説明

PTP包装体ならびにその製造方法および検査方法

【課題】内容物の有無を外観から容易に確認できるPTP包装体とその製造方法を提供し、また、PTP包装体における内容物の有無を容易に検査できる検査方法を提供する。
【解決手段】PTP包装体10は、内容物12を収容するポケット20を有する容器本体16と、ポケット20の開口部を閉塞するシート状の蓋材18とを備えており、ポケット20の深さは、内容物12の高さよりも浅く設定されている。そして、内容物12を収容した状態では、内容物12のポケット20からはみ出した側の端面に蓋材18が密接される。したがって、「蓋材18が膨らんでいるか否か」を調べることによって、または、「内容物12が接することで生じる模様Aが蓋材18の表面に現れているか否か」を調べることによって、内容物12の有無を容易に確認できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物の有無を容易に検査できる、PTP(プレススルーパッケージ )包装体ならびにその製造方法および検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、錠剤やカプセル剤等の固形薬剤または粒状の固形食品等を包装する際には、図8に示すようなストリップ包装体1(特許文献1参照)や、図9に示すようなPTP包装体2(特許文献2参照)が一般に用いられていた。
【0003】
ストリップ包装体1(図8)は、柔軟な2枚のシート材3を重ね合わせることによってシート材3間に収容空間Sを構成したものであり、シート材3の膨らみを見るだけで内容物4の有無を容易に確認できるという利点を有していた。しかし、シート材3の破損を防止するためには、シート材3と内容物4との接触角度αを大きくとる必要があるので、収容空間Sの幅Lが大きくなり過ぎて広い保管スペースを要するという問題を有していた。
【0004】
一方、PTP包装体2(図9)は、容器本体5に形成されたポケット6の開口部をシート状の蓋材7で閉塞したものであり、内容物8の大きさに応じてポケット6の大きさを設定できるため、収容空間Sの幅を最小限に抑えることができるという利点を有していた。しかし、ポケット6は、内容物8の有無に拘わらず同じ形状を保持しているため、容器本体5および蓋材7が不透明である場合には、内容物8の有無を外観から容易に確認できないという問題を有していた。
【0005】
たとえば、防湿性、ガスバリアー性および遮光性等が要求される医薬品等を包装する際には、PTP包装体2をアルミ箔等の不透明材料を用いて構成せざるを得ず、内容物8の有無を外観から確認するのが困難であった。
【特許文献1】特開平06−056158号公報
【特許文献2】特開2003−335930号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のPTP包装体2(図9)によれば、収容空間Sの幅を最小限に抑えることができるという利点を有するものの、容器本体5および蓋材7が不透明である場合には、内容物8の有無を放射線で確認するしか方法がなく、品質保証上および包装作業時の安全上の問題があった。
【0007】
それゆえに、本発明の主たる解決課題は、収容空間の幅を最小限に抑えて保管スペースの狭小化を図ることができるとともに、容器本体および蓋材が不透明である場合でも内容物の有無を外観から容易に確認できるPTP包装体とその製造方法を提供することであり、さらに、PTP包装体における内容物の有無を容易に検査できる検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載した発明は、「内容物12を収容するポケット20を有する容器本体16と、ポケット20の開口部を閉塞するシート状の蓋材18とを備える、PTP包装体10において、ポケット20の深さは、内容物12の高さよりも浅く設定されており、内容物12のポケット20からはみ出した側の端面に蓋材18が密接される、PTP包装体10」である。
【0009】
この発明では、内容物12のポケット20からはみ出した側の端面に蓋材18が密接されるので、「蓋材18が膨らんでいるか否か」を調べることによって、または、「内容物12が接することで生じる模様Aが蓋材18の表面に現れているか否か」を調べることによって、内容物12の有無を容易に確認できる。
【0010】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した「PTP包装体10」において、「容器本体16および蓋材18は金属箔16b,18bを含んだ構成であり、蓋材18を構成する金属箔18bの肉厚は、容器本体16を構成する金属箔16bの肉厚よりも薄い」ことを特徴とする。
