説明

κ−カラギナーゼの製造方法

腐食した藻から単離された好塩性海洋グラム陰性菌が、κ−カラギーナンを加水分解した。効率のいい方法でκ−カラギナーゼ製造を最大化するために、新規培地を、統計的最適化方法により、最小構成成分及びその最適濃度を有するように定義した。それ故、新規耐塩性海洋細菌であるシュードモナス(Pseudomonas)種により、κ−カラギナーゼ製造を促進するための新規培地組成を展開した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、κ−カラギナーゼの製造方法に関する。より特には、本発明は、受諾番号MTCC5261である耐塩性海洋グラム陰性菌シュードモナス(Pseudomonas)種を使用することによるκ−カラギナーゼの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景及び先行技術
κ−カラギナーゼの潜在的な使用は、低分子量糖質を得るため、昆布消化のため、赤青粉形成を制御することによる生物付着の防止のため、ファインケミカルを得るため、及び藻類バイオテクノロジーのための使用である。
【0003】
カラギーナンは、特定の種の紅藻である紅藻網(Rhodophyceae)から得られる天然成分である(Greer,C.W.及びW.Yaphe.1984.Enzymatic analysis of carageenans:Structure of carageenan from Eucheuma nudum.Hydrobiologia.116/117:563−567)。カラギーナンは、1,3結合β−D−ガラクトピラノース(A残基)と1,4結合α−D−ガラクトピラノース(B残基)の二糖類配列の繰り返しにより構成される線状多糖類である。カラギーナンは、カラギーナンのBユニットがD体であり寒天ではL体である点で、寒天と区別される。カラギーナンの基本構造の正規骨格は、硫酸ヘミエステル基のある程度の秩序分布により分離される。カラギーナンは、いくつかのメトキシ基及びピルビン酸基も含み得る。カラギーナンのよくある源は、Chondrus、Eucheuma(Kappaphycus)、Gigartina、及びIridaea種である。
【0004】
カラギーナンの3つの基本型が入手可能である。カッパ(κ)、イオタ(ι)、及びラムダ(λ)カラギーナンは、Chondrus、Eucheuma、及びGigartina種から入手され、硫酸エステル置換の数及び位置が異なる。κ及びιカラギーナンは、K+、Ca2+又はNH4+の存在下で温度可逆ゲルを形成するが、Na+型においてゲル化しない。
【0005】
β1,4−結合でカラギーナンを分解する加水分解酵素は、カラギナーゼとして知られる。これらの3つの酵素、κ、ι、及びλカラギナーゼは、様々な海洋細菌から単離されている。それらの全ては、カラギーナンのβ1,4−結合を開裂する内因性加水分解酵素であり、ネオカラビオース種の生成物を産生する(Michel,G.,L.Chantlat,E.Fanchon,B.Henrissat,B.Kloareg,及びO.Didweberg.2001.The ι−carrageenase of Alteromonas fortis.Journal of Biological chemistry.276(43):40202−40209)。κ−カラギナーゼは、ラージスケール適用であり、昨今の工業的需要がある(Ostgaard,K.,B.F.Wangen,S.H.Knutsen,及びI.M.Aasen.1993.Large scale production and purification of κ−carrageenase from Pseudomonas carrageenovora for applications in seaweed biotechnology. Enzyme and Microbial Technology.15(4):326−333)。
【0006】
Jhonston及びMcCandlessは、「Enzymic hydrolysis of the potassium chloride soluble fraction of carrageenan:properties of λ−carrageenases from Pseudomonas carrageenovora」,Canadian Journal of Microbiology 19:(1973)p.p.779−788の論文中において、シュードモナスカラゲーノボラ(Pseudomonas carrageenovora)由来のカラギナーゼがカラギーナン、すなわちλ−カラギーナンのKCl溶解画分に対してのみ活性を示したと報告している。
【0007】
彼らは、λ−カラギナーゼの収率を改善し得たが、κ−カラギナーゼの同時生産を総合的に除外できなかった。さらに、複数かつ複雑な精製ステップを使用して、達成された比活性度は、タンパク質1mgあたり、たった7ガラクトースユニットであり、最適な温度とpHが各々28℃と6.2だった。この研究の欠点は、カラギナーゼが酸性条件かつ温度28℃でのみ活性であることである。それ故、アルカリ条件、並びに高温では使用できない。さらに、当該方法は、複雑な酵素精製ステップを使用したにもかかわらず、注目すべき酵素の精製を産生しなかった。
【0008】
Bellionらは、「The degradation of Eucheuma spinosum and Eucheuma cottoni carageenans by ι and κ−carrageenases from marine bacteria」,Canadian Journal of Microbiology 28(7):(1982)p.p.874−880の論文中で、海洋シュードモナスカラゲーノボラ(Pseudomonas carrageenovora)由来のι−カラギナーゼ及びκ−カラギナーゼによるEucheuma spinosum及びEucheuma cottoniiカラギーナンの分解を報告し、その加水分解産物を同定している。当該細菌は、NaCl 25g/l;K2HPO4 0.1g/l;MgSO47H2O 5.0g/l;CaCl22H2O 0.2g/l;カザミノ酸 2.5g/l;カラギーナン 2.5g/l;0.3%FeSO4(10ml/lit)からなる培地中、並びに最適インキュベーション温度22℃で培養された。欠点は、この細菌によるカラギナーゼの製造のために使用される培地が7つの構成成分からなることである。さらに、使用される最適なインキュベーション温度である22℃は、温暖な国では、特に夏場に冷却装置がないとこの型の細菌の培養のために実行できない。
