説明

X線撮影装置及び撮影方法

【課題】測定個所の骨プロフィールの平均画素値と、撮影条件に対するアルミニウム板の板厚と画素値の関係のデータベースとから骨塩量を求める。
【解決手段】S01において、入力されたX線検出装置の有効領域全面のデジタル画像を入力する。次にS02において、入力された有効領域全面のデジタル画像に対して、光電変換素子間のばらつきの補正や光電変換素子の経時的変化の補正やシェーディング等の補正処理を行った後に、S03において操作者が指定した測定範囲の骨プロフィールの平均画素値を算出する。
S04において算出した平均画素値に対応したアルミ厚さ当量をデータベースから算出し、骨塩量を求める。S05において画像に関連付けて、S04で算出したアルミ厚さ当量と撮影条件に対応するアルミステップの厚さと画素値の関係を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者のX線撮影画像を取得し、このX線撮影画像から計測部位の骨塩量を算出するX線撮影装置及び撮影方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この数年、骨粗鬆症による大腿骨の骨折等が増加していることから、骨粗鬆症の早期発見、早期予防を目的として、骨粗鬆症検診を実施している市町村が増加し、X線撮影法による骨量測定によって骨折のリスクの高い人をスクリーニングしている。
【0003】
この際の骨測定の方法としては、特許文献1、非特許文献1〜3に示すように、被検骨にX線を照射して得られたX線写真を基に、そのフィルムにおける影像の濃淡をマイクロデンシトメータにより測定して骨計測を行うMD法、被検骨にガンマ線を照射して、透過したガンマ線の量を検出器により測定して骨計測を行うフォトン・アブソーブシオメトリ等が知られている。
【0004】
MD法は骨折の診断や臓器や器官の診断のための装置として、広く普及しているX線撮影装置を用いて比較的容易に行うことができる。また、X線写真フィルムを用いる点で採用し易く、次第に普及してきている。なお、フォトン・アブソーブシオメトリに関しては、使用するガンマ線を発生させる装置がX線撮影装置と比較すると、一般に広く普及しているとは云い難い。
【0005】
従来のMD法による骨計測は次のように行われる。先ず、被検骨と共に階段状標準物質であるアルミニウム製のアルミステップにX線を照射し、図8に示すようなX線写真フィルムFを得る。このフィルムFを用いて骨計測を行うには、先ずフィルムFにおける骨の影像において、A−B線で示す第2中手骨の中間点を選定する。
【0006】
スクリーニングの目的は大腿骨の骨折を防止することであるため、測定する部位は大腿骨であることが望ましいが、撮影し難いという問題がある。そこで、海綿骨と皮質骨の割合が大腿骨における割合に近く、撮影が容易な手の第2中手骨の中間点で測定を行うことが多い。
【0007】
マイクロデンシトメータでは、X線写真フィルムFにおいて、第2中手骨を横切るA−B線に沿って光を照射して得られる透過光の強度を測定し、走査された部位に対応した透過光の強度又は吸光度の線図を所定のチャート紙に記載する。更に、X線写真フィルムFの左側に撮影されているアルミステップASのフィルムFにおける影像の縦断線上にマイクロデンシトメータを走査させて、得られた透過光の強度又は吸光度の線図についてもチャート紙に記載する。
【0008】
このようにして得られた被検骨に関する吸光度と、アルミステップASに関する吸光度のそれぞれの線図をディジタイザを用いてコンピュータに入力し、各点での被検骨の吸光度をアルミステップの厚さに変換する。
【0009】
図9はこのようにして作成されたチャート図を示し、骨塩量(m-BMD)の指標であるアルミニウム板の厚さ当量(mmAl)は、AからBまでのアルミニウム板の厚さの平均値を算出することで求まる。
【0010】
このように、MD法による従来の骨塩量測定は、X線写真フィルムF上の被検骨について、測定範囲及びアルミチャートをマイクロデンシトメータで走査し、コンピュータに取り込むことで骨塩量を算出している。
【0011】
