WISE結合剤およびエピトープ
本発明はWISE結合剤に関し、その製造および使用方法を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国仮出願第No.61/288,171(2009年12月18日出願)の利益を主張し、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
本出願は、電子データ形式の配列表とともに出願される。配列表は、ファイル名A−1532−WO−PCT SeqList.txt、作成日2010年12月1日、ファイルサイズ86.5KBのファイルとして提出される。配列表の電子データに含まれる情報は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
[0001]本発明は、概して、ヒトWISEタンパク質を含むWISEタンパク質のエピトープ、およびWISEまたは本明細書中のエピトープに結合する能力がある結合剤(抗体など)に関する。
【背景技術】
【0003】
[0002]線維症は一般に、治癒過程の一環として過剰な結合組織が発達することと定義され、そして様々な症状が含まれる。過度の線維症は治療の選択肢がほとんどない深刻な事態である。
【0004】
[0003]シスチンノット含有タンパク質は典型的に、主要機能の重要な制御因子であり、多様な種類の細胞に影響を及ぼす。Wise(USAG−1、SOSTDC1)は、分泌されたシスチンノット含有タンパク質であり、主に腎臓、肺、皮膚、および上皮細胞で発現する。WISE KOマウスは、繁殖力があり、その腎臓は通常の機能を有する。しかしながら、一側尿管結紮(UUO)か化学毒性剤シスプラチンの注射かのいずれかにより腎障害を起こすように負荷を与えた場合、WISE KOマウスは、抵抗性を示す。(Yanagita et al., J. Clin Invest. 2006 January 4; 116(1): 70-79)。UUOモデルの場合、WISE KOマウスの方が、冒された腎臓に見られる線維症が非常に少なく、筋線維芽細胞活性化のマーカーであるaSMAの発現も非常に少なく、そして上皮細胞マーカーE−カドヘリンの発現は保持される。腎障害についてのシスプラチンモデルの場合、WISE欠損により、動物モデルは尿細管障害から保護され、死亡率も低下した(Tanaka et al., Kidney International advance online publication 17 October 2007)。また、WISE KOマウス(aka USAG−1 KOマウス)をCol4a3 KOマウスと交配した場合、誕生したダブルノックアウトマウスは、WT WISE遺伝子を持つCol4a3 KOマウスと比較して、タンパク尿が顕著に少なく、末期の腎疾患を発症することも少なかった。4週齢で、USAG−1+/+、3(IV)−/−マウスがすでに、広範囲の糸球体基底膜(GBM)分裂を伴う深刻なタンパク尿を示しているのに対して、ダブルKOマウスは正常構造のGBMを示した。10週齢では、USAG−1+/+、3(IV)−/−マウスは末期の腎疾患を発症したが、ダブルKOマウスでは明らかに腎機能が保持されており腎の組織学的変化も少なかった(Tanaka et al. J Clin Invest. 2010; 120(3):768-777 and Abstract TH-FC059 2008 ASN meeting)。
【0005】
[0004]これらのデータは、WISEが成体の腎機能の制御因子である可能性を示している。しかしながら、これらの研究は、全成長サイクルでWISEを欠損しているノックアウトマウスに限られたものであって、したがって、阻害剤(抗体など)を用いてWISE活性を急遽阻害することが、様々な線維症と関連した病状下で腎機能を保存する治療効果をもたらし得るかどうかは予測不能であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Yanagita et al., J. Clin Invest. 2006 January 4; 116(1): 70-79
【非特許文献2】Tanaka et al., Kidney International advance online publication 17 October 2007
【非特許文献3】Tanaka et al. J Clin Invest. 2010; 120(3):768-777 and Abstract TH-FC059 2008 ASN meeting
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[0005]本発明者らは、WISEを標的とする結合剤を用いて、線維症および組織不全を含む、損傷および修復と関連した、肺障害および腎臓障害を治療することが可能であることを実証する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
[0006]本明細書には、疾患および障害を予防または治療するのに用いることができる組成物および方法が開示される。本発明は、さらに、本明細書に開示される結合剤により認識される、ヒトWISEの領域、これらの領域の利用法、およびそのような領域の作製法に関連する。本発明は、シスチンノットドメインとして同定されるWISEの領域に特異的なエピトープ、およびその領域に特異的に結合する結合剤にも関する。
【0009】
[0007]本発明は、WISEに特異的に結合する結合剤(抗体など)に関する。結合剤は、本明細書に開示される少なくとも1種の抗体はWISEに結合するのを交差阻止する能力、および/またはこの抗体により結合剤がWISEと結合するのが交差阻止される性質によって特徴づけられる。本発明の抗体およびその他の結合剤は、本明細書で開示されるとおりのヒトWISEペプチドエピトープ競合結合アッセイでそれらが示す結合パターンによっても特徴づけられる。
【0010】
[0008]特定の態様において、本発明は、WISE活性を阻害し、腎臓、肺、皮膚、眼球、肝臓、および心臓などの組織において組織損傷および関連する線維症を減少させ得る結合剤(抗体など)に関する。また、本発明は、糖尿病性腎症、糸球体腎炎(glomerolonephritis)、膜性腎障害、ループス、移植、およびタンパク尿の増加の徴候を含むその他の腎疾患などの患者における様々な免疫学的腎疾患および免疫非介在性腎疾患と関連する、タンパク尿またはタンパク尿誘導損傷(例えば線維症)を阻害する結合剤に関する。さらに、本発明は、線維症および/またはタンパク尿のいずれかで影響を受ける上記器官の、機能を改善するか機能が失われるのを遅らせる結合剤に関する。影響を及ぼす疾患として、慢性腎疾患、慢性移植腎症、突発性肺線維症、心筋症、緑内障(水晶体細胞の線維症)、および強皮症(皮膚の線維症)が挙げられるが、これらに限定されない。また、腫瘍転移も組織の線維症と同様な機構で起こるので、WISE結合剤は腫瘍転移および/または癌の進行を遅らせるのにも有用である可能性がある。
【0011】
[0009]他の態様において、本発明は、細胞アッセイにおいてWISEの阻害作用を遮断することができる結合剤(抗体など)に関する。本発明は、細胞アッセイにおいてWISEの作用を変更することができる結合剤(抗体など)にも関する。本発明はまた、WISEの作用を活性化することができる結合剤(抗体など)にも関する。
【0012】
[0010]本発明はさらに一部分において、WISEのシスチンノットの核領域である、少なくとも1つのジスルフィド結合でつながった2個、3個、または4個のポリペプチドフラグメントを含むポリペプチド構築物およびこのポリペプチド構築物に特異的に結合する能力がある抗体にも関するものである。
【0013】
[0011]1つの態様において、本発明は、哺乳類で、WISEに特異的に結合する能力がある結合剤(抗体など)を産生するための免疫原として用いるのに好適なエピトープを得る方法に関する;特定の態様において、産生された結合剤は、インビトロおよび/またはインビボでWISE活性を中和する能力がある。
【0014】
[0012]別の態様において、本発明は、動物に投与された場合にWISEに特異的な抗体を誘発する組成物に関するもので、この組成物は、以下の表中の配列の1つから選択されるが限定されない配列を有するポリペプチドを含む。
【0015】
【表1−1】
【0016】
【表1−2】
【0017】
【表1−3】
【0018】
【表1−4】
【0019】
[0013]他の態様において、本発明は、動物に投与された場合にWISEに特異的な抗体を誘発する組成物にも関するもので、この組成物は、ヒト、マウス、ラット、またはカニクイザルのWISEのアミノ酸配列で本質的に構成されるポリペプチドを少なくとも1つ含む。
【0020】
[0014]表1に記載のWISEタンパク質は、それぞれの種の全長タンパク質配列であり、分泌できるようにさらに処理されることが当業者には理解されるだろう。特定の態様において、最初の23個のアミノ酸はシグナルペプチドであり(配列番号2、4、6、および8)、シグナルペプチドを除去すると成熟ポリペプチドになる。特定の態様において、本発明は、上記の表1に示す成熟WISEのアミノ酸82から109であり、例えば配列番号9でも示される、で本質的に構成されるポリペプチドにも関する;本明細書中WISEループ2ポリペプチドとして既知のこのポリペプチドは、タンパク質断片の組換え発現、ヒトWISEのトリプシン消化、または化学合成により得ることができ、このタンパク質は、数ある方法の中でもHPLCにより単離することができる。合成されたペプチドの場合、このペプチドは直鎖型でも環化型でもあり得る。ペプチドが組換え発現で産生される場合、このペプチドは、他の担体タンパク質(Fc断片またはヒト血清アルブミンまたはその他増加するものなど)と融合したものであり得る。
【0021】
[0015]1つの態様において、本発明は、WISEに特異的に結合する能力がある抗体を産生する方法に関するもので、この方法は(a)WISEポリペプチドを含有する組成物で動物を免疫化すること、(b)動物から血清を採取すること、および(c)血清から、WISEに特異的に結合し、かつWISEの生物活性を阻害する能力がある抗体を単離することを含み、抗体はWISEのループ2に特異的に結合する。
【0022】
[0016]さらに別の態様において、本発明はさらに、ファージディスプレイ法を用いてWISEループ2に結合する抗体を選出する方法、および/またはファージディスプレイ法を用いてWISEに対する既知抗体の親和性を改善する方法をも企図する。
【0023】
[0017]さらなる態様において、本発明は、WISEに特異的に結合する能力がある抗体を産生する方法にも関するもので、この方法は、以下を含む:(a)WISEのシスチンノット含有断片(例えば配列番号9)またはその誘導体を含有する組成物で動物を免疫化すること、(b)動物から血清を採取すること、および(c)血清から、WISEに特異的に結合し、かつWISEの生物活性を阻害する能力がある抗体を単離すること。
【0024】
[0018]さらなる態様において、本発明はさらに、生体試料中の抗WISE抗体を検出する方法に関するもので、この方法は、(a)抗体とポリペプチドの複合体が形成可能な条件下、生体試料を、配列番号2のアミノ酸24から206を有するポリペプチド、配列番号4のアミノ酸24から206を有するポリペプチド、配列番号6のアミノ酸24から206を有するポリペプチド、配列番号8のアミノ酸24から206を有するポリペプチド、および配列番号9などのペプチドで本質的に構成されるポリペプチドと接触させる工程;および(b)複合体が存在するかしないかを検出する工程を含み、複合体が存在する場合は生体試料に抗WISE抗体が含まれることを意味する。
【0025】
[0019]他の態様において、本発明は、生体試料中の抗WISE抗体を検出する方法に関するもので、この方法は、(a)抗体とポリペプチドの複合体が形成可能な条件下、生体試料を、WISEのシスチンノット含有断片を含有する組成物と接触させる工程;および(b)複合体が存在するかしないかを検出する工程を含み、複合体が存在する場合は生体試料に抗WISE抗体が含まれることを意味する。
【0026】
[0020]特定の態様において、本発明は、本発明の抗体の少なくとも1種の結合を交差阻止するWISE結合剤(抗体など)に関する。本発明の抗体として、WISEポリペプチドのループ2に結合するものが含まれる。ループ2結合抗体の例として、表2に記載されるものが含まれる。表2には、WISEタンパク質のループ2に結合する抗体の可変領域を示す。他の態様において、本発明は、表2の抗体の少なくとも1種のWISEタンパク質への結合を交差阻止するWISE結合剤(抗体など)に関する。
【0027】
【表2−1】
【0028】
【表2−2】
【0029】
【表2−3】
【0030】
【表2−4】
【0031】
【表2−5】
【0032】
【表2−6】
【0033】
【表2−7】
【0034】
[0021]本発明の特定の態様において、以下に示すポリペプチドの可変ドメイン対はヒトWISEのループ2(配列番号9)に結合する能力がある結合ドメインであることが企図される:配列番号11と13、配列番号15と17、配列番号19と21、配列番号23と25、配列番号27と29、配列番号31と33、配列番号71と73、配列番号75と77、配列番号79と81、および配列番号83と85。本明細書中で使用されるとおり、以下の特定の配列識別子で示される可変ドメインは、WISE(配列番号9)に結合する能力がある重鎖と軽鎖を含む、すなわち、Ab−AAを指す配列番号11と13、Ab−ABを指す配列番号15と17、Ab−ACを指す配列番号19と21、Ab−ADを指す配列番号23と25、Ab−AEを指す配列番号27と29、Ab−AFを指す配列番号31と33、Ab−AGを指す配列番号71と73、Ab−AHを指す配列番号75と77、Ab−AIを指す配列番号79と81、およびAb−AJを指す配列番号83と85。さらに、これらの可変ドメインの相補性決定領域を、配列番号9について結合活性を保持したまま、抗体のヒトフレームワーク領域(例えば、IgG2)中にクローニングすることが可能であることが企図される。
【0035】
[0022]表2に示す抗体可変ドメインのCDRを以下の表3に示す。
【0036】
【表3−1】
【0037】
【表3−2】
【0038】
[0023]特定の態様において、本発明の抗体は、配列番号34と35と36、および配列番号37と38と39に示される相補性決定領域を含む抗体を含む。特定の態様において、本発明の抗体は、配列番号40と41と42、および配列番号43と44と45に示される相補性決定領域を含む抗体を含む。特定の態様において、本発明の抗体は、配列番号46と47と48、および配列番号49と50と51に示される相補性決定領域を含む抗体を含む。特定の態様において、本発明の抗体は、配列番号52と53と54、および配列番号55と56と57に示される相補性決定領域を含む抗体を含む。特定の態様において、本発明の抗体は、配列番号58と59と60、および配列番号61と62と63に示される相補性決定領域を含む抗体を含む。特定の態様において、本発明の抗体は、配列番号64と65と66、および配列番号67と68と69に示される相補性決定領域を含む抗体を含む。特定の態様において、本発明の抗体は、配列番号86と87と88、および配列番号89と90と69に示される相補性決定領域を含む抗体を含む。特定の態様において、本発明の抗体は、配列番号91と92と93、および配列番号94と95と96に示される相補性決定領域を含む抗体を含む。特定の態様において、本発明の抗体は、配列番号97と98と99、および配列番号100と101と102に示される相補性決定領域を含む抗体を含む。特定の態様において、本発明の抗体は、配列番号103と104と105、および配列番号106と107と108に示される相補性決定領域を含む抗体を含む。
【0039】
[0024]本発明のWISE結合剤は、表2に示す可変ドメインを含む抗体のうちの少なくとも1つによって、WISEとの結合を交差阻止されることもあり得る。本発明のWISE結合剤は、表2に示す抗体および/または以下の配列番号で示される相補性決定領域を含む抗体のうちの少なくとも1つによって、WISEとの結合を交差阻止されることもあり得る:配列番号34と35と36、および配列番号37と38と39;配列番号40と41と42、および配列番号43と44と45;配列番号46と47と48、および配列番号49と50と51;配列番号52と53と54、および配列番号55と56と57;配列番号58と59と60、および配列番号61と62と63;配列番号64と65と66、および配列番号67と68と69;配列番号86と87と88、および配列番号89と90と69;配列番号91と92と93、および配列番号94と95と96;配列番号97と98と99、および配列番号100と101と102;ならびに配列番号103と104と105、および配列番号106と107と108。
【0040】
[0025]本明細書中例示される抗体の相補性決定領域(CDR)を含む抗体として、従来の分子生物学技法を用いて以下に示すCDRをコードする核酸をヒトフレームワーク領域にクローン導入したヒト化抗体が挙げられる:配列番号34と35と36、および配列番号37と38と39;配列番号40と41と42、および配列番号43と44と45;配列番号46と47と48、および配列番号49と50と51;配列番号52と53と54、および配列番号55と56と57;配列番号58と59と60、および配列番号61と62と63;配列番号64と65と66、および配列番号67と68と69;配列番号86と87と88、および配列番号89と90と69;配列番号91と92と93、および配列番号94と95と96;配列番号97と98と99、および配列番号100と101と102;または配列番号103と104と105、および配列番号106と107と108。これらの配列は、フレームワーク領域にさらなる修飾を加えて、または加えずに、および/またはCDRにさらなる改変を加えて、クローン化され得る。これらのヒト化抗体は、本明細書中に一部記載される従来技法を用いて、発現させる。本発明のヒト化抗体の例として、重鎖と軽鎖の対として示される以下の配列番号のものが挙げられる:配列番号110と112、配列番号114と116、配列番号118と116、配列番号114と120、配列番号118と120、配列番号122と124、配列番号126と124、配列番号122と128、および配列番号126と128。以下の表4に、対応する核酸配列を示す。
【0041】
【表4−1】
【0042】
【表4−2】
【0043】
【表4−3】
【0044】
【表4−4】
【0045】
[0026]さらに別の態様において、本発明は、「ヒトWISEペプチドエピトープ競合結合アッセイ」で、抗体Ab−AA、Ab−AB、Ab−AC、Ab−AD、Ab−AE、Ab−AF、Ab−AG、Ab−AH、Ab−AI、Ab−AJ、およびD14、ならびにそれらの誘導体のうちの少なくとも1種が示すのと同じような結合パターンをヒトWISEペプチドに対して示す結合剤(単離された抗体など)に関する;単離された抗体またはその抗原結合性断片は、ポリクローナル抗体でも、モノクローナル抗体でも、ヒト化抗体でも、ヒト抗体でも、キメラ抗体でもよい。
【0046】
[0027]WISEに特異的なヒト抗体の例を以下の表5に示す。
【0047】
【表5−1】
【0048】
【表5−2】
【0049】
【表5−3】
【0050】
[0028]表5のヒト抗体は、例えば、以下の表6に記載の変異でヒトWISEに対する親和性を上げるなど、それらのCDRにさらに変異を導入して抗体機能を向上させることができる。付番は、抗体の重鎖または軽鎖(配列番号132または配列番号130)中のアミノ酸残基の位置に基づく。
【0051】
【表6】
【0052】
[0029]本発明はさらにまた、対象ほ乳類の腎臓および/または肺の線維性疾患または障害を治療する方法に関するもので、この方法は、そのような治療を必要としている対象に、この障害に関連した症状を減退するのに十分な量の抗WISE結合剤を提供することを含み、この方法において抗WISE結合剤は抗体またはそのWISE結合性断片を含む。
【0053】
[0030]本明細書中提供されるのは、ヒトWISEに特異的に結合する抗体である。本発明の抗体は、本明細書中開示される抗体の少なくとも1種がヒトWISEと結合するのを交差阻止する能力、および/または本明細書中開示される抗体の少なくとも1種によりヒトWISEと結合するのが交差阻止される性質を特徴とする。本発明はまた、細胞アッセイにおいてWISEの作用を遮断し得る単離された抗体またはその抗原結合性断片を提供する。本発明は、細胞アッセイにおいてWISEの作用を活性化し得るモノクローナル抗体またはその断片も提供する。
【0054】
[0031]本発明のこれらの側面およびその他の側面は、以下の詳細な説明および添付の図面を参照することで明らかとなるだろう。本明細書中開示される参照は、それぞれが個別に組み込まれるかのように、その全体が参照により組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】[0032]図1:WISEに結合するのにループ2を必要とする抗体の同定。
【図2】[0033]図2:細胞アッセイでの中和ループ2抗体の同定。タンパク質濃度は、hWISEが0.3ug/ml、Abが3ug/mlである。
【図3】[0034]図3:中和抗Wiseループ2抗体はWise−Lrp6結合を阻害する。
【図4】[0035]図4:hWISEに対するAb−AAの競合的結合を測定するアッセイ。Ab−AAは、プレートと結合している。Ab−C、Ab−T、Ab−S、およびAb−Pは、既に同定されている対照抗体であり、この図および以下の図に含まれている。
【図5】[0036]図5:hWISEに対するAb−ABの競合的結合を測定するアッセイ。Ab−ABは、プレートと結合している。
【図6】[0037]図6:hWISEに対するAb−ACの競合的結合を測定するアッセイ。Ab−ACは、プレートと結合している。
【図7】[0038]図7:hWISEに対するAb−ADの競合的結合を測定するアッセイ。Ab−ADは、プレートと結合している。
【図8】[0039]図8:hWISEに対するAb−AEの競合的結合を測定するアッセイ。Ab−AEは、プレートと結合している。
【図9】[0040]図9:hWISEに対するAb−AFの競合的結合を測定するアッセイ。Ab−AFは、プレートと結合している。
【図10】[0041]図10:hWISEに対するAb−Sの競合的結合を測定するアッセイ。Ab−Sは、プレートと結合している。
【図11】[0042]図11:hWISEに対するAb−の競合的結合を測定するアッセイ。Ab−Sは、プレートと結合している。
【図12】[0043]図12:hWISEに対するAb−Sの競合的結合を測定するアッセイ。Ab−Sは、プレートと結合している。
【図13】[0044]図13:hWISEに対するAb−Sの競合的結合を測定するアッセイ。Ab−Sは、プレートと結合している。
【図14】[0045]図14:ループ2の残基が個別にアラニンに変更されている変異型hWISEに対するhWISE抗体の相対結合性を示す結合アッセイ。1より小さい数は、結合性が下がることを示す。HuWISE−HuSost−ループ2は、hWISEのキメラでありHuSostループ2を有する対照ポリペプチドである(実施例を参照)。「WT残基」は、アラニンに変更されるアミノ酸を示す。これらの残基は、それぞれ配列番号9のアミノ酸4〜25に相当する。
【図15】[0046]図15:WISE抗体処理は、T2DNモデルで腎機能を保持した。
【図16】[0047]図16:WISE抗体処理は、T2DNモデルで腎機能を保持した。
【図17】[0048]図17:WISE抗体処理は、T2DNモデルで尿管間質性損傷を阻害した。
【図18】[0049]図18:WISE抗体処理は、T2DNモデルで糸球体損傷を阻害した。
【図19】[0050]図19:WISE抗体処理は、T2DNモデルで確立されたタンパク尿に影響を及ぼさなかった。
【図20】[0051]図20:WISE変異体に対するWISEループ2Mab(Ab−AB)の結合特性。
【図21】[0052]図21:WISE変異体に対するWISEループ2Mab(Ab−AE)の結合特性。
【図22】[0053]図22:WISE変異体に対するWISEループ2Mab(Ab−AG)の結合特性。
【図23】[0054]図23:WISE変異体に対するWISEループ2Mab(Ab−AI)の結合特性。
【図24】[0055]図24:WISE変異体に対するWISEループ2Mab(Ab−AC)の結合特性。
【図25】[0056]図25:WISE変異体に対するWISEループ2Mab(Ab−AA)の結合特性。
【図26】[0057]図26:WISE変異体に対するWISEループ2Mab(Ab−AH)の結合特性。
【図27】[0058]図27:WISE変異体に対するWISEループ2Mab(Ab−AJ)の結合特性。
【図28】[0059]図28:WISE変異体に対するWISEループ2Mab(Ab−AF)の結合特性。
【図29】[0060]図29:抗体の活性を示すヒト化WISEループ2mabのMC3T3E1−STFE発現。
【発明を実施するための形態】
【0056】
[0061]本発明は、部分的には、抗体に認識されるエピトープを含有するWISEタンパク質の領域(この抗体は全長WISEポリペプチドに即してエピトープに結合する能力もある)、ならびにそのようなエピトープの作製法および使用法に関するものである。本発明は、WISEまたはWISEの一部分に特異的に結合する結合剤(抗体など)、およびそのような結合剤の使用法も提供する。本発明の結合剤は、ヒトWISEの1つ又はそれより多くのリガンドとの結合およびその生物活性を遮断するか損なうのに有用である。
【0057】
[0062]本明細書に使用される場合、「ヒトWISE」という用語は、配列番号2、4、6、および8に示すタンパク質ならびにそれらの対立遺伝子変異体(allelic variant)を含むものとする。配列番号2、4、6、および8にはWISEの相同分子種も記載されており、マウス、ラット、およびカニクイザルのものが含まれる。WISEは、WISEをコードする遺伝子が形質移入された宿主細胞の培養液の上清をろ過および溶出させて精製することができる。調製およびさらなる精製は、実施例に記載する。ヒトWISE核酸は、米国特許第5,780,263号に記載される。
【0058】
[0063]WISEの相同分子種間には高い配列相同性があることが当業者に理解されるであろう。したがって、ヒトWISEに対する結合剤は、結合剤の認識部位、例えばエピトープなどの抗体結合部位、が高度に保存されており、特にヒト配列とほぼ、または完全に同一である場合は、マウス、ラット、またはカニクイザルのWISEにも結合すると予想できるだろう。したがって、「WISEに特異的に結合する」という用語を用いる場合、種間の配列が保存されている多様な種内でのWISEへの結合を含むと理解される。
【0059】
[0064]本発明による結合剤の例として、以下のものが挙げられる:Ab−AA、Ab−AB、Ab−AC、Ab−AD、Ab−AE、Ab−AF、Ab−AG、Ab−AH、Ab−AI、Ab−AJ、およびD14、ならびに以下の配列番号を含む抗体:配列番号:34と35と36、および配列番号:37と38と39;配列番号:40と41と42、および配列番号:43と44と45;配列番号:46と47と48、および配列番号:49と50と51;配列番号:52と53と54、および配列番号:55と56と57;配列番号:58と59と60、および配列番号:61と62と63;配列番号:64と65と66、および配列番号:67と68と69;配列番号:86と87と88、および配列番号:89と90と69;配列番号:91と92と93、および配列番号:94と95と96;配列番号:97と98と99、および配列番号:100と101と102;配列番号:103と104と105、配列番号:106と107と108,ならびに、配列番号:133と134と135、および配列番号:136と137と138。そのうえさらに、本発明のCDR−L1ポリペプチドの例として、以下の配列番号に示すものが挙げられる:配列番号34、40、46、52、58、64、86、91、97、103、および133。CDR−L2の例として、以下の配列番号に示すものが挙げられる:配列番号35、41、47、53、59、65、87、92、98、104、および134。CDR−L3の例として、以下の配列番号に示すものが挙げられる:配列番号36、42、48、54、60、66、88、93、99、105、および135。CDR−H1の例として、以下の配列番号に示すものが挙げられる:配列番号37、43、49、55、61、67、89、94、100、106、および136。CDR−H2の例として、以下の配列番号に示すものが挙げられる:配列番号38、44、50、56、62、68、90、95、101、107、および137。CDR−H3の例として、以下の配列番号に示すものが挙げられる:配列番号39、45、51、57、63、69、96、102、108、および138。
【0060】
[0065]本明細書に使用される場合、Ab−AAは、配列番号10および12に示すヌクレオチド配列により発現されるポリペプチドで構成される;Ab−ABは、配列番号14および16に示すヌクレオチド配列により発現されるポリペプチドで構成される;Ab−ACは、配列番号18および20に示すヌクレオチド配列により発現されるポリペプチドで構成される;Ab−ADは、配列番号22および24に示すヌクレオチド配列により発現されるポリペプチドで構成される;Ab−AEは、配列番号26および28に示すヌクレオチド配列により発現されるポリペプチドで構成される;Ab−AFは、配列番号30および32に示すヌクレオチド配列により発現されるポリペプチドで構成される;Ab−AGは、配列番号70および72に示すヌクレオチド配列により発現されるポリペプチドで構成される;Ab−AHは、配列番号74および76に示すヌクレオチド配列により発現されるポリペプチドで構成される;Ab−AIは、配列番号78および80に示すヌクレオチド配列により発現されるポリペプチドで構成される;Ab−AJは、配列番号82および84に示すヌクレオチド配列により発現されるポリペプチドで構成される;ならびにD14は、配列番号129および131に示すヌクレオチド配列により発現されるポリペプチドで構成される。本明細書に示すAb−AA、Ab−AB、Ab−AC、Ab−AD、Ab−AE、Ab−AF、Ab−AG、Ab−AH、Ab−AI、Ab−AJ、およびD14は、それぞれシグナルペプチドを欠いており、当業者は、当該分野で既知のシグナルペプチドの使用を含む従来技法を用いて、これらのポリペプチドそれぞれを発現させることができる。また、本明細書に記載のAb−AA、Ab−AB、Ab−AC、Ab−AD、Ab−AE、Ab−AF、Ab−AG、Ab−AH、Ab−AI、およびAb−AJは、それぞれ、可変性の軽鎖および重鎖のみを含み、定常領域を含まない。
【0061】
[0066]そのうえさらに、本明細書に記載の非ヒト抗体は、CDRの単純な「切り取りおよび貼り付け」を含むいくらかの異なる戦略によりヒト化することも可能であるし、ヒト化分子中で重要なマウス配列を保持するための逆復帰突然変異を含むことも可能である。ヒト化の具体例として、以下の実施例のAb−AB、Ab−AI、およびAb−AE(配列番号114と116、配列番号118と120、配列番号122と124、配列番号126と128、および配列番号110と112)が挙げられる。
【0062】
[0067]その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第12/275,850号(米国特許出願公開第2009/0130114号)に既に開示されている分子(例えば、Ab−C、Ab−T、Ab−S、およびAb−P)に関連して、さらなる抗体データを本明細書に示す。
【0063】
[0068]本発明の結合剤は、本明細書に定義されるとおり、代表的には抗体またはその断片である。「抗体」という用語は、無傷の抗体またはその結合性断片を示す。抗体は、完全な抗体分子(ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ならびに全長重鎖および/または軽鎖を有するヒト型抗体が挙げられる)を含むものであっても、抗体の抗原結合性断片を含むものであってもよい。抗体断片は、F(ab')2断片、Fab断片、Fab'断片、Fv断片、Fc断片、およびFd断片を含み、そして、単一ドメイン抗体、単鎖抗体、マキシボディ(maxibody)、ミニボディ(minibody)、細胞内抗体、二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体、v−NAR、およびビス−scFvに組み込むことができる(例えば、Hollinger and Hudson, 2005, Nature Biotechnology, 23, 9, 1126-1136を参照)。抗体ポリペプチドは、米国特許第6,703,199号にも開示されており、そこではフィブロネクチンポリペプチドモノボディ(monobody)が含まれる。他の抗体ポリペプチドは米国特許出願公開第2005/0238646号に開示されており、そこでは単鎖ポリペプチドが記載されている。本明細書に使用される場合、単離された抗体またはその抗原結合性断片は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、キメラ抗体などであって構わない。
【0064】
[0069]抗体に由来する抗原結合性断片は、例えば、抗体のタンパク質加水分解により、例えば、従来法に従って抗体全体をペプシンまたはパパインで消化することにより得ることができる。例えば、抗体をペプシンで酵素開裂して、F(ab')2と名付けられた5S断片にすることにより、抗体断片を得ることができる。チオール還元剤を用いてこの断片をさらに開裂することで、3.5SのFab'一価断片を得ることができる。開裂反応は、任意で、ジスルフィド結合の開裂から生じるスルフヒドリル基をブロックする基を用いて行うことができる。代替法として、パパインを用いた酵素開裂により、2つの一価Fab断片と1つのFc断片が直接得られる。こうした方法は、例えば、以下に記載される:Goldenberg, 米国特許第4,331,647号; Nisonoff et al, Arch. Biochem. Biophys. 89:230, 1960; Porter, Biochem. J. 73:119, 1959; Edelman et al., in Methods in Enzymology 1:422 (Academic Press 1967); および Andrews, S. M. and Titus, J. A. in Current Protocols in Immunology (Coligan J. E., et al, eds), John Wiley & Sons, New York (2003). pages 2.8.1-2.8.10 and 2.10A.1-2.10A.5。抗体を切断する他の方法、例えば、重鎖を分離して一価軽重鎖断片(Fd)を形成する方法、断片をさらに開裂する方法、およびその他の酵素技法、化学技法、および遺伝子技法も、無傷の抗体により認識される抗原に対して生成した断片が結合するかぎり、用いることができる。
【0065】
[0070]抗体断片は、合成タンパク質であっても、また遺伝子操作されたタンパク質であってもよい。例えば、抗体断片として、軽鎖可変領域からなる単離された断片、重鎖および軽鎖の可変領域からなる"Fv"断片、軽鎖可変領域と重鎖可変領域がペプチドリンカーで連結されている組替え単鎖ポリペプチド分子(scFvタンパク質)が挙げられる。
【0066】
[0071]別の形の抗体断片としては、抗体の相補性決定領域(CDR)を1つ又はそれより多くを含むポリペプチドがある。CDR(「最小認識単位」または「超可変領域」とも呼ばれる)は、目的のCDRをコードするポリヌクレオチドを構築することで得ることができる。そのようなポリヌクレオチドは、例えば、抗体産生細胞のmRNAを鋳型として用いて可変領域を合成するポリメラーゼ連鎖反応法により製造される(例えば、Larrick et al., Methods: A Companion to Methods in Enzymology 2:106, 1991; Courtenay-Luck, "Genetic Manipulation of Monoclonal Antibodies, " in Monoclonal Antibodies. Production, Engineering and Clinical Application, Ritter et al. (eds.), page 166 (Cambridge University Press 1995); およびWard et al., "Genetic Manipulation and Expression of Antibodies, " in Monoclonal Antibodies: Principles and Applications, Birchetal, (eds.), page 137 (Wiley-Liss, Inc. 1995)を参照)。
【0067】
[0072]よって、1つの態様において、本発明の結合剤は、本明細書に記載されるとおりのCDRを少なくとも1つ含む。結合剤は、本明細書に記載されるとおりのCDRを少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、または6つ含んでもよい。結合剤はさらに、本明細書に記載される抗体の可変領域ドメインを少なくとも1つ含んでもよい。可変領域ドメインは、任意の大きさ、または任意のアミノ酸組成のもので構わず、一般には、ヒトWISEへの結合に関与するCDR配列(例えば、CDR−H1、CDR−H2、CDR−H3)の少なくとも1つ、および/または本明細書に具体的に記載されていて1つ以上のフレームワーク配列と隣接しているかインフレームにある軽鎖CDRを含むだろう。一般用語では、可変(V)領域ドメインは、免疫グロブリン重鎖(VH)および/または軽鎖(VL)可変ドメインの任意の適した好適な配列で構わない。したがって、例えば、V領域ドメインは、以下に記載のとおり少なくとも1×10−7Mに等しいかまたはそれ未満の親和性で独立してヒトWISEに結合する能力がある、単量体のVHまたはVLドメインであってもよい。あるいは、V領域ドメインは、VH−VH、VH−VL、またはVL−VLを含有する二量体であってもよい。V領域二量体は、少なくとも1本のVH鎖および少なくとも1本のVL鎖を含み、これらは非共有結合で会合していてもよい(以下、FVと称する)。所望であれば、これらの鎖は、例えば、2つの可変ドメインの間のジスルフィド結合を介して直接的に、またはリンカー(例えば、ペプチドリンカー)を通じて単鎖Fv(scFV)を形成させるかのいずれかにより共有結合的にカップリングさせてもよい。
【0068】
[0073]可変領域ドメインは、任意の天然に存在する可変ドメインであってもそれを遺伝子操作した改変体であっても構わない。「操作改変体」は、組換えDNA操作技法を用いて作成された可変領域ドメインを意味する。そのような操作改変体として、例えば、特定抗体のアミノ酸配列に、挿入、削除、変更を行うことによって、その特定抗体の可変領域から作成されたものが挙げられる。具体例として、第一の抗体に由来する少なくとも1つのCDRおよび随意の1つ以上のフレームワークアミノ酸配列を含み、残部は第二の抗体に由来する可変領域ドメインからなるように操作した可変領域ドメインが挙げられる。
【0069】
[0074]可変領域ドメインは、C末端アミノ酸で、少なくとも1つの他の抗体ドメインまたはその断片に共有結合で連結することができる。つまり、例えば、可変領域ドメインに存在するVHドメインが、免疫グロブリンCH1ドメインまたはその断片に結合してもよい。同様に、VLドメインが、CKドメインまたはその断片に結合してもよい。このように、例えば、抗体は、Fab断片であってもよく、ここで抗原結合性ドメインは、会合したVHドメインとVLドメインを含有し、VHドメインとVLドメインはそれぞれがそれぞれのC末端でCH1ドメインおよびCKドメインと共有結合している。CH1ドメインは、さらにアミノ酸で延長されて、例えば、Fab'断片で見られるようなヒンジ領域またはヒンジ領域ドメインの一部をもたらしてもよいし、さらなるドメイン(抗体CH2ドメインおよびCH3ドメインなど)をもたらしてもよい。
【0070】
[0075]本明細書に記載のとおり、結合剤は、これらのCDRのうち少なくとも1つを含む。例えば、1つ又はそれより多くのCDRは、既知の抗体フレームワーク領域(IgGl、IgG2など)に組み込むか、好適な適したビヒクルと抱合させるかにより、その半減期を延ばすことができる。好適な適したビヒクルとして、Fc、ポリエチレングリコール(PEG)、アルブミン、トランスフェリンなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらのビヒクルおよびその他の好適な適したものビヒクルは当該分野で既知である。このような抱合したCDRペプチドは、単量体でも、二量体でも、四量体でも、他の形であってもよい。1つの態様において、1つ以上の水溶性ポリマーが、結合剤の1カ所以上の特定部位、例えばアミノ末端に結合されている。
【0071】
