説明

5本指靴下の指返し具

【課題】靴下に違和感を生じさせず、洗濯時の支障も与えず、洗濯後等の靴下の各指袋部の裏返りを直すのに便利な5本指靴下の指返し具を提供すること。
【解決手段】靴下5の履き口部5fから靴下5の先端の指袋部5a〜5eに向けて挿入して該指袋部5a〜5eの裏返りを直すための先端が球形をした複数本の頭部2a〜2cを備えており、各頭部2a〜2cが所定間隔で支持軸部3a〜3cを介して柄部4に並列状に取り付けられている。頭部2a〜2cは、3本に設定されている。各頭部2a〜2cは、柄部4に対する突出長さが個々に独立して調節可能とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯後等の5本指靴下の指袋部の裏返りを直す場合に使用して便利な5本指靴下の指返し具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
5本指靴下には、水虫予防、外反母趾防止などの長所があるが、その着用時、各指を靴下の指袋内にうまく入れることができないという短所が指摘されている。
そこで、従来、靴下の5本の指袋部に樹脂シートを貼着して、洗濯後でも各指袋部が裏返らないようにしたものが提案されている(特許文献1参照)。
また、従来、足指の各指股部に挿入して足指間を広げて5本指靴下を履き易くするための着用補助具が提案されている(特許文献2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−40505号公報
【特許文献2】特開2009−66365号公報
【特許文献3】特開2010−104753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の提案は、靴下自体に樹脂シートを貼着するものであるため、靴下の製造工程に全く異質の樹脂シートの貼着工程が別途に加って次後工程の靴下の取り扱いが複雑となる上、靴下のコストもアップし、また、靴下の着用状態で樹脂シートによる違和感がある他、洗濯時の靴下先端側の各指袋部の揉み洗いができず、汚れを十分に落とすことができなくなる欠点があった。
【0005】
また、特許文献2、3のものは、紐やポリウレタンゴムのような柔軟な材質で着用補助具が構成されているため、裏返っている指袋部をこの補助具を挿入して直すことには使用できず、そのため、靴下自体の各指袋部が裏返っていると、靴下をうまく履くことができない欠点があった。
この種、5本指靴下は、購入した新品を履くときは各指袋部が裏返っていないため、スムーズに履くことができるが、洗濯後では、各指袋部が裏返っている場合が多く、そのままでは、うまく履くことができない。
【0006】
そこで、従来は、洗濯後、靴下内に手を差し込んで、第1段階として、履き口部を手首まで差し入れ、その状態で、第2段階として、靴下の先端側を手首側に手繰り寄せ、第3段階として、指先で各指袋部を探り当てて突き出していたが、手の指は、親指が短く、小指も短いので、長さの揃った人差し指、中指、薬指の3本の長い指が主体となり、この3本の指を使って指袋部を突き出すことになり、5本の指袋部に対して、少なくとも、2回突き出し操作を行う必要があり、その後、差し込んだ手を靴下から抜き出すが、この時にも、靴下が裏返らないように抜かなければならず、これでは、作業が非常に煩瑣であるばかりでなく、手自体が靴下への挿入及び抜き出しをスムーズに行えるようになっておらず、むしろ、挿入性も抜脱性もよくないという問題点があった。
【0007】
前記特許文献2、3は、このような問題点を直接的に解決する手段にはなっていなかった。
本発明は、従来の前記問題点に鑑みて工夫されたもので、靴下に違和感を生じさせず、洗濯時の支障も与えず、洗濯後等の靴下の各指袋部の裏返りを直すのに便利な5本指靴下の指返し具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために本発明は、靴下の履き口部から靴下の先端の指袋部に向けて挿入して該指袋部の裏返りを直すための先端が球形をした複数本の頭部を備えており、各頭部が所定間隔で支持軸部を介して柄部に並列状に取り付けられていることを特徴としている。
