説明

DHCプラント省エネルギー化システム

【課題】都市下水や河川水などを熱源に利用できない地域でも、冷凍機など熱源機や冷却塔で省エネルギー効果を得ることができるDHCプラント省エネルギー化システムを提供する。
【解決手段】DHCプラント1では、集合冷却塔7で冷却された冷却水が、切替弁13によって、選択的に、複数の熱源機5或は特定熱交換器15のいずれか一方へ導かれる。中間期・冬期では、集合冷却塔7のファンを制御することによって10℃未満の冷却水を得ることができるので、地域配管20から戻ってくる温度上昇した冷水と、集合冷却塔7で冷却された冷却水との間で熱交換させるだけで、冷水を15℃〜20℃まで下げることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定地域へ配管を介して冷水等を送るDHCプラント省エネルギー化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建物に対して冷水および温水などを供給するDHCプラントは、個々の建物が個別に熱源機を備えるシステムに比べて省エネルギーである。例えば、特許文献1(特開2006−10170号公報)に開示されている地域冷暖房システムは、各建物へ冷水を供給して熱源機の排熱を吸収させ、温度上昇した冷水を回収して都市下水との間で熱交換させている。このようなDHCプラントは、冷凍機や冷却塔などの設備も備えているが、中間期・冬期の外気温が低いときには、都市下水だけで温度上昇した冷水を冷却することができるので、省エネルギーである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、立地条件が伴わない場合、例えば、都市下水設備が整っていないような地域では、河川水を利用するなど都市下水に代わる熱源を確保しなければならないので、全地域に適用可能なプラントとは言い難い。
【0004】
それゆえ、本発明の課題は、都市下水や河川水などを熱源に利用できない地域でも、冷凍機など熱源機や冷却塔で省エネルギー効果を得ることができるDHCプラント省エネルギー化システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1発明に係るDHCプラント省エネルギー化システムは、所定地域に存在する建物に対して地域配管を介して冷水を供給するDHCプラント省エネルギー化システムであって、複数の熱源機と、冷却設備と、共通冷却水配管と、第1冷水ポンプと、流路切替機構と、熱交換器と、第2冷水ポンプとを備えている。冷却設備は、複数の熱源機からの排熱によって温度上昇した冷却水を冷却するために、複数の熱源機それぞれに共通に設けられている。共通冷却水配管は、複数の熱源機と冷却設備とを結んでいる。第1冷水ポンプは、地域配管から戻ってくる温度上昇した冷水を熱源機へ引き入れ、熱源機で冷却された冷水を再び地域配管に送る。流路切替機構は、共通冷却水配管に設けられ、冷却水の流路を切り替える。熱交換器は、流路切替機構と地域配管との間に熱源機とは別に設置されている。第2冷水ポンプは、地域配管から戻ってくる温度上昇した冷水を熱交換器へ引き入れ、熱交換器で冷却された冷水を再び地域配管へ送る。冷却設備は複数の冷却塔を集合させた集合冷却塔であって、その集合冷却塔で冷却された冷却水が、流路切替機構によって、選択的に、複数の熱源機或は熱交換器のいずれか一方へ導かれる。
【0006】
除湿を必要としない顕熱冷却の場合、DHCプラント省エネルギー化システムが供給する冷水の温度はそれほど低い温度を必要としない。それゆえ、このDHCプラント省エネルギー化システムでは、中間期、冬期、および外気温が比較的低い夏季の夜間において、熱源機で冷水を冷却する必要がなく、地域配管から戻ってくる温度上昇した冷水と、集合冷却塔で冷却された冷却水との間で熱交換させ、冷却されたその冷水を再び地域配管に送るだけでよい。したがって、省エネルギーである。
【0007】
また、1つの熱源機に対し1つの冷却塔が対応する一般的なシステムでは、冷却水を熱源機の排熱除去にしか利用できなかったが、このDHCプラント省エネルギー化システムでは、複数の冷却塔を集合させ全ての熱源機に共通な集合冷却塔にしたことにより、例えば、各冷却塔のファンを制御することによって冷却水の温度制御が可能となり、その温度制御された冷却水によって、直接に負荷側を冷却することができる。