【特許文献1】特開平5−95940号公報
【非特許文献1】放射線利用技術データベース:データ番号030092 骨粗鬆症検診におけるマススクリーニング
【非特許文献2】「骨代謝」第13巻、187−195頁(1980年)
【非特許文献3】「骨代謝」第14巻、91−104頁(1981年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来のMD法による骨塩量計測では、撮影時に被検骨と共にアルミステップを同時に撮影しなければならないため、作業効率を考えると撮影装置に必ず1つのアルミステップが必要となる。装置の導入に伴い、新しいアルミステップを購入する必要があったり、撮影時にアルミステップを被検骨の近傍に設置する手間が発生したり、或いは対象となる被検骨は小さいのに、アルミステップ全体が写るように照射野領域を広げなければならず、被検者に与える付加の低減が望まれる。
【0013】
本発明の目的は、骨塩量を自動的に求め得るX線撮影装置及び撮影方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するための本発明に係るX線撮影装置の技術的特徴は、画像データ中の目的とする領域中の所定の画素の値を取得する手段と、予め設定された撮影条件と骨塩量と関係を示す情報と前記所定の画素の値に基づいて骨塩量を求める手段とを備えることにある。
【0015】
また、本発明に係るX線撮影方法の技術的特徴は、画像データ中の目的とする領域中の所定の画素の値を取得し、その後に予め設定された撮影条件と骨塩量と関係を示す情報と前記所定の画素の値に基づいて骨塩量を算出することにある。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るX線撮影装置によれば、被検骨と同時に階段状標準物質を撮影する必要がなく、必ずしも装置の導入に伴って新たな階段状標準物質を準備する必要がなく、無駄なコストを減少すると共に、階段状標準物質を被検骨の近傍に設置する手間がなくなる。また、作業効率の向上と操作者が本来の撮影業務に集中でき、階段状標準物質全体が入るように照射野領域を広げなくてもよいため、被検者に必要以上の被曝をさせることがなくなり、被検者の負荷低減となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を図1〜図7に図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は被写体OをX線撮像する場合のX線撮影システムの概略図を示し、被写体Oの前方には、不要なX線を放射させないようにするX線照射野絞り1、X線を発生するX線管球2が配列されている。更に被写体Oの後方には、被写体Oを通過したX線を検出するX線検出装置3が配置されている。X線管球2には、X線管球2を制御するためのX線制御装置4が接続され、X線検出装置3及びX線制御装置4はコンピュータなどによる画像撮影制御装置5に接続されている。画像撮影制御装置5はタッチセンサから成る操作卓を有する液晶パネルによる簡易画像表示装置6に接続されると共に、ネットワーク7を介して画像診断システムであるPACS8に接続されている。
【0018】
ここでX線検出装置3は、X線管球2から照射されたX線を固定撮像素子により検出してデジタル画像信号を得るためのX線検出器、散乱線を除去するグリッド、X線検出器の出力をデジタル画像信号として出力するためのA/D変換器から構成されている。
【0019】
図2は簡易画像表示装置6の画面を示し、簡易画像表示装置6は撮影画像を表示すると同時に、画像撮影制御装置5の操作や出力する画像サイズの変更設定やメッセージとシーケンス状態の表示を行うことができる。なお、簡易画像表示装置6は画像撮影制御装置5の操作卓の表示をも兼ねていてもよい。
【0020】
簡易画像表示装置6の画面には、撮影準備を行うための複数の表示部、ボタンが設けられ、患者情報表示部11、撮影条件表示部12、撮影方法選択ボタン13、パラメータ変更ボタン14、メッセージ表示部15、設定ウィンドウ呼出ボタン16、患者情報呼出ボタン17が表示されている。
【0021】
