説明

FBG振動検出システム、該システムを用いた装置及び振動検出方法

【課題】ファイバ・ブラッグ・グレーティング(FBG)を用いた超音波・AE等の振動検出装置は、材料衝撃時の弾性波検出や超音波探傷に用いられるが、温度変化や歪み変化を受ける環境では、超音波検出が不可能であったり、性能が劣るという問題があったので、高感度でかつ小型で軽量の振動検出装置を提供する。
【解決手段】ファイバ・レーザを用いて、FBG反射光をレーザ化し、前記レーザ化されたFBGからの反射光強度を電気信号に変換することで超音波等の振動を検出する。振動検出システムは、光アンプ42と、光サーキュレータ43と、光カップラ45とを備え、FBG44と光サーキュレータの入射/出射ポートとは光ファイバで接続され、光サーキュレータの入射ポートと出射ポート間は途中、光カップラおよび光アンプが挿入され、光ファイバで接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファイバ・レーザを利用して、ファイバ・ブラッグ・グレーティングにより、低周波振動から超音波域の振動を検出するシステムおよび該システムを用いた装置並びに振動検出方法に関する。例えば、超音波探傷装置、アコースティック・エミッション(AE)センサ、材料(構造体を含む)健全性評価装置等に有用なシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波には、材料中を伝搬するとき、超音波が欠陥箇所で大きな分散及び減衰を受けることから、その伝搬状況が欠陥がない場合とある場合とで異なるという性質がある。この性質を利用した材料の欠陥検出法が超音波探傷であり、従来は超音波センサとして圧電素子が多用されてきた。また材料に微視破壊が発生するとアコースティック・エミッション(AE)が放出されることから、AEを検出することで材料の微視破壊状況を監視することができる。AEは超音波域の弾性波であることから、超音波センサと同様にAEセンサに圧電素子が多用されている。
【0003】
しかしながら、電気センサである圧電素子は電磁波障害を受けることや引火性雰囲気では使用できないなどの問題がある。近年、これらの問題を解決できる超音波・AEセンサとして光ファイバセンサの一種であるファイバ・ブラッグ・グレーティング(Fiber Bragg Grating、以下「FBG」とも呼ぶ。)が期待されている。
【0004】
FBGをセンサとする超音波又はAE検出システムは、光源としてレーザまたは広帯域光を用いる二種類に大別される。レーザを用いる場合は、FBG反射スペクトルの反射率変化が大きな波長で発振するレーザを、光サーキュレータを介してFBGに入射することで、FBGが受ける超音波やAE振動に同期したFBG反射光強度を得ることができる。広帯域光源を用いる場合は、FBG反射波長域を包含する広帯域光を、光サーキュレータを介してFBGに入射し、FBG反射波長域において透過または反射特性が急峻に変化する光フィルタに、FBG反射光を入射することで、超音波・AE振動に同期した光フィルタ透過または反射光強度を得ることができる。また光フィルタを、広帯域光源と光サーキュレータの間に設置しても同様の機能が得られる。発明者による非特許文献1には、それぞれの光源を用いたFBGによる超音波検出及び超音波探傷を行った実験が示されている。また、従来技術として、発明者らによる特許文献1乃至5がある。
【0005】
ファイバ・ブラッグ・グレーティング(FBG)は、光ファイバの導光路であるコアの屈折率がファイバ軸方向に周期的に変化した構造を持ち、式(1)で表されるブラッグ波長λを中心とする狭帯域光を反射する。
【0006】
【数1】

【0007】
nは屈折率、Λは屈折率変化の周期間隔(グレーティング間隔)を表す。FBGが温度またはひずみ変化を受けると、屈折率nおよびグレーティング間隔Λが変化し、それに伴いブラッグ波長λが変化する(式(1)参照)。ひずみおよび温度変化がもたらすブラッグ波長変化量は、通信分野で汎用されている1.55μm帯にブラッグ波長を持つFBGにおいて、それぞれ1.2pm/マイクロひずみ、および14pm/℃である。超音波やAEといった弾性波は、高々数マイクロひずみ程度の微弱な振動をもたらすことから、FBGが超音波やAEを受信した場合、そのブラッグ波長は高々数pm程度しか変化しない。一般に構造物の健全性評価に利用されているFBGはグレーティング長1〜20mmのものが多く、反射スペクトル全幅は高々1〜2nm程度である。このためFBGが大きな温度またはひずみ変化を受けた場合は、ブラッグ波長が大きく変化して、レーザ光源を用いたシステムでは、レーザ波長がFBGの反射波長域から外れてしまうことがある。また広帯域光源を用いたシステムでも、FBGの反射スペクトルと光フィルタの透過または反射特性が急峻に変化する波長域が交差しない状況になる。このような場合、FBGが受ける超音波やAEを検出することができなくなる。
【0008】
そこで波長可変レーザまたはチューナブルフィルタを用いて、FBGのブラッグ波長変化に応じて、レーザ波長、または光フィルタの光学特性が変化する波長を、制御することが考えられる。しかし、高速にFBGのブラッグ波長が変動する場合は、これらの制御がブラッグ波長変化に追随できず、超音波やAEを検出することができない。特にAEは材料破壊時に発生する瞬時のひずみ変化に伴う現象であることから、AE発生時には高速なブラッグ波長変動が生じる。このため波長可変レーザやチューナブルフィルタを用いた計測システムではAEを検出することは困難であると考えられる。
【0009】
この問題を解決するため、FBGを被検体に取り付けずに被検体を伝搬する超音波やAEを検出する技術が、発明者による特許文献3の「材料健全性評価装置」に開示されている。従来のFBGによる超音波やAE検出においてはFBGを被検体に取り付けていたが、この技術ではFBGを書き込んだ光ファイバのFBG以外の箇所を被検体に接触させる。被検体を伝搬する超音波やAEは、光ファイバの接触箇所を介して、光ファイバに流入し、そして光ファイバ中を伝搬して、FBGを超音波・AE振動させる。FBGが被検体に取り付けられていないことから、FBGのブラッグ波長は、被検体が受けるひずみに無関係になる。しかし、温度変化に伴うFBGのブラッグ波長変化をなくすことはできず、温度変化が生じる環境での超音波やAE検出に問題が残る。
【0010】
また、発明者による特許文献4の「AE・超音波検出システム、及びそれを備えた材料監視装置並びに非破壊検査装置」では、二つのファブリ・ペローフィルタを用いたFBGのブラッグ波長に依存しない超音波・AE検出技術を開示している。この従来技術は、FBGに広帯域光を入射し、FBG反射光を二つのファブリ・ペローフィルタに入射することを特徴としている。二つのファブリ・ペローフィルタは、FBGの反射スペクトル全幅とほぼ等しいFSR(Free Spectral Range:周期的な透過特性を有するファブリ・ペローフィルタの透過率ピーク波長の間隔)を有し、透過率ピーク波長がFSR/4だけ異なるものである。この技術では、FBGのブラッグ波長に関係なく、少なくとも片方のファブリ・ペローフィルタ透過光強度はFBGが受ける超音波又はAE振動に同期して変動することになり、ブラッグ波長変化に依存しない超音波又はAE検出が可能である。
【0011】
特許文献4に記載された超音波・AE検出システムでは、第一にFBGの反射スペクトル全幅にほぼ等しいFSRを有する二つのファブリ・ペローフィルタを揃える、第二に二つのファブリ・ペローフィルタの透過率ピーク波長をFSR/4ずらす必要がある。しかし第一の必要条件であるFBGの反射スペクトル全幅及びファブリ・ペローフィルタのFSRを精密に制御することは、これらの製造において困難なことであり、システム構成要素が高価になる要因となる。また第二の必要条件である二つのファブリ・ペローフィルタの透過率ピーク波長をFSR/4ずらすためには、透過率ピーク波長制御用の温度調節器をファブリ・ペローフィルタに取り付ける、または多数のファブリ・ペローフィルタを準備してその中から透過率ピーク波長がFSR/4ずれた二つのファブリ・ペローフィルタを選択する必要がある。このように、特許文献4の技術では、システム構成要素が高価であること、およびシステム構成要素数が多くなる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005−326326号公報
【特許文献2】特開2005−009937号公報
【特許文献3】特開2007−240447号公報
