説明

CO2施用電気温風機

【課題】地球温暖化防止の一助になるよう、又、夜間の電気利用促進、加えて工業生産による液化COを農業用に利用する等の3点をうまく活用したCO施用電気温風機を提供するものである。
【解決手段】CO施用電気温風機1は、電気ヒータ制御部13に接続された電気ヒータ2、送風装置3及び二酸化炭素ガス通路4を備えた温風機本体5と、二酸化炭素ガス通路4に接続した貯蔵容器6とからなり、二酸化炭素ガス通路4は温風機本体5の軸芯X方向が配置され、電気ヒータ制御部13には、ヒータ制御装置、電力制御手段、過熱防止手段及び漏電防止手段が備えられ、電力制御手段15は電力供給手段18へと接続されている。二酸化炭素ガス通路4に設けられた二酸化炭素制御部20は、開閉弁23と、タイマー手段25と二酸化炭素濃度検出手段26を備えた二酸化炭素ガス制御装置24とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温室において、必要に応じて暖房を行いつつ、植物の育成を促進するための炭酸ガスの供給(CO施用)を行う装置に関する。
【背景技術】
【0002】
まず、農業におけるビニールハウス(温室)の暖房は、化石燃料を主体とした燃焼機が大半であり、煙突から排出される排気ガスに多量のCOが含まれ、地球温暖化防止の観点から望ましくない環境となっている。
【0003】
また、近年電気ヒータの熱源も種類が多く(シーズ線、面状・帯状ヒータ、ニクロム・カーボンヒータ等)かつ電力会社も夜間の利用促進を図り、ロスの少ない利用を求めている。(農業用ビニールハウスの暖房は、その利用の大半が夜間…(夜温管理)に集中している点が特徴とも言える。)そして、CO施用は農業においては、光合成促進目的から必要な技術である。
【0004】
前記CO施用の方法としては、一つ目に灯油・プロパンガスといった化石燃料を燃焼させ、その排気ガスを利用する方法があり(特許文献1)、燃焼熱によりCOが加熱された状態で放出されるので、ハウス内の拡散が早いことから多く利用されている。2つ目に工場にて製造する液化COガスを利用しハウスに適量放出する方法があるが(特許文献2)、あまり多く利用されていない。
【特許文献1】特公昭47−18605号公報
【特許文献2】実開昭51−35545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前述の1つ目の方法の特許文献1では長年使用において、特に灯油などの液体燃料を燃焼させる装置は燃焼部のメンテナンスをしっかり行わないと燃焼バランスがくずれ、CO以外の微小不純物も一緒に放出してしまう恐れがある。
【0006】
また、2つ目の方法における特許文献2おいても、不純物の無いCOを利用できる利点があるが、ボンベより液化しているCOを気化器にてガス化して放出する為、ガスそのものに熱が無く、ハウス内への拡散が難しい。よってチューブ等をハウス内に広く配置し、そのチューブに小さな穴を明けて少量放出する方法をとるため、あまり多く利用されていないという課題を有していた。
【0007】
解決しようとする問題点は、地球温暖化防止の一助になるよう、又、夜間の電気利用促進、加えて工業生産による液化COを農業用に利用する等の3点をうまく活用したCO施用電気温風機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、電気ヒータを備えた送風路と、液化二酸化炭素を貯蔵する貯蔵容器と、1次側を前記貯蔵容器に接続し2次側に設けた放出部を前記送風路に設けると共に途中が前記電気ヒータと熱交換可能な二酸化炭素ガス通路と、を備えたことである。
【0009】
請求項2の発明は、前記電気ヒータには、前記電気ヒータへ深夜電力を利用し電力を供給する電力供給手段と、前記電力供給手段に供給される電力供給を自動的にオン・オフ制御する電力制御手段と、を備えたことである。
【0010】
請求項3の発明は、前記二酸化炭素ガス通路に、前記二酸化炭素ガス通路を開閉する開閉弁と、前記開閉弁をタイマー手段又は二酸化炭素濃度検出手段により自動制御する制御装置とを備えたことである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、二酸化炭素ガスを電気ヒータにより加熱することで、簡便な構造で二酸化炭素ガスを温室内に均一に拡散させることができる。また、熱源が電気ヒータによるものなので、化石燃料を燃焼させ熱源を得るものと比べ、排ガスが発生せず地球温暖化防止の一助になるとともに、安価な深夜電力の利用が可能であるため、コストの低減を図ることができる。工業生産による液化二酸化炭素を農業用に利用することで、温室への二酸化炭素ガスの供給を効率的でさらに安定的なものとすることができる。
