説明

LED点灯装置

【課題】
負荷回路にアーク放電が生起したときにこれを検出するための基準を明確にして、判定を迅速かつ確実に、しかも信頼性高く行うようにしたLED点灯装置を提供する。
【解決手段】
LED点灯装置は、直流電源DCSと、複数のLEDが直列接続してなり、45V以上の負荷電圧で点灯する負荷回路LCと、負荷状態に対応する電気的量を検出する負荷状態検出手段LDと、点灯初期または前回点灯時の負荷状態に対応する電気的量を基準データとして記憶する記憶手段MRと、点灯中の負荷状態に対応する電気的量をサンプリングし、サンプリングデータを基準データてと比較し、両データ間にアーク放電の最小電圧13Vより低い所定電圧に対応する電気的量の差があったときにはアーク放電が生起したと判定する演算手段ALUと、アーク放電が生起したと判定したときに直流電源の出力を停止または安全な値まで低減する安全回路SCとを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDを安全に点灯するLED点灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のLEDを定電流電源に直列接続して点灯するLED点灯装置において、回路中の各接続部の着脱、接触不良、断線あるいはLEDのワイヤボンディングの開放のオープンモード故障などにより回路中にアーク放電が生起した場合に、定電流回路の出力電圧の上昇によりアーク放電を検出したときに直流電流を停止する制御部を設けることは既知である(特許文献1参照。)。
【0003】
電気接点対での解離時アーク特性において、銅電気接点対の場合、Holmによる最小アーク電圧Vm13V、最小アーク電流Im0.43Aに等しい結果が得られることが知られている(非特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開2009−010100号公報
【非特許文献1】社団法人 電子情報通信学会発行、「信学技報」R 2000-36、EMD 2000-89(2001-2) 第7〜12頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたLED電源装置は、負荷回路にアーク放電が生起したときにこれを検出するための基準が不明確であるために、判定を迅速かつ確実に、しかも信頼性高く行うことが困難であった。
【0006】
本発明は、負荷回路にアーク放電が発生したときにこれを検出するための基準を明確にして、判定を迅速かつ確実に、しかも信頼性高く行うようにしたLED点灯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のLED点灯装置は、直流電源と;複数のLEDが直列接続してなり、直流電源の出力端に接続して45V以上の負荷電圧で点灯する負荷回路と;負荷状態に対応する電気的量を検出する負荷状態検出手段と;点灯初期、前回点灯時または直前の負荷状態に対応する電気的量を基準データとして記憶する記憶手段と;点灯中の負荷状態に対応する電気的量をサンプリングするとともに記憶手段から基準データを読み出してサンプリングデータと比較し、両データ間にアーク放電の最小電圧13Vより低い所定電圧に対応する電気的量の差があったときにはアーク放電が生起したと判定する演算手段と;アーク放電が生起したと演算手段が判定したときに直流電源の出力を停止または安全な値まで低減する安全回路と;を具備していることを特徴としている。
【0008】
本発明は、以下の態様を許容する。
【0009】
直流電源は、定電流電源および定電圧電源などのいずれであってもよい。いずれの特性を有する直流電源であっても、それぞれ既知の回路構成を採用することができる。なお、LEDを含む負荷回路に供給する直流電流を、所望により調光信号に応じてLEDを調光点灯するなどのためにPWM制御することができる。
【0010】
負荷回路は、複数のLEDが直列接続して構成されており、直流電源の出力端に接続して45V以上の負荷電圧で点灯する。なお、45V以上の負荷電圧とは、直列接続した複数のLEDが正常状態で点灯するときにおけるその両端に現れる電圧が45V以上になることをいう。所要の光量を得るために多数のLEDを直列接続する場合、負荷電圧が応分に高くなるが、負荷電圧が45V以上になると、オープンモード故障発生時などにアーク放電が生起しやすくなる。このような場合には速やかに検出して保護動作を行う必要があり、本発明はこれに応えることができる。
【0011】
また、負荷回路は、所望により複数のLEDを直列接続した直列接続体の複数組を直流電源の出力端に負荷電流が均等化されるように分流するように構成した上で並列接続することができる。
