540を21日間1日1回(1.0mg/kg/day,p.o.)の経口でのチューブによる栄養投与により雄F344ラットに投与した。フルオキセチンを1日1回21日間(10mg/kg/day,p.o.)経口でのチューブによる栄養投与により投与した。BrdUを5日間1日1回(9乃至14日目,100mg/kg/day,i.p.)投与した。動物を薬剤投与の21日後試験した。
【0084】
図9に示すのは、賦形剤対照(±SEM)と比較した食餌潜伏の変化である。y−軸は、賦形剤対照と比較した百分率変化を示す。x−軸は、治療を示す。賦形剤は、100%に設定する。黒色線は、100%の賦形剤対照を示す。BCI−540およびフルオキセチンの21日投与後は、抗うつ作用の指標となる、フードペレット(food pellet)を食べる潜伏が統計的に大幅な減少を示す結果となった。
【0085】
実施例8−ヒト神経幹細胞における毒性/栄養効果
BCI−540を1日1回21日間(1.0mg/kg/day,p.o.)経口でのチューブによる栄養投与により雄Sprague Dawleyラットに投与した。ポジティブコントロールとして、抗不安薬ジアゼパム(1.5mg/kg,i.p.)を試験30分前に1回投与した。
【0086】
図10は、BCI−540およびジアゼパムで処理された群(±SEM)でのオープンアームの滞在時間の百分率の変化を示す。y−軸は、オープンアームでの時間の百分率を示す。x−軸は、賦形剤での治療(黒色棒)、ポジティブコントロールジアゼパム(灰色棒)、およびBCI−540で処理された動物(黒色斜線棒)(n=15/group)を示す。BCI−540長期投与は、抗不安活性を示すオープンアームの滞在時間の大幅な増加を示す結果に終わった。BCI−540は、投与されたジアゼパムに比較して非常に強く抗不安作用を示した。
【0087】
実施例9−神経および星状細胞マーカーを用いた免疫組織化学
免疫組織化学は、神経細胞マーカーとしてTUJ−1および星状細胞マーカーとしてGFAPを用いた米国仮出願番号60/697,905(参照することにより援用される)に記載のように行われた。結果を図5に示す。対照画像として、参照の初頭が挙げられ、31.6μM MKC−231単独で処理された細胞を下段左に示し、31.6μM MKC−231と0.316μM AMPAの併用を下段右に示す。
【0088】
実施例10−例示的神経薬剤
本実施例は、前記および後記に開示されるような、様々な側面および本発明の具体的態様において用いられる典型的な4−アシルアミノピリジン誘導体を提供する。本発明の4−アシルアミノピリジン誘導体は、次の式(1):
【0089】
【化2】

【0090】
[式中、Rは、C-Cアルキル基または次の式(2):
【0091】
【化3】

【0092】
(式中、RおよびRのそれぞれは、独立して、水素原子、C−Cアルキル基、C−Cシクロアルキル基、または次の式(3)
【0093】
【化4】

【0094】
(式中、RおよびRのそれぞれは、独立して、水素原子またはC−Cアルキル基を示す)で示される基を示すか、あるいはRおよびRは、RおよびRの両方に結合する窒素原子と一緒に
【0095】
【化5】

【0096】
(式中、Rは、水素原子またはC−Cアルキル基を示す。)、およびnは、0または1乃至3の整数を示す)で示される基を示し;かつ
【0097】
【化6】

【0098】
は、
【0099】
【化7】

【0100】
(式中、Rは、水素原子、C−Cアルキル基またはハロゲン原子を示す)、
【0101】
【化8】

【0102】
(式中、RおよびRのそれぞれは、独立して、水素原子またはC−Cアルキル基を示す)、
【0103】
【化9】

【0104】
(式中、R10およびR11のそれぞれは、独立して、水素原子またはC−Cアルキル基を示す)、
【0105】
【化10】

【0106】
を示し;かつ
【0107】
【化11】

【0108】
は、
【0109】
【化12】

【0110】
(式中、R12およびR13のそれぞれは、独立して、水素原子またはC−Cアルキル基を示すか、あるいはR12およびR13は、組み合わさって一緒にC−Cアルキレン基を形成し得る)、
【0111】
【化13】

