説明

IP電話端末およびIP電話システム

【課題】特別にサーバ機能を有する装置を設置することなくIP電話端末およびIP電話システムの機能を実現する技術を提供する。
【解決手段】呼制御機能を有するIP電話端末を複数含み、呼制御機能を有するIP電話端末は、自端末の呼制御機能を起動する呼制御機能起動手段と、呼制御の稼動状況を監視する稼動状況監視手段と、自端末の呼制御機能を起動するか否かを判定する呼制御機能起動判定手段とを有し、呼制御機能を有するIP電話端末の内、所定のルールによって第一の端末と、第二の端末が選定され、第一の端末は、自IP電話システムの呼制御を実行し、第二の端末は、第一の端末が実行している呼制御の稼動状況を監視し、呼制御の異常を検出した場合、第二の端末は呼制御機能を起動するIP電話システムにより、達成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼制御サーバ機能を有するIP電話端末およびIP電話システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のIP電話システムは、サーバ装置の費用、設置工事、保守費用などユーザへの負担を考慮して、IP電話端末のクライアント機能に加えて、サーバ機能を有する機器や装置がある。
【0003】
特許文献1では、IP網にSIPサーバ等を設けることなく、安価にVoIP機器による通話を実現する方法が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−080032号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術では、通信制御装置(VoIP機器)に相手先の識別情報とIPアドレスとの対応付けを行い、サーバとしての機能を実現することによりVoIPシステムを実現している。しかし、クライアントが通信中にサーバがダウンしたとき、呼の状態は無効となってしまう。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、IP電話端末およびIP電話システムにおいて、サーバ機能をIP電話端末に入れる事により、特別にサーバ機能を有する装置を設置することなくIP電話端末およびIP電話システムの機能を実現する技術を提供し、サーバを監視する事により障害に強いサービスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題は、呼制御機能を有するIP電話端末を複数含み、呼制御機能を有するIP電話端末は、自端末の呼制御機能を起動する呼制御機能起動手段と、呼制御の稼動状況を監視する稼動状況監視手段と、自端末の呼制御機能を起動するか否かを判定する呼制御機能起動判定手段とを有し、呼制御機能を有するIP電話端末の内、所定のルールによって第一の端末と、第二の端末が選定され、第一の端末は、当該IP電話システムの呼制御を実行し、第二の端末は、第一の端末が実行している呼制御の稼動状況を監視し、呼制御の異常を検出した場合、呼制御機能起動判定手段は自端末の呼制御機能を起動すると判定し、自端末の呼制御機能を起動するIP電話システムにより、達成できる。
【0008】
また、ネットワークに接続されたIP電話システムを構成し、IP電話端末は、自端末の呼制御機能を起動する呼制御機能起動手段と、呼制御の稼動状況を監視する稼動状況監視手段と、自端末の呼制御機能を起動するか否かを判定する呼制御機能起動判定手段とを有し、呼制御機能起動手段を起動した第1の状態と、稼動状況監視手段を起動した第2の状態と、端末機能のみを起動した第3の状態のいずれか一つの状態で動作するIP電話端末により、達成できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、IP電話端末にクライアント機能と呼制御サーバ機能を入れ、予め決められたルールによって定まる優先順位に従って呼制御を実行する端末と前記呼制御を監視する端末を決定するので呼制御を実行中の端末が異常になっても速やかに別の端末が呼制御サーバ機能を実行するので、安価で信頼性の高いIP電話システムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明の実施の形態について、実施例を用い図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同一部位には同じ参照番号を振り、説明は繰り返さない。
【0011】
