説明

くつ下及びくつ下の製造方法

【課題】 内反小指、外販母指等の足指障害を緩和するくつ下及びくつ下製造方法を提供する。
【解決手段】 全体を筒状体として丸編により編成されるくつ下において、前記筒状体の先端部に編成されるトウ部1に小指挿入部11、親指挿入部12及び3本指挿入部13が形成され、前記複数の指挿入部からなるトウ部が筒状体の先端の端部開口部を縫い合わせる縫製ラインより筒状体の先端側に形成される構成により、小指が薬指下に潜り込むという内反小指特有な小指の障害を十分に緩和することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トウ部が分割されたくつ下に関し、特に内反小指、外販母指等の足指障害を緩和するくつ下及びくつ下製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術として特許文献1に開示されるくつ下があり、内反小趾用として記載されている。この背景技術に係る内反小趾用くつ下は、足の小指が親指方向に曲がる内反小跡を防止又は矯正する内反小跡用くつ下であって、該くつ下の爪先部が、足の小指が挿入される小指部、親指が挿入される親指部及び他の指が挿入される他の指部に三分割されて形成され、小指部が、他の指部から独立して形成されていると共に、その先端部がくつ下の側方に突出するように形成されている。この構成に基づき内反小趾用くつ下は、容易に履くことができ、且つ小指(第5指)と第4指との間を可及的に広げることができることとなる。
【特許文献1】特開2002−266109号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
背景技術に係る内反小指用くつ下及びその製造方法は、小指挿入部が縫目(縫製ライン)よりくつ下の踵部側の部位から分岐されるように形成されていることから、くつ下の被着者の小指付け根部分にも強く後方への力が加えられることとなり、小指が薬指下に潜り込むという内反小指特有な小指の障害を十分に緩和することができないという課題を有する。即ち、前記内反小指用くつ下は、小指を後方の踵部側へ引き寄せるという力を加える作用を有するものの、小指付け根部分に大きな後方への力が加わることから、小指を側方に確実に広げることができない。
【0004】
特に、小指の付け根分に大きな後方への力が加わることから、この小指付け根部分に強く食い込んで、くつ下被着者の着用感を悪化させることとなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るくつ下は、全体を筒状体として丸編により編成されるくつ下において、前記筒状体の先端部に編成されるトウ部が袋状の指挿入部を複数に分割して形成され、前記複数の指挿入部からなるトウ部が筒状体の先端の端部開口部を縫い合わせる縫製ラインより筒状体の先端側に形成されるものである。
【0006】
また、本発明に係るくつ下は必要に応じて、複数に分割された指挿入部のうち、小指を挿入する小指挿入部が、他の指挿入部より縫製ライン側に形成されるものである。
【0007】
また、本発明に係るくつ下は必要に応じて、複数に分割された指挿入部のうち、親指を挿入する親指挿入部が、他の指挿入部より縫製ライン側に形成されるものである。
【0008】
また、本発明に係るくつ下は必要に応じて、複数の分割された指挿入部のうち、小指を挿入する小指挿入部及び親指を挿入する親指挿入部が、他の指挿入部より縫製ライン側に形成されるものである。
【0009】
また、本発明に係るくつ下は必要に応じて、小指挿入部が他の指挿入部の側端に一部ウェールを重畳されて形成されるものである。
【0010】
また、本発明に係るくつ下は必要に応じて、親指挿入部が他の指挿入部の側端に一部重畳されて形成されるものである。
【0011】
本発明に係るくつ下製造方法は、くつ下全体を丸編機により筒状体として編成し、当該筒状体の先端におけるトウ部を丸編機のシリンダにおける全周のうちの所定範囲のみで目減らし及び目増しして編成し、前記筒状体先端の端部開口部を縫い合わせて形成する靴下製造方法において、前記トウ部が、小指を挿入する小指挿入部と親指を挿入する親指挿入部と他の指を挿入する他の指挿入部とを、前記端部開口部を縫い合わせて形成される縫製ラインより筒状体の先端側に形成され、前記小指挿入部の編成後に親指挿入部が前記シリンダの所定範囲における一端側近傍で編成され、前記親指挿入部の編成後に他の指挿入部が編成されるものである。
【0012】