【0009】
Sarwarらは、「Potentiality of artificial sea water salts for the production of carrageenase by a marine Cytophaga species」,Microbiology and Immunology29(5):(1985)p.p.405−411、及び「Purification of a κ−carrageenase from marine Cytophaga species」,Microbiology and Immunology31(9):(1987)p.p.869−877」において、海洋Cytophaga種によるカラギナーゼの製造のために培地中に8つの構成成分を使用した。さらに、この培養物は、カラギナーゼ製造のためにNaClとMgCl2の好適な組み合わせを必要とした。最適なpHと温度は、各々7.6と25℃であった。複雑な精製ステップ後に達成された活性は、1mgタンパク質あたりたった5.0ガラクトースユニットだった。この研究の欠点は、培地中のNaClとMgCl2の存在がカラギナーゼ製造のために必須であり、8つの培地構成成分及び複雑な精製ステップを使用するにもかかわらず、1mgタンパク質あたりたった5.0ガラクトースユニットしか酵素活性として得られないことである。この低い収率は、酵素製造を商業的に利益の上がらないものとする。
【0010】
Fleurenceらは、「Use of enzymatic cell wall degradation for improvement of Protein extraction from Chondrus crispus,Gracilaria verrucosa and Palmaria palmata」,Journal of Applied Phycology 7:(1995)393−397において、κ−カラギナーゼはpH6.5〜6.8かつ45℃において最大活性を有し、酸性及びアルカリ性条件下では低い活性であることを報告した。この研究の欠点は、酵素が中性pHでのみ活性であるので酸性及びアルカリ条件のいずれにおいても使用され得ないことである。さらに、より低い温度でのわずかな活性は、その適用性をより高い温度へと限定させる。
【0011】
Dyrsetらは、「Development of a fermentation process for production of a κ−carrageenase from Pseudomonaas carrageenovora」,Enzyme and Microbial Technology 20(6):(1997)p.p.418−423で、シュードモナスカラゲーノボラ(Pseudomonaas carrageenovora)の2つの株を使用するκ−カラギナーゼの製造のための醗酵方法を報告した。この試験のために使用された培地は、CaCl2,2H2O 0.2g/l;カザミノ酸 6.8g/l;KCl 0.3g/l;K2HPO4 3.0g/l;MgSO4,7H2O 0.5g/l;NaCl 20.0g/l;NH4Cl 0.7g/l;(NH42SO4 5.0g/l;カラギーナン2.5g/lを含んだ。当該培地のpHは7.0であり、温度は20℃だった。この研究の欠点は、多くの構成成分、並びに高い基質濃度が培地中で必要とされ、これらの構成成分全てにおけるpH7.0の維持が困難なことである。そのうえ、発酵工程は、20℃で実施され、かかる低温を維持するための特別な装置が必要である。
【0012】
Arakitらは、「Purification and characterization of κ−carrageenase form a marine bactetrium Vibrio sp.CA−,1004,Fisheries Science 65(6):(1999)p.p.937−942」にて、海洋細菌Vibro種から誘導酵素であるκ−カラギナーゼを精製し、その分子量は35KDaであり、pH8.0かつ温度40℃で最大酵素活性であることを特徴づけた。この研究のために使用された培地は、ペプトン 5.0g/l;酵母エキス1.0g/l;NaCl 30g/l;MgSO4 0.5g/l;K2HPO4 2.0g/l;KH2PO4 0.4g/l;カラギーナン 15g/lを含んだ。得られた粗カラギナーゼの活性は、1mgタンパク質あたり0.949ガラクトースユニットだった。この研究の欠点は、製造培地が7つの構成成分を含み、1mgタンパク質あたりたった0.949ガラクトースユニットの活性を有するカラギナーゼを産生したことである。かかる低い活性は、この方法を必ず非経済的で実現不可能なものとさせるだろう。
【0013】
Okita Yujiらによる日本特許番号JP2001136961(2001)は、「細菌のカラギナーゼ生産能を制御する方法」を記載している。ここで、カラギナーゼ産生能のない細菌の存在下でカラギナーゼ産生細菌を培養すること又はその培養製造物により、カラギナーゼ産生細菌のカラギナーゼ生産能を制御する方法が記載されている。この発明の欠点は、カラギナーゼ非産生のものの製造と共にカラギナーゼ産生のものを共培養することによってのみカラギナーゼの製造が制御されることである。
【0014】
Araki Toshiyoshiによる日本特許番号JP2000116376(2000)「New κ−carrageenase,microorganism for producing the same,production of carrageenase and its use」において、κ−カラギナーゼがκ−カラギーナンに対して分解活性を有することが開示されている。この酵素は、κ−カラギーナンをネオカラビオース、及びネオカラテトラオースに分解し、最適なpHは8.0である。この発明の欠点は、酵素がアルカリ性のみの最適pHを有するので、酸性条件下では使用され得ないことである。