[0076]特定の態様において、結合剤は、1つ以上の水溶性ポリマーの連結物を含み、それはポリエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、およびポリプロピレングリコールを含むが、これらに限定されない。例えば、米国特許第4,640,835号、米国特許第4,496,689号、米国特許第4,301,144号、米国特許第4,670,417号、米国特許第4,791,192号、および米国特許第4,179,337号を参照。特定の態様において、結合剤誘導体は、モノメトキシポリエチレングリコール、デキストラン、セルロース、またはその他の炭化水素系ポリマー、ポリ(N−ビニルピロリドン)−ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)およびポリビニルアルコール、ならびにそのようなポリマーの混合物、のうち1つ以上を含む。特定の態様において、1つ以上の水溶性ポリマーは、1本以上の側鎖にランダム結合している。特定の態様において、PEGは、結合剤(抗体など)の治療能力の改善に作用し得る。そのような方法は具体的には、例えば、米国特許第6,133,426号に記載されており、その内容はどのような目的であっても参照することで本明細書に組み込まれる。
【0072】
[0077]本発明の結合剤は、その結合特異性を保持する限り、1つ以上のアミノ酸が置換されていてもよいことが、当業者には理解されるだろう。したがって、結合剤構造に対する修飾も本発明の範囲に含まれる。そのような修飾として、アミノ酸置換を挙げることができるが、このアミノ酸置換は保存的であっても非保存的であってもいが、結合剤のWISE結合能力を破壊しないものである。保存的アミノ酸置換は非天然アミノ酸残基も包含することができ、非天然アミノ酸残基は、生体系での合成ではなく化学的ペプチド合成により組み込まれるのが一般的である。非天然アミノ酸残基として、ペプチド模倣物およびその他の反対形または逆位形(reversed or inverted forms)アミノ酸部分が挙げられる。保存的アミノ酸置換として、置換した位置のアミノ酸残基の極性または電荷にほとんどまたは全く影響がない規範的な基による天然アミノ酸残基の置換も挙げることができる。
【0073】
[0078]非保存的置換として、あるクラスの一員であるアミノ酸またはアミノ酸模倣物から物性(例えば、大きさ、極性、疎水性、電荷)の異なる別のクラスの一員への交換を挙げることができる。そのような置換残基は、ヒト抗体の非ヒト抗体と相同な領域に導入されていても、またはこの分子の非相同領域に導入されていてもよい。
【0074】
[0079]さらに、当業者は、所望のアミノ酸残基それぞれでの単一のアミノ酸置換を含有する試験用変異体を作ることができる。そのような試験は、以下の実施例で記載されるとおりの結合剤の標的で、または本発明の治療用結合剤で、行うことができる。変異体は、次いで、当業者に既知である活性アッセイを用いてスクリーニングすることができる。こうした変異体を用いることで、好適な変異体についての情報を集めることができる。例えば、特定のアミノ酸残基が変化した結果、活性が損なわれたり、望ましくなく減少したり、または不適切な活性になったりすることがわかれば、そのような変化を伴う変異体を除外することができる。すなわち、こうしたルーチン実験から集められた情報に基づき、当業者は、単独でまたは他の変異と組み合わせてのいずれにしろそれ以上置換すべきではないアミノ酸を容易に決定できる。
【0075】
[0080]当業者は、周知の技法を用いて、本明細書に記載されるとおりの好適なポリペプチド変異体を決定することができるだろう。特定の態様において、当業者は、活性にとって重要ではないと思われる領域を標的とすることで、分子中の、活性を破壊することなく変更可能な好適領域を同定することが可能である。特定の態様において、当業者は、類似のポリペプチド間で保存されている分子の残基および一部を同定することができる。特定の態様において、生物活性または構造にとって重要と思われる領域さえも、生物活性を破壊することなく、またはポリペプチド構造に悪影響を及ぼすことなく、保存的アミノ酸置換の対象とすることができる。
【0076】
[0081]さらに、当業者は、類似のポリペプチドでの活性または構造にとって重要である残基を同定する構造機能研究を参照することができる。そのような比較に照らして、当業者は、あるタンパク質におけるアミノ酸残基の重要性を、類似のタンパク質のそれに相当するアミノ酸残基の活性または構造における重要性から予測することができる。当業者は、そのような重要と予測されるアミノ酸残基について、化学的に類似したアミノ酸置換を選択することができる。
【0077】
[0082]いくつかの学術文献が二次構造の予測を扱っている。Moult J., Curr. Op. in Biotech. , 7(4):422-427 (1996), Chou et al, Biochemistry, 13(2):222-245 (1974); Chou et al, Biochemistry, 113(2):211-222 (1974); Chou et al, Adv. Enzymol. Relat. Areas Mol. Biol., 47:45-148 (1978); Chou et al, Ann. Rev. Biochem., 47:251-276 and Chou et al, Biophys. J., 26:367-384 (1979)を参照。さらに、二次構造の予測を補助するために、コンピュータープログラムが現在利用可能である。二次構造を予測する方法の1つは、相同性モデリングに基づいている。例えば、配列同一性が30%より高い、または類似性が40%より高い2つのポリペプチドまたはタンパク質は、類似した構造トポロジーを有することが多い。タンパク質構造データベース(PDB)の近年の発達により、ポリペプチド構造またはタンパク質構造中の可能な折り畳み回数を含む二次構造の予測可能性は向上してきている。Holm et al., Nucl. Acid. Res., 27(1):244-247 (1999)を参照。所定のポリペプチドまたはタンパク質における折り畳み回数は限られており、いったん臨界的な数の構造が解き明かされてしまえば、構造予測の正確性は飛躍的に向上するだろうということが示唆されている(Brenner et al, Curr. Op. Struct. Biol., 7(3):369-376 (1997))。
【0078】
[0083]二次構造を予測する方法としてさらに、「スレッディング法(threading)」(Jones, D., Curr. Opin. Struct. Biol, 7(3):377-87 (1997); Sippl et al, Structure, 4(1):15-19 (1996))、「プロファイル分析(profile analysis)」(Bowie et al, Science, 253:164-170 (1991); Gribskov et al, Meth. Enzym., 183:146-159 (1990); Gribskov et al, Proc. Nat. Acad. Sci., 84(13):4355-4358 (1987))、および「進化論的関連性(evolutionary linkage)」(Holm,前出(1999)およびBrenner,前出(1997)を参照)が挙げられる。
【0079】
[0084]特定の態様において、結合剤の変異体として、親ポリペプチドのアミノ酸配列と比較してグリコシル化部位の個数および/または種類が改変されているグリコシル化変異体が挙げられる。特定の態様において、変異体は、N−結合グリコシル化部位の個数が天然タンパク質のものより多いか、または少ない。N−結合グリコシル化部位は、Asn−X−SerまたはAsn−X−Thrという配列を特徴とする(配列中、Xで示されるアミノ酸残基は、プロリンを除く任意のアミノ酸残基が可能である)。この配列を作り出すアミノ酸残基の置換により、N−結合炭化水素鎖の付加を可能にする部位が新たにもたらされる。あるいは、この配列を取り除く置換により、既存のN−結合炭化水素鎖が除去されるだろう。1カ所以上のN−結合グリコシル化部位(たいていは天然に存在するもの)が取り除かれて、新たなN−結合部位が1カ所以上作り出されるN−結合炭化水素鎖再配置も提供される。好適な抗体変異体としてさらに、親アミノ酸配列と比較して、1つ以上のシステイン残基が、欠失されているかまたは別のアミノ酸(例えば、セリン)に弛緩されているシステイン変異体が挙げられる。システイン変異体は、例えば不溶性封入体の単離後など、抗体を生理活性な立体構造に再度折り畳む必要がある場合に、有用となり得る。システイン変異体は一般に、天然タンパク質よりも有するシステイン残基が少なく、たいてい偶数個のシステイン残基を有していて、対にならないシステインから生じる相互作用を最小限にしている。
【0080】
[0085]望ましいアミノ酸置換(保存的か非保存的かに関わらず)は、そのような置換が望まれるときに当業者により決定することができる。特定の態様において、アミノ酸置換を用いて、WISEに対する抗体で重要な残基を同定すること、あるいは本明細書に記載のWISEに対する抗体の親和性を増加または減少させることができる。
【0081】
[0086]特定の態様によれば、好適なアミノ酸置換は、そのようなポリペプチドについて、(1)タンパク質分解に対する感受性を減少させるもの、(2)酸化に対する感受性を減少させるもの、(3)タンパク質複合体を形成するための結合親和性を変更するもの、(4)結合親和性を変更するもの、および/または(4)その他の生理化学的性質または機能性を与えるか修飾するものである。特定の態様によれば、1つまたは複数のアミノ酸置換(特定の態様において、保存的アミノ酸置換である)は、天然配列(特定の態様において、分子間接触をもたらすドメイン(単数又は複数)の外のポリペプチド部分において)で行うことができる。特定の態様において、保存的アミノ酸置換は、たいてい、親配列の構造的特徴を実質的に変化させない(例えば、置換アミノ酸は、親配列で見られるヘリックスを壊すか、または親配列を特徴づけるその他の種類の二次構造を破壊する傾向を示すべきではない)。当該分野で認識されているポリペプチド二次構造および立体構造の例は、Proteins, Structures and Molecular Principles (Creighton, Ed., W. H. Freeman and Company, New York (1984)); Introduction to Protein Structure (C. Branden and J. Tooze, eds., Garland Publishing, New York, N.Y. (1991));およびThornton et al. Nature 354:105 (1991)に記載されており、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる。
【0082】
[0087]特定の態様において、本発明の結合剤は、ポリマー、脂質、またはその他の部分と化学的に結合していてもよい。
[0088]本発明の結合剤は、本明細書に記載されるCDRの少なくとも1つを、生体適合性フレームワーク構造に組み込んだ形で含んでもよい。1つの例として、生体適合性フレームワーク構造は、立体構造的に安定な構造支持体、またはフレームワーク、または足場を形成するのに十分なポリペプチドもしくはその一部を含み、局在的表面領域で抗原に結合する1種以上のアミノ酸配列(例えば、CDR、可変領域など)を提示することができるものである。そのような構造としては、天然のポリペプチドまたはポリペプチド「折り畳み」(構造モチーフ)が可能であり、また、天然のポリペプチドまたは折り畳みに対して1つ以上の修飾(アミノ酸の付加、欠失、または置換など)がなされたものも可能である。こうした足場は、ヒト、その他ほ乳類、その他脊椎動物、無脊椎動物、植物、細菌、およびウイルスなどの任意の種(または複数の種)のポリペプチドに由来するものであり得る。
【0083】
[0089]代表的には、生体適合性フレームワーク構造は、免疫グロブリンドメイン以外の足場タンパク質またはタンパク質骨格に基づく。例えば、フィブロネクチン、アンキリン、リポカリン、ネオカルチノスタチン(neocarzinostain)、シトクロムb、CP1亜鉛フィンガー、PST1、コイルドコイル、LAC1−D1、Zドメイン、およびテンドラミサット(tendramisat)ドメインに基づくものを用いることができる(例えば、Nygren and Uhlen, 1997, Current Opinionin Structural Biology, 7, 463-469を参照)。
【0084】
[0090]好適な態様において、本発明の結合剤は本明細書に記載のヒト化抗体を含むことが理解されよう。本明細書に記載されるようなヒト化抗体は、当業者に知られている技法を用いて産生することができる(Zhang, W., et al., Molecular Immunology. 42(12):1445-1451, 2005; Hwang W. et al., Methods. 36(1):35-42, 2005; Dall'Acqua W F, et al., Methods 36(1):43-60, 2005; および Clark, M., Immunology Today. 21(8):397-402, 2000)。
【0085】
[0091]さらに、好適な結合剤は、本明細書に具体的に開示されるCDR−H1、CDR−H2、CDR−H3、CDR−L1、CDR−L2、およびCDR−L3の一つ又はそれより多くなど、こうした抗体の一部分を含むことが、当業者に認識されるであろう。CDR−H1、CDR−H2、CDR−H3、CDR−L1、CDR−L2、およびCDR−L3の領域の少なくとも1つは、結合剤が無置換CDRの結合特異性を保持するかぎり少なくとも1つのアミノ酸が置換されていてもよい。結合剤の非CDR部分は、結合剤が本明細書に開示される抗体とWISEの結合を交差阻止、および/またはWISEを中和することになるような非タンパク質分子であってもよい。結合剤の非CDR部分は、結合剤が「ヒトWISEペプチドエピトープ競合結合アッセイ」で本明細書に記載される抗体の少なくとも1種により示されるのと同様なヒトWISEペプチドへの結合パターンを示し、および/またはWISEを中和することになるような非タンパク質分子であってもよい。結合剤の非CDR部分はアミノ酸で構成されていてもよく、結合剤は組換え結合性タンパク質又は合成ペプチドであり、この組換え結合性タンパク質が本明細書に開示される抗体とWISEの結合を交差阻止、および/またはWISEを中和する。結合剤の非CDR部分はアミノ酸で構成されていてもよく、結合剤は組換え結合性タンパク質であり、この組換え結合性タンパク質はヒトWISEペプチドエピトープ競合結合アッセイ(本明細書で以下に記載される)で本明細書に記載される抗体Ab−AA、Ab−AB、Ab−AC、Ab−AD、Ab−AE、Ab−AF、Ab−AG、Ab−AH、Ab−AI、Ab−AJ D14ならびにAb−AA、Ab−AB、Ab−AC、Ab−AD、Ab−AE、Ab−AF、Ab−AG、Ab−AH、Ab−AI、Ab−AJのCDRでヒト化された抗体の少なくとも1種により示されるのと同様なヒトWISEペプチドへの結合パターンを提示、および/またはWISEを中和する。
【0086】
[0092]抗体が、上記のとおり、CDR−H1、CDR−H2、CDR−H3、CDR−L1、CDR−L2、およびCDR−L3の1つ以上を含む場合、この抗体は、それらの配列をコードするDNAを含有する宿主細胞での発現により得ることができる。それぞれのCDR配列をコードするDNAは、CDRのアミノ酸配列に基づいて決定することができ、オリゴヌクレオチド合成法、部位特異的突然変異誘発法、およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を適切にもちいることで、任意の所望の抗体可変領域フレームワークおよび定常領域DNA配列と一緒に合成することができる。可変領域フレームワークおよび定常領域をコードするDNAは、当業者には、GenBank(登録商標)などの遺伝子配列データベースから広く入手可能である。上記のCDRはたいてい、それぞれ、Kabat付番方式(Kabat et al., 1987 in Sequences of proteins of Immunological Interest, U.S. Department of Health and Human Services, NIH, USA)に従って、可変領域フレームワークの重鎖の31位〜35位(CDR−H1)、50位〜65位(CDR−H2)、および95位〜102位(CDR−H3)、ならびに軽鎖の24位〜34位(CDR−L1)、50位〜56位(CDR−L2)、および89位〜97位(CDR−L3)に位置する。
【0087】
[0093]「CDR」という用語は、抗体可変配列内の相補性決定領域を意味することができる。CDRはたいてい重鎖および軽鎖の可変領域のそれぞれに3つあり、それぞれの可変領域ごとに、CDR1、CDR2、およびCDR3と名付けられている。これらのCDRの境界は、異なる方式によってそれぞれ別々に定義されている。Kabatが記載する方式(Kabat et al., Sequences of proteins of Immunological Interest (National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1987) and (1991))は、抗体の任意の可変領域に適用可能な残基付番方式を提供するもので、3つのCDRを定義する残基境界を提供する。Chothiaおよび共同研究者(Chothia & Lesk, J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987) および Chothia et al., Nature 342:877-883 (1989))は、Kabat CDR内の特定のサブ部分同士が、アミノ酸配列のレベルでは広い多様性を持ちながらも、ほとんど同一なペプチド骨格立体構造を採用していることを見いだした。これらのサブ部分は、L1、L2、およびL3、またはH1、H2、およびH3と命名され、ここで「L」および「H」は、それぞれ、軽鎖領域および重鎖領域を示す。これらの領域は、Kabat式で定義されるCDRと境界が重なりあうことがある。その他のCDRを定義する境界で、Kabat式のCDRと重なりあうものは、Padlan(FASEB J. 9:133-139 (1995))およびMacCallum(J Mol Biol 262(5):732-45 (1996))により記載されている。さらに他のCDR境界の定義は、上記の方式の1つに厳密に従うというものではないかもしれないが、それでも、Kabat付番方式と重なりあうところがある。もっとも、特定の残基または残基の群、さらにはCDR全体さえも、それらが抗原結合に有意の影響を及ぼさないという予測または実験上の知見に照らして、定義されるCDRが短かったり長かったりするかもしれないが。本明細書に用いられる方法は、これらの方式のいずれかに従って定義されるCDRを利用することができる。
【0088】
[0094]本明細書に使用される場合、「フレームワーク」または「フレームワーク配列」という用語は、CDRを含まないがその周辺の可変領域の配列を示す。CDR配列の厳密な定義は方式によって決定が異なり得るため、フレームワーク配列の意味は、これに相応して異なる解釈を持つものである。CDR(軽鎖のCDR−L1、−L2、および−L3、ならびに重鎖のCDR−H1、−H2、および−H3)は、軽鎖および重鎖のそれぞれのフレームワーク領域を各鎖において4つのサブ領域(FR1、FR2、FR3、およびFR4)に分割するものでもある。各鎖において、CDR1はFR1とFR2の間に、CDR2はFR2とFR3の間に、そしてCDR3はFR3とFR4の間に位置する。FR1、FR2、FR3、またはFR4として特定のサブ領域を明記しなくても、フレームワーク領域は、その他によって示されるとおり、一本の天然免疫グロブリン鎖の可変領域内のFRsのまとまりを表す。本明細書に使用される場合、FRは、4つのサブ領域のうちの1つを表し、FRsはフレームワーク領域を構成する4つのサブ領域のうちの2つ以上を表す。
【0089】
[0095]いったん合成されると、本発明の抗体またはその断片をコードするDNAは、任意の個数の既知発現ベクターを用いる、核酸切除、連結、形質転換、および形質移入のための多様な周知の手順のいずれかに従って、増殖および発現させることができる。したがって、特定の態様において、抗体断片の発現は、大腸菌(Escherichia coli)などの原核生物宿主内で行うことが好適であってもよい(例えば、Pluckthun et al., 1989 Methods Enzymol. 178:497-515を参照)。他の特定の態様において、抗体またはその断片の発現は、酵母菌(例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、およびピキア・パストリス(Pichia pastoris))、動物細胞(哺乳類細胞を含む)、および植物細胞を含む真核生物の宿主細胞内で行うことが好適であってもよい。好適な動物細胞の例として、骨髄腫細胞(マウスNSO細胞株など)、COS細胞、CHO細胞、およびハイブリドーマが挙げられるが、これらに限定されない。植物細胞の例として、タバコ細胞、トウモロコシ細胞、ダイズ細胞、およびコメ細胞が挙げられる。
【0090】
[0096]抗体の可変領域および/または定常領域をコードするDNAを含有する1つ以上の複製可能な発現ベクターを調製し、そして、抗体の産生が生じる適切な細胞株、例えば、非産生型細胞腫細胞株(マウスNSO細胞株など)または細菌(大腸菌など)を形質転換するのに用いてもよい。効率的に転写と翻訳を行なわせる目的で、各ベクターのDNA配列は、可変ドメイン配列に機能的に連結された適切な制御配列、具体的にはプロモーター配列およびリーダー配列を含むべきである。このようにして抗体を製造する具体的な方法は、一般に周知であり日常的に用いられている。例えば、基本の分子生物学的手順が、Maniatis et al.(Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory, New York, 1989;また Maniatis et al., 3rd ed., Cold Spring Harbor Laboratory, New York, (2001)も参照)に記載されている。DNA配列決定は、Sanger et al.(PNAS 74:5463, (1977))およびAmersham International plc sequencing handbookに記載のように行うことができ、部位特異的突然変異誘発は、当該分野で既知の方法に従って行うことができる(Kramer et al., Nucleic Acids Res. 12:9441, (1984); Kunkel Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:488-92 (1985); Kunkel et al., Methods in Enzymol. 154:367-82 (1987); the Anglian Biotechnology Ltd handbook)。さらに、多数の文献が、DNAの操作、発現ベクターの創造、ならびに適切な細胞の形質転換および培養による抗体調製に適した技法を記載している(Mountain A and Adair, J R in Biotechnology and Genetic Engineering Reviews (ed.Tombs, M P, 10, Chapter 1, 1992, Intercept, Andover, UK); "Current Protocols in Molecular Biology", 1999, F. M. Ausubel (ed.), Wiley Interscience, New York)。
【0091】
[0097]上記のCDRの1つ以上を含有する本発明による抗体の親和性を改善することが望まれる場合、以下をはじめとする多数の親和性成熟化プロトコルで達成することができる:CDRの維持(Yang et al., J. Mol. Biol., 254, 392-403, 1995)、チェイン・シャッフリング法(Marks et al., Bio/Technology, 10, 779-783, 1992)、大腸菌の突然変異株の使用(Low et al., J. Mol. Biol., 250, 350-368, 1996)、DNAシャッフリング法(Patten et al., Curr. Opin. Biotechnol., 8, 724-733, 1997)、ファージディスプレイ法(Thompson et al., J. Mol. Biol., 256, 7-88, 1996)およびセクシャルPCR(sexual PCR)(Crameri, et al., Nature, 391, 288-291, 1998)。これらの親和性成熟化の方法は全て、Vaughan et al.(Nature Biotechnology, 16, 535-539, 1998)で考察されている。
【0092】
[0098]その他の本発明による抗体は、本明細書に記載されるとおりの従来の免疫化手順および細胞融合手順や当該分野で既知のそのような手順によって得ることができる。本発明のモノクローナル抗体は、様々な既知の技法を用いて生成させることができる。一般に、特定の抗原に結合するモノクローナル抗体は、当業者に知られている方法によって得ることができる(例えば、Kohler et al., Nature 256:495, 1975; Coligan et al. (eds.), Current Protocols in Immunology, 1:2.5.12.6.7 (John Wiley & Sons 1991); 米国特許第RE32,011号、米国特許第4,902,614号、米国特許第4,543,439号、および米国特許第4,411,993号; Monoclonal Antidobies, Hybridomas: A New Dimension in Biological Analyses, Plenum Press, Kennett, McKearn, and Bechtol (eds.) (1980); ならびにAnntibodies: A Laboratory Manual, Harlow and Lane (eds.), Cold Spring Harbor Laboratory Press (1988); Picksley et al., "Production of monoclonal antibodies against proteins expressed in E. coli, " in DNA Cloning 2: Expression Systems, 2nd Edition, Glover et al.(eds.), page 93 (Oxford University Press 1995)を参照)。抗体断片は、本発明による抗体から、任意の好適な標準技法(例えば、タンパク質消化、または随意に、タンパク質消化(例えば、パパインまたはペプシンを用いて)とそれに続くジスルフィド結合の穏やかな還元およびアルキル化)を用いて得ることができる。あるいは、そのような断片は、本明細書に記載されるとおりの遺伝子組換え操作技法によっても生成させることができる。
【0093】
[0099]モノクローナル抗体は、当該分野で既知の方法および本明細書に記載の方法に従って、動物(例えば、ラット、ハムスター、ウサギ、または好ましくはマウスであり、当該分野で既知のとおり遺伝子導入動物およびノックアウト動物を含む)に、WISE(例えば、配列番号2、4、6、または8に示される配列の全長ポリペプチドまたは成熟ポリペプチド、あるいはその断片(例えば、配列番号9)を含む)を含む免疫原を注射することによって得ることができる。特定の抗体が産生されていることは、最初の注射後および/または追加の注射後に、血清試料を取り、複数ある当該分野で既知の免疫検出法および本明細書に記載の方法のいずれか1つを用いて、ヒトWISEまたはペプチドに結合する抗体が存在することを検出することで観察することができる。所望の抗体を産生する動物から、リンパ球、最も一般的には脾臓またはリンパ節から細胞を取り出して、Bリンパ球を得る。次いで、Bリンパ球を、薬物感作したミエローマ細胞融合パートナー、好ましくは免疫化動物と同一遺伝子であり他の望ましい性質を随意に有するパートナー(例えば、内在性Ig遺伝子産物を発現できないもの、例えば、P3X63−Ag8.653(ATCCNo.CRL 1580);NSO、SP20)と融合させて、ハイブリドーマ(これは不死真核細胞株である)を製造する。リンパ球(例えば、脾臓の)細胞とミエローマ細胞を、膜融合促進剤(ポリエチレングリコールや非イオン性洗剤など)と一緒に数分間ひとまとめにし、それからハイブリドーマの増殖を補助するが非融合細胞腫細胞の増殖は補助しない選択的培地に、低密度で蒔くことができる。好適な選択培地は、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)である。十分な時間(通常は約1週間から2週間)が経過すると、細胞のコロニーが観察される。単一のコロニーを単離し、細胞が産生する抗体を、当該分野で既知の様々な免疫アッセイおよび本明細書に記載されるそのようなアッセイのいずれか1つを用いて、ヒトWISEに対する結合活性について検査することができる。ハイブリドーマをクローニングし(例えば、限界希釈クローニングにより、または軟寒天プラーク単離により)、WISEに特異的な抗体を産生する陽性クローンを選択して培養する。ハイブリドーマ培養物からのモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ培養物の上清から単離することができる。マウスモノクローナル抗体を製造する代替法は、ハイブリドーマ細胞を同一遺伝子のマウス、例えば、モノクローナル抗体を含有する腹水液の形成を促進するようにあらかじめ処理されているマウス(例えば、プリスタンで準備刺激されたもの)の腹膜腔に注射することである。モノクローナル抗体は、十分に確立された様々な技法により単離精製することができる。そうした単離技法として、プロテインAセファロースを用いたアフィニティークロマトグラフィー、分子ふるいクロマトグラフィー、およびイオン交換クロマトグラフィーが挙げられる(例えば、Coligan at pages 2.7.1-2.7.12 and pages 2.9.1-2.9.3; Baines et al., "Purification of Immunoglobulin G (IgG), " in Methods in Molecular Biology, Vol.10, pages 79-104 (The Humana Press, Inc.1992)を参照)。モノクローナル抗体は、抗体の特定の性質(例えば、重鎖または軽鎖のアイソタイプ、結合特異性など)に基づいて選択された適切なリガンドを用いて、アフィニティークロマトグラフィーで精製することもできる。固体支持体に固定された好適なリガンドの例として、プロテインA、プロテインG、抗定常領域(anticonstant region)(軽鎖または重鎖)抗体、抗イディオタイプ抗体、およびTGF−β結合タンパク質、ならびにそれらの断片および変異体が挙げられる。
【0094】
[0100]本発明の抗体は、ヒトモノクローナル抗体であってもよい。ヒトモノクローナル抗体は、当業者になじみのある技法をいくつでも用いて製造することができる。そのような方法として、ヒト末梢血細胞(例えば、Bリンパ球を含む)のEpstein Barrウイルス(EBV)形質転換、ヒトB細胞のインビトロ免疫化、挿入されたヒト免疫グロブリン遺伝子を保有する免疫化遺伝子導入マウスに由来する膵臓細胞の融合、ヒト免疫グロブリンV領域ファージライブラリからの単離、ならびに他当該分野で知られるとおりの手順および本明細書の記載に基づく手順が挙げられるが、それらに限定されない。例えば、ヒトモノクローナル抗体は、抗原性誘発に反応してヒト抗体を特異的に産生するように遺伝子操作された遺伝子導入マウスから得ることができる。遺伝子導入マウスからヒト抗体を得る方法は、例えば、以下に記載される:Green et al., Nature Genet. 7:13, 1994; Lonberg et al., Nature 368:856, 1994; Taylor et al., Int. Immun. 6:579, 1994; 米国特許第5,877,397号; Bruggemann et al., 1997 Curr. Opin. Biotechnol. 8:455-58; Jakobovits et al., 1995 Ann. N. Y Acad. Sci. 764:525-35。この技法では、ヒト重鎖および軽鎖の遺伝子座の要素を、内在性の重鎖および軽鎖の遺伝子座が選択的に破壊されている胚性幹細胞株に由来するマウス系統に導入する(Bruggemann et al., Curr. Opin. Biotechnol. 8:455-58 (1997)も参照)。例えば、ヒト免疫グロブリン導入遺伝子は、ミニ遺伝子構築物であってもよいし、酵母菌人工染色体の導入遺伝子座(transloci)でもよく、マウスリンパ組織でB細胞特異的DNA再配列および高頻度突然変異を起こすものである。ヒトモノクローナル抗体は、遺伝子導入マウスを免疫化し、このマウスがWISEに特異的なヒト抗体を産生することで、得ることができる。免疫化した遺伝子導入マウスのリンパ球を用いて、本明細書に記載の方法に従ってヒト抗体分泌ハイブリドーマを産生することができる。ヒト抗体を含有するポリクローナル血清は、免疫化動物の血液からも得ることができる。
【0095】
[0101]本発明のヒト抗体を製造する別の方法として、ヒト末梢血細胞をEBV形質転換により不死化することが挙げられる。例えば、米国特許第4,464,456号を参照。WISEに特異的に結合するモノクローナル抗体を産生するそうした不死化B細胞株(またはリンパ芽球様細胞株)は、本明細書に提供されるとおりの免疫検出法(例えば、ELISA)により同定し、次いで標準的なクローニング技術により単離することができる。抗WISE抗体を産生するリンパ芽球様細胞株の安定性は、当該分野で既知の方法に従って、形質転換細胞株をマウス細胞腫と融合してマウス−ヒト雑種細胞株を製造することにより改善することができる(例えば、Glasky et al., Hybridoma 8:377-89 (1989)を参照)。ヒトモノクローナル抗体を製造するさらに別の方法として、インビトロ免疫化がある。この方法は、ヒト膵臓B細胞をヒトWISEで刺激し、続いて刺激されたB細胞を異種雑種(heterohybrid)融合パートナーと融合することを含む。例えば、Boerner et al., 1991 J. Immunol. 147:86-95を参照。
【0096】
[0102]特定の態様では、抗ヒトWISE抗体を産生するB細胞を選択して、このB細胞から、当該分野で既知の分子生物学的技法(WO92/02551;米国特許第5,627,052号; Babcook et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:7843-48 (1996))および本明細書に記載されるそのような技法に従って、軽鎖および重鎖の可変領域をクローン化する。免疫化動物由来のB細胞は、脾臓、リンパ節、または末梢血試料から、WISEに特異的に結合する抗体を産生する細胞を選択することで単離されたものであってもよい。B細胞は、ヒトの、例えば、末梢血試料から単離されたものであってもよい。所望の特異性を持つ抗体を産生する単一種のB細胞を検出する方法は、当該分野で周知であり、例えば、プラーク形成、蛍光標識細胞分取、インビトロ刺激とそれに続く特異的抗体の検出などによって行われる。特異的抗体産生B細胞の選択法として、例えば、B細胞の単一細胞懸濁液をヒトWISE含有軟寒天で調製することが挙げられる。B細胞が産生した特異的抗体と抗原の結合は、複合体の形成をもたらし、免疫沈降物として目視可能になる。所望の抗体を産生するB細胞を選択した後、当該分野に既知の方法および本明細書に記載の方法に従って、DNAまたはmRNAを単離および増幅することで、特異的抗体遺伝子をクローン化することができる。
【0097】
[0103]本発明の抗体を得るさらなる方法は、ファージディスプレイによるものである。例えば、Winter et al., 1994 Annu. Rev. Immunol. 12:433-55; Burton et al., 1994 Adv. Immunol. 57:191-280を参照。TGF−β結合タンパク質またはその変異体もしくは断片に特異的に結合するIg断片(Fab、Fv、sFv、またはその多量体)を選択するためのスクリーニングが可能になるファージベクター中で、ヒトまたはマウスの免疫グロブリン可変領域遺伝子コンビナトリアルライブラリーを作成してもよい。例えば、米国特許第5,223,409号;Huse et al., 1989 Science 246:1275-81; Sastry et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:5728-32 (1989); Alting-Mees et al., Strategies in Molecular Biology 3:1-9 (1990); Kang et al., 1991 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:4363-66; Hoogenboom et al., 1992 J. Molec. Biol. 227:381-388; Schlebusch et al., 1997 Hybridoma 16:47-52、ならびにそれらに記載される参考文献を参照。例えば、Ig可変領域断片をコードするポリヌクレオチド配列を複数含有するライブラリーを、ファージコートタンパク質をコードする配列とともにインフレームで、糸状バクテリオファージ(M13またはその変異体など)のゲノム中に挿入することができる。融合タンパク質は、コートタンパク質と軽鎖可変領域ドメインおよび/または重鎖可変領域ドメインとの融合物であってもよい。特定の態様に従って、免疫グロブリンFab断片を、ファージ粒子上にディスプレイさせることもできる(例えば、米国特許第5,698,426号を参照)。
【0098】
[0104]重鎖および軽鎖の免疫グロブリンcDNA発現ライブラリーは、例えば、ラムダImmunoZap TM(H)ベクターおよびラムダImmunoZap TM(L)ベクター(Stratagene, La Jolla, Calif.)を用いて、ラムダファージ内に調製することもできる。簡単にいうと、B細胞集団からmRNAを単離し、そして、ラムダImmunoZap(H)ベクターおよびラムダImmunoZap(L)ベクター中に重鎖および軽鎖の免疫グロブリンcDNA発現ライブラリーを作成するのに使用する。これらのベクターを個別にスクリーニングするか同時発現させることで、Fab断片または抗体を形成させることができる(Huse et al., 既出;同じくSastry et al., 既出を参照)。陽性プラークは、続いて、大腸菌由来のモノクローナル抗体断片を高レベルで発現できる非溶解性プラスミドに変換することができる。
【0099】
[0105]ある態様では、ハイブリドーマにおいて、目的のモノクローナル抗体を発現する遺伝子の可変領域を、ヌクレオチドプライマーを用いて増幅する。こうしたプライマーは、当業者が合成することも可能であるし、販売供給元から購入することも可能である。(例えば、Stratagene (La Jolla, Calif.)を参照、この供給元は、プライマーでもとりわけVHa、VHb、VHc、VHd、CHI、VLおよびCL領域用プライマーをはじめとする、マウスおよびヒト可変領域用プライマーを販売する。)こうしたプライマーを用いて、重鎖または軽鎖の可変領域を増幅することができ、増幅された領域は、次いで、それぞれImmunoZAP TM HまたはImmunoZAP TM(Stratagene)などのベクターに挿入することができる。これらのベクターを、大腸菌、酵母菌、または哺乳類ベースの発現系に導入することができる。こうした方法を用いることで、融合したVHドメインとVLドメインを含む単鎖タンパク質を大量に製造することができる(Bird et al., Science 242:423-426, 1988を参照)。
【0100】
[0106]上記の免疫化技法またはその他の技法のいずれかを用いて本発明による抗体を産生する細胞がいったん得られると、本明細書に記載のとおりの標準的な手順に従って、その細胞からDNAまたはmRNAを単離および増幅することにより、特定の抗体遺伝子をクローン化することができる。この遺伝子から産生される抗体は、配列決定することができ、そして同定されたCDRおよびCDRをコードするDNAを、本発明に従って他の抗体を作成するために既に記載されたとおりに操作することができる。
【0101】
[0107]好ましくは、結合剤はWISEに特異的に結合する。全ての結合剤および結合アッセイについてと同様、結合剤が治療上有効かつ適切であるためにこの結合剤が検出可能なほど結合すべきではない様々な分子部分は、列挙するにしては労力を消耗するばかりで実用的ではないことが、当業者は認識するだろう。従って、本明細書に開示される結合剤について、「特異的に結合する」という用語は、関連しない対照タンパク質に結合するときよりも高い親和性で、結合剤がWISE、好ましくはヒトWISEに結合する能力を示す。好ましくは、対照タンパク質は、ニワトリ卵白リゾチームである。好ましくは、結合剤は、対照タンパク質に対する親和性より少なくとも50、100、250、500、1000、または10,000倍大きい親和性でWISEに結合する。結合剤は、ヒトWISEに対する親和性が1×10−7M又はそれ未満、1×10−8M又はそれ未満、1×10−9M又はそれ未満、1×10−10M又はそれ未満、1×10−11M又はそれ未満、または1×10−12M又はそれ未満であってもよい。
【0102】
[0108]親和性は、親和性ELISAアッセイで求めることができる。特定の態様において、親和性は、BIAcoreアッセイで求めることができる。特定の態様において、親和性は、動力学的方法で求めることができる。特定の態様において、親和性は、平衡/溶液法で求めることができる。そうした方法は、本明細書にさらに詳細に記載されるか、当該分野で知られている。