まず、IP電話システムについて図1を参照して説明する。ここで、図1はIP電話システムのシステム構成図である。図1において、IP電話システム500は、n台のIP電話端末100を回線200で相互接続した構成である。IP電話端末100は、いずれも同一機能を有している。また、IP電話端末100は、呼制御サーバ機能を有する。IP電話端末100−1〜100−nのうち、最初に起動したIP電話端末100−j(1≦j≦n)が第1優先サーバとなり、第1優先サーバに最初にサーバ登録要求を発信したIP電話端末100−k(1≦k≦n、k≠j)が第2優先サーバとなる。第1優先サーバは、IP電話システム500の発着信等を制御する。第2優先サーバは、第1優先サーバの状態を監視し、第1優先サーバに異常が発生したとき、第1優先サーバの機能を引き継ぐ。この結果、通話のサービスを中断することなく切り替えることができる。
なお、回線200は、LANでもWANでも構わないが、以下の実施例ではLANとして説明する。
【0012】
図2を参照して、IP電話端末の構成を説明する。ここで、図2はIP電話端末の機能ブロック図である。図2において、IP電話端末100は、回線200に接続するためにLANインタフェース部110をもち、このLANインタフェース部110を介して通信相手である外部の装置、またはIP電話システムを構成する他のIP電話端末とパケット通信を行う。通信制御部111は、パケット通信全般の制御を行う。
【0013】
呼制御プロトコル部112は、VoIP通信を可能にするためにクライアント機能と呼制御サーバ機能を実行する。クライアント機能部113は、IP電話端末(クライアント)として動作するために処理を行う。呼制御サーバ機能部114は、呼制御サーバとして動作するために処理を行う。優先度処理部115は、呼制御サーバとして動作するために優先度の管理を行い、この優先度処理部115をもとに優先サーバとして動作する。
【0014】
他端末監視部116は、優先度処理部115により第2優先サーバとして決定されると、第1優先サーバを監視する。第2優先サーバの他端末監視部116は、監視パケット送受信部117を介して第1優先サーバとの処理を行う。第1優先サーバからの異常パケットを監視パケット送受信部117で受信したとき、または第1優先サーバから何も応答が無いとき、異常検出部118により第1優先サーバに異常が検出されたとみなし、呼制御サーバ起動部119により呼制御サーバ機能を起動する。呼制御サーバ情報120とは、呼制御サーバとして動作するために必要な情報、たとえばIPアドレスと電話番号の関連や保留音などの各種設定などである。呼制御サーバ情報120には、またクライアントによる呼の情報を保存している。
【0015】
優先度処理部115により自端末が第1優先サーバであると決定されると、他端末監視部116は、第2優先サーバを監視し、監視パケット送受信部117により第2優先サーバとの処理を行う。第2優先サーバから何も応答が無いと、異常検出部118により第2優先サーバに異常が検出されたとみなし、新たな第2優先サーバを決定する。
【0016】
主制御部121は、自IP電話端末全体を制御する。マンマシンインタフェース部122は、IP電話端末(クライアント)として必要な操作ボタン、スピーカ、受話器、LEDなどのマンマシンインタフェースである。
【0017】
図3を参照して、IP電話端末の初期起動シーケンスを説明する。ここで、図3は3台のIP電話端末間の初期起動シーケンス図である。図3において、最初の状態は全てのIP電話端末100は電源がOFFで、LANに接続されている状態である。
【0018】
まず、初めにIP電話端末100−1の電源が投入されたとする(S301)。IP電話端末100−1は、最初にLAN上にサーバが存在するかどうか判断するためのサーバサーチを実行する(S302)。サーバサーチのコマンド送信方法は、たとえばマルチキャストがある。次に、IP電話端末100−1は、監視タイマをセットし、スタートする(S303)。サーバサーチの期間は、第1優先サーバの確認ができるか、この監視タイマが満了するまでである。
【0019】
ここでは、第1優先サーバが立ち上がっていないので、監視タイマが満了する(S304)。IP電話端末100−1は、このイベントをきっかけに第1優先サーバとして起動し(S305)、自端末を第1優先サーバとしてセットし(S306)、登録する(S307)。
【0020】