【0011】
この発明では、金属箔16b,18bによって防湿性、ガスバリアー性および遮光性等を得ることができる。また、容器本体16を構成する金属箔16bが厚肉であることから、容器本体16を内容物12の形状に合せて成形することが可能であり、蓋材18を構成する金属箔18bが薄肉であることから、蓋材18を内容物12のポケット20からはみ出した側の端面に密接させることができる。
【0012】
なお、蓋材18を構成する金属箔18bとしては、熱処理を施した軟質のものを用いることが好ましい。たとえば、JIS H4160に規定されたA1N30の軟質アルミニウム箔で厚さ15〜25μmのものを使用すると、内容物12への密接性を高めることができ、内容物12が接することで生じる蓋材18の膨らみを一層明確にすることができる。
【0013】
請求項3に記載した発明は、請求項1に記載した「PTP包装体10」において、「ポケット20の側壁は、深さ方向へ弾性的に伸長可能である」ことを特徴とする。
【0014】
この発明では、ポケット20の側壁を引き伸ばすことによってポケット20の深さを深くし、ポケット20内に内容物12を完全に収容した状態で開口部を閉塞することができる。また、開口部を閉塞した後は、ポケット20の側壁を復元力で収縮させることによってポケット20の深さを浅くし、内容物12を開口部からはみ出させて蓋材18に密接させることができる。
【0015】
請求項4に記載した発明は、「内容物12を収容するポケット20を有する容器本体16と、ポケット20の開口部を閉塞するシート状の蓋材18とを備え、ポケット20の深さは、内容物12の高さよりも浅く設定されており、内容物12のポケット20からはみ出した側の端面に蓋材18が密接されるPTP包装体10の製造方法であって、(a)複数の容器本体16の集合体である本体シート34を、内容物12を収容したポケット20を収容する複数の凹部36を有する搬送ローラ28で搬送し、(b)複数の蓋材18の集合体である蓋シート38を、内容物12のポケット20からはみ出した部分を収容する複数の凹部40を有する圧接ローラ30で本体シート34に圧接させて接合する、PTP包装体10の製造方法」である。
【0016】
この発明は、請求項1または2に記載したPTP包装体10の製造方法である。
【0017】
請求項5に記載した発明は、「深さ方向へ弾性的に伸長可能な側壁を有するポケット20を有する容器本体16と、ポケット20の開口部を閉塞するシート状の蓋材18とを備え、通常状態のポケット20の深さは、そこに収容される内容物12の高さよりも浅く設定されており、内容物12のポケット20からはみ出した側の端面に蓋材18が密接されるPTP包装体10の製造方法であって、(a)複数の容器本体16の集合体である本体シート34を、内容物12を収容したポケット20を収容する複数の凹部36を有する搬送ローラ28で搬送し、(b)側壁を真空吸引により引き伸ばしてポケット20の深さを深くしながら、複数の蓋材18の集合体である蓋シート38を圧接ローラ30で本体シート34に圧接させて接合する、PTP包装体10の製造方法」である。
【0018】
この発明は、請求項3に記載したPTP包装体10の製造方法である。
【0019】
請求項6に記載した発明は、「内容物12を収容するポケット20を有する容器本体16と、ポケット20の開口部を閉塞するシート状の蓋材18とを備えるPTP包装体10について内容物12の有無を検査する、PTP包装体の検査方法であって、(a)蓋材18が内容物18に密接するようにしてPTP包装体10を構成するとともに、そのときの蓋材18の表面状態を基準状態として記憶装置44aに記憶しておき、(b)検査対象となるPTP包装体10について、開口部に対応する位置における蓋材18の表面状態を撮影し、(c)撮影された蓋材18の表面状態と基準状態とを比較して、両者が一致しなかったときに「内容物なし」と認定する、PTP包装体の検査方法」である。
【0020】
この発明では、蓋材18が内容物12に密接するようにしてPTP包装体10を構成しているので、「内容物12が密接することで生じる模様A等が蓋材18に現れているか否か」が内容物12の有無を判断する基準となる。