【0015】
Christian Gらによる日本特許番号JP1006656(1998)「κ−カラギナーゼの製造」は、シュードモナスカラゲーノボラ(Pseudomonas carrageenovora)、アルテロモナス(Alteromonas)又はサイトファーガ(Cytophoga)によるκ−カラギナーゼの生産性を開示し、ここでその製造は、窒素含有塩基(アンモニウム水)が前記細菌により吸収されることにより培地のpHを制御することによって実質的に改良されている。このことにより、κ−カラギナーゼ製造は、≧20ガラクトースユニット/mlから40〜60ガラクトースユニット/mlに改良され得る。この発明の欠点は、商業的に実行可能ではないpHに制御した後たった3回の精製で得ることである。
【0016】
Haigin Mらに与えられたカナダ特許番号CN1544623(2004)「Carrageenin catabolic enzymes it’s preparing process and application」において、κ−カラギーナンを分解しオリゴカラギーナンを産生でき、かつ30KDaの分子量を有するκ−カラギーナンのベータ−1,4インジカン結合を分解できる酵素を入手した。サイトファーガ種(Cytophaga sp.)を28〜35℃で培養し、遠心し、粗酵素を得て、40〜80%の硫酸アンモニウムを使用することにより濃縮した。この方法を化学的方法と比較したところ、簡単な調整工程、高い製品収量、及び安定した質を有し、オリゴサッカリドなどの活性研究や開発などを確かなものとした。この発明の欠点は、十分に濃縮/精製されていない酵素産生物を産生する酵素を濃縮するために塩析法のみ使用したことである。
【発明の開示】
【0017】
本発明の目的
本発明の主目的は、κ−カラギナーゼの製造方法を提供することである。
【0018】
本発明の他の目的は、耐塩性海洋グラム陰性菌を使用することによるκ−カラギナーゼの製造方法を提供することである。
【0019】
本発明のさらに他の目的は、最適濃度、新規培地組成中で培養する耐塩性海洋グラム陰性菌を使用することによる改良κ−カラギナーゼを提供することである。
【0020】
本発明のさらに他の目的は、複雑さのより軽減された技術を伴う単純な方法でカラギナーゼ製造を最大化することである。
【0021】
本発明のさらに他の目的は、優れたκ−カラギーナン加水分解活性を有するκ−カラギナーゼを提供することである。
【0022】
本発明のさらに他の目的は、アルカリ性及び酸性条件で活性を有するκ−カラギナーゼを提供することである。
【0023】
本発明のさらに他の目的は、高温安定性を有するκ−カラギナーゼを得ることである。
【0024】
本発明のさらに他の目的は、高い基質特異性を有するκ−カラギナーゼを得ることである。
【0025】
本発明のさらに他の目的は、長期保存安定性を有するκ−カラギナーゼを得ることである。
【0026】
本発明のさらに他の目的は、カッパフィカスアルベレッチー(Kappaphycus alvarezii)のプロトプラストを産生する能力を有するκ−カラギナーゼを得ることである。
【0027】
本発明の概要
本発明は、高活性κ−カラギナーゼの製造のために有用な新規耐塩性海洋細菌であるシュードモナス(Pseudomonas)種(受託番号MTCC5261)に関する。単純な方法におけるκ−カラギナーゼの製造を最大化するために、新規培地組成を、統計的最適化法を使用し、最小の構成成分及び最適濃度であるように定義し、実験の数を減少させ、時間や化学品を節約し、酵素製造に影響を与える全ての因子の複合効果を観察することにより結果物のより高い信頼性を向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の詳細説明
本発明は、κ−カラギナーゼの製造方法であって、以下のステップ:
(i)15〜50℃で、16〜72時間、カラギーナン、酵母エキス、塩化ナトリウム、K2HPO4、及びKH2PO4を0.1:1.0:50:1:0.5〜3.0:1.0:15.0:0.5:.05の各比で含む液体培地内で、受諾番号MTCC5261を有する耐塩性海洋細菌シュードモナス(Pseudomonas)種を培養し、培養物を得る;
(ii)ステップ(i)から得られた培養物を、5000〜8000rpmで、20〜40分間遠心し、上清として細胞のない抽出物を得る;
(iii)ステップ(ii)から得られた上清を、3〜15℃の温度で、硫酸アンモニウムで処理することにより、粗酵素を精製し、その混合物を12〜36時間熟成させ、その後、5000〜8000rpmで3〜15分間遠心し、κ−カラギナーゼを含むペレットを得る;
(iv)ステップ(iii)から得られたペレットを、Tris−HClバッファー溶液中に懸濁する;そして、
(v)付着した硫酸アンモニウムを除去するためにステップ(iv)で得られた懸濁液を透析し、その後、ゲルろ過により所望の精製κ−カラギナーゼを得る、
を含む、上記方法を提供する。
【0029】
本発明の態様において、上記細菌、シュードモナス(Pseudomonas)種は、以下の特性:a)好塩性;b)グラム陰性、グラム変動性を示す;c)運動性好気性桿菌;d)藻類多糖、すなわちκ−カラギーナンを分解する、を有する。
【0030】
本発明の他の態様において、上記κ−カラギナーゼは、セファロースCL−4Bに関するゲルろ過技術を使用して精製される。
【0031】
さらに本発明の他の態様において、前記κ−カラギナーゼの比活性度は、タンパク質1mgあたり10〜200ガラクトースユニットである。
【0032】
さらに本発明の他の態様において、前記κ−カラギナーゼは、128KDaの分子量を有する。
【0033】
さらに本発明の他の態様において、前記κ−カラギナーゼは、優れたκ−カラギーナン加水分解活性を有する。
【0034】
さらに本発明の他の態様において、前記κ−カラギナーゼは、アルカリ性及び酸性条件において活性を有する。
【0035】