【0103】
[0109]本発明のWISE結合剤は、好ましくは、本明細書に記載の細胞アッセイおよび/または本明細書に記載のインビボアッセイでWISE機能を調節し、および/または本明細書に記載のエピトープの1種以上に結合し、および/または本明細書に記載の抗体のうちの1つの結合を交差阻止し、および/または本明細書に記載の抗体のうちの1つによりWISEとの結合が交差阻止される。したがって、そのような結合剤は、本明細書に記載のアッセイを用いて同定することが可能である。
【0104】
[0110]特定の態様において、結合剤は、最初に、本明細書に提示されるエピトープの1種以上と結合、および/または本明細書に記載の細胞アッセイおよび/またはインビボアッセイで中和、および/または本明細書に記載の抗体を交差阻止、および/または本明細書に記載の抗体のうちの1つによりWISEとの結合が交差阻止される抗体を同定することで製造される。次いで、こうした抗体のCDR領域を適切な生体適合性フレームワークに挿入して、WISE結合剤を製造する。結合剤の非CDR部分は、アミノ酸で構成されてもよいし、非タンパク質分子であってもよい。本明細書に記載のアッセイにより、結合剤の特徴づけが可能になる。好ましくは、本発明の結合剤は、本明細書に記載のとおりの抗体である。
【0105】
[0111]抗体など、いくつかのタンパク質は、宿主細胞で発現してから分泌されるまでに様々な翻訳後修飾を受け得ることは、当業者に理解されるであろう。そうした修飾の種類や度合いは、タンパク質を発現させるのに用いた宿主細胞株ならびに培養条件に依存することが多い。そのような修飾として、グリコシル化、メチオニンまたはトリプトファン酸化、ジケトピペリジン形成、アスパラギン酸異性化、およびアスパラギンアミド分解での変化が挙げられる。よくある修飾は、カルボキシペプチダーゼの作用によるカルボキシ末端の塩基性残基(リシンまたはアルギニンなど)の欠失である(Harris, RJ. Journal of Chromatography 705:129-134, 1995に記載される)。タンパク質は、いったん発現して処理されると、「成熟」型になる。したがって、本発明は、本発明のDNAの発現からもたらされる成熟抗体を含むことが理解される。
【0106】
[0112]本明細書に記載の抗体は、ヒトWISEの中のそのタンパク質のインビボ活性に重要な領域に結合し、それによりWISEの活性を阻害する。抗体とWISEの結合は、腎機能と関連した生体マーカーの変化、例えば、アルブミンの尿中レベルまたは24時間の総尿中タンパク質排泄量、血清クレアチニン、またはクレアチニンクリアランス速度と相関し得る。本発明のCDRを含む抗体およびその断片を構築および発現する方法は、当業者に知られている。
【0107】
[0113]オリゴペプチドまたはポリペプチドは、それが、表1に記載のCDRの少なくとも1種;および/または本明細書に記載の抗体の少なくとも1種とWISEのループ2との結合を交差阻止し、および/または本明細書に記載の抗体の少なくとも1種によりWISEと結合するのが交差阻止されるCDR;および/または細胞アッセイでWISEの阻害作用を遮断または細胞アッセイでWISEの作用を活性化することが可能なWISE結合剤(すなわちWISE中和化結合剤)のCDR;および/またはシスチンノットドメインエピトープに結合するWISE結合剤のCDRと、少なくとも75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を有する限り、本発明の範囲内にある。
【0108】
[0114]WISE結合剤ポリペプチドおよび抗体は、それらが、WISEのループ2(例えば、配列番号9)に結合し、かつWISEのループ2に結合する抗体の少なくとも1種の結合を交差阻止し、および/または本明細書に記載の抗体の少なくとも1種によりWISEループ2との結合が交差阻止される抗体;および/または細胞アッセイでWISEの阻害作用を遮断することが可能な抗体(すなわちWISE中和化結合剤);および/またはシスチンノットドメインエピトープに結合する抗体;の少なくとも1種の可変領域と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を有する限り、本発明の範囲内にある。本発明は、単離された抗体またはその断片を企図し、ここで当該WISE抗体またはその断片は、以下のパラメータ:組織損傷およびそのマーカー、シリウスレッド染色またはコラーゲン産生、筋線維芽細胞マーカー(aSMAやFSP−1など)の発現、オステオポンチン発現、タンパク尿、の少なくとも1つを減少させることができ片、および/または細胞アッセイでWISE活性を変化させることができる。本明細書に使用される場合、活性の変更が、活性化または阻害を含むことが当業者にも理解されるだろう。
【0109】
[0115]WISE結合剤をコードするポリヌクレオチドは、それが、抗体Ab−AA、Ab−AB、およびAb−ACのうち少なくとも1種の可変領域をコードし、コードされたWISE結合剤が本明細書に記載の抗体の少なくとも1種の結合を交差阻止するポリヌクレオチド;および/または細胞アッセイでWISEの阻害作用を遮断することができるポリヌクレオチド(すなわちWISE中和化結合剤);および/またはシスチンノットドメインエピトープと結合するポリヌクレオチドと、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるポリヌクレオチド配列を有する限り、本発明の範囲内にある。
【0110】
[0116]結合剤(抗体または結合パートナーなど)の親和性、ならびに結合剤(抗体など)が結合を阻害する度合いは、従来技法、例えば、Scatchard et al.(Ann. N.Y. Acad. Sci. 51:660-672 (1949))に記載のもの、または表面プラズモン共鳴(SPR;BIAcore, Biosensor, Piscataway, N.J.)を用いて、当業者により決定することができる。表面プラズモン共鳴については、標的分子を固相に固定し、フローセルに沿って移動する移動相に含まれるリガンドに曝露させる。固定された標的にリガンドが結合すると、屈折率が局所的に変化し、SPR角度の変化をもたらす。この変化は、反射光の強度変化を検出することで、リアルタイムで観測することができる。SPR信号の変化率を分析することで、結合反応の会合相と解離相について見かけの速度定数を求めることができる。これらの値の比から、見かけの平衡定数(親和性)がわかる(例えば、Wolff et al., Canser Res. 53:2560-65 (1993)を参照)。
【0111】
[0117]本発明による抗体は、どの免疫グロブリン(immunoglobin)のクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、またはIgA)に属してもよい。抗体は、動物、例えば、家禽(例えば、ニワトリ)および哺乳類から得られるものでも、それらに由来するものでもよい。哺乳類として、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、その他齧歯類、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ラクダ、ヒト、およびその他霊長類が挙げられるが、これらに限定されない。抗体は、内部移行する抗体でもよい。抗体の製造は、米国特許出願公開第2004/0146888A1に概要が記載される。
【0112】
特徴づけアッセイ
[0118]本明細書に記載の本発明による抗体を製造する方法は、特定のループ2WISE抗体CDRを操作して新たなフレームワークおよび/または定常領域に入れることを含み、適切なアッセイ(すなわち、WISEに対する結合親和性を決定するアッセイ;交差阻止アッセイ;Biacoreを利用した「ヒトWISEペプチドエピトープ競合結合アッセイ」;MC3T3−E1細胞を利用したアッセイ;インビボアッセイ)を利用して所望の抗体または結合剤を選択することができる。
【0113】
エピトープ結合アッセイ
[0119]未処理のヒトWISEは、シグナルペプチドを伴う206個のアミノ酸であり、成熟型のヒトWISEはシスチンノットモチーフを含有する183個のアミノ酸の糖タンパク質である。重要なアミノ酸残基、特に複数のシステインが保存されるために、WISEは、既に記載したシスチンノットタンパク質と類似の構造を有すると思われる。この構造には、シスチンノットモチーフの他に、ループ1、ループ2、およびループ3と指定される3つのループが含まれる。本明細書に使用される場合、これらのループの位置は、ループ1が配列番号2のおおよそアミノ酸75〜104の位置;ループ2がおおよそアミノ酸105〜132の位置;および、ループ3が配列番号2のおおよそアミノ酸134〜170の位置として定義される。おおよその位置で示されるのは、相対一が、指定した位置からカルボキシ末端側又はアミノ末端側にプラス又はマイナス3アミノ酸であることが可能であることを意味するものとする。
【0114】
[0120]ヒトWISEをタンパク質分解して、断片を製造することができる。簡単に言うと、トリプシン、Asp−N、およびLys−Cをはじめとする異なるプロテアーゼを用いて、切断部位および大きさの異なる断片を生成する。様々なヒトWISEペプチドについて配列および質量を求める。抗体の保護について評価を行うことで、切断部位マスキング(clipped site masking)およびペプチドシフティングを含むタンパク質分解の起こりやすさへの効果を決定する。最後に、BIAcoreを利用した「ヒトWISEペプチドエピトープ競合アッセイ」を行う。
【0115】
[0121]1つのグループの抗体は、BIAcoreを利用した「ヒトWISEペプチドエピトープ競合結合アッセイ」から明らかなとおり、特定のエピトープに対して特定の結合パターンを示す。簡単に言うと、抗体を、抗体のエピトープ結合部位が飽和する濃度の試験しようとするエピトープとともに予備温置する。次いで、抗体を、チップ表面に固定したWISEに曝す。適切な温置と洗浄手順の後、競合結合パターンが確立される。
【0116】
交差阻止アッセイ
[0122]「交差阻止」、「交差阻止される」、および「交差阻止する」という用語は本明細書では相互交換可能に用いられて、抗体またはその他の結合剤がWISEに対する他の抗体または結合剤の結合を妨げる能力を意味する。
【0117】
[0123]抗体または他の結合剤がWISEに対する他者の結合を妨げることができる度合い、すなわち抗体または他の結合剤が本発明に従って交差阻止すると言えるかどうかは、競合結合アッセイで決定することができる。特に好適な定量アッセイの1つは、表面プラズモン共鳴技術を用いて相互作用の度合いを測定することができるBiacoreの装置を用いる。別の好適な定量的交差阻止アッセイとして、WISEへの結合に関して抗体間または他の結合剤との間の競合を測定するELISAを利用したアプローチを用いるアッセイがある。
【0118】
[0124]ある種の交差阻止アッセイは、WISEがその受容体であるLRP−5およびLRP−6に結合するのを阻害するペプチドを同定するのに用いるのに適したものであることも考慮に入っている。例えば、ループ2ペプチドまたはシステインジスルフィド結合により環化したループ2ペプチドは、WISEがその受容体に結合するのを阻害することが示されている。
【0119】
[0125]「交差阻止する」に関連した用語は、完全な遮断として理解されることは意味しておらず、むしろ立体的な干渉またはその他の干渉のために試験分子も同じく結合する領域での結合がそれまでよりも減少し、その結果試験分子の結合量が減少することを意味すると理解される技術用語であることは、当業者に理解されよう。したがって、試験抗体の標的に対する結合が検出可能なほど減少する場合は、交差阻止していると言えることが理解される。この検出可能なほどの結合の減少は、アッセイの感度に依存して、15%、10%、またはそれより小さくても可能である。
【0120】
Biacore交差阻止アッセイ
[0126]本発明に従って抗体またはその他の結合剤が交差阻止するかどうか、または交差阻止する能力があるかどうかを決定するのに適したBiacoreアッセイについて、以下に一般論を記載する。便宜上、ある2種の抗体の場合について述べるが、本明細書に記載のWISE結合剤のどれでもこのアッセイを行えることは明らかである。Biacore装置(例えば、Biacore3000)は、製造者の推奨に従って操作する。
【0121】
[0127]つまり、1回の交差阻止アッセイにおいて、標準的なアミンカップリング反応を用いてWISEをCM5Biacoreチップに結合させて、WISE被覆した表面を作る。代表的には200〜800共鳴単位のWISEをチップに結合させる(容易に測定できるレベルの結合を与えるが用いる試験試薬の濃度によりすぐに飽和し得る量)。
【0122】
[0128]相互の交差阻止能力について評価を行おうとする2種の抗体(A*およびB*と名付ける)を、結合部位のモル比を1対1にして好適な緩衝液に混合し、試験液を作る。結合部位を基準に濃度を計算する場合、抗体分子量は、抗体の総分子量をその抗体のWISE結合部位の個数で割ったものであると仮定する。
【0123】
[0129]試験混合物中の各抗体の濃度は、Biacoreチップに固定されたWISE分子のその抗体の結合部位がすぐに飽和するのに十分なほど高くなければならない。混合物中の抗体は、同じモル濃度にあり(結合基準で)、その濃度は代表的には1.00から1.5マイクロモル濃度である(結合部位基準で)。
【0124】
[0130]抗体A*のみおよび抗体B*のみを含有する別々の溶液も調製する。これらの溶液中の抗体A*および抗体B*は、試験混合物と同じ緩衝液に同じ濃度で存在しなければならない。
【0125】
[0131]試験混合物を、WISE被覆したBiacoreチップ上を通過させ、総結合量を記録する。次いで、チップに結合したWISEを損傷させることなく結合抗体を除去するようなやり方でチップを処理する。そのやり方は代表的にはチップを30mMのHClで60秒間処理するものである。
【0126】
[0132]次いで、抗体A*のみの溶液を、WISE被覆した表面上を通過させ、結合量を記録する。チップを再び処理して、チップに結合したWISEを損傷させることなく結合抗体を全て除去する。
【0127】
[0133]次いで、抗体B*のみの溶液を、WISE被覆した表面上を通過させ、結合量を記録する。
[0134]次に、抗体A*と抗体B*の混合物の最大理論結合量を計算する。これは、それぞれ単独でWISE表面上を通過させた場合の各抗体の結合量の合計である。もし、混合物で実際に記録された結合量が最大理論量よりも少なければ、この2種の抗体は互いに交差阻止している。
【0128】
[0135]つまり、一般に、本発明による交差阻止する抗体またはその他の結合剤とは、上記のBiacore交差阻止アッセイにおいてWISEに結合するものであり、当該アッセイの間に、そして本発明の第二の抗体またはその他の結合剤の存在下で、記録された結合が、2種の抗体または結合剤の組み合わせの最大理論結合量(上記で定義されるとおりとして)の80%から0.1%(例えば80%から4%)の間、厳密には当該最大理論結合量の75%から0.1%(例えば75%から4%)の間、より厳密には当該最大理論結合量の70%から0.1%(例えば70%から4%)の間、であるものである。
【0129】
[0136]上記のBiacoreアッセイは、抗体またはその他の結合剤が本発明に従って互いに交差阻止するかどうかを決定するために用いられるものである。ごくまれに、特定の抗体またはその他の結合剤が、アミン結合を介してCM5 BiacoreチップとカップリングしたWISEに結合しないことがある(この状況は、通常、WISEの関連する結合部位がチップとのカップリングによりマスキングされているか破壊されている場合に生じる)。そのような場合、交差阻止は、WISEに標識を付けたもの、例えば、N末端His標識化WISEを用いて決定することができる。この特別な形式では、抗His抗体をBiacoreチップとカップリングさせ、それからHis標識化WISEをチップ表面に流して抗His抗体に捕捉させる。交差阻止分析は、基本的に上記のとおり行うが、ただしチップ再生サイクルを行うたびに、新しいHis標識化WISEを抗His抗体で被覆された表面に装填し直す。N末端His標識化WISEを用いるこの例の他に、C末端His標識化WISEを代わりに用いることもできる。そのうえさらに、様々なその他の標識と標識結合タンパク質の当該分野で既知の組み合わせ(例えばHA標識と抗HA抗体、FLAG標識と抗FLAG抗体、ビオチン標識とストレプトアビジン)を、このような交差阻止分析に用いることができる。
【0130】
Elisaを利用した交差阻止アッセイ
[0137]本発明に従って抗WISE抗体またはその他のWISE結合剤が交差阻止するかどうか、または交差阻止する能力があるかどうかを決定するためのELISAアッセイについて、以下に一般論を記載する。便宜上、ある2種の抗体の場合について述べるが、本明細書に記載のWISE結合剤のどれでもこのアッセイを行えることは明らかである。
【0131】
[0138]このアッセイの一般原理として、まずELISAプレートの各ウェルを抗WISE抗体で被覆する。交差阻止する可能性のある第二の抗WISE抗体を過剰量で溶液に添加する(すなわちELISAプレートには固定されていない)。次いで、限定された量のWISEを各ウェルに添加する。ウェルを被覆する被覆抗体と溶液中の抗体は、限られた個数のWISE分子との結合を巡って競合する。プレートを洗浄して、被覆抗体と結合していないWISEを除去し、そして、溶液相の第二の抗体および溶液相の第二の抗体とWISEが形成したどのような複合体もまた除去する。それから、適切なWISE検出試薬を用いて、結合したWISEの量を測定する。被覆抗体を交差阻止することができる溶液中の抗体は、被覆抗体が結合できるWISE分子の個数を、溶液相の第二の抗体が存在しない場合に結合できる個数よりも減らすことができる。
【0132】
[0139]このアッセイを、Ab−AA、Ab−AC、およびAb−AEについて以下により詳細に記載する。例えば、Ab−AAを固定される抗体に選んだ場合、Ab−AAでELISAプレートの各ウェルを被覆し、その後プレートを好適なブロッキング溶液でブロックし、続いて加える試薬の非特異的な結合を最小限にする。次いで、Ab−ACのWISE結合部位の1ウェルあたりのモル数がELISAプレートを被覆する間に用いたAb−AAのWISE結合部位の1ウェルあたりのモル数の少なくとも10倍であるように、過剰量のAb−ACをELISAプレートに添加する。
【0133】
[0140]次いで、1ウェルあたりのWISEのモル数が各ウェルを被覆するために用いたAb−AAのWISE結合部位のモル数の少なくとも25分の1であるようにWISEを添加する。適切なインキュベーション時間後、ELISAプレートを洗浄し、WISE検出試薬を添加して、ウェルを被覆する抗WISE抗体(この場合はAb−AA)と特異的に結合したWISEの量を測定する。このアッセイについてのバックグラウンド信号は、被覆抗体(この場合はAb−AA)、溶液相の第二の抗体(この場合はAb−AB)、WISE緩衝液のみ(すなわちWISEなし)、およびWISE検出試薬を用いたウェルで得られる信号として定義される。このアッセイについての陽性対照信号は、被覆抗体(この場合はAb−AA)、溶液相の第二の抗体の緩衝液のみ(すなわち溶液相の第二の抗体なし)、WISE、およびWISE検出試薬を用いたウェルで得られる信号として定義される。ELISAアッセイは、陽性対照信号がバックグラウンド信号の少なくとも3倍となるような様式で行う必要がある。
【0134】
[0141]被覆抗体としてどの抗体を使用するかおよび第二(競合)抗体としてどの抗体を使用するかの選択に由来するどのような人為的影響(例えばAb−AAとAb−ABの間で明らかに異なるWISEへの親和性)も避けるため、交差阻止アッセイは、2種類の形式で行う必要がある:1)形式1は、第一抗体がELISAプレートを被覆する抗体であり、第二抗体が溶液に存在する競合抗体であるもの、および2)形式2は、第一抗体と第二抗体が、被覆と溶液で入れ替わっているもの。
【0135】
細胞を利用した中和アッセイ
[0142]MC3T3−E1 SuperTopFlash(STF)レポーター細胞を用いて、WISEタンパク質がWnt信号伝達を調節できるかどうかを決定する。MC3T3−E1 STF細胞でのTCF依存性信号伝達の活性化は、培養培地を分化培地に切り替えることで誘導される内在性Wnt信号伝達か、Wnt3aなどの外来性Wntを添加することによるかのいずれかで誘発することができる。大腸菌か哺乳類細胞に由来する組換えWISEタンパク質は、MC3T3−E1 STF細胞中のWnt信号伝達を用量依存的に阻害することができる。
【0136】
[0143]ルシフェラーゼアッセイ:バイアル1本分のMC3T3−E1/STF細胞を培養フラスコ中の増殖培地に蒔く。細胞が集密状態になったらトリプシン処理し、増殖培地に含まれた状態の細胞を96ウェルプレートの各ウェルに蒔く。翌日、増殖培地を全て除去して、新たに調製した分化培地100μlに置き換える。
【0137】
[0144]それから4日間、毎日、分化培地の半分(50μl)を、新たに調製した分化培地で置き換える。5日間分化させた後、培地を全て体積100μlの新たな分化培地の試験試料に置き換える。次いでプレートを24時間インキュベートしてから、ルシフェラーゼ信号を測定する。ルシフェラーゼ信号は、試験プレートから培地を除去して室温で平衡化させてある1×溶解緩衝液20μlを添加した上で測定する。プレートを密封し、室温で30分間振動させ、ルシフェラーゼアッセイ試薬100μlを各ウェルに添加して、Luminometer(LMAX、Molecular Device)を用いて取扱説明書に従って信号を捕捉する。
【0138】
インビボ中和アッセイ
[0145]WISEを中和して治療効果をもたらすことができるWISE結合剤を同定する目的で、腎臓保護または肺保護と関連した、またはそれに由来する様々なパラメータの増加を、WISE結合剤のインビボ試験からの出力として測定することができる。そのようなパラメータとして、様々な腎臓/肺マーカーおよび腎臓/肺健常性の組織形態計測マーカーが挙げられる。WISE中和結合剤は、腎臓/肺保護の刺激に関連した、またはそれに由来するいずれかのパラメータで、ビヒクル処理した動物と比較して統計上有意な増加を引き起こす能力があるものとして定義される。そのようなインビボ試験は、任意の好適な哺乳類(例えばマウス、ラット、サル)で行うことができる。
【0139】
治療薬の処方および送達
[0146]上記の結合剤のうちの1種、例えば本明細書に記載のヒトWISEに対する抗体のうちの少なくとも1種などを、薬学的または生理学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤とともに含む薬学的組成物を提供する。
【0140】
[0147]様々な治療投与計画(例えば、皮下、経口、非経口、静脈内、鼻腔内、および筋肉内での投与およびそのための処方など)での、本明細書に記載の特定組成物を使用するのに好適な用量および治療投与計画の開発は、当該分野で知られている。そのいくつかについて、一般的な例示目的で簡単に説明する。
【0141】
[0148]特定の用途において、本明細書に記載の薬学的組成物は、経口投与で動物に送達されてもよい。そのため、こうした組成物は、不活性希釈剤もしくは吸収可能な食用担体と処方することもできるし、硬殻もしくは軟殻ゼラチンカプセルに封入することもできるし、圧縮して錠剤にすることもできるし、日常の食事の食品に直接組み込むこともできる。
【0142】
[0149]特定の状況において、本明細書に記載の薬学的組成物は、皮下、非経口、静脈内、筋肉内、ときには腹腔内から送達することが望ましい。そうした手法は、当業者に周知であり、手法のいくつかは、例えば、米国特許第5,543,158号、米国特許第5,641,515号、および米国特許第5,399,363号にさらに記載される。特定の態様において、活性化合物を遊離塩基または薬理学的に許容される塩として含む溶液を、界面活性剤(ヒドロキシプロピルセルロースなど)と適切に混合した水で調製することができる。グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物、ならびに油で分散液も調製できる。貯蔵および使用の通常条件下、これらの製剤は一般に微生物の繁殖を防ぐための保存料を含有する。
【0143】
[0150]注射用途に適した薬学的形態の例として、滅菌水溶液または分散液および滅菌注射用溶液または分散液の即時調製用滅菌粉末が挙げられる(例えば、米国特許第5,466,468号を参照)。全ての場合において、この形態は、滅菌されていなければならず、かつ容易に注射可能であるぐらいに流動性がなければならない。この形態は、製造および貯蔵の条件下で安定でなければならず、かつ微生物(細菌および真菌など)の混入活動から保護されなければならない。担体としては、溶媒または分散媒体(例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、およびポリエチレングリコールなど)を含有するもの)、それらの適切な混合物、および/または植物油が可能である。適切な流動性は、被覆剤(例えば、レシチンなど)を用いることで、分散液の場合は要求される粒子の大きさを維持することで、および/または界面活性剤を使用することで、維持することができる。微生物の活動を防ぐことは、様々な抗細菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン類、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなど)により促進することができる。多くの場合、等張化剤、例えば、糖類または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射組成物の吸収を延ばすことは、吸収を遅らせる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)を組成物に用いることで可能になる。
【0144】
[0151]1態様において、水溶液で非経口投与する場合、この水溶液は必要であれば適切に緩衝化されているべきであり、最初に液体希釈剤が十分な生理食塩水またはグルコースで等張化される。こうした特定の水溶液は、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、および腹腔内投与に特に適している。これに関連して、使用可能な滅菌水性媒体は、本発明の開示に照らして当業者に明らかである。例えば、1回の投薬量を等張性NaCl溶液1mlに溶解し、これを皮下点適用液1000mlに添加するか、輸液予定部位に注射するかのいずれかを行うことができる(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 15th ed., pp. 1035-1038 and 1570-1580を参照)。治療を受ける対象の状態に依存して投薬量を変更することも必要になるだろう。そのうえ、ヒトに投与する場合、当然のことながら製剤は、FDAの生物学的基準局(FDA Office of Biologies standards)が要求するとおりの無菌性、発熱性、および一般的な安全性ならびに純度の基準を満たすことが好ましい。
【0145】
[0152]本発明の別の態様において、本明細書に開示される組成物は、中性すなわち塩の形で処方されてもよい。薬学的に許容される塩の例として、無機酸(例えば、塩酸およびリン酸など)または有機酸(酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸など)が付加した酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基との間で形成される)が挙げられる。遊離カルボキシ基で形成される塩は、無機塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、および水酸化鉄など)および有機塩基(イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなど)によるものも可能である。処方に際しては、溶液を、投薬量処方(dosage formulation)に適合する方法で、治療上有効な量投与する。
【0146】
[0153]担体はさらに、溶媒、分散媒体、ビヒクル、被覆剤、希釈剤、抗細菌剤および抗真菌剤、等張化剤および吸収遅延剤、緩衝液、担体溶液、懸濁液、コロイドなどについてありとあらゆるものを含むことができる。薬学的活性物質用のそうした媒体および薬剤の使用は当該分野で知られている。従来の媒体または薬剤のどれでも活性成分と不適合である場合を除いて、それを治療用組成物に使用することが企図される。補充活性成分も組成物に組み込むことができる。「薬学的に許容される」という語句は、ヒトに投与された場合にアレルギー反応または同様な望ましくない反応を引き起こさない分子実体および組成物を示す。
【0147】
[0154]特定の態様において、本発明の組成物を好適な宿主細胞/生命体に導入するために、リポソーム、ナノカプセル、微粒子、脂質粒子、小胞などが用いられる。詳細には、本発明の組成物は、脂質粒子、リポソーム、小胞、ナノ球体、またはナノ粒子などのいずれかに封入されて送達されるように処方することができる。あるいは、本発明の組成物は、共有結合または非共有結合で、そうした担体ビヒクルに結合させることができる。
【0148】
[0155]有望な薬物担体としてのリポソームおよびリポソーム様製剤の形成および使用は当該分野で一般的に知られている(例えば、Lasic, Trends Biotechnol. 16(7):307-21, 1998; Takakura, Nippon Rinsho 56(3):691-95, 1998; Chandran et al., Indian J. Exp. Biol. 35(8):801-09, 1997; Margalit, Crit. Rev. Ther. Drug Carrier Syst. 12(2-3):233-61, 1995;米国特許第5,567,434号;米国特許第5,552,157号;米国特許第5,565,213号;米国特許第5,738,868号、および米国特許第5,795,587号を参照、それぞれその全体が参照により特に本明細書に組み込まれる)。リポソームの使用は、全身送達後の自己免疫応答または許容できない毒性と関連するようには見えない。特定の態様において、リポソームは、水性媒体に分散したリン脂質から形成され、多層同心性二重膜小胞(多重膜小胞(MLV)とも名付けられている)を自発的に形成する。
【0149】
[0156]あるいは、他の態様において、本発明は、本発明の組成物の薬学的に許容されるナノカプセル処方を提供する。ナノカプセルは、一般に、安定した再現可能な方法で化合物を捕捉することができる(例えば、Quintanar-Guerrero et al., Drug Dev. Ind. Pharm. 24(12):1113-28, 1998を参照)。細胞内での重合体の過負荷による副作用を避けるため、そのような超微粒子(約0.1μmの大きさ)は、インビボで分解され得るポリマーを用いて設計されてもよい。そのような粒子は、例えば、Couvreur et al., Crit. Rev. Ther. Drug Carrier Syst. 5(1):1-20, 1988; zur Muhlen et al., Eur. J. Pharm. Biopharm. 45(2):149-55, 1998; Zambaux et al., J Controlled Release 50(1-3):31-40, 1998;および米国特許第5,145,684号に記載のとおりに作ることができる。
【0150】
[0157]また、本発明の薬学的組成物は、そのような薬学的組成物の使用に関する使用説明書となる包装材料とともに容器に納められてもよい。一般に、そのような説明書には、試薬濃度に加えて、特定の態様において、薬学的組成物の再構築に必要となる賦形剤成分または希釈剤(例えば、水、生理食塩水、またはPBS)の相対量を説明する具体的な表現が含まれる。
【0151】
[0158]投与量は、0.01mg/kg〜200mg/kg(体重)の範囲であってよい。代表的な投薬量は、30mg/kg〜75mg/kgである。しかしながら、当業者に明らかなとおり、投与の量および頻度は、もちろん、治療しようとする症状の性質および重篤度、所望の反応、患者の状態などの要因に依存する。組成物は、たいてい、上記のとおり様々な手法で投与することができる。
【0152】
WISE結合剤を用いた治療法
[0159]「治療」とは、障害の病態が進行するのを防ぐこと、または障害の病態を変化させることを目的として行われる介入である。したがって、「治療」は療法的処置と予防的または防止的手段の両方を示す。治療を必要とする対象には、すでに障害を持っている対象だけでなく、障害が予防されるべき対象が含まれる。
【0153】
[0160]治療という目的に関して「哺乳類」は、哺乳類として分類される任意の動物を示す。そのような動物として、ヒト、家畜、動物園の動物、スポーツ用動物、およびペット、例えばイヌ、ウマ、ネコ、ウシなどが挙げられる。好ましくは、哺乳類はヒトである。
【0154】
[0161]腎障害または腎疾患の治療の文脈で用いられる場合、「治療上有効量」という語句は、腎臓の損傷もしくは変質を減少させる、または腎疾患に関連した症状(線維症および/またはタンパク尿など)の重篤度もしくは進行度を減少させる(すなわち「治療効果」をもたらす)、あるいは血清クレアチニンもしくはクレアチニン排出速度を用いて測定されるとおり腎機能を保全または改善する、治療上のまたは予防上のWISE抗体の量を意味する。線維症の治療の文脈で用いられる場合、「治療上有効量」という語句は、類線維腫要素(fibroid element)もしくはその前駆体を減少させる、および/または線維症疾患(例えば、糸球体性タンパク尿疾患)に関連した症状の重篤度もしくは進行度を減少させる(すなわち「治療効果」をもたらす)、治療上のまたは予防上のWISE抗体の量を意味する。
【0155】
[0162]1つの態様において、本発明の組成物は、腎機能不全を治療、縮小、および/または予防するのに有用であること企図する。そのような腎機能不全として、糸球体性タンパク尿疾患、末期の腎疾患、慢性腎疾患(糖尿病性腎症など)、移植関連の移植片機能不全、IgA腎障害、バーター症候群、ギテルマン症候群、腎結石症、腎アミロイドーシス、高血圧、原発性アルドステロン症、アジソン病;腎不全;糸球体腎炎および慢性糸球体腎炎;尿細管間質性腎炎;腎臓の嚢胞性障害ならびに異形成奇形(多嚢胞性疾患、腎異形成、および皮質または髄質嚢胞など);遺伝性多嚢胞性腎疾患(PRD)、例えば劣性遺伝性および常染色体優性遺伝性PRDなど;髄質嚢胞性疾患;海綿腎および尿細管形成異常;アルポート症候群;腎生理機能に影響を及ぼす非腎性癌(気管支原性肺腫瘍または脳底部腫瘍など);多発性骨髄腫;腎臓腺癌;転移性腎癌;さらには、摂取、注射、吸入、または吸収された任意の薬学的、化学的、または生物学的製剤により引き起こされる腎臓の任意の機能変化または形態変化を含む腎毒性障害;からなる群より選択されるものが挙げられる。一般的な腎毒性剤の広義の分類の中には、カルシニューリン阻害剤などの免疫抑制剤、重金属、全てのクラスの抗生物質、鎮痛薬、溶媒、シュウ酸症誘導剤、抗癌剤、除草剤および殺虫剤、植物由来物質および生物由来物質、ならびに抗てんかん薬が含まれるが、これらに限定されない。
【0156】
[0163]「線維症減少活性」という語句は、類線維腫形成を完全もしくは部分的に阻害する能力、または既存の線維症を除去もしくは減少させる能力を示す。したがって、1つの態様において、本発明の組成物は、線維症疾患を治療するのに有用であることを企図している。そのような線維症疾患として、病的線維症または瘢痕形成(心内膜硬化症を含む)、特発性間質性線維症、間質性肺線維症、筋周囲(perimuscular)線維症、シマー線維症(Symmers' fibrosis)、中心静脈周囲線維症、肝炎、皮膚線維腫、胆汁性肝硬変、アルコール性肝硬変、急性肺線維症、突発性肺線維症、急性呼吸促迫症候群、腎臓線維症/糸球体腎炎、腎臓線維症/糖尿病性腎症、強皮症/全身性、強皮症/局所、ケロイド、肥厚性瘢痕、重篤な関節癒着/関節炎、骨髄線維症、角膜瘢痕形成、嚢胞性線維症、筋ジストロフィー(デュシェンヌ型)、心線維症、筋線維症/網膜剥離、食堂狭窄、およびペイロニー病(payronles disease)が挙げられる。さらに外科手術によっても線維化障害が誘導または開始される可能があり、そのような線維化障害として、瘢痕修正/形成外科、緑内障、白内障線維症、角膜瘢痕形成、関節癒着、移植片対宿主病(例えば、移植患者において)、腱手術、神経絞扼、デュピュイトラン拘縮、OB/GYNでの癒着/線維症、骨盤癒着、硬膜周囲線維症、および再狭窄が挙げられる。複数の細胞外マトリクスタンパク質(コラーゲンおよび/またはフィブロネクチンが挙げられるがこれらに限定されない)の沈着が原因因子である線維症症状が、本発明に従って治療できることも企図される。突発性肺線維症、ブレオマイシン肺、嚢胞性線維症、および糸球体腎障害、例えば腎臓でのコラーゲンおよび/またはフィブロネクチン沈着を特徴とし最終的に腎不全になる疾患なども、本発明に従って治療できる症状の例である。
【0157】
[0164]本発明は、線維症と関連した病状の治療法で用いる、WISEに対する親和性が1×10−7M未満であり、かつWISE活性を阻害する抗体も企図される。この線維症として、肺疾患および腎疾患を含む上記の疾患に関連するものが可能である。そのうえさらに、タンパク尿と関連した病状の治療法で用いる、WISEに対する親和性が1×10−7M未満であり、かつWISE活性を阻害する抗体も企図される。
【0158】
[0165]本発明は併用療法も提供し、この併用療法では、そのような治療を必要とする患者に、基礎疾患を治療するかまたは治療される疾患に関連した症状を減少させる追加の治療薬とともに本発明の組成物を投与する。こうした併用治療薬は、本発明の組成物の投与と同時、その前、またはその後に、投与することができる。本発明の組成物と併用される併用治療薬として、ACE阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)、エリスロポエチン(例えば、Aranesp(登録商標)(ダルベポエチン)、Epogen(登録商標)(エリスロポエチンアルファ)、カルシニューリン阻害剤、ステロイド、ベータ遮断薬などが挙げられる。
【0159】
[0166]本発明は、本発明による抗WISE結合剤の少なくとも1種を含む診断キットも提供する。結合剤は抗体であってもよい。また、そのようなキットは、随意に以下の1種以上を含むことができる:(1)スクリーニング、診断、予後診断、治療目的の観察、またはこれらの用途の任意の組み合わせについての1種以上の結合剤(単数又は複数)の使用説明書;(2)抗WISE結合剤(単数又は複数)に対する標識化結合パートナー;(3)抗WISE結合剤を固定してある固相(試薬片など);および(4)スクリーニング、診断、予後診断、または治療用途あるいはそれらの任意の組み合わせに対する規制認可を示すラベルまたは挿入物。結合剤(単数又は複数)に対して標識化されていない結合パートナーが提供される場合、結合剤(単数又は複数)自身を1種以上の検出可能なマーカー(単数又は複数)(例えば、化学発光基、酵素活性基、蛍光基、または放射性基)で標識化することができる。
【0160】
[0167]以下の実施例は例示として提供されるものであり、制限するものではない。
【実施例】
【0161】
WiseおよびWiseループ2変異体の構築物調製
[0166]PCRプライマーを用いて、hWiseのcDNAを含有するDNAクローン(NM 015464)からhWiseを増幅した。発現ベクターおよび約641塩基対のPCR産物をXbaI制限酵素およびNotI制限酵素で消化した。適切な断片を連結してhWise発現ベクターとした。
【0162】
[0167]以下に、ヒトWISEのループ2のhSostループ2による置換を説明する。hWise−hSostループ2キメラタンパク質のクローン化:プライマー伸長法と重複PCR(overlap PCR)法を組み合わせて置換変異を発生させた。ループ2キメラ変異体は、hWiseのループ2の75塩基対がhSostのループ2の63塩基対で置換されている。具体的には、鋳型としてhWiseを用いて、hWiseのN末端をプライマーで伸長し増幅させた。hWiseのC末端もプライマーを用いて伸長し増幅させた。N末端断片およびC末端断片を、オーバーラップPCR反応で鋳型として用いた。PCR産物をXbaI制限酵素およびNotI制限酵素で消化して、哺乳類発現ベクターにサブクローニングした。
【0163】
哺乳類細胞でのマウスおよびヒトWISEの発現および精製
[0168]バイアル1本分の保存培養物を、震盪フラスコ(125ml、プラスチック製)に入れた培養液10mlに接種し、2〜3日培養した;次いで、培養物を10mLから100mL震盪フラスコに拡張し、さらに100mlから500ml体積の培養物に拡張した。形質移入のため、細胞を1リットルの培地に蒔き、適切な細胞密度になるまで増殖させた。
【0164】
[0169]形質移入混合物を調製し、標準技法を用いて細胞に形質移入させ、形質移入の24時間後、細胞に餌を与えた。培養をそれからさらに48時間継続し、培養上清を4000rpmで30分間回転させ0.2μMフィルターでろ過することで回収した。次いで、少量の試料(1ml)をウエスタンブロット分析用に採取して、残りは精製用に凍結させた。宿主細胞培養液(CCF)を遠心して細胞片を除去した。次いで、CCF上清をろ過した。
