説明

VOC含有ガス処理装置及び処理方法

【課題】揮発性有機化合物(VOC)発生源からの排気において、効率的に、低エネルギーかつ小スペースで、簡便に、低設備費・低運転管理費で、VOC処理する方法及び装置を提供すること。
【解決手段】排気ガス発生源7と外気へのガス排出口6との間に設置されており、排気ガスのVOC処理部への導入部1、集積培養液のVOC処理部への供給部2、排気ガスと集積培養液との気液接触部3、微生物によるVOC分解処理部4、及び処理済ガスのVOC処理部からの排出部を有するVOC処理部を有し、集積培養液が、活性汚泥又は土壌と無機塩培地との混合物にVOCを加えて集積培養して得られる培養液である、VOC含有ガス処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、VOC含有ガスの処理装置及び方法に関する。より詳しくは、排気ガスに含まれるVOCの大気中への排出量を、簡便且つ効率良く低減することのできるVOC含有ガス処理装置及び処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
揮発性有機化合物(VOC)は、塗装、印刷、接着、洗浄、化学品製造その他の産業で広く使われており、大気中に年間185万トン(平成12年度環境省調査)排出されている。
【0003】
VOCは光化学オキシダントや浮遊粒子状物質(SPM)の原因物質とされ、重大な大気汚染物質のひとつとされている。
【0004】
平成16年5月には「大気汚染防止法」が改正され、工場等の固定発生源からのVOC排出が規制されることとなった。
【0005】
VOCの排出量を低減する方策としては、これまで、悪臭の処理に用いられる脱臭装置が使用されてきた。
【0006】
脱臭装置には、燃焼方式脱臭装置や、活性炭を用いた吸着方式脱臭装置等がある。しかし、これらの装置は、イニシャルコストもランニングコストも高く、大規模な工場でしか採用できなかった。
【0007】
一方、微生物を利用した生物脱臭装置は、ランニングコストが安いことから、下水処理場、集落排水処理場、畜産・し尿・ゴミ処理場等で利用されてきた(非特許文献1等参照)。
【0008】
生物脱臭装置に採用されている技術は、主に活性汚泥を用いる方法であり、活性汚泥と臭気成分を気液接触させて微生物で分解処理させるものである(特許文献1〜3等参照)。
【0009】
しかし、活性汚泥は、粘性があり、付着性が強いために、気液接触を効率よく低エネルギーで達成するのが難しかった。また装置サイズも巨大であった。
【0010】
また現実の排気ガスにはVOCガスだけではなく塗料ミストや印刷ミスト等の有機物、すなわち微生物の栄養である種々の炭素源が含まれている。したがって、VOC化合物を効率良く分解し得るよう、活性汚泥を馴致すること自体が難しかった。
【0011】
更に、悪臭の処理とVOC処理とでは、目的や要求性能が大きく異なる。
【0012】
悪臭の処理は数ppmでも感じる臭気を無くすのが目的であり、そのため、気液接触率を上げるため、排気の風速を極端に下げ、また装置サイズを極端に大きくする考え方が許容されてきた。
【0013】
一方、VOC処理は、塗装や印刷、接着、化学品製造等の工場から排出される排気ガスを対象にする。
【0014】
それらの工場から排出されるガスの排気風量は通常、小さな吹付塗装工場施設で5,000m/時以上、大きな吹付塗装工場施設では100,000m/時以上が一般的である。また、小さなグラビア印刷工場施設で3,000m/時以上、大きなグラビア印刷工場施設では25,000m/時以上が一般的である。従って排気風速は、秒速数十センチメートルから数メートルになる場合がある。また排気中のVOC濃度は、数百から数千ppmになり得る。
【0015】
VOCの処理では、このような排気ガスに含まれるVOCを、工業的に成立する効率とコストで低減することが必要となる。
【0016】
更に、VOC排出規制の対象になる、塗装、印刷、接着等の産業は圧倒的に中小企業が多く、VOC処理装置に係る費用及び処理装置の大きさが厳しく制限されている。
【0017】
従って、VOC処理においては、排気風量が大きい場合でも効率よくVOCを処理することができ、しかも、簡便に安価で、更に小スペースで利用可能な技術が強く求められていた。
【特許文献1】特開昭52−27061
【特許文献2】特開昭52−39570
【特許文献3】特開昭52−63859
【非特許文献1】(社)臭気対策研究協会編集 「生物脱臭の基礎と応用」改訂版、80〜137ページ、(社)臭気対策研究協会発行、 1994年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、排気ガス中に含まれるVOCを、低エネルギーで効率良く、簡便に、しかも小スペースで処理し得る方法及び装置を提供することを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者は、排気ガスに含有されるVOCの処理について、特に生物処理に着目して鋭意検討を重ねた結果、特定の集積培養液を使用することにより、効率のよいVOC処理が可能になることを見出し、更に鋭意検討を重ねて、本発明を完成するに至った。
【0020】
即ち、本発明は、以下のVOC含有ガス処理装置及びVOC含有ガス処理方法に関する。
【0021】
装置
項1:揮発性有機化合物(VOC)含有ガス処理装置であって、
処理装置が、排気ガス発生源と外気へのガス排出口との間に設置されており、
処理装置が、VOCを処理するためのVOC処理部を有しており、
VOC処理部は、排気ガスのVOC処理部への導入部、集積培養液のVOC処理部への供給部、排気ガスと集積培養液との気液接触部、微生物によるVOC分解処理部、及び処理済ガスのVOC処理部からの排出部を有しており、
前記集積培養液が、活性汚泥又は土壌と無機塩培地との混合物にVOCを加えて集積培養して得られる培養液であるVOC含有ガス処理装置。
【0022】
項2:VOC処理部が、更に、VOC分解処理部と気液接触部間の集積培養液循環部を有している項1記載の処理装置。
【0023】
具体的には、揮発性有機化合物(VOC)含有ガス処理装置であって、
処理装置が、排気ガス発生源と外気へのガス排出口との間に設置されており、
処理装置が、VOCを処理するためのVOC処理部を有しており、
VOC処理部は、排気ガスのVOC処理部への導入部、集積培養液のVOC処理部への供給部、排気ガスと集積培養液との気液接触部、微生物によるVOC分解処理部、VOC分解処理部と気液接触部間の集積培養液循環部、及び処理済ガスのVOC処理部からの排出部を有しており、
前記集積培養液が、活性汚泥又は土壌と無機塩培地との混合物にVOCを加えて集積培養して得られる培養液である、VOC含有ガス処理装置。
【0024】
項3:集積培養液が活性汚泥又は土壌と無機塩培地との混合物に、トルエン、キシレン及びエチルベンゼンからなる群から選ばれる1種以上のVOCを加えて得られる培養液である項1又は2に記載の装置。
【0025】
項4:集積培養液のトルエンを資化する能力が500g/kg−MLSS/日以上である項1〜3のいずれかに記載の装置。
【0026】
具体的には、集積培養液が、活性汚泥又は土壌と無機塩培地との混合物にVOCを加えて集積培養して得られる培養液であって、トルエンを資化する能力が500g/kg−MLSS/日以上の液である項1〜3のいずれかに記載の装置。
【0027】
項5:処理装置が、更に、前処理部を有しており、前処理部は排気ガス発生源とVOC処理部との間に設置され、
前処理部は、排気ガスの前処理部への導入部、前処理液の前処理部への供給部、排気ガスと前処理液との気液接触部、微生物による前分解処理部、前処理されたガスの前処理部からVOC処理部への排出部を有しており、
前処理液が、各種油脂類、溶剤、乳化剤、塗料樹脂、印刷インキ樹脂、接着剤樹脂、有機顔料、染料等を好んで資化する微生物群を増殖させた液であり、
微生物群が、フラバオバクテリューム種、シェードモナス種、アシイノバクター種、メタノカーカウス種、マイクロカーカウス種、バクテリアム種、マイクバクテリウム種、アクロモヴァクター種及びエロウモウナス種からなる群から選ばれる複数種属を含む、項1〜4のいずれかに記載の装置。
【0028】
項6:前処理部が、更に、前分解処理部と気液接触部間の前処理液循環部を有している項5記載の処理装置。
【0029】
具体的には、処理装置が、更に、前処理部を有しており、前処理部は排気ガス発生源とVOC処理部との間に設置され、
前処理部は、排気ガスの前処理部への導入部、前処理液の前処理部への供給部、排気ガスと前処理液との気液接触部、微生物による前分解処理部、前分解処理部と気液接触部間の前処理液循環部、及び前処理されたガスの前処理部からVOC処理部への排出部を有しており、
前処理液が、各種油脂類、溶剤、乳化剤、塗料樹脂、印刷インキ樹脂、接着剤樹脂、有機顔料、染料等を好んで資化する微生物群を増殖させた液であり、
微生物群が、フラバオバクテリューム種、シェードモナス種、アシイノバクター種、メタノカーカウス種、マイクロカーカウス種、バクテリアム種、マイクバクテリウム種、アクロモヴァクター種及びエロウモウナス種からなる群から選ばれる複数種属を含む、項5に記載の装置。
【0030】
項7:集積培養液及び/又は前処理液が、非イオン系界面活性剤が添加された液である項1〜6のいずれかに記載の装置。
【0031】
具体的には、集積培養液が、活性汚泥又は土壌と無機塩培地との混合物にVOCを加えて集積培養して得られる培養液に非イオン系界面活性剤を添加して得られる液である項1〜6のいずれかに記載の装置が挙げられる。