患者情報表示部11は患者の氏名、ID、性別、生年月日等の患者情報を表示する領域であり、撮影条件表示部12は撮影部位名、管電流、管電圧、照射時間、患者−管球間距離等の撮影条件を表示する領域である。また、患者情報は患者情報呼出ボタン17をクリックし、図示しない患者情報入力ウィンドウを使用して入力する。
【0022】
撮影条件は撮影方法選択ボタン13をクリックすることで、自動的に設定される。撮影方法選択ボタン13は状態維持ボタンであり、クリックするとキャンセルされるまで、ボタンが凹んだ状態になっており、選択された撮影方法が分かるようになっており、図2では「中手骨」が選択されている。また、撮影方法選択ボタン13は撮影すべき部位の撮影条件、AEC領域の設定、画像処理パラメータの設定や補正処理の設定や、絞りや、焦点サイズ等のジェネレータの設定がプリセットされている。
【0023】
パラメータ変更ボタン14は選択されている撮影方法選択ボタン13のパラメータを変更するためのウィンドウを呼び出すためのものである。メッセージ表示部15はメッセージやシステムの状態を表示し、設定ウィンドウ呼出ボタン16は各種設定ウィンドウを呼び出すためのものである。
【0024】
図3は画像撮影制御装置5のブロック構成図を示している。画像入力部21の出力は補正処理部22、平均画素値算出部23、アルミ厚さ当量算出部24を経て画像出力部25に接続され、平均画素値算出部23には測定範囲入力部26の出力が接続されている。また、アルミ厚さ当量算出部24には、撮影条件入力部27の出力及びアルミステップ撮影部28に基づき、アルミ厚さと画素値との関係を備えたデータベース29の出力が接続されている。更に、測定範囲入力部26の出力は撮影条件入力部27に接続され、データベース29の出力は画像出力部25に接続されている。
【0025】
画像入力部21では、X線が曝射された後にX線検出装置3の有効画素領域の全てのデジタルデータを取得する。或いは、既にX線検出装置3から取得された有効画素領域のデジタル画像データをハードディスクなどの記憶媒体から取得してもよい。次の補正処理部22では、センサを構成する光電変換素子間のばらつきの補正やセンサ素子の経時的変化の補正やシェーディング等の補正処理を行う。
【0026】
次に測定範囲入力部26により、図8のAB断面に示すように被検骨の基準位置を指定する。この測定範囲入力部26は簡易画像表示装置6から手動で基準位置を指定する方法でも、或いは撮影された画像から画像処理を行い、自動で基準位置を求める方法でも同様な効果が得られる。
【0027】
自動で基準位置を求める方法は、例えば濃度の2回微分値でエッジを抽出するなどの画像処理で求めるか、予め性別、年齢、身長などで分類した統計的データを使用する。後者の場合では、被検骨の特定位置が常に画像の同じ位置になるように被検部位をセンサ上で固定する仕組みが必要となる。自動的に被検骨を抽出する方法においては、本発明では照射野を被検骨部に絞ることができるので、容易に精度良く対象部位を抽出できる。
【0028】
続いて、基準点の平均画素値算出部23において、AB断面における画素値の数をn、AB断面に沿った画素値の総和をSとすると、平均画素値P=S/nのように算出する。
【0029】
撮影条件入力部27では、管電流、管電圧、照射時間、管球−患者間距離など撮影条件を入力し、基準点のアルミ厚さ当量算出部24では、基準点の平均画素値の算出部23で求めた平均画素値に対するアルミ厚さ当量を、各撮影条件に応じた画素値とアルミ厚さのデータベース29から求める。各撮影条件に応じた画素値とアルミ厚さのデータベース29は、アルミ厚さ当量Y(mmAl)とすると式(1)で表す関係のデータベースが保持されている。式(1)に、撮影条件と、平均画素値を代入することでアルミ当量Yを算出する。
Y=f(管電圧、管電流、照射時間、管球-患者間距離、画素値)・・(1)
【0030】
画像出力部25では、画像と共にアルミ当量Y(mmAl)と、表1に示したような、撮影条件に対応したアルミステップと画素値のデータをPACS8に転送する。
【0031】
表1 アルミステップと画素値の関係