そして、IP電話端末100−1は、第1優先サーバとして起動した事を通知するために、第1優先サーバ起動通知を送信する(S308)。第1優先サーバ起動通知の方法は、たとえばマルチキャストにより行う。第1優先サーバ起動通知を行う理由としては、自IP電話端末が第1優先サーバになった事の通知とともに、同一ネットワーク上に複数の第1優先サーバができないようにするためである。複数のIP電話端末100が同一ネットワーク上に同時に起動したとき、第1優先サーバ起動通知をそれぞれのIP電話端末100が出すが、この通知をそれぞれのIP電話端末が受信することによりどれか1台のIP電話端末100が第1優先サーバになるようにする。第1優先サーバの決定方法は、たとえばIPアドレスが若いIP電話端末100を優先にしたり、MACアドレスが若いIP電話端末100を優先にしたりする事により決定できる。そして決定された第1優先サーバとなったIP電話端末の呼制御サーバ機能部114がIP電話システム全体の呼制御を実行する。
【0021】
次に、IP電話端末100−2の電源が投入されたとする(S309)。IP電話端末100−2は、LAN上にサーバが存在するかどうか判断するためのサーバサーチを送信する(S310)。次にIP電話端末100−2は、サーバサーチの期間を監視する監視タイマをセットし、スタートする(S311)。
【0022】
サーバサーチの結果、IP電話端末100−1は、第1優先サーバとして起動しているので、IP電話端末100−2に対して第1優先サーバ応答を送信する(S312)。このイベントをきっかけにIP電話端末100−2は、サーバサーチを行う監視タイマをストップし(S313)、IP電話端末100−1が第1優先サーバであることをセットし(S314)、システム全体の呼制御を実行するIP電話端末100−1にREGISTER(登録要求)を送信する(S315)。
【0023】
第1優先サーバとして起動しているIP電話端末100−1は、REGISTERを受信すると(S315)、IP電話端末100−2をクライアントとして登録すると共に、一番初めに登録要求があったIP電話端末100−2を第2優先サーバとして決定し(S316)、200 OKを送信する(S317)。ここで、200 OKは、登録完了を通知するメッセージである。IP電話端末100−1は、次に第2優先サーバ指示を送信する(S318)。IP電話端末100−2は、第2優先サーバ指示を受信すると(S318)、指示に従って第2優先サーバとして起動し(S319)、自端末を第2優先サーバとしてセットし(S320)、登録する(S321)。
【0024】
そして、IP電話端末100−2は、第2優先サーバとして起動した事を通知するために、第2優先サーバ起動通知(S322)を送信する。第2優先サーバ起動通知の方法は、たとえばマルチキャストにより行う。IP電話端末100−1は第2優先サーバ起動通知を受信すると(S322)、IP電話端末100−2が第2優先サーバであることをセットし(S323)、第2優先サーバへの登録を要求するためのREGISTERを送信する(S324)。IP電話端末100−2は、このREGISTERを受信すると(S324)、登録OKとする200 OKを送信する(S325)。
【0025】
そして、さらにIP電話端末100−nの電源を投入すると(S326)、LAN上にサーバが存在するかどうか判断するためのサーバサーチを送信する(S327)。次にサーバサーチを行う監視タイマをセットし、スタートする(S328)。
【0026】
サーバサーチの結果、IP電話端末100−1が第1優先サーバとして起動しているので、IP電話端末100−1は、IP電話端末100−nに対して第1優先サーバ応答を送信する(S329)。このイベントをきっかけにIP電話端末100−nは、サーバサーチを行う監視タイマをストップし(S330)、IP電話端末100−1が第1優先サーバであることをセットし(S331)、第2優先サーバへの登録を要求するためのREGISTERを送信し(S332)、IP電話端末100−1は、IP電話端末100−nをクライアントとして登録し、このREGISTERに対する200 OKを送信する(S333)。以上により、正常に第1優先サーバへの登録が完了する。また、IP電話端末100−2は、第2優先サーバとして起動しているので、IP電話端末100−nに対して第2優先サーバ応答を送信する(S335)。このイベントをきっかけに、IP電話端末100−nは、IP電話端末100−2が第2優先サーバであることをセットし(S334)、サーバへの登録を要求するためにREGISTERを送信する(S336)。IP電話端末100−2は、このREGISTERに対する200 OKを送信する(S337)。以上により、正常に第2優先サーバへの登録が完了する。
【0027】
