説明

アナログ電子時計

【課題】指針の移動方向を切り替えて回転させる場合に、歯車のバックラッシュがあっても駆動開始の際に速やかに指針の移動を開始させることのできるアナログ電子時計を提供する。
【解決手段】正転および逆転可能なステッピングモータと、指針と、ステッピングモータの運動を指針に伝達する複数の歯車とを備え、指針を時計回りおよび反時計回りに移動させることのできるアナログ電子時計である。そして、指針を移動させた後、指針の次の移動方向が前回の移動方向と異なっている場合(ステップS34の“YES”)に、指針の次の移動要求が生じるタイミングより前に、ステッピングモータを指針の次の移動方向に対応する回転方向に駆動する補正パルスを供給する補正パルス供給手段(ステップS37〜S39)を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、指針を時計回りと反時計回りとに移動させることが可能なアナログ電子時計に関する。
【背景技術】
【0002】
以前より、指針の移動方向を切り替えて駆動させる場合に、ステッピングモータに余分に駆動パルスを出力して、歯車のバックラッシュ(噛合せ部分の遊び)に起因する指針の非回転を補うようにした装置が提案されている(例えば特許文献1)。
【0003】
また、歯車のバックラッシュに起因する指針の位置ズレを解消するために、指針を反時計回りに回転させて設定位置まで送る場合に、一旦、指針を反時計回りに余分に回転させて設定位置を超えた位置まで送り、その後、指針を時計回りに回転させて設定位置に戻すようにした制御技術についての提案もある(例えば特許文献2,3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−225285号公報(段落0115−0119、図19)
【特許文献2】特開平7−043479号公報
【特許文献3】特開昭57−166585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ステッピングモータと指針との間に複数の歯車が介在している場合、各歯車の噛合せ部分の遊びが積み重なって、歯車のバックラッシュの総量が大きくなることがある。例えば、ステッピングモータのステップ数で例えば2ステップ分〜5ステップ分など、歯車のバックラッシュの総量が複数ステップ分の大きさになることがある。この場合、ステッピングモータの回転方向を逆にした場合に、上記バックラッシュの総量に相当する複数ステップの駆動を余分に行わないと指針まで運動が伝達されないことになる。
【0006】
また、例えば、指針の反時計回りの移動を、指定されたタイミングに開始させる制御を行う場合、歯車のバックラッシュがあると指針の移動が数ステップ遅れて開始されてしまうという問題が生じる。
【0007】
この発明の目的は、指針の移動方向を切り替えて回転させる場合に、歯車のバックラッシュがあっても駆動開始の際に速やかに指針の移動を開始させることのできるアナログ電子時計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
正転および逆転可能なステッピングモータと、指針と、前記ステッピングモータの運動を前記指針に伝達する複数の歯車とを備え、前記指針を時計回りおよび反時計回りに移動させることのできるアナログ電子時計において、
前記指針を移動させた後、前記指針の次の移動方向が前回の移動方向と異なっている場合に、当該指針の次の移動要求が生じるタイミングより前に、前記ステッピングモータを前記指針の次の移動方向に対応する回転方向に駆動する補正パルスを供給する補正パルス供給手段を備えていることを特徴としている。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のアナログ電子時計において、
前記補正パルスは、
前記複数の歯車の噛合せ部分の遊びによって、前記ステッピングモータの回転方向を逆にした場合に、前記ステッピングモータの運動が前記指針に伝達されないステップ数だけ前記ステッピングモータを駆動するパルスであることを特徴としている。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1記載のアナログ電子時計において、
前記複数の歯車の噛合せ部分の遊びによって、前記ステッピングモータの回転方向を逆にした場合に、当該ステッピングモータの運動が前記指針に伝達されない最大ステップ数を表わすステップオフセット値を記憶するオフセット記憶手段を備え、
前記補正パルス供給手段は、
前記オフセット記憶手段に記憶された前記ステップオフセット値に基づいて前記ステッピングモータを前記最大ステップ数駆動させる前記補正パルスを供給する
