説明

NK1受容体拮抗作用を有する化合物の製造方法及びその製造中間体

本発明は、タキキニン受容体に対して優れた拮抗作用、特にNK1受容体拮抗作用を有する化合物を工業的に生産するための2−(4−アセチルピペラジン−1−イル)−6−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルメチル]−4−(2−メチルフェニル)−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ピリミド[4,5−b][1,5]オキサゾシン−5−オン(化合物I)の製造方法であって、4−(2−メチルフェニル)−2−メチルチオ−6−オキソ−1,6−ジヒドロ−5−ピリミジンカルボン酸(7)を中間体として、これにクロル化剤を作用させた後、3−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンジルアミノ]−1−プロパノールと反応、続いて塩基を作用させて環化させ、次いでこれを酸化した後、N−アセチルピペラジンと反応することを特徴とする化合物Iの製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タキキニン受容体に対して優れた拮抗作用、特にNK1受容体拮抗作用を有する2−(4−アセチルピペラジン−1−イル)−6−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルメチル]−4−(2−メチルフェニル)−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ピリミド[4,5−b][1,5]オキサゾシン−5−オン(以下、「化合物I」と略す)の製造方法及びその新規な製造中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
【化1】

【0003】
上記化合物Iはタキキニン受容体に対して優れた拮抗作用、特にNK1受容体拮抗作用を有する縮合二環式ピリミジン誘導体であり、タキキニン受容体が関与する種々の病態(頻尿、尿失禁、嘔吐、炎症、アレルギー、気道疾患、痛み、中枢神経系疾患等)の治療等の医薬用途に有用であることが知られている(特許文献1の実施例16の化合物)。また化合物Iの製造方法についても、特許文献1の国際公開パンフレット中に具体的に記載されている。しかしながら特許文献1に示された製造方法は工業的規模で実施することが難しく、製造の操作性、精製効率及び収率等について更なる改善工夫を行い、実生産に適合する製造法を見出す必要があった。
【特許文献1】WO03/062245パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
医薬品として高品質の化合物Iを工業的に生産していくためには、実生産レベルに適う製造工程の操作性や収率の改善、純度の向上或いは有害な溶剤等の削減と言った課題を解決する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究を重ねた結果、新規化合物4−(2−メチルフェニル)−2−メチルチオ−6−オキソ−1,6−ジヒドロ−5−ピリミジンカルボン酸を製造中間体に用いることにより化合物Iが簡便な操作で、収率良く製造できることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0006】
すなわち、本発明は、
1) 4−(2−メチルフェニル)−2−メチルチオ−6−オキソ−1,6−ジヒドロ−5−ピリミジンカルボン酸にクロル化剤を作用させた後、3−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンジルアミノ]−1−プロパノールと反応、続いて塩基を用いて閉環させ、次いでこれを酸化、N−アセチルピペラジンと反応することを特徴とする2−(4−アセチルピペラジン−1−イル)−6−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルメチル]−4−(2−メチルフェニル)−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ピリミド[4,5−b][1,5]オキサゾシン−5−オン又はその水和物の製造方法、
2) 4−(2−メチルフェニル)−2−メチルチオ−6−オキソ−1,6−ジヒドロ−5−ピリミジンカルボン酸又はその水和物からなる2−(4−アセチルピペラジン−1−イル)−6−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルメチル]−4−(2−メチルフェニル)−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ピリミド[4,5−b][1,5]オキサゾシン−5−オン又はその水和物の製造中間体、
3) 2−(2−メチルベンジリデン)マロン酸ジエチルエステルと過剰量の2−メチル−2−チオプソイド尿素硫酸塩を溶媒中、塩基の存在下に反応させ、4−(2−メチルフェニル)−2−メチルチオ−6−オキソ−1,4,5,6−テトラヒドロ−5−ピリミジンカルボン酸エチルエステルとし、次いでこの化合物を脱水素化し4−(2−メチルフェニル)−2−メチルチオ−6−オキソ−1,6−ジヒドロ−5−ピリミジンカルボン酸エチルエステルとした後、この化合物を加水分解することを特徴とする4−(2−メチルフェニル)−2−メチルチオ−6−オキソ−1,6−ジヒドロ−5−ピリミジンカルボン酸またはその水和物の製造方法、に関するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の原料化合物4−(2−メチルフェニル)−2−メチルチオ−6−オキソ−1,6−ジヒドロ−5−ピリミジンカルボン酸又はその水和物は具体的開示の無い新規化合物であり、かつその有用性についても知られていなかった。この4−(2−メチルフェニル)−2−メチルチオ−6−オキソ−1,6−ジヒドロ−5−ピリミジンカルボン酸を製造中間体として用いることにより、不純物が少なく、収率が向上し、その後の精製も簡便になることを見出し、化合物Iの工業的製造方法を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は4−(2−メチルフェニル)−2−メチルチオ−6−オキソ−1,6−ジヒドロ−5−ピリミジンカルボン酸にオキシ塩化リン、塩化チオニル等のクロル化剤を作用させ4−クロロ−6−(2−メチルフェニル)−2−メチルチオ−5−ピリミジンカルボン酸クロリドとした後、3−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンジルアミノ]−1−プロパノールと反応、続いて塩基を用いて閉環させ、6−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルメチル]−4−(2−メチルフェニル)−2−メチルチオ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ピリミド[4,5−b][1,5]オキサゾシン−5−オンとし、次いでこれを酸化、6−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルメチル]−4−(2−メチルフェニル)−2−メチルスルホニル−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ピリミド[4,5−b][1,5]オキサゾシン−5−オンとした後、N−アセチルピペラジンと反応することを特徴とする化合物Iの工業的スケールの製造方法である(下記スキームを参照)。