発着信の呼制御処理は、たとえばIP電話端末100−nから他IP電話端末に発信を行う場合、IP電話端末100−nは第1優先サーバに登録しているので、第1優先サーバのみを使用した発着信を行う。このとき第2優先サーバは、第1優先サーバに障害が起きたときに動作する。また、IP電話端末100−nは、第2優先サーバにも登録しているので、第1優先サーバの稼働状況を判断し、第2優先サーバを使用した発着信を行っても良い。このような処理は、優先サーバとして起動しているIP電話端末100−1とIP電話端末100−2についても同様な動作ができる。
【0028】
図4を参照して、第1優先サーバが周期的に行う処理を説明する。ここで、図4はIP電話端末間の周期処理を説明するシーケンス図である。図4において、IP電話端末100−1は、第1優先サーバの機能として、周期的に他のIP電話端末(IP電話端末100−2〜IP電話端末100−n)に端末確認パケットを送信する(S401)。IP電話端末100−1は、応答を待つための監視タイマをセットし、スタートをする(S402)。端末確認パケットの送信方法は、たとえばマルチキャストにより行う。端末確認パケットを受信したIP電話端末100−2〜100−nは、IP電話端末100−1に対して応答を送信する(S403、S404)。なお、IP電話端末100−2〜100−nは、応答に自IP電話端末の状態(発着信・通話頻度、通話状態)とメモリ容量とを搭載する。この結果、IP電話端末100−1は、どのIP電話端末が存在するか、またその状態を把握する。
【0029】
IP電話端末100−1は、監視タイマが満了すると(S405)、端末確認パケットに対する応答に含まれる情報を解析して統合する(S406)。IP電話端末100−1は、統合した情報を搭載したサーバ情報パケットを、IP電話端末100−2〜100−nに送信する(S407)。サーバ情報パケットの受信により、全てのIP電話端末100は、他のIP電話端末100の状態がわかる。すなわち、どのIP電話端末が存在しているのか、通話中なのかといった情報をマンマシンインタフェース122のLEDに表示する。サーバ情報パケット送信の方法は、たとえばマルチキャストにより行う。ステップ401からステップ407の処理は、決められた一定間隔で行われる。
【0030】
図5を参照して、優先サーバの変更処理を説明する。ここで、図5は優先サーバを起動した2台のIP電話端末と優先サーバ未起動の2台のIP電話端末との間のシーケンス図である。
【0031】
図5において、第1優先サーバとして起動しているIP電話端末100−1は、第1優先サーバ周期処理の応答情報解析で、優先サーバを変更できると判断したとき、優先サーバを変更する。したがって、ステップ501からステップ508までは、図4のステップ401からステップ407と同じ内容の処理である。したがって、説明を省く。
【0032】
第1優先サーバとして起動しているIP電話端末100−1は、応答情報解析により、第1優先サーバ、第2優先サーバの変更について決定する事ができる。第1優先サーバ、第2優先サーバの決定は、IP電話端末の状態(発着信・通話頻度、通話状態)、メモリ容量を考慮して、実施する。優先サーバの変更を行う事により、処理の分散を行うことができる。たとえば、第1優先サーバとして起動しているIP電話端末100−1は、クライアントとして動作するIP電話端末100の稼動状況を判断し、一番使用されていないIP電話端末に対して第1優先サーバの指示を行う。また、第1優先サーバとして起動しているIP電話端末100−1は、今まで動作していた第1優先サーバ機能を終了する。これにより、信頼性の高いIP電話システムを提供できる。
【0033】
なお、ここでは、IP電話端末100−nが一番使用していないIP電話端末であり、IP電話端末100−3が二番目に使用していないIP電話端末とする。図5において、第1優先サーバとして起動しているIP電話端末100−1は、ステップ507の応答情報解析により、IP電話端末100−nを第1優先サーバ、IP電話端末100−3を第2優先サーバとすることを決定する。
【0034】
IP電話端末100−1は、IP電話端末100−3に第2優先サーバ指示を送信する(S509)。第2優先サーバ指示を受信したIP電話端末100−3は、第2優先サーバとして起動し(S510)、帰属先変更通知を送信する(S511)。IP電話端末100−3は、登録先を変更する(S512)。帰属先変更通知を受信したIP電話端末100−1、IP電話端末100−2およびIP電話端末100−nは、この情報を元にサーバの登録先を変更する(S513、S514、S515)。なお、ここで再度サーバの登録を行う必要はない。帰属先変更通知の送信方法は、たとえばマルチキャストにより行う。
【0035】
