説明

アスファルト層を敷き均し締固めるためのシステムおよび方法

【課題】アスファルト舗装の施工管理を容易にすることを目的とする。
【解決手段】アスファルト敷き均しシステムSにおいて、締固めツールを持つスクリードEを有する道路舗装機Fと、締固め装置Vと、ミキサとを備え、道路舗装機F用に設けられた電子的材料密度モジュールMは、敷き均し処理中に、少なくとも道路舗装機F、締固め装置V、ミキサの動作最適化および/または動作監視のため、少なくとも1つの締固めツールの領域で生じたアスファルト層Dの実締固め度に関するデータを取得して、これらのデータを評価および/または記録する。取得されたデータは締固め装置Vに伝達され、この伝達されたデータを頼りに、スクリードEで決定された実締固め度に基づき、アスファルト層Dの最終締固め度を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求項1の導入部に記載のシステム、および特許請求項16の導入部に記載の方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
独国特許出願公開第102008058481号公報で周知のシステムでは、工事現場の位置温度モデルを生成して、これを締固め装置に伝達し、これによって、敷き均されたアスファルト層のある位置での締固め装置による最終締固めのその後の実施を、その位置で締固めに適さない温度範囲が優勢である場合には回避させるという方法が適用される。
【0003】
欧州特許第0733231B1号(独国欧州特許翻訳第69416006T2号)公報で周知の方法では、移動締固め装置は、デジタル化された所望の現場モデルであってそれは同じくデジタル化された実際の現場モデルと比較して所望の締固め度と実締固め度を表示する該所望の現場モデルを用いて、敷き均されたアスファルト上で誘導される。個々の実締固め度は、例えば専門的評価により予め決定されている。締固め装置は、任意選択的に試験用路面を走行して、最終締固めに必要な締固め力および/または必要な走行回数を決定する。
【0004】
欧州特許第0698152号公報で周知の移動締固め装置を制御する方法では、アスファルト層における実締固め度は、締固められる位置で締固め装置自体によって決定され、締固め力は、所望の最終締固め度を達成すべく直接調整される。それぞれの位置に達するまで実締固め度が決定されないので、実締固め度の不可避の変化に十分な速さで対応することはほとんど不可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実際には、職員が、経験によって、さらには敷き均されたアスファルト層を調べることによって、道路舗装機および/もしくはスクリードの動作パラメータを最適化すること、または、この目的のため、推定値または経験則による値に頼ることのほうが通例になっている。このアプローチは、これにより考慮しなければならない影響が多様であることによって多くの時間を要し、また、その結果は、しばしば不満足なものであって、補正を必要とする(試行錯誤法)。
【0006】
本発明の基礎となるのは、アスファルト層を敷き均す経済的かつ効率的なシステムおよび方法を提示するという目的であり、このシステムおよび方法によると、全体的な動作の最適化のため、および工事現場での監視のために、道路舗装機によって現実に得られる実際の締固めをよりよく考慮することができ、これにより、アスファルト層で、できる限り均一な高い最終締固め度を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
設定された目的は、特許請求項1および特許請求項16に記載の特徴によって解決される。
【0008】
材料密度モジュールは、アスファルトが敷き均される際に、スクリードの少なくとも1つの締固めツールにより生成される個々の実締固め度を取得して、この値を評価し、その結果、全体的な動作の最適化および/または動作の監視に用いることができる有意義な情報を提供する。この場合、道路舗装機の動作は、直接、最適化および監視されるか、またはアスファルト層の中央プロデューサとしての道路舗装機が、やはり動作の最適化を目的として周辺付属装置を誘導するか(プル方式)、どちらかとすることができる。その結果、例えば、位置データおよび決定された個々の実締固め度を、締固め装置に提供することが可能であり、これによって、この装置は、実締固め度に基づいて、実締固め度に変動がある場合でも、所望の最終締固め度を生成するだけの締固め力をその位置で後に生成する。つまり、この装置は、エネルギーの無駄遣いや、さらにはアスファルト層の損傷を生じることもある過度の締固め力を生成することも、アスファルト層の耐荷力を低減することになる弱すぎる締固めを行うこともない。材料密度モジュールは、個々の位置で必要な締固め力の大きさおよび/または走行回数を、適時に締固め装置に通知し、これにより、締固め装置は、その場で時間の不足なく、通知に従って駆動および調整されることが可能である。代替的または追加的に、運搬されたアスファルト材の組成(配合)および/または温度について道路舗装機で決定された値(複数の場合もある)が制限に満たない場合、または制限を超えた場合にトリガされ得る警告メッセージに基づき、材料密度モジュールによってミキサに情報を提供することができる。この場合、例えば施工性の向上および/または他の組成を目的として、アスファルト材の組成をミキサで、直ちに、すなわち道路舗装機までの供給網によって生じる遅延のみ伴って、調整することもできる。結果として、材料密度モジュールが工事現場管理システム(現場管理)の誘導要素として機能することにより、質的に優れたアスファルト層を経済的かつ効率的に敷き均すことができる。
