説明

LED照明装置

【課題】複雑な切替回路を必要としない簡便な構成でありながら、良好に停電時の点灯を行うことができ、小型化が可能で、停電時の明るさ調整を簡便に行う。
【解決手段】スイッチ20をONとして通常点灯を行うと、電源回路10から駆動電流が発光回路30のLED30A〜30Tに供給され、矢印F1Aで示すように電流が流れて発光する。このとき、補助点灯回路40では、充電回路50の充電用ダイオード54が導通し、充電電流制限抵抗52によって制限された充電電流が矢印F1Bで示すように流れ、コンデンサ70が充電される。停電が生ずると、放電回路60の放電用ダイオード64が導通してコンデンサ70が放電回路60を介して放電し、矢印F1Cのように電流が流れて発光回路30のLED30Tが発光する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のLED(発光ダイオード)が直列接続された照明装置に関し、特に、主電源が停止した後も一定時間は点灯を継続する機能を有するLED照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
停電時の安全を確保するため、主電源が停止した際に、一定時間点灯動作を継続する照明装置が商品化されている。最も簡単な方法としては、停電用の電源として2次電池を使用する方法がある。また、下記特許文献1には、蛍光ランプを商用電源の電圧によって点灯する際に、充電素子(コンデンサ)を充電し、商用電源の電圧供給が停止したときに、充電素子を放電してLEDを点灯する照明器具が開示されている。
【0003】
ところで、最近は、蛍光ランプの代わりに、省エネルギー等の観点から、複数のLEDを直列接続した照明装置が提供されている。このようなLED照明装置における点灯継続の先行技術としては、下記特許文献2,3に記載されたものがある。これらのうち、特許文献2には、LED式蛍光管の点灯期間中にコンデンサに充電した電荷を放電して、前記LED式蛍光管の発光部に印加することで、LED式蛍光管の点灯状態を保持するようにしたLEDランプが開示されている。特許文献3には、複数の発光素子が直列接続された光源と、いずれか一又は複数の発光素子に並列に接続されたキャパシタとを備えており、外部からの電力供給が停止したときに、前記キャパシタから電力を供給して前記光源の点灯を一定時間持続させるようにした照明装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−139988号公報
【特許文献2】特開2011−82045号公報
【特許文献3】特開2009−170341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した先行技術では、次のような課題がある。
(1)上述した2次電池を使用する方法では、その充電回路や保護回路等が必要となり、照明装置として大型化が避けられない。また、充電・放電を繰り返すことで、2次電池が消耗し、いずれは寿命となるため、定期的に電池交換も必要である。
(2)前記特許文献1の先行技術では、充電回路と放電回路を商用電源の有無によって切り替えるため、回路切替用のスイッチや商用電源の検出回路等を設ける必要があり、照明装置が大型化してしまう。
(3)前記特許文献2の先行技術では、複数のLEDが直列接続された発光部の全体を電源停止時も点灯させるため、コンデンサとして容量の大きなものが必要となり、照明装置の大型化が避けられない。
(4)前記特許文献3の先行技術では、コンデンサに充電する電流経路とコンデンサから放電する電流経路が共通しており、充電電流制限抵抗と放電電流制限抵抗が同じとなる。このため、充電時間を短くするために抵抗値を小さくすると、放電電流が大きくなって停電後の点灯時間が短くなり、逆に、停電後の点灯時間を長くするために抵抗値を大きくすると、充電時間が長くなってしまう。また、電流が小さくなってLEDの光量が低下する。LEDは、その順方向の電圧と電流の関係から、電圧が低くなると電流が急激に減少する。このため、コンデンサ充放電回路の抵抗による電圧の低下によって、LEDの明るさが極端に低下してしまう。
【0006】
本発明は、以上のような点に着目したもので、その目的は、複雑な切替回路を必要としない簡便な構成でありながら、良好に停電時等の点灯を行うことができる小型化が可能なLED照明装置を提供することである。他の目的は、停電時等の明るさ調整を簡便に行うことができるLED照明装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のLED照明装置は、駆動用の電源手段から電圧を印加して、直列に接続された複数のLEDを有する発光手段を駆動し、LEDの発光による照明を行うLED照明装置であって、前記電源手段の停止時に、前記発光手段における複数のLEDのうちの少なくとも一つを駆動して補助的に点灯するためのコンデンサ,前記発光手段と前記コンデンサとの間に接続されており、前記電源手段による前記発光手段の駆動時に前記コンデンサを充電する充電回路,前記発光手段と前記コンデンサとの間に接続されており、前記電源手段の停止時に前記コンデンサを放電する放電回路,を備えており、前記発光手段に対する前記充電回路の接続位置の電位が、前記発光手段に対する前記放電回路の接続位置の電位よりも高くなるように、前記発光手段に対して、前記充電回路及び前記放電回路を接続したことを特徴とする。
【0008】