【0008】
第2発明に係るDHCプラント省エネルギー化システムは、第1発明に係るDHCプラント省エネルギー化システムであって、熱交換器で冷却された冷水の温度が、15℃〜20℃である。このDHCプラント省エネルギー化システムでは、冷水の温度と地域配管の周囲温度との差が小さくなるので、冷水が地域配管を移動するとき、配管からの熱損失が抑制される。また、送水温度が高く設定されたことにより熱源機の効率が向上するので、省エネルギーである。
【発明の効果】
【0009】
第1発明に係るDHCプラント省エネルギー化システムでは、中間期・冬期、および外気温が比較的低い夏季の夜間において、地域配管から戻ってくる温度上昇した冷水と、集合冷却塔で冷却された冷却水との間で熱交換させ、冷却されたその冷水を再び地域配管に送るだけでよい。したがって、省エネルギーである。また、温度制御された冷却水によって、直接に負荷側を冷却することができる。
【0010】
第2発明に係るDHCプラント省エネルギー化システムでは、冷水の温度と地域配管の周囲温度との差が小さくなるので、冷水が地域配管を移動するとき、配管からの熱損失が抑制される。また、送水温度が高く設定されたことにより熱源機の効率が向上するので、省エネルギーである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係るDHCプラント省エネルギー化システムの構成図。
【図2】図1に示すDHCプラント省エネルギー化システムの制御ブロック図。
【図3】第1動作制御および第2動作制御のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の具体例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0013】
<DHCプラント省エネルギー化システムの構成>
図1は、本発明の一実施形態に係るDHCプラント省エネルギー化システムの構成図である。図1において、DHCプラント1は、1つ又は多数の建物に備えられた空調機100に冷水を供給する。空調機100は、地域配管20によってDHCプラント1と結ばれており、DHCプラント1で生成された冷水は、地域配管20を通って建物に到達し、空調機100の排熱を吸収して、再び地域配管20を通ってDHCプラント1へ戻ってくる。
【0014】
地域配管20から戻ってきた温度上昇した冷水は、第1冷水ポンプ11によって熱源機5へ引き入れられて冷却される。DHCプラント1には複数の熱源機5が据え付けられており、熱源機5ごとに第1冷水ポンプ11が設置されている。冷却された冷水は、第1冷水ポンプ11によって再び地域配管20へ送られる。なお、地域配管20と第1冷水ポンプ11とは、送水用ヘッダー19aを介して接続されている。また、地域配管20から戻ってきた水は、返水用ヘッダー19bを介して熱源機5などに流れる。
【0015】
熱源機5は冷却水配管9によって集合冷却塔7と結ばれており、冷却水は冷却水ポンプ6によって熱源機5と集合冷却塔7との間を循環する。冷却水ポンプ6も、熱源機5ごとに設置されている。したがって、熱源機5からの排熱によって温度上昇した冷却水は、集合冷却塔7に送られて必要な温度まで冷却され、再び熱源機5に戻ってくる。
【0016】
また、このDHCプラント1には、集合冷却塔7から熱源機5へ向かう冷却水配管9の途中に切替弁13が配置されている。切替弁13とヘッダー19a,19bとはバイパス配管17によって結ばれている。切替弁13は、三方弁であり、3つの流通口(ポートA、ポートB、ポートC)を有する。ポートAは、集合冷却塔7から流れてくる冷却水が流入する。ポートBは、ポートAから入った冷却水を熱源機5側へ流出させる。ポートCは、ポートAから入った冷却水をバイパス配管17側へ流出させる。説明の便宜上、ポートAとポートBとが連通した状態を第1状態、ポートAとポートCとが連通した状態を第2状態とよぶ。
【0017】