請求項7に記載した発明は、「内容物12を収容するポケット20を有する容器本体16と、ポケット20の開口部を閉塞するシート状の蓋材18とを備えるPTP包装体10について内容物12の有無を検査する、PTP包装体の検査方法であって、(a)ポケット20の深さが内容物12の高さよりも浅くなるようにしてPTP包装体10を構成しておき、(b)検査対象となるPTP包装体10について、開口部に対応する位置における蓋材18の外方への膨らみを変位センサによって検出し、(c)膨らみを検出できなかったときに「内容物なし」と認定する、PTP包装体の検査方法」である。
【0021】
この発明では、ポケット20の深さが内容物12の高さよりも浅くなるようにしてPTP包装体10を構成しているので、「開口部に対応する位置において蓋材18が外方へ膨らんでいるか否か」が内容物12の有無を判断する基準となる。
【発明の効果】
【0022】
請求項1〜3に記載した発明によれば、容器本体が内容物を収容するポケットを有しているので、従来のPTP包装体と同様に収容空間の幅を最小限に抑えて保管スペースの狭小化を図ることができる。また、ポケット内に内容物が存在する場合には、内容物が密接された蓋材に「膨らみ」や「模様」が生じるので、これらを目視、画像処理または変位センサで検出することによって内容物の有無を容易に確認することができる。
【0023】
請求項4に記載した発明によれば、「複数の蓋材の集合体である蓋シートを、内容物のポケットからはみ出した部分を収容する複数の凹部を有する圧接ローラで本体シートに圧接させて接合する」ようにしているので、包装時における内容物の損傷を防止できる。
【0024】
請求項5に記載した発明によれば、「側壁を真空吸引により引き伸ばしてポケットの深さを深くしながら、複数の蓋材の集合体である蓋シートを圧接ローラで本体シートに圧接させて接合する」ようにしているので、包装時には、内容物をポケット内に完全に収容しておくことができ、内容物の損傷を防止できる。
【0025】
請求項6に記載した発明によれば、「内容物が密接することで生じる模様等が蓋材の表面に現れているか否か」を判断基準として、内容物の有無を容易に確認することができる。
【0026】
請求項7に記載した発明によれば、「開口部に対応する位置において蓋材が外方へ膨らんでいるか否か」を判断基準として、内容物の有無を容易に確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1は、本発明が適用されたPTP包装体10を示す断面図および平面図である。PTP包装体10は、錠剤やカプセル剤等の固形薬剤または粒状の固形食品等の内容物12を収容するものであり、図2に示すようなPTPシート14を構成する最小単位となるものである。
【0028】
PTP包装体10(図1)は、容器本体16と蓋材18とを備えている。容器本体16は、PVC(硬質塩化ビニル)等の合成樹脂からなる内層16aと、AL(アルミニウム)等の金属箔からなる中間層16bと、ナイロンまたはポリエステル等の合成樹脂からなる外層16cとによって構成されており、内容物12を収容するポケット20とポケット20の開口端部外周に形成された蓋受部22とを有している。
【0029】
ポケット20は、底部から開口部へ向けて徐々に拡径する逆円錐台状に形成されており、底部の内径は、内容物12の外径よりもやや大きく設定されており、開口部の内径は、蓋材18と内容物12との接触角度αが小さくなり過ぎて蓋材18が破損するのを防止するために、内容物12の外径よりも十分に大きく設定されている。また、ポケット20の深さは、内容物12の一部がポケット20からはみ出すように、内容物12の高さよりも浅く設定されている。
蓋受部22は、ポケット20の開口部を補強するとともに、蓋材18が固着される固着面を構成するものである。
【0030】
このような容器本体16は、内層16a、中間層16bおよび外層16cを有するシート状の基材にポケット20を形成することによって得られる。ポケット20を形成する方法としては、金型の凹部内面に加熱軟化されたシート状の基材を空気圧で押し当てる方法や、真空吸着で押し当てる方法等が考えられる。
【0031】
蓋材18は、PVC(硬質塩化ビニル)等の合成樹脂からなる内層18aと、AL(アルミニウム)等の金属箔からなる中間層18bと、熱硬化性樹脂からなる外層18cとによって構成されており、内容物12を取り出す際に容易に破ることのできるように薄肉に形成されている。そして、この蓋材18が容器本体16の蓋受部22に熱融着または接着等によって固着されている。
【0032】
ここで、蓋材18を構成する「金属箔」である中間層18bの肉厚は、容器本体16を構成する「金属箔」である中間層16bの肉厚よりも薄く設定されている。したがって、包装時には、容器本体16を内容物12の形状に合せて成形することが可能であり、また、蓋材18を内容物12のポケット20からはみ出した側の端面に密接させることができる。