【0165】
[0170]ヘパリンカラムにタンパク質をロードし、次いで素通り画分の280nmでの吸光度がベースラインに戻るまでPBSで洗浄した。次に、PBS中150mMから2M 塩化ナトリウム濃度の直線勾配を用いて、WISEタンパク質をカラムから溶出させ、それぞれの画分を収集した。次いで、集めた画分をクーマシー染色SDS−PAGEで分析し、WISEについて予想される大きさで移動するポリペプチドを含有する画分を同定した。カラムから出てきた画分で適切なものを1つにまとめてヘパリンプールを作成した。
【0166】
[0171]ヘパリンカラムから溶出したWISEタンパク質を、逆相クロマトグラフィーでさらに精製した。ヘパリンプールを22%エタノールで作成し、酢酸でpH5.0に調整した。プールをろ過した。ついでろ過したヘパリンプールを平衡化カラムにロードした。ロードしてから、カラムを、素通り画分の280nmでの吸光度がベースラインに戻るまで洗浄した。それから、WISEタンパク質をカラムから溶出させた。
【0167】
精製に続いて、透析によりWISEをPBSに配合した。配合後、WISEを滅菌0.2μmフィルターでろ過して、4℃でまたは凍結させて貯蔵した。
抗原修飾および免疫化
[0172]哺乳類由来のヒトWISEタンパク質を、フロイント完全アジュバント(Pierce)またはRIBI(Sigma)を用いて1:1の比で乳化し、これを用いてWISEノックアウトマウスを皮下免疫化および腹腔内免疫化した。免疫化は少なくとも2週間ごとに行い、3回目の免疫化後、抗WISE力値分析用にマウスから抗血清を採取した。
【0168】
融合
[0173]融合の4日前に、PBS中のHuWISEタンパク質を用いて、各マウスを腹腔内で追加免疫した。融合当日、脾臓を無菌的に取り出し、この器官を処理して単一細胞懸濁液とした。赤血球を溶解させ、脾臓細胞をRPMI(Gibco)で洗浄した。増殖が対数期にあるミエローマ生細胞とマウス脾臓細胞を、細胞腫:脾臓細胞=1:2.5の比で混合した。次いで、細胞をCytofusion Medium C(Cytopulse Sciences Inc)で2回洗浄した。洗浄後、細胞を、1e7個/mlの最終濃度で、33%のCyto fusion Medium Cと67%の自家製低浸透圧融合緩衝液の混合液に懸濁させた。この混合物を2mlのBTX融合チャンバ(Harvard Apparatus)にロードし、次いでBTX ECM 2001(Harvard Apparatus)で電気融合条件に供した。
【0169】
[0174]細胞懸濁液をチャンバから取り出し、細胞増殖培地に懸濁させた。この細胞懸濁液を、384ウェル細胞培養プレート(Greiner)に1ウェルあたり20μlで蒔き、37℃で加湿した10%CO2環境のインキュベーターで一晩インキュベートした。翌日、2×HAT(Sigma)を含有する上記培養液をプレートの各ウェルに20μlずつ添加した。培養物を7日間培養し、次いで培養液をウェルから吸引して出し新たな培養液に交換した。培地交換の2〜3日後に、ハイブリドーマ上清のスクリーニングを開始した。
【0170】
スクリーニング
[0175]高結合透明ポリスチレン製384ウェルプレート(Corning)を、Fc特異的pAbであるヤギ抗マウスIgG(Pierce)の1μg/mlのPBS溶液で、25μl/ウェルで被覆した。プレートを被覆溶液がついたまま4℃で一晩インキュベートし、それからPBS+.05%Tween20(Sigma)を用いて自動プレート洗浄機で1回洗浄した。ブロック溶液を各ウェルに50μlずつ添加して、4℃で一晩インキュベートした。
【0171】
[0176]ハイブリドーマ上清をELISAプレートの各ウェルに5μlずつ移し、室温で60分間インキュベートした。次いでプレートを上記の方法で2回洗浄した。次いで、ヒトWISEタンパク質をブロッキング溶液に10ng/mlで希釈した溶液をプレートの各ウェルに20μl/ウェルで添加した。WISE抗原を添加した後、ELISAプレートを室温で60分間インキュベートし、それから洗浄した。次いで、ウサギ抗WISE−HRP Pab(Amgen)をブロッキング溶液に希釈した溶液を各ウェルに20μlずつ添加し、60分間インキュベートして、プレートを4回洗浄した。
【0172】
[0177]最後に、TMB(Pierce)を各ウェルに20μl/ウェルで添加し、プレートをSpectramax Plate Reader(Molecular Devices)にて650nMで読んだ。続いて、さらなる特徴付け研究用に、ELISA陽性であるハイブリドーマウェルの細胞を細胞培養で増量させた。
【0173】
IgGの高処理精製
[0178]一次スクリーニングで同定されたELISA陽性であるハイブリドーマクローンを、自動液体輸送プラットフォーム(Bravo)を用いて96ウェルプレートに移し、37℃で加湿した5%CO2環境のインキュベーターで3〜5日間増殖させた。適切な細胞質量に到達したら、元のプレートから上清を20μlずつ移すことにより各プレートを8枚のプレート(96ウェル)に複製した。各プレートの最終体積は200μlであった。プレートを37℃で加湿した5%CO2環境のインキュベーターで7日間インキュベートした。次いで、ハイブリドーマ上清をポリプロピレンアッセイブロック(2ml、Costar 3961)に集めて3500Gで30分間遠心した。細胞片のない澄んだ上清を新たなアッセイブロックに移し、Protein G Plus−Agarose(Calbiochem、Cat#IP08)70μl/ウェルを添加してシェーカー上で、室温で一晩インキュベートした。次いで、カスタムソフトウェアを利用する自動液体操作ロボットおよび吸引多岐管システムを用いて、結合IgGを含有するプロテインG樹脂を単離精製した。次いで、標準的な低pH溶出および中和条件を用いて、結合IgGを溶出させた。得られた精製IgGをA280吸光度で定量した。
【0174】
ループ2結合剤を同定する結合アッセイ
[0179]抗WISEハイブリドーマ上清を集めて、ヤギ抗マウスIgGFc(Pierce)1μg/mlであらかじめ被覆した高結合ELISAプレートに添加した。プレートを室温で1時間インキュベートした。次いで、プレートをWash緩衝液で4回洗浄した。続いて、huWISEまたはヒトWISE−hSost−ループ2キメラタンパク質を、最終濃度2ng/mlで添加し、室温で1時間インキュベートした。4回洗浄後、ウサギ抗WISE Pab−ビオチン(50ng/ml)+NeutrAvidin−HRP(Pierce)をプレートに添加し、室温で1時間インキュベートした。再びプレートをWash緩衝液で4回洗浄した。1−Step Ultra TMB−ELISA基質(Pierce)を用い取扱説明書に従って結合を分析した。
【0175】
MC3T3−El/STF−Luc細胞アッセイでの中和化抗体の同定
[0180]MC3T3−E1 SuperTopFlash(STF)レポーター細胞を用いて、WISEタンパク質がWnt信号伝達を調節できるかどうかを決定する。MC3T3−El/STF−luc細胞におけるTCF依存性信号伝達の活性化は、培養培地から分化培地に切り替えることにより誘導される内在性Wnt信号伝達を用いるか、Wnt3aタンパク質などの外来性Wntを添加するかのいずれかにより誘発することができる。組換えWISEタンパク質は、MC3T3−El/STF−luc細胞においてWnt信号伝達を用量依存的に阻害することができる。
【0176】
[0181]バイアル1本分のMC3T3−E1/STF−luc細胞を培養フラスコ中の増殖培地に蒔く。細胞が90〜95%の集密状態になったらトリプシン処理し、増殖培地に含まれた状態の細胞を96ウェル試験プレートに1ウェルあたり10K個で蒔く。翌日、増殖培地を全て除去して、新たに調製した分化培地100μlに置き換える。それから4日間、毎日、分化培地の50%を、新たに調製した分化培地で置き換える。5日間分化させた後、培地を全て体積100μlの新たな分化培地の試験試料に置き換える。WISEタンパク質およびWISE mabを37℃で1時間プレインキュベートしてから試験ウェルに添加する。次いでプレートを24時間インキュベートしてから、ルシフェラーゼ信号を測定する。ルシフェラーゼ信号は、Promegaルシフェラーゼアッセイシステムを用いて測定する。試験プレートから培地を丁寧に除去し、細胞をPBSですすいでから室温で平衡化させてある1×溶解緩衝液20μlを添加する。プレートを密封し、室温で30分間振動させ、ルシフェラーゼアッセイ基質を各ウェルに100μlずつ添加して、Luminometer(LMAX)を用いて取扱説明書に従って信号を捕捉する。
【0177】
ループ2ハイブリドーマCMの発現および精製
[0182]ELISA陽性であるハイブリドーマウェルから単一種細胞をFACS選別法で単離し、1ウェルあたり80μlのBDR培地[50mlのHybridoma Cloning Factor(BioVeris)、1×OPI培地補助剤(Sigma)、55uMの2−ME(Gibco)、10%のLow IgG FBS(Gibco)、1×PSG(Gibco)、BD Quantum Yield Medium(BD Bioscience)]とともに96ウェルプレートに入れた。適切な細胞質量に到達するまで細胞を増殖させた。次いで、細胞を1ウェルあたり1mlのBDR培地とともに24ウェルプレートに移してさらに拡大させた。24ウェルプレートが集密状態になったら、細胞を1ウェルあたり5mlのBDR培地とともに6ウェルプレートに移した。5日間のインキュベーションの後、細胞の半分をバックアップ用にFBS(Ultra low IgG)+10%DMSO混合物に加えて凍結した。残りの半分を、BDR培地40mlの入ったT−175フラスコに移し、増殖させた。T−175フラスコが集密状態になったら、上清を集めてろ過(.45μmのCAフィルター)して精製した。
【0178】
インビトロ研究用のWISE mAbのハイブリドーマ細胞培養物からの精製
[0183]以下のとおり、ハイブリドーマ細胞培養物からWISEモノクローナル抗体(mAb)を精製した。全ての精製手順は、室温または4℃で行った。1つの精製スキームを用いて、様々なmAbsの精製を行い、アフィニティークロマトグラフィーに用いた。
【0179】
プロテインGクロマトグラフィー
[0184]宿主細胞培養液(CCF)を、Beckman Coulter Allegra X−12R遠心機を用いて10℃で1500rpmで5分間遠心して、細胞片を除去した。次いで、CCF上清を、滅菌0.45μmフィルターでろ過した。この時点で、滅菌ろ過したCCFを凍結し、精製するまで貯蔵しておくことができる。凍結していた場合、CCFは40℃で解凍した。解凍に続いて、CCFを滅菌0.45μmフィルターでろ過し、次いで、室温でPBSを用いて平衡化されたカラムの形のProtein Gクロマトグラフィー媒体(Protein G High Performance(GE Healthcare、以前のAmersham Biosciences))にロードした。
【0180】
[0185]ロード後、Protein Gカラムを、素通り画分の280nmでの吸光度がベースラインに戻るまでPBSで洗浄した。次いで、0.1M酢酸エステル(pH3)を用いてWISE mAbをカラムから溶出させ、溶出体積1mLあたり65μLの1M Tris Base貯蔵液を添加してただちに中和した。溶出液の280nmでの吸光度を観測し、タンパク質含有画分を集めてProtein Gプールを作成した。
【0181】
配合および濃縮
[0186]配合および濃縮工程は4℃で行った。精製に続いて、WISE mAbを10,000MWCO膜(Pierce Slide-A-Lyzer)で透析してA5Su(10mMの酢酸ナトリウム、9%のスクロース、pH5)に配合した。WISE mAbの濃縮が必要な場合は、10,000MWCO膜を備えた遠心装置(Vivascience Vivaspin)を用いた。
【0182】
あるいは、Protein Gプールの緩衝液をA5Suに交換して遠心装置のみを用いて濃縮することが可能である。配合につづいて、WISE mAbを滅菌0.2μmフィルターでろ過し40℃でまたは凍結して貯蔵した。
【0183】
WISEはLRP6に結合し、その結合は中和化抗Wiseループ2抗体により阻止することができる
[0187]WISEと推定受容体LRP6との結合は、AlphaScreen技法を用いて特徴付けすることができる。以下にアッセイの詳細な手順を説明する:
[0188]AlphaScreenヒスチジン(ニッケルキレート)検出キット(PerkinElmer)に付属の説明書に従って、1×緩衝液を毎日新しく調製した。
【0184】
[0189]ビオチン化huWise、ビオチン化huWise−huSost−ループ2、rmLRP6−His6(R&D Systems)、抗Wiseループ2抗体の作業液を、1×緩衝液で希釈し、各タンパク質と抗体の反応に望ましい最終濃度の3倍濃度にした。
【0185】
[0190]WiseまたはWise−huSost−ループ2とLRP6の作業液それぞれ5マイクロリットルを、白色不透明OptiPlate−384マイクロプレート(PerkinElmer)の適切なウェルに分注した。WiseとLRP6を室温で1時間穏やかに震盪しながら反応させた後、系列希釈した抗体作業液を5マイクロリットルずつ、適切なウェルに添加し、さらに反応を続けた。ビオチン化His6(陽性対照、キットに付属)系列希釈液ならびにニッケルキレート受容体ビーズおよびストレプトアビジン供与体ビーズ(キットに付属)の作業液を、同じ説明書に従って調製した。Wiseとの結合について抗体をLRP6と60分間競合させた後、系列希釈したビオチン化His6溶液を15μlずつプレートの空のウェルに分注した。最後に、受容体ビーズと供与体ビーズの作業液を5μlずつ試料ウェルおよび対照ウェルの全てに分注し、暗中室温で1時間以上温置し、EnVisionマイクロプレート分析器で分析した。
【0186】
hWiseループ2Ala変異体の構築
[0191]アラニン置換変異誘発を用いて機能性結合性エピトープを系統的にマッピングするのに成功した。全長型のWISEは206個のアミノ酸からなり、成熟型のhWISEは、シスチンノットモチーフと、ループ1、ループ2、およびループ3と名付けられた3つのループとを有する183個のアミノ酸からなる糖タンパク質である。ループ1は、およそアミノ酸の位置、ループ3はループ2は、全長型ヒトWISEではおよそアミノ酸105〜132の位置、成熟型ヒトWISEではアミノ酸82〜109の位置にある。hWISEループ2の107位から129位で同定される合計で23個のアミノ酸残基をアラニンに変更した。
【0187】
[0192]24〜30ヌクレオチド長のオリゴデオキシヌクレオチドプライマーおよび鋳型として野生型hWISEプラスミドDNAを用いて、部位特異的変異誘発によりアラニン置換hWISEループ2遺伝子を製造した。反応は、QuikChange部位特異的変異誘発キット(Stragagene)に記載されるとおりに行った。各変異体を哺乳類発現ベクター内に直接作成した。アラニン変異体構築物は、配列を確認してから、変異体タンパク質の一過性産生用に哺乳類宿主細胞に形質移入した。1カ所だけのアミノ酸変異はタンパク質発現に影響を及ぼさない。
【0188】
代表的なアラニン置換を、交換されるアミノ酸と合わせて以下に列挙する:
配列番号2のアミノ酸107でロイシンからアラニンへ。
配列番号2のアミノ酸108でプロリンからアラニンへ。
【0189】
配列番号2のアミノ酸109でバリンからアラニンへ。
配列番号2のアミノ酸110でロイシンからアラニンへ。
配列番号2のアミノ酸111でプロリンからアラニンへ。
【0190】
配列番号2のアミノ酸112でアスパラギンからアラニンへ。
配列番号2のアミノ酸113でトリプトファンからアラニンへ。
配列番号2のアミノ酸114でイソロイシンからアラニンへ。
【0191】
配列番号2のアミノ酸115でグリシンからアラニンへ。
配列番号2のアミノ酸116でグリシンからアラニンへ。
配列番号2のアミノ酸117でグリシンからアラニンへ。
【0192】
配列番号2のアミノ酸118でチロシンからアラニンへ。
配列番号2のアミノ酸119でグリシンからアラニンへ。
配列番号2のアミノ酸120でトレオニンからアラニンへ。
【0193】
配列番号2のアミノ酸121でリシンからアラニンへ。
配列番号2のアミノ酸122でチロシンからアラニンへ。
配列番号2のアミノ酸123でトリプトファンからアラニンへ。
【0194】
配列番号2のアミノ酸124でセリンからアラニンへ。
配列番号2のアミノ酸125でアルギニンからアラニンへ。
配列番号2のアミノ酸126でアルギニンからアラニンへ。
【0195】
配列番号2のアミノ酸127でセリンからアラニンへ。
配列番号2のアミノ酸128でセリンからアラニンへ。
配列番号2のアミノ酸128でグルタミンからアラニンへ。
【0196】
ループ2結合剤および結合に不可欠な残基のエピトープマッピング
[0193]hWISEループ2領域でアラニン置換変異誘発を行い、合計で23種の変異体を製造して抗体結合および機能的特徴についてインビトロでアッセイした。
【0197】
[0194]個々のWISEタンパク質変異体と野生型タンパク質で、中和化抗体か非中和化抗体のいずれかによる相対的捕捉を比較して、上記のアミノ酸それぞれを1カ所だけ交換した場合のどれが抗体とWISEタンパク質との結合に影響を及ぼすかを分析した。次いで、親和性精製したHRP複合化抗WISEポリクローナル抗体を用いて、結合したWISEタンパク質を検出した。
【0198】
[0195]ヤギ抗マウスIgG Fc(Pierce)1μg/mlであらかじめ被覆した高結合ELISAプレートに、精製した抗WISE抗体(0.5μg/ml)を添加した。プレートを室温で1時間インキュベートした。次いで、プレートをWash緩衝液で4回洗浄した。続いて、一過性形質移入培養物から得たアラニン置換したWISEループ2変異体の上清(100倍希釈物)を添加し、室温で1時間インキュベートした。4回洗浄後、ウサギ抗WISE Pabビオチン(50ng/ml)+NeutrAvidin−HRP(Pierce、Cat#31001)をプレートに添加し、室温で1時間インキュベートした。再びプレートをWash緩衝液で4回洗浄した。1−Step Ultra TMB−ELISA基質(Pierce;Cat#34028)を用い取扱説明書に従って結合を分析した。
【0199】
[0196]ループ2結合性抗体のパネルをアラニン変異体に適用し、これらの抗体が結合するのに重要な特定アミノ酸を同定した。そのようなアミノ酸には、配列番号2のアミノ酸残基112のアスパラギン、配列番号2のアミノ酸残基114のイソロイシン、配列番号2のアミノ酸残基115のグリシン、配列番号2のアミノ酸残基117のグリシン、配列番号2のアミノ酸残基119のグリシン、配列番号2のアミノ酸残基121のリシン、配列番号2のアミノ酸残基123のトリプトファン、配列番号2のアミノ酸残基126のアルギニン、および配列番号2のアミノ酸残基129のグルタミンからなる群から選択される1種以上のアミノ酸が含まれる。
【0200】
[0197]これらのデータは、上記の残基のうち1カ所だけ変異させることでWISE抗体とWISEタンパク質との結合が顕著に減少する例を提供した。特定のループ2結合性抗体の最適な結合には上記の残基の組み合わせが重要である可能性が考えられる。しかしながら、抗体とWISEのループ2との結合をもたらすには1つの残基でも十分である。
【0201】
マウス抗huWISE抗体の重鎖および軽鎖のクローン化
[0198]5'RACE(cDNA末端迅速増幅法)として知られるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅技法を用いて、マウス抗ヒトWISEの軽鎖および重鎖の可変領域の配列を得た。TRIzol試薬(Invitrogen)を用いて、ヒトWISE結合性モノクローナル抗体、Ab−AA、Ab−AB、Ab−AC、Ab−AD、Ab−AE、およびAb−AFを発現する6種のマウスハイブリドーマから全RNAを単離し、続いてRNeasy Mini Kit(Qiagen)を用いてさらに精製した。GeneRacer Kit(Invitrogen)を用いて、Oligo−dTで婦ライミングされた第一の鎖である、RACE用cDNAを調製した。Phusion HF DNAポリメラーゼ(Finnzymes)を用いてcDNAのPCR増幅を行った。RACE PCR産物をpCR4−TOPO(Invitrogen)にクローン化し、ABI DNA配列決定装置(PerkinElmer)を用いてそれらの配列を決定した。Vector NTI Advance 10ソフトウェア(Invitrogen)を用いて共通配列を決定した。
【0202】
マウスヒト抗WISE抗体のヒト化
[0199]Ab−ABは、無変異(straight)CDRグラフトの軽鎖v1を用いて、VK1|O18アクセプターフレームワークに移植することでヒト化した。AbAb−ABは、マウス残基A24T、R71A、およびA93Tを伴うCDRグラフトの重鎖v1を用いて、VH1|1−46アクセプターフレームワークに移植することでヒト化した。Ab−ABはまた、F71Y逆突然変異およびY87F逆突然変異を伴う軽鎖v2を用いたヒト化も行った。Ab−ABは、追加のV2I、VTM67,68,69からAKLへ、およびV78Aを伴う重鎖v2およびv1を用いることでヒト化した(それぞれ配列番号114と116、および配列番号118と120)。
【0203】
[0200]Ab−AIは、無変異CDRグラフトの軽鎖v1を用いてVK4|B3アクセプターフレームワークに移植することでヒト化した。Ab−AIは、S30T逆突然変異を伴う重鎖v1を用いてヒト化した。逆突然変異は、Y49S(Kabat)逆突然変異を伴う軽鎖v2を用いてAb−AIをヒト化するのにも導入した。Ab−AIは、無変異CDRグラフトの重鎖v2を用いてVH2|2−70アクセプターフレームワークに移植することでヒト化した(配列番号122と124、および配列番号126と128)。
【0204】
[0201]Ab−AJは、無変異CDRグラフトの軽鎖を用いてVK4|B3アクセプターフレームワークに移植することでヒト化した。Ab−AJは、Kabat式位置番号27、28、29、30、71、93、94にあるマウス残基(Y27F、T28N、F29I、T30K、R71A、A93N、R94F)を保存したまま、重鎖CDRを用いてVH1|1−46アクセプターフレームワークに移植することでヒト化した(配列番号110および112)。
【0205】
[0202]上記の抗体のヒト化軽鎖および重鎖は相互交換可能でもある。これらを対応する核酸配列とともに以下の表4にそれぞれの配列番号で重鎖と軽鎖の対として示す:配列番号110と112(hzAb−AJ)、配列番号114と116(それぞれhzAb−ABv1;LC1とHC1)、配列番号118と116(それぞれhzAb−ABv2;LC2とHC1)、配列番号114と120(それぞれhzAb−ABv3;LC1とHC2)、配列番号118と120(それぞれhzAb−ABv4;LC2とHC2)、配列番号122と124(それぞれhzAb−AIv1;LC1とHC1)、配列番号126と124(それぞれhzAb−AIv2;LC2とHC1)、配列番号122と128(それぞれhzAb−AIv3;LC1とHC2)、および配列番号126と128(それぞれhzAb−AIv4;LC2とHC2)。
【0206】
[0203]WISEに対するヒト化抗体を用いたMC3T3レポーターアッセイを図29に示す。Ab−Rは、国際特許出願第WO2009/070243号から参照として組み込まれたものである。ヒト化WISEループ2mabのMC3T3E1−STF発現:データは全て対照を基準に規格化された合計ルシフェラーゼ信号の%で表される。Mabは、300ng/mlのhuWISEとともにインキュベートした。レポーター遺伝子発現は、24時間のインキュベーション後に蛍光基質(Luciferase Assay System、Promega E4530)を用いて取扱説明書に従って分析した。
【0207】
Fab−310ファージライブラリからのD14単離
[0204]続く各周期(round)で、Fab−310ファージライブラリー(Dyax Corp)を、5ug/ml、0.5ug/ml、および0.025ug/mlのビオチン化組換えヒトWISEに対してパニングした。D14は、第3周期の一晩プール洗浄で単離された。huWISEに結合するD14を含む53個の特異なFabファージを単離し、IgG2に変換した。これらのIgG2分子をMC3T3−E1機能アッセイで検査した。D14は、huWISEに対する阻害活性が最高であることを示した。
【0208】
[0205]D14 IgG2の親和性成熟
阻害活性を向上させる目的で、D14 IgG2の親和性成熟を行った。重鎖のCDR(31箇所)および軽鎖のCDR(29箇所)全ての各残基を無作為変異誘発により変異させた。粗調整培地試料およびビオチン化ヒトWISEで被覆されたストレプトアビジンBiosensorを用いてOctet QK(ForteBio)で親和性測定を行うことにより、重鎖の5カ所についての7種の変異体および軽鎖の6カ所についての10種の変異体が、ヒトWISEへの結合を向上させるものとして同定された。L34、L36、H66、およびH127が、単独残基変異体の上位4種であった。有用な重鎖変異および軽鎖変異について、293 6E細胞への一過性(transfient)形質移入により行列で対を形成させて、さらに改良した二重変異(DM、重鎖に1つの変異と軽鎖に1つの変異)を得た。10種のDM変異体を選別した。最良の重鎖変異体2種(H66とH127)をオーバーラップPCR法により組み合わせた。得られた二重変異を有する重鎖をL34またはL36と対にすることで、2種の三重変異体(TM1およびTM2)とした。
【0209】
糖尿病性腎症と関連した腎機能不全の進行におけるWISE抗体治療
[0206]2型糖尿病を発症しているが進行性腎疾患は発症していないGKラットのゲノムと、進行性腎疾患を発症しているが2型糖尿病は発症していないFHHラットのゲノムを組み合わせて、T2DNラットモデルを発育する。糖尿病の早期発症後、約6ヶ月齢のT2DNラットで顕性タンパク尿が発生し、タンパク尿の程度はラットの老化とともに進行性で重篤になっていく。これは、糸球体の肥大化、糸球体と尿細管基底膜の肥厚化、メサンギウム基質の拡大、および病巣の発達が起こり、続いて18ヶ月齢でびまん性全糸球体硬化症および糸球体小結節の形成が起こることを伴う。
【0210】
[0207]このモデルでの腎機能不全の進行におけるWISE抗体の作用を、メサンギウム基質の拡大および毛細管詰まりを伴う糸球体房とボーマン嚢の局所癒着とともに糸球体肥大化および巣状分節性糸球体硬化症を含む有意な糸球体損傷が確立された12ヶ月齢のラットで試験した。12ヶ月齢では、T2DNラットの糸球体は、メサンギウム基質の拡大とシッフ酸陽性物質の周期的出現(Diabetes53:735-742を参照)も示す。疾患の進行を加速するため、ラットに一側腎摘出術を行った(左腎臓、これは組織診断のベースラインとして用いた)。
【0211】
[0208]ラット個体それぞれでのタンパク尿レベルを手術後2週間、及び治療開始直前に測定し、測定結果を用いて動物を無作為に4つの群に分けた:1)無処置群、治療せず、n=10;2)リシノプリル群(20mg/kg、毎日飲料水で投与、n=12、タンパク尿を低下させる陽性対照として用いた);3)アイソタイプの一致した対照IgG1群、(20mg/kg、IP注射、抗体を希釈した緩衝液中、週に3回、n=12);4)WISE抗体(20mg/kg、IP注射、抗体を希釈した緩衝液中、週に3回、n=12)。尿試料は、ベースライン、及び代謝ケージから2週間ごとに回収し、試験または凍結前に分注した。血清試料は、ベースライン、治療後8週目、治療後14週目、および治療後16週目の終了時死体解剖で回収した。死体解剖で、右腎臓を組織診断用(半分、H&E, Masson's Trichrome)およびタンパク質/RNA用(残り半分)に処理した。腎機能だけでなくタンパク尿、糸球体、および間質性線維症への影響を評価した。
【0212】
[0209]WISE抗体での治療は、IgG対照と比較して、糸球体損傷および間質性損傷の両方の進行を顕著に阻害した。WISE抗体を投与されたラットは、腎機能を保持しベースラインで観測されるレベルに対して改善を示した(4%)。一方、無処置群のラットおよび対照IgG処置群のラットは、腎機能(推定クレアチニン排出速度)が、ベースラインレベルに対してそれぞれ27%および23%低下していた。したがって、WISE抗体には、糖尿病、高血圧、またはその両方により腎機能不全が引き起こされる糖尿病性腎症のような疾患;および重度のタンパク尿により腎損傷が引き起こされる疾患;さらに新生線維症または進行中の線維症が腎臓または移植片の不全化をもたらす疾患(高血圧性腎臓疾患、および移植片関連移植組織線維症が挙げられるがこれらに限定されない)に対して腎損傷を減少させ腎機能を維持または改善する治療用途が見込まれる。
【0213】
WISEループ2抗体の結合プロファイル
[0210]図20〜図28に、ループ2領域に結合する抗WISE抗体の結合プロファイルを示す。図20は、WISE変異体に対するAb−ABのものを示す。図21は、WISE変異体に対するAb−AEのものを示す。図22は、WISE変異体に対するAb−AGのものを示す。図23は、WISE変異体に対するAb−AIのものを示す。図24は、WISE変異体に対するAb−ACのものを示す。図25は、WISE変異体に対するAb−AAのものを示す。図26は、WISE変異体に対するAb−AHのものを示す。図27は、WISE変異体に対するAb−AJのものを示す。図28は、WISE変異体に対するAb−AFのものを示す。
【0214】
[0211]図20〜図28の変異体は、自然起源のアミノ酸の種類、続いてWISEタンパク質でのそのアミノ酸の位置を示す数字、さらに続いて変異の種類(例えば、A=アラニン)という形で表す。すなわち、L110Aは配列番号2の110位にあるロイシンがアラニンに置換された変異を表すものとする。N112Aは配列番号2の112位のアスパラギンがアラニンに置換されたものである。I114Aは配列番号2の114位のイソロイシンがアラニンに置換されたものである。G115Aは配列番号2の115位のグリシンがアラニンに置換されたものである。G116Aは配列番号2の116位のグリシンがアラニンに置換されたものである。G117Aは配列番号2の117位のグリシンがアラニンに置換されたものである。K121Aは配列番号2の121位のリシンがアラニンに置換されたものである。S128Aは配列番号2の128位のセリンがアラニンに置換されたものである。WISE−Scl L2は、ループ2領域がSOSTループ2に置き換わっているヒトWISEタンパク質を示す。吸光度が高いほど結合し、低くなると結合が減少することを表す。
【0215】
[0212]特定の残基で変異させると変異型WISEタンパク質との結合が減少することから、抗体には結合に必要な自然起源の残基があることが示唆される。Ab−ABはG117Aに対する結合が減少した(図20)。Ab−AEは、I114Aに対する結合が減少した(図21)。Ab−AGは、I114AおよびK121Aに対する結合が減少した(図22)。Ab−AIは、G115AおよびG117Aに対する結合が減少した(図23)。Ab−ACは、G115AおよびG117Aに対する結合が減少した(図24)。Ab−AAは、N112A、I114A、G115A、およびK121Aに対する結合が減少した(図25)。Ab−AHは、N112AおよびI114Aに対する結合が減少した(図26)。Ab−AJは、L11A、N112A、およびG117Aに対する結合が減少した(図27)。Ab−AFは、L11A、N112A、およびG117Aに対する結合が減少した(図28)。
【0216】
[0213]したがって、本発明の単離された抗体は、WISEへの結合が、配列番号2のアミノ酸110のロイシン、配列番号2のアミノ酸112のアスパラギン、配列番号2のアミノ酸114のイソロイシン、配列番号2のアミノ酸115のグリシン、配列番号2のアミノ酸116のグリシン、配列番号2のアミノ酸117のグリシン、配列番号2のアミノ酸119のグリシン、配列番号2のアミノ酸121のリシン、配列番号2のアミノ酸123のトリプトファン、配列番号2のアミノ酸126のアルギニン、配列番号2のアミノ酸128のセリン、および配列番号2のアミノ酸129のグルタミンのうち1又はそれより多くを介するものである抗体を含む。ある残基を通じてまたは介して結合する抗体というのは、計画した位置で変異を起こしその結果結合が減少することによって同定可能であることが、当業者には本明細書に記載される方法から理解するであろう。結合の減少は、例えば、Ab−AJで示すと、これは約2の吸光度で未変性WISEに結合するが、L110AまたはN112AまたはG117Aの残基変異は、吸光度を約1.5以下に減少する結果となる(図27)ことで示される。
【0217】
[0214]いくつかの態様に関して、本発明の組成物および方法を記載してきたが、本発明の概念、精神、および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載されるこれらの組成物および/または方法、ならびに方法の工程または工程順序に改変を加えることができることは当業者に明らかだろう。より詳細には、本明細書に記載の薬剤を化学的にも生理学的にも関連するある薬剤に置き換えることが可能であり、置き換えても同一または同様な結果が達成できるだろうということは明らかである。当業者に明らかであるこのような同様の置き換えおよび修飾は全て、添付の請求項により定義されるとおりの本発明の精神、範囲、および概念の範囲内にあると見なされる。
【0218】
[0215]本明細書全体にわたって記載される参照は、本明細書の記述に例示的な手順の詳細またはその他の詳細についての補足を提供するという点で、全て参照することで本明細書に具体的に援用される。WISE抗体について特に参照されるのは国際出願第WO2009/070243号であり、これはその全体が本明細書に援用される。
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国仮出願第No.61/288,171(2009年12月18日出願)の利益を主張し、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
本出願は、電子データ形式の配列表とともに出願される。配列表は、ファイル名A−1532−WO−PCT SeqList.txt、作成日2010年12月1日、ファイルサイズ86.5KBのファイルとして提出される。配列表の電子データに含まれる情報は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
[0001]本発明は、概して、ヒトWISEタンパク質を含むWISEタンパク質のエピトープ、およびWISEまたは本明細書中のエピトープに結合する能力がある結合剤(抗体など)に関する。
【背景技術】
【0003】
[0002]線維症は一般に、治癒過程の一環として過剰な結合組織が発達することと定義され、そして様々な症状が含まれる。過度の線維症は治療の選択肢がほとんどない深刻な事態である。
【0004】
[0003]シスチンノット含有タンパク質は典型的に、主要機能の重要な制御因子であり、多様な種類の細胞に影響を及ぼす。Wise(USAG−1、SOSTDC1)は、分泌されたシスチンノット含有タンパク質であり、主に腎臓、肺、皮膚、および上皮細胞で発現する。WISE KOマウスは、繁殖力があり、その腎臓は通常の機能を有する。しかしながら、一側尿管結紮(UUO)か化学毒性剤シスプラチンの注射かのいずれかにより腎障害を起こすように負荷を与えた場合、WISE KOマウスは、抵抗性を示す。(Yanagita et al., J. Clin Invest. 2006 January 4; 116(1): 70-79)。UUOモデルの場合、WISE KOマウスの方が、冒された腎臓に見られる線維症が非常に少なく、筋線維芽細胞活性化のマーカーであるaSMAの発現も非常に少なく、そして上皮細胞マーカーE−カドヘリンの発現は保持される。腎障害についてのシスプラチンモデルの場合、WISE欠損により、動物モデルは尿細管障害から保護され、死亡率も低下した(Tanaka et al., Kidney International advance online publication 17 October 2007)。また、WISE KOマウス(aka USAG−1 KOマウス)をCol4a3 KOマウスと交配した場合、誕生したダブルノックアウトマウスは、WT WISE遺伝子を持つCol4a3 KOマウスと比較して、タンパク尿が顕著に少なく、末期の腎疾患を発症することも少なかった。4週齢で、USAG−1+/+、3(IV)−/−マウスがすでに、広範囲の糸球体基底膜(GBM)分裂を伴う深刻なタンパク尿を示しているのに対して、ダブルKOマウスは正常構造のGBMを示した。10週齢では、USAG−1+/+、3(IV)−/−マウスは末期の腎疾患を発症したが、ダブルKOマウスでは明らかに腎機能が保持されており腎の組織学的変化も少なかった(Tanaka et al. J Clin Invest. 2010; 120(3):768-777 and Abstract TH-FC059 2008 ASN meeting)。
【0005】
[0004]これらのデータは、WISEが成体の腎機能の制御因子である可能性を示している。しかしながら、これらの研究は、全成長サイクルでWISEを欠損しているノックアウトマウスに限られたものであって、したがって、阻害剤(抗体など)を用いてWISE活性を急遽阻害することが、様々な線維症と関連した病状下で腎機能を保存する治療効果をもたらし得るかどうかは予測不能であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Yanagita et al., J. Clin Invest. 2006 January 4; 116(1): 70-79
【非特許文献2】Tanaka et al., Kidney International advance online publication 17 October 2007
【非特許文献3】Tanaka et al. J Clin Invest. 2010; 120(3):768-777 and Abstract TH-FC059 2008 ASN meeting
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[0005]本発明者らは、WISEを標的とする結合剤を用いて、線維症および組織不全を含む、損傷および修復と関連した、肺障害および腎臓障害を治療することが可能であることを実証する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
[0006]本明細書には、疾患および障害を予防または治療するのに用いることができる組成物および方法が開示される。本発明は、さらに、本明細書に開示される結合剤により認識される、ヒトWISEの領域、これらの領域の利用法、およびそのような領域の作製法に関連する。本発明は、シスチンノットドメインとして同定されるWISEの領域に特異的なエピトープ、およびその領域に特異的に結合する結合剤にも関する。
【0009】
[0007]本発明は、WISEに特異的に結合する結合剤(抗体など)に関する。結合剤は、本明細書に開示される少なくとも1種の抗体はWISEに結合するのを交差阻止する能力、および/またはこの抗体により結合剤がWISEと結合するのが交差阻止される性質によって特徴づけられる。本発明の抗体およびその他の結合剤は、本明細書で開示されるとおりのヒトWISEペプチドエピトープ競合結合アッセイでそれらが示す結合パターンによっても特徴づけられる。
【0010】
[0008]特定の態様において、本発明は、WISE活性を阻害し、腎臓、肺、皮膚、眼球、肝臓、および心臓などの組織において組織損傷および関連する線維症を減少させ得る結合剤(抗体など)に関する。また、本発明は、糖尿病性腎症、糸球体腎炎(glomerolonephritis)、膜性腎障害、ループス、移植、およびタンパク尿の増加の徴候を含むその他の腎疾患などの患者における様々な免疫学的腎疾患および免疫非介在性腎疾患と関連する、タンパク尿またはタンパク尿誘導損傷(例えば線維症)を阻害する結合剤に関する。さらに、本発明は、線維症および/またはタンパク尿のいずれかで影響を受ける上記器官の、機能を改善するか機能が失われるのを遅らせる結合剤に関する。影響を及ぼす疾患として、慢性腎疾患、慢性移植腎症、突発性肺線維症、心筋症、緑内障(水晶体細胞の線維症)、および強皮症(皮膚の線維症)が挙げられるが、これらに限定されない。また、腫瘍転移も組織の線維症と同様な機構で起こるので、WISE結合剤は腫瘍転移および/または癌の進行を遅らせるのにも有用である可能性がある。
【0011】
[0009]他の態様において、本発明は、細胞アッセイにおいてWISEの阻害作用を遮断することができる結合剤(抗体など)に関する。本発明は、細胞アッセイにおいてWISEの作用を変更することができる結合剤(抗体など)にも関する。本発明はまた、WISEの作用を活性化することができる結合剤(抗体など)にも関する。
【0012】
[0010]本発明はさらに一部分において、WISEのシスチンノットの核領域である、少なくとも1つのジスルフィド結合でつながった2個、3個、または4個のポリペプチドフラグメントを含むポリペプチド構築物およびこのポリペプチド構築物に特異的に結合する能力がある抗体にも関するものである。
【0013】
[0011]1つの態様において、本発明は、哺乳類で、WISEに特異的に結合する能力がある結合剤(抗体など)を産生するための免疫原として用いるのに好適なエピトープを得る方法に関する;特定の態様において、産生された結合剤は、インビトロおよび/またはインビボでWISE活性を中和する能力がある。
【0014】