【0012】
負荷状態検出手段は、本発明において、負荷状態が電圧で規定されるので、その電圧を直接に、またはその電圧状態に対応した電気的量を検出する手段であるが、直流電源の特性に応じた効果的な電気的な量を検出することができる。すなわち、直流電源が定電流電源である場合には、負荷電流が一定に制御されるから、負荷電圧を直接検出するか、負荷電力を検出するのがよい。
【0013】
定電圧電源の場合には、負荷電圧が一定になるから負荷電流を検出するか、負荷電力を検出するのがよい。定電力電源の場合には、負荷電力が一定になるから、負荷状態によって変化する負荷電圧または負荷電流を検出するのがよい。
【0014】
上記のいずれの電気量の検出であっても、負荷回路にアーク放電が生起した場合に、アーク放電電圧の最小電圧である13Vより低い予め定めた電圧値に対応する電気的量の変化が負荷回路に発生したときに、これを検出できるようにした検出手段である。
【0015】
記憶手段は、負荷状態検出手段が検出した点灯初期、前回点灯時または直前の負荷状態に対応する電気的量を基準データとして記憶する手段である。後述する演算手段にマイコンまたはDSP(ディジタルシグナルプロセッサ)などのディジタルデバイスを主体として構成する場合には、それらに設けられた記憶手段を利用することができる。
【0016】
なお、上記において、点灯初期とは、負荷回路のLEDを最初に点灯したときをいう。また、前回点灯時とは、次に点灯する直前の点灯時をいう。例えば、負荷回路のLEDを消灯する直前の負荷状態に対応する電気的量の最後のサンプリングデータを記憶手段に基準データとして記憶してから消灯する場合に、最後のサンプリングデータからなる基準データを前回点灯時の基準データとする。そして、その後電源を再投入してLEDを再点灯した際に新たに取得したサンプリングデータを基準データとを比較する際に、上記最後のサンプリングデータからなる基準データをその比較の対象データとする。さらに、直前とは、演算手段がサンプリングデータを基準データと比較する直前をいう。そして、当該直前に取得した点灯状態データに対応する電気的量を基準データとして記憶手段に記憶させ、その直後にサンプリングして取得したサンプリングデータとの比較演算の際に記憶手段から読み出す。したがって、点灯状態に対応する電気的量のサンプリングデータは、少なくともその取得直後の比較演算のための基準データとしてデータ取得の都度記憶手段に記憶され、直後の比較演算の際に都度読み出され、その後に新しいサンプリングデータを記憶してデータを順次更新してくように構成される。
【0017】
演算手段は、点灯中の負荷状態に対応する電気的量をサンプリングしてサンプリングデータを順次更新していくとともに、記憶手段から基準データを読み出してサンプリングデータと都度比較し、両データの電気的量の差を演算によって求める手段である。そして、両データの電気的量にアーク放電の最小電圧13Vより低い所定電圧に対応する電気的量の差があったときには、アーク放電が生起したと判定する。すなわち、アーク放電の最小電圧13Vより低い所定電圧を、アーク放電の生起を判定する基準値として演算するものである。
【0018】
アーク放電の最小電圧13Vより低い所定電圧に対応する電気的量とは、次のとおりである。直流電源が定電流電源からなる場合、負荷回路のオープンモード故障部にアーク放電が生起すると、直流電源の出力端の電圧が各LEDの順方向降下電圧Vfの合計値とアーク放電に生じる13V以上の降下電圧(アーク放電電圧)との和となり、見かけ上の負荷電圧が上記所定値以上上昇する。また、見かけ上の負荷電圧と定電流の負荷電流との積によって決まる負荷電力も増大する。したがって、13Vより低い所定電圧に対応する電気的量は、電圧においては上記所定電圧そのものであり、また電力においては13Vより低い所定電圧と定電流との積により決まる電力である。
【0019】
直流電源が定電圧電源の場合、負荷回路のオープンモード故障部にアーク放電が生起すると、直流電源の出力電圧のうち所定値以上がアーク放電電圧に振り分けられるから、各LEDに印加される電圧がその分低下する。その結果、負荷電流が定格電流より低減する。したがって、各LEDに印加される電圧が所定電圧以上低下したときに流れる電流を、定格電流から減じた電流値が13Vより低い所定電圧に対応する電気的量となる。
【0020】
基準値とサンプリング値との差が13Vより低い所定電圧に対応する電気的量のときに安全回路を動作させれば、アーク放電が消滅することが実験により確認された。なお、好ましくは上記差が10V±2V程度に対応する電気的量の範囲内であれば、LEDの特性のばらつきなどがあったとしても誤動作することなくアーク放電を消滅させることができる。