さらに本発明の他の態様において、前記κ−カラギナーゼは、高温安定性を有する。
【0036】
さらに本発明の他の態様において、前記κ−カラギナーゼは、基質特異性を有する。
【0037】
さらに本発明の他の態様において、前記κ−カラギナーゼは、長期保存安定性を有する。
【0038】
さらに本発明の他の態様において、前記κ−カラギナーゼは、カッパフィカスアルベレッチー(Kappaphycus alvarezii)のプロトプラストを産生する能力を有する。
【0039】
本発明は、改良κ−カラギナーゼの製造のための過程、及びそれらの製造方法を提供し、ここでそれらは海水、及び紅藻類や腐食されたカラギーナン原藻(carrageenophyte)付近の堆積物からの海洋細菌培養物の単離を含む。これらの細菌を、唯一の炭素源としてカラギーナンを含む固体培養培地上で成長させた。上記固体培地上にピットや穴を作成する細菌のコロニーを、さらに精製し、最大のくぼみを産生する細菌をさらなる試験のために選択した。
【0040】
次いで、その精製された細菌を、培養のために、好ましくは、(i)カラギーナン 0.005〜6.0(g/100ml)、(ii)酵母エキス 0.0051〜3.0(g/100ml)、(iii)塩化ナトリウム 0.1〜20.0(g/100ml)、(iv)K2HPO4 0.001〜1.5(g/100ml)、(v)KH2PO4 0.001〜0.1(g/100ml)の濃度範囲における構成成分を含む液体培地内でインキュベートした。植菌された液体培地を、κ−カラギナーゼ製造のために、12〜90時間、10〜60℃で、ロータリーシェーカー上でインキュベートした。培養された懸濁培養物を、次いで、遠心(好ましくは4000〜10000rpmで20〜70分間)し、上清として粗細胞外κ−カラギナーゼを得た(細胞フリーの抽出物)。
【0041】
その細胞外粗酵素(上清)を、次いで、3〜10℃の温度で、好ましくは10〜100%(wt/vol)の濃度の硫酸アンモニウムを使用する塩析法によりある程度精製し、12〜36時間、混合物をエイジングし、望まないタンパク質不純物の大半を除去した。この硫酸アンモニウム沈殿タンパク質を含む懸濁液を、好ましくは、3〜10℃、4000〜10000rpmで遠心し、主にκ−カラギナーゼを含むペレットを得て、他のタンパク質不純物を含む上清を捨てた。遠心により得たペレット(主にκ−カラギナーゼを含む)を、好ましくは5〜40mMのTrisHCl緩衝液の最小量に再懸濁した。余分な硫酸アンモニウム、及びタンパク質を含む他の低分子量の不純物の除去のため、ある程度精製されたκ−カラギナーゼ溶液を、12,000分子量カットオフを有する透析バッグを使用して、0.02mMのTrisHCl緩衝液に透析した。
【0042】
硫酸アンモニウム沈殿κ−カラギーナンのさらなる精製のため、セファロースCL−4Bのゲル濾過技術を使用し、TrisHcl緩衝液を(好ましくは5〜50mMの濃度範囲で)使用して溶出することによりκ−カラギナーゼの豊富な画分を回収した。精製されたκ−カラギナーゼ画分の分子量を、繰り返しのゲル濾過法により測定し、その溶出体積(Ve)を記録し、Ve/Vo(Voはそのカラムの空隙用量である)を計算し、そして、それを標準分子量タンパク質マーカーの、分子量対Ve/Voのlogのプロットと比較した。
【0043】
この酵素の潜在的使用は以下の通りである。
多糖の物理学的特性を改良するため、オリゴ糖への転換が最も良い選択となり得る。カラギーナンの酵素分解は、高い生物活性を有する新規生成物を産生させる。
海洋微生物により製造される酵素は、赤青粉(red algal)汚染を効果的に制御し得るだろう。それ故、それは、複合多糖層に作用することにより、水中の海洋面又は海底管の生物付着を防ぐ。
これらの酵素は、紅藻類細胞壁の構造、及び会合を研究するための重要な道具である(Gall,Y.L.,J.P.Braud and B.Kloareg.1990.Protoplast production in Chondrus crispus gametophytes(Gigartinales,Rhodophyta).Plant Cell Reports.8:582−585)。
これらの酵素は、昆布消化に有用である(Sarwar,G.,H.Oda,T.Sakata,and D.Kakimoto.1985.Potentiality of artificial sea water salts for the production of carrageenase by a marine Cytophaga species.Microbiology Immunology.29(5):405−411)。この消化された産生物は、次々に、細菌の成長のための炭素源として使用され得る。それらは、藻からの精密化学製品の抽出のためにも使用される。
【0044】
多くの紅藻は、高レベルのタンパク質(10〜30%乾燥重量)を有する(Morgan,C,J.L.C.Wright and J.Simpson.1980.Review of chemical constituents of the red alga Palmaria palmate(dulse).Economic Botany.34:27−50;Mabeau,S.,and J.Fleurence.1993.Seaweed in food products:biochemical and nutritional aspects.Trends Foods Science & Technology.4:103−107)。これらのタンパク質は、カラギナーゼのような加水分解酵素により抽出され得る(Fleurence,J.,L.Massiani,O.Guyader,and S.Mabeau.1995.Use of enzymatic cell wall degradation for improvement of Protein extraction from Chondrus crispus,Gracilaria verrucosa and Palmaria palmate.Journal of Applied Phycology.7:393−397)。例えば、加水分解酵素による細胞壁多糖類の分解は、エクステンシン(高等植物の細胞壁多糖類に結合するタンパク質)の単離のために使用される(Lamport,D.T.A.1969.The isolation and partial Characterization of hydrodyproline rich glycolipides obtained by enzymic degradation on primary cell walls.Biochemistry.3:1155−1163)。
