説明

UV遮断剤の苦味をマスキングする方法

【課題】化粧用又は皮膚科用組成物中の親水性有機UV遮断剤の苦味マスキング方法の提供。
【解決手段】味料から選択される、十分な量の少なくとも1種の第1の呈味剤及び味覚増強剤及びアロマからなる群から選択される、十分な量の少なくとも1種の第2の呈味剤を添加するステップを含む方法。第1の呈味剤として、スクロース、グルコース、フルクトース、アセスルファムK、アスパルテーム、シクラミン酸、イソマルト、サッカリン等が、そして第2の呈味剤として、塩化ナトリウム及びミントアロマが例示される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、顔化粧用又は皮膚科用組成物中の親水性有機UV遮断剤の苦味をマスキングする方法に関する。
【0002】
[先行技術及び発明の目的]
口紅又はリップグロスに甘い風味を付与するための甘味料の組込みは、既に提案されている。この場合、甘味料の量は、一般に非常に少なく、組成物の重量の約0.01〜0.02重量%である。唇用のメイクアップ製品は、油ベース及びワックスベースであり、親油性成分を含有する。したがって、口紅又はリップグロスに組み込むために選ばれる有機UV遮断剤は、親油性である。
【0003】
ケアクリーム、リキッドファンデーション又は日焼け止めクリームを顔に塗布するために、ユーザーは、一般に、顔面皮膚に広げるのに十分な量のクリームを手に取って、マッサージによりその浸透を促進する。化粧用製品を多めに塗布することにより、該製品が唇の上に偶発的に広がる可能性がある。
【0004】
しかし、これらの顔用ケア又はメイクアップ製品の一部は、顔全体への塗布の間に唇の周囲の領域と接触すると非常に苦い味を生じることが観察されている。
【0005】
本発明の主要な目的は、皮膚に塗布することを意図した、唇との予想外の接触時に苦味の感覚を全くもたらさない化粧用又は皮膚科用組成物の提供からなる技術的課題を解決することである。
【0006】
より正確には、水性相、油、界面活性剤、フレグランス、親水性有機UV遮断剤及び親油性有機UV遮断剤を従来の比率で含有する顔用ケアクリームにおいて、親水性有機UV遮断剤のみが苦い味を引き起こすことが発見された。親油性有機UV遮断剤は含有するが親水性有機UV遮断剤は含有しない同じケアクリームは、全く苦くない。本出願人は、親油性有機UV遮断剤、特にメトキシケイ皮酸エチルヘキシル、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、ビス−エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、及びオクトクリレンが、化粧用組成物の脂肪相に配合された場合に苦味を全く生じないことを証明した。
【0007】
したがって、本発明は、皮膚に塗布することを意図した、親水性有機UV遮断剤の苦味がマスキングされている化粧用又は皮膚科用組成物を提案する。本出願人は、組成物に十分な量の甘味料を組み込むことにより、このタイプの遮断剤の苦味をマスキングすることが可能であり、この量では、製品の物理化学的特性及び知覚特性などの当初の化粧特性は阻害されないことを見出した。
【0008】
[発明の説明]
したがって、本発明の主題は、水性相を含有し、顔用ケアクリーム、化粧水、フェイスセラム若しくは美容液(face fluid)、ファンデーション、乳液、化粧落としローション又は顔用日焼け防止製品の形態である化粧用組成物中の親水性有機UV遮断剤の苦味をマスキングする方法であって、
−甘味料から選択される、十分な量の少なくとも1種の第1の呈味剤、及び
−味覚増強剤及びアロマから選択される、十分な量の少なくとも1種の第2の呈味剤
の上記組成物への添加を含む方法である。
【0009】
「十分な量」という用語は、親水性有機UV遮断剤を含有する組成物を唇の周囲の領域又は唇に塗布したときに親水性有機UV遮断剤の味をマスキングするのに十分な量に相当する。
【0010】
親水性UV遮断剤
親水性有機UV遮断剤は、ユーザーが組成物を唇又は唇の周囲の領域に偶発的に塗布したときにユーザーが経験する苦味に関与している可能性がある。
【0011】
