説明

アプタマー調節される核酸及びその利用

【課題】直接転写物を標的とすることのできるRNAベースのレギュレーターの能力を、典型的にタンパク質ベースのレギュレーターと結合したアロステリック制御と結合すること。
【解決手段】(i)外来の酵素活性に対する基質を形成することのできる基質配列、及び(ii)リガンドに結合するアプタマーを包含する核酸であって、リガンドの該アプタマーへの結合が、核酸のコンホメーション変化を引き起こし、それが、基質配列の、該基質を形成する能力を変え及び/又は外来酵素活性の基質のKm及び/若しくはKcatを変える、当該核酸。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
最近数年間において、シス及びトランスRNAエレメントは、遺伝子発現の重要なレギュレーターとして十分認識されるようになった。細胞は、種々の非コードRNAベースのエレメントを利用して、複雑な遺伝子ネットワーク例えば発生のタイミング及び概日時計に関与するものを調節する(Banerjee等、Bioessays 24, 119-29(2002);Kramer等、Nature 421, 948-52(2003))。アンチセンスRNAは、小さいトランス作用性RNA(taRNA)であって、標的メッセンジャーRNA(mRNA)の相補性セグメントに結合して、ターゲティングディケイ、翻訳ブロック及び選択的スプライシングパターンなどの機構によって遺伝子発現を調節する(Good, Cell Mol Life Sci 60, 823-4(2003);Good, Cell Mol Life Sci 60, 854-61(2003);及びVacek等、Cell Mol Life Sci 60, 825-33(2003))。ミクロRNA(miRNA)、mRNA及びゲノム中の相補的配列と相互作用することにより翻訳又はRNAディケイに影響を及ぼす小型taRNAが後生動物遺伝子調節に広く行き渡っていることはありそうなことである(Bartel, Cell 116, 281-97(2004))。小さい干渉性RNA(siRNA)及び二本鎖RNA(dsRNA)は、正確にmRNAを標的として、それらの発現を後生動物におけけるRNA干渉(RNAi)経路によって阻害することができ、細胞の宿主防御システムの部分であると考えられている(Scherer, Curr Pharm Biotechnol 5, 355-60(2004))。リボザイムは、触媒機能を示すRNA分子であり、ウイルスによって遺伝子発現を調節するために利用されることが示されている(Lilley, Trends Biochem Sci 28, 495-501(2003))。リボスイッチ、mRNA中のシス作用性の代謝産物結合構造は、遺伝子発現を、翻訳開始の変調、転写終結の破壊又はmRNAのリボザイム機構による開裂により制御する(Mandal等、Nat Struct Mol Biol 11, 29-35(2004);Winkler, Nature 419, 952-6(2002);及びWinkler, Nature 428, 281-6(2004))。最近の研究は、これらのRNAベースのレギュレーターの、原核生物からヒトに至る種々の生物群を横切る普及を示した(Barrick等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101, 6421-6(2004);Yelin等、Nat Biotechnol 21, 379-86(2003);及びLavorgna等、Trends Biochem Sci 29, 88-94(2004))。
【背景技術】
【0002】
研究者は、この比較的容易であること(それにより、RNAライブラリーを生成して探索し、新規な機能特性を有する合成RNAベースの分子を造ることができる)を利用してきた。アプタマーは、選択したリガンドと高い親和性及び特異性をもって相互作用する核酸結合性種である。これらの分子は、イン・ビトロ選択として公知の選択及び増幅の反復サイクル又はSELEX(Systematic Evolution of Ligands by EXponential enrichment)によって生成される(Ellington等、Nature 346, 818-22(1990);及びTuerk等、Science 249, 505-10(1990))。アプタマーは、種々の標的例えば染料、タンパク質、ペプチド、芳香性小型分子、抗生物質、及び他の生体分子に結合するように選択されてきた(Hermann等、Science 287, 820-5(2000))。アプタマーを迅速且つ並行的方法で生成するために、高スループットの方法及び実験室オートメーションが開発されてきた(Cox等、Nucleic Acids Res 30, e108(2002))。研究者は、アプタマーが、他の機能的RNA分子にアロステリック制御特性を与えることができることを示してきた。かかるアロステリック制御戦略は、イン・ビトロシグナリングアプタマー、イン・ビトロセンサー及びイン・ビトロアロステリック制御されたリボザイムを構築して選択するために採用されてきた(Jhaveri等、Nat Biotechnol 18, 1293-7(2000);Roth等、Methods Mol Biol 252, 145-64(2004);及びStojanovic等、J Am Chem Soc 126, 9266-70(2004))。
【0003】
天然の系におけるRNAベースのレギュレーターエレメントの広く行き渡った存在に加えて、研究者は、最近、巧みに処理されたリボレギュレーターシステムを記載した。大腸菌における遺伝子転写物からの相対的発現レベルをRNAのプロセッシング及び崩壊を制御することにより調節するシス作用性RNAエレメントが記載された(Smolke等、Appl Environ Microbiol 66, 5399-405(2000))。他の例においては、大腸菌における組み合わせたシス/トランスリボレギュレーターシステムが記載され、そのシス作用性RNAエレメントは、転写物のリボソーム結合部位をマスクし、それにより翻訳を阻害し、トランス作用性RNAは、シス作用性エレメントに結合して翻訳を可能にする(Isaacs等、Nat Biotechnol 22, 841-7(2004))。遺伝子発現を哺乳動物細胞及びマウスにおいて、RNA開裂を介して作用することにより制御し、その活性が小型分子薬物及びアンチセンスオリゴヌクレオチドによって調節されうるシス作用性エレメントが、最近、記載された(Yen等、Nature 431,471-6(2004))。最後に、染料テトラメチルロサミンへの結合に際してタンパク質ベースの転写アクチベーターと相互作用して転写を誘導するアロステリックアプタマー構築物が、最近、記載された(Buskirk等、Chem Biol 11, 1157-63(2004))。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Banerjee等、Bioessays 24, 119-29(2002)
