説明

5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンナトリウム塩の結晶形、それを含有する医薬品調製物、および前記形態の製造の方法

本発明は、5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンナトリウム塩の2種の新規の結晶形IおよびIIの提供に関する。驚いたことに、形態Iおよび形態IIは、異なる免疫作用を有することが発見された。この有利な性質は、免疫特異的な適用に有用である。さらに、両形態は、有利な物理化学的性質を有し、形態Iもしくは形態IIまたは両方の混合物の医薬品調製物の製造、さらなる加工および/または使用において有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有利な性質を有する、5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンナトリウム塩の少なくとも2種の新規の結晶形、それを含有する医薬品調製物、およびそれを製造する方法の提供に関する。
【0002】
本発明は、詳細には、医療目的の免疫賦活性および免疫抑制性を有する、5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンナトリウム塩の2種の新規の結晶形の提供に関する。
【背景技術】
【0003】
免疫調節作用を有する化合物は、当業界でかなり以前から知られている。これらの化合物に、本発明の化合物である5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンナトリウム塩もまた属し、これは、例えば、特許文献1から知られ、以下の基本構造(Na+は示さず)を有する:
【0004】
【化1】

【0005】
上記の基本構造はルミノールとも呼ばれる。5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンアルカリ塩は、異なる水和物形態で固体物質として結晶化することが先行技術から知られている。先行技術において、特に、ナトリウム塩の二水和物(特許文献2)、および、カリウム塩の三水和物、およびその混合形(特許文献3)が記載されている。
【0006】
物質の結晶形が、例えば、溶解性、溶解速度、安定性などのそれらの物理的性質において異なり得ることは当業界で知られている(非特許文献1)。
【0007】
そのような性質は、活性成分の医薬品加工ならびにその生物学的利用能およびそれによる生物学的有効性に影響を与えることがある(参照:非特許文献2)。
【0008】
医薬の製造のためには、原物質は、全製造工程中の固体挙動において、安定で、水を吸わず、制御可能なことが重要である。さらに、活性成分の長期の保存性と共に化学安定性および固体相の安定性が極めて重要である(参照:非特許文献3)。より長期の保存時間にわたってさえ、活性成分の物理的性質が維持されることは望ましい。これは、例えば、活性成分の吸湿性、溶解性または初期溶解速度に関係する。
【0009】
特許文献4は、医療目的のために使用される、二水和物形態をもたらす5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンナトリウム塩を製造する方法を記載している。この方法の欠点は、生成物中に残渣が残り得る重金属触媒の使用である。残渣を含む生成物は、アレルゲンの可能性を有し、一般にEMEA(ガイドラインEMEA/CHMP/SWP/4446/2000参照)によって医薬としての使用には危険であると見なされている。
【0010】
医薬品加工および医療での使用にとって非常に重要なことは、所望の結晶形の、信頼できかつ再現性のよい製造を可能にする製造方法である。結晶形を製造する場合、工程パラメーターの小さい乖離ですら、生成物の結晶構造の変化を引き起こし、それにより最終的に異なる結晶形または混合形態をもたらし得ることを考慮に入れるべきである。その結果として変化した性質(例えば、異なる溶解性によって変化した生物学的有効性)は、バッチ全部の拒絶をもたらすことがあり、多くの場合、所望の形態を製造することは全く不可能である(参照:非特許文献4)。活性成分の純度、および結果として得られた、有効性の可能な変化に加えて、医薬品加工のためのさらなる重要な性質、例えば、結晶形の流動性または流速の障害によって錠剤にプレスされる能力は、有害な影響を受けることがある。5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンアルカリ塩は、アミノフタルヒドラジドの群に属し、特殊な抗炎症性、抗酸化性および抗毒性を有する免疫調節薬として先行技術に記載されている(参照:特許文献4;特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8)。
【0011】
免疫調節物質は、一般に、それらの作用に従って免疫抑制薬および免疫賦活薬に分類される(参照:非特許文献5)。
【0012】
例えば、免疫抑制性TNFアルファ遮断薬または免疫賦活性インターフェロンベータ調製物などの、もっぱら免疫抑制性またはもっぱら免疫賦活性の作用を有する対応する調製物は、正にそれらの非常に特異的な作用機序のために、しばしば生命体中で著しい望まれない副作用を引き起こす。例えば、TNFアルファ遮断薬アダリムマブなどの、いくつかの公知の免疫抑制性物質は、特異的にある種の炎症性メディエーターを阻害する。そのような治療は、個々の炎症性メディエーターの遮断が複雑な免疫系の激しい介入であるので、深刻な副作用を有すると知られている(参照:非特許文献6)。したがって、生命体は、例えば、細菌感染などの外因性のまたは内因性の炎症性刺激に自動的に生理学的に適切に反応する機能を果たすことがもはやできない。したがって、例えば、TNFアルファ遮断薬の適用は、重い感染の場合には禁忌であり、これは、特に、敗血症および結核に当てはまる。例えば、関節リウマチの治療のためなどの対応する薬剤を投与する前に、TBCスクリーニングが強く推奨される(参照:非特許文献7)。さらに、非特許文献8は、TNFアルファ遮断薬は、敗血性の症状の場合には臨床適用に適切ではなく、それと反対に、死亡率の増加にさえつながり得ることを明瞭に実証することができた。
【0013】
しかし、5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンアルカリ塩の特定の免疫調節の性質は、過剰の免疫応答によって引き起こされる、いわゆるサイトカインストーム(非特許文献9参照)の予防に疑いもなく有用である。いわゆるサイトカイン遮断薬と異なり、これらの塩は、個々のサイトカインの阻害が起こらないので、ほとんど副作用がないが、これらは生理学的な水準に調節され、したがって、感染性微生物に対する生命体の十分な反応は一層確実になる。しかし、先行技術は、5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンのアルカリ塩の個々の結晶形に対し、異なる免疫特異的作用を割り当てていない。特に、個々の結晶形を、具体的に、指標に従って、すなわち、好ましくは免疫抑制薬としてか、または好ましくは免疫賦活薬としてか、いずれの基本的かつ特異的な免疫調節の主作用に従って、使用することができるのか、先行技術において明言を見出すことはできない。
【0014】
5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンナトリウム塩の特殊な医療適用は、異なる実験ランで5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンアルカリ塩の異なる用量(0.2μgから1,000mg)を使用することによる、「免疫系の矯正」を含む特許文献9に記載されている。この範囲内の有効量は、検討された疾患、ならびに、例えば、人種、年齢、性別、および体重などの個人のパラメーターに応じて変動した。例えば、5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンナトリウム塩の2から200μgの間の異なる用量の適用によって、赤血球の皮下注射により誘発されたマウスの細胞免疫応答(遅延型過敏症応答−DHR)が異なる結果となった。使用された用量が低いほど、DHR指数は高かった。2つの使用されたマウス系統のより敏感なものにおいて、最大用量ではDHRの阻害をもたらす。特許文献9のこの例、およびさらにインビボ、およびインビトロ、ならびにまた臨床例は、5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンアルカリ塩の低用量は、主として免疫賦活性に作用するが、5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンアルカリ塩のより高用量は主として免疫抑制性に作用することを示す。異なるマウス系統に対して免疫賦活性用量から免疫抑制性用量までの転移が別々に高いので、ヒト医学および獣医学において異なる種および個体の治療はまた、集団遺伝作用を引き起こし、それによって、この用量依存的な適用の特別の危険性が結果として生じる。
【0015】
したがって、臨床実践に対して、特に先天的もしくは後天性免疫不全または過剰の免疫応答を有する重篤な疾患の予防に対して、物質の異なる多形の単純な提供によって免疫調節を特異的に制御する方法は有利であろう。
【0016】
好ましくは賦活性の免疫調節薬の性質が、例えば、HIV感染後または化学療法の治療後などの弱い免疫防御の患者の治療処置には望ましい。
【0017】
好ましくは抑制性の免疫調節薬の性質が、例えば、外科手術、自己免疫疾患およびアレルギーの場合などには、炎症過程を最小限に抑えるのに望ましい。
【0018】
いくつかの徴候、特に再発する炎症性疾患の臨床実践において、免疫賦活薬ならびに免疫抑制薬はしばしば治療上、同時にまたは交代で使用される(参照:非特許文献10; 非特許文献5)。このことは相互作用の危険性を増加させる。したがって、反対の作用を生じ得る物質の種類の化学的に類似した物質は、臨床実践に対し利点を提供するが、それは、同じ目的で使用される異なる物質の種類の活性成分より、同時のまたは時間をずらした投与で、生命体中で薬理学的に引き起こされる相互作用が少ないと期待することができるからである。
【0019】
先行技術の欠点はさらに、免疫調節薬の用量依存的な適用は、投与する医師または患者自身のより高度の注意深さを必要とし、したがって適用の誤りの危険性を増加することである。
【0020】
したがって、5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンアルカリ塩の用量依存的な免疫特異的な適用だけが、さらにこの物質の種類の医療の利点を利用する実践的で危険性の低い治療適用に望ましいのではない。
【0021】
免疫系の複雑な法則における介入によって、関与する生命体にとって重大な帰結が起こり得ることに留意する必要がある。したがって、医療の適用にとってより重要なのは、可能な限り少ない副作用、および免疫学的に引き起こされる疾患の特異的な予防または治療を可能にする免疫学的に画定された作用を有する免疫調節薬である。そのような免疫調節薬は、医学にとって大きい重要性を有するであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1203587A号
【特許文献2】ロシア特許第2113222C1号
【特許文献3】ロシア特許第2211036C2号
【特許文献4】米国特許第6,489,326B1号
【特許文献5】欧州特許出願公開第0617024号
【特許文献6】米国特許第5,512,573号
【特許文献7】米国特許第5,543,410号
【特許文献8】米国特許第7,326,690B2号