【0009】
【化2】

【0010】
本発明の新規な原料化合物である4−(2−メチルフェニル)−2−メチルチオ−6−オキソ−1,6−ジヒドロ−5−ピリミジンカルボン酸(7)又はその水和物は次のようにして得られる。
【0011】
すなわち、o−トルアルデヒド(3)とマロン酸ジエチルエステルとの縮合で得られる2−(2−メチルベンジリデン)マロン酸ジエチルエステル(4)と過剰量の2−メチル−2−チオプソイド尿素硫酸塩をエタノール、2−プロパノール、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシドなどの有機溶媒及びその含水溶媒中、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の塩基の存在下、40℃から80℃に加温し1から8時間撹拌後、反応混合物を冷却水に22℃以下で滴下撹拌、析出結晶を濾過乾燥、次いで2−プロパノール−水にて再結晶することにより4−(2−メチルフェニル)−2−メチルチオ−6−オキソ−1,4,5,6−テトラヒドロ−5−ピリミジンカルボン酸エチルエステル(5)を得る。これを酢酸エチル、ジメチルスルホキシドなどの有機溶媒中、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(DDQ)等の酸化剤存在下、室温から50℃にて反応後、処理し得られる粗結晶をエタノール−水により再結晶することにより4−(2−メチルフェニル)−2−メチルチオ−6−オキソ−1,6−ジヒドロ−5−ピリミジンカルボン酸エチルエステル(6)を得る。更にこれを水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ水溶液で加水分解した後、2−プロパノールで再結晶又は熱時懸濁洗浄することにより4−(2−メチルフェニル)−2−メチルチオ−6−オキソ−1,6−ジヒドロ−5−ピリミジンカルボン酸(7)またはその水和物を得ることができる。
【0012】
次いで、4−(2−メチルフェニル)−2−メチルチオ−6−オキソ−1,6−ジヒドロ−5−ピリミジンカルボン酸(7)にクロル化剤、好ましくはオキシ塩化リンもしくは酢酸エチル等の有機溶媒中N,N−ジメチルホルムアミド存在下の塩化チオニルを加え加熱撹拌(70℃〜90℃、1〜3時間)、有機溶媒未使用の場合冷却後氷水中に投入後濾過、使用の場合アルカリ水溶液(例えば炭酸水素ナトリウム水溶液)で洗浄し、それぞれ4−クロロ−6−(2−メチルフェニル)−2−メチルチオ−5−ピリミジンカルボン酸クロリドを固体又は有機溶媒溶液として得る。これに3−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンジルアミノ]−1−プロパノール(2)を酢酸エチル等の有機溶媒中、トリエチルアミン等の塩基存在下、0〜10℃で反応させた後、反応液を水、酸及びアルカリ水溶液で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒留去することによりN−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルメチル]−N−(3−ヒドロキシプロピル)−4−クロロ−6−(2−メチルフェニル)−2−メチルチオ−5−ピリミジンカルボキサミドを得る。この油状物又は結晶をジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、トルエン等の有機溶媒中、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン(DBU)、t−ブトキシカリウム等の塩基の存在下、反応温度50〜80℃、反応時間1〜3時間で反応を行い、6−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルメチル]−4−(2−メチルフェニル)−2−メチルチオ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ピリミド[4,5−b][1,5]オキサゾシン−5−オン(8)を得る。次いでこれをモノペルオキシフタル酸マグネシウム・6水和物(MMPP)、メタクロロ過安息香酸(m−CPBA)、過酸化水素(タングステン等の触媒存在下)などの酸化剤を用いて酸化を行い、6−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルメチル]−4−(2−メチルフェニル)−2−メチルスルホニル−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ピリミド[4,5−b][1,5]オキサゾシン−5−オン(9)とした後、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の有機溶媒中、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン等の塩基の存在下、40〜60℃、3〜8時間、N−アセチルピペラジンと反応することにより、簡便な操作で収率良く、かつ高純度の化合物Iの原薬を得ることができる。本発明により化合物Iの優れた工業的生産方法が提供されたものである。
【実施例】
【0013】
次に本発明を具体例によって説明するが、これらの例によって本発明が限定されるものではない。
【0014】
<参考例1>3−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンジルアミノ]−1−プロパノール(2)
2−プロパノール4.94Lに3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンズアルデヒド(1)1.65kg(6.80mol)と3−アミノ−1−プロパノール0.77kg(10.2mol)を投入し、内温32〜40℃で3時間撹拌した。反応液に水素化ホウ素ナトリウム0.28kg(7.48mol)を加え、内温50〜55℃で3時間撹拌した。反応液に熱時水11.5Lを加えた後、氷水冷却して内温15℃とし、内温30℃以下で4mol/L塩酸4.75Lを加えpH=1とした後、0.5時間撹拌し、室温で一夜放置した。混合物に内温25〜28℃で4mol/L水酸化ナトリウム溶液4.74Lを加えpH=12とした後、氷水冷却し内温16℃で結晶種を加え結晶晶析後、水4.94Lを加え、内温4〜10℃で1時間撹拌した。析出した結晶をろ取し、5%2−プロパノール水13.6Lで洗浄した後、2時間通気乾燥した。得られた湿潤粗結晶(2.56kg)を水13.6Lに懸濁し、水冷下、内温24〜27℃で塩酸0.56Lを加えpH=1.5とした後、酢酸エチル(5.44L、2.72L×2)で3回、n−ヘキサン(2.72L)で一回洗浄した。水層を減圧濃縮して残存する有機溶媒を除去した後、内温25〜28℃で4mol/L水酸化ナトリウム溶液1.60Lを加え、10分間撹拌して結晶晶析させた後、4mol/L水酸化ナトリウム溶液0.40Lを加えpH=12とし、氷水冷却して内温12〜15℃で1時間撹拌した。析出た結晶をろ取し、水11.5Lで洗浄した後、2時間通気乾燥した。続いて40℃で13時間、48℃で10時間送風乾燥し、白色粉末の(2)を1.73kg(収率85%)得た。
EI−MSm/z:227(base peak),301(M)
H−NMR(400MHz,CDCl)δ:1.77(2H,quint,J=5.4Hz),2.89(2H,t,J=5.9Hz),3.82(2H,t,J=5.4Hz),3.93(2H,s),7.28(3H,s).