【非特許文献2】Kramer等、Nature 421, 948-52(2003)
【非特許文献3】Good, Cell Mol Life Sci 60, 823-4(2003)
【非特許文献4】Good, Cell Mol Life Sci 60, 854-61(2003)
【非特許文献5】Vacek等、Cell Mol Life Sci 60, 825-33(2003)
【非特許文献6】Bartel, Cell 116, 281-97(2004)
【非特許文献7】Scherer, Curr Pharm Biotechnol 5, 355-60(2004)
【非特許文献8】Lilley, Trends Biochem Sci 28, 495-501(2003)
【非特許文献9】Mandal等、Nat Struct Mol Biol 11, 29-35(2004)
【非特許文献10】Winkler, Nature 419, 952-6(2002)
【非特許文献11】Winkler, Nature 428, 281-6(2004)
【非特許文献12】Barrick等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101, 6421-6(2004)
【非特許文献13】Yelin等、Nat Biotechnol 21, 379-86(2003)
【非特許文献14】Lavorgna等、Trends Biochem Sci 29, 88-94(2004)
【非特許文献15】Ellington等、Nature 346, 818-22(1990)
【非特許文献16】Tuerk等、Science 249, 505-10(1990)
【非特許文献17】Hermann等、Science 287, 820-5(2000)
【非特許文献18】Cox等、Nucleic Acids Res 30, e108(2002)
【非特許文献19】Jhaveri等、Nat Biotechnol 18, 1293-7(2000)
【非特許文献20】Roth等、Methods Mol Biol 252, 145-64(2004)
【非特許文献21】Stojanovic等、J Am Chem Soc 126, 9266-70(2004)
【非特許文献22】Smolke等、Appl Environ Microbiol 66, 5399-405(2000)
【非特許文献22】Isaacs等、Nat Biotechnol 22, 841-7(2004)
【非特許文献23】Yen等、Nature 431,471-6(2004)
【非特許文献24】Buskirk等、Chem Biol 11, 1157-63(2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リボレギュレーターは、柔軟な遺伝子調節のための強力なツールを提供する。しかしながら、直接転写物を標的とすることのできるRNAベースのレギュレーターの能力を、典型的にタンパク質ベースのレギュレーターと結合したアロステリック制御と結合することへの要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
本発明は、アプタマー調節されるトランス作用性核酸、即ち「aptaスイッチ」を提供する。主題のaptaスイッチは、容易に処理して様々なリガンドに応答性とすることができ、多くの応用において有用な用途の広い核酸クラスである。例えば、aptaスイッチは、リガンド依存的様式で標的とした遺伝子の活性を変調するようにデザインすることができ、それ故、内因性又は異質遺伝子の発現を変調するのに有用である。
【0007】
この発明のトランス作用性aptaスイッチは、aptaスイッチのリガンド依存性活性を配列依存様式などで指示するエフェクタードメイン、及びリガンドに結合してエフェクタードメインの活性に影響を及ぼすようにaptaスイッチの構造にアロステリック変化を誘導するアプタマードメインを含む。例えば、リガンドのアプタマードメインへの結合は、エフェクタードメインの他の分子(酵素など)又は標的配列(標的遺伝子など)と相互作用する能力を変える核酸におけるコンホメーション変化を引き起こしうる。このエフェクタードメインは、その標的分子又は核酸との相互作用への利用可能性により規定される少なくとも2つのコンホメーション状態、「オフ」状態及び「オン」状態を有しうる。例えば、エフェクタードメインがアンチセンス配列である場合には、そのエフェクタードメインは、ターゲティング配列が標的遺伝子との相互作用に利用できなくされ、それ故、aptaスイッチが「オフ」と考えられるヘアピンループコンホメーションを採りうる。このアンチセンスの具体例においては、「オン」であるaptaスイッチは、それが、標的遺伝子中の配列と分子間塩基対合によってハイブリダイズすることに自由であることによって、標的遺伝子と相互作用することが可能であるコンフィギュレーションのエフェクタードメインを有しうる。対照的に、エフェクタードメインとしてRNAi構築物を有する具体例を考えると、「オン」状態は、aptaスイッチ内のターゲティング配列の分子内塩基対合が、RNAアーゼIII酵素(Dicerなど)の基質である二本鎖(ヘアピンなど)を造るものであってよく、「オフ」状態においては、ターゲティング配列は、(効率的)基質である構造の部分でない。この発明のエフェクタードメインは、「オン」及び「オフ」の状態を、アプタマードメインへのリガンド結合に応答して切り替えることができる。それ故、アプタマー調節される核酸は、活性がリガンド結合に応答して「オン」及び「オフ」されるスイッチとして作用する。ある具体例において、このエフェクタードメインの機能は、リガンドの存否に依存し、及び/又はアプタマードメインへの結合に利用できるリガンドの量若しくは濃度に依存する。
【0008】
ある具体例において、主題のaptaスイッチは、(i)外来の酵素活性に対する基質を形成することのできる基質配列、及び(ii)リガンドに結合するアプタマーを包含する。リガンドのアプタマーへの結合は、核酸のコンホメーション変化を引き起こし、それは、基質配列の、酵素の基質を形成する能力を変え及び/又は外来酵素活性の基質であるようにその効率を例えばKm及び/若しくはKcatを変えることにより変える。ある具体例において、この基質配列は、リガンドの存在下でのみ基質を形成し(「リガンド活性化された基質」)、他の具体例においては、この基質配列は、リガンドの非存在下でのみ基質を形成する(「リガンド不活性化された基質」)。ある好適な具体例において、この効果は、リガンドの投与量に依存する。
【0009】
これらの具体例を更に説明するために、コンホメーション変化は、分子内二本鎖(基質配列を含む)を生成し又は除去するものであってよく、二本鎖は、外来酵素活性の基質である。
【0010】
例えば、外来酵素活性は、RNアーゼ酵素である。ある場合には、このRNアーゼ酵素は、RNアーゼIII酵素例えばDICER又はDROSHAである。それらの具体例においては、基質配列は、siRNA、miRNA又はそれらの前駆体若しくは代謝産物をRNA干渉経路で、RNアーゼIII酵素による反応の産物として生成するように選択される。