【0112】
を示す
(但し、Rが、C−Cアルキル基または式(2)(式中、RおよびRのうちの1つが水素原子またはC−Cアルキル基であり、かつRおよびRのうちの他方が水素原子または−−CHCOOR(式中、Rは、上記に定義したのと同様であり)、あるいはRおよびRはRおよびRの両方が結合する窒素原子と一緒に
【0113】
【化14】

【0114】
を示す)で示される基であり、かつnは1または2である時、
【0115】
【化15】

【0116】
は、
【0117】
【化16】

【0118】
(式中、Rは、前記に定義したのと同義である)でないか、または
【0119】
【化17】

【0120】
(Rは、前記に定義したのと同義である)でなく;かつ
【0121】
【化18】

【0122】
は、
【0123】
【化19】

【0124】
(式中、R12は、水素原子またはC−Cアルキル基を示す)でないか、または
【0125】
【化20】

【0126】
でない。)]で示される。
式(1)における、Rで示されるC−Cアルキル基(または2つ乃至6つの炭素原子を有するアルキル基)の何ら限定されない例としては、次の:エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基およびn−ヘキシル基が挙げられる。いくつかの具体的態様において、C−Cアルキル基が、本発明の方法および実施に用いられる。
【0127】
それぞれR乃至Rにより示されるC−Cアルキル基の何ら限定されない例として、次の:メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基およびn−ヘキシル基が挙げられる。いくつかの具体的態様において、C−Cアルキル基が、本発明の方法および実施に用いられる。
【0128】
それぞれRおよびRにより示されるC−Cシクロアルキル基の何ら限定されない例として、次の:シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基およびシクロヘキシル基が挙げられる。
で示されるハロゲン原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子から選択される。
【0129】
それぞれR乃至R13で示されるC−Cアルキル基の何ら限定されない例として、次の:メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基およびtert−ブチル基が挙げられる。
【0130】
式(1)で示される化合物のうち、および本発明のいくつかの具体的態様において、Rが、C−Cアルキル基、または式(2)(式中、Rは、水素原子またはC−Cアルキル基を示し、Rは、水素原子、C−Cアルキル基、C−Cシクロアルキル基、または式(3)(式中、RおよびRのそれぞれは、独立して、水素原子またはC−Cアルキル基を示す)で示される基を示し、あるいはRおよびRは、RおよびRの両方が結合する窒素原子と一緒になって
【0131】
【化21】

【0132】
(式中、Rは、水素原子またはC−Cアルキル基を示す)示し、かつnが0または1乃至3の整数を示す)で示される基を示し;かつ
【0133】
【化22】

【0134】

【0135】
【化23】

【0136】
(式中、Rは、水素原子、C−Cアルキル基またはハロゲン原子を示す)、
【0137】
【化24】

【0138】
(式中、RおよびRのそれぞれは、独立して、水素原子またはC−Cアルキル基を示す)、または
【0139】
【化25】

【0140】
(式中、R10およびR11のそれぞれは、独立して、水素原子またはC−Cアルキル基を示す)を示し;かつ
【0141】
【化26】

【0142】

【0143】
【化27】

【0144】
(式中、R12およびR13のそれぞれは、独立して、水素原子またはC−Cアルキル基を示すか、あるいはR12およびR13は組み合わさって、C−Cアルキレン基を形成し得る)、または
【0145】
【化28】