【特許文献9】米国特許出願公開第2003/0195183A1
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】Haleblian and McCrone (1969): Journal of Pharmaceutical Sciences, 58:911−929
【非特許文献2】Griesser (2006) in: Polymorphisms in the Pharmaceutical Industry. Hilfiker (Ed.) 211−234
【非特許文献3】Miller et al. (2006) in: Polymorphisms in the Pharmaceutical Industry. Hilfiker (Ed.) 385−403
【非特許文献4】Ulrich and Jones (2005): Nachrichten aus der Chemie 53:19−23
【非特許文献5】Rote Liste Service GmbH (2011): www.rote−liste.de
【非特許文献6】Descotes (2008): Expert Opin. Drug Metab. Toxicol., 4: 12: 1537−1549
【非特許文献7】Diel et al. (2009): Z Rheumatol 5:411−416
【非特許文献8】Hoffmann (2005: Intensivmed 42:371−377)
【非特許文献9】Suntharalingam et al. (2006): N Engl J Med 355;1018−28
【非特許文献10】DMSG 2006: Aktuelle Therapieempfehlungen September 2006
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、上記の先行技術の背景のもとでなされ、本発明の目的は、したがって、主として免疫抑制、または主として免疫賦活の目的のために特異的に使用することができる、特異的な、独立の免疫学的作用を有する5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンナトリウム塩の新規の形態を提供することである。特に望ましい特性として、これらの新規の形態は、用量から独立して、主として免疫賦活性、または主として免疫抑制性の作用を有することが意図されている。さらに、提供される形態は、製造され、保存され、および/または個々にまたは組み合わせて適用される薬剤について有利である物理化学的性質を有することである。
【0025】
この目的は、5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンナトリウム塩(無水物形態IおよびII)の2種の新規の無水物の提供によって達成され、これらは、物理化学的および独立の免疫調節の性質における実験データに基づいて、先行技術、すなわち、特に公知の5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンナトリウム塩に対して、驚くほどまた確実に対照をなす。本発明による無水物形態I(→結晶形I)は、免疫調節の、特に主として免疫賦活性の性質を有するが、本発明による新規の無水物形態II(→結晶形II)は、免疫調節の、特に主として免疫抑制性の性質を有する。
【0026】
結晶形IおよびIIは、1つのX線粉末回折図(図2および3)それぞれに表わされた面間隔および2−シータ角の10の固有値それぞれによって規定される。
【0027】
本発明者らは、形態IおよびIIが、安定性、保存性、非吸湿性および溶解性を包含する、医薬品加工および適用にポジティブな物理的性質を有することを見出した。これらは、例えば、水含有率が変化し、したがって例えば、錠剤プレス加工、カプセル化または減菌の間に活性成分の重量変化による製剤問題が生じ得る二水和物と比較して、医薬品製造およびさらなる加工に有利である。本発明による形態および先行技術の間には、例えば、溶解性において、物理的性質の違いがある(表6参照)。
【0028】
さらに、本発明者らは、本発明による5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンナトリウム塩の新規の無水物形態を実現可能かつ再現可能な仕方で可能にする方法を提供するという課題を自らに課した。記載の方法は、重金属触媒を使用せずに行われ、また任意のバッチの大きさに対してさえ、新規の結晶形IIの再現可能な製造を可能にするように意図されている。さらに、本発明者らは、医薬品加工および異なる適用の種類に関して有利な性質を有する結晶形IおよびIIを製造する方法を提供するという課題を自らに課した。
【0029】
この目的は、水酸化ナトリウムおよびルミノールが水中で溶解される、結晶形IまたはIIを、場合によって製造する少なくとも1つの方法によって達成された。低分子アルコール、好ましくは、エタノールまたは2−プロパノールの添加によって、結晶性ルミノールナトリウム塩は沈殿する。所望の結晶形IまたはIIは、単離および反復洗浄ステップならびに一定の撹拌時間を維持した後、得られる。本発明による方法は、任意のバッチの大きさに対し使用することができる。
【0030】
両結晶形を製造するための初めの物質は、可能な限り純粋なルミノールであり、または、3−ニトロフタル酸無水物に対して適切な還元剤を用いてアルカリ媒体中で3−ニトロフタル酸を還元することによってそれを製造する方法である。再結晶化による随意の精製ステップは、その後行われる。
【0031】
本発明は、最終的に、形態IまたはIIの医薬品調製物またはその組み合わせを、それぞれ単独でまたは薬学的に適切な補助物質と一緒に含む
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】形態I(上)およびII(下)の走査電子顕微鏡像を示す図である。
【図2】結晶形Iの粉末回折図である。
【図3】結晶形IIの粉末回折図である
【図4】時間(20分)の関数としての、形態IおよびIIの水中での溶解速度を説明する図である。形態Iは、2本の線のうちの下の線で示し、形態IIは上の線で示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
他に示されない限り、本発明において使用される技術および科学用語は、当業者が持つと考える意味を有する。
【0034】
「生命体」は、自己調節免疫システムを備える生体、特にヒトまたは動物である。
【0035】
用語「活性成分」は、結晶形Iもしくは結晶形II、または両方の混合物を含む。
【0036】
用語「医薬品調製物」は、例えば、粉末、懸濁液、乳剤および/またはその混合物などの、任意の薬理学的に適切な規定用量および投与の形態の活性成分を含む。それは、成分の組み合わせ、凝集、複合体形成として、または他の反応もしくは相互作用の結果として、およびさらなる他の活性成分単独でもしくは組み合わせて、直接的または間接的に生成される、薬学的に適切な補助物質、およびすべての物質を含む。
【0037】
本発明による活性成分の医薬品調製物は、個々にまたは他の補助剤および標準療法と組み合わせて、液体および固体形態の本発明に従って製剤化することができ、また、任意の医学的に許容される方法で、主として、しかしこれに限るものではないが、静脈内に、筋肉内に、局所に(例えば、目薬)、皮下に、経皮的に、膣に、直腸に、または舌下、口腔を含む経口的に、ならびに物質溶出性インプラントの形態で投与される。液体の形態は、例えば、溶液(例えば、注射および浸剤用)、懸濁液、乳剤、スプレー剤、ローション剤および軟膏剤であってもよい。固体の形態は、錠剤、糖衣錠、カプセル剤、粉末または当業者によく知られていて、適切に見える他の形態、例えば、坐剤であってもよい。
【0038】
用語「補助物質」は、活性成分自体に加えて医薬品調製物のすべての要素を記載するために本明細書において使用される。適切な補助物質の選択肢は、適用および用量のタイプなどの因子、ならびに補助物質自体による調製物の溶解性および安定性への影響に依存する。
【0039】
医薬品「補助物質」は、当業者に公知であるか、または標準的医薬品教科書または公的な調剤書(例えば、ヨーロッパ薬局方)において見ることができる物質である。そのような物質は、例えば、異なる組織および器官中で活性成分の分布に影響を及ぼし、または、例えば、再吸収の促進によって(例えば、ジメチルスルホキシド、ニコチン酸、ヒアルロニダーゼによって)、医薬形態の有効性の期間 または作用の速度を変化させることができ、またはそれによってそれらの有効性の始まりが適切な遅延調製物によって遅らせられる。
【0040】
所望の形態の適用における使用のための医薬品補助物質は、例えば、経口適用のための、適切な錠剤崩壊剤と一緒の、例えば、クエン酸ナトリウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウムであってもよい。これらは、例えば、水分取り込みにより膨脹する物質(デンプン、セルロース誘導体、アルギナート、多糖類、デキストラン、架橋ポリビニルピロリドン)、水との化学反応によってガスを発生する物質(炭酸水素ナトリウム、クエン酸および酒石酸)、または親水化剤として、微結晶の湿潤を改善し、それにより水中でその溶解を媒介する物質(例えば、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル)であってもよい。
【0041】
補助物質はまた、例えば、デンプン、ゼラチン、糖物質、セルロース誘導体などの結合剤、または糖物質などの希釈剤として使用することができる物質である。さらには、表面活性物質、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムもしくはポリソルベート80、または例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウムなどの滑沢剤、ならびに、さらには、芳香剤、抗酸化剤、染色剤および保存剤を当業者は適切と考える。
【0042】
用語「実質的に純粋な」は、少なくとも95%、好ましくは98%、最も好ましくは99%の5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンナトリウム塩の活性成分の純度を意味する。
【0043】
用語「免疫特異的な」は、免疫不全の素因または過剰な免疫系を含む疾患を治療するための形態Iおよび/または形態IIの特定的用法を示す。
【0044】
用語「作用」は、主として免疫賦活性の、または主として免疫抑制性の作用を有する本発明のための活性成分の作用の、特異的な、ここでは免疫特異的なメカニズムを記載する
5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンナトリウム塩の新規の結晶形IおよびII
【0045】
5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンナトリウム塩の新規の結晶性形態IおよびII
本発明は、波長ラムダ=1.54187Åを有し、X’Celerator Scientific RTMS検出器を備え、ニッケルでフィルターされる銅放射CuK(α1)を使用し、Dまたは2−シータ値で表わされたBragg−Brentano回折計(Panalytical X’Pert Pro)のX線粉末回折図を特徴とする5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンナトリウム塩の新規の結晶性無水物形態Iを含む。ただし、「D」は面間隔であり(表1)、「2−シータ」は2−シータの角度である。I(rel)は、反射の相対強度を表す(表2):
表1:無水物形態IのD値:
【0046】
【表1】