【0045】
それらは、プロトプラストの単離のために使用され得、改良藻類株の製造のための遺伝子工学実験のために使用され得る(Chen,L.C.M.,J.S.Craigie,and Z.K.Xie.1994.Protoplast production from Porphyra linearis using a simplified agarase procedure capable of commercial application.Journal of Applied Phycology.6:35−39)。
それらは、藻類コロイドの存在下で生じる重大な分離問題を防ぐために分子生物学において使用される。それらは、薬学及び免疫学のために定義済みの藻類コロイドオリゴ糖の製造のためにも使用される(Dyrset,N.,K.Q.Lystad,and D.W.Levine.1997.Development of a fermentation process for production of a κ−carageenase from Pseudomonas carrageenovora.Enzyme and Microbial Technology.20(6):418−423)。
カラギナーゼは、自己会合硫酸化多糖類を分解する加水分解酵素の構造−機能相関を調査するための機会を提供する(Michel,G.,L.Chantlat,E.Fanchon,B.Henrissat,B.Kloareg,and O.Didweberg.2001.The ι−carageenase of Alteromonas fortis.Journal of Biological Chemistry.276(43):40202−40209)。
【0046】
本発明において、κ−カラギーナンを低分子量物質に分解する潜在性を有する、シュードモナス(Pseudomonas)類として識別される、常在新規耐塩性海洋細菌を提供する。本発明は、以下の物理化学的特性を有する、κ−カラギナーゼの製造を最大化するために使用される新規培地組成にも関する:(1)最適基質濃度:0.02%;(2)最適温度:40℃;(3)熱安定性:20〜50℃;(4)最適pH:5.6及び7.7;(5)基質特異性:κ−カラギーナンに対する高特異性、λ及びιカラギーナン、並びにLMPアガロースを加水分解しない;(6)保存安定性:−20℃で保存されたとき15日間;凍結融解に敏感(7)溶解度:水に溶解する;(8)分子量:分子量をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDSPAGE)により測定したところ、分子量は128KDaである。かかる高分子量を有するκ−カラギナーゼに関する有用な報告は入手できない。
【0047】
本発明に関して、さらに、κ−カラギナーゼを使用するカッパフィカスアルベレッチー(Kappaphycus alvarezii)のプロトプラストを製造するための方法を提供する。
【0048】
本発明において、初めて、インドの西海岸から、κ−カラギナーゼを製造する潜在性を有する新規耐塩性海洋細菌シュードモナス(Pseudomonas)類を単離した。κ−カラギナーゼ製造を最大化するために、統計的最適化法を使用して、最小の構成要素、及びそれらの最適濃度を有するように新規培地組成を定義した。下記の統計的最適化により、粗κ−カラギナーゼの比活性度を32倍まで増大することが可能であった。
【0049】
本発明における進歩性は、(i)本発明の方法が酵素の精製のための多段階ステップの必要性を軽減すること;(ii)本発明の4〜10のpH範囲がκ−カラギナーゼの高い比活性度を達成するのにふさわしいこと;(iii)培地が複数成分である必要性がないこと;(iv)本発明の方法において、酵素誘導に必須な培地中における基質の最小濃度を利用すること;(v)本発明の方法において、κ−カラギナーゼの最大回収のために低温(20℃)の必要性がないこと;(vi)25℃〜50℃の広範囲な温度で最大のκ−カラギーナンが回収され得ること;(vii)本発明における培地中の構成成分において、κ−カラギナーゼ製造を制御するために、カラギナーゼを製造しないものとカラギーナンを製造するものとの共培養の必要性がないことである。
【0050】
以下の実施例は、本発明の例証を目的として記載され、本発明の範囲を制限すると解釈すべきではない。
【実施例】
【0051】
実施例1
単離されたシュードモナス(Pseudomonas)種を、pH6.3で、カラギーナン0.003(g/100ml)、酵母エキス0.01(g/100ml)、塩化ナトリウム0.3(g/100ml)、リン酸水素二カリウム0.04(g/100ml)、及びリン酸二水素カリウム0.003(g/100ml)を含む100mlの液体培地を含む250ml三角フラスコ中に植菌した。これを、ロータリーシェーカー上で、180rpm(rev/min)、28時間、30℃でインキュベートした。その懸濁液を8000rpmで15分間遠心後、細胞フリーの抽出物として、粗カラギナーゼを得た。この粗カラギナーゼを、4℃で、50%硫酸アンモニウム(wt/vol)による処理によってある程度精製し、そしてその混合物を24時間エイジングした。インキュベーション後、その溶液を、4℃、8000rpmで、15分間、遠心し、沈殿したタンパク質のペレットを得た。得られたペレットを、10mMのTris−HCl緩衝液に再懸濁し、同じ緩衝液に対して透析した。ある程度精製されたこの酵素を、ゲルろ過技術を使用してさらに精製し、1mgタンパク質あたり9.2ガラクトースユニットの比活性度を産生した。
【0052】
実施例2