【0009】
この方法によると、道路舗装機のスクリードの締固めツールにより生成される実締固め度に関する情報であって、少なくとも1つの締固め装置の経済的かつ効率的な動作のために必要な情報が、道路舗装機の作動中に早期に予め利用可能であるので、締固め装置において個別に、比較的遅くなってから、不正確に推定または決定する必要がない。これにより、動作シーケンスが著しく簡単化され、アスファルト舗装プロセスの基本目標値の1つである常に高い最終締固め度が得られる。十分に高く均一な最終締固め度は、所望の特性、特に耐荷力、すなわち、敷き均されたアスファルト層を変形させたり、例えば轍を形成したりすることなく、交通で生じる負荷を吸収し、それを路盤に伝える能力を示すことができる街路または交通圏にとって必須条件であるからである。スクリードを用いた敷き均し処理の際に達成される実締固め度は、様々な要因により変化することがあるので、それぞれの位置でのその後の締固めの際には、締固め装置が、所望の最終締固め度を達成するためにさらに必要な締固め力だけを生成することが重要である。例えば、最終締固め度までの締固めは、ローラ締固めにより、つまり、例えば静的重力または振動または発振による締固めにより行われる。アスファルト・ローラなどの締固め装置は、2つのドラムまたはホイールセットを有しているので、1走行あたり2段階で締固めを行う。また、ローラは、道路舗装機とは違って、通常、アスファルト層の各位置を複数回走行し、このことは、スクリードの締固めツールにより生成され伝達される実際の締固めを考慮して、最終締固めを正確に行うために極めて有利である。材料密度モジュールを用いることで、さらに、道路舗装機の動作を、例えば、生成される実締固め度による閉ループで、非常に効率的に最適化および監視することが可能になり、この場合、このループでは、動作パラメータは、スクリードで決定されるアスファルト層の特定の締固めに関して例えば自動的に変更され、変更の結果は実締固め度において直ちに読み取ることができる。全体的に見て、このように、道路舗装機、それぞれの締固め装置、さらにはミキサにおいても、操作員が大いに解放されることが可能である。
【0010】
好適な実施形態では、材料密度モジュールは道路舗装機上に配置されているか、または材料密度モジュールのうちの少なくともデータ取得部分が道路舗装機上に配置されて、材料密度モジュールのさらなる部分は道路舗装機から離されて固定式または移動式で配置されており、この後者の場合、好ましくは、それらの部分の間に通信リンクが提供される。このようにして、道路舗装機は、それ自体、動作が最適化されることが可能であり、アスファルト層の敷き均しを行う道路舗装機が、周辺付属装置のマスタとして機能して、それらを誘導することが可能である。
【0011】
好ましくは、少なくとも、プローブであってもよい実締固め度測定装置が、スクリードに設置されて材料密度モジュールに接続されており、これは、実締固め度に関するデータが、リアルタイムで、実際に取得、評価、および/または記録されることが可能である。
【0012】
別の実施形態では、アスファルト層の実締固め度は、ミキサから道路舗装機に搬送されたアスファルト材の組成を好ましくは考慮して、少なくとも1つの締固めツールの動作パラメータをサンプリングおよび変換することにより、材料密度モジュールによって間接的に決定することができる。例えば、結果として、タンパによって生成される実締固め度は、タンパのストロークおよび周波数から決定することができ、またはスクリード・プレートによって生成される実締固め度は、振動装置を備えるスクリード・プレートの周波数から演繹することができ、またはプレッシャ・バーの後に見られる実締固め度は、それぞれのプレッシャ・バーの油圧衝撃圧力、圧力パルスの周波数、および/もしくはプレッシャ・バーの各ストロークでの侵入深さおよび/もしくは加速度から、比較的正確に決定することができる。
【0013】
さらなる好適な実施形態では、アスファルト層の個々の実締固め度を数学的に決定するための算出部が設けられている。これは、実締固め度を、層厚さおよび舗装幅を好ましくは考慮して、単位舗装長あたりの舗装質量から比較的正確に決定および評価することができる。算出部は、材料密度モジュールの一部とすることができ、または、このモジュールと分散的に通信することが可能なものとすることができる。
【0014】