この構成によれば、片手(例えば左手)で靴下の履き口部を持ち、もう片方の手(例えば右手)で柄部を持って頭部を先にして靴下の履き口部から靴下先端の指袋部に向けて頭部を差し込むことにより、裏返っている指袋部を頭部で先端側に突き出して突出状態に戻すことができる。各頭部の間隔は、2mm〜8mm、好ましくは、5mm位が適当であり、広すぎると靴下の指袋部の間隔に合わず、狭すぎると各指袋部に挿入できないことになる。なお、頭部は、先端が球形としてあるため、2mm程度の間隔であっても、各頭部を各指袋部に球形部分で案内しながら円滑に挿入させることができる。また、頭部の先端は、球形であるから、靴下の指袋部に挿入しても指袋部を突き破ることはない。このように、本発明の指返し具によれば、洗濯後等の5本指靴下の先端の指袋部の裏返りを、靴下に違和感を生じさせず、洗濯時の支障も与えることなく、簡単、確実に直すことができる。
【0009】
前記頭部は、3本に設定されていることが好ましい。
即ち、本発明における頭部の設定本数は、理論的には、本数を少なくするほど靴下への挿入は容易になるが、突き出し回数が増加し、しかも、標的指袋部への挿入確率が低下する。逆に、本数を多くするほど突き出し回数を減らせるが、靴下への挿入がし難くなる。例えば、1本では5回突き出しが必要となるが、中間部の指袋部(人差し指、中指、薬指)への挿入確率が低下し、5回で済まない場合も発生する。2本の場合は最低3回の突き出しを必要とし、中間部の指袋部(人差し指、中指、薬指)への挿入確率が低下し、3回で済まない場合も発生する。ところが、3本の場合、突き出し回数は2回となるが、初回を親指側とし、次回を小指側として狙いを付けて挿入することにより、中指に相当する指袋部に関しては2回挿入することになるが、5本の指袋部を2回で確実に突出状態に戻すことができ、頭部全体の横幅も靴下の穿き口の幅とほぼ同程度となり、靴下への挿入が容易となる。なお、4本の場合では、突き出し回数が2回となり、初回を親指側とし、次回を小指側として狙いを付けて挿入することにより、確実に各指袋部を突出状態に戻すことができるが、中間部の指袋部3本に対して2回挿入する無駄が有り、かつ、頭部全体の横幅が靴下の穿き口の幅よりも大きくなり、靴下への挿入が容易ではなくなる。また、5本の場合では、突き出し回数は1回で済むように考えられるが、頭部全体の横幅が靴下の穿き口の幅よりもさらに大きくなり、靴下への挿入が4本の場合よりもさらに容易ではなくなる。これらのことから、頭部を3本とするのが最善であることを確認した。
【0010】
また、前記各頭部は、柄部に対する突出長さが個々に独立して調節可能とされていてもよい。
この構成によれば、各頭部の柄部からの突出長さを同一にしたり、異なる突出長さに、適宜、調節することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、靴下に違和感を生じさせず、洗濯時の支障も与えず、洗濯後等の靴下の各指袋部の裏返りを直すのに便利な5本指靴下の指返し具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る指返し具の第1の実施形態を示す一部破断平面図である。
【図2】本発明に係る指返し具の第2の実施形態を示す平面図である。
【図3】本発明に係る指返し具の第3の実施形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る指返し具の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る指返し具1の第1の実施形態であって、この第1の実施形態における指返し具1は、複数本の頭部2a〜2cと、支持軸部3a〜3cと、柄部4とを備えている。
各頭部2a〜2cは、それぞれ先端が球形とされ、5本指靴下5の先端の各指袋部5a〜5eに挿入できるような外径、例えば、15mm〜20mm程度の外径とされ、それぞれの外径は、どの指袋部5a〜5eにも対応できるように同一とされている。各頭部2a〜2cの後端は、必ずしも球形でなくてもよいが、靴下5からの引き抜き時に引っかからないように、例えば、アール状に面取りしてあればよい。