単離されたシュードモナス(Pseudomonas)種を、pH8.4で、カラギーナン0.03(g/100ml)、酵母エキス0.01(g/100ml)、塩化ナトリウム0.3(g/100ml)、リン酸水素二カリウム0.004(g/100ml)、及びリン酸二水素カリウム0.03(g/100ml)を含む100mlの液体培地を含む250ml三角フラスコ中に植菌した。これを、ロータリーシェーカー上で、180rpm(rev/min)、28時間、30℃でインキュベートした。その懸濁液を8000rpmで15分間遠心後、細胞フリーの抽出物として、粗カラギナーゼを得た。この粗カラギナーゼを、4℃で、40%硫酸アンモニウム(wt/vol)による処理によってある程度精製し、そしてその混合物を24時間エイジングした。インキュベーション後、その溶液を、4℃、8000rpmで、15分間、遠心し、沈殿したタンパク質のペレットを得た。得られたペレットを、15mMのTris−HCl緩衝液に再懸濁し、同じ緩衝液に対して透析した。ある程度精製されたこの酵素を、ゲルろ過技術を使用してさらに精製し、1mgタンパク質あたり8.4ガラクトースユニットの比活性度を産生した。
【0053】
実施例3
単離されたシュードモナス(Pseudomonas)種を、pH5.1で、カラギーナン0.03(g/100ml)、酵母エキス0.1(g/100ml)、塩化ナトリウム0.3(g/100ml)、リン酸水素二カリウム0.004(g/100ml)、及びリン酸二水素カリウム0.003(g/100ml)を含む100mlの液体培地を含む250ml三角フラスコ中に植菌した。これを、ロータリーシェーカー上で、180rpm(rev/min)、28時間、35℃でインキュベートした。その懸濁液を8000rpmで15分間遠心後、細胞フリーの抽出物として、粗カラギナーゼを得た。この粗カラギナーゼを、4℃で、55%硫酸アンモニウム(wt/vol)による処理によってある程度精製し、そしてその混合物を24時間エイジングした。インキュベーション後、その溶液を、4℃、8000rpmで、15分間、遠心し、沈殿したタンパク質のペレットを得た。得られたペレットを、20mMのTris−HCl緩衝液に再懸濁し、同じ緩衝液に対して透析した。ある程度精製されたこの酵素を、ゲルろ過技術を使用してさらに精製し、1mgタンパク質あたり24.2ガラクトースユニットの比活性度を産生した。
【0054】
実施例4
単離されたシュードモナス(Pseudomonas)種を、pH8.0で、カラギーナン0.03(g/100ml)、酵母エキス0.1(g/100ml)、塩化ナトリウム3.0(g/100ml)、リン酸水素二カリウム0.004(g/100ml)、及びリン酸二水素カリウム0.003(g/100ml)を含む100mlの液体培地を含む250ml三角フラスコ中に植菌した。これを、ロータリーシェーカー上で、180rpm(rev/min)、28時間、40℃でインキュベートした。その懸濁液を8000rpmで15分間遠心後、細胞フリーの抽出物として、粗カラギナーゼを得た。この粗カラギナーゼを、4℃で、70%硫酸アンモニウム(wt/vol)による処理によってある程度精製し、そしてその混合物を24時間エイジングした。インキュベーション後、その溶液を、4℃、8000rpmで、15分間、遠心し、沈殿したタンパク質のペレットを得た。得られたペレットを、25mMのTris−HCl緩衝液に再懸濁し、同じ緩衝液に対して透析した。ある程度精製されたこの酵素を、ゲルろ過技術を使用してさらに精製し、1mgタンパク質あたり10.5ガラクトースユニットの比活性度を産生した。
【0055】
実施例5
単離されたシュードモナス(Pseudomonas)種を、pH8.4で、カラギーナン0.003(g/100ml)、酵母エキス0.1(g/100ml)、塩化ナトリウム3.0(g/100ml)、リン酸水素二カリウム0.04(g/100ml)、及びリン酸二水素カリウム0.003(g/100ml)を含む100mlの液体培地を含む250ml三角フラスコ中に植菌した。これを、ロータリーシェーカー上で、180rpm(rev/min)、28時間、25℃でインキュベートした。その懸濁液を8000rpmで15分間遠心後、細胞フリーの抽出物として、粗カラギナーゼを得た。この粗カラギナーゼを、4℃で、30%硫酸アンモニウム(wt/vol)による処理によってある程度精製し、そしてその混合物を24時間エイジングした。インキュベーション後、その溶液を、4℃、8000rpmで、15分間、遠心し、沈殿したタンパク質のペレットを得た。得られたペレットを、15mMのTris−HCl緩衝液に再懸濁し、同じ緩衝液に対して透析した。ある程度精製されたこの酵素を、ゲルろ過技術を使用してさらに精製し、1mgタンパク質あたり16.2ガラクトースユニットの比活性度を産生した。
【0056】
実施例6
単離されたシュードモナス(Pseudomonas)種を、pH7.1で、カラギーナン0.03(g/100ml)、酵母エキス0.01(g/100ml)、塩化ナトリウム3.0(g/100ml)、リン酸水素二カリウム0.04(g/100ml)、及びリン酸二水素カリウム0.03(g/100ml)を含む100mlの液体培地を含む250ml三角フラスコ中に植菌した。これを、ロータリーシェーカー上で、180rpm(rev/min)、28時間、25℃でインキュベートした。その懸濁液を8000rpmで15分間遠心後、細胞フリーの抽出物として、粗カラギナーゼを得た。この粗カラギナーゼを、4℃で、40%硫酸アンモニウム(wt/vol)による処理によってある程度精製し、そしてその混合物を24時間エイジングした。インキュベーション後、その溶液を、4℃、8000rpmで、15分間、遠心し、沈殿したタンパク質のペレットを得た。得られたペレットを、15mMのTris−HCl緩衝液に再懸濁し、同じ緩衝液に対して透析した。ある程度精製されたこの酵素を、ゲルろ過技術を使用してさらに精製し、1mgタンパク質あたり14.8ガラクトースユニットの比活性度を産生した。
【0057】
実施例7