さらに可能であるのは、実締固め度を、毎回、材料密度モジュールにより数値的に、特に少なくとも1つのニューラルネットワークにより計算することである。
【0015】
好適な実施形態では、道路舗装機は、材料密度モジュールにリンクされた航法システムを有している。この場合、材料密度モジュールにより決定された実締固め度の各々は、少なくとも位置データと、好ましくはさらに取得された層および/または時間および/または温度の情報と組み合わせることができ、これらは、例えば、締固め装置にとって意味のあるものであり、締固め力の調整の際には、さらに、それぞれの位置での最終締固めまでの動作遅延を考慮に入れることもできる。
【0016】
できる限り迅速なデータ処理を可能とし、さらに、多くのデータ項目の効率的な処理を可能とするためには、材料密度モジュールが、好ましくはサーバである中央コンピュータに接続されていると好ましい場合があり、中央コンピュータは、好ましくは道路舗装機上に配置されており、または固定されてもしくは移動可能に、道路舗装機とは分離して配置されている。
【0017】
さらなる実施形態では、好ましくは材料密度モジュールによるスクリードの動作最適化のために、少なくとも周波数、ストローク、プレッシャ・バーの衝撃圧力、侵入深さ、さらには任意選択的に締固めツールの動作最適化のための加熱出力などの動作パラメータを、少なくともアスファルト材の温度または所定の最終締固め度を考慮して、変更することが好ましい。このような動作最適化により、操作員がそれほどストレスを感じることなく、均一で高く、ほとんど変動のない実締固め度が達成され、締固め装置は、小さな力を加えるか、または少ない回数の走行を行うだけでよい。
【0018】
さらなる実施形態では、道路舗装機の動作最適化のため、好ましくは材料密度モジュールによって、道路舗装機の動作パラメータである少なくとも舗装速度および/またはスクリードへの材料のスループットおよび/または分配オーガの回転速度および/または出力のうち、少なくとも1つが変更され、これは、好ましくは搬送されたアスファルト材の温度および/または所定の最終締固め度を考慮して行うことができる。これは、締固め装置が、できる限り常に所望の最終締固め度を確保するために、後に小さな締固め力だけを生成するか、または少ない回数だけの走行を行えば済むという点から見ても、有利である。
【0019】
さらに、1つの締固めツールについての個々の実締固め度を、アスファルト層の舗装幅全体またはこの幅の主要部分についての平均値として決定することが好ましい場合がある。この場合には、局所的外れ値を補正することが可能である。
【0020】
さらなる実施形態では、締固め装置に期待される個々の位置での締固め力を、伝達されたデータに基づいて予め得て、その調整を時間に追われることなく行うため、さらに/または、搬送されたアスファルト材の温度が所定の制限に満たなくなる場合、あるいは超える場合に、これをミキサに通知するため、材料密度モジュールと、直接または間接的にミキサおよび/または締固め装置との間にデータ通信リンクが提供されている。
【0021】
好適な実施形態では、スクリードは、敷き均し処理の際に舗装進行方向に順次続く段階において作用する少なくとも2つの締固めツールを有し、それらは、少なくとも1つのタンパと、振動装置を有する少なくとも1つのスクリード・プレートと、少なくとも1つの油圧駆動のプレッシャ・バーとからなるグループからのものである。これにより、少なくとも1つの段階の後、または各段階の後、または最後の段階の後で、実締固め度を材料密度モジュールにより取得することができる。
【0022】
効率的な工事現場管理を目的として、情報および/またはデータを保存する少なくとも1つの記録モジュールを、材料密度モジュールに割り当てることが有利である場合がある。このようにして、最適な作動条件またはパラメータの基本設定に関するデータセットを利用可能に保持することができ、これを後に他の工事現場で取り出して、類似の舗装条件下で使用することが可能である。
【0023】
効率的な工事現場管理を目的として、締固め装置は、これに専用の機上搭載の、または外部の、締固め管理システムを有することが有利である場合があり、これは、少なくともアスファルト層の最終締固め度および/または加える締固め力について、好ましくは監視および/または記録セクションと共に、同様に道路舗装機の材料密度モジュールにより伝達されるデータを処理するためのものである。システムは、大部分は自動的に動作するものであるか、またはそれぞれの操作員を誘導するものであるか、いずれかである。
【0024】
本発明の目的の実施形態について、図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、工事現場管理システムの基本的構成要素と共に示す、工事現場でアスファルト材のアスファルト層を敷き均すためのシステムの概略図である。
【図2】図2は、敷き均されたアスファルト層の断面図である。
【図3】図3は、システムの道路舗装機のスクリードの実施形態の断面図である。
【図4】図4は、システムの道路舗装機のスクリードの他の実施形態の断面図である。