【0032】
また、前処理液が、微生物群を増殖させた液に非イオン系界面活性剤を添加して得られる液である項1〜6のいずれかに記載の装置が挙げられる。
【0033】
また、項1〜7の装置における具体的態様には、更に以下の装置が含まれる。
【0034】
・集積培養液の液中浮遊物質量(MLSS)が10,000mg/L以下である項1〜7のいずれかに記載の装置。
【0035】
・VOC処理部における気液接触部及び/又は前処理部における気液接触部が、液膜式、液滴式及び気泡式からなる群から選ばれる1以上の方式により気液接触を行う、項1〜7のいずれかに記載の装置。
【0036】
方法
項8:揮発性有機化合物(VOC)含有ガスの処理方法であって、
排気ガス発生源と外気へのガス排出口との間で、排気ガスと集積培養液とを気液接触させる工程、及び、
気液接触により集積培養液に吸収乃至捕捉されたVOCを微生物により分解処理する工程を有し、
集積培養液が活性汚泥又は土壌と無機塩培地との混合物にVOCを加えて集積培養して得られる培養液である、VOC含有ガス処理方法。
【0037】
項9:更に、集積培養液を、微生物による分解処理工程と気液接触工程間で循環させて用いる工程を有する項8に記載の処理方法。
【0038】
具体的に、揮発性有機化合物(VOC)含有ガスの処理方法であって、
排気ガス発生源と外気へのガス排出口との間で、排気ガスと集積培養液とを気液接触させる工程、
気液接触により集積培養液に吸収乃至捕捉されたVOCを微生物により分解処理する工程、及び、集積培養液を、微生物による分解処理工程と気液接触工程間で循環させて用いる工程を有し、
集積培養液が活性汚泥又は土壌と無機塩培地との混合物にVOCを加えて集積培養して得られる培養液である、VOC含有ガス処理方法。
【0039】
項10:集積培養液が、活性汚泥又は土壌と無機塩培地との混合物にトルエン、キシレン及びエチルベンゼンからなる群から選ばれる1種以上のVOCを加えて集積培養して得られる培養液である項8又は9に記載の方法。
【0040】
項11:集積培養液のトルエンを資化する能力が500g/kg−MLSS/日以上である項8〜10のいずれかに記載の方法。
【0041】
具体的には、集積培養液が、活性汚泥又は土壌と無機塩培地との混合物にVOCを加えて集積培養して得られる培養液であって、トルエンを資化する能力が500g/kg−MLSS/日以上の液である項8〜10のいずれかに記載の方法。
【0042】
項12:更に、排気ガスの前処理を行うための前処理工程を含み、
前処理工程は、排気ガスを集積培養液に接触させる前に、排気ガスと前処理液とを気液接触させる工程、及び、
気液接触により前処理液に吸収乃至捕捉された前処理物を微生物により分解処理する工程を有し、
前処理液が、各種油脂類、溶剤、乳化剤、塗料樹脂、印刷インキ樹脂、接着剤樹脂、有機顔料、染料等を好んで資化する微生物群を増殖させた処理液であり、
前記微生物群が、フラバオバクテリューム種、シェードモナス種、アシイノバクター種、メタノカーカウス種、マイクロカーカウス種、バクテリアム種、マイクバクテリウム種、アクロモヴァクター種及びエロウモウナス種からなる群から選ばれる2以上の複数種属を含んでいる、項8〜11のいずれかに記載の処理方法。
【0043】
項13:前処理工程における微生物により分解処理する工程が、
気液接触により前処理液に吸収乃至捕捉された前処理物及びVOCを微生物により分解処理する工程である項12に記載の処理方法。
【0044】
具体的に、更に、排気ガスの前処理を行うための前処理工程を含み、
前処理工程は、排気ガスを集積培養液に接触させる前に、排気ガスと前処理液とを気液接触させる工程、及び、
気液接触により前処理液に吸収乃至捕捉された前処理物及びVOCを微生物により分解処理する工程を有し、
前処理液が、各種油脂類、溶剤、乳化剤、塗料樹脂、印刷インキ樹脂、接着剤樹脂、有機顔料、染料等を好んで資化する微生物群を増殖させた処理液であり、
前記微生物群が、フラバオバクテリューム種、シェードモナス種、アシイノバクター種、メタノカーカウス種、マイクロカーカウス種、バクテリアム種、マイクバクテリウム種、アクロモヴァクター種及びエロウモウナス種からなる群から選ばれる2以上の複数種属を含んでいる、項8〜11のいずれかに記載の処理方法。
【0045】
項14:更に、前処理液を、微生物による分解処理工程と気液接触工程間で循環させて用いる工程を有する項12又は13に記載の処理方法。
【0046】
具体的に、更に、前処理工程を含み、
前処理工程は、排気ガスを集積培養液に接触させる前に、排気ガスと前処理液とを気液接触させる工程、
気液接触により前処理液に吸収乃至捕捉された前処理物を微生物により分解処理する工程、及び、
前処理液を、微生物による分解処理工程と気液接触工程間で循環させて用いる工程を有し、
前処理液が、各種油脂類、溶剤、乳化剤、塗料樹脂、印刷インキ樹脂、接着剤樹脂、有機顔料、染料等を好んで資化する微生物群を増殖させた処理液であり、
前記微生物群が、フラバオバクテリューム種、シェードモナス種、アシイノバクター種、メタノカーカウス種、マイクロカーカウス種、バクテリアム種、マイクバクテリウム種、アクロモヴァクター種及びエロウモウナス種からなる群から選ばれる2以上の複数種属を含んでいる、項8〜13のいずれかに記載の処理方法。
【0047】
項15:集積培養液及び/又は前処理液が、非イオン系界面活性剤が添加された液である項8〜14のいずれかに記載の処理方法。
【0048】
具体的には、集積培養液が、活性汚泥又は土壌と無機塩培地との混合物にVOCを加えて集積培養して得られる培養液に非イオン系界面活性剤を添加して得られる液である項8〜14のいずれかに記載の方法が挙げられる。
【0049】
また、前処理液が、微生物群を増殖させた液に非イオン系界面活性剤を添加して得られる液である項8〜14のいずれかに記載の方法が挙げられる。
【0050】
項8〜14に記載の方法における具体的態様には、更に以下の方法が含まれる。
・集積培養液の液中浮遊物質量(MLSS)が10,000mg/L以下である項8〜14のいずれかに記載の方法。
・気液接触部及び/又は前処理気液接触部が、液膜式、液滴式及び気泡式からなる群から選ばれる1以上の方式により気液接触を行う、項8〜14のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0051】
本発明によれば、排気風量や排気風速が大きい場合でも効率よくVOCを処理することができ、しかも、簡便に安価で、更に小スペースで利用可能なVOC処理装置及び処理方法が提供される。
【0052】
本発明においては、VOC処理のために、活性汚泥又は土壌と無機培地との混合物にVOCを加えて得られる集積培養液を用いる。
【0053】
このため、気液接触による、小スペースで効率的なVOCの処理が可能となる。
【0054】
本発明において、VOCを資化する微生物は単離する必要はなく、集積培養液の形で適用させるため、操作が簡便である。
【0055】
更に、粘性が低く、付着性も小さい液となるため、低エネルギーで効率の高い処理が可能となる。また、稼動コストも低減される。
【0056】
更に装置の構成が簡単であることからイニシャルコストが低い。また、装置のメンテナンス、洗浄が容易であり、消耗品が少なく、交換部品も少ないことから、ランニングコストも低い。
【0057】
更に、微生物によるVOCの分解処理が行われるため、2次汚染の心配もない。
【0058】
また、VOC処理に用いる集積培養液におけるVOC以外の有機化合物を低濃度にして、微生物を極端な飢餓状態とすることにより、高い効率でVOCを処理することを可能にする。
【0059】
このように、本発明によれば、簡便で安価に、小スペースで効率のよいVOC処理を行えるVOC含有ガス処理装置及び処理方法が提供される。
【0060】
更に、本発明においては、VOC処理の前段階として、特定の前処理が行われるVOC処理装置及び処理方法が提供される。
【0061】
本発明において前処理に用いる液は、各種油脂類、溶剤、乳化剤、塗料樹脂、印刷インキ樹脂、接着剤樹脂、有機顔料、染料等を好んで資化する微生物群を増殖させた液であり、
微生物群が、フラバオバクテリューム種、シェードモナス種、アシイノバクター種、メタノカーカウス種、マイクロカーカウス種、バクテリアム種、マイクバクテリウム種、アクロモヴァクター種及びエロウモウナス種からなる群から選ばれる複数種属を含む液を用いる。
【0062】
該特定の液を用いて前処理を行うことにより、VOCの一部やVOCとともに飛来する排気中のミストや液滴の有機成分を吸収ないし捕捉して予め分解処理することが可能となり、これにより、VOCの分解処理効率を一段と高めることができる。
【0063】
また、集積培養液及び/又は前処理液に界面活性剤を添加することもでき、これにより、処理の対象となるVOCや他の有機成分が溶液中に捕捉される量を増やし、処理効率を一段と高めることもできる。
【0064】
VOCの排出量削減が求められている、塗装、印刷、接着、洗浄、化学品製造、食品・医薬製造等の産業は圧倒的に中小企業が多く、VOC処理装置の採用には処理費用や処理スペースに厳しい制限がある。
【0065】
本発明によれば、簡便で安価に効率良くVOCを処理することができ、しかも小スペースでも利用可能なVOC処理装置及び処理方法が提供され、それらの各種産業において好適に利用可能なVOC処理技術が提供される。
【0066】