【0015】
<参考例2> 2−(2−メチルベンジリデン)マロン酸ジエチルエステル(4)
トルエン4.50Lにo−トルアルデヒド(3)0.90kg(7.49mol)、マロン酸ジエチルエステル1.20kg(7.49mol)とピペリジン0.19kg(2.25mol)を加え溶解し、ディーンスターク管を付け、共沸脱水しながら6時間加熱還流した(0.5時間と1時間後にピペリジン0.06kg(0.75mol)を追加した)。反応液を減圧濃縮後、得られた残留物を減圧蒸留し、淡黄色油状の(4)を1.67kg(147〜160℃/267〜333Pa、収率85%)得た。
EI−MSm/z:217(base peak),262(M)
H−NMR(400MHz,CDCl)δ:1.17(3H,t,J=7.3Hz),1.34(3H,t,J=7.3Hz),2.38(3H,s),4.22(2H,q,J=7.3Hz),4.32(2H,q,J=7.3Hz),7.15(1H,t,J=7.8Hz),7.21(1H,d,J=6.8Hz),7.25−7.29(1H,m),7.33(1H,d,J=7.8Hz),7.97(1H,s).
実施例1
【0016】
4−(2−メチルフェニル)−2−メチルチオ−6−オキソ−1,4,5,6−テトラヒドロ−5−ピリミジンカルボン酸エチルエステル(5)
ジメチルスルホキシド12.7Lに化合物(4)1.67kg(6.35mol)、2−メチル−2−チオプソイド尿素硫酸塩3.54kg(12.7mol)と炭酸水素カリウム2.54kg(25.4mol)を投入し、内温50〜55℃で4時間撹拌した。反応液を20℃まで水冷した後、5℃に冷却した水63.5Lに内温22℃以下で徐々に滴下した後、内温5〜11℃で1時間撹拌した。析出した結晶をろ取し、水4.99Lで洗浄した後、0.5時間通気乾燥した。2−プロパノール9.32Lに得られた湿潤粗結晶(4.10kg)を加えた後、加熱溶解し(73℃で完溶)、水2.34Lを加えた後、内温30℃まで水冷し、続いて内温10℃まで氷水冷却した後、内温8〜10℃で0.5時間撹拌した。析出した結晶をろ取し、氷水冷却した80%2−プロパノール水3.33Lで洗浄した後、0.5時間通気乾燥した。湿潤晶(1.99kg)を60℃で7時間送風乾燥し、白色粉末の(5)を1.62kg(収率83%)得た。
EI−MSm/z:233(base peak),306(M)
H−NMR(400MHz,CDCl)δ:1.15(3H,t,J=7.3Hz),2.42(3H,s),2.44(3H,s),3.66(1H,d,J=8.3Hz),4.15(2H,q,J=7.3Hz),5.44(1H,d,J=8.3Hz),7.07−7.10(1H,m),7.16−7.20(3H,m),8.00(1H,s).
実施例2
【0017】
4−(2−メチルフェニル)−2−メチルチオ−6−オキソ−1,6−ジヒドロ−5−ピリミジンカルボン酸エチルエステル(6)
酢酸エチル8.08Lに化合物(5)1.62kg(5.27mol)を投入し、この懸濁溶液に2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン1.32kg(DDQ、5.80mol)を加え、室温で2.5時間撹拌した(43℃まで発熱した)。反応液を内温25℃まで水冷し、析出固体をろ別した後、固体を酢酸エチル1.62Lで洗浄した。ろ液と洗液を合わせた後、炭酸水素ナトリウム水溶液8.08L(炭酸水素ナトリウム0.23kgを水に溶解し、8.08Lとした)で洗浄した。水層を酢酸エチル2.02Lで抽出し、先の有機層と合わせ、水2.53Lで2回洗浄した後、減圧濃縮した。得られた粗結晶にエタノール4.22Lを加え加熱溶解し(63℃で完溶)、水4.22Lを加えた後、40℃まで放冷し、続いて30℃まで水冷した後、氷水冷却し、内温6〜10℃で1時間撹拌した。析出した結晶をろ取し、氷水冷却した30%エタノール水4.85Lで洗浄した後、0.5時間通気乾燥した。
湿潤晶(1.85kg)を60℃で17時間送風乾燥し、淡褐色粉末の(6)を1.44kg(収率90%)得た。
EI−MSm/z:231(base peak),304(M)
H−NMR(400MHz,CDCl)δ:0.84(3H,t,J=7.1Hz),2.24(3H,s),2.58(3H,s),4.02(2H,q,J=7.1Hz),7.13−7.15(1H,m),7.18−7.24(2H,m),7.28−7.33(1H,m),12.43(1H,br).
実施例3
【0018】
4−(2−メチルフェニル)−2−メチルチオ−6−オキソ−1,6−ジヒドロ−5−ピリミジンカルボン酸(7)
1mol/L水酸化ナトリウム溶液18.9Lに化合物(6)1.44kg(4.71mol)を投入し溶解した後、内温80〜85℃で2時間撹拌した。反応液を内温30℃まで水冷し、その後氷水冷却して内温7℃とした。反応液に内温5〜15℃で2mol/L塩酸7.82Lを加えpH=4とした後20分間撹拌し、続いて2mol/L塩酸5.30Lを加えpH=2とした後、内温7〜10℃で1時間撹拌した。析出した結晶をろ取し、水5.74Lで洗浄した後、0.5時間通気乾燥した。2−プロパノール10.0Lに得られた湿潤粗結晶(1.91kg)を投入し、この懸濁溶液を1時間加熱還流した。混合物を30℃まで水冷し、その後氷水冷冷却して、内温6〜10℃で1時間撹拌した。結晶をろ取し、2−プロパノール2.87Lで洗浄した後、0.5時間通気乾燥した。湿潤晶(1.61kg)を60℃で8時間送風乾燥し、淡褐白色粉末の(7)を1.26kg(収率97%)得た。
EI−MSm/z:231(base peak),276(M)
H−NMR(400MHz,DMSO−d)δ:2.22(3H,s),2.49(3H,s),7.19−7.35(4H,m),13.35(1H,br).
