説明

V型シリンダーブロック成型用ダイカスト金型

【課題】 小型の中子駆動用シリンダでもボア中子の鋳造バック圧を抑えることが可能であると共に、バンク角θが小さくなってもさほど金型の厚みを増加させずとも済み、その結果既存のダイカストマシンに納めることが可能なV型シリンダーブロック成型用ダイカスト金型を提供すること。
【解決手段】 主型1に第1ボア中子2aと第2ボア中子2bを互いにシリンダボア形成部21a,21bが対向するように略ハの字状に配置せしめ、これら第1ボア中子と第2ボア中子の後方にはそれぞれ当該ボア中子2a,2bをキャビティ方向に進退動させるための中子駆動用シリンダ4a,4bを配設し、且つ前記主型1の左右両側には前記ボア中子2a,2bと交差するように係脱自在に係合してボア中子のキャビティ方向への進退動を規制するストッパー6a,6bを水平方向に進退動自在に配設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、V型多気筒エンジンに適用されるところの、複数の気筒が直線状に並設配置された第1気筒列と第2気筒列の組合わせが略V字状に配列されたV型シリンダーブロックをダイカスト鋳造するための金型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の金型では、図1に示す如くV型シリンダーブロックの第1気筒列と第2気筒列部分を成形する第1ボア中子2aと第2ボア中子2bが主型1に対してキャビティ方向にスライド自在に設置されると共に、第1ボア中子2aと第2ボア中子2bを上から見て互いにシリンダボア形成部が対向するように略ハの字状に配置される。
その為に、第1ボア中子及び第2ボア中子を金型(固定型)で固定することが出来ず、当該第1ボア中子及び第2ボア中子を進退動させるための中子駆動用シリンダを使用して鋳造バック圧を抑えなければならない。
【0003】
ボア中子の鋳造バック圧を直接中子駆動用シリンダで抑えるためにはかなり大型の駆動シリンダを必要とし、大型の駆動シリンダを使用すると動作が遅く鋳造サイクルが長引くだけでなく、当然のことながら金型が大型化し、ひいてはダイカストマシンが大型化してしまう不具合がある。
他方、略ハの字状に配置された第1ボア中子2aと第2ボア中子2bがなすバンク角θは、用いられるV型多気筒エンジンによって相違し、バンク角θが小さくなるほど必然的に金型の厚みが増加し、すると既存のダイカストマシンに納まらなくなってしまうことがあった。
尚、本願出願人が知っている上記の先行技術は、文献公知発明に係るものではないため、本願明細書には先行技術文献情報を開示しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はこのような現状に鑑みてなされたものであり、小型の中子駆動用シリンダでもボア中子の鋳造バック圧を抑えることが可能であると共に、バンク角θが小さくなってもさほど金型の厚みを増加させずとも済み、その結果既存のダイカストマシンに納めることが可能なV型シリンダーブロック成型用ダイカスト金型を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
斯かる目的を達成する本発明のV型シリンダーブロック成型用ダイカスト金型は、複数の気筒が直線状に並設配置された第1気筒列と第2気筒列の組合わせが略V字状に配列されたV型シリンダーブロックをダイカスト鋳造するための金型であって、
主型に第1ボア中子と第2ボア中子を互いにシリンダボア形成部が対向するように略ハの字状に配置せしめ、これら第1ボア中子と第2ボア中子の後方にはそれぞれ当該ボア中子をキャビティ方向に進退動させるための中子駆動用シリンダを配設し、且つ前記主型の左右両側には前記ボア中子と交差するように係脱自在に係合してボア中子のキャビティ方向への進退動を規制するストッパーを水平方向に進退動自在に配設してなることを特徴としたものである。