【0146】
を示す
化合物。
【0147】
より好ましくは、
【0148】
【化29】

【0149】

【0150】
【化30】

【0151】
(式中、R乃至R11は上記の通りである)を示す化合物である。
前述の分子に加えて、当該分子の医薬上許容され得る酸付加塩も同様に本発明により提供される。いくつかの具体的態様において、式(1)で示される化合物の酸付加塩は、医薬上および生理学的に許容され得る。何ら限定されない例として、無機酸付加塩(例えば、塩酸塩、臭化水素(hydrobromine)、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩およびリン酸塩)、ならびに有機酸付加塩(例えば、シュウ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩およびカンファースルホン酸塩)が提供される。式(1)で示される化合物およびその酸付加塩を、水和物または溶媒和物の形態で提供することができる。当該水和物または溶媒和物も、本発明の方法および実施において用いられ得る。
前述の調製方法は、本明細書中に参照することにより援用される米国特許5,397,785中で提供される。そこでの実施例25は、MKC−231の調製に関連する。
【0152】
実施例11−例示的組成物および投与量
上記に記載の組成物の記載に加えて、本発明は、さらに本明細書の神経薬剤を包含する追加組成物を提供する。当該組成物として、随意に、上記に記載通りの追加の神経薬剤が挙げられる。いくつかの具体的態様において、当該組成物は、上記に記載通りの式(1)で示される4−アシルアミノピリジン誘導体、あるいは、その医薬上許容され得る酸付加塩および医薬上許容され得るアジュバントの医薬上の有効量を包含する。
【0153】
本発明の神経性化合物は、単独または医薬上許容され得る担体との混合物の形態で投与することにより治療薬剤または医薬として用いられ得る。随意に、当該化合物は、本明細書に記載の追加の神経薬剤の1つ以上と一緒に製剤され得る。当該組成物は、活性成分として用いられる化合物の溶解度および特性、投与経路ならびに用法に基づいて当業者により慣例の事項として決定され得る。何ら限定されない例として、本発明の化合物は、顆粒、安定顆粒、粉末、錠剤、ハードカプセル、ソフトカプセル、シロップ、乳濁液、懸濁液および溶液の形態で経口投与され得る。本発明の化合物は、注射により、静脈注射、筋肉注射、または皮下注射により投与され得る。本発明の化合物は、注射可能な粉末として調製され、用事に適当な溶媒中に溶解または懸濁した後に注射し得る。
【0154】
化合物は、口腔、腸、非経口または局所投与に適する、有機または無機の、固形または液状の、担体または希釈剤と共に用いられ得る。固形製剤での媒体の限定されない例として、ラクトース、スクロース、澱粉、タルク、セルロース、デキストリン、カオリンおよび炭酸カルシウムが提供される。経口投与用液体製剤(つまり、乳濁液、シロップ、懸濁液、溶液等)は、水、植物油等の何ら限定されない希釈剤を含み得る。当該液体製剤は、不活性の希釈剤に加えて、保湿剤、懸濁剤、甘味剤、香料、着色剤、保存料等のような補助剤を含み得る。いくつかの具体的態様において、当該液体製剤は、ゼラチンのような吸収性壁物質(absorbable wall substance)の中にカプセル化され得る。注射製剤のような非経口製剤の調製に用いられる溶媒または懸濁剤として、水、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ベンジルアルコール、オレイン酸エチルおよびレチシンが用いられる。組成物の調製は、当業者に公知の通常の技術を用いて行われ得る。
【0155】
経口投与おける本発明の化合物の1日の臨床投与量は、成人一人に対し、約1乃至約1000mg、例えば約10乃至約100mgなどであり得る。当業者は、患者の年齢、疾患の状態、患者の状態、および、その他の医薬もしくは活性薬剤が投与されているかどうかによって服用量を増やすかまたは減らすことが望ましいと決定し得る。本発明の化合物の1日の服用量は、中間に適当な時間間隔で、1回、もしくは2回、または3回に分けて投与され得る。間欠投与も用いられ得る。
注射での本発明の化合物の1日の投与量は、成人一人に対し、約0.1乃至100mg、例えば約0.5乃至約50mgであり得る。
更に、本発明の化合物は、毒性が極めて低く、副作用をほとんど生じない。
【0156】
実施例12−例示的結晶形
4−アシルアミノピリジン誘導体の純粋または実質的に純粋な結晶形が、本発明の方法または実施において用いられ得る。いくつかの具体的態様において、米国特許6,884,805に記載のN−(2,3−ジメチル−5,6,7,8−テトラヒドロフロ[2,3−b]キノリン−4−イル)−2−(2−オキソピロリジン−l−イル)アセトアミド(すなわちMKC−231)の結晶形が、本発明の方法および実施に用いられる。当該結晶は、フォームAまたはフォームBの結晶であり得る。当該特許は、生理学的に許容され得る溶媒中の調製を含む、該結晶形の調製についての記載も提供する。
【0157】