表2:無水物形態Iの2−シータ値および相対強度I(rel):
【0047】
【表2】

ただし、w=弱い、m=中程度、st=強いおよびvst=非常に強い
【0048】
本発明は、波長ラムダ=1.54187Åを有し、X’Celerator Scientific RTMS検出器を備え、ニッケルでフィルターされる銅放射CuK(α1)を使用し、Dまたは2−シータ値で表わされたBragg−Brentano回折計(Panalytical X’Pert Pro)のX線粉末回折図を特徴とする5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンナトリウム塩の新規の結晶性無水物形態IIをさらに含む。ただし、「D」は面間隔であり(表3)、「2−シータ」は2−シータの角度である。I(rel)は、反射の相対強度を表す(表4):
表3:無水物形態IIのD値:
【0049】
【表3】

表4:無水物形態IIの2-シータ値および相対強度I(rel):
【0050】
【表4】

ただし、w=弱い、m=中程度、st=強いおよびvst=非常に強い
【0051】
有利な物理的性質:
本発明による両形態は、走査電子顕微鏡によって識別することができる。形態IIは、主として層で構成される、数マイクロメートル長さの針状微結晶の八面体構造であるが、形態IのSEMにおいては、粉末状に凝集した、丸い端部を有する、主として形態学的に不均一の微結晶が見られる(図1)。それらの結晶形から、本発明による形態を薬学的に加工するのに有利な性質が結果として生じる。形態Iと比較して、形態IIは、その結晶の粒子形態により、より高い流動性およびそれにより改善された濾過性を有するが、形態Iは、特に錠剤プレス加工に対してそのより大きいかさ密度によって、より適切であり、これは、恐らくその層状の下部構造の結合のために、凝集する傾向によってさらに促進される。
【0052】
両結晶形は、室温(25℃)および40℃で少なくとも2か月の時間安定であり、それぞれ335℃±10℃(形態I)または385℃±10℃(形態II)を超えると崩壊のみが起きるが、米国特許第6,489,326B1号による二水和物においては、吸熱的固体相転移が85℃で既に観察することができる(表5)。米国特許第6,489,326B1号による二水和物の固体相転移は、Linseis L81−077を用いる同時の熱重量分析−示差熱分析によって、Netzsch STA 449C熱天秤を用いる質量分光測定と結合し、MSとFTIRとをヘリウム下で30〜300℃で結合して測定した。形態I〜IIの崩壊温度は、合成空気(4N:1O)中、30〜500℃で同じ装置を用いて求めた。データは工場設定のソフトウェアProteusを用いて解析した。
表5:形態I〜IIの崩壊温度、および米国特許第6,489,326B1号による二水和物の固体相転移の測定
【0053】
【表5】

【0054】
熱分析データは、両結晶形が安定性および保存性に関して有利な性質を有するという、本発明者らの仮定を確証する。米国特許第6,489,326B1号の二水和物と比較して、これらの性質は、高エネルギー入力、例えば、減菌または粉砕を含むステップに対して鈍感にすることにより、本発明による結晶形IおよびIIの医薬品加工性をさらに促進する。
【0055】
さらに、両結晶形IおよびIIは、水含有率の変化に関して実質的に安定しているので、その結果、さらなる医薬品加工(例えば、錠剤化、カプセル化など)の間の活性成分の重量変化のための製剤問題が軽減される。
【0056】
さらに、飽和溶液中の結晶形の溶解度が求められた。それによると、形態IIは形態Iより可溶性であり、両形態は、米国特許第6,489,326B1号による二水和物より明らかに可溶性である。注射溶液用のより高く良好な最大溶解度がより小さい注射体積を可能にし、低含水率を有するクリームなどの局所調製物に著しくより良好な加工性を提供するので、新規の結晶形は、先行技術と比較して利点を示す。
表6: 米国特許第6,489,326B1号に従って入手可能な二水和物(米国特許第6,489,326B1号)と比較した室温での水中の形態Iおよび形態IIの溶解度の調査
【0057】
【表6】