【0033】
なお、容器本体16および蓋材18の各層を構成する材料は、この実施例に限定されるものではなく、一般に知られている他の材料が用いられてもよい。たとえば、容器本体16の内層16aについては、熱成形性、適度な強度、耐衝撃性および防湿性を兼ね備える点で、PVC(硬質塩化ビニル)を用いることが望ましいが、これに代えて、ポリプロピレン系樹脂を用いてもよいし、ポリプロピレン系樹脂とポリエステル系樹脂との積層体を用いてもよい。
【0034】
また、蓋材18の中間層18bについては、密封性に優れ、かつ、破り易い点で、AL(アルミニウム)を用いることが望ましいが、これに代えて、錫または酸化錫等の他の金属や、金属酸化物の蒸着層等を用いてもよい。中間層18bとしてAL(アルミニウム)を用いる場合には、熱処理を施した軟質のものを用いることが好ましく、特に、JIS H4160に規定されたA1N30の軟質アルミニウム箔で厚さ15〜25μmのものを用いると、内容物12への密接性を高めることができ、内容物12が接することで生じる蓋材18の膨らみを一層明確にすることができる。
【0035】
ただし、容器本体16の内層16aと蓋材18の内層18aとを熱融着する場合には、これらが互いに熱融着可能な材料で形成されている必要があり、そうでない場合には、ヒートシールラッカーまたはホットメルト接着剤等のような接着層が形成されている必要がある。
【0036】
PTP包装体10(図1)を成形する際には、PTP成形機(図示省略)が用いられる。PTP成形機は、容器本体16のポケット20を成形する「ポケット成形装置」と、ポケット20に内容物12を投入する「投入装置」と、容器本体16に蓋材18を装着する「蓋付装置24」と、内容物12の有無を検査する「検査装置26」と、PTPシート14(図2)を切り出す「切断装置」とによって構成されている。これらのうち、「ポケット成形装置」、「投入装置」および「切断装置」については、従来のPTP成形機と同じものを使用できるので、以下には、本発明に特有の「蓋付装置24」と「検査装置26」とについて説明する。
【0037】
蓋付装置24は、図3に示すように、搬送ローラ28と、圧接ローラ30と、ガイドローラ32とによって構成されている。
【0038】
搬送ローラ28は、複数の容器本体16の集合体である「本体シート34」を加熱しながら搬送する金属製ローラであり、搬送ローラ28の外周面には、ポケット20を収容する複数の凹部36が形成されている。また、搬送ローラ28の内部には、加熱用のヒータが埋設されている。
【0039】
圧接ローラ30は、複数の蓋材18の集合体である「蓋シート38」を加熱しながら本体シート34に圧接させる金属製ローラであり、圧接ローラ30の外周面には、内容物12のポケット20からはみ出した部分を収容し、内容物12との間に隙間を確保することによって内容物12の加熱を防止するための複数の凹部40が形成されている。また、圧接ローラ30の内部には、加熱用のヒータが埋設されている。さらに、圧接ローラ30を回転可能に支持する支持部には、圧接ローラ30を搬送ローラ28側へ所定の押圧力で押すための押圧部材(図示省略)が取り付けられている。このような押圧部材としては、コイルバネまたは空気バネ等を用いることができる。
【0040】
ガイドローラ32は、搬送ローラ28と圧接ローラ30との間に蓋シート38を所定の導入角度で案内するものである。
【0041】
蓋付装置24においては、搬送ローラ28によって加熱された本体シート34と、圧接ローラ30によって加熱された蓋シート38とが、ローラ間において圧接され、本体シート34の内層16a(図1)と蓋シート38の内層18a(図1)とが熱融着される。すると、ポケット20の開口部に対応する位置においては、蓋シート38(すなわち蓋材18)が内容物12の端面に密接されて外方へ膨らんだ状態となり、また、内容物12が密接されることによって蓋シート38(すなわち蓋材18)の表面に円形の模様A(図1、図2)が現れる。
【0042】
したがって、膨らみや模様Aの有無が内容物12の有無を判断する手掛かりとなり、たとえば、図2のPTPシート14について見ると、右列2行目のPTP包装体10には模様Aが現れていないので、「内容物なし」と認定できる。
【0043】
検査装置26は、図3に示すように、CCDカメラ42と、異常検出部44と、表示装置46とによって構成されている。
【0044】
CCDカメラ42は、ポケット20の開口部に対応する位置における蓋材18の表面状態を撮影するものであり、CCDカメラ42で得られた画像情報が異常検出部44に与えられる。