(68kV、50mA、20msec、60cm)
アルミ当量Y(mmAl) 1 2 3 4 5 ・・・ 20
画素値 2000 1948 1892 1840 1788 ・・・ 1012
【0032】
各撮影条件に応じた画素値とアルミ厚さのデータベース29は、アルミステップ撮影部28を実行することにより構築される。即ち、撮影で使用する撮影条件で、アルミステップを撮影して、センサを構成する光電変換素子間のばらつきの補正やセンサ素子の経時的変化の補正やシェーディング等の補正処理を行う。補正処理後の画像より、それぞれのアルミの厚さに応じた画素値を得る。アルミステップはアルミニウム製の階段状標準物質であり、第二中手骨における骨塩量測定であれば、例えば、厚さ1(mm)から1(mm)刻みで厚さ20(mm)までのものが使用される。
【0033】
(データベースの作成方法)
操作者である放射線技師や医師が撮影を行う前に、撮影時と同様の撮影条件のアルミ厚さと画素値の関係をデータベースとして保持しておく。このため、操作者は撮影時と同じ条件でアルミステップを撮影する。ここでは、例えば表2に示すような中手骨における撮影条件で、アルミステップにX線を照射し撮影を行う。
【0034】
表2
撮影条件 設定値
管球−患者間距離 600(mm)
照射野領域 40(mm)×30(mm)
管電圧 68(kV)
管電流 50(mA)
照射時間 20(mS)
【0035】
この際に、操作者はアルミステップの撮影準備を行うための撮影条件を入力して、撮影条件通りになっていることを確認した後に、アルミステップを被写体Oの代りにX線検出装置3の前の所定の位置において、アルミステップが全面照射されるように照射野絞り1を調整する。
【0036】
このように撮影準備が整うと、X線検出装置3では画像撮影制御装置5からの固体撮像素子駆動制御信号を用いて固体撮像素子に電圧を加えることで、固体撮像素子に対して画像入力が何時あってもよい状態となるように準備される。設定された撮影条件は、X線検出装置3、X線制御装置4、画像撮影制御装置5に転送されて、指定したパラメータでの撮影可能な状態に待機する。
【0037】
ここで、操作者が簡易画像表示装置6の近傍に据え付けられているX線曝射ボタンを押すと、曝射ボタンはX線管球2でX線を発生させるトリガとなる曝射信号を発生する。なお、曝射信号は曝射ボタンのセカンドスイッチを押下したときに発生し、X線制御装置4はX線管球2に対して曝射信号を送信し、これによりX線管球2からX線が発生する。発生した曝射信号は画像撮影制御装置5に一旦供給され、これを受けた画像撮影制御装置5は固体撮像素子がX線管球2からのX線を受け取ると画像化できる状態となっているか否かを確認し、X線検出装置3の準備が完了している場合に、X線制御装置4へ曝射信号を送り、X線管球2からX線が照射される。
【0038】
X線管球2からのX線は照射野絞り1で絞られて、アルミステップ、グリッド及びシンチレータを順次に透過して、アルミステップの透過画像としてX線検出装置3に結像される。X線検出装置3において、X線像は固体撮像素子で光の強さに応じた電気信号が発生して、A/D変換器を通すことによってデジタルX線画像が得られる。
【0039】
この画像信号は画像撮影制御装置5に取り込まれ、取り込まれた画像はセンサを構成する光電変換素子間のばらつきの補正、センサ素子の経時的変化の補正や散乱線補正、グリッド補正、放射状に照射されるX線の位置の補正であるシェーディング補正などの各種補正処理を行った後に、図示しないLUTテーブル保持部で保持されているLUTを参照して濃度変換を行う。アルミステップの画像から各アルミステップの平均画素値が求まり、また図示しないアルミステップ濃度測定画面において、各アルミステップの厚さを入力することで、前記の表1のようなアルミニウムの厚さと画素値の関連が得られる。
【0040】
図4はアルミステップ撮影部28の出力を実行して撮影を行い各種補正処理を施した後に、画素値とアルミ厚さの関係を算出したグラフ図である。各撮影条件に応じた画素値とアルミ厚さのデータベース29に、このような画素値とアルミ厚さの関係を保持しておく。
【0041】