また、本発明に係るくつ下製造方法は必要に応じて、小指挿入部の側端部及び親指挿入部の側端部と、前記他の指挿入部の両側端部とが、前記筒状体のウェール方向で一部重畳して編成されるとするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係るくつ下をこの製造方法と共に、図1ないし図4に基づいて3本指のくつ下について説明する。この図1は、本実施形態に係るくつ下のトウ部の平面図・正面図・底面図、図2は本実施形態に係るくつ下を編成する丸編機のシリンダにおける編成動作説明図、図3は図2により編成されたくつ下の親指挿通部、小指挿通部を起立させた状態の平面図、図4は図2により編成されたくつ下の斜視図を示す。
【0014】
前記各図において本実施形態に係るくつ下は、口ゴム部5と、レッグ部4と、ヒール部3と、フート部2と、トウ部1と、このフート部2及びトウ部1に連続する端部開口部となるルーズ・コース60を順次丸編機により編成される。前記トウ部1は、小指を挿入する小指挿入部11と、親指を挿入する親指挿入部12と、小指・親指以外の他の三本指を挿入する3本指挿入部13とを袋状に分割して編成する。
【0015】
この小指挿入部11、親指挿入部12及び3本指挿入部13は、前記ルーズ・コース60を縫い合わせて形成される縫製ライン6より筒状体の先端側に形成される。前記小指挿入部11と3本指挿入部13とは、この小指挿入部11の側端部11aと3本指挿入部13の側端部13aにおけるウェール方向の一部を共通とし、コースを異なるように編成される。
【0016】
前記フート部2は、親指挿入部12側の側方から小指挿入部11側の側方に向かって傾斜した方向で、被着者の中趾節関節に相当する部位を締付ける締付部22が形成される。この締付部22は、プレーン編等の編地21にカットボス等を編成することにより、編地21より強い緊締力を付与することができることとなる。
【0017】
次に前記構成に基づく本実施形態に係るくつ下の製造方法について説明する。
まず、くつ下の口ゴム部5は、編地21を一重又は二重(ダブルウェルト;袋編)に編立てることによりメークアップ編成で形成される。
前記レッグ部4は、丸編機におけるシリンダの全周を編成範囲として使用し、複数のコースを順次繰り返すことにより編成される。このレッグ部4の編成に連続してヒール部3の編成を行う。このヒール部3は、シリンダの略半周を編成範囲として使用し、このシリンダの編成範囲以外にある長バットニードルを非編成レベル(センター・カムの上面)に上げると共に、前記シリンダの編成範囲にある短バットニードルにてシリンダの正逆復回転により針上げピッカー及び針下げによる目減らしと目増やしとを行って前記レッグ部4の筒状体の一側に袋状の編地を編成する。
【0018】
このレッグ部4とヒール部3とに連続して編成される前記フート部2は、レッグ部4と同様に丸編機におけるシリンダの全周を編成範囲として使用し、複数のコースを順次繰り返すことにより編成される。このフート部2は、編地21の途中で地糸より強い(糸が太い)糸を編み込む、例えばカットボス等により締付部22が編成される。前記フート部2に連続して前記トウ部1は、小指を挿入する小指挿入部11を編成し、次に親指を挿入する親指挿入部12を編成し、さらに他の指を挿入する3本指挿入部13を編成し、この小指挿入部11、親指挿入部12及び3本指挿入部13の編成後にルーズ・コース60の端部開口部(図示を省略)を編成する。
【0019】
前記小指挿入部11は、前記シリンダの編成範囲Iにおける一端側近傍で編成される。前記小指挿入部11の編成後に親指挿入部12は、前記シリンダの編成範囲Iにおける他端側近傍の親指部編成範囲IIIで編成される。前記親指挿入部12の編成後に3本指挿入部13は、前記小指挿入部11の側端部11a及び親指挿入部12の側端部12aに両側端部13a、13bが、前記筒状体のウェール方向で一部重畳して編成される。
さらに、トウ部1が編成された後にルーズ・コース60の端部開口部が編成され、この端部開口部は縫い合わされてくつ下として形成される。前記小指挿入部11、親指挿入部12及び3本指挿入部13からなるトウ部1は、端部開口部を縫い合わせて形成される縫製ライン6より筒状体の先端側に形成されることとなる。
【0020】