【0011】
ある具体例において、この酵素活性は、基質aptaスイッチに作用することができ、それで、その反応の生成物は、(a)生物学的結果(例えば、表現型の変化)を誘導することのできる核酸、及び(b)細胞内で基質aptaスイッチと異なる様式で分配する核酸である。例えば、その生成物は、核から細胞質へ移動することができ、その基質は、主として核に局在する。更に説明するために、aptaスイッチは、Droshaのpri−miRNA又はpre−miRNA基質を形成する基質配列を含むことができ(即ち、核に局在)、Drosha媒介の開裂の生成物は、miRNAであり、これは、細胞質へ移動することができ、Dicerによって作用されうる(即ち、RNA干渉経路にインプットされる)。
【0012】
他の説明において、コンホメーション変化は、基質配列の能力を変えて第二の(別個の)核酸種例えば標的遺伝子との分子間二本鎖特徴を形成するものであってよい(ここに、二本鎖特徴は、外来酵素活性の基質である)。例えば、第二の核酸種は、mRNAであってよく、外来酵素活性は、mRNAを、aptaスイッチとの二本鎖特徴の形成に依存する様式で、例えばRNアーゼH酵素及び/又はRNアーゼP酵素の活性化などによって変える。
【0013】
更に別の例においては、アプタマーへのリガンド結合は、基質配列が、ポリメラーゼ、レコンビナーゼ、リガーゼ、メチラーゼ、グリコシラーゼ又はヌクレアーゼなどの他の外来酵素活性の基質を形成することを誘導し又はそれを阻止することができる。
【0014】
ある具体例において、本発明の核酸は、(i)標的遺伝子の発現を阻止するアンチセンス配列、及び(ii)リガンドに結合するアプタマーを含む。これらの具体例において、リガンドのアプタマーへの結合は、核酸のコンホメーション変化を引き起こし、これは、アンチセンス配列の、第二の標的遺伝子中の標的配列の発現を阻止する能力を変える。かかるコンホメーション変化は、分子内塩基対合を核酸内で変えることを含むことができ、それで、アンチセンス配列は、標的遺伝子中の配列とハイブリダイズするのに利用可能なる。ある具体例において、アンチセンス配列は、標的配列と、リガンドの存在下でのみハイブリダイズすることができ(「リガンド活性化されたアンチセンス」)、他の具体例においては、それは、標的配列と、リガンドの非存在下でのみハイブリダイズすることができる(「リガンド不活性化されたアンチセンス」)。ある好適具体例において、その効果は、リガンドの投与量に依存している。
【0015】
更に例示すると、aptaスイッチは、アプタマーへのリガンド結合が、アンチセンス配列を標的遺伝子へのハイブリダイゼーションに利用可能にするコンホメーション変化を引き起こすようにデザインすることができ、又はリガンド結合が、アンチセンス配列を標的遺伝子へのハイブリダイゼーションに利用不能にするコンホメーション変化を引き起こすようにデザインすることができる。あるデザインにおいては、リガンドのアプタマーへの結合は、核酸内のコンホメーション変化を引き起こし、これは、アンチセンス配列の標的遺伝子へのハイブリダイゼーションにより形成される二本鎖の融点(Tm)を変える。
【0016】
かかる具体例は、遺伝子発現を、標的遺伝子のRNA転写物にハイブリダイズするように選択し又は標的遺伝子のゲノム配列にハイブリダイズするように選択したアンチセンス配列の利用によって阻止するのに有用である。
【0017】
同様に、アンチセンス配列は、種々のスプライシング変異体の発現レベルを、イントロンスプライシングを遂行する様式で転写物へのハイブリダイゼーションによって変えるように選択することができる。
【0018】
ある具体例において、この発明は、標的遺伝子の発現を変えるトランス作用性核酸を提供する。かかる構築物は、(i)標的遺伝子にハイブリダイズすることができて標的遺伝子の発現を調節するターゲティング配列;及び(ii)リガンドに結合するアプタマー配列を含む。このターゲティング配列は、aptaスイッチ中の単一の隣接した配列ストレッチであってよく、又は幾つかの隣接していない配列(即ち、一つ以上の介在ヌクレオチドにより中断されている)に由来してもよい。アプタマーに結合された場合、リガンドは、標的遺伝子の発現を調節するターゲティング配列の能力に影響を及ぼす核酸構造のコンホメーション変化を引き起こし、これは、そのリガンドの存在に依存する様式での調節を生じる。ある好適具体例において、この効果は、リガンドの投与量に依存する。これらの具体例に含まれる典型的なaptaスイッチ構築物は、アンチセンス又はRNAi機構により働くものである。
【0019】
例として、ターゲティング配列は、標的遺伝子のRNA転写物にハイブリダイズし、それにより、そのRNA転写物から翻訳されるタンパク質の量を減少させ及び/又はそのRNA転写物のスプライシングを変えるように選択することができる。或は、ターゲティング配列は、標的遺伝子のゲノム配列にハイブリダイズしてそのゲノム配列から転写されるRNAの量を減少させるように選択することができる。
【0020】
ある具体例において、主題の核酸は、(i)第二の核酸の標的配列にハイブリダイズするハイブリダイゼーション配列;及び(ii)リガンドに結合するアプタマーを含む。アプタマーへのリガンド結合は、核酸のコンホメーション変化を引き起こし、それは、ハイブリダイゼーション配列の、標的配列にハイブリダイズする能力を変える。ある具体例において、このハイブリダイゼーション配列は、標的配列と、リガンドの存在下でのみハイブリダイズすることができ(「リガンド活性化されたハイブリダイゼーション」)、他の具体例では、それは、標的配列に、リガンドの非存在下でのみハイブリダイズすることができる(「リガンド不活性化されたハイブリダイゼーション」)。ある好適具体例において、この効果は、リガンドの投与量に依存する。
【0021】
上記の様々な具体例の各々において、核酸は、リボ核酸(RNA)であってよい。同様に、この発明は又、(i)細胞中で転写されたときaptaスイッチを生成するにコード配列、及び(ii)この発現構築物を含む細胞におけるaptaスイッチのコード配列の転写を調節する少なくとも一つの転写調節配列を含む発現構築物をも提供する。
【0022】
ある具体例において、aptaスイッチは、ポリアデニルテールを含み、又は発現構築物の場合には、転写されたときにaptaスイッチ転写物上にポリAテールを生成するコード配列を含む。主題のaptaスイッチ構築物は様々なヌクレオチド及びヌクレオチド類似体から導くことができるということ(アンチセンス及びsiRNA構築物から、本発明における利用のために適合させうるような様々な結合化学を利用)は当業者に認められよう。更に説明するために、このaptaスイッチは、少なくとも一つの天然にないヌクレオシド類似体及び/又は天然にないヌクレオシド残基間の主鎖リンカーを含むことができる。かかる類似体及びリンカーを用いて、天然のヌクレオシド及びホスフェート主鎖リンカーの対応する核酸と比較して、安定性、ヌクレアーゼ感受性(又は耐性)及び/又はバイオアベイラビリティー(例えば、細胞透過性)を変えることができる。
