説明

ChIPonChipデータと遺伝子発現データの統合解析システム及び方法

【課題】 ChIP on Chipデータと遺伝子発現データを遺伝子毎に解釈しやすいデータとして統合化し、複数のChIP on Chip実験と遺伝子発現実験結果から、効率的に遺伝子を絞り込むことができる統合化解析システムを提供することである。
【解決手段】 領域同定部31は、遺伝子毎に転写因子の結合状態を判定し、遺伝子発現判定部32は、遺伝子毎に発現状態を判定し、判定結果記憶装置33に格納する。遺伝子選択部41は、判定結果記憶装置33に格納されている判定結果に対して選択条件に該当する遺伝子を選択し、選択した遺伝子リストを結果統合部42と遺伝子リスト記憶装置43に送る。結果統合部42は、転写因子結合状態と遺伝子発現状態を判定結果記憶装置33から取得してそれらの結果をマージし、制御関係表示部44に送る。制御関係表示部44は、遺伝子間の制御関係をグラフ化する。関連遺伝子抽出部45は、遺伝子リスト記憶装置43に格納されている複数の遺伝子リストから関連遺伝子を抽出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はChIP on Chipデータと遺伝子発現データの統合解析システム及び方法に関し、特に、転写因子結合状態や遺伝子発現状態を判定する機能を有するChIP on Chipデータと遺伝子発現データの統合解析システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のDNAマイクロアレイの発展により、一度に数万個の遺伝子の発現量を測定できるようになった。さらに現在では、マイクロアレイの高密度化により、クロマチン免疫沈降法(Chromatin immunoprecipitation)とDNAマイクロアレイとを組み合わせたChIP on Chip法が開発され、転写因子とDNAとの結合やDNAやヒストンの修飾がゲノムワイドに観測できるようになった。例えば、以下の非特許文献1を参照すると、高密度のDNAマイクロアレイを用いてChIP on Chip実験を行うことにより、ヒト21番・22番染色体の全領域においてSp1, cMyc, p53等の転写因子の結合領域を探索している。
【0003】
従来、これらChIP on Chip実験によって得られた転写因子の結合領域やDNA.やヒストンの修飾に関する情報と、遺伝子発現解析用DNAマイクロアレイを用いた遺伝子発現情報とを統合化するシステムは、両者の情報を統一的に表示するため、例えば以下の非特許文献2に示されるように、ゲノム配列上に両者の情報を表示していた。
【0004】
しかしながら、両者の情報を効率的に統合化して解析し、分子レベルの制御メカニズムを推定する方法・システムは未だ考案されていない。
【0005】
【非特許文献1】Cawley S, et al. (2004) Unbiased mapping of transcription factor binding sites along human chromosomes 21 and 22 points to widespread regulation of noncoding RNAs. Cell, 116, 499-509
【非特許文献2】Integrated Genome Browser User’s Guide http://www.affymetrix.com
【非特許文献3】Thomas E. Royce(2005)Issues in the analysis of oligonucleotide tiling microarrays for transcript mapping. TRENDS in Genetics, 8, 466-75
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来技術に関する第1の問題点は、両者のデータを遺伝子単位で統合化できないことである。その理由は、DNAマイクロアレイデータによって得られる結果はプローブ単位の結果であるからである。さらに、遺伝子の定義は参照するデータベースによって異なるため、遺伝子の定義毎にマイクロアレイデータによって得られる結果の解釈が変わる可能性がある。
【0007】
第2の問題点は、DNAマイクロアレイのプローブ毎の値を統合化しても解釈できないことである。その理由は、DNAマイクロアレイは種類や実験条件等によりプローブ毎の値は異なるため、単純にプローブ値を比較することはできないからである。さらに、複数細胞間の比較実験を行う場合は、プローブ値そのものよりも有意に変動しているか否かを判定する方が解釈し易い。
【0008】
第3の問題点は、ChIP on Chipデータや遺伝子発現データから候補となる遺伝子リストを生成できないという点がある。その理由は、従来技術では領域毎にプローブから得られたシグナル値や統計量を表示することはできるが、全遺伝子にわたってシグナル値や統計量に対する条件を指定して遺伝子を絞り込むことができないからである。
【0009】
第4の問題点は、複数のChIP on Chip実験と遺伝子発現実験の結果から遺伝子を絞り込むことができないという点がある。その理由は、前記第3の問題点と同じである。
【0010】
本発明の目的は、ChIP on Chipデータと遺伝子発現データを遺伝子毎に統合化できるChIP on Chipデータと遺伝子発現データの統合解析システム及び方法を提供することにある。また、遺伝子の定義は変更することもあるので、遺伝子の定義が変更した場合にも対応できるChIP on Chipデータと遺伝子発現データの統合解析システム及び方法を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、ChIP on Chipデータと遺伝子発現データを統合化する際に、プローブ毎の値ではなく、解釈しやすいデータとして統合化できるChIP on Chipデータと遺伝子発現データの統合解析システム及び方法を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、候補となる遺伝子リストを生成できるChIP on Chipデータと遺伝子発現データの統合解析システム及び方法を提供することにある。さらに、複数のChIP on Chip実験と遺伝子発現実験結果から、効率的に遺伝子を絞り込むことができるChIP on Chipデータと遺伝子発現データの統合解析システム及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本件発明は、以下の特徴を有する課題を解決するための手段を採用している。
【0014】