以上のように、本実施形態に係るくつ下は、小指挿入部11を3本指挿入部13のウェール方向の一部を重畳して編成し、小指挿入部11が3本指挿入部13の上側に位置するように形成されたことから、小指が薬指下に潜り込むという内反小指特有な小指の障害を十分に緩和することができる。特に、小指の付け根分を圧迫することがないことから、この小指付け根部分に強く食い込むことなく、くつ下被着者の着用感を向上させることができる。さらに、親指挿入部12も小指挿入部11と同様に3本指挿入部13のウェール方向の一部を重畳させて親指挿入部12が3本指挿入部13の上側に位置するように編成されたことから、外反母趾による障害も併せて緩和し、未然に防止できることとなる。
【0021】
(本発明の第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態に係るくつ下をこの製造方法と共に、図5ないし図8に基づいて2本指のくつ下について説明する。この図5は、本実施形態に係るくつ下のトウ部の平面図・正面図・底面図、図6は本実施形態に係るくつ下を編成する丸編機のシリンダにおける編成動作説明図、図7は図2により編成されたくつ下の親指挿通部、小指挿通部を起立させた状態の平面図、図8は図2により編成されたくつ下の斜視図を示す。
【0022】
前記各図において本実施形態に係るくつ下は、前記第1の実施形態と同様に、口ゴム部5と、レッグ部4と、ヒール部3と、フート部2と、トウ部1と、このフート部2及びトウ部1に連続する端部開口部となるルーズ・コース60を順次丸編機により編成される。前記トウ部1は、小指を挿入する小指挿入部11と、小指以外の他の四本指を挿入する4本指挿入部14とを袋状に分割して編成する。
【0023】
この小指挿入部11、及び4本指挿入部14は、前記ルーズ・コース60を縫い合わせて形成される縫製ライン6より筒状体の先端側に形成される。前記小指挿入部11と4本指挿入部14とは、この小指挿入部11の側端部11aと4本指挿入部14の側端部14aにおけるウェール方向の一部を共通とし、コースを異なるように編成される。
【0024】
前記フート部2は、親指挿入部12側の側方から小指挿入部11側の側方に向かって傾斜した方向で、被着者の中趾節関節に相当する部位を締付ける締付部22が形成される。この締付部22は、プレーン編等の編地21にカットボス等を編成することにより、編地21より強い緊締力を付与することができることとなる。
【0025】
次に前記構成に基づく本実施形態に係るくつ下の製造方法について説明する。
まず、くつ下の口ゴム部5は、編地21を一重又は二重(ダブルウェルト;袋編)に編立てることによりメークアップ編成で形成される。
前記レッグ部4は、丸編機におけるシリンダの全周を編成範囲として使用し、複数のコースを順次繰り返すことにより編成される。このレッグ部4の編成に連続してヒール部3の編成を行う。このヒール部3は、シリンダの略半周を編成範囲として使用し、このシリンダの編成範囲以外にある長バットニードルを非編成レベル(センター・カムの上面)に上げると共に、前記シリンダの編成範囲にある短バットニードルにてシリンダの正逆復回転により針上げピッカー及び針下げによる目減らしと目増やしとを行って前記レッグ部4の筒状体の一側に袋状の編地を編成する。
【0026】
このレッグ部4とヒール部3とに連続して編成される前記フート部2は、レッグ部4と同様に丸編機におけるシリンダの全周を編成範囲として使用し、複数のコースを順次繰り返すことにより編成される。このフート部2は、編地21の途中で地糸より強い(糸が太い)糸を編み込む、例えばカットボス等により締付部22が編成される。前記フート部2に連続して前記トウ部1は、小指を挿入する小指挿入部11を編成し、次に小指以外の他の指を挿入する4本指挿入部14を編成し、この小指挿入部11、親指挿入部12及び4本指挿入部14の編成後にルーズ・コース60の端部開口部(図示を省略)を編成する。
【0027】
前記小指挿入部11は、前記シリンダの編成範囲Iにおける一端側近傍で編成される。前記小指挿入部11の編成後に4本指挿入部14は、前記小指挿入部11の側端部11aに側端部12aに両側端部13aが、前記筒状体のウェール方向で一部重畳して編成される。
【0028】
さらに、トウ部1が編成された後にルーズ・コース60の端部開口部が編成され、この端部開口部は縫い合わされてくつ下として形成される。前記小指挿入部11及び4本指挿入部14からなるトウ部1は、端部開口部を縫い合わせて形成される縫製ライン6より筒状体の先端側に形成されることとなる。
【0029】