[0012]別の態様において、本発明は、動物に投与された場合にWISEに特異的な抗体を誘発する組成物に関するもので、この組成物は、以下の表中の配列の1つから選択されるが限定されない配列を有するポリペプチドを含む。
【0015】
【表1−1】
【0016】
【表1−2】
【0017】
【表1−3】
【0018】
【表1−4】
【0019】
[0013]他の態様において、本発明は、動物に投与された場合にWISEに特異的な抗体を誘発する組成物にも関するもので、この組成物は、ヒト、マウス、ラット、またはカニクイザルのWISEのアミノ酸配列で本質的に構成されるポリペプチドを少なくとも1つ含む。
【0020】
[0014]表1に記載のWISEタンパク質は、それぞれの種の全長タンパク質配列であり、分泌できるようにさらに処理されることが当業者には理解されるだろう。特定の態様において、最初の23個のアミノ酸はシグナルペプチドであり(配列番号2、4、6、および8)、シグナルペプチドを除去すると成熟ポリペプチドになる。特定の態様において、本発明は、上記の表1に示す成熟WISEのアミノ酸82から109であり、例えば配列番号9でも示される、で本質的に構成されるポリペプチドにも関する;本明細書中WISEループ2ポリペプチドとして既知のこのポリペプチドは、タンパク質断片の組換え発現、ヒトWISEのトリプシン消化、または化学合成により得ることができ、このタンパク質は、数ある方法の中でもHPLCにより単離することができる。合成されたペプチドの場合、このペプチドは直鎖型でも環化型でもあり得る。ペプチドが組換え発現で産生される場合、このペプチドは、他の担体タンパク質(Fc断片またはヒト血清アルブミンまたはその他増加するものなど)と融合したものであり得る。
【0021】
[0015]1つの態様において、本発明は、WISEに特異的に結合する能力がある抗体を産生する方法に関するもので、この方法は(a)WISEポリペプチドを含有する組成物で動物を免疫化すること、(b)動物から血清を採取すること、および(c)血清から、WISEに特異的に結合し、かつWISEの生物活性を阻害する能力がある抗体を単離することを含み、抗体はWISEのループ2に特異的に結合する。
【0022】
[0016]さらに別の態様において、本発明はさらに、ファージディスプレイ法を用いてWISEループ2に結合する抗体を選出する方法、および/またはファージディスプレイ法を用いてWISEに対する既知抗体の親和性を改善する方法をも企図する。
【0023】
[0017]さらなる態様において、本発明は、WISEに特異的に結合する能力がある抗体を産生する方法にも関するもので、この方法は、以下を含む:(a)WISEのシスチンノット含有断片(例えば配列番号9)またはその誘導体を含有する組成物で動物を免疫化すること、(b)動物から血清を採取すること、および(c)血清から、WISEに特異的に結合し、かつWISEの生物活性を阻害する能力がある抗体を単離すること。
【0024】
[0018]さらなる態様において、本発明はさらに、生体試料中の抗WISE抗体を検出する方法に関するもので、この方法は、(a)抗体とポリペプチドの複合体が形成可能な条件下、生体試料を、配列番号2のアミノ酸24から206を有するポリペプチド、配列番号4のアミノ酸24から206を有するポリペプチド、配列番号6のアミノ酸24から206を有するポリペプチド、配列番号8のアミノ酸24から206を有するポリペプチド、および配列番号9などのペプチドで本質的に構成されるポリペプチドと接触させる工程;および(b)複合体が存在するかしないかを検出する工程を含み、複合体が存在する場合は生体試料に抗WISE抗体が含まれることを意味する。
【0025】
[0019]他の態様において、本発明は、生体試料中の抗WISE抗体を検出する方法に関するもので、この方法は、(a)抗体とポリペプチドの複合体が形成可能な条件下、生体試料を、WISEのシスチンノット含有断片を含有する組成物と接触させる工程;および(b)複合体が存在するかしないかを検出する工程を含み、複合体が存在する場合は生体試料に抗WISE抗体が含まれることを意味する。
【0026】
[0020]特定の態様において、本発明は、本発明の抗体の少なくとも1種の結合を交差阻止するWISE結合剤(抗体など)に関する。本発明の抗体として、WISEポリペプチドのループ2に結合するものが含まれる。ループ2結合抗体の例として、表2に記載されるものが含まれる。表2には、WISEタンパク質のループ2に結合する抗体の可変領域を示す。他の態様において、本発明は、表2の抗体の少なくとも1種のWISEタンパク質への結合を交差阻止するWISE結合剤(抗体など)に関する。
【0027】
【表2−1】
【0028】
【表2−2】
【0029】
【表2−3】
【0030】
【表2−4】
【0031】
【表2−5】
【0032】
【表2−6】
【0033】
【表2−7】
【0034】
[0021]本発明の特定の態様において、以下に示すポリペプチドの可変ドメイン対はヒトWISEのループ2(配列番号9)に結合する能力がある結合ドメインであることが企図される:配列番号11と13、配列番号15と17、配列番号19と21、配列番号23と25、配列番号27と29、配列番号31と33、配列番号71と73、配列番号75と77、配列番号79と81、および配列番号83と85。本明細書中で使用されるとおり、以下の特定の配列識別子で示される可変ドメインは、WISE(配列番号9)に結合する能力がある重鎖と軽鎖を含む、すなわち、Ab−AAを指す配列番号11と13、Ab−ABを指す配列番号15と17、Ab−ACを指す配列番号19と21、Ab−ADを指す配列番号23と25、Ab−AEを指す配列番号27と29、Ab−AFを指す配列番号31と33、Ab−AGを指す配列番号71と73、Ab−AHを指す配列番号75と77、Ab−AIを指す配列番号79と81、およびAb−AJを指す配列番号83と85。さらに、これらの可変ドメインの相補性決定領域を、配列番号9について結合活性を保持したまま、抗体のヒトフレームワーク領域(例えば、IgG2)中にクローニングすることが可能であることが企図される。
【0035】
[0022]表2に示す抗体可変ドメインのCDRを以下の表3に示す。
【0036】
【表3−1】
【0037】
【表3−2】
【0038】
[0023]特定の態様において、本発明の抗体は、配列番号34と35と36、および配列番号37と38と39に示される相補性決定領域を含む抗体を含む。特定の態様において、本発明の抗体は、配列番号40と41と42、および配列番号43と44と45に示される相補性決定領域を含む抗体を含む。特定の態様において、本発明の抗体は、配列番号46と47と48、および配列番号49と50と51に示される相補性決定領域を含む抗体を含む。特定の態様において、本発明の抗体は、配列番号52と53と54、および配列番号55と56と57に示される相補性決定領域を含む抗体を含む。特定の態様において、本発明の抗体は、配列番号58と59と60、および配列番号61と62と63に示される相補性決定領域を含む抗体を含む。特定の態様において、本発明の抗体は、配列番号64と65と66、および配列番号67と68と69に示される相補性決定領域を含む抗体を含む。特定の態様において、本発明の抗体は、配列番号86と87と88、および配列番号89と90と69に示される相補性決定領域を含む抗体を含む。特定の態様において、本発明の抗体は、配列番号91と92と93、および配列番号94と95と96に示される相補性決定領域を含む抗体を含む。特定の態様において、本発明の抗体は、配列番号97と98と99、および配列番号100と101と102に示される相補性決定領域を含む抗体を含む。特定の態様において、本発明の抗体は、配列番号103と104と105、および配列番号106と107と108に示される相補性決定領域を含む抗体を含む。
【0039】
[0024]本発明のWISE結合剤は、表2に示す可変ドメインを含む抗体のうちの少なくとも1つによって、WISEとの結合を交差阻止されることもあり得る。本発明のWISE結合剤は、表2に示す抗体および/または以下の配列番号で示される相補性決定領域を含む抗体のうちの少なくとも1つによって、WISEとの結合を交差阻止されることもあり得る:配列番号34と35と36、および配列番号37と38と39;配列番号40と41と42、および配列番号43と44と45;配列番号46と47と48、および配列番号49と50と51;配列番号52と53と54、および配列番号55と56と57;配列番号58と59と60、および配列番号61と62と63;配列番号64と65と66、および配列番号67と68と69;配列番号86と87と88、および配列番号89と90と69;配列番号91と92と93、および配列番号94と95と96;配列番号97と98と99、および配列番号100と101と102;ならびに配列番号103と104と105、および配列番号106と107と108。
【0040】
[0025]本明細書中例示される抗体の相補性決定領域(CDR)を含む抗体として、従来の分子生物学技法を用いて以下に示すCDRをコードする核酸をヒトフレームワーク領域にクローン導入したヒト化抗体が挙げられる:配列番号34と35と36、および配列番号37と38と39;配列番号40と41と42、および配列番号43と44と45;配列番号46と47と48、および配列番号49と50と51;配列番号52と53と54、および配列番号55と56と57;配列番号58と59と60、および配列番号61と62と63;配列番号64と65と66、および配列番号67と68と69;配列番号86と87と88、および配列番号89と90と69;配列番号91と92と93、および配列番号94と95と96;配列番号97と98と99、および配列番号100と101と102;または配列番号103と104と105、および配列番号106と107と108。これらの配列は、フレームワーク領域にさらなる修飾を加えて、または加えずに、および/またはCDRにさらなる改変を加えて、クローン化され得る。これらのヒト化抗体は、本明細書中に一部記載される従来技法を用いて、発現させる。本発明のヒト化抗体の例として、重鎖と軽鎖の対として示される以下の配列番号のものが挙げられる:配列番号110と112、配列番号114と116、配列番号118と116、配列番号114と120、配列番号118と120、配列番号122と124、配列番号126と124、配列番号122と128、および配列番号126と128。以下の表4に、対応する核酸配列を示す。
【0041】
【表4−1】
【0042】
【表4−2】
【0043】
【表4−3】
【0044】
【表4−4】
【0045】
[0026]さらに別の態様において、本発明は、「ヒトWISEペプチドエピトープ競合結合アッセイ」で、抗体Ab−AA、Ab−AB、Ab−AC、Ab−AD、Ab−AE、Ab−AF、Ab−AG、Ab−AH、Ab−AI、Ab−AJ、およびD14、ならびにそれらの誘導体のうちの少なくとも1種が示すのと同じような結合パターンをヒトWISEペプチドに対して示す結合剤(単離された抗体など)に関する;単離された抗体またはその抗原結合性断片は、ポリクローナル抗体でも、モノクローナル抗体でも、ヒト化抗体でも、ヒト抗体でも、キメラ抗体でもよい。
【0046】
[0027]WISEに特異的なヒト抗体の例を以下の表5に示す。
【0047】
【表5−1】
【0048】
【表5−2】
【0049】
【表5−3】
【0050】
[0028]表5のヒト抗体は、例えば、以下の表6に記載の変異でヒトWISEに対する親和性を上げるなど、それらのCDRにさらに変異を導入して抗体機能を向上させることができる。付番は、抗体の重鎖または軽鎖(配列番号132または配列番号130)中のアミノ酸残基の位置に基づく。
【0051】
【表6】
【0052】
[0029]本発明はさらにまた、対象ほ乳類の腎臓および/または肺の線維性疾患または障害を治療する方法に関するもので、この方法は、そのような治療を必要としている対象に、この障害に関連した症状を減退するのに十分な量の抗WISE結合剤を提供することを含み、この方法において抗WISE結合剤は抗体またはそのWISE結合性断片を含む。
【0053】
[0030]本明細書中提供されるのは、ヒトWISEに特異的に結合する抗体である。本発明の抗体は、本明細書中開示される抗体の少なくとも1種がヒトWISEと結合するのを交差阻止する能力、および/または本明細書中開示される抗体の少なくとも1種によりヒトWISEと結合するのが交差阻止される性質を特徴とする。本発明はまた、細胞アッセイにおいてWISEの作用を遮断し得る単離された抗体またはその抗原結合性断片を提供する。本発明は、細胞アッセイにおいてWISEの作用を活性化し得るモノクローナル抗体またはその断片も提供する。
【0054】
[0031]本発明のこれらの側面およびその他の側面は、以下の詳細な説明および添付の図面を参照することで明らかとなるだろう。本明細書中開示される参照は、それぞれが個別に組み込まれるかのように、その全体が参照により組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】[0032]図1:WISEに結合するのにループ2を必要とする抗体の同定。
【図2】[0033]図2:細胞アッセイでの中和ループ2抗体の同定。タンパク質濃度は、hWISEが0.3ug/ml、Abが3ug/mlである。
【図3】[0034]図3:中和抗Wiseループ2抗体はWise−Lrp6結合を阻害する。
【図4】[0035]図4:hWISEに対するAb−AAの競合的結合を測定するアッセイ。Ab−AAは、プレートと結合している。Ab−C、Ab−T、Ab−S、およびAb−Pは、既に同定されている対照抗体であり、この図および以下の図に含まれている。
【図5】[0036]図5:hWISEに対するAb−ABの競合的結合を測定するアッセイ。Ab−ABは、プレートと結合している。
【図6】[0037]図6:hWISEに対するAb−ACの競合的結合を測定するアッセイ。Ab−ACは、プレートと結合している。
【図7】[0038]図7:hWISEに対するAb−ADの競合的結合を測定するアッセイ。Ab−ADは、プレートと結合している。
【図8】[0039]図8:hWISEに対するAb−AEの競合的結合を測定するアッセイ。Ab−AEは、プレートと結合している。
【図9】[0040]図9:hWISEに対するAb−AFの競合的結合を測定するアッセイ。Ab−AFは、プレートと結合している。
【図10】[0041]図10:hWISEに対するAb−Sの競合的結合を測定するアッセイ。Ab−Sは、プレートと結合している。
【図11】[0042]図11:hWISEに対するAb−の競合的結合を測定するアッセイ。Ab−Sは、プレートと結合している。
【図12】[0043]図12:hWISEに対するAb−Sの競合的結合を測定するアッセイ。Ab−Sは、プレートと結合している。
【図13】[0044]図13:hWISEに対するAb−Sの競合的結合を測定するアッセイ。Ab−Sは、プレートと結合している。
【図14】[0045]図14:ループ2の残基が個別にアラニンに変更されている変異型hWISEに対するhWISE抗体の相対結合性を示す結合アッセイ。1より小さい数は、結合性が下がることを示す。HuWISE−HuSost−ループ2は、hWISEのキメラでありHuSostループ2を有する対照ポリペプチドである(実施例を参照)。「WT残基」は、アラニンに変更されるアミノ酸を示す。これらの残基は、それぞれ配列番号9のアミノ酸4〜25に相当する。
【図15】[0046]図15:WISE抗体処理は、T2DNモデルで腎機能を保持した。
【図16】[0047]図16:WISE抗体処理は、T2DNモデルで腎機能を保持した。
【図17】[0048]図17:WISE抗体処理は、T2DNモデルで尿管間質性損傷を阻害した。
【図18】[0049]図18:WISE抗体処理は、T2DNモデルで糸球体損傷を阻害した。
【図19】[0050]図19:WISE抗体処理は、T2DNモデルで確立されたタンパク尿に影響を及ぼさなかった。
【図20】[0051]図20:WISE変異体に対するWISEループ2Mab(Ab−AB)の結合特性。
【図21】[0052]図21:WISE変異体に対するWISEループ2Mab(Ab−AE)の結合特性。
【図22】[0053]図22:WISE変異体に対するWISEループ2Mab(Ab−AG)の結合特性。
【図23】[0054]図23:WISE変異体に対するWISEループ2Mab(Ab−AI)の結合特性。
【図24】[0055]図24:WISE変異体に対するWISEループ2Mab(Ab−AC)の結合特性。
【図25】[0056]図25:WISE変異体に対するWISEループ2Mab(Ab−AA)の結合特性。
【図26】[0057]図26:WISE変異体に対するWISEループ2Mab(Ab−AH)の結合特性。
【図27】[0058]図27:WISE変異体に対するWISEループ2Mab(Ab−AJ)の結合特性。
【図28】[0059]図28:WISE変異体に対するWISEループ2Mab(Ab−AF)の結合特性。
【図29】[0060]図29:抗体の活性を示すヒト化WISEループ2mabのMC3T3E1−STFE発現。
【発明を実施するための形態】
【0056】
[0061]本発明は、部分的には、抗体に認識されるエピトープを含有するWISEタンパク質の領域(この抗体は全長WISEポリペプチドに即してエピトープに結合する能力もある)、ならびにそのようなエピトープの作製法および使用法に関するものである。本発明は、WISEまたはWISEの一部分に特異的に結合する結合剤(抗体など)、およびそのような結合剤の使用法も提供する。本発明の結合剤は、ヒトWISEの1つ又はそれより多くのリガンドとの結合およびその生物活性を遮断するか損なうのに有用である。
【0057】
[0062]本明細書に使用される場合、「ヒトWISE」という用語は、配列番号2、4、6、および8に示すタンパク質ならびにそれらの対立遺伝子変異体(allelic variant)を含むものとする。配列番号2、4、6、および8にはWISEの相同分子種も記載されており、マウス、ラット、およびカニクイザルのものが含まれる。WISEは、WISEをコードする遺伝子が形質移入された宿主細胞の培養液の上清をろ過および溶出させて精製することができる。調製およびさらなる精製は、実施例に記載する。ヒトWISE核酸は、米国特許第5,780,263号に記載される。
【0058】
[0063]WISEの相同分子種間には高い配列相同性があることが当業者に理解されるであろう。したがって、ヒトWISEに対する結合剤は、結合剤の認識部位、例えばエピトープなどの抗体結合部位、が高度に保存されており、特にヒト配列とほぼ、または完全に同一である場合は、マウス、ラット、またはカニクイザルのWISEにも結合すると予想できるだろう。したがって、「WISEに特異的に結合する」という用語を用いる場合、種間の配列が保存されている多様な種内でのWISEへの結合を含むと理解される。
【0059】
[0064]本発明による結合剤の例として、以下のものが挙げられる:Ab−AA、Ab−AB、Ab−AC、Ab−AD、Ab−AE、Ab−AF、Ab−AG、Ab−AH、Ab−AI、Ab−AJ、およびD14、ならびに以下の配列番号を含む抗体:配列番号:34と35と36、および配列番号:37と38と39;配列番号:40と41と42、および配列番号:43と44と45;配列番号:46と47と48、および配列番号:49と50と51;配列番号:52と53と54、および配列番号:55と56と57;配列番号:58と59と60、および配列番号:61と62と63;配列番号:64と65と66、および配列番号:67と68と69;配列番号:86と87と88、および配列番号:89と90と69;配列番号:91と92と93、および配列番号:94と95と96;配列番号:97と98と99、および配列番号:100と101と102;配列番号:103と104と105、配列番号:106と107と108,ならびに、配列番号:133と134と135、および配列番号:136と137と138。そのうえさらに、本発明のCDR−L1ポリペプチドの例として、以下の配列番号に示すものが挙げられる:配列番号34、40、46、52、58、64、86、91、97、103、および133。CDR−L2の例として、以下の配列番号に示すものが挙げられる:配列番号35、41、47、53、59、65、87、92、98、104、および134。CDR−L3の例として、以下の配列番号に示すものが挙げられる:配列番号36、42、48、54、60、66、88、93、99、105、および135。CDR−H1の例として、以下の配列番号に示すものが挙げられる:配列番号37、43、49、55、61、67、89、94、100、106、および136。CDR−H2の例として、以下の配列番号に示すものが挙げられる:配列番号38、44、50、56、62、68、90、95、101、107、および137。CDR−H3の例として、以下の配列番号に示すものが挙げられる:配列番号39、45、51、57、63、69、96、102、108、および138。
【0060】
[0065]本明細書に使用される場合、Ab−AAは、配列番号10および12に示すヌクレオチド配列により発現されるポリペプチドで構成される;Ab−ABは、配列番号14および16に示すヌクレオチド配列により発現されるポリペプチドで構成される;Ab−ACは、配列番号18および20に示すヌクレオチド配列により発現されるポリペプチドで構成される;Ab−ADは、配列番号22および24に示すヌクレオチド配列により発現されるポリペプチドで構成される;Ab−AEは、配列番号26および28に示すヌクレオチド配列により発現されるポリペプチドで構成される;Ab−AFは、配列番号30および32に示すヌクレオチド配列により発現されるポリペプチドで構成される;Ab−AGは、配列番号70および72に示すヌクレオチド配列により発現されるポリペプチドで構成される;Ab−AHは、配列番号74および76に示すヌクレオチド配列により発現されるポリペプチドで構成される;Ab−AIは、配列番号78および80に示すヌクレオチド配列により発現されるポリペプチドで構成される;Ab−AJは、配列番号82および84に示すヌクレオチド配列により発現されるポリペプチドで構成される;ならびにD14は、配列番号129および131に示すヌクレオチド配列により発現されるポリペプチドで構成される。本明細書に示すAb−AA、Ab−AB、Ab−AC、Ab−AD、Ab−AE、Ab−AF、Ab−AG、Ab−AH、Ab−AI、Ab−AJ、およびD14は、それぞれシグナルペプチドを欠いており、当業者は、当該分野で既知のシグナルペプチドの使用を含む従来技法を用いて、これらのポリペプチドそれぞれを発現させることができる。また、本明細書に記載のAb−AA、Ab−AB、Ab−AC、Ab−AD、Ab−AE、Ab−AF、Ab−AG、Ab−AH、Ab−AI、およびAb−AJは、それぞれ、可変性の軽鎖および重鎖のみを含み、定常領域を含まない。
【0061】
[0066]そのうえさらに、本明細書に記載の非ヒト抗体は、CDRの単純な「切り取りおよび貼り付け」を含むいくらかの異なる戦略によりヒト化することも可能であるし、ヒト化分子中で重要なマウス配列を保持するための逆復帰突然変異を含むことも可能である。ヒト化の具体例として、以下の実施例のAb−AB、Ab−AI、およびAb−AE(配列番号114と116、配列番号118と120、配列番号122と124、配列番号126と128、および配列番号110と112)が挙げられる。
【0062】
[0067]その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第12/275,850号(米国特許出願公開第2009/0130114号)に既に開示されている分子(例えば、Ab−C、Ab−T、Ab−S、およびAb−P)に関連して、さらなる抗体データを本明細書に示す。
【0063】
[0068]本発明の結合剤は、本明細書に定義されるとおり、代表的には抗体またはその断片である。「抗体」という用語は、無傷の抗体またはその結合性断片を示す。抗体は、完全な抗体分子(ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ならびに全長重鎖および/または軽鎖を有するヒト型抗体が挙げられる)を含むものであっても、抗体の抗原結合性断片を含むものであってもよい。抗体断片は、F(ab')2断片、Fab断片、Fab'断片、Fv断片、Fc断片、およびFd断片を含み、そして、単一ドメイン抗体、単鎖抗体、マキシボディ(maxibody)、ミニボディ(minibody)、細胞内抗体、二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体、v−NAR、およびビス−scFvに組み込むことができる(例えば、Hollinger and Hudson, 2005, Nature Biotechnology, 23, 9, 1126-1136を参照)。抗体ポリペプチドは、米国特許第6,703,199号にも開示されており、そこではフィブロネクチンポリペプチドモノボディ(monobody)が含まれる。他の抗体ポリペプチドは米国特許出願公開第2005/0238646号に開示されており、そこでは単鎖ポリペプチドが記載されている。本明細書に使用される場合、単離された抗体またはその抗原結合性断片は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、キメラ抗体などであって構わない。
【0064】
[0069]抗体に由来する抗原結合性断片は、例えば、抗体のタンパク質加水分解により、例えば、従来法に従って抗体全体をペプシンまたはパパインで消化することにより得ることができる。例えば、抗体をペプシンで酵素開裂して、F(ab')2と名付けられた5S断片にすることにより、抗体断片を得ることができる。チオール還元剤を用いてこの断片をさらに開裂することで、3.5SのFab'一価断片を得ることができる。開裂反応は、任意で、ジスルフィド結合の開裂から生じるスルフヒドリル基をブロックする基を用いて行うことができる。代替法として、パパインを用いた酵素開裂により、2つの一価Fab断片と1つのFc断片が直接得られる。こうした方法は、例えば、以下に記載される:Goldenberg, 米国特許第4,331,647号; Nisonoff et al, Arch. Biochem. Biophys. 89:230, 1960; Porter, Biochem. J. 73:119, 1959; Edelman et al., in Methods in Enzymology 1:422 (Academic Press 1967); および Andrews, S. M. and Titus, J. A. in Current Protocols in Immunology (Coligan J. E., et al, eds), John Wiley & Sons, New York (2003). pages 2.8.1-2.8.10 and 2.10A.1-2.10A.5。抗体を切断する他の方法、例えば、重鎖を分離して一価軽重鎖断片(Fd)を形成する方法、断片をさらに開裂する方法、およびその他の酵素技法、化学技法、および遺伝子技法も、無傷の抗体により認識される抗原に対して生成した断片が結合するかぎり、用いることができる。
【0065】
[0070]抗体断片は、合成タンパク質であっても、また遺伝子操作されたタンパク質であってもよい。例えば、抗体断片として、軽鎖可変領域からなる単離された断片、重鎖および軽鎖の可変領域からなる"Fv"断片、軽鎖可変領域と重鎖可変領域がペプチドリンカーで連結されている組替え単鎖ポリペプチド分子(scFvタンパク質)が挙げられる。
【0066】
[0071]別の形の抗体断片としては、抗体の相補性決定領域(CDR)を1つ又はそれより多くを含むポリペプチドがある。CDR(「最小認識単位」または「超可変領域」とも呼ばれる)は、目的のCDRをコードするポリヌクレオチドを構築することで得ることができる。そのようなポリヌクレオチドは、例えば、抗体産生細胞のmRNAを鋳型として用いて可変領域を合成するポリメラーゼ連鎖反応法により製造される(例えば、Larrick et al., Methods: A Companion to Methods in Enzymology 2:106, 1991; Courtenay-Luck, "Genetic Manipulation of Monoclonal Antibodies, " in Monoclonal Antibodies. Production, Engineering and Clinical Application, Ritter et al. (eds.), page 166 (Cambridge University Press 1995); およびWard et al., "Genetic Manipulation and Expression of Antibodies, " in Monoclonal Antibodies: Principles and Applications, Birchetal, (eds.), page 137 (Wiley-Liss, Inc. 1995)を参照)。
【0067】
[0072]よって、1つの態様において、本発明の結合剤は、本明細書に記載されるとおりのCDRを少なくとも1つ含む。結合剤は、本明細書に記載されるとおりのCDRを少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、または6つ含んでもよい。結合剤はさらに、本明細書に記載される抗体の可変領域ドメインを少なくとも1つ含んでもよい。可変領域ドメインは、任意の大きさ、または任意のアミノ酸組成のもので構わず、一般には、ヒトWISEへの結合に関与するCDR配列(例えば、CDR−H1、CDR−H2、CDR−H3)の少なくとも1つ、および/または本明細書に具体的に記載されていて1つ以上のフレームワーク配列と隣接しているかインフレームにある軽鎖CDRを含むだろう。一般用語では、可変(V)領域ドメインは、免疫グロブリン重鎖(VH)および/または軽鎖(VL)可変ドメインの任意の適した好適な配列で構わない。したがって、例えば、V領域ドメインは、以下に記載のとおり少なくとも1×10−7Mに等しいかまたはそれ未満の親和性で独立してヒトWISEに結合する能力がある、単量体のVHまたはVLドメインであってもよい。あるいは、V領域ドメインは、VH−VH、VH−VL、またはVL−VLを含有する二量体であってもよい。V領域二量体は、少なくとも1本のVH鎖および少なくとも1本のVL鎖を含み、これらは非共有結合で会合していてもよい(以下、FVと称する)。所望であれば、これらの鎖は、例えば、2つの可変ドメインの間のジスルフィド結合を介して直接的に、またはリンカー(例えば、ペプチドリンカー)を通じて単鎖Fv(scFV)を形成させるかのいずれかにより共有結合的にカップリングさせてもよい。
【0068】
[0073]可変領域ドメインは、任意の天然に存在する可変ドメインであってもそれを遺伝子操作した改変体であっても構わない。「操作改変体」は、組換えDNA操作技法を用いて作成された可変領域ドメインを意味する。そのような操作改変体として、例えば、特定抗体のアミノ酸配列に、挿入、削除、変更を行うことによって、その特定抗体の可変領域から作成されたものが挙げられる。具体例として、第一の抗体に由来する少なくとも1つのCDRおよび随意の1つ以上のフレームワークアミノ酸配列を含み、残部は第二の抗体に由来する可変領域ドメインからなるように操作した可変領域ドメインが挙げられる。
【0069】
[0074]可変領域ドメインは、C末端アミノ酸で、少なくとも1つの他の抗体ドメインまたはその断片に共有結合で連結することができる。つまり、例えば、可変領域ドメインに存在するVHドメインが、免疫グロブリンCH1ドメインまたはその断片に結合してもよい。同様に、VLドメインが、CKドメインまたはその断片に結合してもよい。このように、例えば、抗体は、Fab断片であってもよく、ここで抗原結合性ドメインは、会合したVHドメインとVLドメインを含有し、VHドメインとVLドメインはそれぞれがそれぞれのC末端でCH1ドメインおよびCKドメインと共有結合している。CH1ドメインは、さらにアミノ酸で延長されて、例えば、Fab'断片で見られるようなヒンジ領域またはヒンジ領域ドメインの一部をもたらしてもよいし、さらなるドメイン(抗体CH2ドメインおよびCH3ドメインなど)をもたらしてもよい。
【0070】
[0075]本明細書に記載のとおり、結合剤は、これらのCDRのうち少なくとも1つを含む。例えば、1つ又はそれより多くのCDRは、既知の抗体フレームワーク領域(IgGl、IgG2など)に組み込むか、好適な適したビヒクルと抱合させるかにより、その半減期を延ばすことができる。好適な適したビヒクルとして、Fc、ポリエチレングリコール(PEG)、アルブミン、トランスフェリンなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらのビヒクルおよびその他の好適な適したものビヒクルは当該分野で既知である。このような抱合したCDRペプチドは、単量体でも、二量体でも、四量体でも、他の形であってもよい。1つの態様において、1つ以上の水溶性ポリマーが、結合剤の1カ所以上の特定部位、例えばアミノ末端に結合されている。
【0071】
[0076]特定の態様において、結合剤は、1つ以上の水溶性ポリマーの連結物を含み、それはポリエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、およびポリプロピレングリコールを含むが、これらに限定されない。例えば、米国特許第4,640,835号、米国特許第4,496,689号、米国特許第4,301,144号、米国特許第4,670,417号、米国特許第4,791,192号、および米国特許第4,179,337号を参照。特定の態様において、結合剤誘導体は、モノメトキシポリエチレングリコール、デキストラン、セルロース、またはその他の炭化水素系ポリマー、ポリ(N−ビニルピロリドン)−ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)およびポリビニルアルコール、ならびにそのようなポリマーの混合物、のうち1つ以上を含む。特定の態様において、1つ以上の水溶性ポリマーは、1本以上の側鎖にランダム結合している。特定の態様において、PEGは、結合剤(抗体など)の治療能力の改善に作用し得る。そのような方法は具体的には、例えば、米国特許第6,133,426号に記載されており、その内容はどのような目的であっても参照することで本明細書に組み込まれる。
【0072】
[0077]本発明の結合剤は、その結合特異性を保持する限り、1つ以上のアミノ酸が置換されていてもよいことが、当業者には理解されるだろう。したがって、結合剤構造に対する修飾も本発明の範囲に含まれる。そのような修飾として、アミノ酸置換を挙げることができるが、このアミノ酸置換は保存的であっても非保存的であってもいが、結合剤のWISE結合能力を破壊しないものである。保存的アミノ酸置換は非天然アミノ酸残基も包含することができ、非天然アミノ酸残基は、生体系での合成ではなく化学的ペプチド合成により組み込まれるのが一般的である。非天然アミノ酸残基として、ペプチド模倣物およびその他の反対形または逆位形(reversed or inverted forms)アミノ酸部分が挙げられる。保存的アミノ酸置換として、置換した位置のアミノ酸残基の極性または電荷にほとんどまたは全く影響がない規範的な基による天然アミノ酸残基の置換も挙げることができる。
【0073】
[0078]非保存的置換として、あるクラスの一員であるアミノ酸またはアミノ酸模倣物から物性(例えば、大きさ、極性、疎水性、電荷)の異なる別のクラスの一員への交換を挙げることができる。そのような置換残基は、ヒト抗体の非ヒト抗体と相同な領域に導入されていても、またはこの分子の非相同領域に導入されていてもよい。
【0074】
[0079]さらに、当業者は、所望のアミノ酸残基それぞれでの単一のアミノ酸置換を含有する試験用変異体を作ることができる。そのような試験は、以下の実施例で記載されるとおりの結合剤の標的で、または本発明の治療用結合剤で、行うことができる。変異体は、次いで、当業者に既知である活性アッセイを用いてスクリーニングすることができる。こうした変異体を用いることで、好適な変異体についての情報を集めることができる。例えば、特定のアミノ酸残基が変化した結果、活性が損なわれたり、望ましくなく減少したり、または不適切な活性になったりすることがわかれば、そのような変化を伴う変異体を除外することができる。すなわち、こうしたルーチン実験から集められた情報に基づき、当業者は、単独でまたは他の変異と組み合わせてのいずれにしろそれ以上置換すべきではないアミノ酸を容易に決定できる。
【0075】
[0080]当業者は、周知の技法を用いて、本明細書に記載されるとおりの好適なポリペプチド変異体を決定することができるだろう。特定の態様において、当業者は、活性にとって重要ではないと思われる領域を標的とすることで、分子中の、活性を破壊することなく変更可能な好適領域を同定することが可能である。特定の態様において、当業者は、類似のポリペプチド間で保存されている分子の残基および一部を同定することができる。特定の態様において、生物活性または構造にとって重要と思われる領域さえも、生物活性を破壊することなく、またはポリペプチド構造に悪影響を及ぼすことなく、保存的アミノ酸置換の対象とすることができる。
【0076】
[0081]さらに、当業者は、類似のポリペプチドでの活性または構造にとって重要である残基を同定する構造機能研究を参照することができる。そのような比較に照らして、当業者は、あるタンパク質におけるアミノ酸残基の重要性を、類似のタンパク質のそれに相当するアミノ酸残基の活性または構造における重要性から予測することができる。当業者は、そのような重要と予測されるアミノ酸残基について、化学的に類似したアミノ酸置換を選択することができる。
【0077】
[0082]いくつかの学術文献が二次構造の予測を扱っている。Moult J., Curr. Op. in Biotech. , 7(4):422-427 (1996), Chou et al, Biochemistry, 13(2):222-245 (1974); Chou et al, Biochemistry, 113(2):211-222 (1974); Chou et al, Adv. Enzymol. Relat. Areas Mol. Biol., 47:45-148 (1978); Chou et al, Ann. Rev. Biochem., 47:251-276 and Chou et al, Biophys. J., 26:367-384 (1979)を参照。さらに、二次構造の予測を補助するために、コンピュータープログラムが現在利用可能である。二次構造を予測する方法の1つは、相同性モデリングに基づいている。例えば、配列同一性が30%より高い、または類似性が40%より高い2つのポリペプチドまたはタンパク質は、類似した構造トポロジーを有することが多い。タンパク質構造データベース(PDB)の近年の発達により、ポリペプチド構造またはタンパク質構造中の可能な折り畳み回数を含む二次構造の予測可能性は向上してきている。Holm et al., Nucl. Acid. Res., 27(1):244-247 (1999)を参照。所定のポリペプチドまたはタンパク質における折り畳み回数は限られており、いったん臨界的な数の構造が解き明かされてしまえば、構造予測の正確性は飛躍的に向上するだろうということが示唆されている(Brenner et al, Curr. Op. Struct. Biol., 7(3):369-376 (1997))。
【0078】
[0083]二次構造を予測する方法としてさらに、「スレッディング法(threading)」(Jones, D., Curr. Opin. Struct. Biol, 7(3):377-87 (1997); Sippl et al, Structure, 4(1):15-19 (1996))、「プロファイル分析(profile analysis)」(Bowie et al, Science, 253:164-170 (1991); Gribskov et al, Meth. Enzym., 183:146-159 (1990); Gribskov et al, Proc. Nat. Acad. Sci., 84(13):4355-4358 (1987))、および「進化論的関連性(evolutionary linkage)」(Holm,前出(1999)およびBrenner,前出(1997)を参照)が挙げられる。
【0079】
[0084]特定の態様において、結合剤の変異体として、親ポリペプチドのアミノ酸配列と比較してグリコシル化部位の個数および/または種類が改変されているグリコシル化変異体が挙げられる。特定の態様において、変異体は、N−結合グリコシル化部位の個数が天然タンパク質のものより多いか、または少ない。N−結合グリコシル化部位は、Asn−X−SerまたはAsn−X−Thrという配列を特徴とする(配列中、Xで示されるアミノ酸残基は、プロリンを除く任意のアミノ酸残基が可能である)。この配列を作り出すアミノ酸残基の置換により、N−結合炭化水素鎖の付加を可能にする部位が新たにもたらされる。あるいは、この配列を取り除く置換により、既存のN−結合炭化水素鎖が除去されるだろう。1カ所以上のN−結合グリコシル化部位(たいていは天然に存在するもの)が取り除かれて、新たなN−結合部位が1カ所以上作り出されるN−結合炭化水素鎖再配置も提供される。好適な抗体変異体としてさらに、親アミノ酸配列と比較して、1つ以上のシステイン残基が、欠失されているかまたは別のアミノ酸(例えば、セリン)に弛緩されているシステイン変異体が挙げられる。システイン変異体は、例えば不溶性封入体の単離後など、抗体を生理活性な立体構造に再度折り畳む必要がある場合に、有用となり得る。システイン変異体は一般に、天然タンパク質よりも有するシステイン残基が少なく、たいてい偶数個のシステイン残基を有していて、対にならないシステインから生じる相互作用を最小限にしている。