【特許文献4】特開2008−046036号公報
【特許文献5】特開2006−132952号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Hiroshi Tsuda,“Ultrasound and Damage Detection in CFRP using Fiber Bragg Grating Sensors”, Composites Science and Technology,Vol.66,p.676−683(2006)
【非特許文献2】Hiroshi Tsuda and Jung−Ryul Lee,“Strain and Damage Monitoring of CFRP in Impact Loading Using a Fiber Bragg Grating Sensor System”, Composites Science and Technology, Vol.67,p.1353−1361(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来の広帯域光を光源とした超音波・AE検出システムをさらに改良した技術を、発明者は、既に出願している(特許出願2010−011526号「振動検出システム、該システムを用いた装置及び振動検出方法」、以下「関連特許出願」という。)。該関連特許出願には、従来の広帯域光を光源とした超音波・AE検出システムの光フィルタを不要にした、ひずみ、および温度変動条件下での超音波・AE検出技術を示した。この技術では広帯域光を入射したときのFBG反射光強度を電気信号に変換し、その電気信号の平均化処理や適切な周波数フィルタ処理によりFBGが受ける超音波・AEを検出するものである。またFBGの被検体への取り付け方を工夫してFBGセンサに共振特性を持たせることで超音波・AE検出感度を向上させることができる。この技術に基づく超音波・AE検出システムは構成要素数が少なく、かつ高価な要素がないことから小型・軽量、かつ安価に組み立てることができる。
【0015】
前記関連特許出願における第6の実施の形態ではAE検出を想定して、応答信号の平均化処理を施さずに材料中を伝搬する超音波を検出した実験結果を示した。そこではFBGセンサに共振特性を持たせ、センサの共振周波数近傍を通過させるバンドパスフィルタ処理をセンサ信号に施すことで平均化処理なしで超音波を検出することができたと記した。しかし、超音波・AEを漏れなく検出するためにはセンサ信号に対して、そのセンサが持つ複数の共振周波数毎のバンドパスフィルタ処理を行う必要があり、信号処理が複雑になる問題がある。また検出される応答信号のS/N比が低く、超音波・AE応答波形を収録する際、信号収録のトリガー設定が簡単でないと考えられる。またFBGを被検体と接着させた非共振構造を持つFBGセンサでは平均化処理なしでは超音波・AE検出ができないことから、超音波・AEに対する検出感度をさらに向上させる必要がある。
【0016】
本発明はこれらの問題を解決するものであり、ひずみおよび温度変動条件下で、超音波又はAEを検出する高信頼性の検出システムを実現することを目的とする。また、本発明は、超音波やAEの検出能を改善することを目的とする。また、本発明は、構成要素数が少なく、かつ高価な要素がなく、小型で軽量、かつ安価に組み立てることができるシステムを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上記課題を解決するために、センサであるFBGを反射ミラーとするファイバ・レーザを構成し、FBG反射光を高強度、かつ狭帯域化する。つまりFBGのブラッグ波長を発振波長とするレーザを得る。尚、本明細書では以下、ファイバ・レーザを用いてFBG反射光を高強度、かつ狭帯域化することを、FBG反射光をレーザ化すると記す。該レーザ化されたFBGからの反射光を光電変換器に入射して反射光強度を電気信号に変換することで、FBGが受信する超音波・AEに対応する応答信号を得るものである。
【0018】
本発明は、FBGセンサが書き込まれた光ファイバのFBGの一部、またはFBG以外の箇所を被検体に取り付けることにより、FBGセンサに共振構造を持たせるものである。該共振構造を有するFBGセンサを用いることで、センサ応答周波数特性の制御、ならびに超音波・AE検出能をさらに向上させることができる。
【0019】
本発明の意義について説明する。
本発明者による前記関連特許出願に記した実験で用いた広帯域光源の光出力の波長依存性を、図25に示す。このときはブラッグ波長1,550nmのFBGを用いて実験を行った。波長1,550nm近傍では光出力が波長増加に従い、若干低下している。したがって前記関連特許出願に記した技術では広帯域光源のわずかな光出力の波長依存性を利用して、超音波がもたらすブラッグ波長変化に伴うFBG反射光強度のわずかな変化を電気信号に変換して周波数フィルタ処理や平均化処理により検出している。このように光源の有するわずかな光出力の波長依存性を利用して超音波検出ができるという事実から、超音波検出感度向上にはFBG反射光の高強度化が有効な手段と考えられる。たとえば図26のように超音波振動によりブラッグ波長が波長Aから波長Bの間を振動し、光出力が1から0.5の間で変化する場合を考える。今、波長AにおいてFBG反射光強度10を得ることができる光源を利用した場合、超音波振動により10から5の反射光強度変化が生じることから超音波振動により生じる光強度変化は5となる。次に、波長AにおいてFBG反射光強度100を得ることができる光源を利用した場合、超音波振動により100から50の反射光強度変化が生じることから超音波振動により生じる光強度変化は50となる。したがって高強度のFBG反射光を得ることができる光源を用いることで超音波振動により生じる光強度の変化は大きくなることから超音波検出の高感度化が期待できる。そこでFBGのブラッグ波長においてレーザ光を得ることができるファイバ・レーザを光源とするという発想に至った。
【0020】
本発明は、前記目的を達成するために、以下の特徴を有するものである。
【0021】
本発明の装置は、振動検出システムであり、ファイバ・レーザと、ファイバ・レーザの反射ミラーとなるファイバ・ブラッグ・グレーティング(以下、FBGという。)と、ファイバ・レーザによりレーザ化されたFBGからの反射光強度を電気信号に変換する光電変換部とを備えることを特徴とする。本発明の検出対象となる振動は、サブHzの振動を含む20kHz以下の振動、超音波、またはアコースティック・エミッションである。本発明の振動検出システムは、光アンプと、光サーキュレータと、光カップラとを備える。ファイバ・レーザは、センサとなるFBGを反射ミラーとして、前記FBGの反射波長を包含する波長域において光増幅機能を有する光アンプにより、前記FBGのブラッグ波長を発振波長とするレーザであることを特徴とする。具体的には、FBGと光サーキュレータの入射/出射ポートとは光ファイバで接続され、前記光サーキュレータの入射ポートと出射ポート間は途中、光カップラおよび光アンプが挿入され、光ファイバで接続される。FBGからの反射光は光サーキュレータを介して、光カップラと光アンプが挿入された環状の光ファイバを巡り、前記光アンプにおいて増幅され、前記光サーキュレータを介して前記FBGに入射され、再び前記FBGにおいて反射され、前記光アンプが挿入されている光ファイバ環状部でFBG反射光が増幅される過程を繰り返し、前記FBGのブラッグ波長を発振波長とするレーザが作られる。
【0022】
本発明の振動検出システムは、FBGセンサに共振特性を持たせることを特徴とする。FBGを書き込んだ光ファイバのFBGの一部、またはFBG以外の箇所を、被検体に接触させて、FBGセンサに共振特性を持たせることによりセンサの応答周波数特性を制御することができる。振動は、被検体との接触箇所を介して光ファイバに流入させることを特徴とする。前記光ファイバ共振部長さを調整して、前記共振周波数を制御することができ、超音波・AE検出感度の周波数特性を制御することができる。
【0023】
本発明の振動検出システムは、光フィルタを備えるようにしてもよい。本発明の振動検出システムにおいて、ファイバ・レーザは、同一のブラッグ波長を有するFBGの間に増幅媒体を備える構造にすることができる。
本発明の振動検出システムは、光電変換部で変換された電気信号に対して周波数フィルタ処理を行う信号処理部を備えることを特徴とする。例えば、前記周波数フィルタ処理は、共振特性に基づく共振周波数帯域近傍のバンドパスフィルタ処理である。