実施例4
【0019】
6−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルメチル]−4−(2−メチルフェニル)−2−メチルチオ−6,7,8,9,−テトラヒドロ−5H−ピリミド[4,5−b][1,5]オキサゾシン−5−オン(8)
化合物(7)1.26kg(4.55mol)にオキシ塩化リン2.80kg(18.3mol)を加え、内温75〜80℃で1時間撹拌した。反応液を内温24℃まで水冷した後、氷水8.81Lに内温18℃以下で加え、その後18〜24℃で0.5時間撹拌した。析出した結晶をろ取し、水2.52Lで洗浄した後、0.5時間通気乾燥して白色粉末の4−クロロ−6−(2−メチルフェニル)−2−メチルチオ−5−ピリミジンカルボン酸クロリドを2.34kg(湿潤粗結晶)得た。この粗結晶を酢酸エチル22.7Lに溶解した後、水5.03L×2、10%炭酸水素ナトリウム水溶液3.77L及び28%食塩水2.52Lで順次洗浄した。この溶液を3−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンジルアミノ]−1−プロパノール(2)1.65kg(5.46mol)及びトリエチルアミン0.92kg(9.11mol)の酢酸エチル2.52L溶液に内温10℃以下で滴下し、その後内温4〜10℃で0.5時間撹拌した。反応液を水3.77L、0.5mol/L塩酸3.77L、10%炭酸水素ナトリウム水溶液3.77L及び28%食塩水2.52Lで順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮し、黄色油状のN−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルメチル]−N−(3−ヒドロキシプロピル)−4−クロロ−6−(2−メチルフェニル)−2−メチルチオ−5−ピリミジンカルボキサミドを2.84kg得た。この油状物をジメチルスルホキシド8.81Lに溶解し、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン0.83kg(DBU、5.46mol)を加えた後、内温55〜60℃で1時間撹拌し、一夜放置した。反応液を10℃以下に冷却した水17.6Lに内温19℃以下で注加した後、氷水冷却し、内温10℃以下で0.5時間撹拌した。析出した結晶をろ取し、水6.29Lで洗浄した後、1時間通気乾燥し、湿潤粗結晶(7.89kg)得た。この湿潤粗結晶を2−プロパノール12.6Lに加え、60℃に加熱して溶解した後、水2.52Lを加え空冷し(内温52℃で結晶晶析した)、続いて内温50℃で水冷した後、内温19〜25℃で1時間撹拌した。析出した結晶をろ取し、50%2−プロパノール水3.77Lで洗浄した後、0.5時間通気乾燥し、湿潤黄色結晶(2.22kg)得た。この湿潤結晶を2−プロパノール9.46Lに加え、60℃に加熱して溶解した後、水3.77Lを加え空冷し、続いて内温50℃で水冷し、内温20〜25℃で1時間撹拌した。析出した結晶をろ取し、50%2−プロパノール水3.77Lで洗浄した後、0.5時間通気乾燥し、湿潤黄色結晶(1.88kg)を得た。この湿潤結晶を2−プロパノール5.66Lに加え、60℃に加熱して溶解した後、水1.89Lを加え空冷し、続いて内温50℃で水冷し、内温22〜25℃で1時間撹拌した。析出した結晶をろ取し、50%2−プロパノール水2.83Lで洗浄した後、0.5時間通気乾燥し、続いて60℃で19時間送風乾燥して黄色粉末の(8)を1.33kg(収率54%)得た。
EI−MSm/z:259(base peak),541(M)
H−NMR(400MHz,CDCl)δ:1.96−2.06(1H,m),2.15−2.21(1H,m),2.24(3H,s),2.56(3H,s),3.31−3.36(1H,m),3.72−3.80(1H,m),3.87(1H,d,J=14.6Hz),4.37−4.48(2H,m),5.31(1H,d,J=15.1Hz),6.92(1H,d,J=7.3Hz),7.02−7.06(1H,m),7.21−7.25(2H,m),7.56(2H,s),7.82(1H,s).
一部単離精製した中間体2化合物の機器データを記す。
・4−クロロ−6−(2−メチルフェニル)−2−メチルチオ−5−ピリミジンカルボン酸クロリド
FABm/z:313[M+H]
H−NMR(400MHz,CDCl)δ:2.30(3H,s),2.61(3H,s),7.19(1H,d,J=1.5Hz),7.25−7.36(2H,m),7.41(1H,td,J=1.5,7.6Hz).
・N−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルメチル]−N−(3−ヒドロキシプロピル)−4−クロロ−6−(2−メチルフェニル)−2−メチルチオ−5−ピリミジンカルボキサミド
FABm/z:578[M+H]
H−NMR(400MHz,CDCl)δ:1.22(1H,t,J=4.2Hz),1.44−1.48(1H,m),1.60−1.67(1H,m),2.29(3H,s),2.59(3H,s),2.88−3.18(1H,m),3.20−3.26(1H,m),3.51(2H,q,J=5.6Hz),4.48(1H,d,J=15.1Hz),4.78(1H,d,J=15.1Hz),7.04(1H,t,J=7.6Hz),7.19−7.31(3H,m),7.59(2H,s),7.77(1H,s).
実施例5
【0020】
6−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルメチル]−4−(2−メチルフェニル)−2−メチルスルホニル−6,7,8,9,−テトラヒドロ−5H−ピリミド[4,5−b][1,5]オキサゾシン−5−オン(9)
アセトニトリル/エタノール(2:1)混液7.98Lに化合物(8)1.33kg(2.46mol)を加え溶解し、水冷する。この溶液にモノペルオキシフタル酸マグネシウム・6水和物1.82kg(MMPP、3.68mol)を内温21〜28℃で加えた後、18〜27℃で15.5時間撹拌した(8.5時間後にアセトニトリル/エタノール(2:1)混液3.99Lを、10.5時間後にMMPP91.1g(0.18mol)を追加した)。反応液に水16.0Lを加え、内温13〜15℃で1時間撹拌した後、析出した結晶をろ取し、水3.99Lで洗浄した後、0.5時間通気乾燥した。得られた湿潤粗結晶(3.31kg)に酢酸エチル7.98Lを加え、加熱溶解した後(68℃)、2−プロパノール23.9Lと水6.65Lを加え、水冷し、内温23〜25℃で1時間撹拌した。析出した結晶をろ取し、50%2−プロパノール水3.33Lで洗浄した後、0.5時間通気乾燥し、続いて60℃で24時間送風乾燥して白色粉末の(9)を1.23kg(収率87%)得た。
EI−MSm/z:494(base peak),573(M)
H−NMR(400MHz,CDCl)δ:2.04−2.13(1H,m),2.23(3H,s),2.25−2.32(1H,m),3.34(3H,s),3.44(1H,dd,J=4.9,15.6Hz),3.67−3.76(1H,m),3.91(1H,d,J=14.6Hz),4.48−4.59(2H,m),5.29(1H,d,J=14.6Hz),6.68(1H,d,J=7.3Hz),7.00−7.04(1H,m),7.24−7.31(2H,m),7.57(2H,s),7.84(1H,s).