【0080】
[0085]望ましいアミノ酸置換(保存的か非保存的かに関わらず)は、そのような置換が望まれるときに当業者により決定することができる。特定の態様において、アミノ酸置換を用いて、WISEに対する抗体で重要な残基を同定すること、あるいは本明細書に記載のWISEに対する抗体の親和性を増加または減少させることができる。
【0081】
[0086]特定の態様によれば、好適なアミノ酸置換は、そのようなポリペプチドについて、(1)タンパク質分解に対する感受性を減少させるもの、(2)酸化に対する感受性を減少させるもの、(3)タンパク質複合体を形成するための結合親和性を変更するもの、(4)結合親和性を変更するもの、および/または(4)その他の生理化学的性質または機能性を与えるか修飾するものである。特定の態様によれば、1つまたは複数のアミノ酸置換(特定の態様において、保存的アミノ酸置換である)は、天然配列(特定の態様において、分子間接触をもたらすドメイン(単数又は複数)の外のポリペプチド部分において)で行うことができる。特定の態様において、保存的アミノ酸置換は、たいてい、親配列の構造的特徴を実質的に変化させない(例えば、置換アミノ酸は、親配列で見られるヘリックスを壊すか、または親配列を特徴づけるその他の種類の二次構造を破壊する傾向を示すべきではない)。当該分野で認識されているポリペプチド二次構造および立体構造の例は、Proteins, Structures and Molecular Principles (Creighton, Ed., W. H. Freeman and Company, New York (1984)); Introduction to Protein Structure (C. Branden and J. Tooze, eds., Garland Publishing, New York, N.Y. (1991));およびThornton et al. Nature 354:105 (1991)に記載されており、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる。
【0082】
[0087]特定の態様において、本発明の結合剤は、ポリマー、脂質、またはその他の部分と化学的に結合していてもよい。
[0088]本発明の結合剤は、本明細書に記載されるCDRの少なくとも1つを、生体適合性フレームワーク構造に組み込んだ形で含んでもよい。1つの例として、生体適合性フレームワーク構造は、立体構造的に安定な構造支持体、またはフレームワーク、または足場を形成するのに十分なポリペプチドもしくはその一部を含み、局在的表面領域で抗原に結合する1種以上のアミノ酸配列(例えば、CDR、可変領域など)を提示することができるものである。そのような構造としては、天然のポリペプチドまたはポリペプチド「折り畳み」(構造モチーフ)が可能であり、また、天然のポリペプチドまたは折り畳みに対して1つ以上の修飾(アミノ酸の付加、欠失、または置換など)がなされたものも可能である。こうした足場は、ヒト、その他ほ乳類、その他脊椎動物、無脊椎動物、植物、細菌、およびウイルスなどの任意の種(または複数の種)のポリペプチドに由来するものであり得る。
【0083】
[0089]代表的には、生体適合性フレームワーク構造は、免疫グロブリンドメイン以外の足場タンパク質またはタンパク質骨格に基づく。例えば、フィブロネクチン、アンキリン、リポカリン、ネオカルチノスタチン(neocarzinostain)、シトクロムb、CP1亜鉛フィンガー、PST1、コイルドコイル、LAC1−D1、Zドメイン、およびテンドラミサット(tendramisat)ドメインに基づくものを用いることができる(例えば、Nygren and Uhlen, 1997, Current Opinionin Structural Biology, 7, 463-469を参照)。
【0084】
[0090]好適な態様において、本発明の結合剤は本明細書に記載のヒト化抗体を含むことが理解されよう。本明細書に記載されるようなヒト化抗体は、当業者に知られている技法を用いて産生することができる(Zhang, W., et al., Molecular Immunology. 42(12):1445-1451, 2005; Hwang W. et al., Methods. 36(1):35-42, 2005; Dall'Acqua W F, et al., Methods 36(1):43-60, 2005; および Clark, M., Immunology Today. 21(8):397-402, 2000)。
【0085】
[0091]さらに、好適な結合剤は、本明細書に具体的に開示されるCDR−H1、CDR−H2、CDR−H3、CDR−L1、CDR−L2、およびCDR−L3の一つ又はそれより多くなど、こうした抗体の一部分を含むことが、当業者に認識されるであろう。CDR−H1、CDR−H2、CDR−H3、CDR−L1、CDR−L2、およびCDR−L3の領域の少なくとも1つは、結合剤が無置換CDRの結合特異性を保持するかぎり少なくとも1つのアミノ酸が置換されていてもよい。結合剤の非CDR部分は、結合剤が本明細書に開示される抗体とWISEの結合を交差阻止、および/またはWISEを中和することになるような非タンパク質分子であってもよい。結合剤の非CDR部分は、結合剤が「ヒトWISEペプチドエピトープ競合結合アッセイ」で本明細書に記載される抗体の少なくとも1種により示されるのと同様なヒトWISEペプチドへの結合パターンを示し、および/またはWISEを中和することになるような非タンパク質分子であってもよい。結合剤の非CDR部分はアミノ酸で構成されていてもよく、結合剤は組換え結合性タンパク質又は合成ペプチドであり、この組換え結合性タンパク質が本明細書に開示される抗体とWISEの結合を交差阻止、および/またはWISEを中和する。結合剤の非CDR部分はアミノ酸で構成されていてもよく、結合剤は組換え結合性タンパク質であり、この組換え結合性タンパク質はヒトWISEペプチドエピトープ競合結合アッセイ(本明細書で以下に記載される)で本明細書に記載される抗体Ab−AA、Ab−AB、Ab−AC、Ab−AD、Ab−AE、Ab−AF、Ab−AG、Ab−AH、Ab−AI、Ab−AJ D14ならびにAb−AA、Ab−AB、Ab−AC、Ab−AD、Ab−AE、Ab−AF、Ab−AG、Ab−AH、Ab−AI、Ab−AJのCDRでヒト化された抗体の少なくとも1種により示されるのと同様なヒトWISEペプチドへの結合パターンを提示、および/またはWISEを中和する。
【0086】
[0092]抗体が、上記のとおり、CDR−H1、CDR−H2、CDR−H3、CDR−L1、CDR−L2、およびCDR−L3の1つ以上を含む場合、この抗体は、それらの配列をコードするDNAを含有する宿主細胞での発現により得ることができる。それぞれのCDR配列をコードするDNAは、CDRのアミノ酸配列に基づいて決定することができ、オリゴヌクレオチド合成法、部位特異的突然変異誘発法、およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を適切にもちいることで、任意の所望の抗体可変領域フレームワークおよび定常領域DNA配列と一緒に合成することができる。可変領域フレームワークおよび定常領域をコードするDNAは、当業者には、GenBank(登録商標)などの遺伝子配列データベースから広く入手可能である。上記のCDRはたいてい、それぞれ、Kabat付番方式(Kabat et al., 1987 in Sequences of proteins of Immunological Interest, U.S. Department of Health and Human Services, NIH, USA)に従って、可変領域フレームワークの重鎖の31位〜35位(CDR−H1)、50位〜65位(CDR−H2)、および95位〜102位(CDR−H3)、ならびに軽鎖の24位〜34位(CDR−L1)、50位〜56位(CDR−L2)、および89位〜97位(CDR−L3)に位置する。
【0087】
[0093]「CDR」という用語は、抗体可変配列内の相補性決定領域を意味することができる。CDRはたいてい重鎖および軽鎖の可変領域のそれぞれに3つあり、それぞれの可変領域ごとに、CDR1、CDR2、およびCDR3と名付けられている。これらのCDRの境界は、異なる方式によってそれぞれ別々に定義されている。Kabatが記載する方式(Kabat et al., Sequences of proteins of Immunological Interest (National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1987) and (1991))は、抗体の任意の可変領域に適用可能な残基付番方式を提供するもので、3つのCDRを定義する残基境界を提供する。Chothiaおよび共同研究者(Chothia & Lesk, J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987) および Chothia et al., Nature 342:877-883 (1989))は、Kabat CDR内の特定のサブ部分同士が、アミノ酸配列のレベルでは広い多様性を持ちながらも、ほとんど同一なペプチド骨格立体構造を採用していることを見いだした。これらのサブ部分は、L1、L2、およびL3、またはH1、H2、およびH3と命名され、ここで「L」および「H」は、それぞれ、軽鎖領域および重鎖領域を示す。これらの領域は、Kabat式で定義されるCDRと境界が重なりあうことがある。その他のCDRを定義する境界で、Kabat式のCDRと重なりあうものは、Padlan(FASEB J. 9:133-139 (1995))およびMacCallum(J Mol Biol 262(5):732-45 (1996))により記載されている。さらに他のCDR境界の定義は、上記の方式の1つに厳密に従うというものではないかもしれないが、それでも、Kabat付番方式と重なりあうところがある。もっとも、特定の残基または残基の群、さらにはCDR全体さえも、それらが抗原結合に有意の影響を及ぼさないという予測または実験上の知見に照らして、定義されるCDRが短かったり長かったりするかもしれないが。本明細書に用いられる方法は、これらの方式のいずれかに従って定義されるCDRを利用することができる。
【0088】
[0094]本明細書に使用される場合、「フレームワーク」または「フレームワーク配列」という用語は、CDRを含まないがその周辺の可変領域の配列を示す。CDR配列の厳密な定義は方式によって決定が異なり得るため、フレームワーク配列の意味は、これに相応して異なる解釈を持つものである。CDR(軽鎖のCDR−L1、−L2、および−L3、ならびに重鎖のCDR−H1、−H2、および−H3)は、軽鎖および重鎖のそれぞれのフレームワーク領域を各鎖において4つのサブ領域(FR1、FR2、FR3、およびFR4)に分割するものでもある。各鎖において、CDR1はFR1とFR2の間に、CDR2はFR2とFR3の間に、そしてCDR3はFR3とFR4の間に位置する。FR1、FR2、FR3、またはFR4として特定のサブ領域を明記しなくても、フレームワーク領域は、その他によって示されるとおり、一本の天然免疫グロブリン鎖の可変領域内のFRsのまとまりを表す。本明細書に使用される場合、FRは、4つのサブ領域のうちの1つを表し、FRsはフレームワーク領域を構成する4つのサブ領域のうちの2つ以上を表す。
【0089】
[0095]いったん合成されると、本発明の抗体またはその断片をコードするDNAは、任意の個数の既知発現ベクターを用いる、核酸切除、連結、形質転換、および形質移入のための多様な周知の手順のいずれかに従って、増殖および発現させることができる。したがって、特定の態様において、抗体断片の発現は、大腸菌(Escherichia coli)などの原核生物宿主内で行うことが好適であってもよい(例えば、Pluckthun et al., 1989 Methods Enzymol. 178:497-515を参照)。他の特定の態様において、抗体またはその断片の発現は、酵母菌(例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、およびピキア・パストリス(Pichia pastoris))、動物細胞(哺乳類細胞を含む)、および植物細胞を含む真核生物の宿主細胞内で行うことが好適であってもよい。好適な動物細胞の例として、骨髄腫細胞(マウスNSO細胞株など)、COS細胞、CHO細胞、およびハイブリドーマが挙げられるが、これらに限定されない。植物細胞の例として、タバコ細胞、トウモロコシ細胞、ダイズ細胞、およびコメ細胞が挙げられる。
【0090】
[0096]抗体の可変領域および/または定常領域をコードするDNAを含有する1つ以上の複製可能な発現ベクターを調製し、そして、抗体の産生が生じる適切な細胞株、例えば、非産生型細胞腫細胞株(マウスNSO細胞株など)または細菌(大腸菌など)を形質転換するのに用いてもよい。効率的に転写と翻訳を行なわせる目的で、各ベクターのDNA配列は、可変ドメイン配列に機能的に連結された適切な制御配列、具体的にはプロモーター配列およびリーダー配列を含むべきである。このようにして抗体を製造する具体的な方法は、一般に周知であり日常的に用いられている。例えば、基本の分子生物学的手順が、Maniatis et al.(Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory, New York, 1989;また Maniatis et al., 3rd ed., Cold Spring Harbor Laboratory, New York, (2001)も参照)に記載されている。DNA配列決定は、Sanger et al.(PNAS 74:5463, (1977))およびAmersham International plc sequencing handbookに記載のように行うことができ、部位特異的突然変異誘発は、当該分野で既知の方法に従って行うことができる(Kramer et al., Nucleic Acids Res. 12:9441, (1984); Kunkel Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:488-92 (1985); Kunkel et al., Methods in Enzymol. 154:367-82 (1987); the Anglian Biotechnology Ltd handbook)。さらに、多数の文献が、DNAの操作、発現ベクターの創造、ならびに適切な細胞の形質転換および培養による抗体調製に適した技法を記載している(Mountain A and Adair, J R in Biotechnology and Genetic Engineering Reviews (ed.Tombs, M P, 10, Chapter 1, 1992, Intercept, Andover, UK); "Current Protocols in Molecular Biology", 1999, F. M. Ausubel (ed.), Wiley Interscience, New York)。
【0091】
[0097]上記のCDRの1つ以上を含有する本発明による抗体の親和性を改善することが望まれる場合、以下をはじめとする多数の親和性成熟化プロトコルで達成することができる:CDRの維持(Yang et al., J. Mol. Biol., 254, 392-403, 1995)、チェイン・シャッフリング法(Marks et al., Bio/Technology, 10, 779-783, 1992)、大腸菌の突然変異株の使用(Low et al., J. Mol. Biol., 250, 350-368, 1996)、DNAシャッフリング法(Patten et al., Curr. Opin. Biotechnol., 8, 724-733, 1997)、ファージディスプレイ法(Thompson et al., J. Mol. Biol., 256, 7-88, 1996)およびセクシャルPCR(sexual PCR)(Crameri, et al., Nature, 391, 288-291, 1998)。これらの親和性成熟化の方法は全て、Vaughan et al.(Nature Biotechnology, 16, 535-539, 1998)で考察されている。
【0092】
[0098]その他の本発明による抗体は、本明細書に記載されるとおりの従来の免疫化手順および細胞融合手順や当該分野で既知のそのような手順によって得ることができる。本発明のモノクローナル抗体は、様々な既知の技法を用いて生成させることができる。一般に、特定の抗原に結合するモノクローナル抗体は、当業者に知られている方法によって得ることができる(例えば、Kohler et al., Nature 256:495, 1975; Coligan et al. (eds.), Current Protocols in Immunology, 1:2.5.12.6.7 (John Wiley & Sons 1991); 米国特許第RE32,011号、米国特許第4,902,614号、米国特許第4,543,439号、および米国特許第4,411,993号; Monoclonal Antidobies, Hybridomas: A New Dimension in Biological Analyses, Plenum Press, Kennett, McKearn, and Bechtol (eds.) (1980); ならびにAnntibodies: A Laboratory Manual, Harlow and Lane (eds.), Cold Spring Harbor Laboratory Press (1988); Picksley et al., "Production of monoclonal antibodies against proteins expressed in E. coli, " in DNA Cloning 2: Expression Systems, 2nd Edition, Glover et al.(eds.), page 93 (Oxford University Press 1995)を参照)。抗体断片は、本発明による抗体から、任意の好適な標準技法(例えば、タンパク質消化、または随意に、タンパク質消化(例えば、パパインまたはペプシンを用いて)とそれに続くジスルフィド結合の穏やかな還元およびアルキル化)を用いて得ることができる。あるいは、そのような断片は、本明細書に記載されるとおりの遺伝子組換え操作技法によっても生成させることができる。
【0093】
[0099]モノクローナル抗体は、当該分野で既知の方法および本明細書に記載の方法に従って、動物(例えば、ラット、ハムスター、ウサギ、または好ましくはマウスであり、当該分野で既知のとおり遺伝子導入動物およびノックアウト動物を含む)に、WISE(例えば、配列番号2、4、6、または8に示される配列の全長ポリペプチドまたは成熟ポリペプチド、あるいはその断片(例えば、配列番号9)を含む)を含む免疫原を注射することによって得ることができる。特定の抗体が産生されていることは、最初の注射後および/または追加の注射後に、血清試料を取り、複数ある当該分野で既知の免疫検出法および本明細書に記載の方法のいずれか1つを用いて、ヒトWISEまたはペプチドに結合する抗体が存在することを検出することで観察することができる。所望の抗体を産生する動物から、リンパ球、最も一般的には脾臓またはリンパ節から細胞を取り出して、Bリンパ球を得る。次いで、Bリンパ球を、薬物感作したミエローマ細胞融合パートナー、好ましくは免疫化動物と同一遺伝子であり他の望ましい性質を随意に有するパートナー(例えば、内在性Ig遺伝子産物を発現できないもの、例えば、P3X63−Ag8.653(ATCCNo.CRL 1580);NSO、SP20)と融合させて、ハイブリドーマ(これは不死真核細胞株である)を製造する。リンパ球(例えば、脾臓の)細胞とミエローマ細胞を、膜融合促進剤(ポリエチレングリコールや非イオン性洗剤など)と一緒に数分間ひとまとめにし、それからハイブリドーマの増殖を補助するが非融合細胞腫細胞の増殖は補助しない選択的培地に、低密度で蒔くことができる。好適な選択培地は、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)である。十分な時間(通常は約1週間から2週間)が経過すると、細胞のコロニーが観察される。単一のコロニーを単離し、細胞が産生する抗体を、当該分野で既知の様々な免疫アッセイおよび本明細書に記載されるそのようなアッセイのいずれか1つを用いて、ヒトWISEに対する結合活性について検査することができる。ハイブリドーマをクローニングし(例えば、限界希釈クローニングにより、または軟寒天プラーク単離により)、WISEに特異的な抗体を産生する陽性クローンを選択して培養する。ハイブリドーマ培養物からのモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ培養物の上清から単離することができる。マウスモノクローナル抗体を製造する代替法は、ハイブリドーマ細胞を同一遺伝子のマウス、例えば、モノクローナル抗体を含有する腹水液の形成を促進するようにあらかじめ処理されているマウス(例えば、プリスタンで準備刺激されたもの)の腹膜腔に注射することである。モノクローナル抗体は、十分に確立された様々な技法により単離精製することができる。そうした単離技法として、プロテインAセファロースを用いたアフィニティークロマトグラフィー、分子ふるいクロマトグラフィー、およびイオン交換クロマトグラフィーが挙げられる(例えば、Coligan at pages 2.7.1-2.7.12 and pages 2.9.1-2.9.3; Baines et al., "Purification of Immunoglobulin G (IgG), " in Methods in Molecular Biology, Vol.10, pages 79-104 (The Humana Press, Inc.1992)を参照)。モノクローナル抗体は、抗体の特定の性質(例えば、重鎖または軽鎖のアイソタイプ、結合特異性など)に基づいて選択された適切なリガンドを用いて、アフィニティークロマトグラフィーで精製することもできる。固体支持体に固定された好適なリガンドの例として、プロテインA、プロテインG、抗定常領域(anticonstant region)(軽鎖または重鎖)抗体、抗イディオタイプ抗体、およびTGF−β結合タンパク質、ならびにそれらの断片および変異体が挙げられる。
【0094】
[0100]本発明の抗体は、ヒトモノクローナル抗体であってもよい。ヒトモノクローナル抗体は、当業者になじみのある技法をいくつでも用いて製造することができる。そのような方法として、ヒト末梢血細胞(例えば、Bリンパ球を含む)のEpstein Barrウイルス(EBV)形質転換、ヒトB細胞のインビトロ免疫化、挿入されたヒト免疫グロブリン遺伝子を保有する免疫化遺伝子導入マウスに由来する膵臓細胞の融合、ヒト免疫グロブリンV領域ファージライブラリからの単離、ならびに他当該分野で知られるとおりの手順および本明細書の記載に基づく手順が挙げられるが、それらに限定されない。例えば、ヒトモノクローナル抗体は、抗原性誘発に反応してヒト抗体を特異的に産生するように遺伝子操作された遺伝子導入マウスから得ることができる。遺伝子導入マウスからヒト抗体を得る方法は、例えば、以下に記載される:Green et al., Nature Genet. 7:13, 1994; Lonberg et al., Nature 368:856, 1994; Taylor et al., Int. Immun. 6:579, 1994; 米国特許第5,877,397号; Bruggemann et al., 1997 Curr. Opin. Biotechnol. 8:455-58; Jakobovits et al., 1995 Ann. N. Y Acad. Sci. 764:525-35。この技法では、ヒト重鎖および軽鎖の遺伝子座の要素を、内在性の重鎖および軽鎖の遺伝子座が選択的に破壊されている胚性幹細胞株に由来するマウス系統に導入する(Bruggemann et al., Curr. Opin. Biotechnol. 8:455-58 (1997)も参照)。例えば、ヒト免疫グロブリン導入遺伝子は、ミニ遺伝子構築物であってもよいし、酵母菌人工染色体の導入遺伝子座(transloci)でもよく、マウスリンパ組織でB細胞特異的DNA再配列および高頻度突然変異を起こすものである。ヒトモノクローナル抗体は、遺伝子導入マウスを免疫化し、このマウスがWISEに特異的なヒト抗体を産生することで、得ることができる。免疫化した遺伝子導入マウスのリンパ球を用いて、本明細書に記載の方法に従ってヒト抗体分泌ハイブリドーマを産生することができる。ヒト抗体を含有するポリクローナル血清は、免疫化動物の血液からも得ることができる。
【0095】
[0101]本発明のヒト抗体を製造する別の方法として、ヒト末梢血細胞をEBV形質転換により不死化することが挙げられる。例えば、米国特許第4,464,456号を参照。WISEに特異的に結合するモノクローナル抗体を産生するそうした不死化B細胞株(またはリンパ芽球様細胞株)は、本明細書に提供されるとおりの免疫検出法(例えば、ELISA)により同定し、次いで標準的なクローニング技術により単離することができる。抗WISE抗体を産生するリンパ芽球様細胞株の安定性は、当該分野で既知の方法に従って、形質転換細胞株をマウス細胞腫と融合してマウス−ヒト雑種細胞株を製造することにより改善することができる(例えば、Glasky et al., Hybridoma 8:377-89 (1989)を参照)。ヒトモノクローナル抗体を製造するさらに別の方法として、インビトロ免疫化がある。この方法は、ヒト膵臓B細胞をヒトWISEで刺激し、続いて刺激されたB細胞を異種雑種(heterohybrid)融合パートナーと融合することを含む。例えば、Boerner et al., 1991 J. Immunol. 147:86-95を参照。
【0096】
[0102]特定の態様では、抗ヒトWISE抗体を産生するB細胞を選択して、このB細胞から、当該分野で既知の分子生物学的技法(WO92/02551;米国特許第5,627,052号; Babcook et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:7843-48 (1996))および本明細書に記載されるそのような技法に従って、軽鎖および重鎖の可変領域をクローン化する。免疫化動物由来のB細胞は、脾臓、リンパ節、または末梢血試料から、WISEに特異的に結合する抗体を産生する細胞を選択することで単離されたものであってもよい。B細胞は、ヒトの、例えば、末梢血試料から単離されたものであってもよい。所望の特異性を持つ抗体を産生する単一種のB細胞を検出する方法は、当該分野で周知であり、例えば、プラーク形成、蛍光標識細胞分取、インビトロ刺激とそれに続く特異的抗体の検出などによって行われる。特異的抗体産生B細胞の選択法として、例えば、B細胞の単一細胞懸濁液をヒトWISE含有軟寒天で調製することが挙げられる。B細胞が産生した特異的抗体と抗原の結合は、複合体の形成をもたらし、免疫沈降物として目視可能になる。所望の抗体を産生するB細胞を選択した後、当該分野に既知の方法および本明細書に記載の方法に従って、DNAまたはmRNAを単離および増幅することで、特異的抗体遺伝子をクローン化することができる。
【0097】
[0103]本発明の抗体を得るさらなる方法は、ファージディスプレイによるものである。例えば、Winter et al., 1994 Annu. Rev. Immunol. 12:433-55; Burton et al., 1994 Adv. Immunol. 57:191-280を参照。TGF−β結合タンパク質またはその変異体もしくは断片に特異的に結合するIg断片(Fab、Fv、sFv、またはその多量体)を選択するためのスクリーニングが可能になるファージベクター中で、ヒトまたはマウスの免疫グロブリン可変領域遺伝子コンビナトリアルライブラリーを作成してもよい。例えば、米国特許第5,223,409号;Huse et al., 1989 Science 246:1275-81; Sastry et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:5728-32 (1989); Alting-Mees et al., Strategies in Molecular Biology 3:1-9 (1990); Kang et al., 1991 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:4363-66; Hoogenboom et al., 1992 J. Molec. Biol. 227:381-388; Schlebusch et al., 1997 Hybridoma 16:47-52、ならびにそれらに記載される参考文献を参照。例えば、Ig可変領域断片をコードするポリヌクレオチド配列を複数含有するライブラリーを、ファージコートタンパク質をコードする配列とともにインフレームで、糸状バクテリオファージ(M13またはその変異体など)のゲノム中に挿入することができる。融合タンパク質は、コートタンパク質と軽鎖可変領域ドメインおよび/または重鎖可変領域ドメインとの融合物であってもよい。特定の態様に従って、免疫グロブリンFab断片を、ファージ粒子上にディスプレイさせることもできる(例えば、米国特許第5,698,426号を参照)。
【0098】
[0104]重鎖および軽鎖の免疫グロブリンcDNA発現ライブラリーは、例えば、ラムダImmunoZap TM(H)ベクターおよびラムダImmunoZap TM(L)ベクター(Stratagene, La Jolla, Calif.)を用いて、ラムダファージ内に調製することもできる。簡単にいうと、B細胞集団からmRNAを単離し、そして、ラムダImmunoZap(H)ベクターおよびラムダImmunoZap(L)ベクター中に重鎖および軽鎖の免疫グロブリンcDNA発現ライブラリーを作成するのに使用する。これらのベクターを個別にスクリーニングするか同時発現させることで、Fab断片または抗体を形成させることができる(Huse et al., 既出;同じくSastry et al., 既出を参照)。陽性プラークは、続いて、大腸菌由来のモノクローナル抗体断片を高レベルで発現できる非溶解性プラスミドに変換することができる。
【0099】
[0105]ある態様では、ハイブリドーマにおいて、目的のモノクローナル抗体を発現する遺伝子の可変領域を、ヌクレオチドプライマーを用いて増幅する。こうしたプライマーは、当業者が合成することも可能であるし、販売供給元から購入することも可能である。(例えば、Stratagene (La Jolla, Calif.)を参照、この供給元は、プライマーでもとりわけVHa、VHb、VHc、VHd、CHI、VLおよびCL領域用プライマーをはじめとする、マウスおよびヒト可変領域用プライマーを販売する。)こうしたプライマーを用いて、重鎖または軽鎖の可変領域を増幅することができ、増幅された領域は、次いで、それぞれImmunoZAP TM HまたはImmunoZAP TM(Stratagene)などのベクターに挿入することができる。これらのベクターを、大腸菌、酵母菌、または哺乳類ベースの発現系に導入することができる。こうした方法を用いることで、融合したVHドメインとVLドメインを含む単鎖タンパク質を大量に製造することができる(Bird et al., Science 242:423-426, 1988を参照)。
【0100】
[0106]上記の免疫化技法またはその他の技法のいずれかを用いて本発明による抗体を産生する細胞がいったん得られると、本明細書に記載のとおりの標準的な手順に従って、その細胞からDNAまたはmRNAを単離および増幅することにより、特定の抗体遺伝子をクローン化することができる。この遺伝子から産生される抗体は、配列決定することができ、そして同定されたCDRおよびCDRをコードするDNAを、本発明に従って他の抗体を作成するために既に記載されたとおりに操作することができる。
【0101】
[0107]好ましくは、結合剤はWISEに特異的に結合する。全ての結合剤および結合アッセイについてと同様、結合剤が治療上有効かつ適切であるためにこの結合剤が検出可能なほど結合すべきではない様々な分子部分は、列挙するにしては労力を消耗するばかりで実用的ではないことが、当業者は認識するだろう。従って、本明細書に開示される結合剤について、「特異的に結合する」という用語は、関連しない対照タンパク質に結合するときよりも高い親和性で、結合剤がWISE、好ましくはヒトWISEに結合する能力を示す。好ましくは、対照タンパク質は、ニワトリ卵白リゾチームである。好ましくは、結合剤は、対照タンパク質に対する親和性より少なくとも50、100、250、500、1000、または10,000倍大きい親和性でWISEに結合する。結合剤は、ヒトWISEに対する親和性が1×10−7M又はそれ未満、1×10−8M又はそれ未満、1×10−9M又はそれ未満、1×10−10M又はそれ未満、1×10−11M又はそれ未満、または1×10−12M又はそれ未満であってもよい。
【0102】
[0108]親和性は、親和性ELISAアッセイで求めることができる。特定の態様において、親和性は、BIAcoreアッセイで求めることができる。特定の態様において、親和性は、動力学的方法で求めることができる。特定の態様において、親和性は、平衡/溶液法で求めることができる。そうした方法は、本明細書にさらに詳細に記載されるか、当該分野で知られている。
【0103】
[0109]本発明のWISE結合剤は、好ましくは、本明細書に記載の細胞アッセイおよび/または本明細書に記載のインビボアッセイでWISE機能を調節し、および/または本明細書に記載のエピトープの1種以上に結合し、および/または本明細書に記載の抗体のうちの1つの結合を交差阻止し、および/または本明細書に記載の抗体のうちの1つによりWISEとの結合が交差阻止される。したがって、そのような結合剤は、本明細書に記載のアッセイを用いて同定することが可能である。
【0104】
[0110]特定の態様において、結合剤は、最初に、本明細書に提示されるエピトープの1種以上と結合、および/または本明細書に記載の細胞アッセイおよび/またはインビボアッセイで中和、および/または本明細書に記載の抗体を交差阻止、および/または本明細書に記載の抗体のうちの1つによりWISEとの結合が交差阻止される抗体を同定することで製造される。次いで、こうした抗体のCDR領域を適切な生体適合性フレームワークに挿入して、WISE結合剤を製造する。結合剤の非CDR部分は、アミノ酸で構成されてもよいし、非タンパク質分子であってもよい。本明細書に記載のアッセイにより、結合剤の特徴づけが可能になる。好ましくは、本発明の結合剤は、本明細書に記載のとおりの抗体である。
【0105】
[0111]抗体など、いくつかのタンパク質は、宿主細胞で発現してから分泌されるまでに様々な翻訳後修飾を受け得ることは、当業者に理解されるであろう。そうした修飾の種類や度合いは、タンパク質を発現させるのに用いた宿主細胞株ならびに培養条件に依存することが多い。そのような修飾として、グリコシル化、メチオニンまたはトリプトファン酸化、ジケトピペリジン形成、アスパラギン酸異性化、およびアスパラギンアミド分解での変化が挙げられる。よくある修飾は、カルボキシペプチダーゼの作用によるカルボキシ末端の塩基性残基(リシンまたはアルギニンなど)の欠失である(Harris, RJ. Journal of Chromatography 705:129-134, 1995に記載される)。タンパク質は、いったん発現して処理されると、「成熟」型になる。したがって、本発明は、本発明のDNAの発現からもたらされる成熟抗体を含むことが理解される。
【0106】
[0112]本明細書に記載の抗体は、ヒトWISEの中のそのタンパク質のインビボ活性に重要な領域に結合し、それによりWISEの活性を阻害する。抗体とWISEの結合は、腎機能と関連した生体マーカーの変化、例えば、アルブミンの尿中レベルまたは24時間の総尿中タンパク質排泄量、血清クレアチニン、またはクレアチニンクリアランス速度と相関し得る。本発明のCDRを含む抗体およびその断片を構築および発現する方法は、当業者に知られている。
【0107】
[0113]オリゴペプチドまたはポリペプチドは、それが、表1に記載のCDRの少なくとも1種;および/または本明細書に記載の抗体の少なくとも1種とWISEのループ2との結合を交差阻止し、および/または本明細書に記載の抗体の少なくとも1種によりWISEと結合するのが交差阻止されるCDR;および/または細胞アッセイでWISEの阻害作用を遮断または細胞アッセイでWISEの作用を活性化することが可能なWISE結合剤(すなわちWISE中和化結合剤)のCDR;および/またはシスチンノットドメインエピトープに結合するWISE結合剤のCDRと、少なくとも75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を有する限り、本発明の範囲内にある。
【0108】
[0114]WISE結合剤ポリペプチドおよび抗体は、それらが、WISEのループ2(例えば、配列番号9)に結合し、かつWISEのループ2に結合する抗体の少なくとも1種の結合を交差阻止し、および/または本明細書に記載の抗体の少なくとも1種によりWISEループ2との結合が交差阻止される抗体;および/または細胞アッセイでWISEの阻害作用を遮断することが可能な抗体(すなわちWISE中和化結合剤);および/またはシスチンノットドメインエピトープに結合する抗体;の少なくとも1種の可変領域と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を有する限り、本発明の範囲内にある。本発明は、単離された抗体またはその断片を企図し、ここで当該WISE抗体またはその断片は、以下のパラメータ:組織損傷およびそのマーカー、シリウスレッド染色またはコラーゲン産生、筋線維芽細胞マーカー(aSMAやFSP−1など)の発現、オステオポンチン発現、タンパク尿、の少なくとも1つを減少させることができ片、および/または細胞アッセイでWISE活性を変化させることができる。本明細書に使用される場合、活性の変更が、活性化または阻害を含むことが当業者にも理解されるだろう。
【0109】
[0115]WISE結合剤をコードするポリヌクレオチドは、それが、抗体Ab−AA、Ab−AB、およびAb−ACのうち少なくとも1種の可変領域をコードし、コードされたWISE結合剤が本明細書に記載の抗体の少なくとも1種の結合を交差阻止するポリヌクレオチド;および/または細胞アッセイでWISEの阻害作用を遮断することができるポリヌクレオチド(すなわちWISE中和化結合剤);および/またはシスチンノットドメインエピトープと結合するポリヌクレオチドと、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるポリヌクレオチド配列を有する限り、本発明の範囲内にある。
【0110】
[0116]結合剤(抗体または結合パートナーなど)の親和性、ならびに結合剤(抗体など)が結合を阻害する度合いは、従来技法、例えば、Scatchard et al.(Ann. N.Y. Acad. Sci. 51:660-672 (1949))に記載のもの、または表面プラズモン共鳴(SPR;BIAcore, Biosensor, Piscataway, N.J.)を用いて、当業者により決定することができる。表面プラズモン共鳴については、標的分子を固相に固定し、フローセルに沿って移動する移動相に含まれるリガンドに曝露させる。固定された標的にリガンドが結合すると、屈折率が局所的に変化し、SPR角度の変化をもたらす。この変化は、反射光の強度変化を検出することで、リアルタイムで観測することができる。SPR信号の変化率を分析することで、結合反応の会合相と解離相について見かけの速度定数を求めることができる。これらの値の比から、見かけの平衡定数(親和性)がわかる(例えば、Wolff et al., Canser Res. 53:2560-65 (1993)を参照)。
【0111】
[0117]本発明による抗体は、どの免疫グロブリン(immunoglobin)のクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、またはIgA)に属してもよい。抗体は、動物、例えば、家禽(例えば、ニワトリ)および哺乳類から得られるものでも、それらに由来するものでもよい。哺乳類として、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、その他齧歯類、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ラクダ、ヒト、およびその他霊長類が挙げられるが、これらに限定されない。抗体は、内部移行する抗体でもよい。抗体の製造は、米国特許出願公開第2004/0146888A1に概要が記載される。
【0112】
特徴づけアッセイ
[0118]本明細書に記載の本発明による抗体を製造する方法は、特定のループ2WISE抗体CDRを操作して新たなフレームワークおよび/または定常領域に入れることを含み、適切なアッセイ(すなわち、WISEに対する結合親和性を決定するアッセイ;交差阻止アッセイ;Biacoreを利用した「ヒトWISEペプチドエピトープ競合結合アッセイ」;MC3T3−E1細胞を利用したアッセイ;インビボアッセイ)を利用して所望の抗体または結合剤を選択することができる。