【0014】
各頭部2a〜2cは、それぞれ、支持軸部3a〜3cを介して柄部4に所定間隔で並列状に取り付けられている。各頭部2a〜2cの間隔は、2mm〜8mm、好ましくは、5mm位が適当であり、広すぎると靴下5の各指袋部5a〜5eの間隔に合わず、狭すぎると各指袋部5a〜5eに挿入できないことになる。なお、各頭部2a〜2cは、先端が球形としてあるため、2mm程度の間隔であっても、各頭部2a〜2cを各指袋部5a〜5eに球形部分で案内しながら円滑に挿入させることができる。また、各頭部2a〜2cの先端は、球形であるから、靴下5の各指袋部5a〜5eに挿入しても各指袋部5a〜5eを突き破ることはない。
【0015】
支持軸部3a〜3cは、先端に頭部2a〜2cを差し込んで接着剤により固着してあり、後端を柄部4の先端側にねじ込んである。柄部4の先端側には、ネジ穴4a〜4cが形成してあり、このネジ穴4a〜4cに対応して、各支持軸部3a〜3cの後端に雄ネジが形成してあり、この雄ネジを前記ネジ穴4a〜4cにねじ込むことによって、各頭部2a〜2cを柄部4に対して、その突出長さを個々に独立して調整できるように取り付けてある。なお、頭部2a〜2cの柄部4に対する突出長さの調整は、支持軸3a〜3cの先端側において、頭部2a〜2cを上記と同様に支持軸部3a〜3cの先端側にねじ込む構成とすることによって実施してもよい。
【0016】
柄部4は、図1に示す第1の実施形態においては、各頭部2a〜2cに1:1で対応する丸棒とし、それぞれを横方向に貫通する結束リベット4d、4eで平行状態に結束して一体化した場合を例示している。
第1の実施形態における頭部2a〜2c及び柄部4は、樹脂製、木製、金属製のいずれであってもよい。また、支持軸部3a〜3cは、硬質樹脂製や金属製等の硬い材質の材料で作成するのが好ましい。さらに、頭部2a〜2c及び支持軸部3a〜3cには、抗菌性物質、制菌性物質等のサニタリー機能物質を混入したり、埋め込む等、公知の手段で抗菌性等を具備させてもよい。
【0017】
図2は、本発明に係る指返し具1の第2の実施形態を示しており、この第2の実施形態においては、柄部4が一体構造とされ、後部の横幅が細く厚みも薄くしたグリップ部4fとされている。この第2の実施形態における支持軸部3a〜3cの柄部4への取付構造及び支持軸部3a〜3cに対する頭部2a〜2cの取付構造は、第1の実施形態と同様であるため、その説明は省略する。この第2の実施形態においても、頭部2a〜2c及び柄部4は、樹脂製、木製、金属製のいずれであってもよい。また、支持軸部3a〜3cは、硬質樹脂製や金属製等の硬い材質の材料で作成するのが好ましい。さらに、頭部2a〜2c及び支持軸部3a〜3cには、抗菌性物質、制菌性物質等のサニタリー機能物質を混入したり、埋め込む等、公知の手段で抗菌性等を具備させてもよい。
【0018】
図3は、本発明に係る指返し具1の第3の実施形態を示しており、この第3の実施形態においては、柄部4が一体構造とされ、後部の横幅が細く厚みを一様としたグリップ部4fとされていると共に、頭部2a〜2cを支持する支持軸部4g〜4iが柄部4から同じ厚さで一体に延長形成されている。この第3の実施形態の場合、頭部2a〜2cは、柄部4に一体に延長形成された支持軸部4g〜4iの先端に一体に形成されており、柄部4からの突出長さを、自由に調節することができない実施形態である。この第3の実施形態における頭部2a〜2c及び柄部4は、樹脂製、木製、金属製のいずれであってもよい。さらに、頭部2a〜2c及び支持軸部4g〜4iには、抗菌性物質、制菌性物質等のサニタリー機能物質を混入したり、埋め込む等、公知の手段で抗菌性等を具備させてもよい。
【0019】
本発明に係る指返し具1の実施形態は以上からなるもので、その使用形態を図1を参照しつつ説明する。