本発明の第1の態様に係るChIP on Chipデータと遺伝子発現データに対する統合解析システムは、
選択条件や閾値・パラメータなどを入力する入力装置と、ChIP on Chip解析データと遺伝子発現解析データを格納するチップデータ格納手段と、転写因子の結合状態orヒストンの修飾状態や遺伝子発現状態の判定結果を一時的に格納する判定結果一時記憶手段と、ChIP on Chipデータと遺伝子発現データを統合化する統合解析手段と、判定結果一時記憶手段や統合解析手段の結果を出力する出力装置とを備え、
前記チップデータ格納手段は、ChIP on Chipに用いるチップのプローブと遺伝子名との対応表を格納するChIP on Chipプローブデータベースと、ChIP on Chip実験によって取得される解析データを格納するChIP on Chipデータベースと、遺伝子発現解析に用いるチップのプローブと遺伝子名との対応表を格納する発現Chipプローブデータベースと、遺伝子発現解析実験によって取得される解析データを格納する発現情報データベースと、実験情報を格納する実験情報データベースを有し、
前記判定結果一時記憶手段は、ChIP on Chip実験によって得られたデータから転写因子が結合した領域やクロマチンが修飾されている領域を同定する領域同定部と、遺伝子が発現しているか否かを判定する遺伝子発現判定部と、領域同定部及び遺伝子発現判定部の判定結果を格納する判定結果記憶部を有し、
前記統合解析手段は、指定された条件によって遺伝子を選択する遺伝子選択部と、選択された遺伝子に対するChIP on Chip実験の結果と遺伝子発現の結果を統合する結果統合部と、遺伝子選択部によって選択された遺伝子リストを格納する遺伝子リスト記憶部と、複数の遺伝子リストから関連する遺伝子を抽出する関連遺伝子抽出部と、ChIP on Chip実験と遺伝子発現実験の結果から遺伝子間の制御関係を表示する制御関係表示部を有することを特徴とする。
【0015】
本発明の第2の態様に係るChIP on Chipデータと遺伝子発現データに対する統合解析方法は、
遺伝子選択条件データ、領域判定のための閾値、及び解析対象実験IDを入力するステップと、
ChIP on Chip実験におけるChIP on Chip解析データと遺伝子発現実験における遺伝子発現解析データを格納する第1のステップと、
前記ChIP on Chip解析データを用いて転写因子の結合状態又はヒストンの修飾状態を判定し、前記遺伝子発現解析データを用いて遺伝子の発現状態を判定し、前記結合状態又は前記ヒストン修飾状態、及び遺伝子の発現状態を示す判定結果のデータを一時的に格納する第2のステップと、
前記遺伝子選択条件を示すデータ、前記判定結果データを取得して、前記遺伝子選択条件と前記結合状態又は前記ヒストン修飾状態に合致する遺伝子を選択して、遺伝子リストを複数作成する第3のステップと、
当該作成された遺伝子リストを抽出する場合には前記複数の遺伝子リストから関連遺伝子を抽出し、作成された遺伝子リストを抽出しない場合には、前記遺伝子リスト内の選択された遺伝子及び前期実験IDに対応する前記結合状態又は前記ヒストン修飾状態と前記遺伝子発現データとを統合化し、当該統合データを送出する第4のステップと、
前記関連遺伝子又は前記統合データを出力する第5のステップを
有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、予めChIP on Chipデータ及び遺伝子発現データに用いるChipに対して、プローブ毎に対応する遺伝子を登録しており、さらに、遺伝子の定義が変わっても、プローブ毎に対応する遺伝子を再設定することにより、新たな定義に応じて遺伝子毎にデータを統合化することができる。そのため、遺伝子毎にプローブのシグナル値やP値を用いて、陽性・陰性や高発現・低発現を判定できる。この結果、遺伝子毎にChIP on Chipデータと遺伝子発現データを統合することができる。
【0017】
また、本発明によれば、遺伝子毎に陽性・陰性や高発現・低発現を判定し、判定した結果を統合化しており、さらに、転写因子と遺伝子の制御関係や遺伝子の発現状態を容易にグラフ化でき、分子レベルの制御メカニズムをより効率的に推測することができる。これにより、ChIP on Chipデータと遺伝子発現データとを解釈しやすいデータとして統合化することができる。
【0018】
また、本発明によれば、遺伝子選択部において、転写因子の結合状態や遺伝子の発現状態に対して、条件を設定して遺伝子を抽出しており、さらに、候補となる遺伝子リストを記憶装置にて蓄えることができるため、複数のChIP on Chip実験と遺伝子発現実験の結果から、遺伝子を絞り込むことができる。そのため、ChIP on Chip実験と遺伝子発現実験の結果から、候補となる遺伝子リストを生成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の第1の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
図1を参照すると、本実施の形態に係る統合解析システムは、選択条件や閾値などを入力する入力装置1と、チップデータを格納するチップデータ格納手段2と、転写因子の結合状態やヒストンの修飾状態や遺伝子発現状態を判定した結果を一時的に格納する判定結果一時記憶手段3と、転写因子の結合状態やヒストンの修飾状態や遺伝子発現状態を統合する統合解析手段4と、ディスプレイ装置や印刷装置等の出力装置5とを含んで構成される。
【0021】
チップデータ格納手段2は、ChIP on ChipプローブDB21と、発現ChipプローブDB22と、ChIP on Chip DB23と、発現情報DB24と、実験情報DB25からなる。
【0022】
ChIP on ChipプローブDB21は、ChIP on Chip実験に用いたプローブのアノテーション情報を格納するデータベースであり、例えば図5に示すようにプローブ毎に対応する染色体の物理位置・遺伝子名が格納されている。また、遺伝子名はEnsembl(http://www.ensembl.org/)やNCBI(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)など、利用するデータベースによって遺伝子の定義が異なるため、各データベースに対応する遺伝子の領域を別に格納する。また、遺伝子の定義を転写産物(mRNA)と変更することによって、転写産物を単位として遺伝子情報を格納しても良い。
【0023】