【0021】
また、演算手段は、前述のようにマイコンおよびDSP(ディジタルシグナルプロセッサ)などのディジタルデバイスを主体として構成することができる。
【0022】
安全回路は、アーク放電が発生したと演算手段が判定したときに直流電源の出力を停止または安全な値まで低減する保護手段である。安全回路が動作することにより、直流電源が上記のように制御される。
【0023】
さらに、本発明のLED点灯装置は、そのLEDを照明装置の光源として用いることができる。この場合の照明装置は、照明装置本体およびLED点灯装置を具備している。照明装置は、LEDを光源として備えていればその余の構成は自由であり、またその用途は照明目的であるのが一般的であるが、これに限定されない。照明装置本体は、照明装置からLED点灯装置を除去した残余の全ての部分をいう。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、複数のLEDが直列接続してなる負荷回路が45V以上の負荷電圧で点灯するので、負荷にオープンモード故障発生の際にアーク放電が生起しやすいが、演算手段が点灯中の負荷状態に対応する電気的量をサンプリングするとともに、予め記憶した点灯初期、前回点灯時または直前の基準データを読み出してサンプリングデータと比較し、両データにアーク放電の最小電圧13Vより低い所定電圧に対応する電気的量の差があったときにはアーク放電が生起したと判定して安全回路を動作させるので、負荷回路のLEDやコネクタなどに関連するオープンモード故障時などに生じるアーク放電の生起を迅速かつ確実に、しかも信頼性高く検出してこれを消滅させることができる。このため、オープンモード故障部がアーク放電の生起によって異常発熱して発煙、異常加熱やコネクタの溶融などの危険を回避して安全化されたLED点灯装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
【0026】
図1は、本発明のLED照明灯点灯装置を実施するための第1の形態を示す回路図である。本形態において、LED点灯装置は、直流電源DCS、負荷回路LC、負荷状態検出手段LDおよび制御手段CCを具備して構成されていて、商用交流電源ACから給電される。
【0027】
直流電源DCSは、整流回路および定電流回路などを備えている。また、所望により、調光信号に応じて負荷電流をPWM制御する回路手段などを備えることができる。整流回路は、その交流入力端が商用交流電源ACに接続したブリッジ形全波整流回路などからなり、例えば平滑化された直流電圧を出力する。定電流回路は、整流回路の直流出力を定電流化して直流電源DCSの直流出力を形成する。したがって、直流電源DCSの出力端から定電流化された直流電流を後述する負荷回路LCに供給する。
【0028】
負荷回路LCは、複数のLEDが直列接続してなる。そして、直流電源DCSの出力端にLEDが順方向に接続するように、その両端が接続している。
【0029】
負荷状態検出手段LDは、本形態においては負荷電圧検出回路からなる。負荷電圧検出回路は、抵抗器R1およびR2の直列回路を負荷回路LCに並列接続し、分圧された抵抗器R2の端子電圧をコンデンサC1で平滑化して、負荷電圧に比例する電圧を負荷状態検出信号として出力する。
【0030】
制御手段CCは、マイコンを主体として構成されていて、その一部の機能要素として記憶手段MR、演算手段ALUおよび安全回路SCを備えている。
【0031】
記憶手段MRは、LEDの点灯初期または前回点灯時における負荷回路LCの負荷状態に対応する電気的量である負荷電圧を基準データとして記憶する。
【0032】
演算手段ALUは、点灯中の負荷回路LCの負荷状態に対応する電気的量として負荷電圧を常時所定周期でサンプリングするとともに、記憶手段MRから点灯初期、前回点灯時または直前に取得して記憶された基準データを読み出して、上記サンプリングにより得たサンプリングデータと比較する。なお、サンプリング周期は、短い方がアーク放電発生の判定を早くすることができるので好ましいのはいうまでもない。
【0033】
演算手段ALUにおけるサンプリングの結果、上記両データ間にアーク放電の最小電圧13Vより低い所定電圧以上の差があったときには、演算手段ALUが、アーク放電が生起したと判定する。なお、LEDの定電流での点灯中に回路のオープンモード故障に伴ってアーク放電が生起する場合、13V以上のアーク放電による電圧降下が負荷回路LC中に発生するのに伴って、負荷電圧が上昇するから、サンプリングデータの電圧が基準データの電圧より高くなる。