ことを特徴としている。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1記載のアナログ電子時計において、
前記複数の歯車が前記ステッピングモータの正転寄りに噛合っている状態か逆転寄りに噛合っている状態かを表わす正転逆転情報を記憶する正転逆転状態記憶手段と、
前記補正パルス供給手段による前記補正パルスの供給に基づき前記正転逆転情報を前記次の移動方向に対応する値に書き換える情報書換手段と
を備えていることを特徴としている。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1記載のアナログ電子時計において、
動作モードが切り替えられる際に前記指針を設定位置まで移動させて停止させるモード切替時制御手段を備え、
前記モード切替時制御手段は、
切替え後の動作モードにおける前記指針の次の移動方向が、前記指針を設定位置で停止させる直前の移動方向と同一であれば、前記補正パルス供給手段による前記補正パルスの供給を行わせず、
切替え後の動作モードにおける前記指針の次の移動方向が、前記指針を設定位置で停止させる直前の移動方向と逆であれば、前記補正パルス供給手段による前記補正パルスの供給を行わせる
ことを特徴としている。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項5記載のアナログ電子時計において、
前記モード切替時制御手段は、
動作モードが前記指針を反時計回りに移動させて残り時間を表示する減算タイマーモードへ切り替えられた際、前記指針を時計方向に移動させて前記設定位置で停止させた場合に、前記補正パルス供給手段により前記補正パルスの供給を行わせる
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に従うと、指針の移動方向が切り替えられる場合に、指針の次の移動要求が生じるタイミングより前に、次の移動方向に対応した補正パルスがステッピングモータに供給される。従って、この補正パルスにより、歯車の噛合せ部分の遊びが逆方向に詰められる。従って、次の移動要求のタイミングでステッピングモータが回転することで、この回転が速やかに指針まで伝達されて、速やかに指針の移動を開始させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態のアナログ電子時計の全体構成を示すブロック図である。
【図2】CPUにより実行されるモード切替時処理の制御手順を示すフローチャートの第1部である。
【図3】同、モード切替時処理のフローチャートの第2部である。
【図4】CPUにより実行される減算タイマー処理の制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態のアナログ電子時計の全体構成を示すブロック図である。
【0018】
この実施形態のアナログ電子時計1は、3本の指針(時針、分針、秒針)21を回転させて現在時刻を表示する時刻表示機能、ストップウォッチ機能、および、設定時間から指針21を反時計回りに回転させて残り時間を表示する減算タイマー機能を提供することのできる電子時計である。
【0019】
このアナログ電子時計1は、図1に示すように、文字板上で情報を指し示す複数の指針21と、指針21を駆動するステッピングモータ23と、ステッピングモータ23のロータの回転運動を指針21に伝達する複数の歯車が噛み合わされてなる輪列機構22と、CPU34から供給される駆動パルスに基づいてステッピングモータ23に駆動電流を出力するモータ駆動回路24と、各部に動作電圧を供給する電源部40と、時刻情報が含まれる標準電波を受信して検波を行うアンテナ41および検波回路42と、所定周期のタイミング信号を生成する発振回路38および分周回路39と、分周回路39から供給される所定周期のタイミング信号をカウントして現在時刻を計数する時刻計数回路47と、複数の操作ボタンを有し外部からユーザによる操作指令を入力する操作部44と、アナログ電子時計1の統括的な制御を行うCPU(中央演算処理装置)34と、CPU34が実行する制御プログラムや制御データが格納されたROM(Read Only Memory)36と、工場出荷前の設定工程等において制御データが書き込まれるEEPROM(電気的消去型プログラマブルROM)35と、CPU34に作業用のメモリ空間を提供するRAM(Random Access Memory)37等を備えている。
【0020】
ステッピングモータ23は、CPU34から供給される駆動パルスに応じてモータ駆動回路24からパルス状の駆動電圧を受けることでロータを所定角度(例えば180°)ずつ回転させる。また、駆動パルスの出力パターンによってロータを正転方向に回転させたり、逆転方向に回転させたりすることが可能になっている。