発現ChipプローブDB22は、遺伝子発現実験に用いたチップのプローブのアノテーション情報を格納するデータベースであり、例えば図6に示すようにプローブ毎に対応する染色体の物理位置・遺伝子名が格納されている。また、遺伝子名はEnsembl(http://www.ensembl.org/)やNCBI(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)など、利用するデータベースによって遺伝子の定義が異なるため、各データベースに対応する遺伝子名を別に格納する。また、遺伝子の定義を転写産物(mRNA)と変更することによって、転写産物を単位として遺伝子情報を格納しても良い。
【0024】
ChIP on Chip DB23は、ChIP on Chip実験の解析結果であるChIP on Chip解析データを格納するデータベースであり、例えば図7に示すようにプローブ毎に解析結果であるシグナル値やP値等の統計量が格納されている。格納すべき解析結果は解析手法に依存するため、解析手法ごとに格納される統計量は異なる。解析手法は、例えば以下の非特許文献3を参照すると、ノンパラメトリック検定や、2項分布による検定や、主成分分析等が用いられる。
【0025】
また、解析手法によってはプローブではなく染色体上の領域単位の解析結果が格納されることもあり、その場合は、図8に示すように領域単位に解析結果を格納する。
【0026】
発現情報DB24は、遺伝子発現実験の解析結果である遺伝子発現解析データを格納するデータベースであり、例えば図9に示すようにプローブ毎に解析結果であるシグナル値等の統計量やDetection Callが格納されている。格納すべき解析結果は解析手法や補正方法に依存するため、解析手法や補正方法に依存して格納される統計量は異なる。
【0027】
実験情報DB25は、遺伝子発現実験やChIP on Chip実験における実験条件に関する情報を格納するデータベースであり、例えば図10に示すように実験毎に実験対象の細胞の種類や分化段階等の実験条件が格納されている。格納すべき実験条件は実験毎に異なる。
【0028】
判定結果一時記憶手段3は、領域同定部31と、遺伝子発現判定部32と、判定結果記憶装置33を備えている。
【0029】
領域同定部31は、ChIP on ChipプローブDB21からチップ上のプローブのアノテーション情報を、ChIP on Chip DB23からChIP on Chipデータを、実験情報DB25から実験情報を、入力装置からは閾値やパラメータを取得し、遺伝子毎に陽性・陰性を判定して実験IDと共に判定結果記憶装置33に格納する。
【0030】
遺伝子発現判定部32は、発現ChipプローブDB22からチップ上のプローブのアノテーション情報を、発現情報DB24から遺伝子発現解析データを、実験情報DB25から実験条件を、入力装置からは閾値やパラメータを取得し、単一細胞の場合は遺伝子毎に発現しているか否か(Positive, Negative)を判定し、実験IDと共に判定結果記憶装置33に格納し、複数細胞の比較の場合は遺伝子毎に高発現か低発現か変化なしか(Up, Down, No Change)を判定し、実験IDと比較条件に関する情報と共に判定結果記憶装置33に格納する。
【0031】
判定結果記憶装置33は、領域同定部31にて同定された転写因子の結合状態やヒストンの修飾状態や、遺伝子発現判定部32にて判定された遺伝子発現状態を実験IDや実験条件と共に一時的に格納する装置であり、転写因子の結合状態については、例えば図11に示すように実験IDと遺伝子毎に転写因子の結合状態orヒストンの修飾状態に関する情報を格納されている。また、遺伝子発現状態については、例えば図12に示すように実験IDと遺伝子毎に遺伝子の発現状態が格納されていて、遺伝子判定手段において複数細胞間の比較を行った場合は比較の対象となった比較条件に関する情報も格納されている。
【0032】
統合解析手段4は、遺伝子選択部41と、結果統合部42と、遺伝子リスト記憶装置43と、制御関係表示部44と、関連遺伝子抽出部45を備えている。
【0033】
遺伝子選択部41は、入力装置1から選択条件を取得し、実験情報DB25から実験条件に関する情報を取得し、判定結果記憶装置33に格納されている判定結果に対して選択条件・実験条件に該当する遺伝子を選択し、結果統合部42と遺伝子リスト記憶装置43に送出する。
【0034】
結果統合部42は、遺伝子選択部41から遺伝子リストを取得し、実験情報DB25から実験条件に関する情報を取得し、遺伝子リストに含まれる遺伝子に対応して、転写因子の結合状態orヒストンの修飾状態と遺伝子発現状態を判定結果記憶装置33から取得し、それらの結果をマージして、制御関係表示部44と出力装置5に送出する。出力装置5は、マージされた転写因子の結合状態orヒストンの修飾状態と遺伝子発現状態の判定結果が表示したり、印刷したりする。
【0035】
遺伝子リスト記憶装置43は、遺伝子リスト選択手段41から取得した遺伝子リストを格納する。また、複数の遺伝子リストから関連遺伝子を抽出する場合、関連遺伝子抽出部45に遺伝子リストを送出する。
【0036】
制御関係表示部44は、結果統合部42から転写因子の結合状態orヒストンの修飾状態と遺伝子発現状態のマージされた結果を取得し、遺伝子間の制御関係をグラフ化し、出力装置5に送出する。出力装置5はグラフ化された遺伝子間の制御関係を表示したり、印刷したりする。
【0037】
関連遺伝子抽出部45は、遺伝子リスト記憶装置43から複数の遺伝子リストを取得し、入力装置1から取得された条件に従って、複数の遺伝子から関連遺伝子を抽出し、抽出した遺伝子リストは出力装置5に送出する。出力装置5は、遺伝子リストを表示したり、印刷したりする。
【0038】
次に、図1、図2、図3、図4を参照して本実施の形態の動作について詳細に説明する。はじめに領域同定部31がChIP on Chip実験の解析結果を用いて転写因子の結合状態orヒストンの修飾状態を判定する(図2のステップB1)。次に、遺伝子発現判定部32が遺伝子発現実験の解析結果を用いて遺伝子の発現状態を判定する(ステップB2)。これらの順番はどちらが先でも構わない。
【0039】