図1には、5本指靴下5の平面図が鎖線で示してあり、履き口部5f及び踵部5gの位置が示してある。本発明に係る指返し具1を使用するには、靴下5の履き口部5fから靴下5の先端の指袋部5a〜5eに向けて指返し具1を挿入するが、その際、先ず、親指に相当する指袋部5a側に指返し具1を片寄せて挿入して、親指、人差し指、中指に相当する指袋部5a、5b、5cを先端側に押し出し、次に、靴下5の指袋部5a、5b、5cの先を軽く摘んで指返し具1を少し戻して頭部2a〜2cを指袋部5a、5b、5cから抜き出し、小指に相当する指袋部5e側に指返し具1を片寄せて挿入して、小指、薬指、中指に相当する指袋部5e、5d、5cを先端側に押し出し、靴下5の指袋部5e、5d、5cの先を軽く摘んで指返し具1を靴下5から引き抜く。これにより、5本指靴下5の各指袋部5a〜5eの内、裏返っていない指袋部に対しては、頭部が侵入するだけとなるが、裏返っている指袋部があれば、その指袋部を頭部2a〜2cの何れかで先端側に突き出して確実に突出状態に戻すことができる。この動作は、第1の実施形態から第3の実施形態まで共通である。
【0020】
本発明の実施形態は、以上からなるが、本発明は、この実施形態にのみ制約されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で自由に変更して実施することができる。例えば、各実施形態は、頭部2a〜2cを3本とした場合を例示しているが、2本〜5本の範囲内の本数で実施してもよい。また、頭部2a〜2cの形状は、試験管の管底のような先端が半球状で後部が筒状をした形状や弾丸状としてもよい。さらに、頭部2a〜2cの柄部4に対する突出長さの調節は、ねじ込み方式に限らず、ゴム等の摩擦リングを支持軸部3a〜3cの差し込み穴内に装着しておき、手でスライドさせて突出長さを調整させてもよい。このスライド調整は、階段状に節度を付与してあってもよいし、無段階でもよい。また、柄部4は、折りたたみ式としてあってもよく、さらに、頭部2a〜2c及び支持軸部3a〜3c(4g〜4iを含む)は、柄部4に対して着脱可能乃至抜き差し可能に構成して携帯時に小型コンパクト化を可能としてあってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、5本指靴下の指返し具に好適であるが、各種作業用のゴム手袋類や外科手術時に着用されるピッタリした手袋類の指返し具に利用することもできる。
【符号の説明】
【0022】
1 指返し具
2a〜2c 頭部
3a〜3c 支持軸部
4 柄部
4a〜4c ネジ穴
4d、4e 結束リベット
4f グリップ部
4g〜4i 支持軸部
5 5本指靴下
5a〜5e 指袋部
5f 履き口部
5g 踵部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴下(5)の履き口部(5f)から靴下(5)の先端の指袋部(5a〜5e)に向けて挿入して該指袋部(5a〜5e)の裏返りを直すための先端が球形をした複数本の頭部(2a〜2c)を備えており、各頭部(2a〜2c)が所定間隔で支持軸部(3a〜3c)を介して柄部(4)に並列状に取り付けられていることを特徴とする5本指靴下の指返し具。
【請求項2】
前記頭部(2a〜2c)は、3本に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の5本指靴下の指返し具。
【請求項3】
前記各頭部(2a〜2c)は、柄部(4)に対する突出長さが個々に独立して調節可能とされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の5本指靴下の指返し具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−34895(P2012−34895A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178640(P2010−178640)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【特許番号】特許第4832584号(P4832584)
【特許公報発行日】平成23年12月7日(2011.12.7)
【出願人】(510217194)
【Fターム(参考)】