このように本発明は、特に中小企業におけるVOC処理能力向上に大きく貢献するものであり、VOC排出量の削減に大きく寄与するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0067】
以下、本発明について、更に詳細に説明する。
【0068】
揮発性有機化合物(VOC)
本発明における揮発性有機化合物(VOC)とは、大気中に排出され、又は飛散したときに気体である有機化合物をいう。本発明のVOCには、平成16年改正大気汚染防止法の規制対象になった揮発性有機化合物全般が含まれる。
【0069】
VOCとして挙げられる具体的化合物には、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、石油系炭化水素類、イソプロパノール、ブタノール、メタノール、エタノール、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が含まれる。
【0070】
VOC含有ガス
本発明における処理の対象となるVOC含有ガスには、塗装、印刷、接着、洗浄、化学品製造、食品・医薬製造、その他各種産業における工場で発生する排気ガスであって、VOCを含有するガスが含まれる。
【0071】
VOC含有ガスには、VOC以外にも、塗装、印刷、接着、洗浄、化学品製造、食品・医薬製造、その他各種産業において使用される化合物、又は、それらの変成物が含まれていてもよい。
【0072】
そのような化合物には、例えば、乾燥工程で発生するアルデヒド類やアミン類などの酸化生成物、未反応モノマー、未反応硬化剤、各種添加剤等が含まれる。
【0073】
VOCや他の成分、またはそれらの混合物は、ミストないし液滴状の成分として含まれていてもよい。
【0074】
例えば、VOC含有ガスには、塗装業で排出される塗装ミスト、印刷業で排出される印刷ミスト、接着業で排出される接着ミスト、医薬、食品の乾燥工程にて排出されるミスト、VOCを溶剤とする各種樹脂やゴム成分等が含まれていてもよい。
【0075】
具体的に、塗装におけるVOC含有ガスには、VOCに溶解ないし共存する塗料成分、塗料樹脂、顔料、添加剤等を含む塗装ミストが含まれていてもよい。
【0076】
1.VOC含有ガス処理装置
本発明におけるVOC含有ガス処理装置は、排気ガス発生源と外気への排気排出口の間に設置され、VOCを処理するためのVOC処理部を有している。
【0077】
1−1.VOC処理部
VOC処理部は、排気ガスのVOC処理部への導入部(排気ガス導入部)、集積培養液のVOC処理部への供給部(集積培養液供給部)、排気ガスと集積培養液との気液接触部、微生物によるVOC分解処理部、及び処理済ガスのVOC処理部からの排出部(処理済ガス排出部)を有している。
【0078】
好ましくは更にVOC処理部から気液接触部への集積培養液循環部を有している。
【0079】
(1)排気ガス導入部
排気ガス導入部は、排気ガスをVOC処理部に導入する機能を有する。
【0080】
排気ガスには、排気ガス発生源から発生したガス、又は、発生後、前処理等を受けたが更に処理が必要とされるガスが含まれる。
【0081】
排気ガス導入部の構造は、所望に応じて、適宜設定することができる。
【0082】
例えば、排気ガス導入部には、ガスを前処理するためのフィルターを設けてもよい。また、ガスの導入量を調節するためのスイッチや弁を適宜設けることもできるし、ガス流路の断面積を適宜調整する手段や各種充填材を備えることもできる。また、排気ガス導入部には、ガス分散方式における気泡微細化機能や、液分散方式における渦流形成機能等、気液接触効率を上げるための機能を有する手段を適宜設けることもできる。例えば、金属メッシュや多孔板を設けることができる。
【0083】
VOC含有ガス処理装置が、前処理部を有する場合、排気ガス導入部は、前処理済ガス排出部と接続することもできる。
【0084】
(2)集積培養液供給部
集積培養液供給部は、VOC処理に用いる集積培養液をVOC処理部内に供給する機能を有する。
【0085】
集積培養液供給部には、所望に応じて、適当な手段を適宜設けることができる。例えば、液分散方式における該溶液を噴霧又は散布するための手段を適宜設けることができる。また、ガス分散方式におけるガスとの接触効率を上げるための攪拌その他手段を適宜設けることができる。
【0086】
(3)排気ガスと集積培養液との気液接触部
気液接触部は、排気ガスと集積培養液とを接触させて、集積培養液中にVOCを吸収ないし捕捉させる機能を有する。
【0087】
気液接触
気液接触の方式は、適宜公知の方式を適用することができる。
【0088】
例えば、液をガス中に分散させる液分散方式、ガスを液中に分散させるガス分散方式のどちらも適用することができる。
【0089】
液分散方式には、液を微細な液滴にして気体と接触させる液滴式や、液を液膜にして気体と接触させる液膜式が含まれる。また、ガス分散方式には、気泡を発生させる気泡式が含まれる。
【0090】
これらは1種単独で用いることもでき、2種以上組合せて用いることもできる。
【0091】
換言すると、気液接触は、液膜式、液滴式及び気泡式からなる群から選ばれる1以上の方式により行うことができる。
【0092】
また、具体的な接触型式も特に限定されず、適宜公知の型式を用いることができる。
【0093】
例えば、液分散型では、充填塔、流動式吸収塔、十字流式接触塔等、噴霧塔(スプレー塔)、サイクロンスクラバー、ベンチュリスクラバー、ジェットスクラバー、回転円板式吸収塔、カスケード式吸収塔、溜水式乱流型吸収塔等の型式が挙げられる。
【0094】
また、ガス分散型では、気泡塔、気泡攪拌槽、泡鐘塔、多孔板塔、漏れ棚塔等の型式が挙げられる。
【0095】
これらの型式は、単独で用いることもでき、複数を多段に構成して用いることもできる。また2種以上の型式を組合せて用いることもできる。
【0096】
このうち、特に、液分散型とガス分散型を兼ね備えた、漏れ棚塔、泡鐘塔、多孔板塔、十字流式接触塔等の型式が好ましい。
【0097】
ただし、微生物が生き物であることから、過剰な圧力や温度の急激な条件変化がないことが好ましい。また、配管やノズルの閉塞の危険がないものが好ましい。
【0098】
(4)VOC分解処理部
VOC分解処理部は、集積培養液に吸収ないし捕捉されたVOCを、微生物によって十分に分解処理させる機能を有する。
【0099】
VOC分解処理部は、集積培養液を貯留するためのリアクター又は槽を含む構成とすることができる。リアクター又は槽は、集積培養液に吸収ないし捕捉されたVOCが微生物により分解処理するために必要な時間、液が滞留できる程度の容積を有することが好ましい。更に、ガス中のVOCを十分に吸収ないし捕捉し得る液量を貯留できる程度の容積を有することが好ましい。
【0100】
VOC分解処理部には、微生物が分解処理のための好気性活動を活発に行うためのエアレーション手段を設けることが望ましい。
【0101】
また、新陳代謝のための無機塩類補給手段や、微生物の栄養素となる炭素源の補給手段、或いは、微生物の補給手段を適宜設けることもできる。
【0102】
また、残渣を分離するための精製手段、例えば遠心分離機や液体サイクロンなどを設けることもできる。
【0103】
また分解効率を一定以上のレベルに維持又は管理するために、温度、pH、MLSS濃度、分解処理能力、生物相等の観測手段を適宜設けることもできる。
【0104】
また、微生物を固定化するための多孔質セラミックス、樹脂発泡体、不織布等の担体を適宜設置することもできる。
【0105】
また、蒸発した水分を適宜補給する手段を設けることも望ましい。
【0106】
(5)処理済ガス排出部
処理済ガス排出部は、集積培養液と接触した後のガスを、VOC処理部から排出する機能を有する。処理済ガス排出部から排出されたガスは、外気へのガス排出口又は次処理を行う部分に送られる。
【0107】
処理済ガス排出部から排出されるガスは、VOC量が大幅に低減されている。
【0108】
処理済ガス排出部には、所望に応じて適当な手段を設けることができる。例えば、処理済ガス排出部には、微生物液を大気に放散させないためのエリミネーターやフィルター、各種分解装置等の手段を適宜設けることもできる。
【0109】
(6)集積培養液循環部
VOC処理部は、更に、集積培養液循環部を有していることが好ましい。
【0110】
集積培養液循環部は、液分散方式においてVOC分解処理槽にある集積培養液を気液接触部へ循環させる機能を有する。
【0111】
ガス分散方式においてVOC分解処理部にガスを吹き込む気泡塔の場合は、液体の貯槽に排気ガスを吹き込んで気液接触させるため、循環部は特に必要でない。一方、段塔、泡鐘塔、多孔板塔、漏れ棚塔等の多段塔の場合は、VOC分解処理槽にある集積培養液を気液接触部へ循環させる機能が必要となる。
【0112】
1−2.集積培養液
集積培養液とは、特定の条件下で特定の性質を有する微生物集団を選択的に増殖させて得られる培養液である。
【0113】
本発明のVOCガス処理装置では、集積培養液をVOC含有ガスと接触させて処理を行う。集積培養液に含まれる微生物によりVOCの分解処理が行われる。
【0114】
本発明の集積培養液は、活性汚泥又は土壌と無機塩培地との混合物に、VOCを添加して集積培養することにより得ることができる。
【0115】
具体的には、以下のように得ることができる。
【0116】
まず、活性汚泥もしくは土壌の少量を、無機塩類の水溶液からなる培地に混合し、微量のVOCを添加して数日間好気性環境で振盪培養する。
【0117】
次いで、得られた培養液の少量を、無機塩類の水溶液からなる培地に混合し、微量のVOCを添加して数日間好気性環境で振盪培養する。