この際、前記第1ボア中子及び第2ボア中子をキャビティ方向に進退動させるための中子駆動用シリンダを、前記第1ボア中子と第2ボア中子毎にそれぞれ2個用い、それぞれ2個の中子駆動用シリンダを、前記ボア中子を間にして上下位置に当該ボア中子の移動方向と同じ向きに配置せしめ、これら2個の中子駆動用シリンダ並びに前記ボア中子を1つの連結アームを介して連結一体化することが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係るV型シリンダーブロック成型用ダイカスト金型は斯様に構成したので、第1ボア中子及び第2ボア中子は鋳造時においてストッパーによりしっかりと主型に機械的に固定されることになる。従って、第1ボア中子及び第2ボア中子を進退動させる小型の中子駆動用シリンダでも、これらボア中子の鋳造バック圧を抑えることが可能となる。
その結果、金型の奥行き(厚み)方向の寸法を抑制して金型のコンパクト化を図ることが出来る。
【0007】
しかも、第1ボア中子及び第2ボア中子のキャビティ方向への進退動を規制するストッパーを主型の左右両側に水平方向に進退動自在に配設してなるので、金型の上下方向には付帯設備がなくなる。従って、金型の整備時などに金型をダイカストマシンから降ろした際に、金型を天地方向にクレーンで吊ってそのまま(寝かせた状態に)置くことが可能となる。
【0008】
更に、特に請求項2に記載のV型シリンダーブロック成型用ダイカスト金型によれば、第1ボア中子及び第2ボア中子をキャビティ方向に進退動させるための中子駆動用シリンダを、第1ボア中子と第2ボア中子毎にそれぞれ2個用い、それぞれ2個の中子駆動用シリンダを、ボア中子を間にして上下位置に当該ボア中子の移動方向と同じ軸方向に配置せしめ、これら2個の中子駆動用シリンダ並びにボア中子を1つの連結アームを介して連結一体化させてなるので、小型の中子駆動用シリンダでも第1ボア中子及び第2ボア中子を進退動させることができるだけでなく、金型の奥行き(厚み)方向の寸法を抑制して金型のコンパクト化を図ることが出来るようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の具体的な好適実施例を、模式的に現した図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は図示した実施例のものに限定されるものではない。
【0010】
本発明に係る金型は、基本的には従来と同様に、一組の可動型と固定型等で構成されるが、図面(図1及び図2)では一例として可動型を構成する主型1と、その主型1に組み込まれた第1ボア中子2a及び第2ボア中子2bと、中子3a,3bを示している。
【0011】
主型1には、シリンダーブロックに鋳包まれるライナーを装着するための第1ボア中子2aと第2ボア中子2bが、互いにシリンダボア形成部21a,21bが対向するように平面から見て略ハの字状に配置されると共に、キャビティ方向に進退動可能に設置される。
【0012】
第1ボア中子2a及び第2ボア中子2bの先端部には、鋳造されたシリンダーブロックにおいて複数の気筒が直線状に並設配置されるように、それぞれ複数個のシリンダボア形成部21a,21bが並列直線状に配置形成され、各シリンダボア形成部21a,21bの外周に適当な間隔をおいてウオータージャケット形成部22a,22bが同心状に設けられている。シリンダーブロックに鋳包まれるライナー(図示せず)は、キャビティへの給湯に先だってボア中子2a,2bのシリンダボア形成部21a,21bの外周に貫挿装着され、第1ボア中子2aのシリンダボア形成部21aとウオータージャケット形成部22aでシリンダーブロックの第1気筒列が成形され、第2ボア中子2bのシリンダボア形成部21bとウオータージャケット形成部22bで第2気筒列が成形される。
【0013】
第1ボア中子2aと第2ボア中子2bの後方には、それぞれ当該ボア中子2a,2bをキャビティ方向に進退動させるための中子駆動用シリンダ4a,4bを設ける。この際、第1ボア中子2a及び第2ボア中子2bをキャビティ方向に進退動させるための中子駆動用シリンダ4a,4bを、第1ボア中子2aと第2ボア中子2b毎にそれぞれ2個用い、2個の中子駆動用シリンダとボア中子を1つの連結アームを介して連結一体化する。