【0012】
請求項2によれば、電気ヒータを深夜電力供給時間帯に作動させることで、夜間の温室内の温度が低下する時間帯に温室内を加温し、温室内での植物の育成を安定させることができる。
【0013】
請求項3によれば、二酸化炭素ガスの供給を制御する手段を設けたことで、温室内への二酸化炭素ガスの供給を効率的で安定的なものとするとともに、温室内の二酸化炭素ガスの濃度を育成する植物に対し最適な濃度に保つことで、植物の光合成を促進させ、植物の成長を促進させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【実施例1】
【0015】
図1乃至4は実施例1を示しており、本発明におけるCO施用電気温風機1は、内部に電気ヒータ2、送風装置3及び二酸化炭素ガス通路4を備えた温風機本体5と、前記二酸化炭素ガス通路4に接続された貯蔵容器6とから構成している。
【0016】
前記温風機本体5は、一端が閉鎖され他端には縮径し形成された開口部7を有する矩形断面の筒状体であり、温風機本体5の閉鎖された一端側には、送風装置3たるモータ8駆動のファン9が配置され、温風機本体5の閉鎖された一端には温風機本体5の外部から内部へと吸気可能に形成された吸気部10が設けられている。
【0017】
そして温風機本体5における軸芯X方向には金属製の細い管材からなる二酸化炭素ガス通路4が配置されており、その二酸化炭素ガス通路4の一端を開口して形成された放出部11は温風器本体5の開口部7に向けられ、他端は、温風機本体5の内部から外部へと延び、外部の貯蔵容器6に接続されている。
【0018】
また、温風機本体5内部の側壁12には、それぞれ電気ヒータ2が備えられており、電気ヒータ2は温風機本体5外部に設けられた電気ヒータ制御部13に接続されている。
【0019】
電気ヒータ2は温風機本体5の軸芯X方向にコイル状に巻き回されたシーズ線ヒータからなるが、本発明の電気ヒータ2の変形実施例として図4に示すように二酸化炭素ガス通路4を軸芯としシーズ線ヒータを巻き回したものや、シーズ線ヒータに変わるものとして、面状・帯状ヒータ、ニクロム線ヒータ、カーボン繊維ヒータを用いたものでも構わないものとする。
【0020】
前記電気ヒータ制御部13には、ヒータ制御装置14、電力制御手段15、過熱防止手段16(図示せず)及び漏電防止手段17(図示せず)が備えられており、温風機本体5内部に設けられた電気ヒータ2は温風機本体5外部のヒータ制御装置14に接続し、ヒータ制御装置14は電力制御手段15に接続し、電力制御手段15は電力供給手段18たる深夜電力供給源へと接続されている。
【0021】
前記深夜電力供給源18とは、深夜には安価な深夜電力が優先的に供給されており、昼間の電力料金に比較し、夜間の電力料金が安価になる時間帯別電気料金が設定される場合には、そのような時間帯別電力源であってもよい。
【0022】
貯蔵容器6は、内部に液化二酸化炭素C1を貯蔵し、貯蔵容器6から温風機本体5内部へと延びる二酸化炭素ガス通路4には、二酸化炭素ガス通路4の上流側から気化器19そして二酸化炭素制御部20の順に設けられている。
【0023】
前記気化器19は、フロー式の流量計21を備えるとともに、二酸化炭素ガス通路4内の流量が調節可能な流量調節ネジ22が備えられている。
【0024】
前記二酸化炭素制御部20には、二酸化炭素制御部20内部における二酸化炭素ガス通路4に設けられた開閉弁23と、開閉弁23に接続された二酸化炭素ガス制御装置24が備えられ、二酸化炭素ガス制御装置24には、タイマー手段25が接続されているとともに、温室H内部に設けられた二酸化炭素濃度検出手段26が接続されている。
【0025】
以上の構成について作用を述べると、
本発明のCO施用電気温風機1は、貯蔵容器に貯蔵された液化二酸化炭素C1を、気化器に通過させ、気体の二酸化炭素ガスC2とし二酸化炭素ガス通路を通過させる。その時の二酸化炭素の流量C2は、気化器19に備えられた流量調節ネジ22により調整可能で、その流量についても、気化器19に備えられた流量計21により確認可能である。