【0118】
これをくり返すことにより、無機塩類の水溶液にVOCのみを資化して増殖できる微生物が豊富な集積培養液が得られる。
【0119】
無機塩類としては、硝酸アンモニウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、硫酸マグネシウム、塩化第二鉄、硫酸亜鉛、塩化マンガン、塩化ナトリウム、塩化カルシウム等が挙げられる。
【0120】
集積培養に用いるVOCは、適宜設定することができる。具体的に、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、その他のVOCを用いることができる。
【0121】
このうち、特に、トルエン、キシレン及びエチルベンゼンからなる群から選ばれる1種以上のVOCを添加することにより集積培養することが好ましい。
【0122】
これらを用いて得られる集積培養液は、使用するVOCが限定されているにも拘らず、トルエン、キシレン、エチルベンゼン以外のVOC、例えば、酢酸エチル、メチルエチルケトン、イソプロパノール、ジオキサン等の他のVOCの分解処理も可能となる場合が多く、好適である。
【0123】
(1)VOC分解処理能力及びトルエン資化能力
集積培養液のVOC分解処理能力は、1kg相当のMLSS量が1日にVOCを分解処理できる最大限界負荷値として求められる。
【0124】
集積培養により得られた微生物液のVOC分解処理能力は、例えば、BOD測定器を用いて、「化学物質の生分解試験」の方法に準じて簡単に確認することができる。
【0125】
「化学物質の生分解試験」は昭和49年に定められた規定(昭和49年総理府、厚生省、通商産業省令第1号。環保業第5号、薬発第615号、49基局第392号)で、微生物等による化学物質の分解度試験の標準になる方法であり、VOCを微生物分解するに必要な酸素量を測定することにより、分解処理能力を定量化している。
【0126】
資化能力は、簡易的には、密閉容器中に測定対象液を入れ、一定温度に保管後の気相のVOC濃度をガスクロ分析により求め、検量線から液中のVOC濃度を求めることにより、得ることができる。
【0127】
VOCに種々の化合物が含まれるが、本発明の集積培養液のVOC分解処理能力は、代表してトルエンの資化能力(1kg相当のMLSS量が1日にトルエンを分解処理できる最大限界負荷値)を目安として表される。
【0128】
微生物の資化能力はVOCの種類によって異なるため、目安となる物質を検討した結果、トルエンが水に微量溶解し、微生物資化能力もあり、VOCに含まれる他の化合物との相関が取りやすいため、適当であることを見出した。
【0129】
本発明において、集積培養液のトルエン資化能力は、500g/kg−MLSS/日以上、好ましくは1,000g/kg−MLSS/日以上、より好ましくは5,000g/kg−MLSS/日以上、更に好ましくは10,000g/kg−MLSS/日以上が望ましい。
【0130】
この程度の資化能力があれば、比較的高濃度VOCを含む比較的大きな排気風量の排気ガスに対応でき、VOC分解処理槽を小さくでき、処理液を少なくでき、MLSS濃度を低くできることによって、イニシャルコストもランニングコストも低くでき、簡便な運転が可能になる。
【0131】
ただし、VOC分解処理能力の上限値は、VOCを資化する集積培養液の気液接触効率と、運転操作性等から、集積培養液の液中浮遊物質量(MLSS)の許容される上限によって自ずと決まる。また、集積培養の集積回数と集積培養液の増殖からくる経済性からも上限は自ずと決まってくる。
【0132】
(2)液中浮遊物質量(Mixed Liquor Suspended Solids、MLSS)
廃水処理での標準活性汚泥法では、液中浮遊物質量(MLSS)は約2,000〜3,000mg/Lとされ、活性汚泥脱臭法の場合、汚泥濃度が濃い方が脱臭効果も高いとされてMLSSは約5,000〜10,000mg/Lが推奨されている(非特許文献1第89頁等参照)。しかし、MLSSが高くなると、発泡したり、液の粘度や付着性が高くなり、装置への付着や閉塞が起こり易くなったりする。
【0133】
本発明においては、VOC処理に用いる液のVOC分解処理能力を高く設定できるために液中浮遊物質量(MLSS)は低くても性能が発揮できる。
【0134】
本発明における集積培養液のMLSSは10,000mg/L以下程度、好ましくは5,000mg/L以下程度、より好ましくは1,000mg/L以下程度、更に好ましくは500mg/L以下でも可能である。
【0135】
ただし、MLSSが低くなり過ぎると、集積培養液のVOC分解処理能力が低下してくるので、MLSSの下限は集積培養液のVOC分解処理能力の下限によって自ずと決まる。
【0136】
(3)集積培養液の有機/無機化合物濃度
本発明において、VOCを資化する集積培養液は常に飢餓状態に有ることが望ましい。特に、排気ガス中のVOC成分のみを炭素源として増殖できる状態が好ましい。また、排気ダクト停止中等の炭素源が供給されないか若しくは少ない場合は、微生物の生存に必要な少量のVOCを添加する程度が好ましい。
【0137】
培養液に含まれる有機化合物濃度を極端に低い状態とすることにより、微生物を極端な飢餓状態として、より高い効率でVOCを資化することを可能にする。微生物の栄養源となる糖蜜、ブドウ糖、デキストリン、澱粉等の有機化合物ないし炭素源を加える操作も特に必要でなくなる。特に、VOCを好んで資化するように馴致された微生物がVOC以外の有機化合物を資化できる場合は、その種の有機化合物を添加ないし共存させるべきではない。
【0138】
一方、集積培養液は、微生物の新陳代謝に必要なカリウム、リン、窒素、その他金属イオンを含む無機塩類を含んでいることが好ましい。
【0139】
無機塩類としては、例えば、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等が可能である。また更に、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、マンガン等の無機塩類を含むことが好ましく、塩化ナトリウム、塩化第二鉄、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸亜鉛、塩化マンガン等が挙げられる。
【0140】
これらの濃度は、通常の培養に使用される濃度範囲で選定できる。
【0141】
(5)界面活性剤又はオイル
本発明に用いる集積培養液には、微生物の分解処理能力を著しく低下させない範囲で、液中に、界面活性剤を添加することができる。
【0142】
気液接触による排気ガス中のVOCの捕捉は、集積培養液中の微生物が発する界面活性剤的な成分が効果的な役割を果たすと考えられるが、その効果が低い場合は、界面活性剤の添加により補足することができる。界面活性剤を添加することにより、気液接触効率が補強され、排気中のVOCや有機物成分が液中により吸収ないし捕捉しやすくなる。
【0143】
界面活性剤は微生物に対して毒物にならない非イオン系界面活性剤が特に好ましい。例えば、非イオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油などが好適に用いられる。
【0144】
集積培養液における界面活性剤の添加割合は、通常0.03〜3%程度、好ましくは、0.05〜1%程度、特に0.1〜0.5%程度である。
【0145】
また、気液接触による排気ガス中のVOCの捕捉効果を上げるために、気液接触させる液体として、VOCを溶解するオイルを利用し、オイルに捕捉したVOCを集積培養液ないし前処理液中の微生物が分解処理することもできる。
【0146】
オイルとしてはたとえば、シリコンオイル、ミネラルオイル、高沸点石油系炭化水素、流動パラフィン等が可能である。
【0147】
(6)集積培養液の具体的態様
VOCを資化する集積培養液は効率よくVOCを分解処理して、装置サイズを小さくし、循環液量を少なくするためにも、VOC分解処理能力はできるだけ高いことが望ましい。
【0148】
また、粘性が低いこと、更に有機化合物濃度が低いことが、低エネルギー効率で高い処理効率を得るために好ましい。
【0149】
好ましい集積培養液には、トルエン資化能力が500g/kg−MLSS/日以上である培養液が含まれる。
【0150】
更に、トルエン資化能力が1,000g/kg−MLSS/日以上である培養液が含まれる。
【0151】
また好ましい集積培養液には、トルエン資化能力が500g/kg−MLSS/日以上である培養液に、非イオン系界面活性剤を0.03〜3%添加して得られる液が挙げられる。
【0152】
1−3.前処理部
本発明のVOC含有ガス処理装置は、排気ガスの前処理を行うための前処理部を有することが好ましい。
【0153】
VOCを処理するVOC処理部には、処理の対象がVOCに特化されるよう、VOC以外の成分の混入はできるだけ避けたい。そのために、排気ガスが、VOC処理部に導入される前に、VOC以外の成分ができる限り、除去されていることが好ましい。
【0154】
具体的には、ミストや液滴などとして含まれる、VOC以外の有機化合物成分、並びに、有機化合物成分以外のゴミ、異物、無機顔料等の無機成分ができる限り、除去されていることが好ましい。
【0155】
また前処理部において、分解処理され易い一部のVOCを分解処理し、分解処理し難い残りのVOCを集積培養液によるVOC処理部で分解処理することは、本発明の好ましい態様に含まれる。この機能分担により、集積培養液によるVOC処理部の処理効率を更に高めることができる。
【0156】