第1優先サーバとして動作しているIP電話端末100−1は、第2優先サーバを起動しているIP電話端末100−2に終了指示を送信する(S516)。終了指示を受信したIP電話端末100−2は、第2優先サーバを終了する(S517)。IP電話端末100−2は、第2優先サーバを終了した事を通知する第2優先サーバ終了OKを送信する(S518)。IP電話端末100−1は第2優先サーバ終了OKを受信すると、IP電話端末100−nに第1優先サーバ指示を送信する(S519)。第1優先サーバ指示を受信したIP電話端末100−nは、指示に従って第1優先サーバを起動する(S520)。IP電話端末100−nは、帰属先変更通知を送信する(S521)。IP電話端末100−nは、登録先を変更する(S522)。帰属先変更通知を受信したIP電話端末100−1〜100−3は、この情報を元にサーバの登録先を変更する(S523、S524、S525)。ここで、再度サーバの登録を行う必要はない。帰属先変更通知の送信方法は、たとえばマルチキャストにより行う。
【0036】
第1優先サーバとして動作しているIP電話端末100−1は、第1優先サーバを起動したIP電話端末100−nからの帰属先変更通知を受信すると、第1優先サーバを終了する(S526)。
【0037】
図6を参照して、第2優先サーバが周期的に行う処理を説明する。ここで、図6は第1優先サーバを起動したIP電話端末と第2優先サーバを起動したIP電話端末との間のシーケンス図である。
【0038】
第2優先サーバを起動したIP電話端末100−2は、第1優先サーバを起動したIP電話端末100−1に対して周期的に監視パケットを送信する(S601)。IP電話端末100−2は、監視パケットに対する応答を待つための監視タイマをセットし、スタートする(S602)。監視パケット応答待ちの時間は応答(OK)パケットを受信するか、監視タイマが満了するまでである。IP電話端末100−2は、IP電話端末100−1からの応答(OK)パケットを受信すると(S603)、IP電話端末100−2は応答パケットの解析を行う。解析により応答パケットが正常であることを認識すると(S604)、監視タイマをストップする(S605)。ステップ601からステップ605の処理は周期的に、決められた一定間隔で行われる。
【0039】
図7を参照して、第1優先サーバに異常が発生したときの処理を説明する。ここで、図7は優先サーバを起動した2台のIP電話端末と優先サーバ未起動の2台のIP電話端末との間のシーケンス図である。
【0040】
図7において、第1優先サーバを起動したIP電話端末100−1にLANからの切断等の異常が発生したとする(S701)。IP電話端末100−2は監視パケットを送信し(S702)、監視パケットに対する応答を待つための監視タイマをセットし、スタートする(S703)。しかし、IP電話端末100−1から応答がないために監視タイマが満了する(S704)。すると、IP電話端末100−2は、第1優先サーバとして動作していたIP電話端末100−1が異常状態と判断する。これを契機に、IP電話端末100−2は、第1優先サーバとして起動する(S705)。IP電話端末100−2は、自端末を第1優先サーバであることをセットし(S706)、登録する(S707)。そして、IP電話端末100−2は、ネットワーク上の全てのIP電話端末の確認をするために、端末確認パケットを送信する(S708)。端末確認パケットの送信方法は、たとえばマルチキャストにより行う。次に、IP電話端末100−2は、端末確認パケットを行う監視タイマをセット、スタートする(S709)。IP電話端末確認の時間は存在するIP電話端末から応答があるまでか、監視タイマが満了まで行う。図7では、IP電話端末100−3が応答を最初に返し(S710)、次にIP電話端末100−nが応答を返す(S711)。IP電話端末100−2は、監視タイマをストップし(S712)、IP電話端末100−2を第2優先サーバとして決定する(S713)。IP電話端末100−2は、IP電話端末100−3に第2優先サーバ指示を送信する(S714)。第2優先サーバ指示を受信したIP電話端末100−3は、指示に従って第2優先サーバとして起動し(S715)、帰属先変更通知を送信する(S716)。IP電話端末100−3は、登録先を変更する(S717)。帰属先変更通知を受信したIP電話端末100−2、IP電話端末100−nは、この情報を元に第1優先サーバをIP電話端末100−2に変更してIP電話端末100−3を新たに第2優先サーバとして登録する(S718、S719)。帰属先変更通知の送信方法は、たとえばマルチキャストにより行う。
【0041】