【0045】
異常検出部44は、内容物12に密接した蓋材18の表面状態を「基準状態」として記憶する記憶装置44aと、CPU44bとを有しており、CPU44bは、CCDカメラ42から与えられた画像情報から蓋材18の実際の表面状態を検出する「表面状態検出機能」と、実際の表面状態と基準状態とを比較して両者が一致するか否かを判断し、一致しない場合に異常信号を出力する「判定機能」とを有しており、異常検出部44から出力された異常信号が、異常個所の位置情報と共に表示装置46へ与えられる。なお、異常個所の位置情報は、異常を検出した時間と搬送速度とに基づいて計算により求めることが可能である。
【0046】
ポケット20に内容物12が収容されているとき、開口部に対応する位置における蓋材18は、内容物12が密接されることによって外方へ膨らんでおり、また、蓋材18の表面には、内容物12が密接されることによって円形の模様A(図1、図2)が現れている。したがって、記憶装置44aには、この特徴点が「基準状態」として予め記憶され、実際の表面状態にこの特徴点が現れていない場合には、「内容物なし」と認定されて異常信号が出力される。
【0047】
表示装置46は、内容物12が収容されていないという「認定結果」と、その認定箇所の「位置情報」とを表示する機能を有するものであり、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ等が用いられる。
【0048】
検査装置26によってPTP包装体10を検査する際には、内容物12に密接した蓋材18の表面状態が「基準状態」として記憶装置44aに予め記憶され、検査対象となるPTP包装体10について、ポケット20の開口部に対応する位置における蓋材18の表面状態がCCDカメラ42で撮影される。そして、撮影された蓋材18の表面状態と基準状態とが比較され、両者が一致しなかったとき「内容物なし」と認定され、その結果が表示装置46に表示される。
【0049】
この実施例のPTP包装体10およびその検査方法によれば、「内容物12が密接することで生じる模様」や「蓋シート38が外方へ膨らむことによって生じる外観上の特徴の有無」を判断基準として、内容物12の有無を簡単に検査することができる。
【0050】
なお、上述した検査方法では、CCDカメラ42で撮影した画像情報に基づいて内容物12の有無を検査しているが、これに代えて、変位センサで検出した蓋材18の膨らみに基づいて内容物12の有無を検査するようにしてもよい。この方法では、ポケット20の開口部に対応する位置における蓋材18の外方への膨らみを変位センサによって検出し、膨らみを検出できなかったときに「内容物なし」と認定することになる。つまり、ポケット20内に内容物12が収容されている場合には、内容物12の一部がポケット20からはみ出しているので、開口部に対応する位置における蓋材18は外方へ膨らむことになる。したがって、この膨らみの有無を内容物12の有無を認定する基準とすることができる。なお、変位センサとしては、蓋材18の表面に接触して回転する変位検出ローラと、変位検出ローラの変位を計測する計測装置とを備えるものを用いることができる。
【0051】
また、上述の実施例では、搬送ローラ28および圧接ローラ30の双方にヒータを埋設することによって加熱機能を持たせているが、圧接ローラ30だけに加熱機能を持たせるようにしてもよい。この場合には、図4に示すように、加熱機能を有する圧接ローラ30と蓋シート38との接触面積を大きくすることによって、蓋シート38を加熱軟化させる時間を長くとるようにしてもよい。
【0052】
また、図5に示すように、ポケット20の側壁20aを深さ方向へ弾性的に伸長可能な形状(蛇腹状等)に形成してもよい。この場合には、ポケット20の底部20bを真空吸引して側壁20aを引き伸ばすことによって、ポケット20の深さを深くすることができるので、ポケット20内に内容物12を完全に収容した状態で開口部を蓋材18で閉塞することができる。また、開口部を閉塞した後は、真空吸引を解除してポケット20の側壁20bを復元力で収縮させることによって、ポケット20の深さを浅くすることができるので、内容物12を開口部からはみ出させて蓋材18に密接させることができる。したがって、蓋付工程(図5)において、蓋材18に過大な応力が作用するのを防止でき、蓋材18の歪や破れを防止できる。
【0053】