苦味は、舌の裏及び口蓋で感知される特徴である。苦味は、ユーザーのパネル(各ユーザーの評価に再現性があり、このパネルにより測定される製品の苦味の平均測定値が信頼できるものとなるように、化合物の苦味のレベルの認識及び定量評価に関して事前に訓練されている)により評価されることができる。
【0012】
親水性UV遮断剤の苦味は、0.1〜5重量%の親水性UV遮断剤を含有する0.2gの水溶液をパネルのメンバーの唇の周囲の領域又は唇に置くことにより評価することができる。親水性UV遮断剤の水溶液は、パネルにより評価された苦味の平均が、8μmol/lのキニンの水溶液0.2gの苦味の平均と少なくとも等しい場合、苦いと見なされる。
【0013】
親水性UV遮断剤の水溶液の苦味は、ユーザーのパネルにより評価することができる。パネルの各メンバーは、苦味に対する感受性が同じではないが、再現性がなければならない。十分な数の再現性のあるメンバーにより、有意な平均評価、及び苦味の客観的な定量化を実現することで個人間の差異を平均化することが可能となる。
【0014】
パネルのメンバーの再現性を判断するために、上記メンバーに複数の試料を目隠し状態で提示する。これらの試料の中に、同じ組成の試料を2つ導入している。これらの2つの試料の評価は、同一又は実質的に同一でなければならない。例えば、1〜5の等級付けスケールで、1等級の違いは許容される。
【0015】
親水性UV遮断剤により生じる苦味の感覚は、組成物を唇に塗布した瞬間に組成物中でマスキングされるが、有益なことに、唇への該組成物の偶発的な塗布後、該遮断剤の苦味のマスキングを少なくとも10分間、又はさらに少なくとも15分間持続させることも可能である。
【0016】
「親水性有機UV遮断剤」という表現は、280nm〜400nmの波長範囲の紫外(UV)放射線を吸収し、組成物の水性相に溶解することができる、又は組成物の水性相にコロイド形態若しくはミセル形態で分散することができる任意の有機化合物を意味することを意図する。
【0017】
親水性UV遮断剤の中で、以下でそれらのINCI名又はそれらの化学名で示している以下の遮断剤を使用することができる:
− Chimexにより、Mexoryl(登録商標)SXという商品名で販売されている、テレフタリリデンジカンファースルホン酸(INCI名:テレフタリリデンジカンファースルホン酸)、
− 欧州特許第669323号及び米国特許第2463264号に記載のビス−ベンゾアゾリル誘導体、より具体的には、Haarmann and Reimerにより、Neo Heliopan(登録商標)APという商品名で販売されている、化合物フェニルジベンゾイミダゾールテトラスルホン酸二ナトリウム、
− p−アミノ安息香酸(INCI名:PABA)及びその誘導体、例えば、1−(4−アミノベンゾエート)−1,2,3−プロパントリオール(INCI名:グリセリルPABA)、及び、BASFにより、Uvinul(登録商標)P25という商品名で販売されているPEG−25 PABAなど、
− 特に、Merckにより、Eusolex(登録商標)232という商品名で販売されている、2−フェニルベンゾイミダゾール−5−スルホン酸(INCI名:フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸)、
− サリチル酸トリエタノールアミン、
− Chimexにより、Mexoryl(登録商標)SLという商品名で販売されている、3−(4’−スルホベンジリデン)カンファー(INCI名:ベンジリデンカンファースルホン酸)、
− Fairmount Chemicalにより、Tinosorb(登録商標)M、又はMixxim(登録商標)BB/100という参照名で販売されている、メチレンビス−ベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール(USAN名:ビスオクトリゾール)、
− Chimexにより、Mexoryl SOという名称で販売されている、3−(4’−トリメチルアンモニウムベンジリデン)−1−ボルナン−2−オンメチルスルフェート(INCI名:カンファーメト硫酸ベンザルコニウム)、
− BASFにより、「Uvinul MS40」という商品名で販売されている、ベンゾフェノン−4、並びに、ベンゾフェノン−5、及びベンゾフェノン−9。