これらにより、集積培養液に含まれる微生物のVOC分解処理能力を高いレベルで維持することが可能となる。
【0157】
前処理の手段や方法は、適宜設定することができるが、特に、本発明においては前処理部が、排気ガスの前処理部への導入部(排気ガス前処理導入部)、前処理液の前処理部への供給部(前処理液供給部)、排気ガスと前処理液との前処理気液接触部、前処理物を微生物により資化する前分解処理部、前分解処理部から気液接触部への前処理液循環部、前処理されたガスの前処理部からの排出部(前処理済ガス排出部)を有することが好ましい。
【0158】
(1)排気ガス前処理導入部
排気ガス前処理導入部は、排気ガス又は排出後、適当な処理を受けているが更なる処理が必要とされるガスを前処理部に導入する機能を有する。
【0159】
排気ガス前処理導入部の構造は、所望に応じて、適宜設定することができる。
【0160】
例えば、排気ガス前処理導入部には、ガスを前処理するためのフィルターを設けてもよい。また、ガスの導入量を調節するためのスイッチや弁を適宜設けることもできる。ガス流路の断面積を調整する手段や各種充填材を備えることもできる。また、例えば、排気ガス導入部には、ガス分散方式における気泡微細化手段や、液分散方式における渦流形成手段等の気液接触効率を上げるための手段を適宜設けてもよい。
【0161】
(2)前処理液供給部
前処理液供給部は、前処理液を、前処理部内に供給する機能を有する。
【0162】
前処理液供給部には、所望に応じて、適当な手段を適宜設けることができる。例えば、前処理液供給部は、液分散方式における該溶液を噴霧又は散布するための手段を適宜有することができる。また前処理液供給部は、ガス分散方式におけるガスとの接触効率を上げるための攪拌その他手段を適宜有することができる。
【0163】
(3)排気ガスと前処理液との前処理気液接触部
前処理液との気液接触部は、集積培養液に代えて前処理液を用いる以外は、前記1−1(3)で記載した排気ガスと集積培養液との気液接触部と同様の構成とすることができる。
【0164】
例えば、気液接触の方式は適宜設定することができ、液をガス中に分散させる液分散方式、ガスを液中に分散させるガス分散方式のどちらも適用することができる。
【0165】
液分散方式には、液を微細な液滴にして気体と接触させる液滴式や、液を液膜にして気体と接触させる液膜式が含まれる。また、ガス分散方式には、気泡を発生させる気泡式が含まれる。
【0166】
これらは1種単独で用いることもでき、2種以上組合せて用いることもできる。
【0167】
換言すると、気液接触は、液膜式、液滴式及び気泡式からなる群から選ばれる1以上の方式により行うことができる。
【0168】
また、具体的な接触型式も特に限定されず、適宜公知の型式を用いることができる。
【0169】
例えば、液分散型では、充填塔、流動式吸収塔、十字流式接触塔等、噴霧塔(スプレー塔)、サイクロンスクラバー、ベンチュリスクラバー、ジェットスクラバー、回転円板式吸収塔、カスケード式吸収塔、溜水式乱流型吸収塔等の型式が挙げられる。
【0170】
また、ガス分散型では、気泡塔、気泡攪拌槽、泡鐘塔、多孔板塔、漏れ棚塔等の型式が挙げられる。
【0171】
これらの型式は、単独で用いることもでき、複数を多段に構成して用いることもできる。また2種以上の型式を組合せて用いることもできる。
【0172】
このうち、特に、液分散型とガス分散型を兼ね備えた、漏れ棚塔、泡鐘塔、多孔板塔、十字流式接触塔等の型式が好ましい。
【0173】
(4)前分解処理部
前分解処理部は、前処理液に吸収ないし捕捉された前処理物を、微生物によって分解処理させる機能を有する。前分解処理部では、前処理液に吸収乃至捕捉されたVOC又はその一部を分解処理することもできる。
【0174】
前処理物には、VOC以外の有機化合物、並びに各種ミストや液滴などが含まれる。
【0175】
前分解処理部は、前処理液を貯留するリアクター又は槽を含む構成とすることができる。リアクター又は槽は、前処理液に吸収ないし捕捉された前処理物、更には一部のVOCが微生物により分解処理されるために必要な時間、前処理液が滞留できる程度の容積を有することが好ましい。更に、ガス中の前処理物、更には一部のVOCを吸収ないし捕捉できる液量を貯留できる程度の容積を有することが好ましい。
【0176】
前分解処理部には、前処理液に含まれる微生物が分解処理のための好気性活動を活発に行うためのエアレーション手段を設けることもできる。
【0177】
また、新陳代謝のための無機塩類補給手段や、微生物の栄養素となる炭素源の補給手段、或いは、微生物の補給手段を設けることもできる。
【0178】
また、無機顔料、異物、ゴミその他の処理残渣を、定期的ないし定常的に除去する手段、例えば遠心分離機や液体サイクロンなどの手段が設けられていることが好ましい。
【0179】
また分解効率が一定以上に維持するために、温度、pH、MLSS濃度、分解処理能力、生物相等の観測手段を適宜設けることもできる
また、微生物を固定化するための多孔質セラミックス、樹脂発泡体、不織布等の担体を適宜設置することもできる。
【0180】
(5)前処理済ガス排出部
前処理済ガス排出部は、前処理されたガスを、前処理部から排出する機能を有する。前処理済みガス排出部から排出されたガスは、後段階のVOC処理部における排気ガス導入部と接続して、VOC処理部に送ることができる。
【0181】
前処理済ガス排出部から排出されるガスは、VOC以外の有機化合物成分及び/又はVOCの一部が低減されており、VOC処理部において、VOCをより効率よく処理することを可能にする。
【0182】
(6)前処理液循環部
前処理処理部は、更に、前処理液循環部を有していることが好ましい。
【0183】
前処理液循環部は、液分散方式において前分解処理部にある前処理液を前処理気液接触部へ循環させる機能を有する。
【0184】
ガス分散方式において前分解処理部にガスを吹き込む気泡塔の場合は、液体の貯槽に排気ガスを吹き込んで気液接触させるため、循環部は特に必要でない。一方、段塔、泡鐘塔、多孔板塔、漏れ棚塔等の多段塔の場合は、前分解処理部にある前処理液を気液接触部へ循環させる機能が必要となる。
【0185】
1−4.前処理液
本発明の前処理で用いる前処理液は、ミストや液滴の有機物成分を好んで資化する微生物を含有する処理液である。
【0186】
具体的に、揮発性有機化合物、油脂類、溶剤、乳化剤、塗料樹脂、印刷インキ樹脂、接着剤樹脂、有機顔料、染料等を好んで資化する微生物群を増殖させた液であり、微生物群は、フラボオバクテリューム種、シュードモナス種、アシイノバクター種、メタノカーカウス種、マイクロカーカウス種、バクテリアム種、マイコバクテリアム種、アクロモヴァクター種及びエロウモウナス種からなる群から選ばれる2以上の複数種属を含む。
【0187】
前処理液は、これらの微生物が固定化される多孔質セラミックス等の担体を水槽に収容して、温度制御し、適切に酸素や栄養物を供給して通気攪拌するとともに、適宜新たな微生物を投入しながら高密度に増殖させることにより得ることができる。
【0188】
この前処理液と排気ガスを気液接触すると、前処理液中に取り込まれた塗料樹脂、印刷インキ樹脂、接着剤樹脂、有機顔料、染料、揮発性有機化合物、油脂類、溶剤、乳化剤等は高密度の微生物コロニーに取り込まれて分解される。
【0189】
無機顔料等の残渣は定常的ないし定期的に遠心分離、液体サイクロンその他の方法で前処理液から容易に分離できる。
【0190】
この処理溶液を用いる方法は、本発明者らが特許第3444587号で、塗装廃液の処理装置として提案した方法の一部を応用して適用することができる。
【0191】
本発明において、排気ガス中のVOCは、主にVOC処理部において分解処理されるが、その前段階の前処理部でVOC以外の有機化合物と同時にVOCの一部も吸収ないし捕捉されて分解処理されることも、本発明の好ましい態様に含まれる。
【0192】
VOCの種類と性状は多様である。従って、前段階の前処理部で処理できるVOCは処理し、前処理部で吸収ないし捕捉されないVOC、及び/又は前段階で吸収ないし捕捉されるが分解処理されないで飽和になったVOCは、後段階のVOC処理部で分解処理することにより、より効率的でVOC低減量のより優れた処理が可能となる。
【0193】
前処理部で分解処理され得るVOCとしては、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、イソプロパノール、ブタノール、アルデヒド類等が挙げられる。
【0194】
これらの処理を前処理部で行うことにより、後段階のVOC処理部で、それら以外のトルエン、キシレン、エチルベンゼン、石油系炭化水素類等にまとを絞って分解処理することができる。このように機能分担を行うことにより、VOC処理効率を高めることは、本発明の好ましい態様に含まれる。
【0195】
前処理液には、微生物の分解処理能力を著しく低下させない範囲で、液中に、界面活性剤を添加することができる。
【0196】
気液接触による排気ガス中の前処理物の捕捉は、前処理液中の微生物が発する界面活性剤的な成分が効果的な役割を果たすと考えられるが、その効果が低い場合は、界面活性剤の添加により補足することができる。界面活性剤を添加することにより、気液接触効率が補強され、排気中のVOCや有機物成分が液中により吸収ないし捕捉されやすくなる。
【0197】
界面活性剤は微生物に対して毒物にならない非イオン系界面活性剤が特に好ましい。例えば、非イオン系界面活性剤であるポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油が好適に用いられる。