この場合(図5)、搬送ローラ28に形成される凹部36の深さは、内容物12の高さよりも深く設定され、凹部36の底部には、真空ポンプ(図示省略)と連通する吸引口36aが形成される。そして、各吸引口36aにおける吸引/解除の動作が切換弁(図示省略)によって個別に切り換えられる。また、圧接ローラ30の外周面には、内容物12の加熱を防止するための凹部40(図3)を形成する必要はない。
【0054】
さらに、PTP成形機の蓋付装置24には、図6に示すようなバッチ式を採用してもよい。バッチ式の蓋付装置24は、板状の基礎プレート48と板状の圧接プレート50とを有しており、基礎プレート48の上面には、ポケット20を収容する複数の凹部52が形成されており、圧接プレート50の下面には、内容物12との間に隙間を確保するための複数の凹部54が形成されており、さらに、圧接プレート50の内部には、加熱用のヒータが埋設されている。
【0055】
この蓋付装置24を用いてポケット20の開口部を蓋材18で閉塞する際には、まず、図6(A)に示すように、基礎プレート48と圧接プレート50との間に本体シート34および蓋シート38が供給される。そして、図6(B)に示すように、圧接プレート50によって蓋シート38が本体シート34に圧接され、本体シート34の内層16a(図1)と蓋シート38の内層18a(図1)とが熱融着される。
【0056】
なお、上述の実施例では、短円柱状の内容物12(図1、2)を縦置きで包装するために、ポケット20の形状を「逆円錐台状」にしているが、ポケット20の形状は、内容物12の形状に応じて適宜変更可能である。たとえば、図7に示すように、円柱状の内容物(カプセル剤等)12を横置きで包装する場合には、ポケット20の形状を「船底型」にしてもよい。
【0057】
なお、内容物は、これらの錠剤やカプセル剤に限定されるものではなく、球状(丸剤)、オーバル型(ソフトカプセル剤、カプレット剤等)、レンズ型(R錠)、異型錠等の剤形を用いるPTP包装として、本願発明のPTP包装を得ることができる。また、1つのポケットに充填される内容物の数は、1つに限定されるものではなく、同種の複数の内容物が充填されてもよいし、異種の複数の内容物が充填されてもよい。
【0058】
発明者等は、図1実施例のPTP包装体10について、「蓋材18の膨らみ具合」と「プレススルー性」とを調べる実験を行った。「実験方法」および「実験結果」は、以下の通りである。
【0059】
[実験1]
(a)実験方法 実験1では、PTP包装体10において、蓋材18の中間層18bを構成する金属箔の「材質」および「質別」を変化させたときの「蓋材18の膨らみ具合」と「プレススルー性」とを調べた。
実験1における各条件は、表1の通りであり、蓋材18の中間層18bについては、アルミ箔の「材質(1N30,8079,8021)」および「質別(軟質,硬質)」の組み合わせを4通りに変化させた。なお、内容物12の直径は9mmであり、厚さは3mmである。
【0060】
【表1】

【0061】
(b)実験結果 実験結果は、表2の通りである。
【表2】

評価:◎…非常に良い○…良い△…やや悪い×…悪い
表2に示したPTP包装体10では、いずれも蓋材18の膨らみを確認できるが、軟質材である場合に、より明確に確認できることが分かる。また、プレススルー性については、いずれも開封性に問題はないが、1N30の硬質材が最も良好であることが分かる。
【0062】
[実験2]
(a)実験方法 実験2では、PTP包装体10において、蓋材18の中間層18bを構成する金属箔の「厚さ」を変化させたときの「蓋材18の膨らみ具合」と「プレススルー性」とを調べた。
【0063】
実験2における各条件は、表3の通りであり、蓋材18の中間層18bについては、アルミ箔の「厚さ」を3通り(17μm,20μm,25μm)に変化させた。なお、内容物12の直径は9mmであり、厚さは3mmである。
【0064】
【表3】

【0065】
(b)実験結果 実験結果は、表4の通りである。
【表4】

評価:◎…非常に良い○…良い△…やや悪い×…悪い
【0066】
表4に示したPTP包装体10では、いずれも蓋材18の膨らみを確認できるが、厚いほど蓋材の膨らみの明確性が低下し、また、プレススルー性も低下することが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】PTP包装体を示す断面図および平面図
【図2】PTPシートを示す平面図
【図3】蓋付装置および検査装置を示す図
【図4】他の蓋付装置および検査装置を示す図
【図5】他のPTP包装体における蓋付工程を示す図
【図6】バッチ式の蓋付装置を示す図
【図7】他のPTP包装体を示す正面図および平面図
【図8】従来技術(ストリップ包装体)を示す図である。
【図9】従来技術(PTP包装体)を示す図である。