【図5】図5は、例えば図1の工事現場の一部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1において、概略的に示すシステムSは、工事現場でアスファルト層Dを敷き均すためのものであって、例えば、アスファルト材ミキサWと、少なくとも1つのスクリードEを有する少なくとも1つの道路舗装機Fと、少なくとも1つの移動締固め装置Vと、を備えている。ミキサW内で特定の組成および/または温度で調合されたアスファルト材Aのための搬送路Lが、ミキサWと道路舗装機Fとの間に延びており、これによって、このアスファルト材Aは、ローリー3により運搬され、各ローリーによって直接、または道路舗装機Fの前を走行するフィーダBを用いて、道路舗装機Fに搬送される。工事現場では、複数の道路舗装機Fおよび/または複数の締固め装置Vを同時に動かすことができる。
【0027】
ミキサWは、調整可能な温度および組成で個々のローリー3に充填されるアスファルト材Aの特定の混合物を製造するためのフィーダ装置1、2を備えている。搬送されたアスファルト材Aは、例えば搬送路Lの長さおよび/または環境条件に依存する温度をもつものであり、個々のローリー3またはフィーダBのいずれかから、道路舗装機Fのホッパ5に充填される。アスファルト材Aは、縦送りコンベア6によりホッパ5から後方の分配オーガ7に運ばれて、分配オーガ7を調整可能な回転速度および/または出力で駆動することができ、放出されたアスファルト材Aは、道路舗装機F上のレベリング・シリンダにより調整可能なスクリードEの前の路盤に分配される。道路舗装機Fは、航法システム8と、例えば中央コンピュータZを備えた電子制御装置9とを有し、さらに好ましくは、これに専用の機上搭載・材料密度モジュールMを有しており、これは、例えば道路舗装機Fおよび/またはスクリードE上のプローブ10といった測定装置により、アスファルト層Dのそれぞれの位置でスクリードEによって現実に生じる実締固め度を取得して、評価し、さらには、例えばデータとして記録することが可能なものである。材料密度モジュールMは、例えば制御装置9のスロットおよび/または中央コンピュータZにある例えば少なくとも1つの電子ハードウェア・モジュールと、対応するハードウェアとで構成されている。
【0028】
各々の締固め装置Vは、同様に航法システム8を有しており、さらに締固め管理システムKを備えることが可能であり、これは、例えばこの装置に専用の機上搭載のものである。
【0029】
または、材料密度モジュールMまたはその一部M’を、道路舗装機Fから離して、固定式または移動式で配置することができ、これを例えばサーバなど別の中央コンピュータZ’とすることも可能であり、この場合、それらのコンポーネントは、有線または無線のどちらかの通信リンクを介して互いに通信し、また、任意選択的に締固め装置VまたはミキサWと通信する。
【0030】
道路舗装機Fの好ましくは電子的な材料密度モジュールMを少なくとも用いることにより、決定および取得されたスクリードでの個々の実締固め度によってスクリードEの作動状態に関する情報が提供されるので、その動作を最適化および/または監視および記録することができ、これにより、例えば、実締固め度によって閉じたループ制御において、最適および/または所望の作業結果を目的としたスクリードEの動作パラメータを変更することが可能である。また、このようにして、舗装速度、縦送りコンベア6のスループット率、および/もしくは横分配オーガ7の回転速度および/またはパフォーマンスおよび/または高さ調整など、道路舗装機Fの動作パラメータを最適化、監視、および/もしくは記録することもできる。さらに、このように最適化される動作パラメータを、例えば、アスファルト層Dを処理するスクリードEにおける締固めツールについての、これらのツールが個々の実締固め度をアスファルト層Dの特定の位置Pで生じる際の加熱出力とすることができ、また、スクリードEのレベリング・シリンダの高さ調整とすることができる。
【0031】
図示していない測定装置により、道路舗装機Fに運搬されたアスファルト材の温度を特定して、そのようなデータを少なくとも材料密度モジュールMに提供することができ、材料密度モジュールMが、さらに航法システム8と通信して、決定されたアスファルト層Dの個々の実締固め度を、位置および/または時間および/または層および/または温度の情報と結び付ける。その結果、締固め装置Vは、それぞれの位置Pに到達する前に、予め情報を得ることができる。このようにして、必要な締固め力を、締固め装置Vにとって予め、すなわち時間の不足なく、実締固め度に基づいて決定することができ、これにより、締固め装置Vは、その後、実締固め度に基づき所定の最終締固め度を達成するのに必要なだけの締固め力を生成し、または走行を必要な回数だけ実行する。その結果、アスファルト層の極めて均一で高い最終締固め度が、効率的かつ経済的に達成され、この場合、道路舗装機の動作だけではなく、締固め装置の動作も最適化することができ、さらに、ミキサには、値(例えば、運搬されたアスファルト材Aの温度)が特定の制限値に満たないか、または超えた場合に、これを通知することができる。ミキサWでは、最終的な動作パラメータを調整または最適化することができ、この場合、最適なアスファルト材が道路舗装機Fで使用できるようになるまでの搬送路Lに起因して生じる遅延時間が、再び影響する。