【0058】
形態IIの比較的より良好な溶解度はまた、初期溶解速度のデータによって支持される。これらのデータは、形態IおよびIIが記録を始めた5分後に添加され、それぞれ15秒間隔の測定でのインサイチューATR−IR測定で得られる。10mL HO VE中での0.25gの形態Iまたは形態IIの完全溶解は、それぞれ、25℃で撹拌(500rpm)しながら達成された。水溶液に添加した後の初めの数分内の形態IIの溶解速度は、完全平衡濃度に到達するのが遅い形態Iのそれより大きいことがわかった。形態IおよびIIの異なる溶解度および初期溶解速度(図4)は、それらの異なる表面構造(図1)によって引き起こされ得る。形態Iの形態学的に不均一な丸い微結晶は、その形状によって溶媒に、より大きい接触可能表面を提供する形態IIの八面体結晶より、偏向的に緻密な表面構造を表す。形態IおよびIIの間の初期溶解速度の違いは、形態Iに関してより遅い溶解速度が、活性成分の遅れた放出(遅延製剤)が意図される利点を提供するので、経口製剤の製造にとって特に重要である。可能な限り最速および最高の生体利用率が意図される場合、形態IIに関するより迅速な溶解速度は、経口急性薬剤の製剤に有利である。
【0059】
形態IおよびIIの異なる熱的安定性は、ナトリウム陽イオンおよびルミノラート分子の異なる化学量的な配位によって引き起こされる。形態Iにおいて、1個のナトリウム陽イオンは、合計6ルミノラート分子中の分子間水素結合によって三方柱に配位するが、形態IIにおいては、わずか4ルミノラート分子が分子間水素結合によって四面体に配置されている。それにより、形態IIは、形態Iよりも、熱的に偏向的に良好でより安定な配位を結果として生じる。
【0060】
医療用途:
驚いたことに、本発明者らは、実験的なインビトロおよびインビボ調査において、結晶形IおよびIIの間に顕著に異なる免疫学的作用を見出した。
【0061】
さらに、形態IおよびIIは、先行技術より特異的な方式で、それらの異なる免疫調節作用によって使用することができることが見出された。すなわち、形態IIにはある種のサイトカインに対して免疫調節の、主として抑制性の作用があるが、形態Iは、ある種のサイトカインに対して主として免疫賦活性の作用を示す。したがって、形態IIは、過剰の免疫応答を含む症状の下での治療適用に特に適切であるが、形態Iは、免疫不全の素因を含む徴候の下での治療適用に特に適切である。
【0062】
特に慢性疾患(例えば、多発性硬化症、C型肝炎、慢性腸炎および結腸炎)については、患者の免疫状態が常に変化することがあり、その結果、免疫賦活性から免疫抑制性治療の、もしくは免疫抑制性から免疫賦活性の変化、または両手法を組み合わせたもしくは時間をずらした投与は妥当と思われる。(参照:DMSG 2006: Aktuelle Therapieempfehlungen September 2006)。したがって、以下のリストは単に例示であり得るが、過剰の免疫応答を含む症状に対する疾患の帰属は、形態IIを用いるまたは形態Iおよび形態IIの組み合わせを用いるその治療を排除せず、また、免疫不全の素因を含む症状に対する疾患の帰属は、形態Iを用いるまたは形態Iおよび形態IIの組み合わせを用いるその治療を排除しない。
【0063】
過剰の免疫応答を有する症状は、例えば、移植後の拒絶反応、活動性自己免疫疾患(特に、活動性関節リューマチ、再発性多発性硬化症、ルポイド肝炎、結節性多発性動脈炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、皮膚筋炎、ベーチェット病、ブドウ膜炎、血小板減少性紫斑病、重症筋無力症、多発性筋炎、乾癬、乾癬関節炎、ベヒテレフ病、発作性夜間血色素尿症、強直性脊椎炎、自己免疫甲状腺炎、など)、再生不良性貧血、天疱瘡、類天疱瘡、外因性ブドウ膜炎、ネフローゼ症候群およびアトピー性皮膚炎、ならびに、特に好ましくは、例えば、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)などのグラム陰性またはグラム陽性病原体との細菌感染によって誘発される敗血性の症状、および他(例えば、免疫学的または化学的)の因子によって誘発される全身性炎症反応症候群(SIRS)である。
【0064】
免疫不全の素因を有する症状は、例えば、頻繁なインフルエンザ、再発性気道感染、導出性尿路の再発性感染、疲労、虚弱、原因不明の放心、健康回復、慢性ウイルス感染(特に、HIV、B型肝炎、C型肝炎、脳炎、帯状疱疹、単純疱疹、内耳の感染、水痘、麻疹、巨細胞腫、エプスタイン−バー)、異なる腫瘍疾患(特に、毛様細胞性白血病、骨髄性白血病、多発性骨髄腫、濾胞性リンパ腫、カポジ肉腫、皮膚T細胞リンパ腫、鼻咽頭癌、類癌腫、腎細胞癌腫、膀胱癌、基底細胞癌腫、転移性癌腫、および特に好ましくは黒色腫)、敗血性肉芽腫症、好中球減少、性器疣贅、角化症、自己免疫疾患(特に、例えば、増悪間での再発性多発性硬化症などの非活動性段階)、放射能による大腸炎、憩室炎、アレルギー(特に、枯草熱、多型光線疹、湿疹、神経皮膚炎)、腸炎、大腸炎であるが、それだけでなく、特に好ましくは化学療法および放射線療法の前、最中および後に付随する。
【0065】
驚いたことに、本発明者らは、好ましくは無水物の、特に好ましくは形態Iおよび形態IIの多形の、5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンナトリウム塩の特定の結晶形の単純な提供によって、異なる作用を示すことができる。これらの異なる作用は、主として免疫賦活の(形態I)、または主として免疫抑制(形態II)の目的に対して、両形態が免疫系で調節する方式で一般に作用する、特異的な免疫調節薬の適用を可能にする。それにより、本発明者らは、インビトロ、およびインビボで、形態Iに対して驚くべき免疫賦活性の作用を証明することができた。
【0066】
形態IIは、対照的に、活性化マクロファージに対して有利な免疫調節性を有する。本発明者らは、特に、LPS刺激したマクロファージを用いるインビトロ試験に基づいた形態IIの主として免疫抑制性の性質を実証することができた。これによって、IL−6値の明瞭な低下が達成された。マウス(S.ピュオゲネス(pyogenes)を含む敗血症モデル)のインビボ試験によって、形態IIの相当な治療有効性もまた検証することができよう。
【0067】
さらに、本発明者らは、健康なマウスの体重推移および肝酵素値によって、新規の形態IおよびIIが、まったくまたは極く低い毒性しか有していないことを示すことができた。両形態は、排他的に免疫賦活性、または排他的に免疫抑制性であるのではなく、免疫調節の方式で作用する。形態IIだけでなく形態Iも、敗血症モデルにおいてより高い生存率をもたらした。
【0068】
本発明者らは、形態Iおよび形態IIの、組み合わせた、好ましくは時間をずらした適用もまた、成功し得ること、および、特に自己免疫疾患に限るものではないがある種の徴候に、個々の適用より組み合わせた適用が有利であることを仮定する。
【0069】
実施例1− インビトロでLPS刺激したネズミマクロファージへの形態Iの作用
単離したマウスマクロファージを用いる試験において、形態Iの免疫調節作用を、上澄中で測定したTNFアルファまたはIL−6の濃度に基づいてインビトロで示した。この目的のために、マクロファージを最初に形態I(20、200μg/mL)で処置した。1時間後、処置したマクロファージは、LPS(10、100または1,000ng/mL)で刺激した。上澄を24時間後に収集し、TNFアルファおよびIL−6の濃度を測定した。刺激していないマクロファージ、200μg/mL形態Iで処置した刺激していないマクロファージ、およびLPS刺激したマクロファージ(10、100または1,000ng/mLのLPS)を対照として使用した。測定値は表7に列挙される。
【0070】
表7のTNFアルファ測定は、LPS(1μg/mL、100ng/mLおよび10ng/mLの濃度の)の単独投与での、LPSによる用量依存的な刺激を示す。
【0071】
【表7】

【0072】
LPS、および形態Iで処置したマクロファージを用いる組み合わせ群において、すべてのLPS群中で、形態Iの用量依存的な、免疫抑制性の作用を見ることができた。この作用は、LPS100ng/5mLで刺激し、200μg/mLの形態Iで処置したマクロファージを含む組み合わせで最も明瞭であり、200μg/mLの形態Iを含む1μg/mLのLPSの組み合わせにおけるTNFアルファ値の著しい減少が続いた。
【0073】
それに加えて、200μg/mLの形態Iで処置した刺激していないマクロファージの対照群中で、TNFアルファ測定値によって立証されるように、明瞭な免疫調節の、ここでは免疫賦活性の作用を見ることができた。
【0074】
実施例2−インビトロでLPS刺激したネズミマクロファージに対する形態IIの作用
骨髄マクロファージ(マウス)を用いるさらなるインビトロモデルにおいて、形態IIの免疫調節、主として免疫抑制性の処置作用を確証することができた。この目的のために、単離したマウス骨髄マクロファージは、まず、2、20または200μg/mLの濃度の形態IIで処置し、処置1時間後に100ng/mLまたは10ng/mLのLPSで刺激した。上澄は24時間後に収集し、TNFアルファおよびIL−6の濃度を測定した。刺激していないマクロファージ、200μg/mLの形態IIで処置し刺激していないマクロファージ、およびLPS刺激したマクロファージ(10または100ng/mLのLPS)を対照として使用した。測定値は表8において列挙される。
【0075】
【表8】