すなわち、図3に示す如く、例えば第1ボア中子2aに対して2個の中子駆動用シリンダ4a,4aを用い、2個の中子駆動用シリンダ4a,4aを、当該第1ボア中子2aを間にして上下位置に配置すると共に、当該第1ボア中子2aの移動方向(矢印m)と同じ向きにその軸方向を配置せしめ、これら2個の中子駆動用シリンダ4a,4aと第1ボア中子2aを1つの連結アーム5aを介して連結一体化するものである。
【0014】
また、主型1の左右両側には、前記ボア中子2a,2bと交差するように係脱自在に係合して当該ボア中子2a,2bのキャビティ方向への進退動を規制するためのストッパー6a,6bを水平方向に進退動自在に配設する。
すなわち、主型1の左右両側からそれぞれストッパー6a,6bを第1ボア中子2a及び第2ボア中子2bと係脱自在に交差し係合するように水平方向に進退動自在に貫挿配設せしめ、該ストッパー6a,6bの基端側を駆動シリンダ7a,7bに連結させるものである。
【0015】
ストッパー6a,6bを第1ボア中子2a及び第2ボア中子2bにそれぞれ係脱自在に交差状に係合させる場合、ストッパー6a,6bをボア中子2a,2bに貫通させるようにしても良いが、ボア中子2a,2bの内部には冷却水が流通する冷却穴が形成されているので、ボア中子2a,2bの外側に駆動シリンダ7a,7bを形成し、その係合溝8a,8bにストッパー6a,6bを係脱自在に係合させるようにする。
この際、ストッパー6a,6bによるボア中子2a,2bのキャビティ方向への進退動をより確実によりしっかりと制止させることが出来るように、図3に示す如く、ボア中子2a,2bの上下に係合溝8a,8aを形成して、それぞれにストッパー6a,6aを係脱自在に係合させるようにすることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明実施の一例を示す模式断面図であり、第1ボア中子及び第2ボア中子がキャビティ側へ突出している状態。
【図2】同第1ボア中子及び第2ボア中子がキャビティ側から後退した状態を示す模式断面図。
【図3】ボア中子と中子駆動用シリンダ及びストッパーの関係を説明する模式斜視図。
【符号の説明】
【0017】
1:主型
2a:第1ボア中子 2b:第2ボア中子
21a,21b:シリンダボア形成部
22a,22b:ウオータージャケット形成部
3a,3b:中子
4a,4b:中子駆動用シリンダ
5a,5b:連結アーム
6a,6b:ストッパー
7a,7b:駆動シリンダ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の気筒が直線状に並設配置された第1気筒列と第2気筒列の組合わせが略V字状に配列されたV型シリンダーブロックをダイカスト鋳造するための金型であって、
主型に第1ボア中子と第2ボア中子を互いにシリンダボア形成部が対向するように略ハの字状に配置せしめ、これら第1ボア中子と第2ボア中子の後方にはそれぞれ当該ボア中子をキャビティ方向に進退動させるための中子駆動用シリンダを配設し、且つ前記主型の左右両側には前記ボア中子と交差するように係脱自在に係合してボア中子のキャビティ方向への進退動を規制するストッパーを水平方向に進退動自在に配設してなることを特徴とするV型シリンダーブロック成型用ダイカスト金型。
【請求項2】
前記第1ボア中子及び第2ボア中子をキャビティ方向に進退動させるための中子駆動用シリンダを、前記第1ボア中子と第2ボア中子毎にそれぞれ2個用い、それぞれ2個の中子駆動用シリンダを、前記ボア中子を間にして上下位置に当該ボア中子の移動方向と同じ向きに配置せしめ、これら2個の中子駆動用シリンダ並びに前記ボア中子を1つの連結アームを介して連結一体化してなる請求項1記載のV型シリンダーブロック成型用ダイカスト金型。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−98453(P2007−98453A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−294238(P2005−294238)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(000005256)株式会社アーレスティ (44)
【Fターム(参考)】