【0034】
演算手段ALUがアーク放電生起を判定すると、安全回路SCを動作させる。安全回路SCは、定電流電源DCSの出力を停止させるか、または出力電流をアーク放電が消滅する程度まで低減させる。その結果、オープンモード故障に伴ってアーク放電が生起しても、以上の一連の制御動作によってアーク放電は速やかに消滅するので、安全を図ることができる。
【0035】
なお、制御手段CCは、図示を省略しているが、直流電源DCSが定電流制御のためのスイッチング素子を備えている場合、その素子に対する駆動信号を発生する機能、外部から到来する調光信号に対応して直流電源DCSの出力電流をPWM制御する機能などを備えていることが許容される。
【0036】
図2は、本発明のLED点灯装置を実施するための第2の形態を示す回路図である。なお、図1と同一部分には同一符号を付して説明は省略する。本形態は、直流電源DCSが定電圧電源からなる点で異なる。
【0037】
本形態においては、負荷回路LCにアーク放電が生起すると、13V以上のアーク放電電圧降下が発生して、直流電源DCSの出力電圧のうち、LEDに印加される電圧が低下するため、そのときに対応する負荷電流が低減する。
【0038】
そこで、負荷状態検出手段LDは、負荷回路LCに直列に挿入された抵抗器R3によって負荷電流検出を行うように構成されている。
【0039】
制御手段CCは、図1におけるのと同様に記憶手段MR、演算手段ALUおよび安全回路SCを備えている。しかし、基準データおよびサンプリングデータは、負荷電流をサンプリングして作成される。そのため、演算手段ALUは、基準データに対してサンプリングデータが13Vより低い所定電圧に対応する電流値が低減したときにアーク放電が生起したと判定する。
【0040】
図3は、本発明のLED点灯装置を実施するための第3の形態を示す回路図である。なお、図1と同一部分には同一符号を付して説明は省略する。本形態は、直流電源DCSが定電流電源からなるとともに、負荷電力の変化を検出してアーク放電の生起を判定する点で異なる。
【0041】
本形態においては、負荷状態検出手段LDが図1に示す電圧検出回路と図2に示す電流検出手段を併用して構成されている。また、負荷状態検出手段LDの検出出力である電圧および電流の検出値は、いったん演算手段ALUにおいて演算されて電力値データに変換されてから記憶手段MRに記憶させる。したがって、基準データおよびサンプリングデータは、電力値として記憶され、演算される。
【0042】
そうして、負荷回路LCにアーク放電が生起すると、サンプリングデータの電力値が基準データの電力値に対して13Vより低い所定電圧に対応する電力値だけ増大する。そのため、演算手段ALUは、上記両データ間の差によってアーク放電が生起したと判定し、安全回路SCを動作させる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明のLED点灯装置を実施するための第1の形態を示す回路図
【図2】本発明のLED点灯装置を実施するための第2の形態を示す回路図
【図3】本発明のLED点灯装置を実施するための第3の形態を示す回路図
【符号の説明】
【0044】
ALU…演算手段、CC制御手段、DCS…直流電源、LC…負荷回路、LD…負荷状態検出手段、MR…記憶手段、SC…安全回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源と;
複数のLEDが直列接続してなり、直流電源の出力端に接続して45V以上の負荷電圧で点灯する負荷回路と;
負荷状態に対応する電気的量を検出する負荷状態検出手段と;
点灯初期、前回点灯時または直前の負荷状態に対応する電気的量を基準データとして記憶する記憶手段と;
点灯中の負荷状態に対応する電気的量をサンプリングするとともに記憶手段から基準データを読み出してサンプリングデータと比較し、両データ間にアーク放電の最小電圧13Vより低い所定電圧に対応する電気的量の差があったときにはアーク放電が発生したと判定する演算手段と;
アーク放電が発生したと演算手段が判定したときに直流電源の出力を停止または安全な値まで低減する安全回路と;
を具備していることを特徴とするLED点灯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−199521(P2010−199521A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46077(P2009−46077)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】