【0076】
100ng/mLのLPSで刺激したすべての活性成分濃度のマクロファージの群において、TNFアルファ濃度の著しい減少を測定することができた。10ng/mLのLPSで刺激したマクロファージの群において、活性成分の最高濃度(200μg/mL)でTNFアルファの著しい減少を見ることができた。
【0077】
さらに、LPSで刺激したマクロファージに対する形態IIの免疫抑制性の作用を、IL−6値の著しい低下に基づいて、観察することができた。これらは、100ng/mLのLPSで刺激したマクロファージと2μg/mLの活性成分の組み合わせにおいて、ならびに20μg/mLの活性成分濃度の、10ng/mLで刺激したマクロファージの群において測定した。これらの結果は、マクロファージを用いる初期のインビトロパイロット試験からのIL−6値と一致しており、ここでは、異なるLPSおよび活性成分の組み合わせ(1μg/mLのLPSと100μg/mLとの)を使用し、これはまた刺激したネズミマクロファージに対して形態IIの免疫抑制性の作用を示した。LPSに誘発されていないマクロファージに対する免疫賦活性の作用は示すことができなかった。
【0078】
実施例3− 健康なマウスの体重推移
グラム陽性菌敗血症(S.ピュオゲネスによる感染症)のマウスモデルにおいて、5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンナトリウム塩の結晶形IおよびIIの治療有用性を試験した。活性成分の投与は、感染の発症6時間後に非経口的に行った。活性成分の第2の投与は、第1の適用の24時間後に行った。その試験は感染の48時間後に完了した。両形態(物質群)に対して、異なる3種の用量を使用した。マウスはそれぞれ、動物および適用当たり、2、20または200μgの形態Iまたは形態IIを得た。
【0079】
物質群(形態Iおよび形態II)に加えて、1つの群に、溶解した活性物質の代わりに普通の塩溶液(NaCl)を与え、別の1つの群は処置しなかった。感染した動物と平行して、感染していない動物の比較可能な群を形成した。
【0080】
個々の処置群はそれぞれ5匹の動物を含み、感染していない対照には2回繰り返しを、ならびに感染した対照、および形態IIを含む群には4回繰り返しを行い、合計で180匹の動物を試験にかけた。
【0081】
成長するマウスまたはラットを用いる動物実験において、物質の毒性が、体重推移に影響を及ぼし得ることが知られている。感染していない対照動物の、2日間にわたる体重推移(g)が表9に要約されている。
【0082】
【表9】

【0083】
感染していない動物の中で死亡はなかった。群間で体重推移に関係のある違いを見出すことはできなかった。したがって、形態IIだけでなく形態Iも、まったく毒性を有していないか、またはそれは極めて小さいと仮定することができる。
実施例4− 感染したマウスの体重推移
【0084】
実施例3に記載された敗血症モデルにおいて、5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンナトリウム塩の結晶形IおよびIIの、S.ピュオゲネスに感染したマウスの体重推移に対する影響を試験した。急性感染症の間の体重の推移は、重要な予測的な情報を供給することができる。何匹かの動物は、試験の終了までの第2日に生き残らなかった。偏向的に、感染後の最初の24時間の個体の体重推移は、48時間後の試験の終了まで生存する確率のヒントを与えたが、しかし、有意な相関性はなかった。第2日の間に死んでしまった動物に対して完全な試験時間にわたる体重推移についてのデータが存在しないので、全試験時間に対する体重推移に加えて、以下の表10に、また、試験第1日の体重推移が示される。
【0085】
【表10】

【0086】
偏向的に、5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンナトリウム塩の形態Iを与えたマウスは、対照群の動物より、感染後第1の24時間では体重損失の減少を示した。この利点は、形態Iの用量20および200μgにとって特に重要な意義を持つ。物質群中の偏向的により高い生存率のこの間接的ヒントは、第2日に生き残った動物には見出すことができない。
【0087】
実施例5− S.ピュオゲネス感染後の生存率
実施例3に記載された敗血症モデルにおいて、5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンナトリウム塩の結晶形IIおよびIの、S.ピュオゲネスに感染したマウスの生存率への影響を試験した。個体群は、感染の少なくとも48時間後に生存する異なる確率を示した。生存動物の占有率は表11に要約される。













【0088】
【表11】

【0089】
形態Iおよび形態IIはいずれも、対照と比較して生存動物の占有率の増加をもたらした。したがって、敗血性の挙動へのポジティブな影響を、形態Iならびに形態IIに対して、それぞれの特異的な作用から独立して仮定することができる。
実施例6− 血液および肝臓中の微生物負荷
【0090】
実施例3に記載された敗血症モデルにおいて、S.ピュオゲネスに感染したマウスの血液および肝臓中の微生物負荷への、5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンナトリウム塩の結晶形IIおよびIの影響を試験した。試験は感染の48時間後に完了し、血液および肝臓中にこの時間に存在する微生物負荷(CFU)を求めた(表参照)。
【0091】
【表12】

【0092】
形態IIならびに形態Iは、対照と比較して、最大用量において、血液中で偏向的な微生物数の減少を示した。本発明者らは、これを5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンナトリウム塩、特に形態2の投与による感染症のより良好な制御性の証拠と見なす。しかし、試験終了前に死んでしまった動物に対して、微生物数の測定がないことは留意されるべきである。本発明者らは、初期の時間での微生物数の測定に対して、その後に死んだ動物の微生物負荷は特に高くなっていて、その結果として、形態IおよびIIによって誘発された作用は一層明白であると仮定している。
【0093】
実施例7− 健康な試験動物のサイトカイン
健康なマウスに形態Iおよび形態IIを投与する場合、実施例3に記載された動物モデルに対して、その適用がマウス中のある種のサイトカイン、特にIL−6およびTNFアルファに影響(およびどのような影響)を及ぼすか、調べた。血液は第2の適用日の終了の48時間後に採取した。IL−6に関して、物質群と対照群どちらにおいても増加は見出すことができなかった。TNFアルファについての結果は表13に要約される。
【0094】
【表13】

【0095】
形態IIおよび対照は、TNFアルファの関係のある増加を引き起こさないが、他の群と比較して明瞭な増加が形態Iの投与後生じた。この作用は、20μg用量に対して最も明瞭であり、この群は、対照群ならびにその形態IIを受けた群とは著しく異なっていた(p<0.001)。ここでは、形態IIには検出することができない形態Iに対して特異的な免疫賦活性作用が生じている。
実施例8− 敗血症モデルのサイトカイン
【0096】
実施例3に記載された敗血症モデルにおいて、また、形態Iおよび形態IIの投与が、S.ピュオゲネスに感染したマウス中のある種のサイトカイン、特にIL−6およびTNFアルファにどのような影響を及ぼすか、調べた。血液は、感染の48時間後試験の終了時に採取した。
【0097】
感染症によって引き起こされたサイトカイン増加は著しく異なることを示すことができたので、繰り返しの間の対照群(負の対照およびNaCl)の内でさえいくつかの事例において、繰り返しからのデータを合わせることができなかった。
【0098】
これらの値は、終了の第2の試験日に生き残った動物についてのみ得られたことにさらに留意すべきである。本発明者らは、さらに、先に死んだ動物は、予後に不利な非常に高いIL−6値を有することを仮定する。
【0099】
それにもかかわらず、形態IIによるIL−6減少の明瞭な傾向が一部にあったが、しかし、不幸にして、すべての繰り返しにおいて確証することができなかった。インビボでさえサイトカインに対する形態IIの抑制作用を完全に立証するのにより良好な適切な動物モデルは、現在本発明者らによって調べられている。
【0100】
実施例9− 健康な試験動物の肝酵素/トランスアミナーゼ
健康なマウスに形態Iおよび形態IIを投与する場合、その適用がある種の肝酵素、特にトランスアミナーゼGOT(AST)およびGPT(ALT)に影響(およびどのような影響)を及ぼすか、調べた。血液は、第2の適用日の終了時に採取した。群の間の明瞭な違いは、ここで見出すことができなかった。これは、実施例3との良好な適合性を確証する。
【0101】
実施例10− 敗血症モデルの肝酵素/トランスアミナーゼ
実施例3に記載された敗血症モデルにおいて、その投与が、S.ピュオゲネスに感染したマウスのある種の肝酵素、特にトランスアミナーゼGOT(AST)およびGPT(ALT)にどのような影響を及ぼすか、調べた。
【0102】
血液は、感染後48時間に採取した。敗血性の経過を含む感染に対し、いくつかの事例において肝酵素値の劇的な増加が生じ得る。感染したマウスのサイトカイン値に関して類似して、同一の群内で有意差がここでも個々の繰り返しの間で生じ、その結果、データ全体の解析が不可能であった。形態IIは、いくつかの繰り返しにおいて、肝酵素値を減少させる傾向示した。しかし、すべての繰り返しにおいてこれらのヒントを見つけることができなかった。
【0103】
しかし、群の間に実質的な違いを見出すことができなかった。実施例6における微生物数および実施例8におけるサイトカイン値に関して類似して、時期尚早に死んだ動物の欠測値による偏りが存在する。本発明者らは、トランスアミナーゼの24時間後の測定が、5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジンdihydrophthalazin−51,4−ジオンナトリウム塩、特に形態IIで処置したマウスに対して明瞭な利点になると仮定する。
【0104】
本発明による結晶性無水物形態IおよびIIの製造
以下において、結晶形IおよびIIの製造は典型として記載される。
【0105】
すべての製造例の合成の開始点は、先行技術から公知のルミノールであり、これは、例えば、以下の反応スキームに従って製造することができる。