フォームAの結晶は、以下の1つ以上:(i)示差走査熱量測定曲線から得られる約220℃未満の融点、とりわけ示差走査熱量測定曲線から得られる約217.6℃の融点、(ii)9.8°(±0.2°)のX線回折角ピーク,2θ、(iii)7.3°(±0.2°)のX線回折角ピーク欠如,2θ、(iv)約0.5mg/mL未満の水溶性、特に、約0.35mg/mLの水溶性、および(v)フォームBの結晶より高い保存安定性で特徴付けられる。
【0158】
フォームBの結晶は、以下の1つ以上:(i)示差走査熱量測定曲線から得られる約220℃より高い融点、特に、示差走査熱量測定曲線から得られる約222.6℃の融点、(ii)7.3°(±0.2°)のX線回折角ピーク,2θ、(iii)9.8°(±0.2°)のX線回折角ピーク欠如,2θ、(iv)約0.5mg/mLより高い水溶性、特に、約0.73mg/mLの水溶性、および(v)フォームAの結晶より低い保存安定性で特徴付けられる。
【0159】
当該結晶形は、フォームAまたはフォームBのいずれかを包含する原薬の形態であり得る。更に、本発明として、医薬上許容され得る担体およびフォームAまたはフォームBの結晶のいずれかを含む医薬上の組成物が挙げられる。
より詳細には、フォームAの結晶は、以下の1つ以上:
(a)示差走査熱量測定曲線から得られる、約220℃未満(例えば、約213−220℃の範囲、または約215−220℃の範囲、約216−218℃の範囲、約218℃の範囲、および約217.6℃の範囲)の融点(外挿された立ち上がり)、(b)8.7°、9.8°、11.4°、13.3°、15.5°、16.8°、および/または17.6°の回折角.2θ(それぞれ±0.2°)(例えば、2θ,9.8°(±0.2°)の回折角でのX線回折スペクトルの少なくとも1つのピーク)の少なくとも1つのX線回折スペクトルピーク、(c)7.3°、9.3°、11.9°、および/または14.8°のX線回折角,2θ(それぞれ±0.2°)の(ベースラインのノイズおよび機器の多様性を考慮に入れて)ピークの欠如、(d)約0.5mg/mL未満の(例えば、約0.1−0.5mg/mLの範囲、約0.2−0.45mg/mLの範囲、約0.3−0.4mg/mLの範囲、および約0.35mg/mLの範囲)(25℃での)水溶性、および(e)フォームBの結晶より室温(約25℃)および保存期間(長期)での良好な安定性で特徴付けられる。
【0160】
フォームBの結晶は、以下の1つ以上の:(a)示差走査熱量測定曲線から得られる約220℃より高い(例えば、約220−225℃の範囲、約221−224℃の範囲、約222−223℃の範囲、約223℃の範囲、および約222.6℃の範囲)の融点(外挿された立ち上がり)、(b)7.3°、9.3°、11.9°、13.5°、14.8°、15.9°、17.5°、および/または18.6°の回折角,2θ(それぞれ±0.2°)(例えば、7.3°(±0.2°)の回折角,2θでX線回折スペクトルの少なくとも1つのピーク)の少なくとも1つのX線回折スペクトルピーク、(c)8.7°、9.8°、および/または16.8°のX線回折角,2θ(それぞれ±0.2°)の(ベースラインのノイズおよび機器の多様性を考慮に入れて)ピークの欠如、(d)約0.5mg/mLより高い(例えば、約0.5−1mg/mLの範囲,約0.6−0.9mg/mLの範囲,約0.7−0.8mg/mLの範囲、および約0.73mg/mLの範囲)(約25℃での)水溶性、および(e)フォームAの結晶より室温(約25℃)および保存期間(長期)での低い安定性で特徴付けられる。
【0161】
本発明は、さらに安定で、純粋または実質的に純粋なMKC−231の結晶形AおよびBを提供する。該結晶形は、生理学的に適合する溶媒(例えば、エタノール、水、またはその溶媒)を用いて良好な再現性で調製される。用語「実質的に純粋」とは、フォームAの結晶またはフォームBの結晶のいずれかが、他の多形相の約10重量%未満(例えば、他の多形相の約5重量%)を含むことを示す。理想的に、前述の百分率は、本明細書に記載のフォームAおよびフォームB以外の多形相が存在し得る限りのどのような多形相をも参照する。
【0162】
結晶形は、本明細書に記載の疾患、障害、または状態の治療のための医薬上許容され得る(例、生理学的に許容され得るまたは医薬上適合性のある)担体を含む医薬上の組成物において用いられる。本発明の結晶形(およびその医薬上の組成物)は、それ故、疾患を有した哺乳動物、とりわけヒトの治療方法において有用である。
本発明のフォームAまたはフォームBの結晶の投与経路は、特に限定されない。当該結晶形は、随意に結晶形を保ちながら、経口または非経口のいずれかで投与され得る。あるいは、医薬上許容され得る(例、医薬上適合性のある)、活性成分および添加物を包含した医薬上の組成物として投与される。
【0163】
担体の選択は、上記に記載通り、1つには、個々の組成物および組成物を投与するために用いられる個々の方法の両方によって決定され得る。
医薬上許容され得る添加物を用いることができる。何ら限定されない例として、賦形剤、崩壊剤、崩壊補助剤(disintegrating aids)、結合剤、潤滑剤、コーティング剤、顔料、希釈剤、基剤、溶解剤、溶解補助剤(dissolving aids)、等張剤、pH調整剤、安定剤、推進剤、および接着剤が挙げられる。経口投与に適した製剤の何ら限定されない例として、錠剤、カプセル、粉末、微細顆粒、顆粒、溶液およびシロップが挙げられる。非経口投与に適した製剤の何ら限定されない例として、注射、ドロップ、軟膏、クリーム、経皮吸収剤、点眼剤、点鼻剤(ear drops)、吸入および坐薬が挙げられる。当該製剤は、アンプルおよびバイアルのような単剤(unitdose)または多剤(multi-dose)のシール容器に存在することができ、無菌の液体担体、例えば、使用直前に注射に用いる水の添加のみを必要とする凍結乾燥状態で保管することができる。医薬上の組成物の製剤の形態は、本明細書に列挙したものに限定されない。