実施例6
【0021】
2−(4−アセチルピペラジン−1−イル)−6−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルメチル]−4−(2−メチルフェニル)−6,7,8,9,−テトラヒドロ−5H−ピリミド[4,5−b][1,5]オキサゾシン−5−オン(化合物I)
ジメチルスルホキシド6.12Lに化合物(9)1.22kg(2.14mol)、N−アセチルピペラジン0.38kg(2.99mol)及びトリエチルアミン0.32kg(3.20mol)を投入し、内温50〜55℃で3.5時間撹拌した。反応液を水冷して内温25℃まで冷却した後、氷水18.4Lに内温3〜18℃で注加し、その後内温17〜18℃で0.5時間撹拌した。析出した結晶をろ取し、水2.45Lで洗浄した後、0.5時間通気乾燥した。得られた湿潤粗結晶(3.74kg)に酢酸エチル12.2Lを加え溶解し、10%食塩水3.06Lで洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。得られた淡黄色油状物(1.48kg)に酢酸エチル2.45Lを加え、加熱溶解した後(52℃)、内温35℃まで水冷し、内温28〜35℃でn−ヘキサン4.90Lを加えた後、水冷し、内温18〜25℃で1時間撹拌した。析出した結晶をろ取し、n−ヘキサン/酢酸エチル(4:1)混液3.06Lで洗浄した後、60℃で17時間送風乾燥し、白色固体を0.91kg得た。この固体にアセトン2.72Lを加え、加熱溶解した後、ろ過し、ろ過器をアセトン0.91Lで洗浄した。ろ液と洗液を合わせ、内温40℃に加熱した後、水3.20Lを加え、35〜40℃で0.5時間撹拌する(結晶晶析)。更に水4.04Lを加えた後、水冷し、内温23〜25℃で1時間撹拌した。析出した結晶をろ取し、20%アセトン水2.26Lで洗浄した後、60℃で25時間送風乾燥、続いて65℃で9.5時間減圧乾燥して白色粉末の(10)を0.91kg(収率64%)得た。
mp.:186〜187℃(熱板法)
IR(KBr)cm−1:1631,1565,1286.
Anal.Calcd C3029
C,57.97;H,4.70;N,11.27.
Found:C,57.87;H,4.60;N,11.39.
FABm/z:622[M+H]
H−NMR(400MHz,CDCl)δ:1.94−2.02(1H,m),2.13−2.19(1H,m),2.13(3H,s),2.25(3H,s),3.30(1H,dd,J=4.9,15.1Hz),3.50(2H,t,J=4.9Hz),3.62−3.68(2H,m),3.71−3.93(6H,m),4.32−4.42(2H,m),5.32(1H,d,J=15.1Hz),6.95(1H,d,J=7.3Hz),7.04−7.08(1H,m),7.21−7.25(2H,m),7.57(2H,s),7.81(1H,s).
HPLC相対純度:99.7%
カラム:(商品名:Inertsil ODS−3、ジーエルサイエンス(株)製、4.6φ×250mm)、
プレカラム:(商品名:Inertsil ODS−3、ジーエルサイエンス(株)製、4.0φ×10mm)、
測定波長:210nm、
流速:1.0mL/min、
カラム温度:30℃、
移動相:アセトニトリル/リン酸水溶液(1→1000)=60:40、
注入量:10μg.
【0022】
〈参考例3〉 3−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンジルアミノ]−1−プロパノール(2)
3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンズアルデヒド(1)242g(1.00mol)を2−プロパノール726mLに溶解し、撹拌しながら3−アミノ−1−プロパノール90.1g(1.20mol)を加え、内温26〜35℃で1時間撹拌した。混合物に水素化ホウ素ナトリウム37.8g(1.00mol)を加え、45〜53℃で5時間撹拌した。反応液に精製水1.70Lを加えた後、内温30℃まで冷却し、内温26〜30℃で4mol/L塩酸660mLを加えpH1.2に調整した後、室温で0.5時間撹拌し、一晩放置した。混合物に内温23〜28℃で4mol/L水酸化ナトリウム水溶液675mLを加えてpH12.0に調整し、内温16℃まで冷却した後、結晶種を加え晶析させた後、精製水726mLを加え、内温4〜10℃で1時間撹拌した。析出した結晶をろ取し、5%2−プロパノール水溶液726mLで洗浄し、1時間通気乾燥して湿潤結晶338gを得た。この湿潤結晶に2−プロパノール605mL及び精製水1.82Lを懸濁し、撹拌しながら濃塩酸L60mLを加え溶解し、pH1.2に調整した。混合物に内温20〜26℃で4mol/L水酸化ナトリウム水溶液550mLを加えpH12.0に調整し、冷却し内温16℃で結晶種を加え、内温10〜16℃で撹拌した。結晶晶析後内温6〜10℃で1時間撹拌し、析出した結晶をろ取した後、5%2−プロパノール水溶液726mLで洗浄し、1時間通気乾燥して湿潤結晶334gを得た。この湿潤結晶を2−プロパノール605mL及び精製水1.82Lに懸濁し、撹拌しながら濃塩酸85mLを加えて溶解し、pH1.2に調整した。混合物に内温20〜24℃で4mol/L水酸化ナトリウム水溶液300mLを加えてpH12.0に調整した後、冷却して内温12〜24℃で撹拌し、結晶晶析後、冷却して内温6〜10℃で1時間撹拌した。析出した結晶をろ取し、5%2−プロパノール水溶液726mLで洗浄した後、1時間通気乾燥して湿潤結晶340gを得た。この湿潤結晶を4日間風乾後、38℃で7時間送風乾燥し、48℃で17時間送風乾燥し、白色粉末の(2)を266g(収率88%)を得た。
mp(熱板法):60〜61℃
EI−MS m/z:301(M),256(base peak).