バイパス配管17の途中には、熱源機5に据え付けられている熱交換器とは別個の熱交換器が配置されており、説明の便宜上、特定熱交換器15とよぶ。
【0018】
さらに、このバイパス配管17の特定熱交換器15から送水用ヘッダー19aへ向かう区間に、第2冷水ポンプ12が配置されている。DHCプラント1には複数の特定熱交換器15が備え付けられており、特定熱交換器15ごとに第2冷水ポンプ12が設置されている。第2冷水ポンプ12は、地域配管20から戻ってくる温度上昇した冷水を特定熱交換器15へ引き入れ、特定熱交換器15で冷却された冷水を再び地域配管20へ送る。このように、第2冷水ポンプ12の働きは、第1冷水ポンプ11と似ているが、第1冷水ポンプ11と同時に動作することはない。
【0019】
特定熱交換器15で冷水と熱交換した冷却水は、第2冷却水ポンプ16によって特定熱交換器15と集合冷却塔7との間を循環する。第2冷却水ポンプ16も、特定熱交換器15ごとに設置されている。したがって、特定熱交換器15で温度上昇した冷却水は、集合冷却塔7に送られて必要な温度まで冷却され、再び熱交換器15に戻ってくる。
【0020】
<DHCプラント省エネルギー化システムの動作>
図2は、図1に示すDHCプラント省エネルギー化システムの制御ブロック図である。図2において、マイコン4には、熱源機制御、ポンプ制御、切替弁制御および冷却塔制御などの機器単体の制御プログラムが設定されている。
【0021】
さらに、マイコン4は、集合冷却塔7で冷却された冷却水の温度(冷却水温度Tc)を冷却水温度センサ14を介して検知し、冷却水温度Tcが所定温度Ts以上のときは第1動作制御を行い、冷却水温度Tcが所定温度Ts未満のときは第2動作制御を行う。以下、フローチャートを参照しながら第1動作制御および第2動作制御について説明する。
【0022】
図3は、第1動作制御および第2動作制御のフローチャートである。図3において、マイコン4は、ステップS1で冷却水温度センサ14を介して冷却水温度Tcを検知し、ステップS2へ進む。マイコン4は、ステップS2で冷却水温度Tcが所定温度Ts以上であるか否かを判定する。
【0023】
マイコン4は、ステップS2で冷却水温度Tcが所定温度Ts以上と判定したとき、ステップS3へ進み、切替弁13を動作させてポートAとポートBとが連通する第1状態へ切り替え、冷却水を熱源機5へ向かわせる。
【0024】
マイコン4は、ステップS4で熱源機5を運転させ、ステップS5で第1冷水ポンプ11を運転させる。熱源機5は地域配管20から戻ってきた温度上昇した冷水を冷却するときに排熱するが、冷却水がその排熱を吸収する。熱源機5で冷却された冷水は、第1冷水ポンプ11によって再び地域配管20へ送られる。これらステップS3からステップS5までの動作を第1動作とよぶ。
【0025】
一方、マイコン4がステップS2で冷却水温度Tcが所定温度Ts未満と判定したとき、ステップS11へ進み、切替弁13を動作させてポートAとポートCとが連通する第2状態へ切り替え、冷却水を特定熱交換器15へ向かわせる。
【0026】
マイコン4は、ステップS12で熱源機5の運転を停止させ、ステップS13で第2冷水ポンプ12を運転させる。特定熱交換器15では、地域配管20から戻ってくる温度上昇した冷水と、所定温度以下の冷却水との間で熱交換が行われ、冷水が冷却される。特定熱交換器15で冷却された冷水は、第2冷水ポンプ12によって再び地域配管20へ送られる。これらステップS11からステップS13までの動作を第2動作とよぶ。
【0027】
<空調機>
DHCプラント省エネルギー化システムによって供給された冷水を利用する空調機100としては、除湿を必要としない顕熱冷却によって冷房を行う、いわゆるドレンレス空調機が適している。ドレンレス空調機では、冷房除湿運転時、熱交換器により冷却される空気は絶対湿度が低い状態(すなわち、乾燥した状態)にあるので、潜熱処理がほとんど行われずに顕熱処理のみが行われることになる。それゆえ、熱交換器内部を流通する冷水の温度を約15℃(従来は約7℃などが多い)という比較的高めの温度設定としても、十分に室内を冷房するに足りる。また、同様の理由から熱交換器においてほとんど凝縮水が発生しない。
【0028】