【0164】
追加の賦形剤を経口投与に適した製剤に加えることができる。
適切な添加の賦形剤としては、グルコール、ラクトース、D−マンニトール、澱粉および結晶セルロース;崩壊剤または崩壊補助剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、澱粉およびカルボキシメチルセルロースカルシウム塩);結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリ(ビニルピロリドン)およびゼラチン);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウムおよびタルク);コーティング剤(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、サッカロース、ポリエチレングリコールおよび酸化チタン);ならびに基剤(ワセリン、流動パラフィン、ポリエチレングリコール、ゼラチン、カオリン、グリセリン、精製水およびハードファット(hard fat))が挙げられる。注射または点眼剤に適した製剤のための典型的な添加物としては、水溶性、または使用前に溶解される注射剤を構成する溶解剤または溶解補助剤(例えば、注射用蒸留水、生理食塩水溶液およびプロピレングリコール);等張剤(例えば、グルコース、塩化ナトリウム、D−マンニトールおよびグリセリン);pH調整剤(例えば、無機酸、有機酸、無機塩、および有機塩)が挙げられる。
【0165】
本発明の薬物の投与量は、疾患、治療の目的(例、予防または治療)、ならびに、年齢、体重、および症状などの患者の状態に依存して適切に増量または減量し得る。しかしながら、一般的に、経口投与での成人患者一人の1日の投与量は、1日当たり約0.05乃至約500mgである。一般的に、前述の投与量を、一度、毎日数回、または数日ごとに投与することができる。
当該結晶形は、次の参照文献:
Chaki et al., Bioorganic & Medical Chemistry Letters, 5(14), 1489-1494 (1995); Chaki et a., Bioorganic & Medical Chemistry Letters, 5(14), 1495-1500 (1995); Bessho et al., Arznein.Forsh./Drug Res., 46(I), 369-373 (1996); Murai et al., J. Neuron. Transm. [GenSect], 98, 1-13 (1994);およびAkaike et al., Jpn. J. Pharmacol., 76, 219-222 (1998)を参照にして更に理解され得る。
【0166】
特許、特許出願、および刊行物を含む、本明細書で引用する全ての参照文献は、予め明確に組み込まれているかまたは組み込まれていなくとも、本明細書中でそれらの全体を参照することにより援用される。
【0167】
本発明を十分に記載したが、本発明の意図や範囲から逸脱することなく、および過度の実験を行うことなく、同様の事柄を、広範囲の当量パラメーター、濃度、および状態の範囲内で行うことができると当業者に理解されるであろう。
【0168】
本発明は、その詳細な具体的態様に関連して記載してきたが、更なる改変が可能であることが理解されるであろう。本出願は、一般的に、本発明の本質に従い、さらに本発明が関連する技術分野の公知または慣用実施の範囲に入り、前記に説明した本質的特徴に適用され得るような本開示からの逸脱を含む、本発明のどのようなバリエーション、使用、または適用にも及ぶことが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0169】
【図1】図1は、神経薬剤MKC−231の神経分化についての効果を示す用量反応曲線である。データは、基本培地の値を差し引いた、神経ポジティブコントロールの百分率として示される。EC50は、ポジティブコントロール細胞の4.7μMと比較して、試験細胞中5.1μMのMKC−231濃度で観察された。
【図2】図2は、神経薬剤MKC−231の星状細胞分化についての効果を示す用量反応曲線である。データは、基本培地の値を差し引いた、星状細胞ポジティブコントロールの百分率として示される。EC50は、ポジティブコントロール細胞の19.9μMと比較して、MKC−231では未決定であった(試験濃度よりは濃い)。
【図3】図3は、培養神経幹細胞の集団に対する神経薬剤MKC−231の毒性/栄養効果を測定した用量反応曲線である。データは、基本培地細胞計数の百分率として示される。