単離されたシュードモナス(Pseudomonas)種を、pH9.0で、カラギーナン0.03(g/100ml)、酵母エキス0.1(g/100ml)、塩化ナトリウム0.3(g/100ml)、リン酸水素二カリウム0.04(g/100ml)、及びリン酸二水素カリウム0.03(g/100ml)を含む100mlの液体培地を含む250ml三角フラスコ中に植菌した。これを、ロータリーシェーカー上で、180rpm(rev/min)、28時間、40℃でインキュベートした。その懸濁液を8000rpmで15分間遠心後、細胞フリーの抽出物として、粗カラギナーゼを得た。この粗カラギナーゼを、4℃で、75%硫酸アンモニウム(wt/vol)による処理によってある程度精製し、そしてその混合物を24時間エイジングした。インキュベーション後、その溶液を、4℃、8000rpmで、15分間、遠心し、沈殿したタンパク質のペレットを得た。得られたペレットを、30mMのTris−HCl緩衝液に再懸濁し、同じ緩衝液に対して透析した。ある程度精製されたこの酵素を、ゲルろ過技術を使用してさらに精製し、1mgタンパク質あたり8.9ガラクトースユニットの比活性度を産生した。
【0058】
実施例8
単離されたシュードモナス(Pseudomonas)種を、pH7.1で、カラギーナン0.003(g/100ml)、酵母エキス0.1(g/100ml)、塩化ナトリウム3.0(g/100ml)、リン酸水素二カリウム0.004(g/100ml)、及びリン酸二水素カリウム0.03(g/100ml)を含む100mlの液体培地を含む250ml三角フラスコ中に植菌した。これを、ロータリーシェーカー上で、180rpm(rev/min)、28時間、30℃でインキュベートした。その懸濁液を8000rpmで15分間遠心後、細胞フリーの抽出物として、粗カラギナーゼを得た。この粗カラギナーゼを、4℃で、65%硫酸アンモニウム(wt/vol)による処理によってある程度精製し、そしてその混合物を24時間エイジングした。インキュベーション後、その溶液を、4℃、8000rpmで、15分間、遠心し、沈殿したタンパク質のペレットを得た。得られたペレットを、25mMのTris−HCl緩衝液に再懸濁し、同じ緩衝液に対して透析した。ある程度精製されたこの酵素を、ゲルろ過技術を使用してさらに精製し、1mgタンパク質あたり11.4ガラクトースユニットの比活性度を産生した。
【0059】
実施例9
単離されたシュードモナス(Pseudomonas)種を、pH6.3で、カラギーナン0.03(g/100ml)、酵母エキス0.01(g/100ml)、塩化ナトリウム3.0(g/100ml)、リン酸水素二カリウム0.04(g/100ml)、及びリン酸二水素カリウム0.003(g/100ml)を含む100mlの液体培地を含む250ml三角フラスコ中に植菌した。これを、ロータリーシェーカー上で、180rpm(rev/min)、28時間、30℃でインキュベートした。その懸濁液を8000rpmで15分間遠心後、細胞フリーの抽出物として、粗カラギナーゼを得た。この粗カラギナーゼを、4℃で、55%硫酸アンモニウム(wt/vol)による処理によってある程度精製し、そしてその混合物を24時間エイジングした。インキュベーション後、その溶液を、4℃、8000rpmで、15分間、遠心し、沈殿したタンパク質のペレットを得た。得られたペレットを、15mMのTris−HCl緩衝液に再懸濁し、同じ緩衝液に対して透析した。ある程度精製されたこの酵素を、ゲルろ過技術を使用してさらに精製し、1mgタンパク質あたり11.8ガラクトースユニットの比活性度を産生した。
【0060】
実施例10
単離されたシュードモナス(Pseudomonas)種を、pH5.1で、カラギーナン0.003(g/100ml)、酵母エキス0.1(g/100ml)、塩化ナトリウム0.3(g/100ml)、リン酸水素二カリウム0.04(g/100ml)、及びリン酸二水素カリウム0.03(g/100ml)を含む100mlの液体培地を含む250ml三角フラスコ中に植菌した。これを、ロータリーシェーカー上で、180rpm(rev/min)、28時間、35℃でインキュベートした。その懸濁液を8000rpmで15分間遠心後、細胞フリーの抽出物として、粗カラギナーゼを得た。この粗カラギナーゼを、4℃で、35%硫酸アンモニウム(wt/vol)による処理によってある程度精製し、そしてその混合物を24時間エイジングした。インキュベーション後、その溶液を、4℃、8000rpmで、15分間、遠心し、沈殿したタンパク質のペレットを得た。得られたペレットを、25mMのTris−HCl緩衝液に再懸濁し、同じ緩衝液に対して透析した。ある程度精製されたこの酵素を、ゲルろ過技術を使用してさらに精製し、1mgタンパク質あたり17.3ガラクトースユニットの比活性度を産生した。
【0061】
実施例11
単離されたシュードモナス(Pseudomonas)種を、pH4.5で、カラギーナン0.003(g/100ml)、酵母エキス0.01(g/100ml)、塩化ナトリウム3.0(g/100ml)、リン酸水素二カリウム0.004(g/100ml)、及びリン酸二水素カリウム0.03(g/100ml)を含む100mlの液体培地を含む250ml三角フラスコ中に植菌した。これを、ロータリーシェーカー上で、180rpm(rev/min)、28時間、40℃でインキュベートした。その懸濁液を8000rpmで15分間遠心後、細胞フリーの抽出物として、粗カラギナーゼを得た。この粗カラギナーゼを、4℃で、70%硫酸アンモニウム(wt/vol)による処理によってある程度精製し、そしてその混合物を24時間エイジングした。インキュベーション後、その溶液を、4℃、8000rpmで、15分間、遠心し、沈殿したタンパク質のペレットを得た。得られたペレットを、30mMのTris−HCl緩衝液に再懸濁し、同じ緩衝液に対して透析した。ある程度精製されたこの酵素を、ゲルろ過技術を使用してさらに精製し、1mgタンパク質あたり5.9ガラクトースユニットの比活性度を産生した。
【0062】
実施例12