【0021】
分周回路39は、時刻計数回路47へ時刻計数用のタイミング信号を供給するとともに、指針21を早送りする際の動作タイミングを与える早送り用タイミング信号をCPU34に供給する。
【0022】
EEPROM35には、その所定領域(オフセット記憶手段)35aにステップオフセット値“N”が格納されている。このステップオフセット値“N”は、ステッピングモータ23と指針21とを連結する複数の歯車の噛合せ部分の遊び(バックラッシュとも云う)を正転側から逆転側、或いは、逆転側から正転側へと詰めるのに必要なステッピングモータ23の駆動ステップ数を表わすものである。すなわち、指針21を一方向に回転駆動した後、回転方向を逆にしてステッピングモータ23を駆動させた場合に、ステッピングモータ23を上記のステップオフセット値“N”の回数だけステップ駆動しても、指針21(例えば一番移動量の大きな秒針)には運動が伝達されず、次のステップ駆動から指針21に運動が伝達されて指針21が移動することになる。
【0023】
上記のステップオフセット値“N”は、個々の製品ごとにバラツキが生じるため、工場出荷前の調整工程において計測が行われて、求められた値がEEPROM35に書き込まれるようになっている。
【0024】
なお、この実施形態のアナログ電子時計1では、個々の製品ごとのバラツキによっても、ステップオフセット値“N”は“6”より小さな値となるように設計されている。
【0025】
ROM36には、CPU34が実行する制御プログラムとして、時刻表示処理のプログラム36a、ストップウォッチ処理のプログラム36b、減算タイマー処理のプログラム36c、モード切替時処理のプログラム36d、操作部44を介した操作指令の入力に基づいて動作モードを時刻表示モード、ストップウォッチモードおよび減算タイマーモードの中で切り替える操作入力処理のプログラム等が格納されている。
【0026】
時刻表示処理プログラム36aは、時刻計数回路47の計数時刻に同期させてCPU34からモータ駆動回路24へ駆動パルスを出力させることで指針21により現在時刻を表示させたり、所定条件が成立した場合に検波回路42を動作させてタイムコードを受信させることで時刻計数回路47の計数時刻を修正したりするものである。ストップウォッチ処理プログラム36bは、指針21が帰零した状態で操作部44のスタートボタンの操作を待機し、スタートボタンが操作されたら早送りで指針21を時計回りに回転させるとともに、ストップボタンが操作されたら指針21の回転を停止させるものである。
【0027】
減算タイマー処理プログラム36cは、詳細は後述するが、指針21が設定時間の位置で停止している状態で操作部44のスタートボタンの操作を待機し、スタートボタンが操作されたら指針21を反時計回りに回転させるとともに、ストップボタンが操作されたら指針21の回転を停止させるものである。
【0028】
モード切替時処理プログラム36dは、詳細は後述するが、時刻修正時や動作モードの切替時において実行されて、指針21の位置を次の動作に必要な位置まで早送りで移動させるなど、次の動作モードへ移行するための準備を整えさせるものである。このモード切替時処理プログラム36dおよびこれを実行するCPU34によりモード切替時制御手段が構成される。
【0029】
RAM37には、所定の記憶領域にフラグデータ37aや指針位置カウント用データ37bが記憶され、例えばモード切替時処理においてこれらのデータが使用される。フラグデータ37aには、輪列機構22の歯車がステッピングモータ23の正転寄りに噛み合った状態にあることを示す正転フラグ“SEITEN”と、歯車がステッピングモータ23の逆転寄りに噛み合った状態にあることを示す逆転フラグ“GYAKU”と、指針21を反時計回りに早送りさせる要求があることを示す帰零フラグ“KIREIF”とが含まれる。正転フラグ“SEITEN”および逆転フラグ“GYAKU”により正転逆転状態記憶手段が構成される。
【0030】
指針位置カウント用データ37bには、指針21の現在位置を所定位置(例えば00時00分00秒)からのステップ数で表わした現在位置データ“PT”と、モード切替時処理で指針21を移動させる移動先を所定位置からのステップ数で表わした移動先データ“SET”と、歯車のバックラッシュ分のステップ駆動を行うために一時的なカウントに使用されるワークデータ“WK”とが含まれる。
【0031】
現在位置データ“PT”は、例えば、3つの指針21を1つのステッピングモータ23により駆動するこの実施形態のものでは、43200(=60×60×12)ステップの値“0〜43219”がカウントされることになる。例えば、指針21が“00時00分00秒”の位置で“PT=0”となり、時計回りに1ステップ進むごとに“1”ずつカウントアップされる。