以上の作業で、画素値とアルミ厚さの関係データベース29が作成されたので、アルミステップを併置せず被検者の対象部位のみを単独で撮影して、骨塩量を求めることが可能になる。
【0042】
(骨密度の測定方法)
被検体である被写体Oを撮像する際には、操作者は撮影準備を行うために図2に示す簡易画像表示装置6の画面から患者情報と撮影方法を決定する。患者情報は患者ボタン17をクリックすることにより、呼び出される患者入力画面から入力するか、或いは入力業務の効率化や誤入力防止という観点から、磁気カードやバーコードから入力したり、ネットワーク7を介して病院内情報システム(HIS)や放射線情報システム(RIS)から入力する。そして、入力された患者情報は患者情報表示部11に表示される。
【0043】
撮影部位を設定するために、所望の撮影方法選択ボタン13をクリックする。本実施例では第2中手骨の撮影をするため、「中手骨」と記載された撮影方法選択ボタン13をクリックする。撮影方法選択ボタン13を選定することで、撮影パラメータ、補正処理、ジェネレータ設定のパラメータのプリセット値が設定され、撮影パラメータの一部は図2の撮影条件表示部12に表示される。「中手骨」の撮影条件は表1の通り、管電圧68kV、管電流50mA、照射時間20mS、管球−患者間距離600mmで行う。
【0044】
パラメータ変更ボタン14をクリックすることで、パラメータ変更ウィンドウが呼び出され、撮影パラメータ、補正処理、ジェネレータ設定のパラメータの変更が可能であるが、ここでは変更しない。
【0045】
被写体Oを図1に示すようにX線検出装置3の前に位置させて、X線検出装置3に対して適切な位置になるようにポジショニングを行う。図5はX線検出装置3の有効領域Rと、照射野領域Tの関係の説明図であり、本実施例のX線検出装置3においては、被検部位とアルミステップを同時に曝射しなくとも済むので、照射野領域Tをアルミステップの大きさに合わせずに、被検骨である第2中手骨が入る領域に絞ることができる。
【0046】
このようにして撮影準備が整うと、固体撮像素子に対して被写体Oの画像入力が、何時行われてもよい状態となるように準備される。また、撮影方法選択ボタン13により呼び出されプリセットされた各種パラメータは、X線検出装置3、X線制御装置4、画像撮影制御装置5に転送されて、指定したパラメータでの撮影可能な状態に待機する。
【0047】
ここで、アルミステップを撮影したときと同様に、操作者が簡易画像表示装置6の近傍に据え付けられているX線曝射ボタンを押下して、X線管球2からX線を照射する。X線管球2からのX線は照射野絞り1で絞られて、アルミステップ、グリッド及びシンチレータを順次に透過して、アルミステップの透過画像としてX線検出装置3に結像される。X線検出装置3において、X線像は固体撮像素子で光の強さに応じた電気信号が発生して、A/D変換器を通すことによってデジタルX線画像が得られる。
【0048】
この画像信号は画像撮影制御装置5に取り込まれ、画像入力部21ではX線が曝射された後に、X線検出装置3の有効画素領域の全てのデジタルデータを取得する。或いは、既にX線検出装置3で取得された有効画素領域のデジタル画像データを、ハードディスク等の記憶媒体から取得してもよい。この画像入力部21で取得したデジタル画像データは補正処理部22に出力され、X線検出装置3を構成する光電変換素子間のばらつきの補正や、光電変換素子の経時的変化の補正やシェーディング等の補正処理を行う。
【0049】
撮影条件入力部27では、管電流、管電圧、照射時間、管球−患者間距離等撮影条件を、基準点のアルミ厚さ当量算出部24に出力する。平均画素値算出部23で求めた平均画素値に対するアルミ厚さ当量を、各撮影条件に応じた画素値とアルミ厚さのデータベース29から算出する。各撮影条件に応じた画素値とアルミ厚さのデータベース29には、前出のアルミ厚さ当量Y(mmAl)を求める式(1)で表す関係のデータベースが保持されている。式(1)では、撮影条件と平均画素値を代入することでアルミ当量Yを算出する。
【0050】