H−NMR(CDCl,400MHz)δ:1.77(2H,quint,5.9Hz),2.89(2H,t,J=5.9Hz),3.82(2H,t,J=5.6Hz),3.93(2H,s),7.78(3H,s).
実施例7
【0023】
4−(2−メチルフェニル)−2−メチルチオ−6−オキソ−1,4,5,6−テトラヒドロ−5−ピリミジンカルボン酸エチルエステル(5)
o−トルアルデヒド120g(1.00mol)、マロン酸ジエチルエステル160g(1.00mol)及びピペリジン8.52g(100mmol)をトルエン600mLに溶解し、酢酸6.01g(100mmol)を加え、ディーンスターク管を付け共沸脱水しながら5時間加熱還流した。内温30℃まで冷却した後、反応液を減圧濃縮した。濃縮残渣を90%ジメチルスルホキシド水溶液961mLに溶解した後、2−メチル−2−チオプソイド尿素硫酸塩139g(500mmol)及び炭酸ナトリウム53.0g(500mmol)を加え、内温50〜55℃で6時間撹拌した。反応液を内温30℃まで冷却し、精製水4.22Lに加えた後、内温6〜10℃で1時間撹拌した。析出した結晶をろ取し、精製水360mLで洗浄した後、0.5時間通気乾燥し、湿潤結晶369gを得た。この湿潤結晶を2−プロパノール960mLに加熱溶解後(内温59℃で溶解)、精製水240mLを加えた。内温10℃まで冷却した後(内温42℃で晶析開始)、内温8〜10℃で0.5時間撹拌した。析出した結晶をろ取し、水冷した80%2−プロパノール水溶液360mLで洗浄し、0.5時間通気乾燥して湿潤結晶333gを得た。この湿潤結晶を60℃で17時間送風乾燥し白色粉末の(5)を224g(収率73%)を得た。
mp(熱板法):134〜135℃
EI−MS m/z:306(M),233(base peak).
H−NMR(CDCl,400MHz)δ:1.15(3H,t,J=7.3Hz),2.43(3H,s),2.44(3H,s),3.66(1H,d,J=8.3Hz),4.15(2H,q,J=7.3Hz),5.44(1H,d,J=8.3Hz),7.07−7.10(1H,m),7.16−7.22(3H,m),7.83(1H,br).
実施例8
【0024】
4−(2−メチルフェニル)−2−メチルチオ−6−オキソ−1,6−ジヒドロ−5−ピリミジンカルボン酸エチルエステル(6)
ジメチルスルホキシド669mLに化合物(5)223g(728mmol)を溶解し、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン33.0g(146mmol)及び無水酢酸149g(1.46mol)を加え、内温50℃〜60℃で2時間撹拌した。炭酸水素ナトリウム275g(3.28mol)を精製水3.35Lに溶解した溶液に、反応液に加え、内温21〜25℃で0.5時間撹拌した。析出した結晶をろ取し、結晶を精製水669mLで洗浄した後、0.5時間通気乾燥して湿潤結晶296gを得た。この湿潤結晶をエタノール558mLに熱時溶解し(内温45℃で溶解)、内温50〜55℃で精製水558mLを加えた後、冷却して(49℃で晶析開始)内温6〜10℃で1時間撹拌した。析出した結晶をろ取し、30%エタノール水溶液669mLで洗浄した後、0.5時間通気乾燥して湿潤結晶240gを得た。この湿潤結晶を60℃で20時間送風乾燥し、褐色粉末の(6)を166g(収率75%)を得た。
mp(熱板法):131〜135℃
EI−MS m/z:304(M),231(base peak).
H−NMR(CDCl,400MHz)δ:0.83(3H,t,J=7.1Hz),2.23(3H,s),2.58(3H,s),4.02(2H,q,J=7.1Hz),7.12−7.14(1H,m),7.18−7.24(2H,m),7.30(1H,dt,J=1.2Hz,7.3Hz).
実施例9
【0025】
N−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルメチル]−N−(4−ヒドロキシプロピル)−4−クロロ−6−(2−メチルフェニル)−2−メチルチオ−5−ピリミジンカルボキサミド
化合物(7)134g(485mmol)に酢酸エチル670mLを懸濁し、N,N−ジメチルホルムアミド6.7mLを加えた。この溶液に塩化チオニル127g(1.07mol)の酢酸エチル670mL溶液を内温63〜67℃で滴下し、滴下後2時間加熱還流した。反応液を冷却し、内温20℃で精製水670mLを加え、室温で0.5時間撹拌した。有機層を分取し、精製水670mL、10%炭酸水素ナトリウム水溶液670mL及び28%食塩水268mLで順次洗浄した。この溶液を、化合物(2)146g(485mmol)及びトリエチルアミン73.6g(727mmol)の酢酸エチル670mL溶液に内温6〜15℃で滴下し、滴下後内温6〜10℃で0.5時間撹拌した。反応液を0.5mol/L塩酸670mL、10%炭酸水素ナトリウム水溶液400mL及び28%食塩水270mLで順次洗浄した後、減圧濃縮した。残渣を2−プロパノール1.34Lに加熱溶解し、内温55〜60℃で精製水2.68Lを加えた後、冷却して(53℃で晶析開始)内温8〜10℃で0.5時間撹拌した。析出した結晶をろ取し、精製水400mLで洗浄し、0.5時間通気乾燥後、湿潤結晶363gを得た。この湿潤結晶を2−プロパノール1.34Lに加熱溶解し、内温55〜60℃で精製水1.34Lを加えた後、冷却して(55℃で晶析開始)内温8〜10℃で0.5時間撹拌した。析出した結晶をろ取し、30%2−プロパノール水溶液400mLで洗浄した後、0.5時間通気乾燥して湿潤結晶307gを得た。この湿潤結晶を60℃で14時間送風乾燥し、淡褐色粉末のN−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルメチル]−N−(4−ヒドロキシプロピル)−4−クロロ−6−(2−メチルフェニル)−2−メチルチオ−5−ピリミジンカルボキサミドを247g(収率88%)を得た。
mp(熱板法):153〜157℃
FAB−MS m/z:578[M+H]
H−NMR(CDCl,400MHz)δ:1.44−1.66(2H,m),2.29(3H,s),2.59(3H,s),2.91(1H,ddd,J=4.9Hz,9.8Hz,14.6Hz),3.16−3.30(1H,m),3.52(2H,q,J=4.9Hz),4.48(1H,d,J=14.6Hz),4.78(1H,d,J=15.1Hz),7.04(1H,t,J=7.3Hz),7.19−7.30(3H,m),7.59(2H,s),7.77(1H,s).
