説明

あんかけ粥

【課題】
本格的な味や食感を有し、かつ、燕下性の良い、常温保存可能なあんかけ粥を提供すること。
【解決手段】
粥およびあんを特定比率にコントロールし、別々のレトルトパウチに充填しそれぞれレトルト処理し、流通時には該粥と該あんのそれぞれのレトルトパウチを一つの包材に入れて流通させ、喫食時には、粥とあんの盛りつけ順序を特定し、あんの粘度を特定するあんかけ粥。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本格的な味や食感を有し、かつ、燕下性の良い、常温保存可能なあんかけ粥に関する。
【背景技術】
【0002】
加工食品では商品の喫食時の簡便性が求められている。その求めに応じ、冷凍(チルド)状態で流通、保存し、喫食時に加熱解凍するだけで喫食出来る冷凍(チルド)食品や、保存性を高めるために食品を乾燥後密封包装し、お湯を注ぐだけで食べられるフリーズドライ商品や粉末スープがある。また加熱殺菌後密閉することで常温保存を可能にしているレトルト食品もある。また食品である以上、簡便性だけでなく安全であることも同様に求められている。安全性については、冷凍(チルド)食品は低温状態にすることで、乾燥食品は水分活性を低くすることで、レトルト食品は加熱殺菌後密閉することで、食品の変性や微生物の繁殖を防いでいる。
【0003】
また食品である以上、簡便性、安全性だけでなく、おいしさや低価格であることも求められている。しかしながら、これら総ての条件を兼ね備えることは容易ではない。
【0004】
加工食品の中でもお粥や雑炊などの米飯類は、主に病気の時に病人が食べるだけでなく、その食べやすさや体に優しいこともあり、高齢者や若い女性などが日常食べる機会が増えてきているのが実情である。市販されている商品としてはアルファー化乾燥米を利用した雑炊やレトルト処理されたお粥が知られているが、前述の条件をすべて兼ね備えることは容易ではない。
【0005】
粘性が付与された卵液を、粘性が付与された低pHの熱水に投入し、撹拌することにより、卵風味及び卵のやわらかさとなめらかさが維持されたかき卵を、容易にかつ安定的に製造する方法が知られている(特許文献1参照)。該発明には、卵液に粘性を付与するに際してガム質、増粘剤を用いている。またレトルト食品用にも応用できるとの記載もある。また、増粘多糖類を添加し、50〜150cpsの粘度に調整した殺菌全卵液を使用することを特徴とするかき卵液の製造方法も知られている(特許文献2参照)
【0006】
しかしながら、これらの発明はかき卵の製造方法についての発明であるため、お粥などのあんとしての利用は想定されておらず、お粥とあんとの総合的なおいしさや、流通、保管時などの簡便性に関する課題を解決するものではない。
【0007】
加工液卵に特定量かつ特定粘度のキサンタンガムを加えた加工液卵混合液を特定粘度の調味液中で加熱凝固させることを特徴とする卵含有食品の製造方法が知られている(特許文献3参照)。該発明によれば、適度な軟らかさと弾力性を有し、外観および食感にすぐれる卵スープ、玉子丼、親子丼などの卵含有食品を製造でき、レトルト処理による加熱凝固についての記載もある。
【0008】
しかしながら、該発明は濾過処理や加熱殺菌処理を施した加工液卵に特有の課題を解決するためになされたものであり、加熱によって卵含有食品を凝固させることに特徴がある。その為、該発明で得られる卵含有食品は凝固しており、お粥などのあんとして最適なものではない。
【0009】
【特許文献1】特開平9−252748号公報
【特許文献2】特開平8−116925号公報