【0018】
親水性有機UV遮断剤として、本来は親油性の有機UV遮断分子(非水液体に溶解又は分散している)を使用することも可能であり、これは、小さい粒径の親水性担体、例えばポリマー粒子に吸着されることにより親水性とされたものである。例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)の粒子に吸着された親油性UV遮断剤であるビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンを挙げることができる。親水性有機UV遮断剤は、したがって、有機ポリマーなどのUVを遮断することができない親水性担体に吸着又は吸収される親油性有機UV遮断分子であることができる。
【0019】
親水性有機UV遮断剤は、本発明の方法において使用される組成物中に、該組成物の総重量に対して0.05〜10重量%の範囲、好ましくは0.1〜8重量%の範囲、より良好にはさらに上記組成物の総重量に対して0.1〜5重量%の比率で存在する。
【0020】
第1の呈味剤:甘味料
上記組成物は、甘い味を有する化合物である甘味料からなる第1の呈味剤を含む。
【0021】
甘味料は、親水性有機UV遮断剤の苦味をマスキングするのに十分であるが、しかし、上記組成物を不安定化すること、又はこってりする過剰に甘い味を付与することはない量で組み込むことが有益である。したがって、甘味料の量は、上記組成物の重量に対して1重量%未満であることが好ましい。
【0022】
第1の甘味呈味剤は、上記組成物の重量の好ましくは0.05〜2重量%、より好ましくは0.1〜1重量%、優先的には0.2〜0.6重量%、より優先的には0.4〜0.5重量%を占める。
【0023】
甘味料は、有利には、水溶性であり、以下の化合物:スクロース、グルコース、フルクトース、アセスルファムK、アスパルテーム、シクラミン酸、及びさらにそのナトリウム、カリウム及びカルシウム塩、イソマルト、サッカリン、及びさらにそのナトリウム、カリウム及びカルシウム塩、スクラロース、アリターム、タウマチン、グリチルリジン酸及びその塩、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、ステビオールグルコシド、ネオテーム、アスパルテーム−アセスルファム塩、タガトース、ポリグリシトールシロップ、マルチトール、ラクチトール、キシリトール及びエリスリトール、並びに、それらの混合物からなる群から選択することができる。
【0024】
甘味料は、スクロースの50倍以上、好ましくは100倍以上の甘味の強さを有することが好ましい。
【0025】
1つの有益な実施形態において、甘味料は、スクラロース(CAS番号56038−13−2)である。
【0026】
別の実施形態において、甘味料は、ステビオールグルコシド及びステビオールグルコシドを含有する植物抽出物から選択される。甘味料は、例えば、ステビオシド、ステビオールビオシド、レバウジオシドA、B、C、D及びE、ズルコシドA及びB、並びにそれらの混合物から選択される。甘味料は、レバウジオシドA(ステビオシドと呼ばれることもある)又はレバウジオシドAを含有する植物抽出物であることが好ましい。
【0027】
レバウジオシドAは、ステビオールと呼ばれるそのアグリコン部分が、2つのオシド基(すなわち、1つのグルコース単位及び1つのグルコーストリホロシド)に結合しているヘテロシド(IUPAC名:19−O−ベータ−グルコピラノシル−13−O−(ベータ−グルコピラノシル(1−2)−ベータ−グルコピラノシル(1−3))−ベータ−グルコピラノシル−13−ヒドロキシカウラ−16−エン−19−酸及びCAS番号58543−16−1)である。その甘味の強さは、スクロースより250〜450倍強い。
【0028】
レバウジオシドAは、有利には、ステビア(Stevia)から、より正確にはその葉から抽出することができる。ステビア・レバウジアナ(Stevia rebaudiana)種は、例えば、レバウジオシドAを含有している。本発明の文脈において、SEPPIC社によりRebaten 97% Sweetener(登録商標)という参照名で販売されているものなどの、ステビア・レバウジアナの抽出物を使用することができる。