【0024】
本発明の振動検出システムは、可動式の構成とすることができる。非共振型の構造をとる場合は、FBGを、被検体よりも超音波伝搬速度の遅い媒体または1mm以下の媒体に接触させることにより、可動式FBGセンサとし、該可動式FBGセンサを被検体に接触させるとよい。共振型の構造をとる場合は、FBGを書き込んだ光ファイバのFBGの一部、またはFBG以外の箇所を、被検体よりも超音波伝搬速度の遅い媒体または1mm以下の媒体に接触させることにより、共振特性をもつ可動式FBGセンサとし、該可動式FBGセンサを被検体に接触させるとよい。
【0025】
本発明の振動検出システムは、FBGセンサを複数備えることにより多点計測を行うことができる。本発明の振動検出システムを用いて、超音波伝搬状況を測定することにより、被検体の健全性を評価する材料健全性評価装置、超音波探傷装置、または材料破壊時に生じるアコースティック・エミッションを検出する装置を提供する。また、本発明の振動検出システムは、サブHzの低周波振動や衝撃負荷を検出する装置を供する。また、本発明の振動検出システムを用いて、低周波振動や衝撃負荷を検出することにより、機械の異常診断、防犯・防災ための装置を提供する。また多点計測を行うことにより衝撃位置を標定することができる。
【0026】
本発明の方法は、振動検出方法であり、ファイバ・レーザの反射ミラーとなるFBGを備え、前記ファイバ・レーザによりレーザ化された前記FBGからの反射光強度を電気信号に変換することにより振動を検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、歪み及び温度が変動する状況においても、FBGを用いて超音波やAEを検出することができる。また、本発明によればシステム構成要素数が少なく、システムの小型化・軽量化・低価格化の実現、ならびに信頼性を向上させることができる。また、本発明によれば、ファイバ・レーザによりレーザ化されたFBG反射光の光強度変化から高感度に超音波・AE応答を検出することができる。また、FBGセンサに共振構造を持たせることにより、超音波やAEの検出能を改善、および応答波形の周波数特性を制御することができる。
【0028】
本発明によれば、サブHzオーダの低周波振動から20kHzを超える超音波域に亘る範囲の振動を検出することができる。応答信号の平均化処理なしで超音波を検出することができるので、材料破壊が発生するときに放出されるアコースティック・エミッション(AE)を的確に検出できる。また、周期性のある超音波振動を用いて応答信号を得る場合は、共振構造を有するFBGセンサは受信する超音波の周波数に近接する共振周波数において高い成分強度を有する応答を示すので、適切な周波数フィルタ処理をすることにより、超音波やAEの検出能をより改善することができる。
【0029】
また、本発明は、FBGセンサを可動式にすることにより、被検体の検査に便利な装置とすることができる。
【0030】
また、本発明は、波長分離技術を利用して一本の光ファイバラインに複数のFBGセンサを配置することができ、非常にシンプルな振動検出センサ網を構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1の実施の形態に対応する超音波計測実験に用いたシステムを表す図。
【図2】本発明の第2の実施の形態に対応する超音波計測実験に用いたシステムを表す図。
【図3】関連特許出願で開示した振動検出システムを表す図。
【図4】光源に(a)広帯域光を用いた場合(図3に示したシステム)、(b)ファイバ・レーザを用いた場合(図1および2のシステム)に光電変換器に入射されるFBG反射スペクトルを示す図。
【図5】図1のシステムを用いて、周波数を変化させた3周期正弦波励起超音波に対する非共振構造を有するFBGセンサ応答波形で、正弦波の周波数を(a)は100kHz、(b)は200kHz、(c)は300kHz、(d)は400kHzにしたときの応答波形を示す図。
【図6】(a)(b)(c)(d)は、それぞれ図5(a)(b)(c)(d)に示した応答波形の周波数特性を示す図。
【図7】図2のシステムを用いて、周波数を変化させた3周期正弦波励起超音波に対する光ファイバ共振部長さ50mmの共振構造を有するFBGセンサ応答波形で、正弦波の周波数を(a)は100kHz、(b)は200kHz、(c)は300kHz、(d)は400kHzにしたときの応答波形を示す図。
【図8】(a)(b)(c)(d)は、それぞれ図7(a)(b)(c)(d)に示した応答波形の周波数特性を示す図。
【図9】第3の実施の形態のシステムを表す図 。
【図10】第3の実施の形態のシステムにおけるバックグラウンドノイズの周波数特性を示す図。
【図11】材料中を伝搬する超音波に対する共振構造を有するFBGセンサ応答波形で、(a)は図3に示した関連特許出願で提案したシステムを用いて500kHzのローパスフィルタ処理した応答波形、(b)は図3に示した関連特許出願で提案したシステムを用いて170kHzのバンドパスフィルタ処理した応答波形、(c)は図9に示したシステムを用いて30kHz−500kHzのバンドパスフィルタ処理した応答波形を示す図。
【図12】第4の実施の形態における、ペンシル芯圧折により発生させた疑似AEに対する共振構造を持つFBGセンサの応答信号と信号計測の際に用いたトリガーレベルを図中の横点線で示した図。
【図13】第5の実施の形態における、材料中を伝搬する超音波に対する非共振構造を有するFBGセンサ応答波形で、図9に示したシステムを用いて平均化処理なしで、30kHz−500kHzのバンドパスフィルタ処理した応答波形を示す図。
【図14】第6の実施の形態における、ペンシル芯圧折により発生させた疑似AEに対する非共振構造を持つFBGセンサの応答信号と信号計測の際に用いたトリガーレベルを図中の横点線で示した図。
【図15】第7の実施の形態の超音波探傷を表す図。
【図16】第9の実施の形態のセンサ部を可動式にした装置を表す図。
【図17】第10の実施の形態の光スイッチを利用する多点計測装置を表す図。
【図18】第10の実施の形態のチューナブルフィルタを利用する多点計測装置を表す図。
【図19】第10の実施の形態の波長分離技術を利用する同時多点計測装置を表す図。
【図20】第11の実施の形態の平板上に落球衝撃を与えたときの、(a)は非共振構造を有するFBGセンサの応答信号、(b)は共振構造を有するFBGセンサの応答信号を示す図。
【図21】片持ち梁に自由振動を与えたときの、(a)ひずみゲージにより測定されたひずみ曲線、(b)FBGセンサ出力を示した図。
【図22】第13の実施の形態の光フィルタを信号復調に用いるシステムにファイバ・レーザを光源として組み合わせた装置を表す図。
【図23】第14の実施の形態のグレーティングタイプのファイバ・レーザを用いたシステム構成の例を表す図。
【図24】第15の実施の形態の超音波とひずみ・温度を同時計測するシステム構成を表す図。
【図25】関連特許出願に記載した実験で使用した広帯域光源の光出力波長依存性を表す図。
【図26】光出力の波長依存性を表した図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、サブHz(1Hz未満)オーダの低周波振動から20kHzを超える超音波域の振動を検出するシステムに関し、該振動として、20kHzまでの振動およびこれより高い周波数の超音波を、検出するためのシステムである。また、超音波検出と同様にAE検出、およびこれらの検出を利用する超音波探傷装置、アコースティック・エミッション(AE)センサ、材料(構造体)健全性評価装置に適用できる。以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0033】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態は、FBGセンサを用いた超音波応答検出の基本的な形態である。本実施の形態の超音波検出システムは、ファイバ・レーザにより、FBGからの反射光をレーザ化して、FBGが受ける超音波を検出することを最大の特徴とするものである。本実施の形態の超音波検出システムは、光アンプと、光サーキュレータと、FBGと、光カップラと、光電変換器と波形収録器とを備える。本実施の形態の超音波検出システムにおいて、FBGと光サーキュレータの入射/出射ポートとは光ファイバで接続され、光サーキュレータの入射ポートと出射ポート間は途中、光カップラ、および光アンプが挿入され、光ファイバで接続される。FBGからの反射光は光サーキュレータを介して、光カップラと光アンプが挿入された環状の光ファイバを巡り、光アンプにおいて増幅され、光サーキュレータを介してFBGに入射される。そして再びFBGにおいて反射され、光アンプが挿入されている光ファイバ環状部でFBG反射光が増幅される過程を繰り返し、FBGのブラッグ波長を発振波長とするレーザが作られる。つまりFBGを反射ミラーとしたファイバ・レーザが形成されている。このレーザ化されたFBG反射光の一部を光カップラから取り出し、光電変換器に入射し、電気信号に変換される。この電気信号は、必要に応じてフィルタ処理および増幅された後、波形収録器に収録される。本実施の形態では、光電変換器からの電気信号を、平均化処理することにより、FBGが受ける超音波を検出し、波形収録器の表示部に表示したり、記録装置に記録したりする。該平均化処理は、以下の実験で示すように、超音波発振子への励起信号入力により励起された超音波に対する応答信号波形を複数回加算平均して得られる。例えば、スパイク励起超音波発振子の励起信号をトリガーとして、平均化処理器で加算平均するとよい。また、波形収録器に、平均化処理機能を持たせてもよい。