続いて、画像出力部25では画像と共にアルミ当量Y(mmAl)と、前記の表2に示すような撮影条件(68kV、50mA、20mS、600mm)に対応したアルミステップと画素値のデータをPACS8に転送する。
【0051】
図6は処理手順のフローチャート図を示し、先ずステップS01において、入力されたX線検出装置3の有効領域全面の被写体Oのデジタル画像を入力する。次に、ステップS02において、ステップS01で入力されたX線検出装置3の有効領域全面のデジタル画像に対して、光電変換素子間のばらつきの補正や光電変換素子の経時的変化の補正やシェーディング等の補正処理を行った後に、ステップS03において操作者が指定した測定範囲の骨プロフィールの平均画素値を算出する。
【0052】
続いて、ステップS04において、ステップS03において算出した平均画素値に対応したアルミ厚さ当量をデータベース29から算出する。ステップS05において画像に関連付けて、ステップS04で算出したアルミ厚さ当量と撮影条件に対応するアルミステップの厚さと画素値の関係をPACS8に出力する。
【0053】
この処理手順について具体的に説明すると、測定範囲入力部26により図8に示したように被検骨の基準位置を指定し、基準点の平均画素値算出部23に出力する。測定範囲入力部26からの入力は、簡易画像表示装置6から手動で基準位置を指定する方法でも、或いは撮影された画像から画像処理を行い、自動で基準位置を求める方法でも得られる。
【0054】
自動的に基準位置を求める方法では、例えば濃度の2回微分値でエッジを抽出する等の画像処理で求めるか、予め性別、年齢、身長等で分類した統計的データに基づいて基準位置を決める。後者の場合では、被検骨の特定位置が常に画像の同じ位置になるように、被検部位をX線検出装置3上で固定する仕組みが必要となる。自動的に被検骨を抽出する方法においては、本実施例ではX線をX線照射野絞り1により被検骨部に絞ることができるので、容易にかつ精度良く対象部位を抽出できる。
【0055】
また、撮影画像を簡易画像表示装置6に表示するため、この画像に濃度変換処理の基準となる濃度変換カーブであるLUTを用いて濃度変換を施し、別のフレームメモリに保持する。濃度変換が行われた画像データは、簡易画像表示装置6上に図7に示すように表示される。このとき、被検骨の画像の近傍にアルミステップASを表示する。データベース29により、今回の撮影条件に対応したアルミ厚さと画素値の表2の関係を得て、この画素値をLUTで変換することで表示濃度が求まる。所定の長さをステップ数で分割することで各ステップ幅が求まり、各ステップの左側にステップ厚さの数字を記載することで、図7に示すような表示が可能になる。
【0056】
操作者はこの画像上で、骨塩測定の基準点となるA、B点を指定する。なお、線分A−Bは第二中手骨の軸線に垂直な直線である。このとき、A、B点を指定するための補助として、A−B断面のプロフィール(A−B断面の画素値の分布図)を表示してもよいし、A、B点を自動計測してもよい。
【0057】
このようにして、指定された測定点は測定範囲入力部26により入力され、測定範囲における平均画素値が基準点の平均画素値算出部23により計算される。A−B断面における画素値の数をn、A−B断面に沿った画素値の総和をSとすると、平均画素値PはP=S/nとして算出される。このときの画像データは、LUT変換される前のデータが使われ、平均画素値PをLUT変換して、図7に示すアルミステップASの対応する個所に矢印を付することで、アルミステップASの何処に対応するかが視覚的に分かるようになる。
【0058】
撮影条件入力部27では、管電流、管電圧、照射時間、管球-患者間距離等撮影条件を入力し、基準点のアルミ厚さ当量算出部24では、基準点の平均画素値算出部23で求めた平均画素値Pに対するアルミ厚さ当量Yを、データベース29から求める。データベース29から表2の関係が得られるので、予め最小二乗法等により式(1)に数値を代入した式(2)を導いておく。
Y=f(68kV、50mA、20m、600mm、画素値)・・(2)
【0059】
式(2)の画素値に、基準点の平均画素値算出部23で求めた平均画素値Pを入力すると、対応するアルミ厚さ当量Yが算出される。
【0060】