【0029】
ステビア属の植物は、パラグアイに自生しており、また、南アメリカ及びアジアで栽培されている。上記植物からレバウジオシドAを抽出するために、水抽出及び精製を施す前に上記植物の葉を乾燥させ、粉末状にする。
【0030】
第2の呈味剤:アロマ又は味覚増強剤(taste enhancer)
上記組成物は、有利には、味覚増強剤及びアロマから選択される少なくとも1種の第2の呈味剤を含むことができる。第2の呈味剤は、水溶性であることが好ましい。
【0031】
上記組成物を唇に塗布すると、2種の呈味剤の組合せにより、上記組成物中の苦いUV遮断剤の苦味の持続的なマスキング、又はさらにはこの遮断剤の苦味の完全なマスキングが可能となる。
【0032】
味覚増強剤は、それ自体は明白な風味を有さず、親水性UV遮断剤の苦味のマスキングを長期間持続させる特性を有する有機物である。
【0033】
味覚増強剤は、特に、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化亜鉛、グルタミン酸、及びそのナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム及びアンモニウム塩、グアニル酸及びその塩、イノシン酸及びその塩、カルシウム5’−リボヌクレオチド、二ナトリウム5’−リボヌクレオチド、マルトール、エチルマルトール、ナトリウムL−アスパルテーム、DL−アラニン、グリシン及びそのナトリウム塩、L−ロイシン、リジン塩酸塩、並びに、酢酸亜鉛から選択される。
【0034】
1つの有益な実施形態において、塩味増強剤、特に塩化ナトリウムを使用することが好ましい。
【0035】
本発明の文脈において使用されるアロマは、飲み込まれたときに後方嗅覚作用によりある感覚を引き起こし、甘い味も、塩味も、酸味も有さない成分であることが好ましい。これらの成分を使用して、組成物に味を付与する。アロマは、「アロマ(Aroma)」というINCI名を有することができ、販売用に提示されている化粧用製品の成分の一覧に載っている。それらは、天然のアロマ及び天然物と同一のアロマから選択することが好ましい。
【0036】
アロマは、柑橘類アロマ(citrus fruit aromas)、特にオレンジ、レモン、グレープフルーツ又はマンダリンアロマ;果実アロマ(fruit aromas)、特にサクランボ、モモ、セイヨウナシ又はパッションフルーツアロマ;美食アロマ(gourmand aromas)、特にバニラ、チョコレート、キャラメルアロマ又はミルクアロマ;ミントアロマ;及びそれらの混合物から選択することができる。
【0037】
他のアロマより少ない含量で苦味のマスキングを効果的に持続させ、その結果、この少ない含量では製品の当初の香り付け(perfuming)を少ししか変えないという利点を有するミントアロマを優先する。ミントアロマとして、メントール又はミント精油抽出物を特に使用することができる。
【0038】
第2の呈味剤の濃度は、上記組成物の重量に対して、好ましくは0.0005〜0.5重量%、より好ましくは0.01〜0.3重量%の範囲である。
【0039】
アロマは、上記組成物の嗅覚的特性を阻害する明確な臭気が伴わない量で使用することが好ましい。
【0040】
1つの変形例において、上記組成物は、親水性有機UV遮断剤と、第1の呈味剤としての少なくとも1種のステビオールグルコシドと、塩化ナトリウム、塩化カリウム及び塩化亜鉛、並びにそれらの混合物から選択される第2の呈味剤としての少なくとも1種の塩と、を含む。
【0041】
別の変形例において、上記組成物は、少なくとも1種の親水性有機UV遮断剤、第1の呈味剤としてのスクラロース及び第2の呈味剤としての少なくとも1種のアロマを含む。
【0042】