【0113】
エピトープ結合アッセイ
[0119]未処理のヒトWISEは、シグナルペプチドを伴う206個のアミノ酸であり、成熟型のヒトWISEはシスチンノットモチーフを含有する183個のアミノ酸の糖タンパク質である。重要なアミノ酸残基、特に複数のシステインが保存されるために、WISEは、既に記載したシスチンノットタンパク質と類似の構造を有すると思われる。この構造には、シスチンノットモチーフの他に、ループ1、ループ2、およびループ3と指定される3つのループが含まれる。本明細書に使用される場合、これらのループの位置は、ループ1が配列番号2のおおよそアミノ酸75〜104の位置;ループ2がおおよそアミノ酸105〜132の位置;および、ループ3が配列番号2のおおよそアミノ酸134〜170の位置として定義される。おおよその位置で示されるのは、相対一が、指定した位置からカルボキシ末端側又はアミノ末端側にプラス又はマイナス3アミノ酸であることが可能であることを意味するものとする。
【0114】
[0120]ヒトWISEをタンパク質分解して、断片を製造することができる。簡単に言うと、トリプシン、Asp−N、およびLys−Cをはじめとする異なるプロテアーゼを用いて、切断部位および大きさの異なる断片を生成する。様々なヒトWISEペプチドについて配列および質量を求める。抗体の保護について評価を行うことで、切断部位マスキング(clipped site masking)およびペプチドシフティングを含むタンパク質分解の起こりやすさへの効果を決定する。最後に、BIAcoreを利用した「ヒトWISEペプチドエピトープ競合アッセイ」を行う。
【0115】
[0121]1つのグループの抗体は、BIAcoreを利用した「ヒトWISEペプチドエピトープ競合結合アッセイ」から明らかなとおり、特定のエピトープに対して特定の結合パターンを示す。簡単に言うと、抗体を、抗体のエピトープ結合部位が飽和する濃度の試験しようとするエピトープとともに予備温置する。次いで、抗体を、チップ表面に固定したWISEに曝す。適切な温置と洗浄手順の後、競合結合パターンが確立される。
【0116】
交差阻止アッセイ
[0122]「交差阻止」、「交差阻止される」、および「交差阻止する」という用語は本明細書では相互交換可能に用いられて、抗体またはその他の結合剤がWISEに対する他の抗体または結合剤の結合を妨げる能力を意味する。
【0117】
[0123]抗体または他の結合剤がWISEに対する他者の結合を妨げることができる度合い、すなわち抗体または他の結合剤が本発明に従って交差阻止すると言えるかどうかは、競合結合アッセイで決定することができる。特に好適な定量アッセイの1つは、表面プラズモン共鳴技術を用いて相互作用の度合いを測定することができるBiacoreの装置を用いる。別の好適な定量的交差阻止アッセイとして、WISEへの結合に関して抗体間または他の結合剤との間の競合を測定するELISAを利用したアプローチを用いるアッセイがある。
【0118】
[0124]ある種の交差阻止アッセイは、WISEがその受容体であるLRP−5およびLRP−6に結合するのを阻害するペプチドを同定するのに用いるのに適したものであることも考慮に入っている。例えば、ループ2ペプチドまたはシステインジスルフィド結合により環化したループ2ペプチドは、WISEがその受容体に結合するのを阻害することが示されている。
【0119】
[0125]「交差阻止する」に関連した用語は、完全な遮断として理解されることは意味しておらず、むしろ立体的な干渉またはその他の干渉のために試験分子も同じく結合する領域での結合がそれまでよりも減少し、その結果試験分子の結合量が減少することを意味すると理解される技術用語であることは、当業者に理解されよう。したがって、試験抗体の標的に対する結合が検出可能なほど減少する場合は、交差阻止していると言えることが理解される。この検出可能なほどの結合の減少は、アッセイの感度に依存して、15%、10%、またはそれより小さくても可能である。
【0120】
Biacore交差阻止アッセイ
[0126]本発明に従って抗体またはその他の結合剤が交差阻止するかどうか、または交差阻止する能力があるかどうかを決定するのに適したBiacoreアッセイについて、以下に一般論を記載する。便宜上、ある2種の抗体の場合について述べるが、本明細書に記載のWISE結合剤のどれでもこのアッセイを行えることは明らかである。Biacore装置(例えば、Biacore3000)は、製造者の推奨に従って操作する。
【0121】
[0127]つまり、1回の交差阻止アッセイにおいて、標準的なアミンカップリング反応を用いてWISEをCM5Biacoreチップに結合させて、WISE被覆した表面を作る。代表的には200〜800共鳴単位のWISEをチップに結合させる(容易に測定できるレベルの結合を与えるが用いる試験試薬の濃度によりすぐに飽和し得る量)。
【0122】
[0128]相互の交差阻止能力について評価を行おうとする2種の抗体(A*およびB*と名付ける)を、結合部位のモル比を1対1にして好適な緩衝液に混合し、試験液を作る。結合部位を基準に濃度を計算する場合、抗体分子量は、抗体の総分子量をその抗体のWISE結合部位の個数で割ったものであると仮定する。
【0123】
[0129]試験混合物中の各抗体の濃度は、Biacoreチップに固定されたWISE分子のその抗体の結合部位がすぐに飽和するのに十分なほど高くなければならない。混合物中の抗体は、同じモル濃度にあり(結合基準で)、その濃度は代表的には1.00から1.5マイクロモル濃度である(結合部位基準で)。
【0124】
[0130]抗体A*のみおよび抗体B*のみを含有する別々の溶液も調製する。これらの溶液中の抗体A*および抗体B*は、試験混合物と同じ緩衝液に同じ濃度で存在しなければならない。
【0125】
[0131]試験混合物を、WISE被覆したBiacoreチップ上を通過させ、総結合量を記録する。次いで、チップに結合したWISEを損傷させることなく結合抗体を除去するようなやり方でチップを処理する。そのやり方は代表的にはチップを30mMのHClで60秒間処理するものである。
【0126】
[0132]次いで、抗体A*のみの溶液を、WISE被覆した表面上を通過させ、結合量を記録する。チップを再び処理して、チップに結合したWISEを損傷させることなく結合抗体を全て除去する。
【0127】
[0133]次いで、抗体B*のみの溶液を、WISE被覆した表面上を通過させ、結合量を記録する。
[0134]次に、抗体A*と抗体B*の混合物の最大理論結合量を計算する。これは、それぞれ単独でWISE表面上を通過させた場合の各抗体の結合量の合計である。もし、混合物で実際に記録された結合量が最大理論量よりも少なければ、この2種の抗体は互いに交差阻止している。
【0128】
[0135]つまり、一般に、本発明による交差阻止する抗体またはその他の結合剤とは、上記のBiacore交差阻止アッセイにおいてWISEに結合するものであり、当該アッセイの間に、そして本発明の第二の抗体またはその他の結合剤の存在下で、記録された結合が、2種の抗体または結合剤の組み合わせの最大理論結合量(上記で定義されるとおりとして)の80%から0.1%(例えば80%から4%)の間、厳密には当該最大理論結合量の75%から0.1%(例えば75%から4%)の間、より厳密には当該最大理論結合量の70%から0.1%(例えば70%から4%)の間、であるものである。
【0129】
[0136]上記のBiacoreアッセイは、抗体またはその他の結合剤が本発明に従って互いに交差阻止するかどうかを決定するために用いられるものである。ごくまれに、特定の抗体またはその他の結合剤が、アミン結合を介してCM5 BiacoreチップとカップリングしたWISEに結合しないことがある(この状況は、通常、WISEの関連する結合部位がチップとのカップリングによりマスキングされているか破壊されている場合に生じる)。そのような場合、交差阻止は、WISEに標識を付けたもの、例えば、N末端His標識化WISEを用いて決定することができる。この特別な形式では、抗His抗体をBiacoreチップとカップリングさせ、それからHis標識化WISEをチップ表面に流して抗His抗体に捕捉させる。交差阻止分析は、基本的に上記のとおり行うが、ただしチップ再生サイクルを行うたびに、新しいHis標識化WISEを抗His抗体で被覆された表面に装填し直す。N末端His標識化WISEを用いるこの例の他に、C末端His標識化WISEを代わりに用いることもできる。そのうえさらに、様々なその他の標識と標識結合タンパク質の当該分野で既知の組み合わせ(例えばHA標識と抗HA抗体、FLAG標識と抗FLAG抗体、ビオチン標識とストレプトアビジン)を、このような交差阻止分析に用いることができる。
【0130】
Elisaを利用した交差阻止アッセイ
[0137]本発明に従って抗WISE抗体またはその他のWISE結合剤が交差阻止するかどうか、または交差阻止する能力があるかどうかを決定するためのELISAアッセイについて、以下に一般論を記載する。便宜上、ある2種の抗体の場合について述べるが、本明細書に記載のWISE結合剤のどれでもこのアッセイを行えることは明らかである。
【0131】
[0138]このアッセイの一般原理として、まずELISAプレートの各ウェルを抗WISE抗体で被覆する。交差阻止する可能性のある第二の抗WISE抗体を過剰量で溶液に添加する(すなわちELISAプレートには固定されていない)。次いで、限定された量のWISEを各ウェルに添加する。ウェルを被覆する被覆抗体と溶液中の抗体は、限られた個数のWISE分子との結合を巡って競合する。プレートを洗浄して、被覆抗体と結合していないWISEを除去し、そして、溶液相の第二の抗体および溶液相の第二の抗体とWISEが形成したどのような複合体もまた除去する。それから、適切なWISE検出試薬を用いて、結合したWISEの量を測定する。被覆抗体を交差阻止することができる溶液中の抗体は、被覆抗体が結合できるWISE分子の個数を、溶液相の第二の抗体が存在しない場合に結合できる個数よりも減らすことができる。
【0132】
[0139]このアッセイを、Ab−AA、Ab−AC、およびAb−AEについて以下により詳細に記載する。例えば、Ab−AAを固定される抗体に選んだ場合、Ab−AAでELISAプレートの各ウェルを被覆し、その後プレートを好適なブロッキング溶液でブロックし、続いて加える試薬の非特異的な結合を最小限にする。次いで、Ab−ACのWISE結合部位の1ウェルあたりのモル数がELISAプレートを被覆する間に用いたAb−AAのWISE結合部位の1ウェルあたりのモル数の少なくとも10倍であるように、過剰量のAb−ACをELISAプレートに添加する。
【0133】
[0140]次いで、1ウェルあたりのWISEのモル数が各ウェルを被覆するために用いたAb−AAのWISE結合部位のモル数の少なくとも25分の1であるようにWISEを添加する。適切なインキュベーション時間後、ELISAプレートを洗浄し、WISE検出試薬を添加して、ウェルを被覆する抗WISE抗体(この場合はAb−AA)と特異的に結合したWISEの量を測定する。このアッセイについてのバックグラウンド信号は、被覆抗体(この場合はAb−AA)、溶液相の第二の抗体(この場合はAb−AB)、WISE緩衝液のみ(すなわちWISEなし)、およびWISE検出試薬を用いたウェルで得られる信号として定義される。このアッセイについての陽性対照信号は、被覆抗体(この場合はAb−AA)、溶液相の第二の抗体の緩衝液のみ(すなわち溶液相の第二の抗体なし)、WISE、およびWISE検出試薬を用いたウェルで得られる信号として定義される。ELISAアッセイは、陽性対照信号がバックグラウンド信号の少なくとも3倍となるような様式で行う必要がある。
【0134】
[0141]被覆抗体としてどの抗体を使用するかおよび第二(競合)抗体としてどの抗体を使用するかの選択に由来するどのような人為的影響(例えばAb−AAとAb−ABの間で明らかに異なるWISEへの親和性)も避けるため、交差阻止アッセイは、2種類の形式で行う必要がある:1)形式1は、第一抗体がELISAプレートを被覆する抗体であり、第二抗体が溶液に存在する競合抗体であるもの、および2)形式2は、第一抗体と第二抗体が、被覆と溶液で入れ替わっているもの。
【0135】
細胞を利用した中和アッセイ
[0142]MC3T3−E1 SuperTopFlash(STF)レポーター細胞を用いて、WISEタンパク質がWnt信号伝達を調節できるかどうかを決定する。MC3T3−E1 STF細胞でのTCF依存性信号伝達の活性化は、培養培地を分化培地に切り替えることで誘導される内在性Wnt信号伝達か、Wnt3aなどの外来性Wntを添加することによるかのいずれかで誘発することができる。大腸菌か哺乳類細胞に由来する組換えWISEタンパク質は、MC3T3−E1 STF細胞中のWnt信号伝達を用量依存的に阻害することができる。
【0136】
[0143]ルシフェラーゼアッセイ:バイアル1本分のMC3T3−E1/STF細胞を培養フラスコ中の増殖培地に蒔く。細胞が集密状態になったらトリプシン処理し、増殖培地に含まれた状態の細胞を96ウェルプレートの各ウェルに蒔く。翌日、増殖培地を全て除去して、新たに調製した分化培地100μlに置き換える。
【0137】
[0144]それから4日間、毎日、分化培地の半分(50μl)を、新たに調製した分化培地で置き換える。5日間分化させた後、培地を全て体積100μlの新たな分化培地の試験試料に置き換える。次いでプレートを24時間インキュベートしてから、ルシフェラーゼ信号を測定する。ルシフェラーゼ信号は、試験プレートから培地を除去して室温で平衡化させてある1×溶解緩衝液20μlを添加した上で測定する。プレートを密封し、室温で30分間振動させ、ルシフェラーゼアッセイ試薬100μlを各ウェルに添加して、Luminometer(LMAX、Molecular Device)を用いて取扱説明書に従って信号を捕捉する。
【0138】
インビボ中和アッセイ
[0145]WISEを中和して治療効果をもたらすことができるWISE結合剤を同定する目的で、腎臓保護または肺保護と関連した、またはそれに由来する様々なパラメータの増加を、WISE結合剤のインビボ試験からの出力として測定することができる。そのようなパラメータとして、様々な腎臓/肺マーカーおよび腎臓/肺健常性の組織形態計測マーカーが挙げられる。WISE中和結合剤は、腎臓/肺保護の刺激に関連した、またはそれに由来するいずれかのパラメータで、ビヒクル処理した動物と比較して統計上有意な増加を引き起こす能力があるものとして定義される。そのようなインビボ試験は、任意の好適な哺乳類(例えばマウス、ラット、サル)で行うことができる。
【0139】
治療薬の処方および送達
[0146]上記の結合剤のうちの1種、例えば本明細書に記載のヒトWISEに対する抗体のうちの少なくとも1種などを、薬学的または生理学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤とともに含む薬学的組成物を提供する。
【0140】
[0147]様々な治療投与計画(例えば、皮下、経口、非経口、静脈内、鼻腔内、および筋肉内での投与およびそのための処方など)での、本明細書に記載の特定組成物を使用するのに好適な用量および治療投与計画の開発は、当該分野で知られている。そのいくつかについて、一般的な例示目的で簡単に説明する。
【0141】
[0148]特定の用途において、本明細書に記載の薬学的組成物は、経口投与で動物に送達されてもよい。そのため、こうした組成物は、不活性希釈剤もしくは吸収可能な食用担体と処方することもできるし、硬殻もしくは軟殻ゼラチンカプセルに封入することもできるし、圧縮して錠剤にすることもできるし、日常の食事の食品に直接組み込むこともできる。
【0142】
[0149]特定の状況において、本明細書に記載の薬学的組成物は、皮下、非経口、静脈内、筋肉内、ときには腹腔内から送達することが望ましい。そうした手法は、当業者に周知であり、手法のいくつかは、例えば、米国特許第5,543,158号、米国特許第5,641,515号、および米国特許第5,399,363号にさらに記載される。特定の態様において、活性化合物を遊離塩基または薬理学的に許容される塩として含む溶液を、界面活性剤(ヒドロキシプロピルセルロースなど)と適切に混合した水で調製することができる。グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物、ならびに油で分散液も調製できる。貯蔵および使用の通常条件下、これらの製剤は一般に微生物の繁殖を防ぐための保存料を含有する。
【0143】
[0150]注射用途に適した薬学的形態の例として、滅菌水溶液または分散液および滅菌注射用溶液または分散液の即時調製用滅菌粉末が挙げられる(例えば、米国特許第5,466,468号を参照)。全ての場合において、この形態は、滅菌されていなければならず、かつ容易に注射可能であるぐらいに流動性がなければならない。この形態は、製造および貯蔵の条件下で安定でなければならず、かつ微生物(細菌および真菌など)の混入活動から保護されなければならない。担体としては、溶媒または分散媒体(例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、およびポリエチレングリコールなど)を含有するもの)、それらの適切な混合物、および/または植物油が可能である。適切な流動性は、被覆剤(例えば、レシチンなど)を用いることで、分散液の場合は要求される粒子の大きさを維持することで、および/または界面活性剤を使用することで、維持することができる。微生物の活動を防ぐことは、様々な抗細菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン類、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなど)により促進することができる。多くの場合、等張化剤、例えば、糖類または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射組成物の吸収を延ばすことは、吸収を遅らせる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)を組成物に用いることで可能になる。
【0144】
[0151]1態様において、水溶液で非経口投与する場合、この水溶液は必要であれば適切に緩衝化されているべきであり、最初に液体希釈剤が十分な生理食塩水またはグルコースで等張化される。こうした特定の水溶液は、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、および腹腔内投与に特に適している。これに関連して、使用可能な滅菌水性媒体は、本発明の開示に照らして当業者に明らかである。例えば、1回の投薬量を等張性NaCl溶液1mlに溶解し、これを皮下点適用液1000mlに添加するか、輸液予定部位に注射するかのいずれかを行うことができる(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 15th ed., pp. 1035-1038 and 1570-1580を参照)。治療を受ける対象の状態に依存して投薬量を変更することも必要になるだろう。そのうえ、ヒトに投与する場合、当然のことながら製剤は、FDAの生物学的基準局(FDA Office of Biologies standards)が要求するとおりの無菌性、発熱性、および一般的な安全性ならびに純度の基準を満たすことが好ましい。
【0145】
[0152]本発明の別の態様において、本明細書に開示される組成物は、中性すなわち塩の形で処方されてもよい。薬学的に許容される塩の例として、無機酸(例えば、塩酸およびリン酸など)または有機酸(酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸など)が付加した酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基との間で形成される)が挙げられる。遊離カルボキシ基で形成される塩は、無機塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、および水酸化鉄など)および有機塩基(イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなど)によるものも可能である。処方に際しては、溶液を、投薬量処方(dosage formulation)に適合する方法で、治療上有効な量投与する。
【0146】
[0153]担体はさらに、溶媒、分散媒体、ビヒクル、被覆剤、希釈剤、抗細菌剤および抗真菌剤、等張化剤および吸収遅延剤、緩衝液、担体溶液、懸濁液、コロイドなどについてありとあらゆるものを含むことができる。薬学的活性物質用のそうした媒体および薬剤の使用は当該分野で知られている。従来の媒体または薬剤のどれでも活性成分と不適合である場合を除いて、それを治療用組成物に使用することが企図される。補充活性成分も組成物に組み込むことができる。「薬学的に許容される」という語句は、ヒトに投与された場合にアレルギー反応または同様な望ましくない反応を引き起こさない分子実体および組成物を示す。
【0147】
[0154]特定の態様において、本発明の組成物を好適な宿主細胞/生命体に導入するために、リポソーム、ナノカプセル、微粒子、脂質粒子、小胞などが用いられる。詳細には、本発明の組成物は、脂質粒子、リポソーム、小胞、ナノ球体、またはナノ粒子などのいずれかに封入されて送達されるように処方することができる。あるいは、本発明の組成物は、共有結合または非共有結合で、そうした担体ビヒクルに結合させることができる。
【0148】
[0155]有望な薬物担体としてのリポソームおよびリポソーム様製剤の形成および使用は当該分野で一般的に知られている(例えば、Lasic, Trends Biotechnol. 16(7):307-21, 1998; Takakura, Nippon Rinsho 56(3):691-95, 1998; Chandran et al., Indian J. Exp. Biol. 35(8):801-09, 1997; Margalit, Crit. Rev. Ther. Drug Carrier Syst. 12(2-3):233-61, 1995;米国特許第5,567,434号;米国特許第5,552,157号;米国特許第5,565,213号;米国特許第5,738,868号、および米国特許第5,795,587号を参照、それぞれその全体が参照により特に本明細書に組み込まれる)。リポソームの使用は、全身送達後の自己免疫応答または許容できない毒性と関連するようには見えない。特定の態様において、リポソームは、水性媒体に分散したリン脂質から形成され、多層同心性二重膜小胞(多重膜小胞(MLV)とも名付けられている)を自発的に形成する。
【0149】
[0156]あるいは、他の態様において、本発明は、本発明の組成物の薬学的に許容されるナノカプセル処方を提供する。ナノカプセルは、一般に、安定した再現可能な方法で化合物を捕捉することができる(例えば、Quintanar-Guerrero et al., Drug Dev. Ind. Pharm. 24(12):1113-28, 1998を参照)。細胞内での重合体の過負荷による副作用を避けるため、そのような超微粒子(約0.1μmの大きさ)は、インビボで分解され得るポリマーを用いて設計されてもよい。そのような粒子は、例えば、Couvreur et al., Crit. Rev. Ther. Drug Carrier Syst. 5(1):1-20, 1988; zur Muhlen et al., Eur. J. Pharm. Biopharm. 45(2):149-55, 1998; Zambaux et al., J Controlled Release 50(1-3):31-40, 1998;および米国特許第5,145,684号に記載のとおりに作ることができる。
【0150】
[0157]また、本発明の薬学的組成物は、そのような薬学的組成物の使用に関する使用説明書となる包装材料とともに容器に納められてもよい。一般に、そのような説明書には、試薬濃度に加えて、特定の態様において、薬学的組成物の再構築に必要となる賦形剤成分または希釈剤(例えば、水、生理食塩水、またはPBS)の相対量を説明する具体的な表現が含まれる。
【0151】
[0158]投与量は、0.01mg/kg〜200mg/kg(体重)の範囲であってよい。代表的な投薬量は、30mg/kg〜75mg/kgである。しかしながら、当業者に明らかなとおり、投与の量および頻度は、もちろん、治療しようとする症状の性質および重篤度、所望の反応、患者の状態などの要因に依存する。組成物は、たいてい、上記のとおり様々な手法で投与することができる。
【0152】
WISE結合剤を用いた治療法
[0159]「治療」とは、障害の病態が進行するのを防ぐこと、または障害の病態を変化させることを目的として行われる介入である。したがって、「治療」は療法的処置と予防的または防止的手段の両方を示す。治療を必要とする対象には、すでに障害を持っている対象だけでなく、障害が予防されるべき対象が含まれる。
【0153】
[0160]治療という目的に関して「哺乳類」は、哺乳類として分類される任意の動物を示す。そのような動物として、ヒト、家畜、動物園の動物、スポーツ用動物、およびペット、例えばイヌ、ウマ、ネコ、ウシなどが挙げられる。好ましくは、哺乳類はヒトである。
【0154】
[0161]腎障害または腎疾患の治療の文脈で用いられる場合、「治療上有効量」という語句は、腎臓の損傷もしくは変質を減少させる、または腎疾患に関連した症状(線維症および/またはタンパク尿など)の重篤度もしくは進行度を減少させる(すなわち「治療効果」をもたらす)、あるいは血清クレアチニンもしくはクレアチニン排出速度を用いて測定されるとおり腎機能を保全または改善する、治療上のまたは予防上のWISE抗体の量を意味する。線維症の治療の文脈で用いられる場合、「治療上有効量」という語句は、類線維腫要素(fibroid element)もしくはその前駆体を減少させる、および/または線維症疾患(例えば、糸球体性タンパク尿疾患)に関連した症状の重篤度もしくは進行度を減少させる(すなわち「治療効果」をもたらす)、治療上のまたは予防上のWISE抗体の量を意味する。
【0155】
[0162]1つの態様において、本発明の組成物は、腎機能不全を治療、縮小、および/または予防するのに有用であること企図する。そのような腎機能不全として、糸球体性タンパク尿疾患、末期の腎疾患、慢性腎疾患(糖尿病性腎症など)、移植関連の移植片機能不全、IgA腎障害、バーター症候群、ギテルマン症候群、腎結石症、腎アミロイドーシス、高血圧、原発性アルドステロン症、アジソン病;腎不全;糸球体腎炎および慢性糸球体腎炎;尿細管間質性腎炎;腎臓の嚢胞性障害ならびに異形成奇形(多嚢胞性疾患、腎異形成、および皮質または髄質嚢胞など);遺伝性多嚢胞性腎疾患(PRD)、例えば劣性遺伝性および常染色体優性遺伝性PRDなど;髄質嚢胞性疾患;海綿腎および尿細管形成異常;アルポート症候群;腎生理機能に影響を及ぼす非腎性癌(気管支原性肺腫瘍または脳底部腫瘍など);多発性骨髄腫;腎臓腺癌;転移性腎癌;さらには、摂取、注射、吸入、または吸収された任意の薬学的、化学的、または生物学的製剤により引き起こされる腎臓の任意の機能変化または形態変化を含む腎毒性障害;からなる群より選択されるものが挙げられる。一般的な腎毒性剤の広義の分類の中には、カルシニューリン阻害剤などの免疫抑制剤、重金属、全てのクラスの抗生物質、鎮痛薬、溶媒、シュウ酸症誘導剤、抗癌剤、除草剤および殺虫剤、植物由来物質および生物由来物質、ならびに抗てんかん薬が含まれるが、これらに限定されない。
【0156】
[0163]「線維症減少活性」という語句は、類線維腫形成を完全もしくは部分的に阻害する能力、または既存の線維症を除去もしくは減少させる能力を示す。したがって、1つの態様において、本発明の組成物は、線維症疾患を治療するのに有用であることを企図している。そのような線維症疾患として、病的線維症または瘢痕形成(心内膜硬化症を含む)、特発性間質性線維症、間質性肺線維症、筋周囲(perimuscular)線維症、シマー線維症(Symmers' fibrosis)、中心静脈周囲線維症、肝炎、皮膚線維腫、胆汁性肝硬変、アルコール性肝硬変、急性肺線維症、突発性肺線維症、急性呼吸促迫症候群、腎臓線維症/糸球体腎炎、腎臓線維症/糖尿病性腎症、強皮症/全身性、強皮症/局所、ケロイド、肥厚性瘢痕、重篤な関節癒着/関節炎、骨髄線維症、角膜瘢痕形成、嚢胞性線維症、筋ジストロフィー(デュシェンヌ型)、心線維症、筋線維症/網膜剥離、食堂狭窄、およびペイロニー病(payronles disease)が挙げられる。さらに外科手術によっても線維化障害が誘導または開始される可能があり、そのような線維化障害として、瘢痕修正/形成外科、緑内障、白内障線維症、角膜瘢痕形成、関節癒着、移植片対宿主病(例えば、移植患者において)、腱手術、神経絞扼、デュピュイトラン拘縮、OB/GYNでの癒着/線維症、骨盤癒着、硬膜周囲線維症、および再狭窄が挙げられる。複数の細胞外マトリクスタンパク質(コラーゲンおよび/またはフィブロネクチンが挙げられるがこれらに限定されない)の沈着が原因因子である線維症症状が、本発明に従って治療できることも企図される。突発性肺線維症、ブレオマイシン肺、嚢胞性線維症、および糸球体腎障害、例えば腎臓でのコラーゲンおよび/またはフィブロネクチン沈着を特徴とし最終的に腎不全になる疾患なども、本発明に従って治療できる症状の例である。
【0157】
[0164]本発明は、線維症と関連した病状の治療法で用いる、WISEに対する親和性が1×10−7M未満であり、かつWISE活性を阻害する抗体も企図される。この線維症として、肺疾患および腎疾患を含む上記の疾患に関連するものが可能である。そのうえさらに、タンパク尿と関連した病状の治療法で用いる、WISEに対する親和性が1×10−7M未満であり、かつWISE活性を阻害する抗体も企図される。
【0158】
[0165]本発明は併用療法も提供し、この併用療法では、そのような治療を必要とする患者に、基礎疾患を治療するかまたは治療される疾患に関連した症状を減少させる追加の治療薬とともに本発明の組成物を投与する。こうした併用治療薬は、本発明の組成物の投与と同時、その前、またはその後に、投与することができる。本発明の組成物と併用される併用治療薬として、ACE阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)、エリスロポエチン(例えば、Aranesp(登録商標)(ダルベポエチン)、Epogen(登録商標)(エリスロポエチンアルファ)、カルシニューリン阻害剤、ステロイド、ベータ遮断薬などが挙げられる。
【0159】
[0166]本発明は、本発明による抗WISE結合剤の少なくとも1種を含む診断キットも提供する。結合剤は抗体であってもよい。また、そのようなキットは、随意に以下の1種以上を含むことができる:(1)スクリーニング、診断、予後診断、治療目的の観察、またはこれらの用途の任意の組み合わせについての1種以上の結合剤(単数又は複数)の使用説明書;(2)抗WISE結合剤(単数又は複数)に対する標識化結合パートナー;(3)抗WISE結合剤を固定してある固相(試薬片など);および(4)スクリーニング、診断、予後診断、または治療用途あるいはそれらの任意の組み合わせに対する規制認可を示すラベルまたは挿入物。結合剤(単数又は複数)に対して標識化されていない結合パートナーが提供される場合、結合剤(単数又は複数)自身を1種以上の検出可能なマーカー(単数又は複数)(例えば、化学発光基、酵素活性基、蛍光基、または放射性基)で標識化することができる。
【0160】
[0167]以下の実施例は例示として提供されるものであり、制限するものではない。
【実施例】
【0161】
WiseおよびWiseループ2変異体の構築物調製
[0166]PCRプライマーを用いて、hWiseのcDNAを含有するDNAクローン(NM 015464)からhWiseを増幅した。発現ベクターおよび約641塩基対のPCR産物をXbaI制限酵素およびNotI制限酵素で消化した。適切な断片を連結してhWise発現ベクターとした。
【0162】
[0167]以下に、ヒトWISEのループ2のhSostループ2による置換を説明する。hWise−hSostループ2キメラタンパク質のクローン化:プライマー伸長法と重複PCR(overlap PCR)法を組み合わせて置換変異を発生させた。ループ2キメラ変異体は、hWiseのループ2の75塩基対がhSostのループ2の63塩基対で置換されている。具体的には、鋳型としてhWiseを用いて、hWiseのN末端をプライマーで伸長し増幅させた。hWiseのC末端もプライマーを用いて伸長し増幅させた。N末端断片およびC末端断片を、オーバーラップPCR反応で鋳型として用いた。PCR産物をXbaI制限酵素およびNotI制限酵素で消化して、哺乳類発現ベクターにサブクローニングした。
【0163】
哺乳類細胞でのマウスおよびヒトWISEの発現および精製
[0168]バイアル1本分の保存培養物を、震盪フラスコ(125ml、プラスチック製)に入れた培養液10mlに接種し、2〜3日培養した;次いで、培養物を10mLから100mL震盪フラスコに拡張し、さらに100mlから500ml体積の培養物に拡張した。形質移入のため、細胞を1リットルの培地に蒔き、適切な細胞密度になるまで増殖させた。
【0164】
[0169]形質移入混合物を調製し、標準技法を用いて細胞に形質移入させ、形質移入の24時間後、細胞に餌を与えた。培養をそれからさらに48時間継続し、培養上清を4000rpmで30分間回転させ0.2μMフィルターでろ過することで回収した。次いで、少量の試料(1ml)をウエスタンブロット分析用に採取して、残りは精製用に凍結させた。宿主細胞培養液(CCF)を遠心して細胞片を除去した。次いで、CCF上清をろ過した。
【0165】
[0170]ヘパリンカラムにタンパク質をロードし、次いで素通り画分の280nmでの吸光度がベースラインに戻るまでPBSで洗浄した。次に、PBS中150mMから2M 塩化ナトリウム濃度の直線勾配を用いて、WISEタンパク質をカラムから溶出させ、それぞれの画分を収集した。次いで、集めた画分をクーマシー染色SDS−PAGEで分析し、WISEについて予想される大きさで移動するポリペプチドを含有する画分を同定した。カラムから出てきた画分で適切なものを1つにまとめてヘパリンプールを作成した。
【0166】
[0171]ヘパリンカラムから溶出したWISEタンパク質を、逆相クロマトグラフィーでさらに精製した。ヘパリンプールを22%エタノールで作成し、酢酸でpH5.0に調整した。プールをろ過した。ついでろ過したヘパリンプールを平衡化カラムにロードした。ロードしてから、カラムを、素通り画分の280nmでの吸光度がベースラインに戻るまで洗浄した。それから、WISEタンパク質をカラムから溶出させた。
【0167】
精製に続いて、透析によりWISEをPBSに配合した。配合後、WISEを滅菌0.2μmフィルターでろ過して、4℃でまたは凍結させて貯蔵した。
抗原修飾および免疫化
[0172]哺乳類由来のヒトWISEタンパク質を、フロイント完全アジュバント(Pierce)またはRIBI(Sigma)を用いて1:1の比で乳化し、これを用いてWISEノックアウトマウスを皮下免疫化および腹腔内免疫化した。免疫化は少なくとも2週間ごとに行い、3回目の免疫化後、抗WISE力値分析用にマウスから抗血清を採取した。
【0168】
融合
[0173]融合の4日前に、PBS中のHuWISEタンパク質を用いて、各マウスを腹腔内で追加免疫した。融合当日、脾臓を無菌的に取り出し、この器官を処理して単一細胞懸濁液とした。赤血球を溶解させ、脾臓細胞をRPMI(Gibco)で洗浄した。増殖が対数期にあるミエローマ生細胞とマウス脾臓細胞を、細胞腫:脾臓細胞=1:2.5の比で混合した。次いで、細胞をCytofusion Medium C(Cytopulse Sciences Inc)で2回洗浄した。洗浄後、細胞を、1e7個/mlの最終濃度で、33%のCyto fusion Medium Cと67%の自家製低浸透圧融合緩衝液の混合液に懸濁させた。この混合物を2mlのBTX融合チャンバ(Harvard Apparatus)にロードし、次いでBTX ECM 2001(Harvard Apparatus)で電気融合条件に供した。
【0169】
[0174]細胞懸濁液をチャンバから取り出し、細胞増殖培地に懸濁させた。この細胞懸濁液を、384ウェル細胞培養プレート(Greiner)に1ウェルあたり20μlで蒔き、37℃で加湿した10%CO2環境のインキュベーターで一晩インキュベートした。翌日、2×HAT(Sigma)を含有する上記培養液をプレートの各ウェルに20μlずつ添加した。培養物を7日間培養し、次いで培養液をウェルから吸引して出し新たな培養液に交換した。培地交換の2〜3日後に、ハイブリドーマ上清のスクリーニングを開始した。
【0170】
スクリーニング
[0175]高結合透明ポリスチレン製384ウェルプレート(Corning)を、Fc特異的pAbであるヤギ抗マウスIgG(Pierce)の1μg/mlのPBS溶液で、25μl/ウェルで被覆した。プレートを被覆溶液がついたまま4℃で一晩インキュベートし、それからPBS+.05%Tween20(Sigma)を用いて自動プレート洗浄機で1回洗浄した。ブロック溶液を各ウェルに50μlずつ添加して、4℃で一晩インキュベートした。
【0171】
[0176]ハイブリドーマ上清をELISAプレートの各ウェルに5μlずつ移し、室温で60分間インキュベートした。次いでプレートを上記の方法で2回洗浄した。次いで、ヒトWISEタンパク質をブロッキング溶液に10ng/mlで希釈した溶液をプレートの各ウェルに20μl/ウェルで添加した。WISE抗原を添加した後、ELISAプレートを室温で60分間インキュベートし、それから洗浄した。次いで、ウサギ抗WISE−HRP Pab(Amgen)をブロッキング溶液に希釈した溶液を各ウェルに20μlずつ添加し、60分間インキュベートして、プレートを4回洗浄した。
【0172】
[0177]最後に、TMB(Pierce)を各ウェルに20μl/ウェルで添加し、プレートをSpectramax Plate Reader(Molecular Devices)にて650nMで読んだ。続いて、さらなる特徴付け研究用に、ELISA陽性であるハイブリドーマウェルの細胞を細胞培養で増量させた。
【0173】
IgGの高処理精製
[0178]一次スクリーニングで同定されたELISA陽性であるハイブリドーマクローンを、自動液体輸送プラットフォーム(Bravo)を用いて96ウェルプレートに移し、37℃で加湿した5%CO2環境のインキュベーターで3〜5日間増殖させた。適切な細胞質量に到達したら、元のプレートから上清を20μlずつ移すことにより各プレートを8枚のプレート(96ウェル)に複製した。各プレートの最終体積は200μlであった。プレートを37℃で加湿した5%CO2環境のインキュベーターで7日間インキュベートした。次いで、ハイブリドーマ上清をポリプロピレンアッセイブロック(2ml、Costar 3961)に集めて3500Gで30分間遠心した。細胞片のない澄んだ上清を新たなアッセイブロックに移し、Protein G Plus−Agarose(Calbiochem、Cat#IP08)70μl/ウェルを添加してシェーカー上で、室温で一晩インキュベートした。次いで、カスタムソフトウェアを利用する自動液体操作ロボットおよび吸引多岐管システムを用いて、結合IgGを含有するプロテインG樹脂を単離精製した。次いで、標準的な低pH溶出および中和条件を用いて、結合IgGを溶出させた。得られた精製IgGをA280吸光度で定量した。
【0174】
ループ2結合剤を同定する結合アッセイ
[0179]抗WISEハイブリドーマ上清を集めて、ヤギ抗マウスIgGFc(Pierce)1μg/mlであらかじめ被覆した高結合ELISAプレートに添加した。プレートを室温で1時間インキュベートした。次いで、プレートをWash緩衝液で4回洗浄した。続いて、huWISEまたはヒトWISE−hSost−ループ2キメラタンパク質を、最終濃度2ng/mlで添加し、室温で1時間インキュベートした。4回洗浄後、ウサギ抗WISE Pab−ビオチン(50ng/ml)+NeutrAvidin−HRP(Pierce)をプレートに添加し、室温で1時間インキュベートした。再びプレートをWash緩衝液で4回洗浄した。1−Step Ultra TMB−ELISA基質(Pierce)を用い取扱説明書に従って結合を分析した。
【0175】
MC3T3−El/STF−Luc細胞アッセイでの中和化抗体の同定
[0180]MC3T3−E1 SuperTopFlash(STF)レポーター細胞を用いて、WISEタンパク質がWnt信号伝達を調節できるかどうかを決定する。MC3T3−El/STF−luc細胞におけるTCF依存性信号伝達の活性化は、培養培地から分化培地に切り替えることにより誘導される内在性Wnt信号伝達を用いるか、Wnt3aタンパク質などの外来性Wntを添加するかのいずれかにより誘発することができる。組換えWISEタンパク質は、MC3T3−El/STF−luc細胞においてWnt信号伝達を用量依存的に阻害することができる。
【0176】
[0181]バイアル1本分のMC3T3−E1/STF−luc細胞を培養フラスコ中の増殖培地に蒔く。細胞が90〜95%の集密状態になったらトリプシン処理し、増殖培地に含まれた状態の細胞を96ウェル試験プレートに1ウェルあたり10K個で蒔く。翌日、増殖培地を全て除去して、新たに調製した分化培地100μlに置き換える。それから4日間、毎日、分化培地の50%を、新たに調製した分化培地で置き換える。5日間分化させた後、培地を全て体積100μlの新たな分化培地の試験試料に置き換える。WISEタンパク質およびWISE mabを37℃で1時間プレインキュベートしてから試験ウェルに添加する。次いでプレートを24時間インキュベートしてから、ルシフェラーゼ信号を測定する。ルシフェラーゼ信号は、Promegaルシフェラーゼアッセイシステムを用いて測定する。試験プレートから培地を丁寧に除去し、細胞をPBSですすいでから室温で平衡化させてある1×溶解緩衝液20μlを添加する。プレートを密封し、室温で30分間振動させ、ルシフェラーゼアッセイ基質を各ウェルに100μlずつ添加して、Luminometer(LMAX)を用いて取扱説明書に従って信号を捕捉する。