【0106】
【化2】

(i) (ii) (iii)
【0107】
ここに、ヒドラジンもしくはその塩の1つ、または他の適切な還元剤、例えば、亜硫酸アンモニウムもしくはトリエチレングリコールによって、アルカリ媒体中で、3−ニトロフタル酸無水物(ii)を経由してルミノールに還元することができる、3−ニトロフタル酸(i)の反応によるルミノール(iii)の合成が示される。ルミノールの適切な製造法は、以下に見出すことができる:Williamson, K.L. In:巨視的規模および微視的規模の有機実験(Macroscale and Microscale Organic Experiments);2nd ed.; D.C. Heath: Lexington, MA, 1994.。ラネーニッケルを使用するルミノールを製造するのに適切な別の方法は、例えば、米国特許第6,489,326B1号に見られる。
【0108】
より具体的な方法で、開始物質のルミノールはまた、以下のように製造することができ、また、指定された当量を使用して任意の量のルミノールを製造することができる。
ルミノール製造例
第1のステップ:3−ニトロフタル酸−3−ニトロフタルヒドラジド
バッチの大きさ:
【0109】
【表14】

【0110】
第1のステップにおいて、3−ニトロフタル酸(200g,0.95mol)およびヒドラジン水和物(51g,1.02mol)を準備し、還流凝縮器(T=110℃)およびリービッヒ冷却器の組み合わせを装備した2L反応フラスコ内で、エチレングリコール(300mL)と混合した。温度を110℃に上げ、水は蒸留によって除去した。反応混合物の加熱は、およそ200℃でエチレングリコールが還流するまで継続した。1時間後、それ以上の水は形成されなかった。その混合物はおよそ100℃に冷却し、水(1200mL)を添加した。やや褐色を帯びた沈殿物が発生した。混合物は、室温(25℃±5℃)に氷水の添加によって冷却し、終夜撹拌した。沈殿物を濾過し、水(3×300mL)で洗浄した。湿った生成物は、恒量が得られるまで、90℃/20±10mbarで回転蒸発装置で乾燥した。
【0111】
この方法の利点は、硫酸ヒドラジンの代わりにヒドラジン水和物を使用することによって、何ら妨害する無機物質が以下のステップで形成されないこと、および、その使用が生成物中に汚染をもたらし得る、より高い沸点を有する他の溶媒によるよりも、およそ196℃の沸点を有するエチレングリコールの使用によって、還流沸騰によるプロセス制御を良好に扱うことができることである。
第2のステップ:3−ニトロフタルヒドラジド−5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオン
バッチの大きさ:
【0112】
【表15】

【0113】
第2のステップにおいて、およそ50〜60℃まで加熱しながら3−ニトロフタルヒドラジド(100g,0.48mol)を3モル濃度の水酸化ナトリウム溶液(1,700mL)に溶解することによって、3−ニトロフタルヒドラジドを5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンに反応させた。この溶液に、亜ジチオン酸ナトリウム(300g,1.73mol)を分割して添加する。その結果として反応混合物の温度は、およそ80℃に上昇する。亜ジチオン酸ナトリウムを全て添加した後、反応混合物を還流するためにおよそ4時間加熱する。酢酸(200mL,1.73mol)を添加し、反応混合物は終夜冷却する。結果として得られた沈殿物は単離し、水(3x170mL)で洗浄する。生成物はおよそ80℃/20±10mbarで回転蒸発装置で乾燥する。
【0114】
無水物形態I
I. 製造例I −結晶形I
本発明の主題は、水酸化ナトリウム溶液中で5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオン(ルミノール)を混合し、発生したルミノールナトリウム塩の溶解度積を低下させこれが沈殿し始めるような低分子液体アルコール、好ましくはエタノールに、この溶液を滴下して添加することによって、無水物形態Iを製造する方法である。アルコールは、好ましくは≧95%、特に好ましくは≧98%の純度を有していなければならない。本発明によれば、発生した沈殿物を50から最高90℃の間の温度で乾燥する。
製造例I− 結晶形I −実施形態I
【0115】
製造例Iの好ましい実施形態において、結晶形Iは、0.8〜1.2モル濃度のルミノール懸濁液500〜750mLを1.0〜1.3モル濃度のソーダ溶液500〜750mLと混合し、混合物を10〜15Lの低分子アルコール、好ましくは、好ましくは≧95%、特に好ましくは≧98%の純度を有するエタノールに、20〜50℃で撹拌しながら滴下して添加し、次いで、懸濁液を10〜40℃で15〜25時間撹拌することによって沈澱させることができる。単離後、次に、発生した沈殿物を、好ましくは風乾する。50℃〜80℃でさらに乾燥した後、沈殿物は、10〜20倍量の低分子アルコール、好ましくは、好ましくは≧95%の、特に好ましくは≧98%の純度を有するエタノールに溶解し、その懸濁液は15〜25時間10〜40℃で撹拌し濾過する。濾過ケーキを風乾し、50℃〜90℃、好ましくは50℃で再乾燥し、粉砕し、≦0.4%、好ましくは≦0.3%、最も好ましくは≦0.2%の結晶化の含水率が達成されるまで乾燥する。
製造例I− 結晶形I − 実施形態II
【0116】
a) 製造例Iの特に好ましい実施形態において、結晶形Iは以下のように製造することができる。
b) 2Lビーカーにルミノール190〜220gを準備し、撹拌しながら1.0〜1.1モル濃度のNaOH溶液1.25Lに少なくとも20℃でそれを溶解する。
c) 再洗浄せずに、磁製漏斗に通して濾紙φ70mm(例えば、Schleicher & Schuell Type 1575)を用いてバッチ溶液を濾過する。
d) 三首底フラスコに12〜14Lのエタノール(好ましくは純度≧98%を有する)を準備する。撹拌しながらバッチ溶液を25℃±10℃で25分±10分以内に滴下して添加する。懸濁液を20℃±10℃で16±5時間撹拌する。
e) 磁製漏斗に通して濾紙を用いて沈殿物を濾過し、低分子アルコール、好ましくは純度≧98%を有するエタノールおよそ400〜500mLを用いて再洗浄する。
f) ガラスボール上で濾過ケーキを細かく分散し、排気フードの下で終夜乾燥する。次いで、50℃〜90℃、好ましくは50℃〜70℃、特に好ましくは50℃で、恒量が得られるまで、乾燥室内で再乾燥する。
g) 沈殿物を粉砕し秤量する。
h) 得られたg)の沈殿物の12〜15倍量(12〜15mL/g)の低分子アルコール(例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、好ましくは、純度≧98%を有する)を4Lの三首底フラスコに準備する。撹拌しながら沈殿物をそこで懸濁する。20℃±10℃で16時間±5時間懸濁液を撹拌する。磁製漏斗に通して濾紙を用いて懸濁液を濾過し、低分子アルコールおよそ500mLで再洗浄する。
i) ガラスボール上で濾過ケーキを細かく分散し、排気フードの下で終夜乾燥する。次いで、50℃〜70℃、好ましくは50℃で、2〜6時間、恒量が得られるまで、乾燥室内で再乾燥する。乳鉢を使用して物質を粉砕し、秤量する。結晶化の含水率は、例えば、カールフィッシャー滴定法に従って測定して、≦0.4%でなければならない。結晶化の含水率が>0.4%の場合、ステップh)〜i)を繰り返す。
j) 物質を秤量し、収率を求める。
【0117】
製造例I− 結晶形I − 実施形態III
最も好ましい実施形態において、結晶形Iは以下のように製造することができる。
【0118】
a) 2Lビーカーにルミノール200gを準備し、撹拌しながら1モル濃度のNaOH溶液1.25Lに30℃±10℃で溶解する。
b) 再洗浄せずに、磁製漏斗に通して濾紙φ70mm(例えば、Schleicher & Schuell Type 1575)を用いてバッチ溶液を濾過する。
c) 20Lの三首底フラスコに12.5Lのエタノール(好ましくは純度≧99%を有する)を準備する。撹拌しながらバッチ溶液を25℃±5℃で30分±5分以内に滴下して添加する。懸濁液を25℃±5℃で20時間±1時間撹拌する。
d) 磁製漏斗に通して濾紙φ185mm(例えば、Schleicher & Schuell Type 1575)を用いて懸濁液を濾過し、エタノール(好ましくは純度≧99%を有する)およそ500mLを用いて再洗浄する。ガラスボール上で濾過ケーキを細かく分散し、排気フードの下でそれを終夜乾燥する。次いで、50℃〜70℃、好ましくは50℃で、恒量が得られるまで、乾燥室内で乾燥する。
e) 沈殿物を粉砕し、秤量する。
f) 得られた沈殿物の12倍量(12mL/g)のエタノール(好ましくは、純度≧99%を有する)を三首底フラスコに準備する。撹拌しながら物質をそこで懸濁する。25℃±5℃で20時間±1時間懸濁液を撹拌する。磁製漏斗に通して濾紙φ185mm(例えば、Schleicher & Schuell Type 1575)を用いて懸濁液を濾過し、エタノール(純度≧95%、好ましくは、≧98%を有する)およそ500mLで再洗浄する。ガラスボール上で濾過ケーキを細かく分散し、排気フードの下でそれを乾燥する。次いで、50℃〜70℃、好ましくは50℃で、恒量が得られるまで、乾燥室内で乾燥する。乳鉢を使用して生成物を粉砕し、秤量する。
g) 結晶化の含水率は、例えば、カールフィッシャー滴定法によって測定して、≦0.4%でなければならない。結晶化の含水率が>0.4%の場合、ステップf)〜g)を繰り返す。
h) 物質を秤量し、収率を求める。
【0119】
製造例II −結晶形I 水性条件下において、ルミノールから出発して、結晶形Iは、水酸化ナトリウム溶液を調製しそれにルミノールが添加することによって製造することができる。ルミノールは撹拌により溶解する。次いで、エタノールを10〜40分以内に添加し、ルミノールは塩として沈殿する。数時間の添加および撹拌が完了した後、懸濁液を濾過し、濾過ケーキは洗浄し乾燥する。
【0120】
製造例II− 形態I − 実施形態II
好ましい実施形態において、結晶形Iは以下の当量の反応体を使用して製造する。4〜7vol/mの水に1.0〜1.4当量の水酸化ナトリウムの溶液を調製し、これに1当量のルミノールを添加する。完全溶解が達成されるまで、反応混合物を撹拌する。次いで、エタノール(50〜70vol/m)を室温(25℃±5℃)でおよそ10〜40分以内に滴下して添加する。ルミノールナトリウム塩は沈降物として沈殿する。
【0121】
添加が完了した後、反応混合物は、室温(25℃±5℃)で数時間再度撹拌し、懸濁液を濾過する。濾過ケーキをエタノール(およそ10〜15vol/m)で洗浄し、場合によって、真空乾燥室内でまたは回転蒸発装置で乾燥する。
【0122】
製造例II− 形態I − 実施形態III
特に好ましい実施形態において、結晶形Iは以下の当量の反応体を使用して製造する。
【0123】
【表16】