【0198】
前処理液における界面活性剤の添加割合は、通常0.03〜3%程度、好ましくは、0.05〜1%程度、特に0.1〜0.5%程度である。
【0199】
1−5.装置構成
本発明におけるVOC処理装置においては、1段又は2段以上の前処理部を設けることができる。また、1段又は2段以上のVOC処理部を設けることもできる。即ち、2段以上の処理部を交互に組合せて、或いは、多段にすることも可能である。
【0200】
このようにして、処理の細分化を行い、VOC処理能力をより高めることもできる。
【0201】
また、本発明のVOC含有ガス処理装置には、必要に応じて、上記以外の機能部分や装置を適宜設けることもできる。
【0202】
他の部分や装置には、例えば、VOC分解処理部にエアレーションを行うためのエアレーション装置、ブロア−、無機塩類補給部、栄養物補給部、微生物補給部、処理残渣除去装置、MLSS観測装置、水供給部、微生物液放散対策装置、冷却設備、VOC濃縮装置、後処理装置、運転管理装置等が含まれる。
【0203】
また、本発明の効果を奏する範囲内であれば、排気ガスの処理に用いられている公知の技術を本発明の装置に適宜付加することもできる。
【0204】
2.VOC処理方法
本発明によれば、更に、VOC含有ガスの処理方法が提供される。
【0205】
2−1.VOC処理工程
本発明のVOC含有ガス処理方法は、VOCを処理するための下記工程を有する:
排気ガス発生源と外気へのガス排出口との間で、排気ガスと集積培養液とを気液接触させる工程(「気液接触工程」ともいう)、及び、
気液接触により集積培養液に吸収乃至捕捉されたVOCを微生物により分解処理する工程(「微生物による分解処理工程」ともいう)。
【0206】
また、更に、集積培養液を、微生物による分解処理工程と気液接触工程との間で循環して用いる工程(「集積培養液循環工程」ともいう)を有していることが好ましい。
【0207】
(1)気液接触工程
排気ガスと集積培養液を気液接触させる方法は、適宜公知の方法に従って行うことができる。
【0208】
例えば、液をガス中に分散させる液分散方法や、ガスを液中に分散させるガス分散方法のどちらも適用することができる。
【0209】
液分散方法には、液を微細な液滴にして気体と接触させる方法や、液を液膜にして気体と接触させる方法が含まれる。また、ガス分散方法には、気泡を発生させる方法が含まれる。
【0210】
気液接触工程においては、接触方法に応じて、圧力や温度等の条件を適宜設定することができる。ただし、微生物が生き物であることから、過剰な圧力や温度の急激な条件変化がないことが好ましい。
【0211】
集積培養液と気液接触した後のガスは、VOC処理量が大幅に低減されており、外気へのガス排出口に直接、又は次処理を行う部分を介して送られる。次処理においては、前処理工程及び/又はVOC処理工程を繰り返し行ってもよく、適当な後処理を行ってもよい。
【0212】
(2)微生物による分解処理工程
微生物による分解処理工程には、気液接触した集積培養液をリアクター又は槽に貯留し、気液接触により吸収ないし捕捉されたVOCを、集積培養液に含まれる微生物によって分解処理する工程が含まれる。
【0213】
処理時間、処理温度等の条件は、ガス中のVOCが十分に分解処理されることを考慮して、適宜設定することができる。
【0214】
分解処理工程においては、分解処理効率を高めるための適当な工程を適宜付加することができる。
【0215】
例えば、微生物が分解処理のための好気性活動を活発に行うためのエアレーションを行う工程を付加することができる。
【0216】
また、新陳代謝のための無機塩類を補給する工程、微生物の栄養素となる炭素源の補給する工程、或いは、微生物を更に補給する工程などを付加することもできる。
【0217】
また、集積培養液中の残渣を、遠心分離機や液体サイクロンで除去する工程などを付加することもできる。
【0218】
(3)集積培養液循環工程
排気ガスと気液接触した後、微生物による分解処理に用いられた集積培養液は、循環させて再びVOC処理工程、即ち、排気ガスとの気液接触工程及び微生物によるVOC分解処理工程に用いることが好ましい。
【0219】
集積培養液に含まれる微生物は、排気ガスから吸収乃至捕捉したVOCを栄養源として増殖することができ、更なるVOC処理に好適に用いることができる。
【0220】
(4)VOC処理装置の利用
本発明のVOC処理工程は、上記本発明のVOC含有ガス処理装置におけるVOC処理部の構成を利用して適宜実施することができる。
【0221】
例えば、気液接触工程においては、上記1−1(3)に記載した、排気ガスと集積培養液との気液接触部の構成を利用して実施することができる。
【0222】
また、微生物による分解処理工程は、上記1−1(4)で記載した微生物によるVOC分解処理部の構成を利用して実施することができる。
【0223】
2−2.集積培養液
本発明のVOC処理方法では、前記1−2で記載した集積培養液、即ち、活性汚泥又は土壌と無機塩培地との混合物にVOCを加えて集積培養して得られる培養液が好適に用いられる。
【0224】
このうち、特に、活性汚泥又は土壌と無機塩培地との混合物にトルエン、キシレン及びエチルベンゼンからなる群から選ばれる1種以上のVOCを加えて集積培養して得られる培養液を用いることが好ましい。
【0225】
これらを用いて得られる集積培養液は、使用するVOCが限定されているにも拘らず、トルエン、キシレン、エチルベンゼン以外のVOC、例えば、酢酸エチル、メチルエチルケトン、イソプロパノール、ジオキサン等の他のVOCの分解処理も可能となる場合が多く、好適である。
【0226】
また、集積培養液のトルエン資化能力は、500g/kg−MLSS/日以上、好ましくは1,000g/kg−MLSS/日以上、より好ましくは5,000g/kg−MLSS/日以上、更に好ましくは10,000g/kg−MLSS/日以上が望ましい。
【0227】
この程度の資化能力があれば、比較的高濃度VOCを含む比較的大きな排気風量の排気ガスに対応でき、MLSS濃度を低くできることによって、効率的な処理が可能となる。
【0228】
また、集積培養液のMLSSは10,000mg/L以下程度、好ましくは5,000mg/L以下程度、より好ましくは1,000mg/L以下程度、更に好ましくは500mg/L以下でも可能である。
【0229】
この程度の粘度であれば、処理中に液が発泡する恐れが少ない。更に液の粘度及び付着性が低いため、低エネルギーで効率の良いVOC処理が可能となる。
【0230】
集積培養液には、微生物の分解処理能力を著しく低下させない範囲で、液中に、界面活性剤を添加してもよい。
【0231】
気液接触による排気ガス中のVOCの捕捉は、集積培養液中の微生物が発する界面活性剤的な成分が効果的な役割を果たすと考えられるが、その効果が低い場合は、界面活性剤の添加により補足することができる。界面活性剤を添加することにより、気液接触効率が補強され、排気中のVOCや有機物成分が液中により吸収ないし捕捉しやすくなる。界面活性剤は微生物に対して毒物にならない非イオン系界面活性剤が特に好ましい。例えば、非イオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油などが好適に用いられる。
【0232】
集積培養液における界面活性剤の添加割合は、通常0.03〜3%程度、好ましくは、0.05〜1%程度、特に0.1〜0.5%程度である。
【0233】
また、気液接触による排気ガス中のVOCの捕捉効果を上げるために、気液接触させる液体として、VOCを溶解するオイルを利用し、オイルに捕捉したVOCを集積培養液ないし前処理液中の微生物が分解処理することもできる。
【0234】
オイルとしてはたとえば、シリコンオイル、ミネラルオイル、高沸点石油系炭化水素、流動パラフィン等が可能である。
【0235】
2−3.前処理工程
本発明のVOC処理方法においては、更に排気ガスの前処理を行うための、前処理工程を含むことが好ましい。
【0236】
前処理工程は、下記工程を有することができる。
【0237】
排気ガスを集積培養液に接触させる前に、排気ガスと前処理液とを気液接触させる工程(「(前)気液接触工程」ともいう)、及び、
気液接触により前処理液に吸収乃至捕捉された前処理物を微生物により分解処理する工程(「微生物による(前)分解処理工程」ともいう)。
【0238】
更に、前処理液を、微生物による(前)分解処理工程と(前)気液接触工程間で循環させて用いる工程(「前処理液循環工程」ともいう)を有することが好ましい。
【0239】
(1)(前)気液接触工程
排気ガスと前処理液を気液接触させる方法は、適宜公知の方法に従って行うことができる。
【0240】
例えば、液をガス中に分散させる液分散方法や、ガスを液中に分散させるガス分散方法のどちらも適用することができる。
【0241】
液分散方法には、液を微細な液滴にして気体と接触させる方法や、液を液膜にして気体と接触させる方法が含まれる。また、ガス分散方法には、気泡を発生させる方法が含まれる。
【0242】
気液接触工程においては、接触方法に応じて、圧力や温度等の条件を適宜設定することができる。ただし、微生物が生き物であることから、過剰な圧力や温度の急激な条件変化がないことが好ましい。
【0243】
前処理液と気液接触した後のガスは、集積培養液との気液接触を行う工程に送られる。前処理液と気液接触したガスは、VOC以外の有機化合物及び/又はVOCの一部が低減されており、次工程となる集積培養液との気液接触によるVOC処理工程において、VOCをより効率よく処理することを可能にする。