【0023】
主題のaptaスイッチのある好適具体例において、核酸構築物は、40〜500ヌクレオチドの、一層好ましくは50〜200ヌクレオチドのサイズの範囲にある。
【0024】
アプタマーが結合しそれ故aptaスイッチが調節されるリガンドの選択は、莫大である。ある例においては、このリガンドは、2500amu未満の分子量を有する小型分子である。これらは、天然の又は非天然の分子であり、ペプチド、小型有機分子(薬物及びある種の代謝産物及び中間体、補因子などを含む)及び金属イオン(単に説明のため)を含む。
【0025】
ある具体例において、このリガンドは、天然産物である。これは、シグナル変換剤例えば二次メッセンジャー分子又は翻訳後に修飾されたタンパク質並びにポリペプチド、ペプチド、核酸、炭水化物、脂肪酸及び脂質、非ペプチドホルモン(ステロイドなど)及びこれらの代謝前駆体又は産物を含む。
【0026】
ある具体例において、特に、細胞における代謝経路の調節のために、リガンドは、酵素補因子、酵素基質又は酵素媒介反応の産物であってよい。
【0027】
特に、aptaスイッチを異所的に投与したリガンドを用いて調節することを意図した具体例のために、そのリガンドは、好ましくは細胞透過性のものである。
【0028】
ある別の具体例において、aptaスイッチのアプタマードメインは、他の環境変化に応答性である。環境変化には、pH、温度、浸透性、又は塩濃度の変化が含まれるが、これらに限られない。
【0029】
ある具体例は、一種以上の予備選択した又は予め決めたリガンドに応答性のアプタマー及びアプタマードメインをデザインして選択する方法を提供する。aptaスイッチは又、それらの切替え作用が多かれ少なかれリガンド結合に応答性であるように「調整」することもできる。aptaスイッチは又、アプタマードメインの結合親和性がそのリガンドに対して多かれ少なかれ感受性であるように「調整」することもできる。例えば、aptaスイッチにおける分子内二本鎖形成及び他の2°及び3°構造の熱力学的特性は、アプタマードメインが多かれ少なかれリガンド結合に従順であるように、即ち、解離定数(Kd)又は他の速度論パラメーター(Kon及びKoff率など)において明白であるように変えることができる。或は、エフェクタードメインにおけるアロステリック変化は、多かれ少なかれ、ハイブリダイゼーション及び他のaptaスイッチの2°及び3°構造を達成しうる分子内相互作用の変化においてリガンド結合に応答性であってよい。核酸構造の熱力学的特性を変えるための新しい工学ストラテジーは、当分野で周知である。例えば、増大した相補性核酸対合は、エフェクター又はアプタマードメインの安定性を増大させうる。エフェクターステムとアプタマーステムの絶対的及び相対的安定性が、aptaスイッチのスイッチ作用の調整において重要なデザインパラメーターとなることが予想される。
【0030】
他の具体例において、この発明のaptaスイッチは、エフェクタードメインを、ある環境例えば特定の細胞型又は組織、又は特定の細胞内位置又は細胞膜を標的とするために用いられる。組織又は細胞型ターゲティングは、リガンドの組織又は細胞特異性により与えられうる。他の具体例において、この発明のaptaスイッチの活性は、環境特異的様式で変調され、該様式において、aptaスイッチは、特定の細胞型又は組織、又は特定の細胞内位置に特異的である。aptaの環境特異的活性は、特異的局所的環境に特異的なリガンドにより与えられうる。
【0031】
ある具体例において、aptaスイッチは、多数のモジュール成分例えば一種以上のアプタマードメイン及び/又は一種以上のエフェクタードメインを含む。他の具体例において、この発明のaptaスイッチは、多数のリガンドと相互作用して応答する。例えば、aptaスイッチは、多数のリガンドに応答するアプタマードメインを含むことができ、又は各々一つのリガンドに応答する一つより多くのアプタマードメインを含むことができる。適宜、一つ以上のエフェクタードメインが、複数のリガンドに応答する一つ以上のアプタマードメインによって変調される。特定の面において、協同的リガンドに制御された核酸が与えられ、その場合、多数のリガンドが、多数のアプタマードメインに順次的に結合して、一つ以上のエフェクタードメインをアロステリック的に調節する。多数のモジュール成分を含むaptaスイッチは、多数の生体分子入力を処理するのに有用である。
【0032】
ある具体例において、aptaスイッチは、更に、官能基又は官能性薬剤例えばインターカレーター又はアルキル化剤を含む。
【0033】
この発明の更に別の面は、アプタマー調節される核酸分子のライブラリー例えば種々のアプタマー及び/又はエフェクター領域を有する核酸の多彩な集団(上記のような基質配列、アンチセンス配列又はターゲティング配列)を有するライブラリーを与える。これらのライブラリーは、結合しうるリガンドの種類(特異性)及び/又は同じリガンドに対する親和性の変化に関してアプタマーに多様性を有しうる。
【0034】
本発明の更に別の面は、一種以上の本発明のaptaスイッチを含むか、又はaptaスイッチを細胞内で生成するための一種以上の発現構築物で巧みに処理された細胞に関係する。
【0035】
例えば、一具体例において、この細胞は、一種以上の反応の代謝経路を含み、その代謝経路上で制御エレメントとして作用する一種以上のaptaスイッチを含む。これらのaptaスイッチの各々は、(i)代謝経路における酵素補因子、反応体、反応の基質又は生成物から選択したリガンドに選択的に結合するアプタマー配列、(ii)代謝経路に含まれるタンパク質をコードする標的遺伝子の発現を低減させるための遺伝子サイレンシング配列を含むことができる。これらは、この経路で酵素として作用するタンパク質であってよいし、又は調節サブユニットとして作用し若しくはこの経路に他の効果を有するタンパク質(例えば、代謝経路の成分の発現を制御する転写因子又はリプレッサー)であってよい。これらの具体例において、アプタマーへのリガンド結合は、トランス作用性核酸に2つのコンホメーション状態の間で変化を引き起こす(該コンホメーション状態の一方において、トランス作用性核酸は、標的遺伝子の発現を遺伝子サイレンシング配列に依存する様式で阻害し、他方においては、標的遺伝子の発現を阻害しない)。従って、この代謝経路は、少なくとも部分的に、このトランス作用性核酸によって調節することができる。ある好適例において、この代謝経路は、一つの酵素により媒介される少なくとも一つの反応を含み、少なくとも一つのトランス作用性核酸が、その酵素の発現を調節する。
【0036】
主題のaptaスイッチには、多くの潜在的用途があるということは明らかとなろう。他の説明のために、本発明は、細胞における標的遺伝子の、リガンドの存在又は非存在に依存した発現を与える方法を企図している。この方法は、細胞に、例えば、(i)標的遺伝子にハイブリダイズしてその標的遺伝子の発現を調節することのできるターゲティング配列;及び(ii)リガンドに結合するアプタマー配列を有するaptaスイッチを導入することを含む。リガンドのアプタマーへの結合は、トランス作用性核酸にコンホメーション変化を引き起こし、そのトランス作用性核酸は、標的遺伝子の発現を、リガンドの濃度に依存する投与量依存様式で調節する。