【0026】
気化器19により液相から気相へと相変化した二酸化炭素ガスC2は、二酸化炭素制御部20を通過し、温風機本体5内部へと入るが、温風機本体5内部へと通される二酸化炭素ガスC2の流量は、二酸化炭素ガス通路4を開閉する開閉弁23を制御する二酸化炭素ガス制御装置24により決定される。
【0027】
図3に示すように、タイマー手段25には二酸化炭素ガス制御装置24が23時から7時即ち消費電力の少ない時間帯(深夜割引料金の時間帯)に通電するようオン時間(23時以降)とオフ時間(7時以前)とが設定されており、前記時間帯において、温室H内部に設けられた二酸化炭素ガス濃度検出手段26が検出する値が1000ppm前後になるよう二酸化炭素ガス制御装置24により開閉弁23の開閉が制御され、温風機本体5内部に通される二酸化炭素ガスC2の流量が調節される。
【0028】
温風機本体5内部の二酸化炭素ガス通路4へと通された二酸化炭素ガスC2は、温風機本体5内部に設けられた電気ヒータ2により温風機本体5内部の空気が温められ、その温められた空気Aと温風機本体5内部にある二酸化炭素ガス通路4とが熱交換を行うことで、二酸化炭素ガス通路4内部を通る二酸化炭素ガスC2は加熱される。ここでの電気ヒータ2も二酸化炭素ガス制御装置24と同様に電力制御手段15により23時から7時即ち消費電力の少ない時間帯(深夜割引料金の時間帯)にヒータ制御装置14が作動するようオン時間(23時以降)とオフ時間(7時以前)とが設定されており、これにより前記時間帯にヒータ制御装置14に接続された電気ヒータ2が通電・発熱し、前記時間帯に二酸化炭素ガス通路4内を通る二酸化炭素ガスC2は、電気ヒータ2により加熱されることとなる。
【0029】
その後、温められた空気Aと二酸化炭素ガス通路4の放出部11から放出された加熱後の二酸化炭素ガスC2とは、送風装置3により発生する温風機本体5内部の吸気部10から開口部7へ向かう軸芯X方向の送風路たる強制対流27によって、温風機本体5の開口部7から温室H内部へと送られる。
【0030】
そして、温室H内へと送り出された二酸化炭素ガスC2は、電気ヒータ2による加熱によって運動エネルギが増加し、温室H内の隅々まで均一に拡散し、温室H内の二酸化炭素ガスC2の濃度は均等になる。
【0031】
また、温室H内の二酸化炭素ガス濃度については、温室H内に設けられた二酸化炭素ガス濃度検出手段26により検出され、二酸化炭素ガスC2の濃度が二酸化炭素ガス制御装置24に信号として送られ、温室H内の二酸化炭素ガス濃度が1000ppm前後になるよう二酸化炭素ガス制御装置24により開閉弁23の開閉操作が行われる。
【0032】
そして、温室H内の温度については、電気ヒータ2により温められた空気Aが、温室H内に送られることにより、前記時間帯における室内の温度は外気に比べ高い温度に維持されており、二酸化炭素ガスC2の拡散の補助となっている。
【0033】
また、二酸化炭素ガスが所定の濃度(1000ppm)まで、高められた温室Hにおいては、二酸化炭素ガスC2の供給を止め、電気ヒータと送風装置とを作動させることで、温室Hの暖房装置として、本発明のCO施用電気温風機は使用可能である。
【0034】
さらに、温室H内部の温度が高い場合(例えば、日中など)には、電気ヒータ2は作動させず、送風装置3と二酸化炭素制御部20のみの作動で、温室H内に二酸化炭素ガスC2を放出することも可能である。
【0035】
そして、今後工場プラントにより排出される排ガスを固体CO(ドライアイス)や液化CO(ドライアイスの前工程となる)にするシステムが確立され、本発明のCO施用電気温風器1と組み合わせることで、さらなる地球温暖化防止の一助となりうる。
【0036】
また、電気ヒータ2の電源については、単相100V、単相200V又は三相200Vの何れについても使用可能である。
【0037】