1つの実施形態において、上記組成物は、上記組成物の重量に対して0.5〜5重量%、例えば1〜2.5重量%のベンゾフェノン−4を含む。別の実施形態において、上記組成物は、上記組成物の重量に対して1〜3重量%の2−フェニルベンゾイミダゾール−5−スルホン酸を含む。これらの2つの実施形態において、0.3〜0.6重量%、より好ましくは0.4〜0.5重量%の甘味料を使用することが好ましい。好ましい甘味料は、スクラロース又はステビアの抽出物である。これらの2つの実施形態において、第2の呈味剤は、塩化ナトリウム及びミントアロマから選択されることが好ましい。塩化ナトリウムは、上記組成物の重量の0.2〜0.3重量%を占めることが有益である。ミントアロマは、上記組成物の重量の0.05〜0.2重量%を占めることが有益である。
【0043】
フレグランス
上記組成物は、臭気のある(odorous)成分又は芳香付け(fragrancing)植物抽出物、例えば、販売用に提示されている化粧用製品の成分の一覧に載っているそのINCI名が「フレグランス」である成分のコレクションを含むことが好ましい。フレグランスは、周囲温度で揮発性であってその臭気が検出される化合物又は化合物の混合物である。
【0044】
「フレグランス」という用語は、蒸発する臭気のある物質又は臭気のある物質の混合物を意味することを意図する。各フレグランスは、フレグランスを適用したとき、又はフレグランスを含有する容器を開けたときに最初に拡散する臭気であるトップノートと呼ばれるもの、完全なフレグランスに相当するハートノート又はボディ(トップノートの後に数時間放出)、及び最も持続的な臭気であるベースノート(ハートノートの後に数時間放出)を有する。ベースノートの持続性は、フレグランスの持続性に相当する。
【0045】
「フレグランス」という用語は、皮膚、髪、頭皮、唇又は爪に芳香付けすることができる任意の有機化合物を意味することを意図する。
【0046】
アルコール製品において、フレグランスの量は、上記組成物の総重量に対して、より優先的には3〜50重量%、より良好にはさらに5〜30重量%、さらにより良好にはさらに10〜20重量%となろう。
【0047】
ケア製品において、フレグランスの量は、上記組成物の総重量に対して、優先的には0.05〜1重量%、より良好にはさらに0.3〜0.7重量%となろう。
【0048】
香水原材料、アロマ及びそれらの混合物をフレグランスとして使用することができる。それらは、互いに独立して、天然又は合成由来のものとすることができる。
【0049】
香水原材料及び天然由来のアロマとしては、例えば、花(ラベンダー、バラ、ジャスミン、イランイラン)、茎及び葉(パチョリ、ゼラニウム、プチグレン)、果実(コリアンダー、アニスの実、クミン、ビャクシン)、果皮(ベルガモット、レモン、オレンジ)、根(アンゼリカ、セロリ、カルダモン、アイリス、トウヤシ)、木材(松材、ビャクダン、ユソウボク)、ハーブ及び草(タラゴン、レモングラス、セージ、タイム)、針状葉及び枝(トウヒ、モミ、マツ)、樹脂及びバルサム(ガルバヌム、エレミ、ベンゾイン樹脂、ミルラ、乳香、オポパナックス)の抽出物を挙げることができる。
【0050】
合成香水原材料としては、例えば、酢酸ベンジル、安息香酸ベンジル、イソブチル酸フェノキシエチル、酢酸p−tert−ブチルシクロヘキシル、酢酸シトロネリル、ギ酸シトロネリル、酢酸ゲラニル、酢酸リナリル、酢酸ジメチルベンジルカルビニル、酢酸フェニルエチル、安息香酸リナリル、ギ酸ベンジル、グリシン酸エチルメチルフェニル、プロピオン酸アルキルシクロヘキシル、プロピオン酸スチラリル及びサリチル酸ベンジル、ベンジルエチルエーテル、8〜18個の炭素原子を含有する直鎖アルカナール、シトラール、シトロネラル、シトロネリルオキシアセトアルデヒド、シクラメンアルデヒド、ヒドロキシシトロネラール、リリアール及びブルゲオナール、アルファ−イソメチルイオノンなどのイオノン、及びメチルセドリルケトン、アネトール、シトロネロール、オイゲノール、イソオイゲノール、ゲラニオール、リナロール、フェニルエチルアルコール、テルピネオール及びテルペンを挙げることができる。これらの化合物は、2種以上のこれらの臭気物質の混合物の形態であることが多い。
【0051】
さらに、アロマの要素である精油、例えば、セージ、カモミール、クローバー、レモン・バーム、ミント、シナモンリーフ、シナノキの花、ビャクシン、ベチベルソウ、乳香、ガルバヌム、ラブダナム及びラバンジンのエッセンスも使用することができる。
【0052】