主要な形態の一つによれば、前記コンデンサとして、電気2重層コンデンサ又はリチウムイオンコンデンサが使用される。他の形態によれば、前記充電回路は、充電時に導通するダイオードと充電電流制限抵抗とが直列に接続されており、前記放電回路は、放電時に導通するダイオードと放電電流制限抵抗とが直列に接続されていることを特徴とする。更に他の形態によれば、前記充電回路ないし放電回路のダイオードをLEDで構成するとともに、そのLEDを、前記発光手段のLEDとともに、もしくは、前記発光手段のLEDの代わりに、補助的に点灯することを特徴とする。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、補助点灯用のコンデンサの充電回路と放電回路を個別に構成し、充電時の電位と放電時の電位が異なるように、接続位置を設定することとしたので、停電や消灯といった電源停止時に良好にLED点灯を行うことができる。また、充電回路及び放電回路を電流制限抵抗とダイオードとによって構成することで、複雑な切替回路を必要としない。充電回路と放電回路の接続位置を変更することで、補助点灯時に点灯するLEDの数を増減でき、明るさを簡単に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1を示す回路図である。(A)は全体の構成を示し、(B)は通常点灯時の様子を示し、(C)は補助点灯時の様子を示す。
【図2】本発明の実施例2を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
最初に、図1を参照しながら本発明の実施例1について説明する。同図(A)には、基本的な回路構成が示されており、電源回路10がスイッチ20を介して発光回路30及び補助点灯回路40に接続された構成となっている。
【0013】
これらのうち、電源回路10は、例えば、商用電源に対して、降圧,整流,平滑などの処理を行って、発光回路30に駆動電流を供給する回路で、公知のものをそのまま適用できる。スイッチ20は、電源回路10による発光回路30への駆動電流の供給をON・OFFするためのものである。発光回路30は、LED30A,30B,・・・30R,30S,30Tが直列に接続された構成となっている。LED30A〜30Tとしては、白色LEDが一般的であるが、他の青などのLEDを使用することを妨げるものではない。接続するLEDの個数は、必要に応じて適宜増減してよい。
【0014】
補助点灯回路40は、停電時に一定時間点灯を行うための回路で、充電回路50,放電回路60,コンデンサ70によって構成されている。充電回路50は、LED30Rのカソード側ないしLED30Sのアノード側に接続された充電電流制限抵抗52と、これにアノード側が接続された充電用ダイオード54によって構成されている。放電回路60は、LED30Sのカソード側ないしLED30Tのアノード側に接続された放電電流制限抵抗62と、これにカソード側が接続された放電用ダイオード64によって構成されている。すなわち、放電回路60は、充電回路50と比較して、発光回路30の低い電位の位置に接続されている。充電用ダイオード54のカソード側及び放電用ダイオード64のアノード側は、いずれもコンデンサ70のプラス側に接続されている。コンデンサ70のマイナス側はアースを介して電源回路10に接続されている。
【0015】
コンデンサ70としては、各種のものを用いてよいが、例えば、mF〜Fオーダの容量を持つ電気2重層コンデンサやリチウムイオンコンデンサが好適である。
【0016】
次に、本実施例の動作を説明する。通常の点灯時は、スイッチ20をONとする。すると、図1(B)に示すように、電源回路10から駆動電流が発光回路30のLED30A〜30Tに供給され、矢印F1Aで示すように電流が流れる。これにより、LED30A〜30Tが発光する。このとき、補助点灯回路40では、充電回路50の充電用ダイオード54が導通し、充電電流制限抵抗52によって制限された充電電流が矢印F1Bで示すように流れ、コンデンサ70が充電される。
【0017】
この状態で停電が生じたとすると、電源回路10からの発光回路30に対する通電が停止する。すると、充電回路50によるコンデンサ70の充電が停止されるとともに、放電回路60の放電用ダイオード64が導通するようになり、コンデンサ70が放電回路60を介して放電され、矢印F1Cで示すように電流が流れる。これにより、発光回路30のLED30Tが発光する。これにより、一定時間は、LED30Tの発光が継続されることとなる。なお、停電時のみならず、通常の消灯時も、停電時と同様の動作が行われる。すなわち、スイッチ20がOFFになると、停電時と同様に補助点灯回路40が作動して、一定時間補助点灯用のLED30Tが発光する。従って、意図的に消灯する際にも、急に真っ暗になってしまうことを防止することができる。このように、停電時のみならず消灯時も電源停止時に含まれる。
【0018】
このように、本実施例によれば、次のような効果がある。
(1)電気2重層コンデンサ又はリチウムイオンコンデンサを補助点灯用のコンデンサとして用いることとしたので、容量を大きくすることができ、長時間にわたってLEDを点灯させることができる。
(2)コンデンサの充電回路と放電回路は、コンデンサと抵抗とダイオードのみで簡便に構成されており、装置の小型化が可能となって、照明器具への内蔵も容易である。
(3)充放電の電流経路が異なっており、充電回路は放電回路よりも電位が高い位置に接続されているので、相対的に、コンデンサの充電時間を短くするとともに、放電時間を長くすることができる。
(4)充電回路と放電回路の接続位置を変更することで、補助点灯時に発光するLEDの数を増減することができ、明るさの調整が容易である。
(5)電源供給系統に対して、補助点灯を行うためのスイッチの追加などの変更を必要としない。
【実施例2】
【0019】