実施例10
【0026】
6−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルメチル]−4−(2−メチルフェニル)−2−メチルチオ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ピリミド[4,5−b][1,5]オキサゾシン−5−オン(8)
N−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルメチル]−N−(4−ヒドロキシプロピル)−4−クロロ−6−(2−メチルフェニル)−2−メチルチオ−5−ピリミジンカルボキサミド246g(426mmol)をアセトン740mLに溶解し、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン77.8g(511mmol)を加え、内温52〜55℃で2時間加熱還流した。反応液を内温30℃まで冷却した後、氷水冷却した精製水3.69Lに内温10〜16℃で加え、その後内温6〜10℃で1時間撹拌した。析出した結晶をろ取し、精製水740mLで洗浄した後、0.5時間通気乾燥して湿潤結晶331gを得た。この湿潤結晶を2−プロパノール2.46Lに加熱溶解し(57℃で完溶)、内温55〜60℃で精製水1.23Lを加えた後、冷却し(53℃で晶析開始)て内温13〜20℃で0.5時間撹拌した。析出した結晶をろ取し、50%2−プロパノール水溶液740mLで洗浄した後、0.5時間通気乾燥して湿潤結晶236gを得た。この湿潤結晶を60℃で17時間送風乾燥し、淡黄色粉末の(8)196g(収率85%)を得た。
mp(熱板法):146〜147℃
FAB−MS m/z:542[M+H]
H−NMR(CDCl,400MHz)δ:1.97−2.07(1H,m),2.16−2.24(1H,m),2.24(3H,s),2.55(3H,s),3.34(1H,dd,J=5.4Hz,15.6Hz),3.72−3.80(1H,m),3.87(1H,d,J=15.1Hz),4.37−4.48(2H,m),5.32(1H,d,J=14.6Hz),6.93(1H,d,J=7.8Hz),7.05(1H,t,J=7.3Hz),7.21−7.25(2H,m),7.57(2H,s),7.82(1H,s).
実施例11
【0027】
6−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルメチル]−4−(2−メチルフェニル)−2−メチルスルホニル−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ピリミド[4,5−b][1,5]オキサゾシン−5−オン(9)
化合物(8)10.0g(18.5mmol)をアセトニトリル53.3mL及びエタノール26.7mLに溶解し、モノペルオキシフタル酸マグネシウム・6水和物17.1g(27.7mmol)を内温16〜28℃で加え、内温18〜27℃で5.5時間撹拌した。反応液を水172mLに加え、内温25℃以下で1時間撹拌した。析出した結晶をろ取し、精製水30.0mLで洗浄した後、0.5時間通気乾燥、60℃で15時間送風乾燥し、白色粉末の(9)を10.4g(収率98%)を得た。
mp(熱板法):211〜212℃
FAB−MS m/z:574[M+H]
H−NMR(CDCl,400MHz)δ:2.06−2.11(1H,m),2.23(3H,s),2.23−2.27(1H,m),3.34(3H,s),3.44(1H,dd,J=5.4Hz,15.9Hz),3.67−3.74(1H,m),3.91(1H,d,J=14.9Hz),4.48−4.57(2H,m),5.29(1H,d,J=14.9Hz),6.87(1H,d,J=7.6Hz),7.02(1H,t,J=7.1Hz),7.24−7.31(2H,m),7.57(2H,s),7.84(1H,s).
実施例12
【0028】
2−(4−アセチルピペラジン−1−イル)−6−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルメチル]−4−(2−メチルフェニル)−6,7,8,9,−テトラヒドロ−5H−ピリミド[4,5−b][1,5]オキサゾシン−5−オン(化合物I)
実施例11に記載した方法により得られた粗精製の化合物(9)5.00g(8.72mmol)、N−アセチルピペラジン1.56g(12.2mmol)及びトリエチルアミン1.32g(13.1mmol)をジメチルスルホキシド25mLに溶解し、内温50〜58℃で4.5時間撹拌した。反応液を精製水94.5mLに内温30℃〜40℃で加え、内温20℃以下で0.5時間撹拌した。析出した結晶をろ取し、精製水20mLで洗浄した後、0.5時間通気乾燥して湿潤結晶10.4gを得た。この湿潤結晶を60℃で15時間送風乾燥し粗結晶5.12gを得た。この粗結晶をアセトン25mLに溶解し、内温45℃〜50℃で精製水2mLを加えた後(白濁する)、内温45〜50℃で1.5時間撹拌し、更に精製水13.0mLを加えた。結晶晶析後、内温45〜50℃で0.5時間撹拌し、内温25℃以下で1時間撹拌した。析出した結晶をろ取し、20%アセトン水溶液25.0mLで洗浄した後、0.5時間通気乾燥、続いて60℃で16時間送風乾燥し、白色結晶を4.65g得た。この結晶をアセトン20.0mLに溶解し、ろ過した後、アセトン5.0mLで洗浄した。ろ液及び洗液を合わせ、内温45〜50℃で精製水27mLを加え(白濁する)、内温45〜50℃で1.5時間撹拌し、更に精製水13.0mLを加え後、内温45〜50℃で0.5時間続いて内温25℃以下で1時間撹拌した。析出した結晶をろ取し、20%アセトン水溶液25.0mLで洗浄した後、0.5時間通気乾燥、続いて60℃で15時間送風乾燥し、白色粉末の化合物(1)を4.53g(収率84%)を得た。
mp(熱板法):182〜184℃
FAB−MS m/z:622[M+H]
H−NMR(CDCl,400MHz)δ:1.95−2.02(1H,m),2.10−2.19(1H,m),2.14(3H,s),2.25(3H,s),3.30(1H,dd,J=4.9Hz,15.1Hz),3.50(2H,t,J=4.9Hz),3.65−3.68(2H,m),3.78−3.93(6H,m),4.32−4.41(2H,m),5.32(1H,d,J=14.9Hz),6.95(1H,d,J=7.1Hz),7.06(1H,t,J=7.6Hz),7.21−7.25(2H,m),7.57(2H,s),7.81(1H,s).