次に、図1、図3を参照して領域同定部31におけるChIP on Chip実験の解析結果(ChIP on Chip解析データ)を用いた転写因子の結合状態orヒストンの修飾状態の判定について詳細に説明する。入力装置1において、領域判定のためにシグナル値やP値などの統計量に対する閾値と、解析の対象である実験ID(あるいは実験名)を設定する(図3のステップC1)。領域同定部31は、入力装置1から解析対象となる実験IDを取得し、取得した実験IDに対応するChIP on Chip解析データをChIP on Chipデータベース23から取得する。さらに、ChIP on Chipのプローブ情報をChIP on Chipプローブデータベース21から取得する。領域同定部31は、取得した情報をもとに、遺伝子毎にChIP on Chip解析データから転写因子の結合状態orヒストンの修飾状態について判定する(ステップC2)。判定方法は、例えば遺伝子毎のプロモータ領域内に含まれるプローブのシグナル値やP値が設定されている閾値より大きいor小さいかによって、陽性(転写因子が結合しているorヒストンがメチル化されている等)か陰性(転写因子が結合していないorヒストンがメチル化されていない等)かを判定する。遺伝子毎に判定された陽性・陰性の結果は、実験IDと共に判定結果記憶装置33に格納する(ステップC3)。全ての遺伝子に対して陽性・陰性を判定すれば終了し、判定されていない遺伝子が残っていれば陽性・陰性の判定を続ける(ステップC4)。
【0040】
次に、図1、図4を参照して遺伝子発現判定部32における遺伝子発現実験の解析データ(遺伝子発現解析データ)を用いた遺伝子の発現状態の判定について詳細に説明する。入力装置1において、遺伝子発現状態の判定のためにP値などの統計量に対する閾値と、解析の対象である実験ID(あるいは実験名)を設定する。遺伝子発現判定部32は、入力装置1から閾値や実験IDを取得し、取得した実験IDに対応する遺伝子発現解析データを発現情報データベース24から取得する。さらに、遺伝子発現解析に用いるチップのプローブ情報を発現Chipプローブデータベース22から取得する。遺伝子発現判定部32は、取得した情報をもとに、遺伝子毎に発現状態を判定する。遺伝子発現状態の判定においては、単一細胞における遺伝子発現解析データから遺伝子発現状態を判定する場合と、複数細胞における遺伝子発現解析データを比較して遺伝子の発現状態を判定する場合があり、状況に応じて選択する(図4のステップD1)。
【0041】
単一細胞における遺伝子発現状態の判定の場合は、入力装置において発現量やDetection Call等に対する閾値を設定する(ステップD2)。次に、設定された閾値を用いて全遺伝子の発現状態を判定する(ステップD3)。判定方法は、例えば遺伝子毎のシグナル値が閾値より大きいか小さいかによって、あるいはDetection Callの値によって陽性(発現している)or陰性(発現していない)を判定する。
【0042】
複数細胞間で遺伝子発現データを比較する場合は、比較する細胞間で仮説検定に基づいて有意確率(P値)を計算したり、細胞間で発現量の比を計算したりする(ステップD4)。次に、入力装置1においてP値や発現量の比に対する閾値を設定する(ステップD5)。次に、設定された閾値を用いて全遺伝子の発現状態を判定する(ステップD6)。判定方法は、例えばP値が閾値以下であれば遺伝子発現の差がありと判定し、発現量の比によって高発現(High)か低発現(Low)かを判定する。一方、P値が閾値よりも大きい場合は発現変化なし(No Change)と判定する。
【0043】
それぞれの判定方法に基づいて判定された結果は、実験IDと共に判定結果記憶装置33に格納する(ステップD7)。
【0044】
次に、図2のステップB3以降について詳細に説明する。遺伝子選択部41は、実験情報DB25から実験条件に関する情報を取得し、判定結果記憶装置33に格納されている遺伝子毎の転写因子の結合状態orヒストン修飾状態と、遺伝子発現状態を取得し、入力装置1から選択条件を取得し、遺伝子を選択する(ステップB3)。選択条件は例えば、“転写因子Aが結合している”かつ“発現している”遺伝子や、“2つの細胞間で発現が変化している”遺伝子や、“特定の分化段階でのみ発現している”遺伝子などである。遺伝子選択部41は、選択条件に合致した遺伝子リストと実験IDを結果統合部42と遺伝子リスト記憶装置43に送出する。
【0045】
次に、複数の遺伝子リストから関連遺伝子を抽出するか否かを判定する(ステップB4)。関連遺伝子を抽出する場合は、関連遺伝子抽出部45は、遺伝子リスト記憶装置43から複数の遺伝子リストを取得し、入力装置1から抽出条件を取得し、複数の遺伝子リストから関連遺伝子を抽出する(ステップB7)。抽出条件は、例えば“2つの遺伝子リストで共通な遺伝子”や“複数の遺伝子リストで特異的な遺伝子”などである。抽出された関連遺伝子は印刷装置5に送出され、表示したり、印刷したりする(ステップB10)。
【0046】
次に、図2のステップB6以降について詳細に説明する。結果統合部42は、遺伝子選択部41から遺伝子リストと実験IDを取得し、遺伝子リストに記載されている遺伝子と実験IDに対応する転写因子結合状態orクロマチン修飾状態と遺伝子発現状態を判定結果記憶装置33から取得する。取得した転写因子結合状態orクロマチン修飾状態と遺伝子発現状態は、遺伝子毎にマージする(ステップB6)。
【0047】
次に、マージした転写因子結合状態orクロマチン修飾状態と遺伝子発現状態をグラフで表示するか否かを判定する(ステップB8)。グラフで表示しない場合は、マージした結果は印刷装置5に送出され、表示・印刷される(ステップB10)。グラフで表示する場合は、マージした結果を制御関係表示部44に送出する。制御関係表示部44では、送出された転写因子結合状態orクロマチン修飾状態と遺伝子発現状態から遺伝子間の制御関係をグラフ化する(ステップB9)。例えば、“転写因子AのChIP on Chip実験において、遺伝子Bが陽性であり、かつ遺伝子Bが発現状態”で、“転写因子AのChIP on Chip実験において、遺伝子Cが陽性であり、かつ遺伝子Cが非発現状態”の場合は、図13に示すような制御関係が推定される。推定された制御関係は印刷装置5に送出され、表示・印刷される(ステップB10)。さらに、実験で得られた制御関係の情報に加えて、文献や過去の実験に基づいた既知の制御関係に関する情報を重ねて表示することにより、より詳細に制御メカニズムを推測することができる。
【0048】
次に、本実施の形態の効果について説明する。
【0049】
本実施の形態では、予めプローブ毎に対応する遺伝子を登録しているため、ChIP on Chipデータ及び遺伝子発現データ共に、登録された遺伝子毎にプローブのシグナル値やP値を用いて、陽性・陰性や高発現・低発現を判定できる。このため、遺伝子毎にChIP on Chipデータと遺伝子発現データを統合することができる。さらに、遺伝子の定義が変わっても、プローブ毎に対応する遺伝子を再設定することにより、新たな定義に応じて遺伝子毎にデータを統合化することができる。
【0050】