【0034】
図1及び図2は、本発明の振動検出システムを説明するための超音波計測実験に用いたシステムの模式図であり、第1および第2の実施の形態を理解するための図である。図1の超音波計測実験システムは、光アンプ12、光サーキュレータ13、FBG14、光カップラ15、超音波発振子11、光電変換器16、フィルタ・増幅器17、波形収録器18からなり、接着箇所19で光ファイバは超音波発振子11に接着している。図2の超音波計測実験システムは、光アンプ22、光サーキュレータ23、FBG24、光カップラ25、超音波発振子21、光電変換器26、フィルタ・増幅器27、波形収録器28からなり、接着箇所29で、FBGを有する光ファイバは超音波発振子21に接着している。
【0035】
図1を参照して以下説明する。図1の超音波計測実験用システムにおいて、FBG14と光サーキュレータ13の入射/出射ポートは光ファイバで接続され、光サーキュレータ13の入射ポートと出射ポート間は途中、光カップラ15、および光アンプ12が挿入され、光ファイバで接続される。FBG14からの反射光は光サーキュレータ13を介して、光カップラ15と光アンプ12が挿入された環状の光ファイバを巡り、光アンプ12において増幅され、光サーキュレータ13を介してFBG14に入射される。そして再びFBG14において反射され、光アンプ12が挿入されている光ファイバ環状部でFBG反射光が増幅される過程を繰り返し、FBGのブラッグ波長を発振波長とするレーザが作られる。つまりFBG14を反射ミラーとしたファイバ・レーザが形成されている。このレーザ化されたFBG反射光の一部を光カップラ15から取り出し、光電変換器16に入射し、電気信号に変換される。この電気信号は、必要に応じてフィルタ処理および増幅された後、波形収録器18に収録される。図1及び図2のシステムは、図3に示した関連特許出願で示した広帯域光源を用いた検出システムの光源をファイバ・レーザに置換したことが特徴である。なお、図3に示した前記関連特許出願の超音波計測実験システムは、広帯域光源2、光サーキュレータ3、FBG4、超音波発振子1、光電変換器5、増幅器6、フィルタ7、波形収録器8からなり、接着箇所9で、FBGを有する光ファイバは超音波発振子21に接着している。
【0036】
図4(a)および(b)に、それぞれ光源に図3に示した広帯域光、および図1または2に示したファイバ・レーザを用いたときに、光電変換器に入射されるFBG反射スペクトルを示す。ファイバ・レーザによるFBG反射光のレーザ化により、FBG反射光は高強度化され、かつブラッグ波長を中心とする更に狭帯域のスペクトルになる。図4に示すように、市販されている広帯域光源を用いた場合(図4(a))、FBG反射光パワーのS/N比は20dB程度であるのに対し、ファイバ・レーザを用いた場合(図4(b))はS/N比60dB以上の反射光を得ることができる。
【0037】
FBGを書き込んだ光ファイバに超音波を伝搬させるため、図1または図2のように超音波発振子に光ファイバの一部を接着させた。超音波発振子は励起信号入力により超音波振動し、接着箇所を介して光ファイバに超音波が流れる。図1では、FBGが超音波発振子に貼り付けられている。図2では、FBGを有する光ファイバの一部が超音波発振子に接着され、FBGを備える光ファイバ(FBGセンサとも呼ぶ)は、光ファイバ接着点と光ファイバ自由端の間を往復伝搬する超音波を検出することから、その応答は共振特性を示す。そこで本発明では、光ファイバ接着点から自由端までの光ファイバの長さを「光ファイバ共振部長さ」と定義する。図2に、光ファイバ共振部長さLを図示する。
【0038】
本実施の形態で用いたFBGのグレーティング長は10mmで、本明細書に記した他の実施の形態においても10mm長のFBGを用いた。また用いた光アンプはCバンド(1530−1565nm)用エルビウム添加光ファイバアンプで、Cバンドにおける光を増幅する機能を有する。
【0039】
超音波発振子に入力する励起信号に周期性のある正弦波を用いたとき、発振される超音波の周波数は励起信号正弦波の周波数と一致する。つまり発振される超音波の周波数を制御することができる。ここでは超音波周波数がFBGセンサの応答信号に与える影響を評価するため、100kHz〜400kHzの3周期の正弦波で励起された超音波に対する応答信号を収録した。
【0040】
FBGセンサとして、光ファイバ共振部長さが0mm、つまりFBG全長を超音波発振子に貼り付けた非共振構造のFBGセンサを用い、中心周波数250kHzの超音波発振子を100kHz〜400kHzの3周期の正弦波で励起して発生させた超音波に対する応答信号を収録した。図5(a)〜(d)に、超音波励起正弦波信号の周波数を100kHz、200kHz、300kHz、400kHzとして、図1のシステムを用いて50kHz〜1MHzのバンドパスフィルタ、および512回の平均化処理を施して収録された応答波形を示す。また各応答波形の周波数特性を図6(a)〜(d)に示す。非共振構造を持つFBGセンサの超音波応答は応答継続時間が短く、また応答信号は超音波周波数を中心とした広帯域な周波数特性を持つ。
【0041】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態は、第1の実施の形態と、共振構造を持つFBGセンサとした点で異なっており、その他の構成は同じであり、第2の実施の形態の超音波検出システムは、第1の実施の形態と同様、光アンプと、光サーキュレータと、FBGと、光カップラと、光電変換器と、波形収録器とを備える。本実施の形態の振動検出システムでは、FBGを書き込んだ光ファイバのFBGの一部、またはFBG以外の箇所を、被検体に接触させて、FBGセンサに共振特性を持たせる。超音波振動を、被検体との接触箇所を介して光ファイバに流入させる。そして、レーザ化されたFBG反射光の一部を光カップラから取り出し、光電変換器に入射し、電気信号に変換する。
【0042】
第2の実施の形態を説明するために、FBGセンサの構造以外は図1と同様の超音波計測実験について、図2を参照して説明する。
【0043】
FBGセンサとして、光ファイバ共振部長さ50mmの共振構造を持つFBGセンサを用い、中心周波数250kHzの超音波発振子を100kHz〜400kHzの3周期の正弦波で励起して発生させた超音波に対する応答信号を収録した。図7(a)〜(d)に、超音波励起正弦波信号の周波数を100kHz、200kHz、300kHz、400kHzとして、図2のシステムを用いて50kHz〜1MHzのバンドパスフィルタ、および512回の平均化処理を施して収録された応答波形を示す。また各応答波形の周波数特性を図8(a)〜(d)に示す。共振構造を有するFBGセンサにおいては光ファイバ共振部を往復伝搬する超音波を検出することから、応答強度が徐々に減衰する応答を示すことが知られており、図7からもその特徴が確認できる。
【0044】
FBGセンサを図2のように取り付けたとき、このFBGセンサ24は光ファイバ共振部長さを梁の長さとする片持ち梁と同じ共振特性を示すことになり、共振周波数fr,nは式(2)で与えられる。
【0045】
【数2】

【0046】
ここでv、およびLは、それぞれ光ファイバ中の超音波伝搬速度、および光ファイバ共振部長さを表す。
【0047】