【0037】
ある具体例において、このリガンドは、細胞により生成される分子であってよい。他の具体例においては、このリガンドは、例えば異所的添加により又は隣接細胞からの拡散によって細胞と接触される細胞透過性薬剤であってよい。
【0038】
標的遺伝子の発現のリガンド媒介による調節を達成するためのターゲティング配列の様々な具体例がある。一例において、ターゲティング配列は、標的遺伝子の発現をアンチセンス機構の作用により阻害し、リガンド誘導されたコンホメーション変化に依存した様式での標的遺伝子とのハイブリダイゼーションに利用可能である。他の具体例において、このターゲティング配列は、標的遺伝子の発現をRNA干渉機構の作用により阻害して、リガンド誘導されたコンホメーション変化に依存した様式でRNアーゼIII酵素の基質になる。更に別の具体例において、このターゲティング配列は、標的遺伝子の発現を、標的遺伝子との相同組換えによって阻害して、リガンド誘導されたコンホメーション変化に依存した様式でレコンビナーゼの基質となる。
【0039】
本発明のaptaスイッチの他の適用は、細胞中の分析物の量を測定する方法を含む。例えば、aptaスイッチは、細胞に導入することができ(例えば、直接又は発現構築物からの転写により)、このaptaスイッチは、レポーター遺伝子にハイブリダイズすることのできるターゲティング配列を含んでそのレポーター遺伝子の発現を調節することができ、そして分析物に結合するアプタマー配列を含むことができる。分析物のアプタマーへの結合は、コンホメーション変化をトランス作用性核酸に誘導し、そのトランス作用性核酸は、レポーター遺伝子の発現を、分析物の濃度に依存する様式で調節する。従って、レポーター遺伝子の発現量を測定して、そのレポーター遺伝子の発現量を分析物の量と相関させることは、細胞中のリガンドの量を測定するために利用することができる。このレポーター遺伝子は、内因性遺伝子であってよく又は異質遺伝子であってもよい。
【0040】
この発明の他の面は、細胞におけるリガンドの量及び/又は活性を変調する方法を提供する。この方法は、関心あるリガンドに応答性のアプタマーをデザインして選択すること及び、選択したアプタマードメイン及びエフェクタードメインを含むアプタマー調節される核酸を提供することを含みうる。アプタマー調節される核酸は、正又は負のフィードバックループなどによって該アプタマー調節される核酸が応答するリガンドの量及び/又は活性を変調するために利用することができる。アプタマー調節される核酸のエフェクターRNAドメインは、例えばそのリガンドを含む細胞におけるシグナリング又は代謝経路中の分子又はタンパク質を標的とする。例えば、このエフェクターRNAドメインは、関心あるリガンドの生成又は活性に影響を与える代謝産物、中間体分子、又は酵素を標的とすることができる。この方法は、更に、細胞をアプタマー調節される核酸と、細胞中のリガンドの濃度及び/又は活性を変調するのに十分な量及び/又は期間で接触させることを含むことができる(スイッチオンの場合)。
【0041】
他の具体例において、この発明のアプタマー調節される核酸は、細胞内のリガンドの量又は濃度を示すイン・ビボセンサーである。例えば、アプタマー調節される核酸のアプタマードメインと相互作用するリガンドは、アプタマー調節される核酸のエフェクタードメインを変調する(エフェクタードメインは、「レポーター」分子の量及び/又は活性を変調する)。レポーター分子は、エフェクタードメインとの相互作用によって活性化され又は抑制される。それ故、レポーター分子の量又は活性は、関心あるリガンドの量又は濃度と相関する。典型的なレポーター分子には、制限はしないが、蛍光性又は発光性のレポータータンパク質例えばグリーン蛍光タンパク質(GFP)又はルシフェラーゼ、酵素レポーター例えばアルカリホスファターゼ、又は比色レポーター例えばlacZが含まれる。
【0042】
他の具体例において、この発明は、リガンドの量又は活性の存否に応答して細胞の生物学的又は生化学的応答を変調する方法を提供する。例えば、アプタマー調節される核酸のアプタマードメインと相互作用するリガンドは、アプタマー調節される核酸のエフェクタードメインを変調し、該エフェクタードメインは、細胞の生物学的又は生化学的応答を変調する遺伝子を標的とする。この方法は、リガンドに応答性のアプタマーをデザインして選択すること及び、選択したアプタマードメイン及び細胞の生物学的又は生化学的応答を変調する遺伝子を標的とするエフェクタードメインを含むアプタマー調節される核酸を用意することを含みうる。この方法は、更に、細胞をアプタマー調節される核酸と、該細胞の生物学的又は生化学的応答を変調するのに十分な量で及び/又は期間にわたって(スイッチオンの場合)接触させることを含むことができる。
【0043】
ある具体例は又、条件付き遺伝子ネットワークを確立する方法にも向けられている。この方法は、アプタマードメイン及びエフェクタードメインを含むアプタマー調節される核酸を提供することを含みうる(該アプタマードメインは、リガンドに応答性であり、該エフェクタードメインは、シグナリング経路、代謝経路、酵素経路又は該リガンドを生成し若しくはその活性を変調する如何なる生化学的経路とも関係しない分子を標的としている)。この方法は、更に、細胞を、アプタマー調節される核酸と、標的分子の発現を変調するのに有効な量で及び/又は十分な期間にわたって接触させ、それにより条件付き遺伝子ネットワークを確立することを含む(スイッチオンの場合)。条件付き遺伝子ネットワークは、例えば、細胞内シグナリングネットワークを巧みに処理するのに有用でありうる。
【0044】
更に、細胞における内因性又は異質性標的遺伝子の発現を減衰させ又は変調させる方法であって、該細胞を、アプタマー調節される核酸と、標的遺伝子の発現を減衰させ又は変調するのに十分な量で接触させることを含む当該方法を提供する。そのエフェクタードメインは、標的遺伝子に特異的であり、アプタマードメインは、リガンドに応答性である。アプタマードメインへのリガンド結合に応答して、アロステリック変化が、エフェクタードメインにおいて起き、これは、そのエフェクタードメインを標的遺伝子を調節するために利用することを可能にする。それ故、この発明のアプタマー調節される核酸は、スイッチとして作用し、その活性は、リガンド結合に応答して「オン」及び「オフ」に切り替わる。かかる方法は、この発明のアプタマー調節される核酸で処理した細胞の成長、分割、生存又は分化を変えるのに有用である。ある具体例において、この方法は、イン・ビボ又はイン・ビトロでの細胞の処理のために用いられる。
【0045】