【0032】
なお、この現在位置データ“PT”には、歯車のバックラッシュの影響も反映され、ステッピングモータ23が正転方向に駆動して指針21が時計回りに移動しているときにも、ステッピングモータ23が逆転方向に駆動して指針21が反時計回りに移動しているときにも、実際の針位置と値とが一致するデータとなっている。
【0033】
次に、上記構成のアナログ電子時計1により実行されるモード切替時処理および減算タイマー処理の動作についてフローチャートを参照しながら説明する。
【0034】
図2と図3には、CPU34により実行されるモード切替時処理のフローチャートを示す。
【0035】
このモード切替時処理は、時刻修正処理で標準電波を受信した直後、時刻表示モードからストップウォッチモードに切り替えられた際、時刻表示モードから減算タイマーモードに切り替えられた際、ストップウォッチや減算タイマーの計時中に時刻表示モードに切り替えられた際にそれぞれ開始される。
【0036】
また、時刻修正処理で標準電波を受信した直後には、時刻計数回路47の計時データの修正に伴って指針21の位置を早送りして修正するため、修正後の指針21の位置が移動先データ“SET”に設定されてモード切替時処理に移行する。
【0037】
また、ストップウォッチモードへ切り替えられた際には、指針21が“00分00秒”の位置にある状態で計時スタートの操作を待機するため、また、減算タイマーモードへ切り替えられた際には、指針21をユーザにより予め設定されている時間の位置まで移動させて計時スタートの操作を待機するため、これらの位置が移動先データ“SET”に設定されてモード切替時処理へ移行する。
【0038】
また、ストップウォッチ或いは減算タイマーの計測中に時刻表示モードに切り替えられた際には、指針21を計時時刻の位置へ移動させるために、指針21の到着時点の計時時刻の位置が移動先データ“SET”に設定されてモード切替時処理へ移行する。
【0039】
また、上記のようにモード切替時処理へ移行する際には、指針21を移動先まで移動するのに時計回りと反時計回りのどちらが適当か判別されて、反時計回りが適当と判別された場合には、RAM37中の帰零フラグ“KIREIF”が有効値にセットされてからモード切替時処理へ移行するようになっている。
【0040】
モード切替時処理が開始されると、先ず、CPU34は、RAM37中の正転フラグ“SEITEN”の有無(有効値か無効値か)を判別する(ステップS1)。そして、正転フラグ“SEITEN”が無し(無効値)であれば、“NO”側へ進んで、RAM37中の逆転フラグ“GYAKU”の有無を判別する(ステップS12)。
【0041】
ここで、通常であれば、指針21の前回の移動方向に応じて、正転フラグ“SEITEN”あるいは逆転フラグ“GYAKU”の何れか一方がセットされ、ステップS1,S2の判別処理の何れか一方でフラグ有りと判別される。しかしながら、例えば、指針21の回転方向を切り替えている途中にモード変更の操作が行われるなど、例外的な状況で両方のフラグがセットされていない場合が生じる。
【0042】
従って、ステップS1,S2の判別処理で、両方ともフラグ無しと判別されたら、この例外的な状況に対処するために例外処理(ステップS30)を実行してから、このモード切替時処理を終了する。
【0043】
一方、ステップS1の判別処理で正転フラグ“SEITEN”がセットされていると判別されたら、指針21を反時計回りに早送りすることを示すRAM37中の帰零フラグ“KIREIF”の有無を判別し(ステップS2)、フラグ有りであれば、指針21を反時計回りに早送りする処理(ステップS3〜S11)へ移行するが、フラグ無しであれば、指針21を時計回りに早送りする処理(ステップS31〜S33)へ移行する。
【0044】
指針21を反時計回りに早送りする処理(ステップS3〜S11)では、指針21を反時計回りに余分に移動させてから時計回りに数ステップ戻す、振り戻しの処理が行われて、歯車が正転寄りに噛合った状態で移動先の位置まで指針21が送られることになる。すなわち、この処理に移行すると、先ず、CPU34は、指針21を余分に回転させるために移動先データ“SET”から“6”を減算することで、移動先データ“SET”を反時計回りに6ステップ先の位置に再設定する(ステップS3)。そして、ステッピングモータ23を1ステップ逆回転させる駆動パルスを出力し(ステップS4)、現在位置データ“PT”から“1”を減算し(ステップS5)、現在位置データ“PT”が移動先データ“SET”と一致したか判別する(ステップS6)。上記ステップS4の駆動パルスの出力は分周回路39からの早送り用タイミング信号に基づいて行われる。そして、ステップS6の判別の結果、一致でなければステップS4に戻る。