用いた光ファイバは前記関連特許出願で使用した光ファイバと同種であり、この光ファイバの超音波伝搬速度は5,060m/sと評価されている。この超音波伝搬速度5,060m/sを式(2)に代入して計算される次数nが1〜7の共振周波数は75.9、127、177、228、278、329、380kHzである。
【0048】
励起信号周波数を100、200、300、および400kHzにしたときの応答信号は励起信号周波数に近接する共振周波数付近に大きな周波数成分強度を有しており(図8中の数字は最大成分強度が現れた周波数を表す)、前記関連特許出願の第4の実施の形態(広帯域光を光源とし、共振特性を持たせたFBGセンサの超音波応答に超音波周波数が及ぼす影響を利用した形態)と同様の結果を得た。
【0049】
以上、FBGを書き込んだ光ファイバを超音波発振子表面に貼り付けて、非共振構造(第1の実施の形態)、および共振構造(第2の実施の形態)を持つFBGセンサの光ファイバを伝搬する超音波に対する応答結果を示したが、前記関連特許出願と同様の結果を得ることができた。
【0050】
本発明はセンサであるFBGを反射ミラーとするファイバ・レーザを光源に用い、センサが受信する超音波振動をレーザ化されたFBG反射光の強度変化として検出する。ファイバ・レーザは、FBGの受けるひずみ、および温度変化に依存することなく、常にそのブラッグ波長でレーザ発振することから、FBGの受けるひずみ、および温度に関係しない超音波検出が可能である。
【0051】
なお、本発明の実施の形態では、光アンプにエルビウム添加光ファイバアンプ、つまり希土類添加光ファイバアンプを用いているが、ファイバラマンアンプや半導体光アンプを用いることやそれらを組み合わせても同様の効果が得られることは明らかである。
【0052】
また本発明の実施の形態では、共振構造を有するFBGセンサの例として光ファイバの被検体への接着箇所と自由端の間にFBGがある場合のみを挙げているが、光ファイバの被検体への接着箇所と光サーキュレータの間にFBGがある構造を取っても共振構造を有するFBGセンサとして機能することは明らかである。
【0053】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態では、第2の実施の形態で説明した超音波検出システムを、材料中を伝搬する超音波検出に適用し、その検出感度を調べた例を、示す。図9に、第3の実施の形態のシステムを表す。図9のシステムは、光アンプ32、光サーキュレータ33、FBG34、光カップラ35、超音波発振子31、光電変換器36、フィルタ・増幅器37、波形収録器38からなり、接着箇所39で、FBGを有する光ファイバを被検体30に接着している。被検体30には超音波発振子31が固定されている。
【0054】
前記関連特許出願に開示した技術と本実施の形態が提案する技術に基づく超音波検出の感度を比較した。前記関連特許出願の第6の実施の形態では材料中を伝搬する超音波を平均化処理なしで共振構造を有するFBGセンサにより検出できること示した。そこで図9に示す実験セットアップを組み立て、前記関連特許出願の第6の実施の形態の実験と、超音波発振子、超音波励起信号、超音波発振子−光ファイバ接着点間距離、超音波を伝搬させる材料を同じ条件にして、本実施の形態に基づき超音波応答を得た。被検体30に厚さ1mmのアルミ板を用い、超音波発振子−光ファイバ接着点間距離を150mmにして、中心周波数250kHzの超音波発振子31をスパイク波励起して被検体30に超音波40を伝搬させた。用いたFBGセンサ34はグレーティング長10mm、光ファイバ共振部長さが38.5mmの共振構造を持つ。尚、前記関連特許出願の第6の実施の形態ではグレーティング長20mm、光ファイバ共振部長さ22mmのFBGセンサを用いていたが、グレーティング長、および光ファイバ共振部長さが超音波検出感度に及ぼす影響は小さいと考えられる。
【0055】
図9に示した実験セットアップにおいて超音波が伝搬していない状態でのFBGセンサ出力、つまりバックグラウンドノイズの周波数特性を図10に示す。12kHzに最大成分強度を有するノイズがあり、周波数30kHz以上では最大成分強度の1%以下のノイズレベルになった。そこで図9に示した実験セットアップにおけるフィルタを30kHz〜500kHzのバンドパスに設定して、被検体中を伝搬するスパイク波励起超音波を平均化処理せずに収録した。
【0056】
図11(a)(b)に前記関連特許出願の第6の実施の形態(図3の振動検出システムをAE検出に適用した例)の応答信号、同図(c)に本実施の形態で提案するシステムから得られた応答信号を示す。同図(a)は、前記関連特許出願の振動検出システム(図3参照)をAE検出に適用した例において、フィルタをカットオフ周波数500kHzのローパスフィルタに設定した際に得られた応答波形である。前記関連特許出願で提案したシステムからは応答信号の平均化処理なし、およびローパスフィルタ処理では超音波応答を識別できない。前記関連特許出願(段落75,76)には、図11(a)の応答波形の周波数成分強度を調べるとFBGセンサの1次の共振周波数173kHz(式(2)にn=1,v=5,060m/s、L=22mmを代入して得られる)において大きな成分強度が現れていることから、1次の共振周波数近傍のバンドパスフィルタ処理が超音波応答検出に有効であることが考えられ、170kHzを中心周波数とするバンドパスフィルタ処理し応答波形を得たことが記されている。該応答波形を図11(b)に示す。
【0057】
一方、本実施の形態が提案するシステムから得られた超音波応答は30kHz〜500kHzの広帯域なバンドパスフィルタ処理を行っているが、図11(a)、(b)よりも明確に超音波を検出している。
【0058】
前記関連特許出願および本発明の第2の実施の形態の実験結果から明らかなように共振構造を持つFBGセンサは検出する超音波の周波数に近い共振周波数において高い成分強度を有する応答を示す。前記関連特許出願(段落77,78)には、共振構造を有するFBGセンサを用いた場合、FBGセンサの出力である光電変換器出力に対し、FBGセンサの共振周波数毎の狭帯域バンドパスフィルタ処理を施すことが漏れなく超音波を検出するために必要であると記されている。このため同技術に基づく平均化処理なしの超音波応答検出においては複数の狭帯域バンドパスフィルタ処理を施す複雑な信号処理を必要とする。
【0059】
一方、本実施の形態に基づく超音波検出システムで用いたFBGセンサの光ファイバ共振部長さは38.5mmであったことから共振周波数は次数0から高次の順に、32.9kHz、98.6kHz、164kHz、230kHzと66kHz毎増加し、この実施の形態においては0〜7次までの共振周波数を含む広帯域なバンドパスフィルタ処理により、高感度に超音波を検出していることになる。このことから本発明により高感度で広帯域な超音波検出が可能で、超音波・AE検出の実用上において前記関連特許出願と比較して、大きな改善が図られた。
【0060】
第3の実施の形態では検出される超音波の周波数が不明な場合の例を挙げたが、もし検出される超音波の周波数が既知の場合、光電変換部から出力される電気信号をフィルタ処理や増幅処理等の信号処理をする際に、該フィルタ処理として、FBGを書き込んだ光ファイバにおける、被検体との接触点と自由端との間の光ファイバ共振部長さに基づいて決定される共振周波数を通過させる周波数フィルタ処理をすることで、高感度な超音波検出が可能となる。また、光ファイバ共振部長さを調整して、共振周波数を制御することもできる。
【0061】
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態は、共振構造を持つFBGセンサを備える超音波検出システムをAE検出に適用した例である。
【0062】
日本非破壊検査協会規格「アコースティック・エミッション変換子の感度劣化測定方法」にはシャープペンシルの芯を圧折した際に発生する弾性波を疑似AEとして変換子の感度を校正する方法が記されている。そこでシャープペンシル芯を被検体上で圧折して、被検体に疑似AEを伝搬させて本発明に基づいた超音波検出システムで疑似AEに対する応答収録を試みた。
【0063】
図9に示した実験セットアップの超音波発振子を取り外し、FBGセンサの被検体への接着点−シャープペンシル芯圧折箇所間距離を250mmとして、光ファイバ共振部長さ38.5mmのFBGセンサのシャープペンシル芯圧折により発生させた疑似AEに対する応答を収録した。応答信号収録のためのトリガー信号に30kHz〜1MHzのバンドパスフィルタ処理された光電変換器出力を用いた。トリガーレベルはバックグラウンドノイズにより誤って収録トリガーが掛からないように設定した。