ある具体例は、リガンドの濃度及び/若しくは活性又は標的遺伝子の発現の組織又は細胞型特異的な変調方法を提供する。組織又は細胞型特異的な変調は、リガンドの組織又は細胞型特異的な存在によって達成することができる。例えば、アプタマー調節した核酸のアプタマードメインは、組織又は細胞型特異的なリガンドに応答性であり、エフェクタードメインは、該リガンドの濃度及び/又は活性を変調するリガンドを標的とする。他の面において、アプタマー調節される核酸のアプタマードメインは、組織又は細胞型特異的リガンドに応答性であり、そのエフェクタードメインは、標的遺伝子を標的として、その標的遺伝子の発現を変調する。
【0046】
本発明の利用の更に別の例は、病原性因子の感染を治療し又は予防する方法に関係する。かかる方法は、患者に、病原体により又は宿主患者によって発現される遺伝子(例えば、病原体の感染性又は毒性をもたらすもの)を調節するaptaスイッチを十分量投与することを含むであろう。例えば、このトランス作用性核酸は、(i)病原体又は患者の標的遺伝子にハイブリダイズすることができて、該標的遺伝子の発現を調節するターゲティング配列(即ち、標的遺伝子は、病原体による感染の維持、統合、再現、毒性又は拡大に必須である);及び(ii)リガンドに結合するアプタマー配列(該リガンドの濃度は、病原体の存在に依存する)を含むことができる。リガンドのアプタマーへの結合は、この核酸にコンホメーション変化を誘導し、該核酸は、標的遺伝子の発現を、リガンド誘導されたコンホメーション変化に依存する様式で調節して、病原体による感染を低減させ又は阻止する。
【0047】
本発明の適用の更に別の例は、患者の細胞における、細胞の成長、分化又は生存力の表現型の調節を引き起こす方法に関する。かかる方法は、患者の細胞に、(i)患者の細胞中の標的遺伝子にハイブリダイズすることができて、その標的遺伝子(該標的遺伝子の発現は、細胞の成長、分化又は生存力を変化させる)の発現を調節するターゲティング配列;及び(ii)リガンドに結合するアプタマー配列(該リガンドの濃度は、細胞の表現型に依存する)を含むトランス作用性核酸を導入することを含むことができる。この事例では、リガンドのアプタマーへの結合は、該核酸におけるコンホメーション変化を誘導し、該核酸は、標的遺伝子の発現を、細胞の成長、分化又は生存力をリガンドの非存在下と比較して変えるように、リガンド誘導されたコンホメーション変化に依存する様式で調節する。このaptaスイッチは、リガンドの存在に依存する様式で、細胞死を誘導し若しくは阻止し、分化を誘導し若しくは阻止し、又は細胞の増殖を誘導し若しくは阻止するように選択することができる。
【0048】
単に説明のために、この方法は、過形成又は腫瘍細胞の成長を又は正常細胞の望ましくない増殖さえも阻止するために用いることができる。それは、脂肪細胞の死を誘導するために用いることができる。それは又、幹細胞の成長及び分化を調節するため、又は免疫応答の活性化を調節するために利用することもできる。
【0049】
ある具体例において、このaptaスイッチ又はaptaスイッチをコードする発現構築物を、エキス・ビボで細胞に導入することができ、それらの細胞を患者に移植することができる。他の具体例において、このaptaスイッチ又は発現構築物は、イン・ビボで細胞に送達される。
【0050】
この発明の他の面は、本発明のトランス作用性核酸を製薬上許容しうるキャリアーと共に含む医薬製剤組成物を、その配合物が、ヒト又は非ヒト患者への投与に適するように提供する。適宜、製薬上許容しうるキャリアーは、製薬上許容しうる塩、エステル及びかかるエステルの塩から選択される。ある好適具体例において、本発明は、少なくとも一種のアプタマー調節される核酸及び製薬上許容しうるキャリアーを含む医薬製剤を、該製剤をヒト患者に投与するための指示書(文章及び/又は絵画)と一緒に含む医薬パッケージ又はキットを提供する。
【0051】
この発明の更なる面は、アプタマー調節される核酸(処理した細胞における標的遺伝子の発現を変調するのに十分な量)及び製薬上許容しうるキャリアーを含む組成物であって、アプタマー調節される核酸が、アプタマードメイン(リガンドに応答性)及びエフェクターRNAドメインを含む当該組成物を提供する。アプタマードメインへのリガンド結合に際して、エフェクタードメインにアロステリック変化が起きて、それにより、エフェクタードメインの活性を変調する。この組成物は、イン・ビトロ又はイン・ビボでの細胞の処理に用いることができる。
【0052】
ある具体例において、このアプタマー調節される核酸は、イン・ビボで、細胞に、該細胞を核酸コード配列を有する発現ベクターと接触させることにより導入され、該コード配列は、転写されて少なくとも一種の産物を生成し、該産物は、処理された細胞内でアプタマー調節される核酸を生成する。他の具体例において、このアプタマー調節される核酸は、エキス・ビボで細胞に導入される。例えば、このアプタマー調節される核酸は、細胞に、患者の外部において、該細胞を核酸コード配列を有する発現ベクターと接触させることによって導入されうる(該コード配列は、転写されて少なくとも一種の産物を生成し、該産物は、処理された細胞内でアプタマー調節される核酸を生成する)。アプタマー調節される核酸をトランスフェクトされた細胞を、次いで、治療のために患者に導入することができる。これらのエキス・ビボ処理ストラテジーで用いる細胞は、治療すべき患者、ドナー、又は予め生成してある維持細胞のストックから得ることができる。エキス・ビボ処理ストラテジーで用いることのできる細胞には、制限はしないが、幹細胞、体細胞、及び免疫細胞(例えば、T細胞)が含まれる。特定の具体例において、この発明は、幹細胞の分化を変調する方法であって、幹細胞をこの発明のアプタマー調節される核酸で処理することを含み、該アプタマー調節される核酸が、アプタマードメイン及びエフェクターRNAドメインを含む当該方法を提供する。このアプタマードメインは、リガンドの結合に応答性であり、エフェクタードメインは、幹細胞の分化を変調するのに十分である分子又は遺伝子を標的とする。幹細胞は、任意の細胞型(例えば、真皮細胞、肝細胞、網膜細胞など)に分化することができる。
【0053】
ここに記載した方法は、転写されて少なくとも一種の転写産物を生成するコード配列を有する発現ベクターを用いることができ、該転写産物は、処理された細胞においてアプタマー調節される核酸を生成する。例えば、この発現ベクターは、エピソーム性発現ベクター、組込み型発現ベクター、及びウイルス性発現ベクターから選択される。他の好適具体例において、このアプタマー調節される核酸は、ヘアピンRNAを含み、これは、処理された細胞においてプロセッシングを受けてsiRNAになる。
【0054】
本発明の更に別の面は、細胞の成長又は増殖をイン・ビボで阻止する方法であって、動物に、細胞の有糸分裂に必須の標的遺伝子の発現を低減させるのに十分な量のアプタマー調節される核酸を投与することを含む当該方法を提供する。他の面において、このアプタマー調節される核酸は、動物に、細胞のアポトーシスを阻止するのに必須の標的遺伝子の発現を低減させるのに十分な量で投与される。好適具体例において、この動物は、ヒト患者である。
【0055】