ベルガモットのエッセンス、ジヒドロミルセノール、リリアール、リラール、シトロネロール、フェニルエチルアルコール、アルファ−ヘキシルシンナムアルデヒド、ゲラニオール、ベンジルアセトン、シクラメンアルデヒド、リナロール、アンブロキサン、インドール、へジオン、サンデリス(sandelice)、レモンのエッセンス、マンダリン及びオレンジのエッセンス、アリルアミングリコレート、シクロベルタル(cyclovertal)、ラバンジンのエッセンス、セージのエッセンス、ベータ−ダマスコン、ゼラニウムのエッセンス、サリチル酸シクロヘキシル、フェニル酢酸、酢酸ゲラニル、酢酸ベンジル及びバラ酸化物(rose oxide)を香水原材料として、単独で又は混合物として使用することが好ましい。
【0053】
知られている嗅覚的ノートの中で、例えば、ミカン状果フレグランス、芳香植物、フローラルフレグランス、ムスク、フルーティーフレグランス、香辛料、オリエンタルフレグランス、マリンフレグランス、アクアティックノート、シプレーフレグランス、ウッディフレグランス、グリーンフレグランス及びシダ、並びにそれらの混合物を挙げることができる。
【0054】
1つの実施形態において、該組成物のフレグランスの嗅覚的ノートは、フローラル、例えば、ムスクフローラル又はグリーンフローラルである。該フレグランスのノートは、芳香性ムスクフローラル、又はグリーンローズフローラルであることができる。
【0055】
生薬
上記組成物は、顔に塗布することを意図したものであり、水中油若しくは油中水エマルジョン又は水性ゲルの形態であることが好ましい。上記組成物は、例えば、顔用ケアクリーム、化粧水、フェイスセラム若しくは美容液、ファンデーション、乳液、化粧落としローション、コントロールカラー(complexion base)、又は日焼け防止製品の形態である。
【0056】
1つの好ましい実施形態において、上記化粧用又は皮膚科用組成物は、飲み込まれることを意図したものではなく、その投与は、局所及び非経口である。該組成物は食品ではない。
【0057】
1つの好ましい実施形態において、本発明は、親水性有機UV遮断剤の苦味のマスキングを長期間持続させる方法で実施するための、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム及び塩化亜鉛、並びにそれらの混合物から選択される少なくとも1種の塩と組み合わせたレバウジオシドA又はレバウジオシドAを含有する植物抽出物の使用に関する。植物抽出物は、ステビアの抽出物であることが好ましい。
【0058】
別の好ましい実施形態において、本発明は、親水性有機UV遮断剤の苦味のマスキングを長期間持続させる方法で実施するための、少なくとも1種のアロマと組み合わせたスクラロースの使用に関する。アロマは、ミントアロマであることが好ましい。
【0059】
本発明の主題は、また、上記の組成物を苦味マスキング法に関連して顔面皮膚の少なくとも一部に塗布するステップを含む、化粧用又は皮膚科用の処置プロセスである。
【実施例】
【0060】
本発明の他の目的、特徴及び利点は、例示のためだけに示すものであって本発明の範囲を制限するものでは決してない実施例を参照している説明的記述を読めば当業者に明白に明らかとなろう。
【0061】
各実施例は、本発明の不可欠な一部であり、各実施例を含めた明細書全体に基づいて任意の先行技術より新規であると思われる任意の特徴は、その機能及びその普遍性に関して本発明の不可欠な一部である。
【0062】
したがって、各実施例は、一般的範囲を有する。
【0063】
さらに、各実施例において、全てのパーセントは別段の指示がない限り重量基準であり、温度は別段の指示がない限り摂氏温度で表し、圧力は別段の指示がない限り大気圧である。
【0064】
実施例1:ケアクリーム
以下の組成物を調製した。
【0065】
【表1】

【0066】
味覚及び嗅覚試験
苦い親水性有機UV遮断剤及び呈味剤を含有する本発明の組成物の味、臭気及び色を、同じ苦い親水性UV遮断剤は含有するが呈味剤は含有しない基準組成物の味、臭気及び色と比較した。これらの基準試験は、対照1、対照2及び対照3と名付ける。それらの組成は、先の表に記載されている混合物の組成と一致し、ミントアロマもスクラロースも含有していない。対照3組成物は、10重量%のTinosorb(登録商標)M、すなわち、5乾燥重量%のビス−ベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールを含有する。