【0032】
図2は、層厚さ13と、舗装幅14と、中央の両側で異なる向きに傾いたセクション11、12とを有する、敷き均されたアスファルト層Dの一例の断面図である。アスファルト層Dは、道路舗装機FとスクリードEにより、つまり舗装幅14に渡ってできる限り均一な実締固め度で、敷き均される。その後さらに、締固め装置Vにより最終締固めが施され、このとき、断面形状は図示のように維持されなければならず、締固め装置は、最終締固めが保証されない臨界温度範囲が優勢である位置において最終締固めを行うことは、いかなる状況であっても許されない。このリスクに対して、材料密度モジュールMの伝達情報(さらに温度情報)によって確実に予防措置を取ることができる。
【0033】
図3のスクリードEは、基本スクリード部15と、両側から外に出されて舗装幅14の変更を可能にする拡張スクリード部16とを有する伸縮スクリードである。または、変更できない舗装幅を持つスクリードEを使用することもできる(図示せず)。基本スクリード部15は、また各拡張スクリード部16も同様に、下側にスクリード・プレート17を有しており、そこに選択可能な回転速度で動作させることができる少なくとも1つの振動装置18が配置されており、これにより、スクリード・プレート17は、スクリードEの一段階における締固めツールとして機能する。さらなる締固めツールは、その回転速度および/または偏心度(つまり、ストローク)が選択可能な偏心ドライブ20を有する少なくとも1つのタンパ・バー19を備えたタンパであり、タンパ19は、舗装進行方向(図3で、右から左)の一番先の段階に組み込まれて、スクリード・プレート17の前側でアスファルト材に作用する(2つの締固めツール17、19すなわち2段階)。
【0034】
図4に示すスクリードは、同様に、基本スクリード部15と拡張スクリード部16とを有する伸縮スクリードであるが、固定舗装幅のスクリード(図示せず)とすることもできる。
【0035】
図4のスクリードEでは、基本スクリード部15と、また同様に各拡張スクリード部16が、ここでは少なくとも1つのプレッシャ・バー21(ここでは前後に2つ)により構成されるさらなる締固めツールを備えて、これによる第3の段階を有しており、これは、垂直方向の圧力パルスおよびオプションとして調整可能な加速をもつ油圧ドライブ22による駆動が可能なものであって、舗装進行方向のスクリード・プレート17後方で機能する。ここではその結果、アスファルト層Dを締固めるための3つの段階が提供される。少なくとも1つのプレッシャ・バー21があることで、図4のスクリードで約98%もの実締固め度を得ることができるが、実際には、敷き均されたアスファルト層Dは、やはり原則として、少なくとも1つの締固め装置V(図1)により最終締固めが施される。
【0036】
図5は、図示していない道路舗装機によりアスファルト層Dが敷き均された工事現場の一部を概略的に示しており、この場合、それぞれの位置Pでの実締固め度は、材料密度モジュールMによって決定および評価される。異なる実締固め度は、異なる模様づけ23、24で示されている。締固め装置Vは、材料密度モジュールMにより伝達されるデータを頼りにそれぞれの位置Pまで走行し、そしてその結果に従って、伝達された実締固め度に基づいて所定の最終締固め度を達成するために、そこで必要とされるだけの締固め力を加える。それぞれの位置Pについての温度情報を、例えば締固め管理システムKに提供することもできる。
【0037】
図1のスクリードE上に示されている実締固め度測定装置10は、例えば、舗装幅に沿って配備されるプローブとすることができ、これらは、材料密度モジュールMに接続されており、これにより測定値を転送することが可能であり、また、締固めツール17、19、21のそれぞれの段階での実締固め度、あるいは最後の段階(スクリード・プレート17またはプレッシャ・バー21)の後のそれぞれの位置Pで認められる実締固め度が、適宜、利用および伝達される。この場合、実締固め度の平均値を決定するため、複数のプローブを舗装進行方向に沿って設けることができる。
【0038】
またこれに代えて、実締固め度は、例えば締固めツール17、19、21の動作パラメータを取り出して、例えば、タンパ19のストロークおよび周波数、振動装置18の周波数およびパフォーマンス、ならびに/または各プレッシャ・バー21の油圧衝撃圧力および/もしくは圧力パルスの周波数および/もしくは侵入深さおよび/もしくは加速度によって、例えば、敷き均されたアスファルト材Aの単位舗装路長あたりの質量に基づき、間接的に決定することもできる。ここで、運搬されたアスファルト材の組成と、さらに任意選択的に温度も考慮に入れることが好ましい。
【0039】