Y=9.5であれば、先に求めた矢印個所は9.5(mmAl)となるため、図7に示すように表示される。
【0061】
骨計測が終了すると、検査終了ボタンを押下することで撮影が完了すると共に、画像出力部25によりPACS8へ画像が転送される。このとき、画像に付帯して、骨塩量であるアルミ厚さ当量と、表2のようなアルミステップと画素値の関係を出力する。或いは、表2のようなアルミステップと画素値の関係を図7のアルミステップASの図として画像に焼き付けてもよい。このように、表2のようなアルミステップと画素値の関係を出力することで、PACS8側でも骨塩量の測定が可能になる。
【0062】
X線検出装置3に組み込まれているX線検出器は、10万回程度の曝射に耐えられるように設計されているが、曝射回数が多くなると、その性能が劣化してゆく、或いは経年的にその性能は劣化してゆくことが知られている。従って、データベース29を適当なタイミングで更新しないと、正しい骨塩量が算出できなくなることになる。そこで、実施例では所定の曝射回数に達した、或いはアルミステップと画素値のデータを取ってからの所定の時間経過したという何れかの条件を満たしているときに、「データベース29を更新して下さい」というメッセージを簡易画像表示装置6に表示する。
【0063】
以上の例では、アルミ厚さと画素値の関係からアルミ厚さ当量を求めていたが、アルミ厚さと濃度の関係からアルミ厚さ当量を求めてもよい。この場合に、LUTにより変換した画像によって測定範囲の平均濃度を求め、この平均濃度とアルミ厚さと濃度の関係から、アルミ厚さ当量を求めることができる。
【0064】
また、階段状標準物質の材質は通常では実施例のようにアルミニウムが使用されるが、他の材質のものでも同様の効果が得られる。その場合に、この材質のテストステップの物理量と画素値の関係の他に、テストステップの物理量と骨塩量との関連をデータベースに保持しておくことが必要である。本実施例では、このデータベースを合わせて、撮影条件に対する骨塩量と画素値の関係のデータベースとしている。
【0065】
実施例では、図2に示す撮影準備を行うための画面から撮影方法ボタン13をクリックすることで、撮影条件が決まり撮影条件入力部27から入力されたが、X線制御装置4の操作卓から撮影条件を入力してもよい。また、AECと呼ばれるX線量制御機構により照射X線をモニタする場合に、設定した照射時間に達しない状態でX線が遮断されてしまうので、X線制御装置4やRISから実曝射条件として、撮影条件を入力してもよい。
【0066】
上記の例では、「中手骨」の撮影条件について説明したが、他の部位であっても、或いは他の撮影条件であっても同様の作用効果が得られる。この場合に、予めアルミステップ撮影部28で撮影を行う撮影条件でアルミステップASを撮影し、アルミ厚さと画素値の関係を得ておくか、所定の複数の撮影条件下でアルミチャートを撮影しておき、これらの撮影条件から所望の撮影条件に対するアルミ厚さと画素値の関係を算出して求めることができる。
【0067】
更に、より正確に骨塩量を測定する場合は、特許文献2で開示されているように、出口線量計で測定した線量とアルミステップ面積と照射領域面積から、アルミステップの被曝射面積線量を算出して、この値を撮影条件の1つとしてデータベースに保持すればよい。撮影時にも、出口線量計で測定した線量とアルミステップ面積と照射領域面積から、アルミステップ相当の面積が受ける線量が算出できて、前述したデータベースから該当するアルミ厚さと画素値との関係が得られる。
【0068】
同時に、特許文献2で開示されているように、出口線量計を使わないで済むように、X線を受けたX線検出装置3が発生した単位面積当りの電荷量から、X線検出装置3が受けたX線の単位面積当りの面積被曝量に変換するための面積線量変換係数kを使用して、被曝面積線量を求めてもよい。なお、この面積線量変換係数kは非線形の関数又は参照テーブルによって与えてもよい。
【0069】
以上の説明は、本発明の好ましい実施例であるが、本発明はこれらの実施例に限定されないことは云うまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0070】