【特許文献3】特開平8−009925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は前記のような課題を解決するためになされたものである。本発明の目的は、本格的な味や食感を有し、かつ、燕下性の良い、常温保存可能なあんかけ粥を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決すべく検討した結果、粥およびあんを特定比率にコントロールし、別々のレトルトパウチに充填しそれぞれレトルト処理することで、おいしさを保つことができ、流通時には該粥と該あんのそれぞれのレトルトパウチを一つの包材に入れて流通させることで、流通コストを抑えることができ、喫食時には、粥とあんの盛りつけ順序を特定し、あんの粘度を特定することで、おいしさを保つことができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
即ち本発明は、(一)1)粥100重量部及び2)レトルト後の粘度が24℃において2000〜12000mPa・sであるあん10〜100重量部を、それぞれ別のレトルトパウチに充填し、それぞれをレトルト処理に付し、その後、該粥と該あんのレトルトパウチを1つの包材に入れて流通させ、喫食時に、各レトルトパウチを開封しないまま加熱し、加熱後、容器にまず粥を注ぎ、その次にあんを注いでなるあんかけ粥、(二)1)粥100重量部及び2)レトルト後の粘度が24℃において2000〜12000mPa・sであるあん10〜100重量部を、それぞれ別のレトルトパウチに充填し、それぞれをレトルト処理に付し、その後、該粥と該あんのレトルトパウチを1つの包材に入れて流通させ、喫食時に、容器にまず粥を注ぎ、その次にあんを注いでから加熱してなるあんかけ粥、(三)あんが梅肉、蟹、鶏、ホタテ、エビ、フカヒレ、牛肉、豚肉から選ばれた1種以上の原料を含有している(一)記載のあんかけ粥、を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、本格的な味や食感を有し、かつ、燕下性の良い、常温保存可能なあんかけ粥を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明において、粥とは、白粥の他、味付き粥や雑炊も含まれる。粥に香辛料、調味料などを適宜含有させても良い。
【0015】
本発明において、あんとは、和風、中華風等のだしにとろみをつけたものであり、原料として梅肉、蟹、鶏、ホタテ、エビ、フカヒレ、牛肉、豚肉から選ばれた1種以上の原料を含有していると、味や外観の点で好ましい。
【0016】
また、本発明においてはあんの粘度が重要である。レトルト前のあんの粘度は70℃で1000〜10000mPa・sであることが好ましく、2000〜8000mPa・sであることがより好ましい。レトルト後のあんの粘度は24℃で2000〜12000mPa・sであることが重要であり、2000〜8000mPa・sであることがより好ましい。あんの粘度が低すぎると、あんを粥の上に載せたときに流れてしまう。逆にあんの粘度が高すぎると燕下性が悪くなる。また、あんに具が含まれている場合は、あんの粘度が低すぎると、あんに含まれる具材を均一にレトルトパウチに充填することが困難であるため好ましくない。またあんの粘度が高くてもあんに含まれる具材の充填時の操作性が悪くなるため好ましくない。
【0017】
あんの粘度をコントロールするために、ガム質、増粘剤等を用いることが出来るが、所定の粘度を発現することが出来る食品用素材であれば特に限定はない。増粘剤としては、例えば、キサンタンガム、タマリンドシードガム、グアガム、トラガントガム、ローカストビーンガム、タラガム、ペクチン、カラギーナン等の増粘多糖類や、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉等の澱粉や加工澱粉があげられる。本発明においては、その中でもキサンタンガムが、粘度安定性の理由から好適に用いられる。
【0018】
本発明においては、あんの粘度をコントロールすることにより、燕下性が良く、飲み込む力の弱い高齢者などでもスムーズに喫食する事が出来る。
【0019】
本発明においては、粥とあんの比率も重要であり、粥100重量部当たり10〜100重量部のあん、好ましくは粥100重量部当たり30〜50重量部のあんの割合である。
あんの比率がそれよりも高いと粥の風味が弱くなりすぎ好ましくなく、あんの比率がそれよりも低いと味全体が弱くなるため好ましくない。また見た目も悪くなる。