またこれに代えて、それぞれの実締固め度は、例えば少なくとも1つのニューロネットワークにより数値的に計算することもでき、この場合、計算処理は中央コンピュータZまたはZ’の支援を得ることができ、また、好適には、図示していない記録モジュールを材料密度モジュールMに割り当てることができ、この記録モジュールにより、データおよび/または情報が記録および保存される。
【0040】
単位舗装距離長あたりの舗装質量を計算により決定する際には、それぞれの位置Pでの、または単位舗装距離長に沿った、層厚さ13および舗装幅14も考慮に入れることが好ましく、これは、任意選択的に、道路舗装機Fに運搬されたアスファルト材の温度を含むことの代わりとされる。
【0041】
各段階の後で材料密度モジュールMにより得られる実締固め度を考慮して、道路舗装機の他の動作パラメータを最適化することができ、それらは、例えば、舗装進行速度、縦送りコンベア6のスループット、ならびに/または道路舗装機F上の横分配オーガ7の回転速度および/もしくはパフォーマンスおよび/もしくは高さ位置、例えばレベリング・シリンダによるスクリードの設定角度、ならびに、任意選択的に、締固めツールの加熱装置の加熱出力、である。第1の段階(タンパ19)の後の実締固め度は、例えば、道路舗装機F上のレベリング・シリンダ(図示せず)によって調整され、アスファルト層Dの均一性のための決定的ファクタであり、スクリードEの設定角度をできる限り維持するための重要な数である。
【0042】
温度と同じく、アスファルト材Aの密度も処理中に変化する。混合処理の後に、アスファルト材Aは嵩密度を有し、これは、スクリードでの嵩密度に基づいて多段階の締固め処理が行われる前に、供給網Lでの搬送中に僅かに変化する。それに続く締固め装置Vによる最終締固めは、静的重力、振動、または発振による締固めとすることができる。アスファルト・ローラは、2つのドラム(ホイールセット)を有しているので、1走行あたり2段階で締固めを行い、このとき、各ローラは、アスファルト層の各位置を複数回走行することができる。
【0043】
スクリードEの動作を最適化するように締固めツール17、19、21の動作パラメータを最適に選択できるようにするためには、それぞれの締固めツールが作用するときまでに達する温度および密度、または現在の実締固め度が重要な情報である。この情報によって、締固めツール17、19、21の動作を、いわば読みだすことができる。従って、上記動作パラメータの少なくとも一部を、例えば、実締固め度によって閉じた制御ループにおいて、その結果で所望の最適条件が確認されるか、またはそれを取り戻すまで、変更することができる。これは、例えば、比較的高く、かつ非常に均一な実締固め度とすることができ、これにより、締固め装置Vは、できる限り均一な、小さな力を加えるだけでよい。
【0044】
材料密度モジュールMは、好ましくは各段階の後に、実締固め度を決定または取得し、それを、例えば位置、層、時間、および温度の情報と共に、例えばサーバである中央コンピュータZまたはZ’に転送する。記録モジュールは、材料密度モジュールMの情報を保存することができる。道路舗装機Fの中央コンピュータZは、処理された質量をキログラム/メートルまたはキログラム/平方メートルで知っている。なぜなら、これらのデータは、例えば工事現場管理システムにより、提供されるからである。中央コンピュータZは、さらに層厚さ13および舗装幅14を知っているので、それぞれの実締固め度の決定に、これらのパラメータも参考にすることができる。例えば、最後の締固め段階後に得られる実締固め度は、航法システム(衛星航法システムG)を用いた位置に関して記録され、例えば、時間、温度、または層の情報と組み合わせて、それぞれの締固め装置Vに伝達される。締固め管理システムKを締固め装置Vが、例えば、最終締固め度を監視および記録するために用いることができ、これにより、締固め装置Vは、道路舗装機Fの材料密度モジュールMの伝達データにアクセスして、個々の位置Pで必要なだけの締固め力を生成する。図5において23に既にかなり均一に模様づけして示されている決定された実締固め度に基づいて、締固め装置Vは、24に均一な模様づけで示す最終締固めを行う。このようにして、結果的に、工事現場において事が円滑に運び、これにより、損傷および/または人身傷害のリスクが最小限に抑えられる。ミキサおよび/または道路舗装機Fおよび/または各々の締固め装置Vの上記すべての操作員は、動作の最適化および監視に関して可能な限り解放される。最終的な作業結果は、例えば、動作パラメータおよび走行経路情報、処理されたアスファルト材など、または任意選択的に障害などであるが、記録されて、検証が可能である。記録されたデータは、後に、前提条件が類似している別の工事現場で、時間節約のため、少なくとも動作パラメータの基本的調整に使用することができる。
【符号の説明】
【0045】
A アスファルト材
B フィーダ
D アスファルト層
E スクリード
F 道路舗装機
G 衛星航法システム
K 締固め管理システム
L 搬送路
M、M’ 電子的な材料密度モジュール
P アスファルト層Dの特定の位置
S システム
V 自走式締固め装置
W アスファルト材ミキサ