尚、図6、図7の実施例では第2優先サーバが第1優先サーバの異常を検出する手段として、第1優先サーバに対して監視パケットを送信し、その応答のあり・なしで第1優先サーバの異常を検出している。しかし本発明はこれに限定されない。
【0042】
例えば、第1優先サーバが全IP電話端末を監視するために定期的に送信する端末確認パケットの受信のあり・なしを第1優先サーバの異常を検出する手段としてもよい。
【0043】
具体的には、第2優先サーバが端末確認パケットを受信する間隔以上のタイミングでタイマをセットし、端末確認パケットの受信した場合にタイマをリセットする。もしたいまがタイムアウトした場合に、第1優先サーバに異常を検出したと判断し、ステップ705以降の処理を行う。
図8を参照して、第2優先サーバが異常発生したときの処理を説明する。ここで、図8は優先サーバを起動した2台のIP電話端末と優先サーバ未起動の2台のIP電話端末との間のシーケンス図である。
【0044】
図8において、第2優先サーバを起動したIP電話端末100−2にLANの切断等の異常が発生したとする(S801)。IP電話端末100−1は端末確認パケットを送信し(S802)、端末確認パケットに対する応答を待つための監視タイマをセットし、スタートする(S803)。IP電話端末100−3とIP電話端末100−nとからは、応答がある(S804、S805)。しかし、IP電話端末100−2から切断等の異常のために応答を受信できないまま監視タイマが満了する(S806)。すると、IP電話端末100−1は、端末確認パケットに対する応答がないため、第2優先サーバとして動作していたIP電話端末100−2を異常状態と判断する。IP電話端末100−1は、第2優先サーバとして、最初に応答を返信したIP電話端末100−3に決定する(S808)。IP電話端末100−1は、IP電話端末100−3に第2優先サーバ指示を送信する(S809)。
【0045】
第2優先サーバ指示を受信したIP電話端末100−3は、指示に従って第2優先サーバとして起動し(S810)、帰属先変更通知を送信する(S811)。IP電話端末100−3は、登録先を変更する(S812)。帰属先変更通知を受信したIP電話端末100−1、IP電話端末100−nは、この情報を元にサーバの登録先を変更する(S813、S814)。ここでは、再度サーバの登録を行う必要はない。この後、IP電話端末100−1は端末確認パケットに対する応答情報を解析して統合し(S815)、サーバ情報パケットを送信する(S816)。端末確認パケットの送信方法および帰属先変更通知の送信方法、サーバ情報パケットの送信方法は、たとえばマルチキャストにより行う。
【0046】
図9を参照して、サーバサーチ送信から第1優先サーバ登録までのIP電話端末の処理を説明する。ここで、図9はIP電話端末の立上りのフローチャートである。
【0047】
まず、IP電話端末100の電源が投入されると、IP電話端末100は、LAN上にサーバが存在するかどうか判断するためのサーバサーチを行う(S901)。次にIP電話端末100は、サーバサーチを行う監視タイマをセットし、スタートする(S902)。ここで、IP電話端末100は、第1優先サーバ応答を受信すると(S903:YES)、監視タイマをストップし(S905)、第1優先サーバであることをセットし(S906)、第1優先サーバ登録要求(REGISTER)送信を行い(S907)、第1優先サーバ登録結果(200 OK)を受信することにより(S908)、終了する。この結果、正常に第1優先サーバへの登録が完了する。
【0048】
一方、第1優先サーバ応答の確認ができないとき、監視タイマは満了し(S904:YES)、このイベントをきっかけに、IP電話端末100は、第1優先サーバとして起動し(S909)、自IP電話端末を第1優先サーバとしてセットし(S910)、登録する(S911)。そして、第1優先サーバとして起動した事を通知するために、IP電話端末100は、第1優先サーバ起動通知を送信し(S912)、終了する。
【0049】
図10を参照して、第2優先サーバから第1優先サーバへの監視パケット送信処理を説明する。ここで、図10は第2優先サーバのフローチャートである。
第2優先サーバは、周期的に第1優先サーバを監視するため、周期タイマをセットし、スタートする(S101)。第2優先サーバは、周期タイマ満了により(S102:Yes処理)、周期的に第1優先サーバに監視パケットを送信する(S103)。次に、第2優先サーバは、監視パケットに対する応答を待つための監視タイマをセットし、スタートする(S104)。監視パケット応答待ちの時間は、応答パケットを受信するか、この監視タイマが満了するまでである。