単離されたシュードモナス(Pseudomonas)種を、pH5.1で、カラギーナン0.003(g/100ml)、酵母エキス0.01(g/100ml)、塩化ナトリウム0.3(g/100ml)、リン酸水素二カリウム0.004(g/100ml)、及びリン酸二水素カリウム0.003(g/100ml)を含む100mlの液体培地を含む250ml三角フラスコ中に植菌した。これを、ロータリーシェーカー上で、180rpm(rev/min)、28時間、35℃でインキュベートした。その懸濁液を8000rpmで15分間遠心後、細胞フリーの抽出物として、粗カラギナーゼを得た。この粗カラギナーゼを、4℃で、40%硫酸アンモニウム(wt/vol)による処理によってある程度精製し、そしてその混合物を24時間エイジングした。インキュベーション後、その溶液を、4℃、8000rpmで、15分間、遠心し、沈殿したタンパク質のペレットを得た。得られたペレットを、15mMのTris−HCl緩衝液に再懸濁し、同じ緩衝液に対して透析した。ある程度精製されたこの酵素を、ゲルろ過技術を使用してさらに精製し、1mgタンパク質あたり17.4ガラクトースユニットの比活性度を産生した。
【0063】
実施例13
単離されたシュードモナス(Pseudomonas)種を、pH5.6で、カラギーナン0.3(g/100ml)、酵母エキス0.04(g/100ml)、塩化ナトリウム3.0(g/100ml)、リン酸水素二カリウム0.03(g/100ml)、及びリン酸二水素カリウム0.01(g/100ml)を含む100mlの液体培地を含む250ml三角フラスコ中に植菌した。これを、ロータリーシェーカー上で、180rpm(rev/min)、28時間、35℃でインキュベートした。その懸濁液を8000rpmで15分間遠心後、細胞フリーの抽出物として、粗カラギナーゼを得た。この粗カラギナーゼを、4℃で、60%硫酸アンモニウム(wt/vol)による処理によってある程度精製し、そしてその混合物を24時間エイジングした。インキュベーション後、その溶液を、4℃、8000rpmで、15分間、遠心し、沈殿したタンパク質のペレットを得た。得られたペレットを、20mMのTris−HCl緩衝液に再懸濁し、同じ緩衝液に対して透析した。ある程度精製されたこの酵素を、ゲルろ過技術を使用してさらに精製し、1mgタンパク質あたり188.8ガラクトースユニットの比活性度を産生した。
【0064】
利点
本発明の主な利点は下記の通りである。
1.単純な方法においてκカラギナーゼの製造を最大化するために、新規細菌の増殖のための新規培地組成を、統計的最適化方法を使用して最小の構成成分及び最適濃度を有するように定義し、酵素製造に影響を与える全因子への複合効果を観察することによって、試験数を低減し、時間と化学品を節約し、及び結果のより高い信ぴょう性を改善する。
2.本発明は、1mgのタンパク質あたり200までのガラクトースユニットの高比活性度を有するκ−カラギナーゼを提供する。
3.本発明のκ−カラギナーゼは、128KDaの分子量を有する。
4.本発明のκ−カラギナーゼは、優れたκ−カラギーナン加水分解活性を有する。
5.本発明のκ−カラギナーゼは、アルカリ性及び酸性条件で活性を有する。
6.本発明のκ−カラギナーゼは、より高い温度での安定性を有する。
7.本発明のκ−カラギナーゼは、高い基質特異性を有する。
8.本発明のκ−カラギナーゼは、長期保存安定性を有する。
9.本発明のκ−カラギナーゼは、カッパフィカスアルベレッチー(Kappaphycus alvarezii)のプロトプラストを産生する能力を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
κ−カラギナーゼの製造方法であって、以下のステップ:
(i)16〜72時間、15〜50℃で、カラギーナン、酵母エキス、塩化ナトリウム、K2HPO4、及びKH2PO4を0.1:1.0:50:1:0.5から3.0:1.0:15.0:0.5:.05の各比で含む液体培地内で、受諾番号MTCC5261を有する耐塩性海洋細菌シュードモナス(Pseudomonas)種を培養し、培養物を得る;
(ii)ステップ(i)から得られた培養物を、5000〜8000rpmで、20〜40分間遠心し、上清として細胞のない抽出物を得る;
(iii)3〜15℃の温度で、硫酸アンモニウムで処理することにより、ステップ(ii)から得られた上清から粗酵素を精製し、その混合物を12〜36時間エイジングし、その後、5000〜8000rpmで3〜15分間遠心し、κ−カラギナーゼを含むペレットを得る;
(iv)ステップ(iii)から得られたペレットを、Tris−HClバッファー溶液中に懸濁する;そして、
(v)付着した硫酸アンモニウムを除去するためにステップ(iv)で得られた懸濁液を透析し、ゲルろ過により所望の精製κ−カラギナーゼを得る、
を含む、上記方法。
【請求項2】
前記シュードモナス(Pseudomonas)種細菌が、以下の特性:
a)好塩性;
b)グラム陰性、グラム変動性を示す;
c)運動性好気性桿菌;
d)藻類多糖、すなわちκ−カラギーナンを分解する、
を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記κ−カラギナーゼの比活性度が、タンパク質1mgあたり10〜200ガラクトースユニットである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記κ−カラギナーゼが128KDaの分子量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
本明細書の実施例、表を参照して記載される、κ−カラギーナンの製造方法。

【公表番号】特表2009−531055(P2009−531055A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−502229(P2009−502229)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【国際出願番号】PCT/IB2006/002345
【国際公開番号】WO2007/110685
【国際公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(595059872)カウンシル オブ サイエンティフィク アンド インダストリアル リサーチ (81)
【Fターム(参考)】