【0045】
つまり、上記のステップS4〜S6のループ処理が、現在位置データ“PT”が移動先データ“SET”と一致するまで繰り返し行われることで、指針21が“6”ステップ余分に設定された位置(移動先データ“SET”の位置より“6−N”だけ正転側にシフトした位置)まで早送りにより送られる。
【0046】
一方、ステップS6の判別処理で一致とされたら、次に、CPU34は、移動先データ“SET”を“6”加算して元の設定値に戻す(ステップS7)。そして、ステッピングモータ23を1ステップ正回転させる駆動パルスを出力し(ステップS8)、現在位置データ“PT”に“1”を加算し(ステップS9)、現在位置データ“PT”が移動先データ“SET”と一致したか判別する(ステップS10)。上記ステップS8の駆動パルスの出力は分周回路39からの早送り用タイミング信号に基づいて行われる。そして、ステップS10の判別の結果、一致でなければステップS8に戻る。
【0047】
このステップS8〜S10のループ処理により、指針21が時計回りに数ステップ戻されて初期の移動先データ“SET”の位置へ合わせられる。このとき、歯車の噛合せ部分の正転寄りの遊びは詰められて、歯車が正転寄りに噛合った状態になる。従って、ステッピング10の判別処理で一致とされたら、RAM37中の正転フラグ“SEITEN”を有効値にセットして(ステップS11)、次に進む。
【0048】
上述したステップS12の判別処理で逆転フラグ“GYAKU”が有りと判別されたら、“YES”側へ進んで、CPU34は、続いて、RAM37中の帰零フラグ“KIREIF”の有無を確認する(ステップS13)。その結果、フラグ有りであれば、針21を反時計回りに早送りする処理(ステップS19〜S21)を実行する。即ち、ステッピングモータ23を1ステップ逆回転させる駆動パルスを出力し(ステップS19)、現在位置データ“PT”から“1”を減算し(ステップS20)、現在位置データ“PT”が移動先データ“SET”と一致したか判別する(ステップS21)。上記ステップS19の駆動パルスの出力は分周回路39からの早送り用タイミング信号に基づいて行われる。そして、ステップS21の判別の結果、一致でなければステップS19に戻る。上記のステップS19〜S22のループ処理が、現在位置データ“PT”が移動先データ“SET”と一致するまで繰り返し行われる。
【0049】
このステップS19〜S21の処理により、指針21を移動先データ“SET”の位置まで移動させることができるが、このとき、歯車は逆転寄りに噛合った状態(逆転フラグ“GYAKU”が有り)になっている。そこで、次に、歯車の噛合せ部分の正転寄りに生じている遊びを詰める処理(ステップS22〜S25)へ移行する。この処理へ移行すると、先ず、CPU34は、RAM37中の逆転フラグ“GYAKU”を無効値にして消し(ステップS22)、ステッピングモータ23を1ステップ正回転させる駆動パルスを出力し(ステップS23)、RAM37中の初期値が“0”であるワークデータ“WK”を“1”加算し(ステップS24)、このワークデータ“WK”がEEPROM35中に記憶されているステップオフセット値“N”に一致したか判別する(ステップS25)。そして、一致に至っていなければステップS22に戻る。
【0050】
すなわち、ステップS22〜S25のループ処理が、ステップオフセット値“N”の回数だけ繰り返されることで、歯車が正転寄りに生じている遊びが詰められて、歯車が正転寄りに噛合った状態へと切り替えられる。このとき指針21には歯車のバックラッシュにより回転運動が伝達されないので指針21の移動は生じない。一方、ステップS25の判別処理で一致と判別されたら、歯車は正転寄りに噛合った状態へと切り替えられているので、RAM37の正転フラグ“SEITEN”をセットして(ステップS26)、減算タイマー用の準備処理(ステップS34〜S40)へと移行する。
【0051】
一方、ステップS13の判別処理で、帰零フラグ“KIREIF”が無しと判別されたら、歯車の噛合せ部分の正転寄りに生じている遊びを詰める処理(ステップS14〜S19)へ移行する。この処理へ移行すると、先ず、CPU34は、RAM37中の逆転フラグ“GYAKU”を無効値にして消し(ステップS14)、ステッピングモータ23を1ステップ正回転させる駆動パルスを出力し(ステップS15)、RAM37中の初期値が“0”であるワークデータ“WK”を“1”加算し(ステップS16)、このワークデータ“WK”がEEPROM35中に記憶されているステップオフセット値“N”に一致したか判別する(ステップS17)。そして、一致に至っていなければステップS15に戻る。