【0064】
図12にシャープペンシル芯圧折により発生させた疑似AEに対する応答信号を示す。この計測におけるトリガーレベルは7mVで、図中横点線で示されている。同図から分かるように疑似AE発生前のノイズはトリガーレベルと比較して十分に小さい。この結果から本発明に基づくシステムによりAEを検出できることがわかる。
【0065】
(第5の実施の形態)
非共振構造を持つFBGセンサを用いて第3の実施の形態と同様の実験、つまり平均化処理なしで被検体を伝搬する超音波の検出を試みた。図9で用いた実験セットアップにおいて、FBG全体を被検体に接着させて、非共振構造を持つFBGセンサにして、超音波発振子−光ファイバ接着点間距離を150mmにして、中心周波数250kHzの超音波発振子をスパイク波励起して被検体に超音波を伝搬させた。30kHz〜500kHzのバンドパルフィルタ処理されたFBGセンサの応答波形を図13に示す。共振構造を有する場合と同様に明確に超音波を検出していることが確認できる。前記関連特許出願の第7の実施の形態では非共振構造を持つFBGセンサは平均化処理なしでは被検体を伝搬する超音波を検出できないことが記されているが、本発明で提案する検出システムを用いることで非共振構造を持つFBGセンサ、つまりFBGを被検体に直接貼り付けた状態でも被検体を伝搬する超音波を検出できる。
【0066】
(第6の実施の形態)
第6の実施の形態は、非共振構造を持つFBGセンサを備える超音波検出システムをAE検出に適用した例である。非共振構造を持つFBGセンサを用いて第4の実施の形態と同様の実験、つまりシャープペンシル芯圧折による疑似AE計測を試みた。第4の実施の形態で用いた実験セットアップにおいてFBG全体を被検体に接着させて、非共振構造を持つFBGセンサにして、FBGセンサの被検体への接着点−シャープペンシル芯圧折箇所間距離を250mmとして、シャープペンシル芯圧折により発生させた疑似AEに対する非共振構造を持つFBGセンサの応答を収録した。応答信号収録のためのトリガー信号に30kHz〜1MHzのバンドパスフィルタ処理された光電変換器出力を用いた。トリガーレベルはバックグラウンドノイズにより誤って収録トリガーが掛からないように設定した。
【0067】
図14にシャープペンシル芯圧折により発生させた疑似AEに対する応答信号を示す。この計測におけるトリガーレベルは7mVで、図中横点線で示されている。同図から分かるように疑似AE発生前のノイズはトリガーレベルと比較して十分に小さい。この結果から本発明に基づくシステムにより非共振構造を持つFBGセンサを使ってもAEを検出できることがわかる。
【0068】
(第7の実施の形態)
超音波が材料中を伝搬するとき超音波は欠陥箇所で大きな分散、及び減衰を受けることから、その伝搬状況は欠陥がない場合と異なる。これを利用した材料の欠陥検出法が超音波探傷であり、超音波探傷に本発明に基づく超音波検出システムを利用することができる。第7の実施の形態は、本発明の超音波検出システムを利用して、超音波探傷を行う例である。図15に、本実施の形態の超音波探傷装置を示す。図15の超音波探傷装置は、光アンプ42、光サーキュレータ43、FBG44、光カップラ45、光電変換器46、フィルタ・増幅器47、波形収録器48からなり、FBGを書き込んだ光ファイバを被検体30に接触させている。超音波発振子31をFBG44の光ファイバ軸方向の延長線上に取り付け、超音波発振子31から発振される超音波40をセンサであるFBG44で検出する。
【0069】
図15の超音波探傷装置を用いて、超音波発振子から材料中に超音波を伝搬させ、FBGセンサで超音波を検出し、応答信号の強度、また周波数特性変化から超音波発振子−センサ間に損傷部位があるかどうかを検査することができる。つまり超音波発振子31とFBG44を結ぶ線上に損傷41がある場合は、損傷がない場合と比較して応答信号の強度が低下する、また異なる応答周波数特性が現れることから、損傷の有無を識別することができる。
【0070】
(第8の実施の形態)
上記した各実施の形態で示した超音波検出のための信号処理について、次のような形態をとることができる。各実施の形態では、超音波・AE応答を明確に取り出すために、波形収録器での信号収録前に周波数フィルタ処理を行っているが、信号収録後に同処理を行って同様に超音波・AE応答の取り出してもよい。またセンサ出力に対する周波数フィルタ処理の他に、バックグラウンドノイズ成分を除去するスペクトルサブトラクション処理なども、超音波・AE検出に有効な手段であり、設けることができる。
【0071】
また、共振構造を持つFBGセンサは、超音波やAE受信時に共振周波数において大きな成分強度を有する応答信号を出力する。そこで共振型FBGセンサを用いて、超音波やAE応答を収録する際に、センサの共振周波数をロックインアンプの測定信号周波数に設定し、ロックインアンプ出力を収録トリガーとするとよい。
【0072】
また、FBGセンサの構造が非共振又は共振に関わらず、平均化処理は超音波応答を取り出すための有効な手段であり、各実施の形態で示したフィルタ処理と適宜組み合わせることができる。
【0073】
(第9の実施の形態)
第9の実施の形態では、超音波送受信点を移動させながら超音波を検出する場合を示す。既に示した実施の形態では、FBGを書き込んだ光ファイバを被検体に貼り付けた場合について示した。しかし、多くの超音波探傷では超音波送受信点を移動させながら欠陥位置を同定するため、超音波発振子およびFBGセンサの両方ともに可動式とした方が実用的であり便利である。FBGセンサを可動式とする技術が、特許文献5に開示されているが、本発明に基づく超音波検出システムのセンサ部においても、上記特許文献5と同様の可動部構造を構成して、FBGセンサを可動式とすることもできる。
【0074】
図16は、上記実施の形態で示した超音波検出システムを可動式にした装置である。図16に示すように、FBG54を書き込んだ光ファイバの一部を可動用治具51に取り付け、被検体30を伝わる超音波を、可動用治具51を介して光ファイバに伝える。例えば、FBGを書き込んだ光ファイバのFBG54の一部、またはFBG以外の箇所を、超音波伝搬速度の遅い媒体または厚さ1mm以下の薄い媒体(可動治具51に相当)に、接着箇所59で接触させることにより、共振特性を持たせた可動式FBGセンサとするとよい。可動式FBGセンサを被検体30に接触させることで、被検体を伝搬する超音波またはAEを検出する。図16に示した装置において、可動式のための構造以外は、図9に示したシステムと同様であり、光アンプ52、光サーキュレータ53、光カップラ55、光電変換器56、フィルタ・増幅器57、波形収録器58からなる。
【0075】
図16には、共振型FBGセンサの例を図示したが、非共振構造FBGセンサを可動用治具に取り付けて可動式の振動検出システムとすることができる。具体的には、FBGを、被検体よりも超音波伝搬速度の遅い媒体または厚さ1mm以下の薄い媒体に接触させることにより、可動式FBGセンサとし、その可動式FBGセンサを被検体に接触させることで、被検体を伝搬する超音波またはAEを検出する。
【0076】
FBGセンサを可動式とすることにより、超音波検出ならびに超音波探傷検査を容易に行うことができる。
【0077】
(第10の実施の形態)
本実施の形態では、既に示した実施の形態を応用して、複数のFBGを有するシステムに拡張する場合を示す。
【0078】
本発明の超音波検出システムを用いて多点計測するための装置を、図17に示す。図17の多点計測装置は、光アンプ62と、光サーキュレータ63と、光カップラ65と、複数のFBG(1、2・・・n)と、光電変換器66と、波形収録器68と、光スイッチ64とを備え、フィルタ・増幅器67は必要に応じて設けられる。光アンプ62で反射光をレーザ化するFBG(1、2・・・n)を、光スイッチ64を用いて選択する。
【0079】
本発明の超音波検出システムを用いて多点計測するための装置を、図18に示す。図18の多点計測装置は、光アンプ72と、光サーキュレータ73と、光カップラ75と、複数のFBG(1、2・・・n)と、光電変換器76と、波形収録器78と、チューナブルフィルタ79とを備え、フィルタ・増幅器77は必要に応じて設けられる。このチューナブルフィルタ79が任意の一つのFBGの反射スペクトルを透過する性質を持つ場合、光アンプ72で反射光をレーザ化するFBGを、チューナブルフィルタを用いて選択することができる。チューナブルフィルタを図18の光カップラと光電変換器の間、または光サーキュレータとFBGセンサの間に配置しても同様の機能を有する。