【図4】図4は、AMPA作動薬(AMPA)との併用によって、神経分化に対する薬剤MKC−231の効果の増強を示す用量反応曲線である。データは、基本培地の値を差し引いた、神経ポジティブコントロールの百分率として示される。EC50は、MKC−231単独での5.1μMに比較して、AMPAとの併用で0.99μMのMKC−231濃度が観測された。
【図5】図5は、神経マーカー(neuronal marker )TUJ−1(緑)、星状細胞マーカーGFAP(赤)、細胞核マーカー(nuclear cell marker)(青色でのHoechst 33342)での免疫組織化学的染色後のヒト神経幹細胞(hNSC)の単層の免疫蛍光法による顕微鏡画像の組である。左上の画像は、ネガティブコントロール(基本培地)であり、上段中央の画像は、神経ポジティブコントロール(基本培地に加え既知の神経分化促進剤)、右上の画像は、星状細胞ポジティブコントロール(基本培地に加え既知の星状細胞分化の誘導物質)である。左下の画像は、31.6μM MKC−231のhNSC分化についての効果を示し、右下の画像は、0.3161μM AMPAとの併用における31.6μM MKC−231の神経分化についての効果を示す。
【図6】図6は、AMPA作動薬の添加濃度(0.32μM AMPA)での併用による神経分化についての薬剤MKC−231の増強効果を示す複数実験(N=6)の平均用量反応曲線である。用いられたAMPAの濃度は、単独で神経分化を促進しなかった(灰色点線)。データは、基本培地の値を差し引いた、神経ポジティブコントロールの百分率として示された。EC50は、固定された濃度AMPAの存在下(黒色破線)の存在下で、3.7μMのMKC−231単独(黒色線)と比較して、0.22μMのMKC−231濃度で観測された。
【図7】図7は、AMPA拮抗薬(NBQX)との併用による神経分化についての薬剤MKC−231の阻害効果を示す用量反応曲線である。データは、基本培地の値を差し引いた、神経ポジティブコントロールの百分率として示す。EC50は、MKC−231単独での5.1μMと比較した、AMPAの併用における>31.6μMのMKC−231濃度で観測された。
【図8】図8は、賦形剤対照(±SEM)と比較した、海馬の神経新生(新生ニューロンの増加)における変化を示す棒グラフである。y−軸は、賦形剤対照と比較した百分率変化を示す。28日間のBCI−540の1.0および4.0mg/kgの1日投与は、歯状回の顆粒細胞層内部の新生ニューロンにおいてそれぞれ22%および20%増加という結果であった。
【図9】図9は、賦形剤対照(±SEM)と比較した、新たな抑制食餌試験(うつ病の動物モデル)における食餌潜伏の変化を示す棒グラフである。y−軸は、賦形剤対照と比較した百分率変化を示す。21日間の1.0mg/kgのBCI−540および10.0mg/kgのフルオキセチンの1日投与は、それぞれ35%および38%の食餌潜伏の減少という結果であった。
【図10】図10は、賦形剤対照(±SEM)と比較した、高架式十字迷路(不安動物モデル)のオープンアームでの滞在時間の平均百分率を示す棒グラフである。21日間の1.0mg/kg BCI−540の1日投与は、オープンアームでの滞在時間の20%の増加を示す結果となった。古典的抗不安ジアゼパムの単回投与は、オープンアームでの滞在時間の12%の増加を示す結果となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体または患者における、細胞変性、精神状態、細胞外傷および/もしくは傷害、または他の神経関連状態に関連する神経系障害の治療方法であって、該被検体または患者に4−アシルアミノピリジン誘導体を投与することを包含する、当該方法。
【請求項2】
当該神経系障害が、神経変性障害、神経幹細胞障害、神経前駆細胞障害、網膜変性疾患、虚血性障害、およびその組み合わせから選択される細胞変性が関連する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前述の神経系障害が、神経精神障害、情動障害、うつ病、軽躁病、パニック発作、不安症、過度の高揚感、双極性うつ病、双極性障害(躁うつ病)、季節性気分(または感情)障害、統合失調症および他の精神病、脳回欠損症候群、不安症候群、不安障害、恐怖症、ストレスおよび関連症候群、認知機能障害、攻撃性、薬物およびアルコールの乱用、脅迫性行動症候群、境界性人格障害、非老年性認知症、疼痛後うつ病、産後うつ病、脳性麻痺、およびその組み合わせから選択される精神状態に関連する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
精神状態に関連する前述の神経系障害が、うつ病、双極性うつ病、双極性障害(躁うつ病)、疼痛後うつ病および産後うつ病から成る群より選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