【0052】
すなわち、ステップS15〜S17のループ処理が、ステップオフセット値“N”の回数だけ繰り返されることで、歯車が正転寄りに生じている遊びが詰められて、歯車が正転寄りに噛合った状態へと切り替えられる。このとき指針21には歯車のバックラッシュにより回転運動が伝達されないので指針21の移動は生じない。
【0053】
一方、ステップS17の判別処理で一致と判別されたら、歯車は正転寄りに噛合った状態へと切り替えられているので、RAM37の正転フラグ“SEITEN”をセットして(ステップS18)、指針21を時計回りに早送りする処理(ステップS31〜S33)へ移行する。
【0054】
この処理へ移行すると、ステップS2から移行した場合もステップS18から移行した場合も共に歯車が正転寄りに噛合った状態にあるので、CPU34は、先ず、ステッピングモータ23を1ステップ正回転させる駆動パルスを出力し(ステップS31)、現在位置データ“PT”を“1”加算し(ステップS32)、現在位置データ“PT”が移動先データ“SET”と一致したか判別する(ステップS33)。ステップS31の駆動パルスの出力は、分周回路39からの早送り用タイミング信号に基づいて行われる。そして、ステップS33の判別の結果、一致していなければステップS31に戻る。そして、一致するまで、上記ステップS31〜S33のループ処理が繰り返されることで、指針21が移動先データ“SET”の位置へと送られる。ステップS33の判別の結果、一致と判別されたら次へ移行する。
【0055】
上述した指針21を反時計回りに早送りする処理(ステップS3〜S11)、(ステップS19〜S26)、或いは、上記の指針21を時計回りに早送りする処理(ステップS31〜S33)を経て、指針21を移動先データ“SET”の位置まで移動させたら、次に、減算タイマー用の準備処理(ステップS34〜S40)へと移行する。
【0056】
この処理へ移行したら、先ず、CPU34は、切り替えられた次の動作モードが減算タイマーモードであるか確認し(ステップS34)、減算タイマーモードでなければ減算タイマー用の準備は不要なので、このままこのモード切替時処理を終了する。
【0057】
一方、次の動作モードが減算タイマーモードであると判別されたら、指針21が移動しない範囲で歯車が正転寄りに噛合った状態から逆転寄りに噛合った状態へ変更するために、先ず、CPU34は、RAM37中のワークデータ“WK”にEEPROM35のステップオフセット値“N”を書き込む(ステップS35)。次いで、RAM37中の正転フラグ“SEITEN”を無効値にして消す(ステップS36:情報書換手段)。
【0058】
続いて、CPU34は、ステッピングモータ23を1ステップ逆回転させる補正パルスとしての駆動パルスを出力し(ステップS37)、さらに、ワークデータ“WK”を“1”減算し(ステップS38)、このワークデータ“WK”が“0”になったか判別する(ステップS39)。そして、“0”に達していなければステップS37に戻る。
【0059】
つまり、ステップS37〜S39のループ処理が、ステップオフセット値“N”の回数だけ繰り返されることで、歯車の逆転寄りに生じていた遊びが詰められて歯車が逆転寄りに噛合った状態へと切り替えられる。このとき指針21には歯車のバックラッシュにより回転運動が伝達されないので指針21の移動は生じない。このステップS37〜S39の処理により補正パルス供給手段が構成される。
【0060】
そして、ステップS39の判別処理で、ワークデータ“WK”が“0”になったと判別されたら、上記のループ処理を抜けて、RAM37中の逆転フラグ“GYAKU”をセットする(ステップS40:情報書換手段)。そして、このモード切替時処理を終了する。
【0061】
上記のモード切替時処理により、動作モードが切り替えられた際、指針21が次の動作モードに要求される位置まで早送りされるとともに、次の動作モードで指針21が速やかに移動開始できるように、歯車の噛合せ部分の遊びを正転寄りに持っていったり逆転寄りに持っていったり補正制御がなされるようになっている。すなわち、次の動作モードが減算タイマーモード以外の場合には、指針21の次の移動方向は時計回りなので、歯車が正転寄りに噛み合った状態(遊びが逆転寄りにある状態)のままとする。また、次の動作モードが減算タイマーモードである場合には、次の指針21の移動方向が反時計回りと決まっていることから、歯車が逆転寄りに噛み合った状態になるように歯車の噛合せ部分の遊びを正転寄りに移す補正がなされるようになっている。
【0062】
図4には、CPU34により実行される減算タイマー処理のフローチャートを示す。