次に、図2を参照しながら、本発明の実施例2について説明する。なお、上述した実施例1に対応する構成要素には同一の符号を用いる。まず、図2(A)の補助点灯回路100は、前記図1に対して、充電回路50をLED30Rのカソード側に接続した例である。これによれば、充電電圧が前記実施例1よりも高くなり、充電時間がより短縮されるようになる。
【0020】
図2(B)の補助点灯回路200は、前記図1に対して、充電回路50をLED30Aのアノード側ないしLED30Bのカソード側に接続した例である。これによれば、充電電圧が前記図2(A)よりも更に高くなり、充電時間が更に短縮される。
【0021】
図2(C)の補助点灯回路300は、図2(A)の例に対して、放電回路60をLED30Rのアノード側ないしLED30Sのカソード側に接続した例である。これによれば、図2(A)と比較して、電源停止時にLED30S,30Tが点灯するようになり、点灯時の明るさが向上する。
【0022】
図2(D)の補助点灯回路400は、図2(B)の例に対して、放電回路60をLED30Rのカソード側に接続した例である。これによれば、図2(B)と比較して、電源停止時にLED30R,LED30S,30Tが点灯するようになり、点灯時の明るさが更に向上する。
【0023】
図2(E)の補助点灯回路500は、図2(A)の例に対して、充電回路50の充電用ダイオード54と放電回路60の放電用ダイオード64の両方をLEDとした例である。放電用ダイオード64のみをLEDとしてもよい。充電回路50Lは、充電電流制限抵抗52と、これにアノード側が接続された充電用LED54Lによって構成されている。放電回路60Lは、放電電流制限抵抗62と、これにカソード側が接続された放電用LED64Lによって構成されている。また、放電回路60Lは、発光回路30のLED30Tのアノード側に接続されている。本例によれば、コンデンサ70の充電時は、発光回路30のLED30A〜30Tのみならず、充電用LED54Lが一定時間点灯する。電源停止時におけるコンデンサ70の放電時は、放電用LED64Lが一定時間点灯する。
【0024】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)発光回路30を構成するLEDの個数や種類は、必要に応じて適宜選択してよい。また、補助点灯回路の充電回路及び放電回路の接続位置は、コンデンサ充電時の電位が放電時よりも高ければ、いずれの位置としてもよく、前記実施例に限定されるものではない。
(2)補助点灯時に点灯するLEDの発光色を、通常点灯時に点灯する他のLEDと異なるようにすることで、補助点灯時に通常時と異なる発光色とすることができる。例えば、図2(E)の例において、放電用LED64Lを他のLEDと異なる発色のものとすれば、補助点灯時の発光色を通常点灯時と異なるようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明によれば、補助点灯用のコンデンサの充電回路と放電回路とを個別に構成し、充電時の電位が放電時よりも高くなるようにしたので、コンデンサを短時間で充電するとともに、停電や消灯といった電源停止時は長時間放電して補助点灯を行うことができ、照明器具一般に適用可能である。
【符号の説明】
【0026】
10:電源回路
20:スイッチ
30:発光回路
30A〜30T:LED
40:補助点灯回路
50,50L:充電回路
52:充電電流制限抵抗
54:充電用ダイオード
54L:充電用LED
60,60L:放電回路
62:放電電流制限抵抗
64:放電用ダイオード
64L:放電用LED
70:コンデンサ
100,200,300,400,500:補助点灯回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動用の電源手段から電圧を印加して、直列に接続された複数のLEDを有する発光手段を駆動し、LEDの発光による照明を行うLED照明装置であって、
前記電源手段の停止時に、前記発光手段における複数のLEDのうちの少なくとも一つを駆動して補助的に点灯するためのコンデンサ,
前記発光手段と前記コンデンサとの間に接続されており、前記電源手段による前記発光手段の駆動時に前記コンデンサを充電する充電回路,
前記発光手段と前記コンデンサとの間に接続されており、前記電源手段の停止時に前記コンデンサを放電する放電回路,
を備えており、
前記発光手段に対する前記充電回路の接続位置の電位が、前記発光手段に対する前記放電回路の接続位置の電位よりも高くなるように、前記発光手段に対して、前記充電回路及び前記放電回路を接続したことを特徴とするLED照明装置。
【請求項2】
前記コンデンサとして、電気2重層コンデンサ又はリチウムイオンコンデンサを使用したことを特徴とする請求項1記載のLED照明装置。
【請求項3】
前記充電回路は、充電時に導通するダイオードと充電電流制限抵抗とが直列に接続されており、前記放電回路は、放電時に導通するダイオードと放電電流制限抵抗とが直列に接続されていることを特徴とする請求項1又は2記載のLED照明装置。
【請求項4】
請求項3記載の充電回路ないし放電回路のダイオードをLEDで構成するとともに、そのLEDを、前記発光手段のLEDとともに、もしくは、前記発光手段のLEDの代わりに、補助的に点灯することを特徴とするLED照明装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−97899(P2013−97899A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237252(P2011−237252)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】