ある好適具体例において、アプタマー調節される核酸のエフェクタードメインは、腫瘍遺伝子を標的とする。典型的な腫瘍遺伝子には、制限はしないが、c−myc、c−myb、mdm2、PKA−I、Abl−1、Bcl2、Ras、c−Rafキナーゼ、CDC25ホスファターゼ、サイクリン、サイクリン依存性キナーゼ、テロメラーゼ、PDGF/sis、erb−B、fos、jun、mos、src又はBcr/Abl融合遺伝子が含まれる。ある具体例において、細胞は、アプタマー調節される核酸が、過形成細胞成長の治療(癌の治療を含む)に用いられるようにトランスフォームされた細胞である。他の具体例において、このアプタマー調節される核酸は、リンパ球の活性化を阻止するために用いられる(免疫媒介の炎症性疾患の治療又は予防を含む)。更に別の具体例において、このアプタマー調節される核酸は、平滑筋細胞の増殖を阻止するために用いられる(再狭窄の治療又は予防を含む)。更に別の具体例において、このアプタマー調節される核酸は、上皮細胞の増殖を阻止するために用いられる(例えば、化粧用組成物の成分として)。
【0056】
他の具体例において、この発明は、感染性疾患を治療する方法であって、動物に、病原体の感染の維持、再現又は拡大に必須の標的病原体及び/又は宿主の遺伝子の発現を阻止するエフェクタードメイン及びリガンドに結合するアプタマードメインを含むアプタマー調節される核酸を投与することを含む当該方法を提供する。リガンドのアプタマードメインへの結合は、核酸においてコンホメーション変化を引き起こし、これは、エフェクタードメインの、標的遺伝子の発現を阻止する能力を変える。この核酸は、病原体の感染の維持、再現又は拡大に重要な病原体及び/又は宿主の遺伝子の発現を阻止するのに十分な量で投与される。例えば、アプタマー調節される核酸のアプタマードメインは、病原体の感染に際して生成される感染産物(例えば、HIV、gag、p24、p6、p7、p17、gp120、gp41、pol、env、tat、rev、nef、vif、vpr、vpu、及びtevタンパク質)に結合して応答することができる。このアプタマードメインへのリガンド結合は、核酸において、エフェクタードメインが、病原体の感染の維持又は拡大に重要な病原体及び/又は宿主の遺伝子を標的とするために利用可能となるようにコンホメーション変化を引き起こす。病原体には、ウイルス、真核及び原核生物体が含まれる(病原性ウイルス、細菌及びカビを含む)。
【0057】
本発明の更に別の面は、製薬業を行なう方法であって、(a)スイッチ「オン」の場合、標的細胞の増殖をイン・ビボで阻止して標的細胞の望ましくない増殖を含む疾患の影響を低減させるアプタマー調節される核酸を同定すること;(b)ステップ(a)で同定されたアプタマー調節される核酸の治療プロファイリングを、動物における効力と毒性について行なうこと;及び(c)ステップ(b)で許容しうる治療プロファイルを有するとして同定された少なくとも一種のアプタマー調節される核酸を含む医薬製剤を配合することを含む当該方法を提供する。
【0058】
この製薬業を行なう方法は、更に、医薬製剤を販売のために分配するための分配システムを確立し、適宜、医薬製剤のマーケティングのための販売グループを確立する追加のステップを含むことができる。
【0059】
この発明の尚更に別の面は、製薬業を行なう方法であって、(a)スイッチ「オン」の場合に、標的細胞の増殖をイン・ビボで阻止して標的細胞の望ましくない増殖を含む疾患の影響を低減させるアプタマー調節される核酸を同定すること;(b)(適宜)ステップ(a)で同定されたアプタマー調節される核酸の治療プロファイリングを、動物における効力及び毒性について行なうこと;及び(c)第三者にこのアプタマー調節される核酸の更なる開発の権利を許諾することを含む当該方法を提供する。
【0060】
当業者は、病原体の複製及び/又は感染の阻止、免疫応答の調節、又は細胞の状態の変調を含む(但し、制限はしない)任意の異常の治療に有用なアプタマー調節される核酸が、ここに記載したような製薬業を行なう方法において有用でありうることを認めている。
【0061】
発明の更なる面は、リガンド制御される核酸分子の種々の分野における応用に関係する。例えば、アプタマー調節される核酸は、試料中の分子の存否又は量を検出するためのイン・ビボセンサーとして用いることができる。例えば、アプタマー調節される核酸は、関心あるリガンド分子に結合するアプタマードメイン及びレポーター分子を変調してリガンド分子の存否又は量を示すエフェクタードメインを含むことができる。リガンド分子は、ここに記載したような任意のリガンド例えば小型分子、タンパク質、及び天然又は合成のポリマーであってよい。或は、このアプタマー調節される核酸は、環境変化(例えば、温度、pH、又は塩濃度)に応答することができる。レポーター分子は、蛍光手段、化学的手段又は酵素的手段によって測定することができる。アプタマー調節される核酸は、同様に、イメージング目的のために用いることができる。
【0062】
リガンド制御される核酸は、標的分子に応答性のアプタマードメインを含むことができ(かかる標的分子は又、アプタマードメインのリガンドとも呼ばれる)、このアプタマードメインは、標的分子の正体によってデザインされて選択されうる。標的分子には、天然又は合成のポリマー(タンパク質、ペプチド、核酸、多糖類、糖タンパク質を含む)、レセプター及び細胞表面が含まれうる。或は、標的分子は又、小型分子例えば薬物、ホルモン、代謝産物、中間体、補因子、遷移状態類似体、イオン、金属、核酸、及び毒素を含むことができる。
【0063】
図面の簡単な説明
図1a〜1eは、新規なアンチスイッチレギュレーターのデザイン及び機能活性を示している。図1aは、アンチスイッチ分子がイン・ビボで遺伝子発現を調節するように作用する機構の一般的な図解である。1、アンチセンス配列;2、スイッチする「アプタマーステム」。エフェクターの非存在下では、アンチセンスドメインは、「アンチセンスステム」と呼ばれるRNAの二本鎖領域にて結合され、そのアンチスイッチは、「オフ」状態にある。この状態では、アンチスイッチは、その標的転写物(gfpコード領域をコードする)に結合することができず、その結果、GFP生成はオンである。エフェクターの存在下では、このアンチスイッチは、この分子に結合して、アプタマーステムを形成させ、そのコンホメーションを「オン」状態に切り替える。この状態において、アンチスイッチのアンチセンスドメインは、その標的転写物に結合して、アンチセンス機構により、GFPの生成をオフにする。図1bは、テオフィリン応答性アンチスイッチ、s1及びその標的mRNAの配列及び予想される構造切替えを示している。3、アンチセンス配列;4、スイッチングアプタマーステム配列;5、標的mRNA上の開始コドン。各スイッチングステムの安定性を示してある。図1cは、種々のエフェクター濃度でのs1及び対照のイン・ビボGFP調節活性を示している:テオフィリンの存在下でのアプタマー構築物(負の対照);テオフィリンの存在下でのアンチセンス構築物(正の対照);カフェインの存在下でのs1(負の対照);テオフィリンの存在下でのs1。データは、これらの構築物を有する細胞における、相対的な(GFP発現構築物のみを有する誘導された及び誘導されてない細胞での発現レベルに対する)、標準化されたGFP発現として与えられている。図1dは、蓄積された定常状態レベルのGFP及びアンチスイッチs1を有する細胞へのエフェクターの添加に際しての、GFP発現を阻止するs1のイン・ビボでの一過性応答を示している:テオフィリンなし(−);2mM テオフィリン(+)。図1eは、s1の、標的及びエフェクター分子に対するイン・ビトロアフィニティーアッセイを示している。放射性標識したs1の移動度を、等モル濃度の標的転写物と、示したように濃度を変えたテオフィリンの存在下でモニターした。