以上のように、前記実施例では請求項1に対応して、電気ヒータ2を備えた送風路27と、液化二酸化炭素C1を貯蔵する貯蔵容器6と、1次側を前記貯蔵容器6に接続し2次側に設けた放出部11を前記送風路27に設けると共に途中が前記電気ヒータ2と熱交換可能な二酸化炭素ガス通路4と、を備えたことにより、二酸化炭素ガスC2を電気ヒータ2により加熱することで、簡便な構造で二酸化炭素ガスC2を温室H内に均一に拡散させることができる。また、熱源が電気ヒータ2によるものなので、化石燃料を燃焼させ熱源を得るものと比べ、排ガスが発生せず地球温暖化防止の一助になるとともに、安価な深夜電力の利用が可能であるため、コストの低減を図ることができる。工業生産による液化二酸化炭素C1を農業用に利用することで、温室Hへの二酸化炭素ガスC2の供給を効率的でさらに安定的なものとすることができる。
【0038】
また、前記実施例では請求項2に対応して、前記電気ヒータ2には、前記電気ヒータ2へ深夜電力を利用し電力を供給する電力供給手段18と、前記電力供給手段18に供給される電力供給を自動的にオン・オフ制御する電力制御手段15と、を備えたことにより、電気ヒータ2を深夜電力供給時間帯に作動させることで、夜間の温室H内の温度が低下する時間帯に温室H内を加温し、温室H内での植物の育成を安定させることができる。
【0039】
さらに、前記実施例では請求項3に対応して、前記二酸化炭素ガス通路4に、前記二酸化炭素ガス通路4を開閉する開閉弁23と、前記開閉弁23をタイマー手段25又は二酸化炭素濃度検出手段26により自動制御する制御装置24とを備えたことにより、二酸化炭素ガスC2の供給を制御する手段を設けたことで、温室H内への二酸化炭素ガスC2の供給を効率的で安定的なものとするとともに、温室H内の二酸化炭素ガスC2の濃度を育成する植物に対し最適な濃度に保つことで、植物の光合成を促進させ、植物の成長を促進させる。
【0040】
尚、本実施例は、強制対流により二酸化炭素ガスを送り出す機構のものであるが、送風機の吸気側に二酸化炭素ガス通路の放出部を向け、送風機により二酸化炭素ガスを吸引し、温室Hに送り出す機構のものでも構わないものとする。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施例1におけるCO施用電気温風機全体を示す説明概略図である。
【図2】本発明の実施例1における温風機本体を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施例1におけるCO施用電気温風機の作動状況を示すタイムスケジュールおよび温室内における二酸化炭素ガス濃度のグラフである。
【図4】本発明の実施例1における電気ヒータの変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0042】
1 CO施用電気温風機
2 電気ヒータ
4 二酸化炭素ガス通路
6 貯蔵容器
C1 液化二酸化炭素
11 放出部
15 電力制御手段
18 電力供給手段
23 開閉弁
24 制御装置
25 タイマー手段
26 二酸化炭素濃度検出手段
27 送風路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気ヒータを備えた送風路と、
液化二酸化炭素を貯蔵する貯蔵容器と、
1次側を前記貯蔵容器に接続し2次側に設けた放出部を前記送風路に設けると共に途中が前記電気ヒータと熱交換可能な二酸化炭素ガス通路と、
を備えたことを特徴とするCO施用電気温風機。
【請求項2】
前記電気ヒータには、前記電気ヒータへ深夜電力を利用し電力を供給する電力供給手段と、
前記電力供給手段に供給される電力供給を自動的にオン・オフ制御する電力制御手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のCO施用電気温風機。
【請求項3】
前記二酸化炭素ガス通路に、前記二酸化炭素ガス通路を開閉する開閉弁と、前記開閉弁をタイマー手段又は二酸化炭素濃度検出手段により自動制御する制御装置とを
備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のCO施用電気温風機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−195424(P2007−195424A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−15645(P2006−15645)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【出願人】(397001927)株式会社バリテック新潟 (1)
【Fターム(参考)】