【0067】
苦味評価パネルのメイクアップ
苦味を等級付けるために、知覚の質の客観的及び記述的な特性決定の経験を有し、それにより快不快の要素を容易に無視することができるボランティアの参加者を募集した。
【0068】
参加者の再現性を確かめるために、参加者を一様に指導した。そのために、提示された製品の苦味を1〜5に等級付けるように参加者に求めた。
5=ゼロ
4=弱い
3=中程度
2=強い
1=非常に強い
【0069】
各参加者は苦味に対する感受性が同じではないが、このパネルの一員であるためには再現性がなければならない。十分な数の再現性のある参加者により、苦味の有意な平均、及び客観的な定量化を実現するように個人間の差異を平均化することが可能となる。
【0070】
ある参加者の再現性を判断するために、その参加者に複数の試料を目隠し状態で提示した。これらの試料の中に、同じ組成の試料を2つ導入した。各パネリストによるこれらの2つの試料の評価は同一であるはずである。しかし、全く同一の試料について1の違いは「許容」した。
【0071】
苦味の知覚分析の手順
苦味の等級付けの開始前に、各パネリストは、以下の条件を確立した。
−試験前の少なくとも2時間は何も飲食していない
−試験前の少なくとも2時間は喫煙していない
−可能な限り嗅覚的に最も中立な雰囲気の中にいる
−芳香付けされた化粧品を身につけないようにする
−熱すぎて味蕾の感受性を低下させる可能性がある食品を回避した。
【0072】
分析の開始前に、各パネリストは少量の水で口をゆすいだ。
【0073】
各パネリストは、0.2gの製品を取り、唇の周囲の領域に塗布した(パネリストは、唇に広がる顔への多めの塗布をシミュレートした)。パネリストは製品を「味わい」、調査票に記入した。
【0074】
新しい評価に移る前に、パネリストは、水で口をゆすぎ、数分間待った。次いで、パネリストは、口内でのこの製品の苦味の強度を等級付けた。
5=ゼロ
4=弱い
3=中程度
2=強い
1=非常に強い
【0075】
フレグランス評価パネルのメイクアップ
臭気/フレグランス要素は、嗅覚専門家が判断した。
【0076】
結果
結果を、以下の3つの表に示す。
【0077】
【表2】

【0078】
【表3】

【0079】
【表4】

【0080】
組成物1〜3は、化粧品業界において顔への塗布のために使用することができ、唇と偶発的に接触したときに不快感を与えず、親水性有機UV遮断剤の存在に付随する苦味を生じることができる。
【0081】
実施例2:ケアクリーム
以下の組成物を調製した。
【0082】
【表5】

【0083】
知覚分析
ステビアの抽出物及び塩化ナトリウムを排除することにより、組成物4に対応する対照組成物(対照4)を調製した。実施例1の手順に従って、知覚分析条件を作成した。結果を、以下の表に示す。
【0084】
【表6】

【0085】
顔に塗布するためのケアクリームは、唇と偶発的に接触したときに不快感を与えず、ベンゾフェノン−4の存在に付随する苦味を生じることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性相を含有し、顔用ケアクリーム、化粧水、フェイスセラム又は美容液、ファンデーション、乳液、化粧落としローション及び顔用日焼け防止製品からなる群から選択される製品の形態である化粧用組成物中の親水性有機UV遮断剤の苦味をマスキングする方法であって、前記組成物に、
甘味料から選択される、十分な量の少なくとも1種の第1の呈味剤、及び
味覚増強剤及びアロマからなる群から選択される、十分な量の少なくとも1種の第2の呈味剤
を添加するステップを含む方法。
【請求項2】