【0124】
水(6vol/m)中に1.0〜1.4当量の水酸化ナトリウム、好ましくは、1.2当量(22g,0.55mol)の水酸化ナトリウムの溶液を製造する(10Lの反応器)。
【0125】
1当量のルミノールを水酸化ナトリウム溶液に添加する。完全溶解が達成されるまで、反応混合物を撹拌する。褐色の透明溶液が結果として生じる。
【0126】
次いで、エタノール(60vol/m)を室温(25℃±5℃)でおよそ20分以内に滴下して添加する。ルミノールナトリウム塩は沈降物として沈殿する。
【0127】
添加が完了した後、反応混合物は、室温(25℃±5℃)で最大20時間、好ましくは2〜8時間、特に好ましくは、8時間再撹拌し、懸濁液を濾過する。濾過ケーキをエタノール(およそ13vol/m)で洗浄し、場合によって、真空乾燥室内で、50〜90℃/1〜3mbarで、好ましくは50〜70℃、特に好ましくは50℃、または回転蒸発装置で20±10mbarおよび50℃〜90℃で、好ましくは50°〜70℃、特に好ましくは50℃で乾燥する。
製造例III− 形態I − 拡張可能なバッチの大きさ。
【0128】
本発明者らは、見出したこれらの当量関係が、ルミノールの任意のバッチの大きさに適切であり、再現可能な方式で所望の形態Iの製造を可能にすることを見出した。
無水物形態II:
結晶形IIの製造例I
【0129】
本発明者らは、結晶形IIを製造する方法を見出した。すなわち、水性条件下で、ルミノールを水酸化ナトリウム溶液と混合し、2−プロパノールの添加によって、ルミノールナトリウム塩の溶解度積が減少し、その結果、沈殿し始める。沈澱したルミノールナトリウム塩は、2−プロパノールで洗浄し、恒量が得られるまで乾燥する。
製造例I− 結晶形II − 実施形態II
【0130】
好ましい実施形態において、結晶形IIは以下の当量の反応体を使用して製造する。水(6〜7.5vol/m)中に1.0〜2.0当量の水酸化ナトリウム、好ましくは、1.1〜1.4当量の水酸化ナトリウム、特に好ましくは、1.2当量の水酸化ナトリウムの溶液を製造し、これに0.5〜1当量のルミノールを添加する。完全溶解が達成されるまで、反応混合物を撹拌する。次いで、2−プロパノール(60〜120vol/m)を室温(25℃±5℃)でおよそ10〜40分以内に滴下して添加する。ルミノールナトリウム塩は沈降物として沈殿する。添加が完了した後、反応混合物は、室温(25℃±5℃)で撹拌する。生成物を濾過し、低分子アルコール、好ましくは2−プロパノール(およそ13〜16vol/m)で洗浄し、場合によって、85℃〜120℃/1〜3mbar、好ましくは90℃/1〜3mbarで真空乾燥室内で、または85℃〜120℃/20±10mbarで回転蒸発装置で乾燥する。
製造例I− 結晶形II − 実施形態III
【0131】
特に好ましい実施形態において、結晶形IIを製造するための当量およびバッチの大きさが提示され、これは、ルミノールの任意のバッチの大きさに当てはまり、10gのルミノールのバッチの大きさに対して典型的には下記に示される。
表15
【0132】
【表17】

【0133】
1.2当量の水酸化ナトリウムおよび1当量のルミノールを水(6vol/m)に溶解する。透明な溶液が形成される。この溶液はより黒っぽくなるので、直ちに処理しなければならない。次いで、2−プロパノール(60vol/m)を室温(25℃±5℃)でおよそ20分以内に添加すると、ルミノールナトリウム塩の沈降物が形成される。懸濁液は、室温で1〜5時間、好ましくは2時間、特に好ましくは3時間撹拌する。生成物は濾過し、2−プロパノール(およそ15vol/m)で洗浄し、場合によって、真空乾燥室内で85℃〜120℃/1〜3mbar、好ましくは90℃/1〜3mbarで、または回転蒸発装置で85℃〜120℃/20±10mbar、好ましくは90℃/20±10mbarで、恒量が得られるまで乾燥する。
【0134】
結晶形IIの製造例I − 実施形態IV
本発明者らは、少なくとも300g、好ましくは400g、特に好ましくは≧500gのルミノールのバッチの大きさに適切である方法、および、785gのバッチの大きさに関して典型的に記載される方法をさらに示す。
表16
【0135】
【表18】