【0080】
本発明の超音波検出システムを用いて同時多点計測するための装置を、図19に示す。図19の同時多点計測装置は、光アンプ82と、光サーキュレータ83と、光カップラ85と、複数のFBG(1、2・・・n)と、光電変換器86と、波形収録器88と、光分波器89とを備え、フィルタ・増幅器87は必要に応じて設けられる。図19の同時多点計測装置は、ブラッグ波長の異なる複数のFBGからのレーザ化された反射光を、波長により出力ラインの異なる光分波器89に通し、それぞれのFBGからのレーザ化された反射光強度を異なるライン(λ、λ、・・・λ)に出力させ、各FBGからのレーザ化された反射光強度を測定することにより、同時に複数のレーザ化されたFBG反射強度を測定する。図19に図示した例ではFBGセンサは一本の光ファイバ上に限定されているが、光サーキュレータの入射/出射ポートに1×N光スイッチ、または1×N光カップラを接続することにより、複数本の光ファイバ上にFBGセンサを設けたセンサ網に拡張することができる。
【0081】
(第11の実施の形態)
衝撃負荷の検知は構造物の健全性評価のみではなく、防犯・防災検知において重要な技術である。そこで第11の実施の形態は、本発明を防犯・防災検知装置に適用する例である。本発明が提案する振動検出システムを用いて衝撃負荷を検出した実験を示す。図9の実験セットアップにおいて超音波発振子を取り外し、FBGセンサから150mm離れた被検体表面に30mmの高さから重さ2.7gのセラミックボールを落球した際の衝撃振動を非共振構造、および共振構造を持つFBGセンサで検出することを試みた。
【0082】
図20(a)および(b)に、それぞれ非共振構造、および光ファイバ共振部長さ38.5mmの共振構造を持つFBGセンサが検出した落球衝撃応答波形を示す。この応答波形の計測においてフィルタは30kHzをカットオフ周波数とするハイパスフィルタに設定した。尚、この波形収録ではバックグラウンドノイズを除去するために30kHzのハイパスフィルタ処理を施したが、衝撃時の応答信号強度はバックグラウンドノイズレベルと比較して非常に大きく、衝撃負荷の検出にフィルタ処理する必要はないことを確認している。共振構造を取る場合、光ファイバ共振部に流入した衝撃振動が往復伝搬するため、非共振構造を持つセンサよりも応答継続時間が長くなっているが、FBGセンサの共振構造の有無に関係なく落球衝撃を高感度に検出していることが分かる。
【0083】
このように本発明に基づく振動検出システムを用いてFBGセンサから衝撃負荷の発生を検出できることから、第10の実施の形態を利用して複数のFBGセンサを被検体に配置して、各FBGセンサが検出する衝撃負荷の検出時間差から衝撃位置を標定することも可能である。衝撃負荷の検出や衝撃負荷位置の標定は防犯や防災技術における検出装置や警報装置に適用できる。
【0084】
(第12の実施の形態)
第12の実施の形態において本発明の振動検出システムを超音波帯域以下の周波数の振動、つまり20kHz以下の振動検出に適用する例である。20kHz以下の振動検出に適用した実験例を示す。図9のシステムにおいて超音波発振子を取り外し、被検体の片端をバイス等の固定治具で固定して片持ち梁構造とし、FBGセンサはFBG全長が被検体に接着された非共振構造にした。またひずみ計測のためFBG近傍に抵抗式ひずみゲージを取り付けた。片持ち梁構造の被検体に自由振動を与えた際のFBGセンサ、およびひずみゲージの出力をカットオフ周波数100Hzのローパスフィルタ処理を施して収録した。
【0085】
片持ち梁に自由振動を与えた際のひずみゲージが測定したひずみ変化、およびFBGセンサ応答をそれぞれ図21(a)、および(b)に示す。同図(a)のひずみ変化から分かるようにこの試験においては時間約0.2sに片持ち梁に曲げを与え、時間約0.5sに曲げ負荷を解除して梁を自由振動させた。その後、試験時間約3.2sに再び梁に曲げを与えた。このときの片持ち梁の振動周波数は約7.5Hzである。同図(b)に示したFBGセンサの出力はひずみゲージの出力と逆相であるが、ひずみゲージから評価されたひずみ変化と同様の信号変化を示していることが分かる。このように本発明の振動検出システムを用いてFBGセンサからHzオーダの振動も検出が可能であることから、さらに低周波の1Hz未満のサブHzオーダの低周波振動も検出可能である。
【0086】
(第13の実施の形態)
第13の実施の形態は、ファイバ・レーザを光源として用い、復調用光フィルタとを組み合わせた例である。図22に、光フィルタを信号復調に用いるシステムにファイバ・レーザを光源として組み合わせた装置を示す。図22の超音波計測システムは、光アンプ92と、光サーキュレータ93と、FBG94と、光カップラ95と、光フィルタ99と、光電変換器96と、波形収録器98とを備える。光カップラ95を介してFBG反射光を、光フィルタに入射する。
【0087】
本発明の特徴であるファイバ・レーザを光源として用いることにより、図4に示したように、FBGの反射スペクトルは広帯域光源を用いた場合と比較して狭帯域で、かつ高強度になる。また、復調用光フィルタに関する構造は従来技術を採用することができる。例えば、非特許文献1に、従来の広帯域光源を利用した超音波検出の多くはFBGセンサからの反射光を光フィルタに入射し、そのフィルタ反射、または透過光強度変化がFBGが受ける超音波振動に対応することを利用している例がある。
【0088】
本実施の形態にように、ファイバ・レーザを光源に利用することにより狭帯域・高強度のFBG反射スペクトルを得ることから広帯域光源を利用するよりも高感度な振動検出が可能となる。
【0089】
(第14の実施の形態)
本実施の形態は、ファイバ・レーザの共振器構造として、第1の実施の形態等とは異なる構造を用いる例である。ファイバ・レーザの共振器構造には共振器の両端にFBGを形成するFBG型と、環状の共振器を形成するリング型の二種類に分類される。図23に、共振器の両端にFBGを形成するFBG型の共振器構造を用いた超音波計測システムを示す。第1乃至13の実施の形態では、リング型のファイバ・レーザを用いた場合のみを記したが、図23(a)(b)に示すようなFBG型のファイバ・レーザを用いても、上記した実施の形態を実現できる。
【0090】
図23(a)の超音波計測システムは、ポンプ光源102、光サーキュレータ103、FBGセンサ1〜FBGセンサn、光分波器104、光電変換器106、波形収録器108を備える。FBGセンサ1・・・FBGセンサnは、それぞれ同一ブラッグ波長を持つ二つのFBGからなる。図23(a)に示すように、同一のブラッグ波長からなるFBGの間に増幅媒体を挿入することで、そのブラッグ波長でレーザ発振する反射光を得ることができる。たとえば増幅媒体として希土類添加ファイバを用いた場合、ポンプ光をFBGが書き込まれたファイバに入射することで、レーザ化されたFBG反射光を得ることができる。この場合、同一ブラッグ波長を持つ二つのFBGが一つのセンサとして機能する。また図23(a)に示すように一本のファイバ上に複数のセンサを配置することができる。
【0091】
図23(b)は、FBGを増幅機能を有する希土類添加ファイバに書き込んだ例である。図23(b)の超音波計測システムは、図23(a)と同様、ポンプ光源102、光サーキュレータ103、FBG(λ)〜FBG(λ)、光分波器104、光電変換器106、波形収録器108を備える。各FBGにセンサとしての機能を持たせることができ、さらに同図のように容易に多重化することができる。
【0092】
図23には希土類添加ファイバ増幅を利用したFBG型ファイバ・レーザを例示したが、ファイバラマン増幅を利用しても同様の効果を得ることができる。
【0093】
(第15の実施の形態)
本実施の形態は、ファイバ・レーザを光源として用い、被検体の受けるひずみや温度を計測する例である。
【0094】
ファイバ・レーザによりFBGのブラッグ波長を発振波長とするレーザ光を得ることができる。FBGのブラッグ波長は、ひずみおよび温度に比例して変化することから、FBGを被検体に貼り付ける、または埋め込むことにより、ブラッグ波長変化から被検体が受けるひずみや温度を測定することができる。FBGのブラッグ波長を定量測定する手法としては、光スペクトルアナライザ、または波長計などの計測器を用いる方法と、波長により透過特性の異なる光フィルタを用いて波長変化を光強度変化に変換する方法がある。なお光フィルタを用いたブラッグ波長測定法は非特許文献2に詳細が記されている。