また、本実施の形態では、判定結果一時記憶手段3において遺伝子毎に陽性・陰性や高発現・低発現を判定し、判定した結果を統合化することができる。このため、プローブ値を統合化するよりも、より解釈しやすいデータとして統合化することができる。さらに、遺伝子毎に陽性・陰性や高発現・低発現を判定することにより、制御関係表示部44で、転写因子と遺伝子の制御関係や遺伝子の発現状態を容易にグラフ化することが可能となり、分子レベルの制御メカニズムをより効率的に推測することができる。
【0051】
また、本実施の形態では、遺伝子選択部41において様々な条件のもとで遺伝子を絞り込むことができるので、ChIP on Chipデータや遺伝子発現データから候補となる遺伝子リストを生成することができる。さらに、候補となる遺伝子リストは遺伝子リスト記憶装置43で記憶され、関連遺伝子抽出部45において複数の候補となる遺伝子リストから関連遺伝子を絞り込むことができる。このため、複数のChIP on Chip実験と遺伝子発現実験の結果から、遺伝子を絞り込むことができる。
【0052】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本発明の第2の実施の形態は、図14に示すように関連遺伝子抽出部45から関連遺伝子のリストを結果統合部42に送出する点に特徴がある。第2の実施の形態の動作においては、第1の実施の形態の動作に加え、関連遺伝子抽出部45から関連遺伝子リストを結果統合部42に送出し、関連遺伝子リストに対するChIP on Chipデータと遺伝子発現データの判定結果を統合化する点が第1の実施の形態と異なっている。
【0053】
次に、本実施の形態の効果について説明する。本実施の形態では関連遺伝子抽出部45において抽出された遺伝子リストを結果統合部に送出することができるため、複数の条件のもとで抽出された遺伝子に対するChIP on Chipデータと遺伝子発現データの判定結果を統合化することができる。
【0054】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。本発明の第3の実施の形態は、関連遺伝子抽出部41から遺伝子リストを出力装置5に送出する点である。第3の実施の形態の構成は第1の実施の形態の構成と同じである。図15に示すように、第3の実施の形態の動作においては、第1の実施の形態の動作における遺伝子選択部41において選択された遺伝子リストを出力装置5に送出し、遺伝子リストを表示・出力する点が第1の実施の形態と異なっている。
【0055】
次に、本実施の形態の効果について説明する。本実施の形態では選択された遺伝子リストを表示・印刷することができるため、単一条件のもとで検索された遺伝子リストを簡単に表示することができる。例えば、“ChIP on Chipデータが陽性となった遺伝子リスト”を出力することができたり、“ChIP on Chipデータが陽性で、かつ発現している遺伝子リスト”を出力することができる。
【実施例】
【0056】
次に、具体的な実施例を用いて本実施の形態の動作を説明する。かかる実施例1,2,3はそれぞれ本発明の第1,第2,第3の実施の形態に対応するものである。
【0057】
(実施例1)
例えば、転写因子Cに関する細胞Aと細胞BのChIP on Chip実験と、夫々の細胞における遺伝子発現実験の統合化を考える。本実験の目的は、両細胞において転写因子Cが共通に結合している遺伝子及び、結合状態が異なる遺伝子を抽出し、さらに抽出した遺伝子に対するChIP on Chipデータと遺伝子発現データを統合化する。ここで、各実験における解析データ及び各実験の実験情報(種類・細胞・転写因子名)はチップデータ格納手段に登録されているとする。
【0058】
領域同定部31は、入力装置1から送出されたP値に対する閾値を用いて、遺伝子毎に細胞Aにおける転写因子Cの結合状態を判定し、判定結果を判定結果一時記憶装置33に格納する(ステップB1)。P値に対する閾値は例えば10−5等とする。同様に、細胞Bについても転写因子Cの結合状態を判定する。
【0059】
次に、遺伝子発現判定部32は、入力装置1から送出された発現量の比に対する高発現と低発現の閾値を用いて、遺伝子毎に細胞Aと細胞Bの発現量の比から各細胞における発現状態を判定し、判定結果を判定結果一時記憶装置33に格納する(ステップB2)。ここで高発現とは細胞Aが細胞Bよりも発現量が高い(発現量の比が高発現の閾値よりも大きい)ことを示し、低発現とは細胞Aが細胞Bよりも発現量が低い(発現量の比が低発現の閾値よりも小さい)ことを示し、変化なしは両細胞において発現量が等しいことを示している(発現量の比が高発現の閾値と低発現量の閾値との中間)。高発現に対する閾値は2〜4倍、低発現に対する閾値は−2〜−4倍等とする。なお、比較条件も判定結果記憶装置33に格納されるが、本実施例においては“細胞”が格納される。
【0060】
両細胞において転写因子Cが共通に結合している遺伝子を抽出する場合、転写因子Cに関する細胞AのChIP on Chipの判定結果を取得するために、実験条件が“細胞A”と“ChIP on Chip”である実験IDを実験情報データベース25から取得し、取得した実験IDに対応する転写因子Cの結合状態の判定結果を判定結果記憶装置33から取得する。取得した転写因子Cの結合状態の判定結果から、陽性である遺伝子を選択する(ステップB3)。選択された遺伝子は遺伝子リスト記憶装置43に格納する。同様に、細胞Bについても転写因子Cの結合状態が陽性である遺伝子を遺伝子リスト記憶装置43に格納する。
【0061】
関連遺伝子抽出部45は、細胞Aに関する転写因子Cが結合した遺伝子リストと、細胞Bに関する転写因子Cが結合した遺伝子リストを遺伝子リスト記憶装置43から取得し、両方のリストで共通に記載されている遺伝子を抽出する(ステップB7)。抽出した遺伝子リストは出力装置5に送出し、表示したり・印刷したりする(ステップB10)。
【0062】
さらに、第2の実施の形態においては、関連遺伝子抽出部45は抽出した遺伝子リストを結果統合部42に送出することができ、送出された遺伝子リストに対するChIP on Chipデータと遺伝子発現データの判定結果を統合することができる。
【0063】
両細胞において転写因子Cの結合状態が異なる遺伝子を抽出する場合、前記ステップB3までは同様に行い、関連遺伝子抽出部45において遺伝子を抽出するときに、片方のリストのみに記載されている遺伝子を抽出する(ステップB7)。
【0064】
(実施例2)
例えば、転写因子Dに関する細胞EのChIP on Chip実験と遺伝子発現実験の統合化を考える。本実験の目的は、細胞Eにおいて転写因子Dが結合していて、発現している遺伝子及び、転写因子Dが結合していて、発現していない遺伝子を抽出することである。ここで、各実験における解析データ及び各実験の実験情報(種類・細胞・転写因子名)はチップデータ格納手段に登録されているとする。