【0050】
応答パケットを受信すると(S105:Yes)、第2優先サーバは、正常パケットかどうか判断する(S106)。正常パケットであると(Yes)、第2優先サーバは、監視タイマをストップし(S107)し、ステップ101に戻る。この処理は、第1優先サーバが正常のときの動作である。
【0051】
しかし、ステップ105で応答パケットを受信できず(No)、監視タイマ満了したとき(S108:Yes)、またステップS106で正常なパケットでないとき(No)、第2優先サーバは、第1優先サーバを異常状態と判断する。このとき、第2優先サーバは第2優先サーバを停止し、自端末を新規の第1優先サーバとして起動する(S109)。そして、新規の第1優先サーバは、自端末を第1優先サーバとしてセットし(S110)、登録する(S111)。次にネットワーク上のIP電話端末の確認をするために、端末確認パケットを送信し(S112)、端末確認パケットを行う監視タイマをセットし、スタートする(S113)。IP電話端末確認の時間は、存在するIP電話端末から応答があるか、監視タイマが満了までである。
【0052】
新規の第1優先サーバは、応答パケットを受信すると(S114:Yes)、監視タイマをストップし(S115)し、自端末以外の新しい第2優先サーバを決定する(S116)。新規の第1優先サーバは、第2優先サーバ指示を送信し(S117)、帰属先変更通知を受信すると(S118)、登録先を変更する(S119)。以上の処理は、第1優先サーバが異常になったときに、同一ネットワーク上に他のIP電話端末が存在するときの動作である。
【0053】
ステップ114で応答パケットを受信できず(No)、監視タイマが満了したとき(S119:Yes)、新規の第1優先サーバは、そのまま終了する。以上の処理は、第1優先サーバが異常になったが、同一ネットワーク上に他のIP電話端末が存在しないときの動作である。
【0054】
図11を参照して、第1優先サーバからIP電話端末への呼制御情報および端末確認パケット送信処理を説明する。ここで、図11は第1優先サーバのフローチャートである。第1優先サーバは、呼制御の状態が変化したときは呼制御情報パケット、周期タイマが満了したときは端末確認パケットを、全IP電話端末に送信する。
【0055】
図11において、第1優先サーバは、周期的に全IP電話端末に呼制御情報パケットを送信するため、周期タイマをセットし、スタートする(S201)。第1優先サーバは、呼制御の情報の変化を判断し(S202)、何も変化が無いときは処理を行わず(No)、また周期タイマが満了したか判断し(S203)、満了していないときはステップ202に戻る(No)。
【0056】
ステップ202で、クライアントからの要求などにより呼制御の情報に変化があったとき(Yes)、第1優先サーバは、まず呼制御処理を行う(S204)。第1優先サーバは、全IP電話端末に呼制御情報パケットを送信する(S205)。次に第1優先サーバは、呼制御情報パケットに対する応答を待つための監視タイマをセットし、スタートする(S206)。呼制御情報パケット応答待ちの時間は、第2優先サーバから応答があるか、監視タイマが満了するまでである。
【0057】
第1優先サーバは、第2優先サーバから応答パケットを受信すると(S207:Yes)、監視タイマをストップし(S208)し、ステップ202に戻る。この処理は、第2優先サーバが正常のときの動作である。
【0058】
しかし、第2優先サーバから応答パケットを受信しないまま監視タイマが満了すると(S209:Yes)、第1優先サーバは、第2優先サーバを異常状態と判断する。第1優先サーバは、他のIP電話端末から応答受信しているか判断する(S210)。他のIP電話端末から応答受信していない場合(No)、第1優先サーバは、何も処理をせずステップ202に戻る。他のIP電話端末から応答処理を受信している場合(Yes)、第1優先サーバは、一番最初に応答を返したIP電話端末を第2優先サーバに決定し(S215)、第2優先サーバ指示を送信する(S216)。第1優先サーバは、帰属先変更通知を受信すると(S217)、登録先を変更する(S218)。次に第1優先サーバは、応答情報を解析して統合し(S219)、サーバ情報パケットを送信する(S220)。そして、第1優先サーバは、周期タイマをセット、スタートし(S221)、ステップ202に戻る。
【0059】