【0136】
水4,700mL中の水酸化ナトリウム212g(5.32mol,1.2eq.)の溶液を製造する(80L反応器)。ルミノール(785g,4.43mol)を水酸化ナトリウム溶液に添加し、その溶解が達成されるまで撹拌する。透明な褐色溶液が結果として生じ、これに20〜30分、好ましくは30分の時間にわたって2−プロパノール(60vol/m)を添加する。ルミノールナトリウム塩は沈降物として沈殿する。添加が完了した後、混合物は、室温(25℃±5℃)で少なくとも10時間、好ましくは12時間、再撹拌する。混合物は濾過し、2−プロパノール(13vol/m)で洗浄し、場合によって、真空乾燥室内で85℃〜120℃/1〜3mbar、好ましくは90℃/1〜3mbarで、または回転蒸発装置で85℃〜120℃/20±10mbar、好ましくは90℃/20±10mbarで、恒量が得られるまで乾燥する。
【0137】
製造例I− 結晶形II − 拡張可能なバッチの大きさ
本発明者らは、見出したこれらの当量関係が、ルミノールの任意のバッチの大きさに適切であり、再現可能な方式で所望の形態IIの製造を可能にすることを見出した。より多量および高容量のルミノール(≧500g)を使用する場合、撹拌時間は、可能な限り高収率の最終生成物を得るために対応する長さが選択されるように注意を払うべきである。
【0138】
結晶形IIの製造例II(再結晶化)
本発明者らは、結晶形IIを、以下の当量を使用して、結晶形Iの再結晶化によって製造することができることを見出した。70〜90%、好ましくは80〜90%、特に、好ましくは、90%の純度を有する2−プロパノール(10vol/m)を、1当量の形態Iの溶液に添加し、室温(25℃±5℃)で少なくとも10〜14時間、好ましくは10〜12時間撹拌する。混合物を濾過し、濾過ケーキを2−プロパノール(およそ20vol/m)で洗浄し、場合によって、真空乾燥室内で85℃〜120℃/1〜3mbar、好ましくは90℃/1〜3mbarで、または回転蒸発装置で85℃〜120℃/20±10mbarで、恒量が得られるまで乾燥する。
【0139】
結晶形IIの製造例II− 形態Iの再結晶化 − 拡張可能なバッチの大きさ
本発明者らによって見出された再結晶化法は、任意のバッチの大きさに対して以下の当量を用いて使用することができ、1gの形態Iのバッチの大きさに対して典型的に記載される。
表17
【0140】
【表19】

【0141】
結晶形I(1g)を水性2−プロパノール(10〜20%の水)に懸濁し、室温(25℃±5℃)で少なくとも10時間、好ましくは10〜14時間、特に好ましくは10〜12時間撹拌する。残存する溶媒を濾過した後、濾過ケーキを2−プロパノール(2x10mL)で洗浄し、恒量が達成されるまで、回転蒸発装置で90℃/20mbarで乾燥する。
【0142】
短縮形のリスト:
μg マイクログラム
ALT アラニン・アミノトランスフェラーゼ
approx. およそ
AST アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ
CFU コロニー形成単位
DMSG ドイツ多発性硬化症協会
e.g. 例えば
EMEA 欧州医薬品庁
g グラム
GOT グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ
GPT グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ
IL インターロイキン
l リットル
loc.cit. 引用された場所において
LPS リポ多糖類
mL ミリリットル
MW 平均値
ng ナノグラム
pg ピコグラム
SEM 走査電子顕微鏡
STD 標準偏差
TNF 腫瘍壊死因子
U 国際単位
vol/m 質量単位当たり体積単位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンアルカリ塩の結晶形IおよびIIであって、X線粉末図:
形態Iに対し、
d値:13.5;6.9;5.2;4.6;3.9;3.5;3.4;3.3;3.1;3.0および/または
2−シータ値:6.5;12.7;16.9;19.3;22.8;25.8;26.6;27.2;28.7;30.3
および
形態IIに対し、
d値:12.9;7.9;7.1;6.5;5.3;4.0;3.7;3.6;3.3;3.2および/または
2−シータ値:6.8;11.2;12.5;13.7;16.7;22.4;24.3;24.9;27.2;27.8
によって求められた結晶学値を特徴とする、結晶形IおよびII。
【請求項2】
結晶化の含水率≦0.4%を特徴とする、請求項1に記載の結晶形IおよびII。
【請求項3】
請求項1および2に記載の結晶形IまたはIIを製造する方法であって、5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンを水酸化ナトリウム溶液と混合し、低分子液体アルコール、好ましくはエタノールまたは2−プロパノールを添加し、それによって発生した5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンナトリウム塩の溶解度積を減少させ、その結果、5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンナトリウム塩は沈澱し、沈澱した結晶性生成物を分離し乾燥することを特徴とし、結晶形Iは、エタノールに数回懸濁し、撹拌し、エタノールで再洗浄し、再び乾燥することができる、方法。
【請求項4】
≧98%、特に好ましくは≧99%の純度の低分子アルコールのエタノールを、室温で10〜40分、好ましくは20分以内に添加することを特徴とする、請求項3に記載の結晶形Iを製造する方法。
【請求項5】
≧98%、特に好ましくは≧99%の純度の低分子アルコールの2−プロパノールを、室温で10〜40分、好ましくは20分以内に添加することを特徴とする、請求項3に記載の結晶形IIを製造する方法。
【請求項6】
a) 1.0〜1.4当量、好ましくは1.2当量の水酸化ナトリウムと、4〜7当量(vol/m)の水、好ましくは6当量(vol/m)の水との混合物を製造するステップ;
b) この混合物に1当量のルミノールを添加し、完全溶解が達成されるまで撹拌するステップ;
c) 50〜70当量、好ましくは60当量(vol/m)の、≧98%、特に好ましくは≧99%の純度を有するエタノールを、室温(25℃±5℃)で10〜40分、好ましくは20分以内に添加するステップ;
d) エタノールの添加が完了した後、反応混合物を室温で最大20時間、好ましくは2〜8時間、特に好ましくは8時間再撹拌し、この混合物を濾過するステップ;
e) 濾過ケーキを10〜15当量(vol/m)、好ましくは13当量(vol/m)の、≧98%、特に好ましくは≧99%の純度を有するエタノールで洗浄するステップ;
f) 生成物を真空乾燥室内で50℃〜90℃/1〜3mbar、好ましくは70〜90℃、特に好ましくは80℃〜90℃で、または回転蒸発装置で20±10mbarおよび50〜90℃で、好ましくは70℃〜90℃、特に好ましくは80℃〜90℃で、恒量が得られるまで乾燥するステップを含む、
請求項1または4に記載の結晶形Iを製造する方法。
【請求項7】
a) 1.0〜2.0当量、好ましくは1.1〜1.4当量、特に好ましくは1.2当量の水酸化ナトリウムと、6〜7.5当量(vol/m)の水、好ましくは6当量(vol/m)の水との混合物を製造するステップ;
b) 0.5〜1当量のルミノールを添加し完全溶解が達成されるまで混合物を撹拌するステップ;
c) ≧98%、特に好ましくは≧99%の純度を有する、60当量(vol/m)の2−プロパノールを室温(25℃±5℃)で20±10分以内に添加するステップ;
d) 懸濁液を室温(25℃±5℃)で少なくとも1時間撹拌するステップ;
e) 濾過し、≧98%、特に好ましくは≧99%の純度を有する13〜15当量(vol/m)の2−プロパノールで濾過ケーキを洗浄するステップ;
f) 生成物を真空乾燥室内で85℃〜120℃/1〜3mbar、好ましくは90〜100℃、特に好ましくは90℃で、または回転蒸発装置で20±10mbarおよび85℃〜120℃で、好ましくは90℃〜100℃、特に好ましくは90℃で、恒量が得られるまで乾燥するステップ
を含む、請求項1または5に記載の結晶形Iを製造する方法。
【請求項8】
ステップd)において、添加されたルミノール量が少なくとも200g、好ましくは300g、特に好ましくは500gである場合、撹拌時間は、1〜5時間、好ましくは2時間、特に好ましくは3時間、かつ少なくとも10時間、好ましくは12時間である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項1または2に記載の結晶形Iおよび/または結晶形IIを含むことを特徴とする医薬品調製物。
【請求項10】
他の活性成分、補助剤および/または標準療法の適用または組み合わせを特徴とする、請求項9に記載の医薬品調製物。
【請求項11】
薬学的に許容される補助物質が含まれていてもよいことを特徴とする、請求項9または10に記載の医薬品調製物。
【請求項12】
免疫系を調整する方法に使用するための、請求項1または2に記載の結晶形Iおよび/もしくは結晶形IIならびに/または請求項9から11のいずれか一項に記載の医薬品調製物。
【請求項13】
免疫抑制および/または免疫賦活の方法に使用するための、請求項1または2に記載の結晶形Iおよび/もしくは結晶形IIならびに/または請求項9から11のいずれか一項に記載の医薬品調製物。
【請求項14】
主として免疫賦活性および/または主として免疫抑制性の目的のために、結晶形Iおよび/または結晶形IIの免疫特異的な適用を特徴とする、請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−521239(P2013−521239A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555335(P2012−555335)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【国際出願番号】PCT/EP2011/001124
【国際公開番号】WO2011/107295
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(512205898)メトリオファーム アーゲー (1)
【Fターム(参考)】