空調機100の熱交換器で温度上昇した冷水は、地域配管20を経由してDHCプラント1に戻る。温度上昇した冷水は、熱源機5或は特定熱交換器15のいずれか一方で冷却され、再び地域配管20を介して空調機100へ送られる。
【0029】
なお、出願人は、ドレンレス空調の原理について、特願2009−020029号公報および特願2009−020030号公報で開示しているので、ここでは説明を省略する。
【0030】
<特徴>
DHCプラント省エネルギー化システムでは、集合冷却塔7で冷却された冷却水が、切替弁13によって、選択的に、複数の熱源機5或は特定熱交換器15のいずれか一方へ導かれる。中間期、冬期、および外気温が比較的低い夏季の夜間では、集合冷却塔7のファンを制御することによって15℃〜20℃未満の冷却水を得ることができるので、地域配管20から戻ってくる温度上昇した冷水と、集合冷却塔7で冷却された冷却水との間で熱交換させるだけで、冷水を15℃〜20℃まで下げることができる。したがって、熱源機5で冷水を冷却する必要がなくなり、省エネルギーである。また、冷水の温度と地域配管20の周囲温度との差が小さくなるので、冷水が地域配管20を移動するとき、配管からの熱損失が抑制される。また、送水温度が高く設定されたことにより熱源機の効率が向上するので、省エネルギーである。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上のように、本発明によれば、除湿を必要としない顕熱冷却によって冷房を行う、いわゆるドレンレス空調機へ冷水を供給するDHCプラントに有用である。
【符号の説明】
【0032】
1 DHCプラント
5 熱源機
7 集合冷却塔(冷却設備)
9 共通冷却水配管
11 第1冷水ポンプ
12 第2冷水ポンプ
13 切替弁(切替機構)
15 特定熱交換器
20 地域配管
【先行技術文献】
【特許文献】
【0033】
【特許文献1】特開2006−10170号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定地域に存在する建物に対して地域配管(20)を介して冷水を供給するDHCプラント省エネルギー化システムであって、
複数の熱源機(5)と、
複数の前記熱源機(5)からの排熱によって温度上昇した冷却水を冷却するために、複数の前記熱源機(5)それぞれに共通に設けられた冷却設備(7)と、
複数の前記熱源機(5)と前記冷却設備(7)とを結ぶ共通冷却水配管(9)と、
前記地域配管(20)から戻ってくる温度上昇した前記冷水を前記熱源機(5)へ引き入れ、前記熱源機(5)で冷却された前記冷水を再び前記地域配管(20)に送る第1冷水ポンプ(11)と、
前記共通冷却水配管(9)に設けられ、前記冷却水の流路を切り替える流路切替機構(13)と、
前記流路切替機構(13)と前記地域配管(20)との間に前記熱源機(5)とは別に設置される熱交換器(15)と、
前記地域配管(20)から戻ってくる温度上昇した前記冷水を前記熱交換器(15)へ引き入れ、前記熱交換器(15)で冷却された前記冷水を再び前記地域配管(20)へ送る第2冷水ポンプ(12)と、
を備え、
前記冷却設備(7)は複数の冷却塔を集合させた集合冷却塔であって、前記集合冷却塔で冷却された前記冷却水が、前記流路切替機構(13)によって、選択的に、複数の前記熱源機(5)或は前記熱交換器(15)のいずれか一方へ導かれる、
DHCプラント省エネルギー化システム。
【請求項2】
前記熱交換器(15)で冷却された前記冷水の温度は、15℃〜20℃である、
請求項1に記載のDHCプラント省エネルギー化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−38656(P2011−38656A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−184076(P2009−184076)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(301042686)株式会社三菱地所設計 (24)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)