【0177】
ループ2ハイブリドーマCMの発現および精製
[0182]ELISA陽性であるハイブリドーマウェルから単一種細胞をFACS選別法で単離し、1ウェルあたり80μlのBDR培地[50mlのHybridoma Cloning Factor(BioVeris)、1×OPI培地補助剤(Sigma)、55uMの2−ME(Gibco)、10%のLow IgG FBS(Gibco)、1×PSG(Gibco)、BD Quantum Yield Medium(BD Bioscience)]とともに96ウェルプレートに入れた。適切な細胞質量に到達するまで細胞を増殖させた。次いで、細胞を1ウェルあたり1mlのBDR培地とともに24ウェルプレートに移してさらに拡大させた。24ウェルプレートが集密状態になったら、細胞を1ウェルあたり5mlのBDR培地とともに6ウェルプレートに移した。5日間のインキュベーションの後、細胞の半分をバックアップ用にFBS(Ultra low IgG)+10%DMSO混合物に加えて凍結した。残りの半分を、BDR培地40mlの入ったT−175フラスコに移し、増殖させた。T−175フラスコが集密状態になったら、上清を集めてろ過(.45μmのCAフィルター)して精製した。
【0178】
インビトロ研究用のWISE mAbのハイブリドーマ細胞培養物からの精製
[0183]以下のとおり、ハイブリドーマ細胞培養物からWISEモノクローナル抗体(mAb)を精製した。全ての精製手順は、室温または4℃で行った。1つの精製スキームを用いて、様々なmAbsの精製を行い、アフィニティークロマトグラフィーに用いた。
【0179】
プロテインGクロマトグラフィー
[0184]宿主細胞培養液(CCF)を、Beckman Coulter Allegra X−12R遠心機を用いて10℃で1500rpmで5分間遠心して、細胞片を除去した。次いで、CCF上清を、滅菌0.45μmフィルターでろ過した。この時点で、滅菌ろ過したCCFを凍結し、精製するまで貯蔵しておくことができる。凍結していた場合、CCFは40℃で解凍した。解凍に続いて、CCFを滅菌0.45μmフィルターでろ過し、次いで、室温でPBSを用いて平衡化されたカラムの形のProtein Gクロマトグラフィー媒体(Protein G High Performance(GE Healthcare、以前のAmersham Biosciences))にロードした。
【0180】
[0185]ロード後、Protein Gカラムを、素通り画分の280nmでの吸光度がベースラインに戻るまでPBSで洗浄した。次いで、0.1M酢酸エステル(pH3)を用いてWISE mAbをカラムから溶出させ、溶出体積1mLあたり65μLの1M Tris Base貯蔵液を添加してただちに中和した。溶出液の280nmでの吸光度を観測し、タンパク質含有画分を集めてProtein Gプールを作成した。
【0181】
配合および濃縮
[0186]配合および濃縮工程は4℃で行った。精製に続いて、WISE mAbを10,000MWCO膜(Pierce Slide-A-Lyzer)で透析してA5Su(10mMの酢酸ナトリウム、9%のスクロース、pH5)に配合した。WISE mAbの濃縮が必要な場合は、10,000MWCO膜を備えた遠心装置(Vivascience Vivaspin)を用いた。
【0182】
あるいは、Protein Gプールの緩衝液をA5Suに交換して遠心装置のみを用いて濃縮することが可能である。配合につづいて、WISE mAbを滅菌0.2μmフィルターでろ過し40℃でまたは凍結して貯蔵した。
【0183】
WISEはLRP6に結合し、その結合は中和化抗Wiseループ2抗体により阻止することができる
[0187]WISEと推定受容体LRP6との結合は、AlphaScreen技法を用いて特徴付けすることができる。以下にアッセイの詳細な手順を説明する:
[0188]AlphaScreenヒスチジン(ニッケルキレート)検出キット(PerkinElmer)に付属の説明書に従って、1×緩衝液を毎日新しく調製した。
【0184】
[0189]ビオチン化huWise、ビオチン化huWise−huSost−ループ2、rmLRP6−His6(R&D Systems)、抗Wiseループ2抗体の作業液を、1×緩衝液で希釈し、各タンパク質と抗体の反応に望ましい最終濃度の3倍濃度にした。
【0185】
[0190]WiseまたはWise−huSost−ループ2とLRP6の作業液それぞれ5マイクロリットルを、白色不透明OptiPlate−384マイクロプレート(PerkinElmer)の適切なウェルに分注した。WiseとLRP6を室温で1時間穏やかに震盪しながら反応させた後、系列希釈した抗体作業液を5マイクロリットルずつ、適切なウェルに添加し、さらに反応を続けた。ビオチン化His6(陽性対照、キットに付属)系列希釈液ならびにニッケルキレート受容体ビーズおよびストレプトアビジン供与体ビーズ(キットに付属)の作業液を、同じ説明書に従って調製した。Wiseとの結合について抗体をLRP6と60分間競合させた後、系列希釈したビオチン化His6溶液を15μlずつプレートの空のウェルに分注した。最後に、受容体ビーズと供与体ビーズの作業液を5μlずつ試料ウェルおよび対照ウェルの全てに分注し、暗中室温で1時間以上温置し、EnVisionマイクロプレート分析器で分析した。
【0186】
hWiseループ2Ala変異体の構築
[0191]アラニン置換変異誘発を用いて機能性結合性エピトープを系統的にマッピングするのに成功した。全長型のWISEは206個のアミノ酸からなり、成熟型のhWISEは、シスチンノットモチーフと、ループ1、ループ2、およびループ3と名付けられた3つのループとを有する183個のアミノ酸からなる糖タンパク質である。ループ1は、およそアミノ酸の位置、ループ3はループ2は、全長型ヒトWISEではおよそアミノ酸105〜132の位置、成熟型ヒトWISEではアミノ酸82〜109の位置にある。hWISEループ2の107位から129位で同定される合計で23個のアミノ酸残基をアラニンに変更した。
【0187】
[0192]24〜30ヌクレオチド長のオリゴデオキシヌクレオチドプライマーおよび鋳型として野生型hWISEプラスミドDNAを用いて、部位特異的変異誘発によりアラニン置換hWISEループ2遺伝子を製造した。反応は、QuikChange部位特異的変異誘発キット(Stragagene)に記載されるとおりに行った。各変異体を哺乳類発現ベクター内に直接作成した。アラニン変異体構築物は、配列を確認してから、変異体タンパク質の一過性産生用に哺乳類宿主細胞に形質移入した。1カ所だけのアミノ酸変異はタンパク質発現に影響を及ぼさない。
【0188】
代表的なアラニン置換を、交換されるアミノ酸と合わせて以下に列挙する:
配列番号2のアミノ酸107でロイシンからアラニンへ。
配列番号2のアミノ酸108でプロリンからアラニンへ。
【0189】
配列番号2のアミノ酸109でバリンからアラニンへ。
配列番号2のアミノ酸110でロイシンからアラニンへ。
配列番号2のアミノ酸111でプロリンからアラニンへ。
【0190】
配列番号2のアミノ酸112でアスパラギンからアラニンへ。
配列番号2のアミノ酸113でトリプトファンからアラニンへ。
配列番号2のアミノ酸114でイソロイシンからアラニンへ。
【0191】
配列番号2のアミノ酸115でグリシンからアラニンへ。
配列番号2のアミノ酸116でグリシンからアラニンへ。
配列番号2のアミノ酸117でグリシンからアラニンへ。
【0192】
配列番号2のアミノ酸118でチロシンからアラニンへ。
配列番号2のアミノ酸119でグリシンからアラニンへ。
配列番号2のアミノ酸120でトレオニンからアラニンへ。
【0193】
配列番号2のアミノ酸121でリシンからアラニンへ。
配列番号2のアミノ酸122でチロシンからアラニンへ。
配列番号2のアミノ酸123でトリプトファンからアラニンへ。
【0194】
配列番号2のアミノ酸124でセリンからアラニンへ。
配列番号2のアミノ酸125でアルギニンからアラニンへ。
配列番号2のアミノ酸126でアルギニンからアラニンへ。
【0195】
配列番号2のアミノ酸127でセリンからアラニンへ。
配列番号2のアミノ酸128でセリンからアラニンへ。
配列番号2のアミノ酸128でグルタミンからアラニンへ。
【0196】
ループ2結合剤および結合に不可欠な残基のエピトープマッピング
[0193]hWISEループ2領域でアラニン置換変異誘発を行い、合計で23種の変異体を製造して抗体結合および機能的特徴についてインビトロでアッセイした。
【0197】
[0194]個々のWISEタンパク質変異体と野生型タンパク質で、中和化抗体か非中和化抗体のいずれかによる相対的捕捉を比較して、上記のアミノ酸それぞれを1カ所だけ交換した場合のどれが抗体とWISEタンパク質との結合に影響を及ぼすかを分析した。次いで、親和性精製したHRP複合化抗WISEポリクローナル抗体を用いて、結合したWISEタンパク質を検出した。
【0198】
[0195]ヤギ抗マウスIgG Fc(Pierce)1μg/mlであらかじめ被覆した高結合ELISAプレートに、精製した抗WISE抗体(0.5μg/ml)を添加した。プレートを室温で1時間インキュベートした。次いで、プレートをWash緩衝液で4回洗浄した。続いて、一過性形質移入培養物から得たアラニン置換したWISEループ2変異体の上清(100倍希釈物)を添加し、室温で1時間インキュベートした。4回洗浄後、ウサギ抗WISE Pabビオチン(50ng/ml)+NeutrAvidin−HRP(Pierce、Cat#31001)をプレートに添加し、室温で1時間インキュベートした。再びプレートをWash緩衝液で4回洗浄した。1−Step Ultra TMB−ELISA基質(Pierce;Cat#34028)を用い取扱説明書に従って結合を分析した。
【0199】
[0196]ループ2結合性抗体のパネルをアラニン変異体に適用し、これらの抗体が結合するのに重要な特定アミノ酸を同定した。そのようなアミノ酸には、配列番号2のアミノ酸残基112のアスパラギン、配列番号2のアミノ酸残基114のイソロイシン、配列番号2のアミノ酸残基115のグリシン、配列番号2のアミノ酸残基117のグリシン、配列番号2のアミノ酸残基119のグリシン、配列番号2のアミノ酸残基121のリシン、配列番号2のアミノ酸残基123のトリプトファン、配列番号2のアミノ酸残基126のアルギニン、および配列番号2のアミノ酸残基129のグルタミンからなる群から選択される1種以上のアミノ酸が含まれる。
【0200】
[0197]これらのデータは、上記の残基のうち1カ所だけ変異させることでWISE抗体とWISEタンパク質との結合が顕著に減少する例を提供した。特定のループ2結合性抗体の最適な結合には上記の残基の組み合わせが重要である可能性が考えられる。しかしながら、抗体とWISEのループ2との結合をもたらすには1つの残基でも十分である。
【0201】
マウス抗huWISE抗体の重鎖および軽鎖のクローン化
[0198]5'RACE(cDNA末端迅速増幅法)として知られるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅技法を用いて、マウス抗ヒトWISEの軽鎖および重鎖の可変領域の配列を得た。TRIzol試薬(Invitrogen)を用いて、ヒトWISE結合性モノクローナル抗体、Ab−AA、Ab−AB、Ab−AC、Ab−AD、Ab−AE、およびAb−AFを発現する6種のマウスハイブリドーマから全RNAを単離し、続いてRNeasy Mini Kit(Qiagen)を用いてさらに精製した。GeneRacer Kit(Invitrogen)を用いて、Oligo−dTで婦ライミングされた第一の鎖である、RACE用cDNAを調製した。Phusion HF DNAポリメラーゼ(Finnzymes)を用いてcDNAのPCR増幅を行った。RACE PCR産物をpCR4−TOPO(Invitrogen)にクローン化し、ABI DNA配列決定装置(PerkinElmer)を用いてそれらの配列を決定した。Vector NTI Advance 10ソフトウェア(Invitrogen)を用いて共通配列を決定した。
【0202】
マウスヒト抗WISE抗体のヒト化
[0199]Ab−ABは、無変異(straight)CDRグラフトの軽鎖v1を用いて、VK1|O18アクセプターフレームワークに移植することでヒト化した。AbAb−ABは、マウス残基A24T、R71A、およびA93Tを伴うCDRグラフトの重鎖v1を用いて、VH1|1−46アクセプターフレームワークに移植することでヒト化した。Ab−ABはまた、F71Y逆突然変異およびY87F逆突然変異を伴う軽鎖v2を用いたヒト化も行った。Ab−ABは、追加のV2I、VTM67,68,69からAKLへ、およびV78Aを伴う重鎖v2およびv1を用いることでヒト化した(それぞれ配列番号114と116、および配列番号118と120)。
【0203】
[0200]Ab−AIは、無変異CDRグラフトの軽鎖v1を用いてVK4|B3アクセプターフレームワークに移植することでヒト化した。Ab−AIは、S30T逆突然変異を伴う重鎖v1を用いてヒト化した。逆突然変異は、Y49S(Kabat)逆突然変異を伴う軽鎖v2を用いてAb−AIをヒト化するのにも導入した。Ab−AIは、無変異CDRグラフトの重鎖v2を用いてVH2|2−70アクセプターフレームワークに移植することでヒト化した(配列番号122と124、および配列番号126と128)。
【0204】
[0201]Ab−AJは、無変異CDRグラフトの軽鎖を用いてVK4|B3アクセプターフレームワークに移植することでヒト化した。Ab−AJは、Kabat式位置番号27、28、29、30、71、93、94にあるマウス残基(Y27F、T28N、F29I、T30K、R71A、A93N、R94F)を保存したまま、重鎖CDRを用いてVH1|1−46アクセプターフレームワークに移植することでヒト化した(配列番号110および112)。
【0205】
[0202]上記の抗体のヒト化軽鎖および重鎖は相互交換可能でもある。これらを対応する核酸配列とともに以下の表4にそれぞれの配列番号で重鎖と軽鎖の対として示す:配列番号110と112(hzAb−AJ)、配列番号114と116(それぞれhzAb−ABv1;LC1とHC1)、配列番号118と116(それぞれhzAb−ABv2;LC2とHC1)、配列番号114と120(それぞれhzAb−ABv3;LC1とHC2)、配列番号118と120(それぞれhzAb−ABv4;LC2とHC2)、配列番号122と124(それぞれhzAb−AIv1;LC1とHC1)、配列番号126と124(それぞれhzAb−AIv2;LC2とHC1)、配列番号122と128(それぞれhzAb−AIv3;LC1とHC2)、および配列番号126と128(それぞれhzAb−AIv4;LC2とHC2)。
【0206】
[0203]WISEに対するヒト化抗体を用いたMC3T3レポーターアッセイを図29に示す。Ab−Rは、国際特許出願第WO2009/070243号から参照として組み込まれたものである。ヒト化WISEループ2mabのMC3T3E1−STF発現:データは全て対照を基準に規格化された合計ルシフェラーゼ信号の%で表される。Mabは、300ng/mlのhuWISEとともにインキュベートした。レポーター遺伝子発現は、24時間のインキュベーション後に蛍光基質(Luciferase Assay System、Promega E4530)を用いて取扱説明書に従って分析した。
【0207】
Fab−310ファージライブラリからのD14単離
[0204]続く各周期(round)で、Fab−310ファージライブラリー(Dyax Corp)を、5ug/ml、0.5ug/ml、および0.025ug/mlのビオチン化組換えヒトWISEに対してパニングした。D14は、第3周期の一晩プール洗浄で単離された。huWISEに結合するD14を含む53個の特異なFabファージを単離し、IgG2に変換した。これらのIgG2分子をMC3T3−E1機能アッセイで検査した。D14は、huWISEに対する阻害活性が最高であることを示した。
【0208】
[0205]D14 IgG2の親和性成熟
阻害活性を向上させる目的で、D14 IgG2の親和性成熟を行った。重鎖のCDR(31箇所)および軽鎖のCDR(29箇所)全ての各残基を無作為変異誘発により変異させた。粗調整培地試料およびビオチン化ヒトWISEで被覆されたストレプトアビジンBiosensorを用いてOctet QK(ForteBio)で親和性測定を行うことにより、重鎖の5カ所についての7種の変異体および軽鎖の6カ所についての10種の変異体が、ヒトWISEへの結合を向上させるものとして同定された。L34、L36、H66、およびH127が、単独残基変異体の上位4種であった。有用な重鎖変異および軽鎖変異について、293 6E細胞への一過性(transfient)形質移入により行列で対を形成させて、さらに改良した二重変異(DM、重鎖に1つの変異と軽鎖に1つの変異)を得た。10種のDM変異体を選別した。最良の重鎖変異体2種(H66とH127)をオーバーラップPCR法により組み合わせた。得られた二重変異を有する重鎖をL34またはL36と対にすることで、2種の三重変異体(TM1およびTM2)とした。
【0209】
糖尿病性腎症と関連した腎機能不全の進行におけるWISE抗体治療
[0206]2型糖尿病を発症しているが進行性腎疾患は発症していないGKラットのゲノムと、進行性腎疾患を発症しているが2型糖尿病は発症していないFHHラットのゲノムを組み合わせて、T2DNラットモデルを発育する。糖尿病の早期発症後、約6ヶ月齢のT2DNラットで顕性タンパク尿が発生し、タンパク尿の程度はラットの老化とともに進行性で重篤になっていく。これは、糸球体の肥大化、糸球体と尿細管基底膜の肥厚化、メサンギウム基質の拡大、および病巣の発達が起こり、続いて18ヶ月齢でびまん性全糸球体硬化症および糸球体小結節の形成が起こることを伴う。
【0210】
[0207]このモデルでの腎機能不全の進行におけるWISE抗体の作用を、メサンギウム基質の拡大および毛細管詰まりを伴う糸球体房とボーマン嚢の局所癒着とともに糸球体肥大化および巣状分節性糸球体硬化症を含む有意な糸球体損傷が確立された12ヶ月齢のラットで試験した。12ヶ月齢では、T2DNラットの糸球体は、メサンギウム基質の拡大とシッフ酸陽性物質の周期的出現(Diabetes53:735-742を参照)も示す。疾患の進行を加速するため、ラットに一側腎摘出術を行った(左腎臓、これは組織診断のベースラインとして用いた)。
【0211】
[0208]ラット個体それぞれでのタンパク尿レベルを手術後2週間、及び治療開始直前に測定し、測定結果を用いて動物を無作為に4つの群に分けた:1)無処置群、治療せず、n=10;2)リシノプリル群(20mg/kg、毎日飲料水で投与、n=12、タンパク尿を低下させる陽性対照として用いた);3)アイソタイプの一致した対照IgG1群、(20mg/kg、IP注射、抗体を希釈した緩衝液中、週に3回、n=12);4)WISE抗体(20mg/kg、IP注射、抗体を希釈した緩衝液中、週に3回、n=12)。尿試料は、ベースライン、及び代謝ケージから2週間ごとに回収し、試験または凍結前に分注した。血清試料は、ベースライン、治療後8週目、治療後14週目、および治療後16週目の終了時死体解剖で回収した。死体解剖で、右腎臓を組織診断用(半分、H&E, Masson's Trichrome)およびタンパク質/RNA用(残り半分)に処理した。腎機能だけでなくタンパク尿、糸球体、および間質性線維症への影響を評価した。
【0212】
[0209]WISE抗体での治療は、IgG対照と比較して、糸球体損傷および間質性損傷の両方の進行を顕著に阻害した。WISE抗体を投与されたラットは、腎機能を保持しベースラインで観測されるレベルに対して改善を示した(4%)。一方、無処置群のラットおよび対照IgG処置群のラットは、腎機能(推定クレアチニン排出速度)が、ベースラインレベルに対してそれぞれ27%および23%低下していた。したがって、WISE抗体には、糖尿病、高血圧、またはその両方により腎機能不全が引き起こされる糖尿病性腎症のような疾患;および重度のタンパク尿により腎損傷が引き起こされる疾患;さらに新生線維症または進行中の線維症が腎臓または移植片の不全化をもたらす疾患(高血圧性腎臓疾患、および移植片関連移植組織線維症が挙げられるがこれらに限定されない)に対して腎損傷を減少させ腎機能を維持または改善する治療用途が見込まれる。
【0213】
WISEループ2抗体の結合プロファイル
[0210]図20〜図28に、ループ2領域に結合する抗WISE抗体の結合プロファイルを示す。図20は、WISE変異体に対するAb−ABのものを示す。図21は、WISE変異体に対するAb−AEのものを示す。図22は、WISE変異体に対するAb−AGのものを示す。図23は、WISE変異体に対するAb−AIのものを示す。図24は、WISE変異体に対するAb−ACのものを示す。図25は、WISE変異体に対するAb−AAのものを示す。図26は、WISE変異体に対するAb−AHのものを示す。図27は、WISE変異体に対するAb−AJのものを示す。図28は、WISE変異体に対するAb−AFのものを示す。
【0214】
[0211]図20〜図28の変異体は、自然起源のアミノ酸の種類、続いてWISEタンパク質でのそのアミノ酸の位置を示す数字、さらに続いて変異の種類(例えば、A=アラニン)という形で表す。すなわち、L110Aは配列番号2の110位にあるロイシンがアラニンに置換された変異を表すものとする。N112Aは配列番号2の112位のアスパラギンがアラニンに置換されたものである。I114Aは配列番号2の114位のイソロイシンがアラニンに置換されたものである。G115Aは配列番号2の115位のグリシンがアラニンに置換されたものである。G116Aは配列番号2の116位のグリシンがアラニンに置換されたものである。G117Aは配列番号2の117位のグリシンがアラニンに置換されたものである。K121Aは配列番号2の121位のリシンがアラニンに置換されたものである。S128Aは配列番号2の128位のセリンがアラニンに置換されたものである。WISE−Scl L2は、ループ2領域がSOSTループ2に置き換わっているヒトWISEタンパク質を示す。吸光度が高いほど結合し、低くなると結合が減少することを表す。
【0215】
[0212]特定の残基で変異させると変異型WISEタンパク質との結合が減少することから、抗体には結合に必要な自然起源の残基があることが示唆される。Ab−ABはG117Aに対する結合が減少した(図20)。Ab−AEは、I114Aに対する結合が減少した(図21)。Ab−AGは、I114AおよびK121Aに対する結合が減少した(図22)。Ab−AIは、G115AおよびG117Aに対する結合が減少した(図23)。Ab−ACは、G115AおよびG117Aに対する結合が減少した(図24)。Ab−AAは、N112A、I114A、G115A、およびK121Aに対する結合が減少した(図25)。Ab−AHは、N112AおよびI114Aに対する結合が減少した(図26)。Ab−AJは、L11A、N112A、およびG117Aに対する結合が減少した(図27)。Ab−AFは、L11A、N112A、およびG117Aに対する結合が減少した(図28)。
【0216】
[0213]したがって、本発明の単離された抗体は、WISEへの結合が、配列番号2のアミノ酸110のロイシン、配列番号2のアミノ酸112のアスパラギン、配列番号2のアミノ酸114のイソロイシン、配列番号2のアミノ酸115のグリシン、配列番号2のアミノ酸116のグリシン、配列番号2のアミノ酸117のグリシン、配列番号2のアミノ酸119のグリシン、配列番号2のアミノ酸121のリシン、配列番号2のアミノ酸123のトリプトファン、配列番号2のアミノ酸126のアルギニン、配列番号2のアミノ酸128のセリン、および配列番号2のアミノ酸129のグルタミンのうち1又はそれより多くを介するものである抗体を含む。ある残基を通じてまたは介して結合する抗体というのは、計画した位置で変異を起こしその結果結合が減少することによって同定可能であることが、当業者には本明細書に記載される方法から理解するであろう。結合の減少は、例えば、Ab−AJで示すと、これは約2の吸光度で未変性WISEに結合するが、L110AまたはN112AまたはG117Aの残基変異は、吸光度を約1.5以下に減少する結果となる(図27)ことで示される。
【0217】
[0214]いくつかの態様に関して、本発明の組成物および方法を記載してきたが、本発明の概念、精神、および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載されるこれらの組成物および/または方法、ならびに方法の工程または工程順序に改変を加えることができることは当業者に明らかだろう。より詳細には、本明細書に記載の薬剤を化学的にも生理学的にも関連するある薬剤に置き換えることが可能であり、置き換えても同一または同様な結果が達成できるだろうということは明らかである。当業者に明らかであるこのような同様の置き換えおよび修飾は全て、添付の請求項により定義されるとおりの本発明の精神、範囲、および概念の範囲内にあると見なされる。
【0218】
[0215]本明細書全体にわたって記載される参照は、本明細書の記述に例示的な手順の詳細またはその他の詳細についての補足を提供するという点で、全て参照することで本明細書に具体的に援用される。WISE抗体について特に参照されるのは国際出願第WO2009/070243号であり、これはその全体が本明細書に援用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体Ab−AA、Ab−AB、Ab−AC、Ab−AD、Ab−AE、Ab−AF、Ab−AG、Ab−AH、Ab−AI、Ab−AJ、およびD14の少なくとも1種とヒトWISEとの結合を交差阻止し、かつヒトWISEのループ2ドメインに特異的に結合し、および/または抗体Ab−AA、Ab−AB、Ab−AC、Ab−AD、Ab−AE、Ab−AF、Ab−AG、Ab−AH、Ab−AI、Ab−AJ、およびD14の少なくとも1種によりヒトWISEとの結合が交差阻止され、かつヒトWISEのループ2ドメインに特異的に結合する、単離された抗体またはその断片。
【請求項2】
前記WISE抗体またはその断片は、以下のパラメータ、すなわち組織損傷およびそのマーカー、シリウスレッド染色またはコラーゲン産生、aSMAまたはFSP−1などの筋線維芽細胞マーカーの発現、オステオポンチン発現、タンパク尿のうち少なくとも1種を減少させることができ、および/または細胞アッセイにおいてWISEの活性を阻害することができるものである、請求項1に記載の抗体またはその断片。
【請求項3】
それを必要とする患者において未治療の患者と比較してクレアチニン排出速度で測定される腎機能を上昇または維持させることが可能な、および/または血清または血漿クレアチニンの上昇を低減させることが可能な、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
WISEのループ2エピトープと結合する、単離された抗体またはその断片。
【請求項5】
WISEへの抗体結合が、配列番号2のアミノ酸110のロイシン、配列番号2のアミノ酸112のアスパラギン、配列番号2のアミノ酸114のイソロイシン、配列番号2のアミノ酸115のグリシン、配列番号2のアミノ酸116のグリシン、配列番号2のアミノ酸117のグリシン、配列番号2のアミノ酸119のグリシン、配列番号2のアミノ酸121のリシン、配列番号2のアミノ酸123のトリプトファン、配列番号2のアミノ酸126のアルギニン、配列番号2のアミノ酸128のセリン、および配列番号2のアミノ酸129のグルタミンの1又はそれより多くにおけるものである、請求項4に記載の単離された抗体。
【請求項6】
配列番号:34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、133、134、135、136、137、および138から選択される配列と少なくとも90%の同一性を有する配列を少なくとも1つ含み、かつヒトWISEに結合する、請求項1から3および5のいずれか1つに記載の抗体またはその断片。
【請求項7】
前記配列のうち6つを含む、請求項4および6のいずれかに記載の抗体またはその断片。
【請求項8】
前記同一性の割合は95%である、請求項7に記載の抗体またはその断片。
【請求項9】
a.配列番号34と35と36の配列;
b.配列番号37と38と39の配列;
c.配列番号:40と41と42の配列;
d.配列番号:43と44と45の配列;
e.配列番号:46と47と48の配列;
f.配列番号:49と50と51の配列;
g.配列番号:52と53と54の配列;
h.配列番号:55と56と57の配列;
i.配列番号:58と59と60の配列;
j.配列番号:61と62と63の配列;
k.配列番号:64と65と66の配列;
l.配列番号:67と68と69の配列;
m.配列番号:86と87と88の配列;
n.配列番号:89と90と69の配列;
o.配列番号:91と92と93の配列;
p.配列番号:94と95と96の配列;
q.配列番号:97と98と99の配列;
r.配列番号:100と101と102の配列;
s.配列番号:103と104と105の配列;
t.配列番号:106と107と108の配列;
u.配列番号:133と134と135の配列;および
v. 配列番号:136と137と138の配列;
を含む、請求項8に記載の抗体またはその断片。
【請求項10】
a.配列番号34と35と36の配列、および配列番号37と38と39の配列;
b.配列番号40と41と42の配列、および配列番号43と44と45の配列;
c.配列番号46と47と48の配列、および配列番号49と50と51の配列;
d.配列番号52と53と54の配列、および配列番号55と56と57の配列;
e.配列番号58と59と60の配列、および配列番号61と62と63の配列;
f.配列番号64と65と66の配列、および配列番号67と68と69の配列;
g.配列番号86と87と88の配列、および配列番号89と90と69の配列;
h.配列番号91と92と93の配列、および配列番号94と95と96の配列;
i.配列番号97と98と99の配列、および配列番号100と101と102の配列;
j.配列番号103と104と105の配列、および配列番号106と107と108の配列;ならびに
k.配列番号133と134と135の配列、および配列番号136と137と138の配列;
を含む、請求項9に記載の抗体またはその断片。
【請求項11】
前記a〜kの配列のいずれかと少なくとも90%の同一性を有する配列を少なくとも1つ含む、請求項10に記載の抗体またはその断片。
【請求項12】
配列番号110の軽鎖と配列番号112の重鎖、配列番号114の軽鎖と配列番号116の重鎖、配列番号118の軽鎖と配列番号116の重鎖、配列番号114の軽鎖と配列番号120の重鎖、配列番号118の軽鎖と配列番号120の重鎖、配列番号122の軽鎖と配列番号124の重鎖、配列番号1126の軽鎖と配列番号124の重鎖、配列番号122の軽鎖と配列番号128の重鎖、または配列番号126の軽鎖と配列番号128の重鎖を含む、請求項10に記載の抗体。
【請求項13】
腎臓疾患または障害に関連した病状の治療法に用いるための、WISEに対して1×10−7M未満の親和性を有し、配列番号2の成熟ポリペプチドのループ2に特異的に結合し、かつWISE活性を阻害する抗体。
【請求項14】
前記腎臓障害は、糖尿病性腎症または高血圧性腎疾患、または移植関連移植片機能不全である、請求項13に記載の抗体。
【請求項15】
前記腎臓疾患は、タンパク尿および/または線維症と関連する、請求項13に記載の抗体。
【請求項16】
請求項13または16に記載の抗体またはその断片を含有する薬学的組成物。
【請求項17】
少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、または担体と組み合わせた請求項16に記載の抗体またはその断片。
【請求項18】
Fc、PEG、アルブミン、およびトランスフェリンの少なくとも1種と結合した請求項17に記載の抗体またはその断片。
【請求項19】
阻害抗体産生に用いるのに適したWISEの免疫原性ポリペプチドであって、該抗体は全長ヒトWISEに1×10−7M未満の親和性で結合し、かつ以下のパラメータ、すなわち組織損傷およびそのマーカー、シリウスレッド染色またはコラーゲン産生、筋線維芽細胞マーカー(aSMAまたはFSP−1など)の発現、オステオポンチン発現、タンパク尿のうち少なくとも1種を減少させることができ、および/または細胞アッセイにおいてWISEの阻害活性を遮断することができる、WISEの免疫原性ポリペプチド。
【請求項20】
請求項1に記載の抗体を用いて糖尿病性腎症を治療する方法。
【請求項1】
抗体Ab−AA、Ab−AB、Ab−AC、Ab−AD、Ab−AE、Ab−AF、Ab−AG、Ab−AH、Ab−AI、Ab−AJ、およびD14の少なくとも1種とヒトWISEとの結合を交差阻止し、かつヒトWISEのループ2ドメインに特異的に結合し、および/または抗体Ab−AA、Ab−AB、Ab−AC、Ab−AD、Ab−AE、Ab−AF、Ab−AG、Ab−AH、Ab−AI、Ab−AJ、およびD14の少なくとも1種によりヒトWISEとの結合が交差阻止され、かつヒトWISEのループ2ドメインに特異的に結合する、単離された抗体またはその断片。
【請求項2】
前記WISE抗体またはその断片は、以下のパラメータ、すなわち組織損傷およびそのマーカー、シリウスレッド染色またはコラーゲン産生、aSMAまたはFSP−1などの筋線維芽細胞マーカーの発現、オステオポンチン発現、タンパク尿のうち少なくとも1種を減少させることができ、および/または細胞アッセイにおいてWISEの活性を阻害することができるものである、請求項1に記載の抗体またはその断片。
【請求項3】
それを必要とする患者において未治療の患者と比較してクレアチニン排出速度で測定される腎機能を上昇または維持させることが可能な、および/または血清または血漿クレアチニンの上昇を低減させることが可能な、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
WISEのループ2エピトープと結合する、単離された抗体またはその断片。
【請求項5】
WISEへの抗体結合が、配列番号2のアミノ酸110のロイシン、配列番号2のアミノ酸112のアスパラギン、配列番号2のアミノ酸114のイソロイシン、配列番号2のアミノ酸115のグリシン、配列番号2のアミノ酸116のグリシン、配列番号2のアミノ酸117のグリシン、配列番号2のアミノ酸119のグリシン、配列番号2のアミノ酸121のリシン、配列番号2のアミノ酸123のトリプトファン、配列番号2のアミノ酸126のアルギニン、配列番号2のアミノ酸128のセリン、および配列番号2のアミノ酸129のグルタミンの1又はそれより多くにおけるものである、請求項4に記載の単離された抗体。
【請求項6】
配列番号:34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、133、134、135、136、137、および138から選択される配列と少なくとも90%の同一性を有する配列を少なくとも1つ含み、かつヒトWISEに結合する、請求項1から3および5のいずれか1つに記載の抗体またはその断片。
【請求項7】
前記配列のうち6つを含む、請求項4および6のいずれかに記載の抗体またはその断片。
【請求項8】
前記同一性の割合は95%である、請求項7に記載の抗体またはその断片。
【請求項9】
a.配列番号34と35と36の配列;
b.配列番号37と38と39の配列;
c.配列番号:40と41と42の配列;
d.配列番号:43と44と45の配列;
e.配列番号:46と47と48の配列;
f.配列番号:49と50と51の配列;
g.配列番号:52と53と54の配列;
h.配列番号:55と56と57の配列;
i.配列番号:58と59と60の配列;
j.配列番号:61と62と63の配列;
k.配列番号:64と65と66の配列;
l.配列番号:67と68と69の配列;
m.配列番号:86と87と88の配列;
n.配列番号:89と90と69の配列;
o.配列番号:91と92と93の配列;
p.配列番号:94と95と96の配列;
q.配列番号:97と98と99の配列;
r.配列番号:100と101と102の配列;
s.配列番号:103と104と105の配列;
t.配列番号:106と107と108の配列;
u.配列番号:133と134と135の配列;および
v. 配列番号:136と137と138の配列;
を含む、請求項8に記載の抗体またはその断片。
【請求項10】
a.配列番号34と35と36の配列、および配列番号37と38と39の配列;
b.配列番号40と41と42の配列、および配列番号43と44と45の配列;
c.配列番号46と47と48の配列、および配列番号49と50と51の配列;
d.配列番号52と53と54の配列、および配列番号55と56と57の配列;
e.配列番号58と59と60の配列、および配列番号61と62と63の配列;
f.配列番号64と65と66の配列、および配列番号67と68と69の配列;
g.配列番号86と87と88の配列、および配列番号89と90と69の配列;
h.配列番号91と92と93の配列、および配列番号94と95と96の配列;
i.配列番号97と98と99の配列、および配列番号100と101と102の配列;
j.配列番号103と104と105の配列、および配列番号106と107と108の配列;ならびに
k.配列番号133と134と135の配列、および配列番号136と137と138の配列;
を含む、請求項9に記載の抗体またはその断片。
【請求項11】
前記a〜kの配列のいずれかと少なくとも90%の同一性を有する配列を少なくとも1つ含む、請求項10に記載の抗体またはその断片。
【請求項12】
配列番号110の軽鎖と配列番号112の重鎖、配列番号114の軽鎖と配列番号116の重鎖、配列番号118の軽鎖と配列番号116の重鎖、配列番号114の軽鎖と配列番号120の重鎖、配列番号118の軽鎖と配列番号120の重鎖、配列番号122の軽鎖と配列番号124の重鎖、配列番号1126の軽鎖と配列番号124の重鎖、配列番号122の軽鎖と配列番号128の重鎖、または配列番号126の軽鎖と配列番号128の重鎖を含む、請求項10に記載の抗体。
【請求項13】
腎臓疾患または障害に関連した病状の治療法に用いるための、WISEに対して1×10−7M未満の親和性を有し、配列番号2の成熟ポリペプチドのループ2に特異的に結合し、かつWISE活性を阻害する抗体。
【請求項14】
前記腎臓障害は、糖尿病性腎症または高血圧性腎疾患、または移植関連移植片機能不全である、請求項13に記載の抗体。
【請求項15】
前記腎臓疾患は、タンパク尿および/または線維症と関連する、請求項13に記載の抗体。
【請求項16】
請求項13または16に記載の抗体またはその断片を含有する薬学的組成物。
【請求項17】
少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、または担体と組み合わせた請求項16に記載の抗体またはその断片。
【請求項18】
Fc、PEG、アルブミン、およびトランスフェリンの少なくとも1種と結合した請求項17に記載の抗体またはその断片。
【請求項19】
阻害抗体産生に用いるのに適したWISEの免疫原性ポリペプチドであって、該抗体は全長ヒトWISEに1×10−7M未満の親和性で結合し、かつ以下のパラメータ、すなわち組織損傷およびそのマーカー、シリウスレッド染色またはコラーゲン産生、筋線維芽細胞マーカー(aSMAまたはFSP−1など)の発現、オステオポンチン発現、タンパク尿のうち少なくとも1種を減少させることができ、および/または細胞アッセイにおいてWISEの阻害活性を遮断することができる、WISEの免疫原性ポリペプチド。
【請求項20】
請求項1に記載の抗体を用いて糖尿病性腎症を治療する方法。
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図1】
【図2】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図1】
【図2】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公表番号】特表2013−514992(P2013−514992A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544884(P2012−544884)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/060992
【国際公開番号】WO2011/075636
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(500203709)アムジェン インコーポレイテッド (76)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/060992
【国際公開番号】WO2011/075636
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(500203709)アムジェン インコーポレイテッド (76)
【Fターム(参考)】
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