【0063】
この減算タイマー処理は、ユーザによる操作部44の操作入力により減算タイマー機能が選択された後、上述のモード切替時処理を経て指針21が設定位置に合わせられた状態で開始されるものである。この減算タイマー処理が開始されると、CPU34は、計時をスタートさせる指針21の次の移動要求、すなわち操作部44のスタートボタンの入力を待機する(ステップS51)。
【0064】
そして、スタートボタンの入力があれば、次に進んで、CPU34は、ステッピングモータ23を1ステップ逆回転させる駆動パルスを出力する(ステップS52)。ここで、上述のモード切替時処理により、歯車が逆転寄りに噛み合った状態(噛合せ部分の遊びが正転寄りに移された状態)にあるので、1回目の駆動パルスから指針21の反時計周りの移動が開始されることとなる。ステップS52の駆動パルスの出力は時刻計数回路47からの1秒信号の入力に基づいて行われる。
【0065】
駆動パルスを出力したら、CPU34は、RAM37中の現在位置データ“PT”を“1”減算し(ステップS53)、操作部44のストップボタンの入力がなされたか確認する(ステップS54)。そして、ストップボタンの入力がなければステップS52へ戻る。
【0066】
そして、ストップボタンの入力があるまでステップS52〜S54のループ処理が繰り返されることで、計時スタート後に指針21が一定周期で反時計回りに移動して、減算タイマーの残り時間が指針21により表示されるようになっている。
【0067】
一方、ストップボタンの入力があれば、ステップS54の判別処理で上記のループ処理を抜けて“YES”側へ進むことで、指針21の移動が停止されて、この減算タイマー処理が終了する。
【0068】
以上のように、この実施形態のアナログ電子時計1によれば、モード切替時処理により、指針21の次の移動方向が反時計回りの方向だと分かっている場合に、指針21の次の移動要求(例えば減算タイマー機能の計時スタートの操作)がある前に、ステッピングモータ23を逆回転させる補正用の駆動パルスが出力されて、歯車の逆転寄りに生じている遊びを詰める補正がなされるようになっている。それにより、指針21の次の移動要求(計時スタートの操作)がなされたときに、ステッピングモータ23の回転運動がすぐに指針21に伝達されて速やかに指針21を回転開始させることができる。
【0069】
また、上記の歯車の噛合せ部分の遊びを詰める処理においては、指針21が移動しない範囲でステッピングモータ23が駆動されるので、指針21に奇異な動きが生じることがなく見た目上美しい動作が得られる。
【0070】
また、この実施形態のアナログ電子時計1によれば、EEPROM35に、歯車の噛合せ部分の遊びの総量をステップ数で表わしたステップオフセット値“N”が記憶され、この値に基づいて、歯車を正転寄りに噛み合った状態から逆転寄りに噛み合った状態にしたり、その逆としたりするバックラッシュの制御が行われる。従って、個々の製品ごとに上記遊びの大きさにバラツキがある場合でも、上記のステップオフセット値“N”を適宜設定することで、上記のバラツキに対応して上記バックラッシュの制御を実現することができる。
【0071】
また、ステップオフセット値“N”として、ステッピングモータ23の回転方向を逆にした場合に、ステッピングモータ23の運動が指針21に伝達されない最大ステップ数が記憶されているので、このステップオフセット値“N”に基づく歯車の戻し制御によって、次にステッピングモータ23を逆の回転方向へ駆動した場合に、すぐに指針21を回転させることができるという効果が得られる。
【0072】
また、歯車が正転寄りに噛合った状態にあるか、逆転寄りに噛み合った状態にあるかを示す正転フラグ“SEITEN”および逆転フラグ“GYAKU”を備え、歯車をステップオフセット値“N”だけ回転させる制御の際に、回転方向に応じて一方のフラグを消して他方のフラグをセットするようにしているので、これらのフラグによって歯車が正転寄りに噛み合った状態にあるのか逆転寄りに噛み合った状態にあるのかを示す状態情報を保持させておくことができる。
【0073】
また、動作モードの切り替え時に実行されるモード切替時処理において、切り替え後の動作モードで要求される指針21の移動方向が時計回りである場合には、そのまま次の動作モードへ移行する一方、例えば減算タイマーモードの場合など、次に要求される指針21の移動方向が反時計回りである場合には、ステッピングモータ23をステップオフセット値“N”の回数だけ逆回転させてから、次の動作モードへ移行する。従って、切り替え後の各動作モードにおいて、歯車のバックラッシュにより指針21の駆動タイミングが遅延することなく、指針21を駆動するタイミングに指針21の移動を速やかに開始させることができる。