【0020】
本発明で用いられるレトルトパウチは、密封し加熱殺菌可能であることが重要である。
瓶、冷凍、チルドの形態では流通コストがかかり好ましくない。缶、粉末の形態では味の点から好ましくない。
【0021】
本発明では、粥とあんを別々のレトルトパウチにすることで、粥の米内部にあんの味がしみ込まず、粥とあんのそれぞれの味が楽しむことが出来る。また流通時には、粥とあんのそれぞれのレトルトパウチを一つの包材に入れて流通することで、繁雑な作業が発生することなく、商品を流通、保管、店頭への陳列をすることができる。
【0022】
本発明では、喫食時に、粥とあんのそれぞれのレトルトパウチとは別の容器にまず粥を注ぎ、その次にあんを注ぐ順序が重要である。粥、あんをその順序で注ぐことで、外観上も自然な感じとなる。またあんと粥を好みの濃さで食することが出来る。
【実施例1】
【0023】
粥とあんの比率を変化させたあんかけ粥の検討
【0024】
レトルトパウチにお米と水を10:77の割合で200gとなるように量り入れ121℃、12分でレトルト加熱した粥100重量部に対して、123℃、8分でレトルト加熱した後の粘度が24℃で5000mPa・sとなるように調節したあんを該条件でレトルト加熱した。粥の上にあんを注ぐ際の、粥とあんの比率を変化させたあんかけ粥を作成した。
【0025】
外観、味、食感について総合的に官能評価を行った。官能評価は、×:非常に好ましくない、△:好ましい、○:非常に好ましい、の基準に従った。評価結果を表1に示す。
【0026】
【表1】

【0027】
表1から、粥100重量部に対してあんの比率が少なすぎると見た目が悪くなり、あんの比率が高すぎると味が濃すぎて好ましくないことが判明した。
【実施例2】
【0028】
あんの粘度を変化させたあんかけ粥の検討
【0029】
レトルトパウチにお米と水を10:77の割合で200gとなるように量り入れ121℃、12分でレトルト加熱した粥100重量部に対して、表2の配合により作成したあん40重量部を123℃、8分でレトルト加熱し、粥の上にあんをかけてあんかけ粥を作成した。粘度付与物質である加工澱粉、馬鈴薯澱粉、キサンタンガムの量は適宜調整して、約24℃での粘度をB型粘度計にて測定した。測定粘度も表2に示した。
【0030】
外観、味、食感について総合的に官能評価を行った。官能評価は、×:非常に好ましくない、△:好ましい、○:非常に好ましい、の基準に従った。評価結果も表2に示した。
【0031】
【表2】

【0032】
表2から、あんの粘度が低すぎると、あんを粥の上に載せたときに流れてしまうことが判明した。逆にあんの粘度が高すぎても燕下性は良くないことが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明によれば、本格的な味や食感を有し、かつ、燕下性の良い、常温保存可能なあんかけ粥を製造し、提供することができる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)粥100重量部及び2)レトルト後の粘度が24℃において2000〜12000mPa・sであるあん10〜100重量部を、それぞれ別のレトルトパウチに充填し、それぞれをレトルト処理に付し、その後、該粥と該あんのレトルトパウチを1つの包材に入れて流通させ、喫食時に、各レトルトパウチを開封しないまま加熱し、加熱後、容器にまず粥を注ぎ、その次にあんを注いでなるあんかけ粥。
【請求項2】
1)粥100重量部及び2)レトルト後の粘度が24℃において2000〜12000mPa・sであるあん10〜100重量部を、それぞれ別のレトルトパウチに充填し、それぞれをレトルト処理に付し、その後、該粥と該あんのレトルトパウチを1つの包材に入れて流通させ、喫食時に、容器にまず粥を注ぎ、その次にあんを注いでから加熱してなるあんかけ粥。
【請求項3】
あんが梅肉、蟹、鶏、ホタテ、エビ、フカヒレ、牛肉、豚肉から選ばれた1種以上の原料を含有している請求項1記載のあんかけ粥。