実施例13
【0029】
6−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルメチル]−4−(2−メチルフェニル)−2−メチルスルホニル−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ピリミド[4,5−b][1,5]オキサゾシン−5−オン(9)
化合物(8)2.00g(3.69mmol)、タングステン(VI)酸ナトリウム・2水和物12.2mg(0.0371mmol)、硫酸水素セチルトリメチルアンモニウム14.1mg(0.0371mmol)、フェニルホスホン酸5.80mg(0.0367mmol)及び31%過酸化水素水1.01g(9.23mmol)を酢酸エチル20mLに懸濁し、50℃で2時間撹拌した。反応液を冷却した後、水30mL及び酢酸エチル40mLを加え、有機層を分取した。有機層を減圧濃縮し、白色結晶の(9)を2.06g(収率97%)を得た。
mp(熱板法):212〜213℃
H−NMR(CDCl,400MHz)δ:2.04−2.13(1H,m),2.23(3H,s),2.23−2.32(1H,m),3.34(3H,s),3.44(1H,dd,J=4.9Hz,16.1Hz),3.68−3.76(1H,m),3.91(1H,d,J=14.6Hz),4.48−4.59(2H,m),5.29(1H,d,J=15.1Hz),6.88(1H,d,J=7.3Hz),7.00−7.04(1H,m),7.24−7.31(2H,m),7.57(2H,s),7.84(1H,s).
実施例14
【0030】
6−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルメチル]−4−(2−メチルフェニル)−2−メチルスルホニル−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ピリミド[4,5−b][1,5]オキサゾシン−5−オン(9)
化合物(8)20.0g(36.9mmol)をアセトニトリル80mLに溶解し、タングステン(VI)酸ナトリウム・2水和物122mg(0.369mmol)、酢酸8.87g(148mmol)及び35%過酸化水素水14.4g(148mmol)を加え、内温50〜60℃で4.5時間撹拌した。反応液を30℃まで冷却した後、精製水320mLに加え、内温10〜15℃で0.5時間撹拌した。析出した結晶をろ取し、精製水60mLで洗浄した後、0.5時間通気乾燥して湿潤結晶28.6gを得た。この湿潤結晶を60℃で16時間送風乾燥し、白色粉末の(9)を20.6g(収率97%)を得た。
mp(熱板法):210〜215℃
FAB−MS m/z:574[M+H]
H−NMR(CDCl,400MHz)δ:2.04−2.13(1H,m),2.23(3H,s),2.23−2.32(1H,m),3.34(3H,s),3.44(1H,dd,J=5.4Hz,15.6Hz),3.67−3.75(1H,m),3.91(1H,d,J=15.1Hz),4.48−4.59(2H,m),5.29(1H,d,J=14.6Hz),6.88(1H,d,J=7.8Hz),7.00−7.04(1H,m),7.22−7.31(2H,m),7.57(2H,s),7.84(1H,s).
【産業上の利用可能性】
【0031】
NK1受容体拮抗薬として有望な化合物Iを製造するにあたり、中間体として4−(2−メチルフェニル)−2−メチルチオ−6−オキソ−1,6−ジヒドロ−5−ピリミジンカルボン酸を用い、クロル化剤を作用させた後、3−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンジルアミノ]−1−プロパノールと反応させ、次いでこれを酸化した後N−アセチルピペラジンと反応すると多量の不純物の生成を伴う事無く、高収率で反応が進行することが明らかとなった。これにより高品質な化合物Iを収率良く提供できることが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4−(2−メチルフェニル)−2−メチルチオ−6−オキソ−1,6−ジヒドロ−5−ピリミジンカルボン酸にクロル化剤を作用させた後、3−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンジルアミノ]−1−プロパノールと反応、続いて塩基を用いて閉環させ、次いでこれを酸化、N−アセチルピペラジンと反応することを特徴とする2−(4−アセチルピペラジン−1−イル)−6−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルメチル]−4−(2−メチルフェニル)−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ピリミド[4,5−b][1,5]オキサゾシン−5−オン又はその水和物の製造方法。
【請求項2】
4−(2−メチルフェニル)−2−メチルチオ−6−オキソ−1,6−ジヒドロ−5−ピリミジンカルボン酸又はその水和物からなる2−(4−アセチルピペラジン−1−イル)−6−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルメチル]−4−(2−メチルフェニル)−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ピリミド[4,5−b][1,5]オキサゾシン−5−オン又はその水和物の製造中間体。
【請求項3】
2−(2−メチルベンジリデン)マロン酸ジエチルと過剰量の2−メチル−2−チオプソイド尿素硫酸塩を溶媒中、塩基の存在下に反応させ、4−(2−メチルフェニル)−2−メチルチオ−6−オキソ−1,4,5,6−テトラヒドロ−5−ピリミジンカルボン酸エチルエステルとし、次いでこの化合物を脱水素化し4−(2−メチルフェニル)−2−メチルチオ−6−オキソ−1,6−ジヒドロ−5−ピリミジンカルボン酸エチルエステルとした後、この化合物を加水分解することを特徴とする4−(2−メチルフェニル)−2−メチルチオ−6−オキソ−1,6−ジヒドロ−5−ピリミジンカルボン酸またはその水和物の製造方法。

【国際公開番号】WO2005/019225
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【発行日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513299(P2005−513299)
【国際出願番号】PCT/JP2004/011965
【国際出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000001395)杏林製薬株式会社 (120)
【Fターム(参考)】