【0244】
(2)微生物による(前)分解処理工程
微生物による分解処理工程には、排気ガスと気液接触した前処理液をリアクター又は槽に貯留し、気液接触により吸収ないし捕捉された前処理物を、前処理液に含まれる微生物によって分解処理する工程が含まれる。本工程においては、前処理液に吸収乃至捕捉されたVOC又はその一部も、分解処理することができる。
【0245】
前処理物には、VOC以外の有機化合物、並びに各種ミストや液滴などが含まれる。
【0246】
前処理の時間、処理温度等の条件は、ガス中の前処理物が十分に分解処理されることを考慮して、当業者が適宜設定することができる。
【0247】
(前)分解処理工程においては、分解処理効率を高めるための適当な工程を適宜付加することができる。
【0248】
例えば、微生物が分解処理のために好気性活動を活発に行うためのエアレーションを行う工程を付加することができる。
【0249】
また、新陳代謝のための無機塩類を補給する工程、微生物の栄養素となる炭素源を補給する工程、或いは、微生物を更に補給する工程などを付加することもできる。
【0250】
(3)前処理液循環工程
排気ガスと気液接触した後、微生物による前処理物の分解処理に用いられた前処理液は、循環させて再び前処理工程、即ち、排気ガスとの気液接触工程及び微生物による前分解処理工程に用いることが好ましい。
【0251】
前処理液に含まれる微生物は、排気ガスから吸収乃至捕捉した前処理物更には一部のVOCを栄養源として増殖することができ、更なる排気ガスの前処理に好適に用いることができる。
【0252】
(4)VOC処理装置の利用
前処理工程は、上記本発明のVOC含有ガス処理装置における前処理部の構成を利用して適宜実施することができる。
【0253】
例えば、前気液接触工程においては、上記1−3(3)に記載した、排気ガスと前処理との前処理気液接触部の構成を利用して行うことができる。
【0254】
また、微生物による前分解処理工程は、上記1−3(4)で記載した微生物による前分解処理部の構成を利用して実施することができる。
【0255】
2−4.前処理液
前処理工程で用いる前処理液は、前記1−4で記載した前処理液、即ち、各種油脂類、溶剤、乳化剤、塗料樹脂、印刷インキ樹脂、接着剤樹脂、有機顔料、染料等を好んで資化する微生物群を増殖させた処理液であり、
前記微生物群が、フラバオバクテリューム種、シェードモナス種、アシイノバクター種、メタノカーカウス種、マイクロカーカウス種、バクテリアム種、マイクバクテリウム種、アクロモヴァクター種及びエロウモウナス種からなる群から選ばれる2以上の複数種属を含む液が好適に用いられる。
【0256】
この処理溶液を用いる方法は、本発明者らが特許第3444587号で提案した方法の一部を応用して適用することができる。
【0257】
本発明において、排気ガス中のVOCは、主にVOC処理工程において分解処理されるが、その前段階の前処理工程で、VOC以外の有機化合物と同時にVOCの一部も吸収ないし捕捉されて分解処理されることも、本発明の好ましい態様に含まれる。
【0258】
前処理工程で分解処理され得るVOCとしては、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、イソプロパノール、ブタノール、アルデヒド類等が挙げられる。
【0259】
これらを前処理工程で処理することにより、後段階のVOC処理工程で、それら以外のトルエン、キシレン、エチルベンゼン、石油系炭化水素類等にまとを絞って分解処理することができる。このように機能分担を行うことにより、VOC処理効率を高めることは、本発明の好ましい態様に含まれる。
【0260】
前処理液には、微生物の分解処理能力を著しく低下させない範囲で、液中に、界面活性剤を添加することができる。
【0261】
界面活性剤は微生物に対して毒物にならない非イオン系界面活性剤が特に好ましい。
【0262】
前処理液における界面活性剤の添加割合は、通常0.03〜3%程度、好ましくは、0.05〜1%程度、特に0.1〜0.5%程度である。
【0263】
2−5.他の工程
本発明におけるVOC処理方法には、必要に応じて、上記以外の他の工程を適宜付加することもできる。
【0264】
他の工程には、例えば、集積培養液及び/又は前処理液のMLSSを観測する工程、水を供給する工程、VOCを濃縮する工程、後処理を行う工程等が含まれる。
【0265】
また、本発明の効果を奏する範囲内であれば、排気ガスの処理に用いられている公知の技術を本発明の方法に適宜付加することもできる。
【0266】
3.使用態様
本発明におけるVOC含有ガス処理装置及び処理方法は、VOC含有ガスの処理が必要とされる各所において適宜用いることができる。
【0267】
例えば、塗装、印刷、接着、洗浄、化学品製造、食品・医薬製造、その他各種産業の工場から排出される排気ガスの処理に用いることができる。
【0268】
また、塗装施設及び塗装後の乾燥・焼付け施設、化学製品製造における乾燥施設、工業用洗浄施設及び洗浄後の乾燥施設、印刷施設及び印刷後の乾燥・焼付け施設、VOC等の貯蔵施設、接着剤使用施設及び使用後の乾燥・焼付け施設などでの排気ガスの処理に利用し得る。
【0269】
VOC処理装置は、発生源から大気へ放散する排出口まで誘導された排気ダクトの中間に設けられるのが一般的であるが、それに限定されるものではなく、発生源近傍や、高濃度VOCの室内に設けることも可能である。
【0270】
VOC処理は、各種産業で適用される技術であり、それらから排出されるVOCを工業的に成立可能な効率で、低減する必要がある。
【0271】
本発明においては、特定の微生物処理を、特定の構成を有する装置及び方法において利用することにより、各種産業において相当大きな排気風量及び排気風速を有する排気ガスのVOC処理においても、適用可能となったものである。
【実施例】
【0272】
以下、本発明について、より具体的に示すために、実施例及び比較例を用いて説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されることはない。
【0273】
尚、以下の実施例及び比較例において、集積培養液のトルエン資化能力は、簡易的に、密閉容器中に測定対象液を入れ、一定温度(60℃)に保管後の気相のトルエン濃度をガスクロ分析により求め、検量線から液中のトルエン濃度を求めることにより測定確認した。またトルエン以外のVOCを資化する能力は、トルエンに代えて対象とするVOCを用いる以外は同様の方法により確認した。
【0274】
実施例では、活性汚泥から集積培養して得た集積培養液を、VOCを既知量含む気流と気液接触させて、VOC分解処理能力を測定した。
【0275】
また、集積培養液によるVOC分解処理の前処理として、ミストを好んで資化する微生物処理液を調製し、その微生物処理液を、VOCを既知量含む気流と気液接触させて、VOC分解処理能力の測定も行った。
実施例1
【0276】
密栓付き50ml試験管に都市部の下水処理場から採取した活性汚泥0.1mlと、無機塩培地15ml、トルエン500ppmを加え、27℃で7日間振盪培養した。その液を0.5mlに無機塩培地15ml、トルエン100ppmを加え、27℃で7日間振盪培養した。さらにその液を0.5mlに無機塩培地15ml、トルエン100ppmを加え、27℃で7日間振盪培養することを3回くり返して集積培養液を得た。
【0277】
無機塩培地は、NHNO0.2%、KHPO0.07%、KHPO0.07%、MgSO・7HO0.07%、NaCl0.001%、FeCl・6H2O0.004%、ZnSO・7HO0.0004%、MnCl・4HO0.0002%からなる水溶液として調整した。
【0278】
最終的に得られた集積培養液は、淡黄色透明で若干の濁りがあった。この液を種にして、トルエン300ppmで10倍に増殖後、さらに30Lジャーファーメンターで増殖して、10Lの培養液を得た。
【0279】
えられた培養液のMLSSは200mg/Lであった。また、10Lの培養液に300ppmのトルエンを添加後トルエン濃度が30ppm以下になる時間をガスクロ分析で求めたところ、4時間であった。すなわち、トルエン資化能力は、9000g/kg−MLSS/日であった。
【0280】
トルエンを資化した培養液に酢酸エチル300ppmを添加して、同様にして酢酸エチル濃度が30ppm以下になる時間を求めたところ、2時間であった。すなわち、酢酸エチル資化能力は、18000g/kg−MLSS/日であった。
【0281】
酢酸エチルを資化した培養液にメチルエチルケトン300ppmを添加して、同様にしてメチルエチルケトン濃度が30ppm以下になる時間を求めたところ、3時間であった。すなわち、メチルエチルケトン資化能力は、13500g/kg−MLSS/日であった。
【0282】
メチルエチルケトンを資化した培養液にイソプロパノール300ppmを添加して、同様にしてイソプロパノール濃度が30ppm以下になる時間を求めたところ、6時間であった。すなわち、イソプロパノール資化能力は、6000g/kg−MLSS/日であった。
【0283】
この培養液を使用して、図1の装置でVOC濃度が既知のガスを流して、それぞれのVOCについて、装置の入口濃度と出口濃度を測定した。
【0284】
気流の速度は1m/秒、ダクトの断面積は314cm、気液接触させる培養液の流量は20L/分で、5時間行った。
【0285】
培養液中のVOC濃度(液中濃度)を、テスト後15時間後に測定した。
【0286】