【0095】
本実施の形態について、図24を参照して説明する。図24に、超音波とひずみ・温度を同時計測するシステム構成を示す。図24のシステムは、光アンプ112、光サーキュレータ113、FBG114、光カップラ115、ひずみ計測用光フィルタ119、光電変換器116、波形収録器118を備える。図24に示したように、レーザ化されたFBG反射光を光カップラ115から超音波検出用に取り出す以外に、ひずみまたは温度測定用に広帯域に透過特性が変化する光フィルタ119に入れ、光フィルタ透過光および反射光出力を、光電変換器に入れる。光フィルタ119を介した光電変換器出力からブラッグ波長を一意的に評価することができ、被検体が受けるひずみや温度を定量的に評価することができる。このシステムにより超音波、AEのみではなく、被検体が受けるひずみや温度も同時に定量評価することができる。また図24における光フィルタを光スペクトルアナライザ、または波長計に置換しても同様の機能を持たせることができる。
【0096】
また、本発明の超音波検出システムは、実施の形態で示した超音波探傷による欠陥検出、AE検出による損傷発生検知、および振動検知による機械の異常発生検知、衝撃負荷位置の標定、防犯・防災検知、ひずみ及び温度計測等の装置に適用することができる。
【0097】
本発明では、各実施の形態で示した信号処理を適宜組み合わせて実施することができる。なお、上記実施の形態等で示した例は、発明を理解しやすくするために記載したものであり、この形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、超音波探傷による欠陥検出、AE検出による損傷発生検知、および振動検知による機械の異常発生検知、防犯・防災検知等に有用である。
【符号の説明】
【0099】
1、11、21、31 超音波発振子
2 広帯域光源
3、13、23、33、43、53、63、73、83、93、103、113 光サーキュレータ
4、14、24、34、44、54、94、114 FBG
5、16、26、36、46、56、66、76、86、96、106、116 光電変換器
6 増幅器
7 フィルタ
8、18、28、38、48、58、68、78、88、98、108、118 波形収録器
9、19、29、39、59 接着箇所
12、22、32、42、52、62、72、82、92、112 光アンプ
15、25、35、45、55、65、75、85、95、115 光カップラ
17、27、37、47、57、67、77、87 フィルタ・増幅器
30 被検体
40 超音波
41 損傷
51 可動用治具
64 光スイッチ
79 チューナブルフィルタ
89、104 光分波器
99 光フィルタ
102 ポンプ光源
119 ひずみ計測用光フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動を検出するシステムであって、
ファイバ・レーザと、前記ファイバ・レーザの反射ミラーとなるファイバ・ブラッグ・グレーティング(以下、FBGという。)と、前記ファイバ・レーザによりレーザ化された前記FBGからの反射光強度を電気信号に変換する光電変換部とを備えることを特徴とする振動検出システム。
【請求項2】
前記振動検出システムは、
光アンプと、光サーキュレータと、光カップラとを備え、
前記ファイバ・レーザは、センサとなるFBGを反射ミラーとして、前記FBGの反射波長を包含する波長域において光増幅機能を有する前記光アンプにより、前記FBGのブラッグ波長を発振波長とするレーザであることを特徴とする請求項1の振動検出システム。
【請求項3】
前記FBGと前記光サーキュレータの入射/出射ポートとは光ファイバで接続され、前記光サーキュレータの入射ポートと出射ポート間は途中、前記光カップラおよび前記光アンプが挿入され、光ファイバで接続されることを特徴とする請求項2記載の振動検出システム。
【請求項4】
前記FBGからの反射光は前記光サーキュレータを介して、前記光カップラと前記光アンプが挿入された環状の光ファイバを巡り、前記光アンプにおいて増幅され、前記光サーキュレータを介して前記FBGに入射され、再び前記FBGにおいて反射され、前記光アンプが挿入されている光ファイバ環状部でFBG反射光が増幅される過程を繰り返し、前記FBGのブラッグ波長を発振波長とするレーザが作られることを特徴とする請求項3記載の振動検出システム。
【請求項5】
前記振動検出システムは、前記FBGを書き込んだ光ファイバのFBGの一部、または前記FBG以外の箇所を、被検体に接触させて、FBGセンサに共振特性を持たせ、振動を被検体との接触箇所を介して光ファイバに流入させることを特徴とする請求項1記載の振動検出システム。
【請求項6】
前記振動検出システムは、光フィルタを備えることを特徴とする請求項1記載の振動検出システム。
【請求項7】
前記ファイバ・レーザは、同一のブラッグ波長を有するFBGの間に増幅媒体を備えることを特徴とする請求項1の振動検出システム。
【請求項8】
前記電気信号に対して周波数フィルタ処理を行う信号処理部を備えることを特徴とする請求項1記載の振動検出システム。
【請求項9】
前記周波数フィルタ処理は、共振特性に基づく共振周波数帯域近傍のバンドパスフィルタ処理であることを特徴とする請求項8に記載の振動検出システム。
【請求項10】
前記FBGを複数備えることにより多点計測を行うことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項記載の振動検出システム。
【請求項11】
前記FBGを、可動式FBGセンサとし、該可動式FBGセンサを被検体に接触させることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項記載の振動検出システム。
【請求項12】
前記振動は、サブHzの振動を含む20kHz以下の振動、超音波、またはアコースティック・エミッションであることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項記載の振動検出システム。
【請求項13】
前記ファイバ・レーザによりレーザ化されたFBG反射光を用いて、前記振動の検出をすると同時に、ひずみ又は温度を計測することを特徴とする請求項1記載の振動検出システム。
【請求項14】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の振動検出システムを備えることを特徴とする超音波探傷装置。
【請求項15】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の振動検出システムを用いて、超音波伝搬状況を測定することにより、被検体の健全性を評価することを特徴とする材料健全性評価装置。
【請求項16】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の振動検出システムを用いて、材料破壊時に生じるアコースティック・エミッションを検出して、被検体の健全性を評価することを特徴とする材料健全性評価装置。
【請求項17】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の振動検出システムを用いて、衝撃負荷を検知することを特徴とする防犯防災装置。
【請求項18】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の振動検出システムを用いて、衝撃負荷を検知して、衝撃位置を標定することを特徴とする防犯防災装置。
【請求項19】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の振動検出システムを用いて、振動を検知し、振動の状況から機械の異常を診断することを特徴とする異常検知装置。
【請求項20】
ファイバ・レーザの反射ミラーとなるFBGを備え、前記ファイバ・レーザによりレーザ化された前記FBGからの反射光強度を電気信号に変換することにより振動を検出することを特徴とする振動検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2011−196744(P2011−196744A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61986(P2010−61986)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】