細胞外傷および/または傷害に関連する前述の神経系障害が、神経外傷(neurological trauma)および損傷、外科手術に関連する外傷および/または傷害、網膜傷害および外傷、てんかんに関連する傷害、脊髄傷害、脳傷害、脳外科手術、脳傷害に関連する外傷、脊髄傷害に関連する外傷、癌治療に関連する脳傷害、癌治療に関連する脊髄傷害、感染症に関連する脳傷害、炎症に関連する脳傷害、感染症に関連する脊髄傷害、炎症に関連する脊髄傷害、環境有害物質に関連する脳傷害、環境有害物質に関連する脊髄傷害、およびその組み合わせから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前述の神経関連状態が、学習障害、記憶障害、自閉症、注意欠陥障害、ナルコレプシー、睡眠障害、認知障害、てんかん、側頭葉てんかん、およびその組み合わせから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前述の精神状態がうつ病を包含する、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前述の方法が、さらに、前述の被検体または患者に抗うつ剤を投与することを包含する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前述のうつ病が被検体または患者によるモルヒネの使用に起因する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前述の4−アシルアミノピリジン誘導体が2−(2−オキシピロリジン−1−イル)−N−(2,3−ジメチル−5,6,7,8−テトラヒドロフロ(2,3−b)キノリン−4−イル)アセトアミドである、請求項1−9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前述の4−アシルアミノピリジン誘導体が結晶形である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前述の4−アシルアミノピリジン誘導体が医薬上許容され得る組成物中にある、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
被検体または患者への移植のために当該細胞または組織を調製する方法であって、該細胞または組織を4−アシルアミノピリジン誘導体と接触させることにより、当該細胞または組織における神経新生を促進または増加させることを包含する、当該方法。
【請求項14】
細胞または組織における神経新生を促進または増加させる方法であって、細胞または組織を4−アシルアミノピリジン誘導体と接触させることを包含する、当該方法。
【請求項15】
当該細胞または組織が動物被検体またはヒト患者中に存在する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
当該患者が神経新生の必要があるか、あるいは中枢または末梢神経系の疾患、状態、または傷害であると診断されている、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
当該方法が、さらに、当該細胞または組織をオピオイドまたは非オピオイド神経薬剤と接触させることを包含する、請求項14−16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
当該非オピオイド神経薬剤がサブコメリンのようなムスカリン受容体リガンドである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
当該神経新生が神経細胞系での神経幹細胞(NSCs)の分化を包含する、請求項14の方法。
【請求項20】
当該神経新生がグリア細胞系での神経細胞(NSCs)の分化を包含する、請求項14の方法。
【請求項21】
当該オピオイドがカッパオピオイド受容体拮抗薬である、請求項17−20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
当該オピオイドがカッパオピオイド受容体選択的拮抗薬である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
当該オピオイドがJDTic、ノルボルナジエン、およびブプレノルフィンから選択される、請求項22の方法。
【請求項24】
当該細胞または組織が神経新生の減少を示すか、あるいは神経新生を減少または阻害する薬剤に付される、請求項15または16に記載の方法。
【請求項25】
神経新生を減少または阻害する当該薬剤がオピオイド受容体作動薬である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
当該作動薬がモルヒネまたはその他のアヘン剤(opiate)である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
当該被検体または患者が1つ以上の薬物中毒もしくは依存を有する請求項15または16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−525979(P2009−525979A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553432(P2008−553432)
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【国際出願番号】PCT/US2007/003326
【国際公開番号】WO2007/092535
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(000002956)田辺三菱製薬株式会社 (225)
【Fターム(参考)】