【0065】
領域同定部31は、入力装置1から送出されたP値に対する閾値を用いて、遺伝子毎に細胞Eにおける転写因子Dの結合状態を判定し、実験IDと共に判定結果を判定結果一時記憶装置33に格納する(ステップE1)。P値に対する閾値は例えば10−5等とする。
【0066】
次に、遺伝子発現判定部32は、発現情報データベース24に格納されているDetection Callを用いて発現・非発現を判定し、遺伝子毎に細胞Eの発現状態を判定し、実験IDと共に判定結果を判定結果一時記憶装置33に格納する(ステップE2)。
【0067】
細胞Eにおいて転写因子Dが結合していて、発現している遺伝子を抽出する場合、細胞Eにおける転写因子Dの結合状態を取得するために、実験条件が“細胞E”と“ChIP on Chp”である実験IDを実験情報データベース25から取得し、取得した実験IDに対応する転写因子Dの結合状態の判定結果を判定結果記憶装置33から取得する。次に、実験条件が“細胞E”と“Expression”である実験IDを実験情報データベース25から取得し、取得した実験IDに対応する遺伝子発現状態の判定結果を判定結果記憶装置33から取得する。取得した2つのリストにおいて、転写因子Dの結合状態が陽性で、かつ発現状態である遺伝子を選択し、遺伝子リストを生成する(ステップE3)。生成された遺伝子リストは結果統合部42に送られる。
【0068】
細胞Eにおいて転写因子Dが結合していて、発現していない遺伝子を抽出する場合は、転写因子Dの結合状態の判定結果と遺伝子発現状態の判定結果を判定結果記憶装置33から取得するまでは前述と同じである。2つのリストにおいて、転写因子Dの結合状態が陽性で、かつ非発現状態である遺伝子を選択し、遺伝子リストを生成する(ステップE4)点が異なる。
【0069】
生成された遺伝子リストは出力装置5に送られ、表示・印刷されたりする。
【0070】
また、上記した各実施の形態は、本発明を好適に実施した形態の一例に過ぎず、本発明は、その主旨を逸脱しない限り、種々変形して実施することが可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明における第1の実施の形態の構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施の形態における動作の流れを示すフローチャートである。
【図3】第1の実施の形態における領域同定部の動作の流れを示すフローチャートである。
【図4】第1の実施の形態における遺伝子発現判定部の動作の流れを示すフローチャートである。
【図5】第1の実施の形態におけるChIP on Chipプローブデータベースに格納する情報の例を示した図である。
【図6】第1の実施の形態における発現Chipプローブデータベースに格納する情報の例を示した図である。
【図7】第1の実施の形態におけるChIP on Chipデータベースに格納する情報の例を示した図である。
【図8】第1の実施の形態におけるChIP on Chipデータベースに格納する情報の例を示した図である。
【図9】第1の実施の形態における発現情報データベースに格納する情報の例を示した図である。
【図10】第1の実施の形態における実験情報データベースに格納する情報の例を示した図である。
【図11】第1の実施の形態における判定結果記憶装置に格納するChIP on Chip情報の例を示した図である。
【図12】第1の実施形態における判定結果記憶装置に格納する発現情報の例を示した図である。
【図13】第1の実施形態における制御関係表示部で表示される制御関係の図である。
【図14】本発明における第2の実施の形態の構成を示すブロック図である。
【図15】第3の実施の形態における動作の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0072】
1 入力装置
2 チップデータ格納手段
3 判定結果一時記憶手段
4 統合解析手段
5 出力装置
21 ChIP on Chipプローブデータベース
22 発現Chipプローブデータベース
23 ChIP on Chipデータベース
24 発現情報データベース
25 実験情報データベース
31 領域同定部
32 遺伝子発現判定部
33 判定結果記憶装置
41 遺伝子選択部
42 結果統合部
43 遺伝子リスト記憶装置
44 制御関係表示部
45 関連遺伝子抽出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子選択条件データ、領域判定のための閾値、及び解析対象実験IDを入力する入力装置と、
ChIP on Chip実験におけるChIP on Chip解析データと遺伝子発現実験における遺伝子発現解析データを格納するチップデータ格納手段と、
前記ChIP on Chip解析データを用いて転写因子の結合状態又はヒストンの修飾状態を判定し、前記遺伝子発現解析データを用いて遺伝子の発現状態を判定し、前記結合状態又は前記ヒストン修飾状態、及び遺伝子の発現状態を示す判定結果のデータを一時的に格納する判定結果一時記憶手段と、
前記遺伝子選択条件を示すデータ、前記判定結果データを取得して、前記遺伝子選択条件と前記結合状態又は前記ヒストン修飾状態に合致する遺伝子を選択してなる遺伝子リストを複数作成し、作成された遺伝子リストを抽出する場合には前記複数の遺伝子リストから関連遺伝子を抽出し、作成された遺伝子リストを抽出しない場合には、前記遺伝子リスト内の選択された遺伝子及び前期実験IDに対応する前記結合状態又は前記ヒストン修飾状態と前記遺伝子発現データとを統合化し、当該統合データを送出する統合解析手段と、
前記関連遺伝子又は前記統合データを出力する出力装置を
有することを特徴とするChIP on Chipデータ及び遺伝子発現データ統合解析システム。
【請求項2】
前記チップデータ格納手段は、
ChIP on Chipに用いるチップのプローブと遺伝子名との対応表を格納するChIP on Chipプローブデータベースと、
前記ChIP on Chip解析データを格納するChIP on Chipデータベースと、
遺伝子発現解析に用いるチップのプローブと遺伝子名との対応表を格納する発現Chipプローブデータベースと、
前記遺伝子発現解析データを格納する発現情報データベースと、
実験情報を格納する実験情報データベース
を有することを特徴とする請求項1記載のChIP on Chipデータ及び遺伝子発現データ統合解析システム。
【請求項3】
前記判定結果一時記憶手段は、