【符号の説明】
【0068】
10… PTP包装体
12… 内容物
14… PTPシート
16… 容器本体
18… 蓋材
20… ポケット
22… 蓋受部
24… 蓋付装置
26… 検査装置
28… 搬送ローラ
30… 圧接ローラ
34… 本体シート
38… 蓋シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収容するポケットを有する容器本体と、前記ポケットの開口部を閉塞するシート状の蓋材とを備える、PTP包装体において、
前記ポケットの深さは、前記内容物の高さよりも浅く設定されており、前記内容物の前記ポケットからはみ出した側の端面に前記蓋材が密接される、PTP包装体。
【請求項2】
前記容器本体および前記蓋材は金属箔を含んだ構成であり、前記蓋材を構成する金属箔の肉厚は、前記容器本体を構成する金属箔の肉厚よりも薄い、請求項1記載のPTP包装体。
【請求項3】
前記ポケットの側壁は深さ方向へ弾性的に伸長可能である、請求項1または2記載のPTP包装体。
【請求項4】
内容物を収容するポケットを有する容器本体と、前記ポケットの開口部を閉塞するシート状の蓋材とを備え、前記ポケットの深さは、前記内容物の高さよりも浅く設定されており、前記内容物の前記ポケットからはみ出した側の端面に前記蓋材が密接されるPTP包装体の製造方法であって、
(a)複数の前記容器本体の集合体である本体シートを、前記内容物を収容した前記ポケットを収容する複数の凹部を有する搬送ローラで搬送し、
(b)複数の前記蓋材の集合体である蓋シートを、前記内容物の前記ポケットからはみ出した部分を収容する複数の凹部を有する圧接ローラで前記本体シートに圧接させて接合する、PTP包装体の製造方法。
【請求項5】
深さ方向へ弾性的に伸長可能な側壁を有するポケットを有する容器本体と、前記ポケットの開口部を閉塞するシート状の蓋材とを備え、通常状態の前記ポケットの深さは、そこに収容される内容物の高さよりも浅く設定されており、前記内容物の前記ポケットからはみ出した側の端面に前記蓋材が密接されるPTP包装体の製造方法であって、
(a)複数の前記容器本体の集合体である本体シートを、前記内容物を収容した前記ポケットを収容する複数の凹部を有する搬送ローラで搬送し、
(b)前記側壁を真空吸引により引き伸ばして前記ポケットの深さを深くしながら、複数の前記蓋材の集合体である蓋シートを圧接ローラで前記本体シートに圧接させて接合する、PTP包装体の製造方法。
【請求項6】
内容物を収容するポケットを有する容器本体と、前記ポケットの開口部を閉塞するシート状の蓋材とを備えるPTP包装体について内容物の有無を検査する、PTP包装体の検査方法であって、
(a)前記蓋材が前記内容物に密接するようにして前記PTP包装体を構成するとともに、そのときの前記蓋材の表面状態を基準状態として記憶装置に記憶しておき、
(b)検査対象となる前記PTP包装体について、前記開口部に対応する位置における前記蓋材の表面状態を撮影し、
(c)撮影された前記蓋材の表面状態と前記基準状態とを比較して、両者が一致しなかったときに「内容物なし」と認定する、PTP包装体の検査方法。
【請求項7】
内容物を収容するポケットを有する容器本体と、前記ポケットの開口部を閉塞するシート状の蓋材とを備えるPTP包装体について内容物の有無を検査する、PTP包装体の検査方法であって、
(a)前記ポケットの深さが前記内容物の高さよりも浅くなるようにして前記PTP包装体を構成しておき、
(b)検査対象となる前記PTP包装体について、前記開口部に対応する位置における前記蓋材の外方への膨らみを変位センサによって検出し、
(c)前記膨らみを検出できなかったときに「内容物なし」と認定する、PTP包装体の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−118978(P2007−118978A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−311731(P2005−311731)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(591206108)マルホ発條工業株式会社 (6)
【出願人】(506137147)エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社 (215)
【出願人】(000163006)興和株式会社 (618)
【出願人】(000231626)日本製箔株式会社 (49)
【Fターム(参考)】