【0074】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。例えば、指針は時針、分針、秒針に限られないし、ステッピングモータも3つの指針を1個のステッピングモータで駆動する構成に限られず、2つの指針や1つの指針を1個のステッピングモータで駆動する構成としても良い。
【0075】
また、上記実施形態では、動作モードの切り替え時において歯車の噛合せ部分の遊びを次の回転方向に対応した方向に詰める制御を実行する例を示したが、動作モードの切り替え時だけでなく、指針の次の移動方向が決定されていて且つ直前の移動方向と次の移動方向とが異なるような場合に、同様の制御を実行しても同様の効果が奏される。
【0076】
また、上記実施形態では、指針の次の移動要求として計時スタートを表わす外部操作を例示したが、指針の次の移動要求は外部から与えられるものでなく、アナログ電子時計の内部で発生するものとしても良い。その他、実施形態で示した細部構成および細部方法については、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 アナログ電子時計
21 指針
22 輪列機構
23 ステッピングモータ
24 モータ駆動回路
34 CPU
35 EEPROM
35a ステップオフセット値の格納領域
36 ROM
36c 減算タイマー処理プログラム
36d モード切替時処理プログラム
38 発振回路
39 分周回路
44 操作部
47 時刻計数回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正転および逆転可能なステッピングモータと、指針と、前記ステッピングモータの運動を前記指針に伝達する複数の歯車とを備え、前記指針を時計回りおよび反時計回りに移動させることのできるアナログ電子時計において、
前記指針を移動させた後、前記指針の次の移動方向が前回の移動方向と異なっている場合に、当該指針の次の移動要求が生じるタイミングより前に、前記ステッピングモータを前記指針の次の移動方向に対応する回転方向に駆動する補正パルスを供給する補正パルス供給手段を備えていることを特徴とするアナログ電子時計。
【請求項2】
前記補正パルスは、
前記複数の歯車の噛合せ部分の遊びによって、前記ステッピングモータの回転方向を逆にした場合に、前記ステッピングモータの運動が前記指針に伝達されないステップ数だけ前記ステッピングモータを駆動するパルスであることを特徴とする請求項1記載のアナログ電子時計。
【請求項3】
前記複数の歯車の噛合せ部分の遊びによって、前記ステッピングモータの回転方向を逆にした場合に、当該ステッピングモータの運動が前記指針に伝達されない最大ステップ数を表わすステップオフセット値を記憶するオフセット記憶手段を備え、
前記補正パルス供給手段は、
前記オフセット記憶手段に記憶された前記ステップオフセット値に基づいて前記ステッピングモータを前記最大ステップ数駆動させる前記補正パルスを供給する
ことを特徴とする請求項1記載のアナログ電子時計。
【請求項4】
前記複数の歯車が前記ステッピングモータの正転寄りに噛合っている状態か逆転寄りに噛合っている状態かを表わす正転逆転情報を記憶する正転逆転状態記憶手段と、
前記補正パルス供給手段による前記補正パルスの供給に基づき前記正転逆転情報を前記次の移動方向に対応する値に書き換える情報書換手段と
を備えていることを特徴とする請求項1記載のアナログ電子時計。
【請求項5】
動作モードが切り替えられる際に前記指針を設定位置まで移動させて停止させるモード切替時制御手段を備え、
前記モード切替時制御手段は、
切替え後の動作モードにおける前記指針の次の移動方向が、前記指針を設定位置で停止させる直前の移動方向と同一であれば、前記補正パルス供給手段による前記補正パルスの供給を行わせず、
切替え後の動作モードにおける前記指針の次の移動方向が、前記指針を設定位置で停止させる直前の移動方向と逆であれば、前記補正パルス供給手段による前記補正パルスの供給を行わせる
ことを特徴とする請求項1記載のアナログ電子時計。
【請求項6】
前記モード切替時制御手段は、
動作モードが前記指針を反時計回りに移動させて残り時間を表示する減算タイマーモードへ切り替えられた際、前記指針を時計方向に移動させて前記設定位置で停止させた場合に、前記補正パルス供給手段により前記補正パルスの供給を行わせる
ことを特徴とする請求項5記載のアナログ電子時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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