以上のように、本実施形態に係るくつ下は、小指挿入部11を4本指挿入部14のウェール方向の一部を重畳して編成し、小指挿入部11が4本指挿入部14の上側に位置するように形成されたことから、小指が薬指下に潜り込むという内反小指特有な小指の障害を十分に緩和することができる。特に、小指の付け根分を圧迫することがないことから、この小指付け根部分に強く食い込むことなく、くつ下被着者の着用感を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1の実施形態にに係るくつ下のトウ部の平面図・正面図・底面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るくつ下を編成する丸編機のシリンダにおける編成動作説明図である。
【図3】図2により編成されたくつ下の親指挿通部、小指挿通部を起立させた状態の平面図である。
【図4】図2により編成されたくつ下の斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施形態にに係るくつ下のトウ部の平面図・正面図・底面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るくつ下を編成する丸編機のシリンダにおける編成動作説明図である。
【図7】図6により編成されたくつ下の親指挿通部、小指挿通部を起立させた状態の平面図である。
【図8】図6により編成されたくつ下の斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1 トウ部
11 小指挿入部
11a 側端部
12 親指挿入部
12a 側端部
13 3本指挿入部
13a、13b 両側端部
14 4本指挿入部
2 フート部
3 ヒール部
4 レッグ部
6 縫製ライン
60 ルーズ・コース




【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体を筒状体として丸編により編成されるくつ下において、
前記筒状体の先端部に編成されるトウ部が袋状の指挿入部を複数に分割して形成され、
前記複数の指挿入部からなるトウ部が筒状体の先端の端部開口部を縫い合わせる縫製ラインより筒状体の先端側に形成されることを
特徴とするくつ下。
【請求項2】
前記請求項1に記載のくつ下において、
前記複数に分割された指挿入部のうち、小指を挿入する小指挿入部が、他の指挿入部より縫製ライン側に形成されることを
特徴とするくつ下。
【請求項3】
前記請求項1に記載のくつ下において、
前記複数に分割された指挿入部のうち、親指を挿入する親指挿入部が、他の指挿入部より縫製ライン側に形成されることを
特徴とするくつ下。
【請求項4】
前記請求項1に記載のくつ下において、
前記複数の分割された指挿入部のうち、小指を挿入する小指挿入部及び親指を挿入する親指挿入部が、他の指挿入部より縫製ライン側に形成されることを
特徴とするくつ下。
【請求項5】
前記請求項2に記載のくつ下において、
前記小指挿入部が他の指挿入部の側端に一部ウェールを重畳されて形成されることを
特徴とするくつ下。
【請求項6】
前記請求項3又は5に記載のくつ下において、
前記親指挿入部が他の指挿入部の側端に一部重畳されて形成されることを
特徴とするくつ下。
【請求項7】
くつ下全体を丸編機により筒状体として編成し、当該筒状体の先端におけるトウ部を丸編機のシリンダにおける全周のうちの所定範囲のみで目減らし及び目増しして編成し、前記筒状体先端の端部開口部を縫い合わせて形成する靴下製造方法において、
前記トウ部が、小指を挿入する小指挿入部と親指を挿入する親指挿入部と他の指を挿入する他の指挿入部とを、前記端部開口部を縫い合わせて形成される縫製ラインより筒状体の先端側に形成され、
前記小指挿入部の編成後に親指挿入部が前記シリンダの所定範囲における一端側近傍で編成され、
前記親指挿入部の編成後に他の指挿入部が編成されることを
特徴とするくつ下製造方法。
【請求項8】
前記請求項7に記載のくつ下製造方法において、
前記小指挿入部の側端部及び親指挿入部の側端部と、前記他の指挿入部の両側端部とが、前記筒状体のウェール方向で一部重畳して編成されることを
特徴とするくつ下製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−121227(P2010−121227A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293922(P2008−293922)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(593065110)イイダ靴下株式会社 (22)
【出願人】(500294888)株式会社 アドヴァンシング (26)
【出願人】(390010995)
【Fターム(参考)】