【特許文献2】特開2004−69441号公報
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】X線撮影システムの概略図である。
【図2】撮影準備を行う画面の説明図である。
【図3】画像撮影制御装置のブロック回路構成図である。
【図4】アルミ厚さと画素値の関係のグラフ図である。
【図5】被検骨と照射野の関係の説明図である。
【図6】動作フローチャート図である。
【図7】撮影画像表示の説明図である。
【図8】従来のMD法によるX線写真フィルムの説明図である。
【図9】被検骨の位置に対するアルミ板厚さの関係のチャート図である。
【符号の説明】
【0072】
1 X線照射野絞り
2 X線管球
3 X線検出装置
5 画像撮影制御装置
6 簡易画像表示装置
7 ネットワーク
8 PACS
11 患者情報表示部
12 撮影条件表示部
13 撮影方法選択ボタン
14 パラメータ変更ボタン
15 メッセージ表示部
16 設定ウィンドウ呼出ボタン
17 患者情報呼出ボタン
21 画像入力部
22 補正処理部
23 平均画素値算出部
24 アルミ厚さ当量算出部
25 画像出力部
26 測定範囲入力部
27 撮影条件入力部
28 アルミステップ撮影部
29 アルミ厚さと画素値とのデータベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データ中の目的とする領域中の所定の画素の値を取得する手段と、予め設定された撮影条件と骨塩量と関係を示す情報と前記所定の画素の値に基づいて骨塩量を求める手段とを備えることを特徴とするX線撮影装置。
【請求項2】
予め設定された撮影条件と骨塩量と関係を示す情報をデータベースとして保持する手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のX線撮影装置。
【請求項3】
前記撮影条件に対する前記データベースを作成した時点から、所定回数の撮影が行われた時に、前記撮影条件に対する前記データベースを更新する手段を備えることを特徴とする請求項2に記載のX線撮影装置。
【請求項4】
前記撮影条件に対する前記データベースを作成した時点から所定時間経過した場合に、前記撮影条件に対する前記データベースを更新する手段を備えることを特徴とする請求項2に記載のX線撮影装置。
【請求項5】
前記撮影条件に対する前記データベースは、前記撮影条件に対する階段状標準物質の厚さと画素値の関係のデータベースであることを特徴とする請求項1〜4の何れか1つの請求項に記載のX線撮影装置。
【請求項6】
前記階段状標準物質はアルミニウム板とし、測定個所の骨プロフィールの平均画素値と撮影条件に対する前記階段状標準物質の厚さと画素値の関係のデータベースから、所定のアルミニウム板の厚さに応じた濃度の対応を示すアルミチャートを作成し、画像の近傍に配置することを特徴とする請求項5に記載のX線撮影装置。
【請求項7】
前記作成したアルミチャートの横に厚さを数値で表示すると共に、前記アルミチャートに前記算出した骨プロフィールの平均画素値の位置をマークしたことを特徴とする請求項6に記載のX線撮影装置。
【請求項8】
対象部位のX線画像から、自動的に測定範囲を決定することを特徴とする請求項1〜7の何れか1つの請求項に記載のX線撮影装置。
【請求項9】
画像データ中の目的とする領域中の所定の画素の値を取得し、その後に予め設定された撮影条件と骨塩量と関係を示す情報と前記所定の画素の値に基づいて骨塩量を算出することを特徴とするX線撮影方法。
【請求項10】
請求項9に記載のX線撮影方法をコンピュータにより実行するためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−334046(P2006−334046A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−160830(P2005−160830)
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】