前記ChIP on Chipプローブデータベースからチップ上のプローブのアノテーション情報を、ChIP on Chip データベースからChIP on Chip解析データを、実験情報データベースから実験情報を、入力装置からは前記閾値及び前記解析対象実験IDを取得し、遺伝子毎に転写因子の結合状態又はヒストンの修飾状態を判定し前記実験IDと共にその判定結果を前記判定結果記憶装置に格納する領域同定部と、
前記入力装置から前記閾値及び前記実験IDを取得し、当該取得した実験IDに対応する遺伝子発現解析データを前記発現情報データベースから取得し、遺伝子発現解析に用いるチップ上のプローブのアノテーション情報を前記発現Chipプローブデータベースから取得し、それら取得した情報に基づいて、遺伝子毎に遺伝子発現状態を判定する遺伝子発現判定部と、
前記領域同定部及び前記遺伝子発現判定部の判定結果を格納する判定結果記憶装置を有することを特徴とする請求項2記載のChIP on Chipデータ及び遺伝子発現データ統合解析システム。
【請求項4】
前記遺伝子発現判定部は、単一細胞における遺伝子発現状態を判定する場合は遺伝子毎に発現しているか否かを判定し、前記実験IDと共に当該判定結果を前記判定結果記憶装置に格納し、複数細胞間における遺伝子発現解析データを比較する場合は遺伝子毎に高発現か低発現か変化なしかを判定し、その判定結果データと前記実験IDを前記判定結果記憶装置に格納することを特徴とする請求項3記載のChIP on Chipデータ及び遺伝子発現データ統合解析システム。
【請求項5】
単一細胞における遺伝子発現状態の判定の場合は、前記入力装置で発現量及びDetection Callに対する閾値が設定され、当該設定された閾値を用いて全遺伝子の発現状態を判定し、
複数細胞間で遺伝子発現データを比較する場合は、比較する細胞間で仮説検定に基づく有意確率(P値)を計算し、細胞間で発現量の比を計算し、前記入力装置で前記有意確率や発現量の比に対する閾値が設定され、当該設定された閾値を用いて全遺伝子の発現状態を判定する
ことを特徴とする請求項4記載のChIP on Chipデータ及び遺伝子発現データ統合解析システム。
【請求項6】
前記領域同定部は、前記取得した情報に基づいて、遺伝子ごとにChIP on Chip解析データからプロモータ領域内に含まれるプローブのシグナル値や有意確率(P値)が設定されている閾値より大きい場合には陽性であり、小さい場合には陰性であると判定することを特徴とする請求項3記載のChIP on Chipデータ及び遺伝子発現データ統合解析システム。
【請求項7】
前記統合解析手段は、
あらかじめ指定された条件によって遺伝子を選択する遺伝子選択部と、
選択された遺伝子に対する、転写因子の結合状態又はヒストンの修飾状態と遺伝子発現状態を前記判定結果一次記憶手段から取得し、それらの結果を統合する結果統合部と、
前記遺伝子選択部によって選択された遺伝子リストを複数格納する遺伝子リスト記憶装置と、
前記複数の遺伝子リストから関連する遺伝子を抽出する関連遺伝子抽出部と、
ChIP on Chip実験と遺伝子発現実験の結果から遺伝子間の制御関係を表示する制御関係表示部を
有することを特徴とする請求項2記載のChIP on Chipデータ及び遺伝子発現データ統合解析システム。
【請求項8】
遺伝子選択部は、前記入力装置から選択条件を取得し、前記実験情報データベースから実験条件に関する情報を取得し、前記判定結果記憶装置に格納されている判定結果に対して選択条件及び実験条件に該当する遺伝子を選択し、前記結果統合部と前記遺伝子リスト記憶装置に送出することを特徴とする請求項7記載のChIP on Chipデータ及び遺伝子発現データ統合解析システム。
【請求項9】
前記結果統合部は、前記遺伝子選択部から遺伝子リストを取得し、実験情報データベースから実験条件に関する情報を取得し、遺伝子リストに含まれる遺伝子に対応する、転写因子の結合状態又はヒストンの修飾状態と遺伝子発現状態を前記判定結果記憶装置から取得し、それらの結果を統合して、前記制御関係表示部及び前記出力装置に送出することを特徴とする請求項7記載のChIP on Chipデータ及び遺伝子発現データ統合解析システム。
【請求項10】
前記遺伝子リスト記憶装置は、遺伝子リスト選択部から取得した遺伝子リストを格納し、前記複数の遺伝子リストから関連遺伝子を抽出する場合、前記関連遺伝子抽出部に遺伝子リストを送出することを特徴とする請求項7記載のChIP on Chipデータ及び遺伝子発現データ統合解析システム。
【請求項11】
前記制御関係表示部は、前記結果統合部から転写因子の結合状態又はヒストンの修飾状態と遺伝子発現状態が統合された結果を取得し、遺伝子間の制御関係をグラフ化し、前記出力装置に送出し、
当該出力装置はグラフ化された遺伝子間の制御関係を表示したり、印刷したりすることを特徴とする請求項7記載のChIP on Chipデータ及び遺伝子発現データ統合解析システム。
【請求項12】
前記関連遺伝子抽出部は、前記遺伝子リスト記憶装置から複数の遺伝子リストを取得し、前記入力装置から取得された条件に従って、前記複数の遺伝子リストから関連遺伝子を抽出し、抽出した遺伝子リストを前記出力装置に送出し、
当該出力装置は、遺伝子リストを表示したり、印刷したりすることを特徴とする請求項7記載のChIP on Chipデータ及び遺伝子発現データ統合解析システム。
【請求項13】
前記関連遺伝子抽出部から関連遺伝子リストを前記結果統合部に送出し、前記関連遺伝子リストに対するChIP on Chipデータと遺伝子発現データの判定結果を統合化することを特徴とする請求項12記載のChIP on Chipデータ及び遺伝子発現データ統合解析システム。
【請求項14】
遺伝子選択条件データ、領域判定のための閾値、及び解析対象実験IDを入力するステップと、
ChIP on Chip実験におけるChIP on Chip解析データと遺伝子発現実験における遺伝子発現解析データを格納する第1のステップと、
前記ChIP on Chip解析データを用いて転写因子の結合状態又はヒストンの修飾状態を判定し、前記遺伝子発現解析データを用いて遺伝子の発現状態を判定し、前記結合状態又は前記ヒストン修飾状態、及び遺伝子の発現状態を示す判定結果のデータを一時的に格納する第2のステップと、
前記遺伝子選択条件を示すデータ、前記判定結果データを取得して、前記遺伝子選択条件と前記結合状態又は前記ヒストン修飾状態に合致する遺伝子を選択してなる遺伝子リストを複数作成する第3のステップと、
当該作成された遺伝子リストを抽出する場合には前記複数の遺伝子リストから関連遺伝子を抽出し、作成された遺伝子リストを抽出しない場合には、前記遺伝子リスト内の選択された遺伝子及び前期実験IDに対応する前記結合状態又は前記ヒストン修飾状態と前記遺伝子発現データとを統合化し、当該統合データを送出する第4のステップと、