Z、Z’ 中央コンピュータ
1、2 フィーダ装置
3 ローリー
6 縦送りコンベア
7 分配オーガ
8 航法システム
9 電子制御装置
10 プローブ
11、12 セクション
13 層厚さ
14 舗装幅
15 基本スクリード部
16 拡張スクリード部
17 スクリード・プレート
18 振動装置
19 ダンパー・バー
20 偏心ドライブ
21 プレッシャ・バー
22 油圧ドライブ
23、24 模様づけ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルト材(A)でできたアスファルト層(D)を、少なくとも1つの締固めツール(17,19,21)を持つ少なくとも1つのスクリード(E)を有する少なくとも1つの道路舗装機(F)と、少なくとも1つの自走式締固め装置(V)と、任意選択的に少なくとも1つのアスファルト材ミキサ(W)とを用いて敷き均すシステム(S)であって、
前記道路舗装機(F)のための、電子的な材料密度モジュール(M)が設けられており、これにより、舗装を施す際には、少なくとも前記道路舗装機(F)および/または前記締固め装置(V)および/または前記ミキサ(W)の動作最適化および/または動作監視のため、少なくとも1つの締固めツール(17,19,21)の領域で生じた前記アスファルト層(D)の少なくとも1つの実締固め度のデータを、取得および評価および/または記録することができることを特徴とする、システム。
【請求項2】
前記材料密度モジュール(M)は前記道路舗装機(F)上に配置されているか、または前記材料密度モジュール(M)のうちの少なくともデータ取得部が前記道路舗装機(F)上に配置されて、前記材料密度モジュールのさらなる部分(M’)は前記道路舗装機(F)から離されて固定式または移動式で配置されていることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
少なくとも プローブであってもよい実締固め度測定装置(10)が、前記スクリード(E)に設置されており、これは、その測定値の転送を可能とするように前記材料密度モジュール(M)に接続されていることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記アスファルト層(D)の実締固め度は、前記ミキサ(W)から前記道路舗装機(F)に運搬された前記アスファルト材(A)の組成および/または温度を好ましくは考慮して、少なくとも1つの締固めツール(17,19,21)の動作パラメータをサンプリングおよび変換することにより、前記材料密度モジュール(M)によって間接的に決定することができることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記アスファルト層(D)の実締固め度を、前記アスファルト層(D)の層厚さ(13)および舗装幅(14)を好ましくは考慮して、単位舗装距離長あたりの敷き均された質量から数学的に決定するため、算出部が、前記材料密度モジュール(M)内に設けられているか、または前記材料密度モジュール(M)に接続されていることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記アスファルト層(D)の実締固め度は、前記材料密度モジュール(M)によって、直接、数学的に決定するか、または間接的に、特に少なくとも1つのニューラルネットワークで、数値的に決定することができることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記道路舗装機(F)は、前記材料密度モジュール(M)にリンクされた航法システム(8)を有し、
前記アスファルト層(D)の決定された個々の実締固め度は、前記材料密度モジュール(M)によって、少なくとも位置データと、好ましくはさらに取得された層および/または時間および/または温度の情報と組み合わせることができることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記材料密度モジュール(M)は、好ましくはサーバである中央コンピュータ(Z,Z’)に通信可能に接続されており、前記中央コンピュータ(Z,Z’)は、好ましくは前記道路舗装機(F)上に配置されており、あるいは前記道路舗装機(F)とは離れた固定式または移動式のものとして配置されていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
好ましくは前記材料密度モジュール(M)による、前記決定および処理されたデータに基づく、前記スクリード(E)の動作最適化のため、少なくとも周波数および/またはストロークおよび/またはプレッシャ・バーの衝撃圧力および/またはプレッシャ・バーの加速度および/または加熱出力などの動作パラメータを、締固めツール(17,19,21)に関して、好ましくは少なくとも搬送されたアスファルト材(A)の組成および/または温度および/または前記締固め装置(V)により生じる前記アスファルト層(D)の最終締固め度を少なくとも考慮して変更することができることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