【表1】

比較例1
【0287】
集積培養液の代わりに、集積培養液の材料として使用した活性汚泥を処理液Aとした。処理液AのMLSSは5000mg/Lであった。また、10Lの処理液Aに300ppmのトルエンを添加して4時間後トルエン濃度をガスクロ分析で求めたところ、280ppmであった。すなわち、トルエン資化能力は、4g/kg−MLSS/日であった。このことから、VOCを分解処理する液として期待できないことが分かった。
実施例2
【0288】
VOCを集積培養液で分解処理する前処理装置として、ミストを好んで資化する微生物処理液を調製し、気液接触させる機能部分と微生物で分解処理する機能部分を同様に直列に接合した。
【0289】
図2の装置でVOC濃度がそれぞれ既知のガスとミストを流して、各VOCの前処理部における入口濃度(1)と出口濃度(1)、並びにVOC処理部における入口濃度(2)と出口濃度(2)を測定した。気流の速度は1m/秒、ダクトの断面積は314cm、気液接触させる培養液の流量は20L/分で、5時間行った。
【0290】
また前処理液中のVOC濃度(液中濃度(1))と集積培養液中のVOC濃度(液中濃度(2))を、テスト後15時間後に測定した。
【0291】
ミストはウレタン系吹付塗装ミストとし、ミスト濃度は100ppmの一定とした。
【0292】
ミストを好んで資化する微生物処理液は、微生物群が、フラボオバクテリューム種、シュードモナス種、アシイノバクター種、メタノカーカウス種、マイクロカーカウス種、バクテリアム種、マイコバクテリアム種、アクロモヴァクター種、エロウモウナス種の複数種属が含まれ、これらの微生物群の増殖は、これら微生物が固定化される多孔質セラミックスの担体を水槽に収容して、水温を30〜35℃に制御し、酸素や栄養物や無機塩類を供給して通気攪拌するとともに、新たな微生物を投入しながら1週間培養を継続して、高密度に増殖させて、処理液とした。微生物の栄養物としては、ミスト成分と同様の塗料樹脂、印刷インキ、染料、油脂類を少量添加した。
【0293】
【表2】

【0294】
実施例2により、前処理部でも、水溶性のVOCは吸収され分解処理されていることが示された。
【0295】
この結果から、前処理を行うことにより、VOC処理部では水に難溶性のVOCの分解処理に焦点を絞ることが可能となり、VOC処理部における負荷を軽減することが可能であることが確認できた。
実施例3
【0296】
実施例1で用いた集積培養液に非イオン系界面活性剤(Tween80TM)を0.5%添加した培養液を作成した。化学物質の生分解試験法に準じて経時的な酸素吸収量を測定したところ、微生物は非イオン系界面活性剤で殺菌されることなく、それを栄養として増殖することが分かった。
【0297】
この培養液を使用して、実施例1と同様に、図1の装置でVOC濃度が既知のガスを流して、それぞれのVOCについて、装置の入口濃度と出口濃度を測定した。また培養液中のVOC濃度(液中濃度)を、テスト後15時間後に測定した。
【0298】
得られた結果を表3に示す。
【0299】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0300】
【図1】実施例1で用いた、VOC処理装置の概要図である。
【図2】実施例2で用いた、前処理部を有するVOC処理装置の概要図である。
【符号の説明】
【0301】
1 排気ガス導入部
2 集積培養液供給部
3 排気ガスと集積培養液との気液接触部
4 VOC分解処理部
5 集積培養液循環部
6 処理済ガス排出部
7 排気ガス発生源(VOC含有ガス発生源)
8 エアレーション・ブロアー
9 遠心分離機
10 微生物補給部
11 無機塩類補給部
12 水補給部
13 排気ガス前処理導入部
14 前処理液供給部
15 排気ガスと前処理液との気液接触部
16 前分解処理部
17 前処理液循環部
18 前処理済ガス排出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性有機化合物(VOC)含有ガス処理装置であって、
処理装置が、排気ガス発生源と外気へのガス排出口との間に設置されており、
処理装置が、VOCを処理するためのVOC処理部を有しており、
VOC処理部は、排気ガスのVOC処理部への導入部、集積培養液のVOC処理部への供給部、排気ガスと集積培養液との気液接触部、微生物によるVOC分解処理部、及び処理済ガスのVOC処理部からの排出部を有しており、
前記集積培養液が、活性汚泥又は土壌と無機塩培地との混合物にVOCを加えて集積培養して得られる培養液である、VOC含有ガス処理装置。
【請求項2】
VOC処理部が、更に、VOC分解処理部と気液接触部間の集積培養液循環部を有している請求項1記載の処理装置。
【請求項3】
集積培養液が、活性汚泥又は土壌と無機塩培地との混合物にトルエン、キシレン及びエチルベンゼンからなる群から選ばれる1種以上のVOCを加えて集積培養して得られる培養液である請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
集積培養液のトルエンを資化する能力が500g/kg−MLSS/日以上である請求項1〜3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
処理装置が、更に、前処理部を有しており、前処理部は排気ガス発生源とVOC処理部との間に設置され、
前処理部は、排気ガスの前処理部への導入部、前処理液の前処理部への供給部、排気ガスと前処理液との気液接触部、微生物による前分解処理部、前処理されたガスの前処理部からVOC処理部への排出部を有しており、
前処理液が、各種油脂類、溶剤、乳化剤、塗料樹脂、印刷インキ樹脂、接着剤樹脂、有機顔料、染料等を好んで資化する微生物群を増殖させた液であり、
微生物群が、フラバオバクテリューム種、シェードモナス種、アシイノバクター種、メタノカーカウス種、マイクロカーカウス種、バクテリアム種、マイクバクテリウム種、アクロモヴァクター種及びエロウモウナス種からなる群から選ばれる複数種属を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前処理部が、更に、前分解処理部と気液接触部間の前処理液循環部を有している請求項5記載の装置。
【請求項7】
集積培養液及び/又は前処理液が、非イオン系界面活性剤が添加された液である請求項1〜6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
揮発性有機化合物(VOC)含有ガスの処理方法であって、
排気ガス発生源と外気へのガス排出口との間で、排気ガスと集積培養液とを気液接触させる工程、及び
気液接触により集積培養液に吸収乃至捕捉されたVOCを微生物により分解処理する工程を有し、
集積培養液が活性汚泥又は土壌と無機塩培地との混合物にVOCを加えて集積培養して得られる培養液である、VOC含有ガス処理方法。
【請求項9】
更に、集積培養液を、微生物による分解処理工程と気液接触工程間で循環させて用いる工程を有する請求項8に記載の処理方法。
【請求項10】
集積培養液が、活性汚泥又は土壌と無機塩培地との混合物にトルエン、キシレン及びエチルベンゼンからなる群から選ばれる1種以上のVOCを加えて集積培養して得られる培養液である請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
集積培養液のトルエンを資化する能力が500g/kg−MLSS/日以上である請求項8〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
更に、排気ガスの前処理を行うための前処理工程を含み、
前処理工程は、排気ガスを集積培養液に接触させる前に、排気ガスと前処理液とを気液接触させる工程、及び、
気液接触により前処理液に吸収乃至捕捉された前処理物を微生物により分解処理する工程を有し、
前処理液が、各種油脂類、溶剤、乳化剤、塗料樹脂、印刷インキ樹脂、接着剤樹脂、有機顔料、染料等を好んで資化する微生物群を増殖させた処理液であり、
前記微生物群が、フラバオバクテリューム種、シェードモナス種、アシイノバクター種、メタノカーカウス種、マイクロカーカウス種、バクテリアム種、マイクバクテリウム種、アクロモヴァクター種及びエロウモウナス種からなる群から選ばれる複数種属を含んでいる、請求項8〜11のいずれかに記載の処理方法。
【請求項13】
前処理工程における微生物により分解処理する工程が、
気液接触により前処理液に吸収乃至捕捉された前処理物及びVOCを微生物により分解処理する工程である請求項12に記載の処理方法。
【請求項14】
更に、前処理液を、微生物による分解処理工程と気液接触工程間で循環させて用いる工程を有する請求項12又は13に記載の処理方法。
【請求項15】
集積培養液及び/又は前処理液が、非イオン系界面活性剤が添加された液である請求項8〜14のいずれかに記載の処理方法。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−29898(P2007−29898A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−219386(P2005−219386)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(594099082)株式会社一世 (2)
【出願人】(505059282)
【出願人】(302005684)株式会社アサヒマイクロ (2)
【Fターム(参考)】