一方、ステップ203で周期タイマが満了したとき(Yes)、第1優先サーバは、全IP電話端末に端末確認パケットを送信する(S211)。次に第1優先サーバは、端末確認パケットに対する応答を待つための監視タイマをセットし、スタートする(S212)。端末確認パケット応答待ちの時間は、監視タイマが満了するまでである。監視タイマが満了すると(S213:Yes)、第1優先サーバは、第2優先サーバからの応答パケットを受信しているか判定する(S214)、第2優先サーバからの応答パケットを受信している場合(Yes)、第1優先サーバは、ステップ218に遷移する。この処理は、第2優先サーバが正常のときの動作である。
【0060】
ステップ214で、第2優先サーバからの応答パケットを受信してない場合(No処理)は他端末から応答受信しているか判断する(S210)。他端末から応答受信していない場合(No)、第1優先サーバは、ステップ210に遷移する。
【0061】
本実施例によれば、IP電話端末にクライアント機能と呼制御サーバ機能を入れ、予め決められたルールによって定まる優先順位に従って呼制御サーバを決定する。また呼制御サーバを監視する事により、クライアントが通信中の状態に呼制御サーバが異常になっても呼の状態を失うことなく継続して通信を提供できる。この結果、サーバ装置を必要としない安価で信頼性の高いIP電話システムを提供できた。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】IP電話システムのシステム構成図である。
【図2】IP電話端末の機能ブロック図である。
【図3A】3台のIP電話端末間の初期起動シーケンス図(その1)である。
【図3B】3台のIP電話端末間の初期起動シーケンス図(その2)である。
【図4】IP電話端末間の周期処理を説明するシーケンス図である。
【図5A】優先サーバを起動した2台のIP電話端末と優先サーバ未起動の2台のIP電話端末との間のシーケンス図(その1)である。
【図5B】優先サーバを起動した2台のIP電話端末と優先サーバ未起動の2台のIP電話端末との間のシーケンス図(その2)である。
【図6】第1優先サーバを起動したIP電話端末と第2優先サーバを起動したIP電話端末との間のシーケンス図である。
【図7】優先サーバを起動した2台のIP電話端末と優先サーバ未起動の2台のIP電話端末との間のシーケンス図である。
【図8】優先サーバを起動した2台のIP電話端末と優先サーバ未起動の2台のIP電話端末との間のシーケンス図である。
【図9】IP電話端末の立上りのフローチャートである。
【図10】第2優先サーバのフローチャートである。
【図11】第1優先サーバのフローチャートである。
【符号の説明】
【0063】
100…IP電話端末、110…LANインタフェース部、111…通信制御部、112…呼制御プロトコル部、113…クライアント機能部、114…呼制御サーバ機能部、115…優先度処理部、116…他端末監視部、117…監視パケット送受信部、118…異常検出部、119…呼制御サーバ起動部、120…呼制御サーバ情報、121…主制御部、122…マンマシンインタフェース部、200…回線、500…IP電話システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼制御機能を有するIP電話端末を複数含むIP電話システムであって、
前記呼制御機能を有するIP電話端末は、自端末の呼制御機能を起動する呼制御機能起動手段と、呼制御の稼動状況を監視する稼動状況監視手段と、自端末の呼制御機能を起動するか否かを判定する呼制御機能起動判定手段とを有し、
呼制御機能を有するIP電話端末の内、所定のルールによって第一の端末と、第二の端末が選定され、
前記第一の端末は、当該IP電話システムの呼制御を実行し、
前記第二の端末は、前記第一の端末が実行している呼制御の稼動状況を監視し、前記呼制御の異常を検出した場合、前記呼制御機能起動判定手段は自端末の呼制御機能を起動すると判定し、自端末の呼制御機能を起動することを特徴とするIP電話システム。
【請求項2】
ネットワークに接続されたIP電話システムを構成するIP電話端末であって、
前記IP電話端末は、自端末の呼制御機能を起動する呼制御機能起動手段と、
呼制御の稼動状況を監視する稼動状況監視手段と、自端末の呼制御機能を起動するか否かを判定する呼制御機能起動判定手段とを有し、
前記呼制御機能起動手段を起動した第1の状態と、前記稼動状況監視手段を起動した第2の状態と、端末機能のみを起動した第3の状態のいずれか一つの状態で動作することを特徴とするIP電話端末。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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