前記親水性有機UV遮断剤が、テレフタリリデンジカンファースルホン酸、ビス−ベンゾアゾリル誘導体、p−アミノ安息香酸及びその誘導体、2−フェニルベンゾイミダゾール−5−スルホン酸、サリチル酸トリエタノールアミン、3−(4’−スルホベンジリデン)カンファー、メチレンビス−ベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、3−(4’−トリメチルアンモニウムベンジリデン)−1−ボルナン−2−オンメチルスルフェート、ベンゾフェノン−4、ベンゾフェノン−5、ベンゾフェノン−9、親水性担体に吸着又は吸収された親油性有機UV遮断剤、並びにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記有機UV遮断剤が、ベンゾフェノン−4、2−フェニルベンゾイミダゾール−5−スルホン酸、若しくはメチレンビス−ベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、又はそれらの混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記親水性有機UV遮断剤が、前記組成物の重量の0.1〜5重量%を占める、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の呈味剤が、スクロース、グルコース、フルクトース、アセスルファムK、アスパルテーム、シクラミン酸、及び、さらにそのナトリウム、カリウム及びカルシウム塩、イソマルト、サッカリン、及び、さらにそのナトリウム、カリウム及びカルシウム塩、スクラロース、アリターム、タウマチン、グリチルリジン酸及びその塩、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、ステビオールグルコシド、ネオテーム、アスパルテーム−アセスルファム塩、タガトース、ポリグリシトールシロップ、マルチトール、ラクチトール、キシリトール、エリスリトール、並びに、それらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ステビオールグルコシドが、レバウジオシドA及びレバウジオシドAを含有する植物抽出物から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ステビオールグルコシドが、ステビアの抽出物、好ましくはステビアの水溶性抽出物である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の呈味剤がスクラロースである、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の呈味剤が、前記組成物の総重量の0.1〜1重量%、好ましくは0.2〜0.6重量%を占める、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の呈味剤が、塩化ナトリウム及びミントアロマから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の呈味剤の濃度が、前記組成物の重量に対して0.0005〜0.5重量%、好ましくは0.01〜0.3重量%の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の呈味剤がステビオールグルコシドであり、第2の呈味剤が塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化亜鉛及びそれらの混合物から選択される、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の呈味剤がスクラロースであり、第2の呈味剤が1種のアロマである、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の呈味剤がミントアロマである、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物が水中油エマルジョンの形態である、請求項1に記載の方法。


【公開番号】特開2013−60439(P2013−60439A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−193529(P2012−193529)
【出願日】平成24年9月3日(2012.9.3)
【出願人】(502189579)エルブイエムエイチ レシェルシェ (68)
【Fターム(参考)】