好ましくは前記材料密度モジュール(M)による、前記決定および処理されたデータに基づく、前記道路舗装機(F)の動作最適化のため、動作パラメータである少なくとも舗装速度および/または前記スクリード(E)への材料のスループットおよび/または分配オーガの回転速度および/または分配オーガの出力および/または前記スクリード(E)の設定角度を、好ましくは少なくとも搬送されたアスファルト材(A)の組成および/または温度および/または前記締固め装置(V)により生じる前記アスファルト層(D)の最終締固め度を考慮して、変更することができることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記実締固め度は、前記アスファルト層(D)の舗装幅(14)全体またはこの幅の主要部分についての平均値として決定されることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記締固め装置(V)で必要な締固め力を、伝達されたデータに基づいて予め調整することで、前記アスファルト層(D)のそれぞれの位置(P)で最終締固め度を達成するため、さらに/または、少なくとも、生成されるべき前記アスファルト材(A)の組成および/または温度変化に関して前記ミキサ(W)に通知するため、前記材料密度モジュール(M)と前記ミキサ(W)および/または前記締固め装置(V)との間にデータ通信リンクが提供されていることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記スクリード(E)は、舗装を施す際に舗装進行方向に順次続く段階において作用する少なくとも2つの締固めツール(17,19,21)を有し、それらは、少なくとも1つのタンパ(19,20)と、振動装置を有する少なくとも1つのスクリード・プレート(17,18)と、少なくとも1つの油圧駆動のプレッシャ・バー(21,22)とからなるグループからのものであり、
少なくとも1つの段階での実締固め度、または最後の段階の後の実締固め度を前記材料密度モジュール(M)により取得することができることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記材料密度モジュール(M)には、取得したデータの形で情報を保存する少なくとも1つの記録モジュールが割り当てられていることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記締固め装置(V)は、これに専用の機上搭載の、または外部の、締固め管理システム(K)を有し、これは、少なくとも敷き均されたアスファルト層(D)の締固め度について、好ましくは監視および/または記録セクションと共に、前記道路舗装機(F)の前記材料密度モジュール(M)により同じく伝達されるデータを処理するためのものであることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
締固めツール(17,19,21)を持つ少なくとも1つのスクリード(E)を有する少なくとも1つの道路舗装機(F)と、少なくとも1つの自走式締固め装置(V)と、さらに任意選択的にアスファルト材ミキサ(W)と、を備えるシステム(S)を用いて、選択可能な層厚さ(13)および舗装幅(14)のアスファルト材(A)でできたアスファルト層(D)を敷き均す方法であって、前記道路舗装機(F)に搬送されるアスファルト材(A)の既知の組成および/または温度に基づいて、それぞれの締固めツール(17,19,21)により前記アスファルト層(D)において実締固め度を生成し、これに続いて前記締固め装置(V)によりアスファルト層(D)において所定の最終締固め度を生成する方法において、
敷き均し処理中に、少なくとも1つの締固めツール(17,19,21)によって前記アスファルト層(D)で生成される実締固め度に関するデータを、材料密度モジュール(M)により取得すること、
これらのデータを、少なくとも前記アスファルト層(D)または工事現場での位置(P)を基準にして処理し、それを、前記締固め装置が前記アスファルト層(D)のそれぞれの位置(P)に達する前に前記締固め装置(V)に予め伝達すること、
前記伝達されるデータを頼りに、実締固め度に関する伝達データに基づき、前記締固め装置(V)または複数の締固め装置(V)により最終締固め度を生成すること、を特徴とする方法。
【請求項17】
敷き均し処理中に、それぞれの締固めツール(17,19,21)により生成される実締固め度、またはすべての締固めツールにより集約的に生成される実締固め度は、前記材料密度モジュール(M)では、数学的に、または直接的もしくは間接的な測定により決定されることを特徴とする、請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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