前記関連遺伝子又は前記統合データを出力する第5のステップを
有することを特徴とするChIP on Chipデータ及び遺伝子発現データ統合解析方法。
【請求項15】
前記第2のステップにおいて、
データベースからチップ上のプローブのアノテーション情報、ChIP on Chip解析データ、及び実験情報を、入力装置から前記閾値及び前記解析対象実験IDを取得する第6のステップと、
遺伝子毎に転写因子の結合状態又はヒストンの修飾状態を判定し実験IDと共にその判定結果を判定結果記憶装置に格納する第7のステップと、
前記入力装置から前記所定の閾値及び実験IDを取得し、当該取得した実験IDに対応する遺伝子発現解析データを前記データベースから取得し、遺伝子発現解析に用いるチップ上のプローブのアノテーション情報を前記データベースから取得する第8のステップと、
それら取得した情報に基づいて、遺伝子毎に遺伝子発現状態を判定してその判定結果を送出する第9のステップと、
前記判定結果を前記判定結果記憶装置に格納する第10のステップ
を有することを特徴とする請求項14記載のChIP on Chipデータ及び遺伝子発現データ統合解析方法。
【請求項16】
前記第9のステップにおいて、
単一細胞における遺伝子発現状態を判定する場合は遺伝子毎に発現しているか否かを判定し、前記実験IDと共に当該判定結果を前記判定結果記憶装置に格納する第11のステップと、
複数細胞間における遺伝子発現解析データを比較する場合は遺伝子毎に高発現か低発現か変化なしかを判定し、その判定結果データと前記実験IDを前記判定結果記憶装置に格納する第12のステップ
を有することを特徴とする請求項15記載のChIP on Chipデータ及び遺伝子発現データ統合解析方法。
【請求項17】
前記第11のステップにおいて、単一細胞における遺伝子発現状態の判定の場合は、前記入力装置で発現量及びDetection Callに対する閾値が設定され、当該設定された閾値を用いて全遺伝子の発現状態を判定し、
前記第12のステップにおいて、複数細胞間で遺伝子発現データを比較する場合は、比較する細胞間で仮説検定に基づく有意確率(P値)を計算し、細胞間で発現量の比を計算し、前記入力装置で前記有意確率や発現量の比に対する閾値が設定され、当該設定された閾値を用いて全遺伝子の発現状態を判定する
ことを特徴とする請求項16記載のChIP on Chipデータ及び遺伝子発現データ統合解析方法。
【請求項18】
前記取得した情報に基づいて、遺伝子ごとにChIP on Chip解析データからプロモータ領域内に含まれるプローブのシグナル値や有意確率(P値)が設定されている閾値より大きい場合には陽性であり、小さい場合には陰性であると判定することを特徴とする請求項15記載のChIP on Chipデータ及び遺伝子発現データ統合解析方法。
【請求項19】
前記第3のステップにおいて、
あらかじめ指定された条件によって遺伝子を選択する第12のステップと、
選択された遺伝子に対する、転写因子の結合状態又はヒストンの修飾状態と遺伝子発現状態を取得し、それらの結果を統合する第13のステップと、
前記遺伝子選択部によって選択された遺伝子リストを複数格納する第14のステップを有し、
前記第4のステップにおいて、
前記複数の遺伝子リストから関連する遺伝子を抽出する第15のステップと、
ChIP on Chip実験と遺伝子発現実験の結果から遺伝子間の制御関係を表示する第16のステップを
有することを特徴とする請求項14記載のChIP on Chipデータ及び遺伝子発現データ統合解析方法。
【請求項20】
前記第12のステップにおいて、
前記入力装置から選択条件を取得し、前記実験情報データベースから実験条件に関する情報を取得し、前記判定結果記憶装置に格納されている判定結果に対して選択条件及び実験条件に該当する遺伝子を選択して送出する第17のステップを有することを特徴とする請求項19記載のChIP on Chipデータ及び遺伝子発現データ統合解析方法。
【請求項21】
前記第13のステップにおいて、
前記遺伝子選択部から遺伝子リストを取得し、実験情報データベースから実験条件に関する情報を取得し、遺伝子リストに含まれる遺伝子に対応する、転写因子の結合状態又はヒストンの修飾状態と遺伝子発現状態を前記判定結果記憶装置から取得し、それらの結果を統合して、前記制御関係表示部及び前記出力装置に送出する第18のステップを有することを特徴とする請求項19記載のChIP on Chipデータ及び遺伝子発現データ統合解析方法。
【請求項22】
前記第14のステップにおいて、
遺伝子リスト選択部から取得した遺伝子リストを格納し、前記複数の遺伝子リストから関連遺伝子を抽出する場合、前記関連遺伝子抽出部に遺伝子リストを送出する第19のステップを有することを特徴とする請求項19記載のChIP on Chipデータ及び遺伝子発現データ統合解析方法。
【請求項23】
前記第16のステップにおいて、
前記転写因子の結合状態又は前記ヒストンの修飾状態と前記遺伝子発現状態が統合された統合結果を取得し、遺伝子間の制御関係をグラフ化し、前記出力装置に送出する第20のステップと、
当該出力装置はグラフ化された遺伝子間の制御関係を表示したり、印刷したりする第21のステップを
さらに有することを特徴とする請求項19記載のChIP on Chipデータ及び遺伝子発現データ統合解析方法。
【請求項24】
前記第15のステップにおいて、
複数の遺伝子リストを取得し、前記入力装置から取得された条件に従って、前記複数の遺伝子リストから関連遺伝子を抽出し、抽出した遺伝子リストを前記出力装置に送出する第22のステップと、
前記遺伝子リストを表示し、印刷する第23のステップを
有することを特徴とする請求項19記載のChIP on Chipデータ及び遺伝子発現データ統合解析方法。
【請求項25】
前記関連遺伝子リストを前記結果統合部に送出し、前記関連遺伝子リストに対するChIP on Chipデータと遺伝子発現データの判定結果を統合化するステップを有することを特徴とする請求項24記載のChIP on Chipデータ及び遺伝子発現データ統合解析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−108150(P2008−108150A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−291884(P2006−291884)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(502196050)国立成育医療センター総長 (8)