図2a及び2bは、アンチスイッチレギュレーターのスイッチ応答のチューニングを示している。図2aは、テオフィリン結合の非存在下で、s1に基づいて同調されたアンチスイッチ(s2〜s4)の予想された構造を示している。6、アンチセンス配列;7、スイッチングアプタマーステム配列;8、改変された配列。各スイッチングステムの安定性を示してある。図2bは、イン・ビボの、s1〜s4の、種々のテオフィリン濃度でのGFP調節活性を示している:s1−最初のアンチスイッチ構築物;s2−不安定化したアンチスイッチ構築物;s3−安定化したアンチスイッチ構築物;s4−不安定化したアンチスイッチ構築物。
図3a及び3bは、アンチスイッチ特性の、モジュレータードメインをデザインプラットフォーム中にスワップすることによる拡大を示している。図3aは、改変アプタマーアンチスイッチ構築物(s5〜s6)の、種々のテオフィリン濃度での、イン・ビボでのGFP調節活性を示している:s5−s1と比べて10倍低いテオフィリンに対する親和性を有するアプタマードメインを有するアンチスイッチ構築物;s6−s5ベースの、不安定化した、改変アプタマーアンチスイッチ構築物。図3bは、種々の小型分子エフェクターに応答性のアンチスイッチ構築物(s1、s7)の、種々のエフェクター濃度での、イン・ビトロでの、GFP調節活性を示している:s1−テオフィリンに応答性の初期のアンチスイッチ構築物;s7−s1ベースの、テトラサイクリンに応答性の、テトラサイクリンアプタマードメインで改変したアンチスイッチ構築物。
図4a及び4bは、新規な「オン」アンチスイッチレギュレーターの再デザイン及び特性表示を示している。図4aは、テオフィリンに応答性の「オン」アンチスイッチレギュレーター(s8)の配列及び構造スイッチングを示している。9、アンチセンス配列;10、スイッチングアプタマーステム配列;11、標的mRNA上の開始コドン。各スイッチングステムの安定性を示してある。s8は、テオフィリンの非存在下でアンチスイッチが「オン」であり又はアンチセンスドメインが自由にその標的に結合するようにデザインされている。テオフィリンの存在下で、アンチスイッチは、アンチセンスドメインが、アプタマーステムの部分である二本鎖RNAステムにて結合するように、「オフ」状態へのコンホメーション変化を受ける。図4bは、種々のテオフィリン濃度での、「オン」及び「オフ」アンチスイッチ構築物のイン・ビボでのGFP調節活性を示している:s1−初期の「オフ」アンチスイッチ構築物;s8−再デザインした「オン」アンチスイッチ構築物(s1ベース)。
図5a及び5bは、多数の遺伝子の、多数のアンチスイッチレギュレーターによる同時調節を示している。図5aは、2つの独立したアンチスイッチ分子が、多数の標的遺伝子の発現をイン・ビボで調節するように作用する機構を示している。それらのそれぞれのエフェクターの非存在下において、アンチスイッチは、「オフ」状態にあり、それらの標的転写物に結合することができない。この状態において、GFP及びYFPの生成は、両方とも、オンである。テオフィリンの存在下では、一つのアンチスイッチがそのコンホメーションを「オン」状態に切り替えて、GFP生成をオフにする。テトラサイクリンの存在下では、第二のアンチスイッチが、そのコンホメーション「オン」状態に切り替えて、YFP生成をオフにする。これらのアンチスイッチは、互いに独立に作用して、遺伝的サーキットにわたる組合せた制御を与える。図5bは、2つのアンチスイッチ構築物(s1、s9)の、それらのそれぞれの標的(GFP、YFP)に対する、それらのそれぞれのエフェクター分子(テオフィリン、テトラサイクリン)の存在下又は非存在下での、イン・ビボでの調節活性を示している。
図6は、ncRNA発現構築物の配列及び開裂機構を示している。この発現構築物は、2つのハンマーヘッドリボザイム配列の間に、ユニークな制限部位BamHI、EcoRI、SalI及びXhoIによって、一般的配列をクローン化することができる(12)。予想された開裂部位を、矢印によって示し、一般的なncRNAインサートを点線で示してある。開裂後に、生成したncRNAは、限定された3’及び5’末端を有する。
図7は、アンチスイッチs1の、ヌクレアーゼマッピングによる構造探査を示している。試料は、濃度を変えたテオフィリン及びRNアーゼT1の存在下でインキュベートしたs1に対応している。RNアーゼT1は、一本鎖G’sの3’を開裂させる。ピーク1は、アンチセンスドメインに対応し、ピーク2は、スイッチングアプタマーステムに対応する。テオフィリンの非存在下及び200μMテオフィリンの両方において、スイッチングアプタマーステムは、開裂され(ピーク2)、これは、このドメインが、一本鎖形態(ヌクレアーゼが接近可能)であることを示している。2mM テオフィリンにおいて、このピークは、存在せず、これは、アプタマーステムが、二本鎖ステム中に防護されていることを示している。その上、2mM テオフィリンにおいて、ピーク2の消失がピーク1の出現と同時に起き、これは、アンチセンスドメインが、ヌクレアーゼに接近可能な一本鎖形態であることを示している。このピークは、一層低レベルのテオフィリンでは存在せず、これは、これらの濃度におけるアンチスイッチのこの領域の接近可能性の変化を支持している。
図8は、リガンド結合の非存在下での、アンチスイッチs5、s6及びs7の配列及び予想された構造を示している。13、アンチセンス配列;14、スイッチングアプタマーステム配列;15、改変配列。各ステム部分の安定性を示してある。s1−s1ベースの改変されたテオフィリンアプタマーアンチスイッチ;s6−不安定化された改変テオフィリンアプタマーアンチスイッチ;s7−s1ベースのテトラサイクリンアプタマーアンチスイッチ。
図9は、テトラサイクリン応答性Venus(YFP)レギュレーター、s9の配列及び構造スイッチング、並びにその標的mRNAを示している。16、アンチセンス配列;17、スイッチングアプタマーステム配列;18、標的mRNA上の開始コドン。各ステムの安定性を示してある。
図10は、イン・ビボのアンチスイッチ特性決定研究で用いられるプラスミドのセットを示している。pTARGET1及びpSWITCH1を単一アンチスイッチ−単一標的研究において用い、pTARGET2及びpSWITCH2を多数のアンチスイッチ−多数の標的研究で用いた。すべての構築物は、誘導可能なガラクトースプロモーターの制御下にあり、酵母の栄養ベースの選択マーカー、酵母の動原体複製起点、大腸菌f1複製起点、及び大腸菌アンピシリン耐性マーカーを含んでいる。
図11は、標的mRNA及びアンチスイッチs1の相対的RNAレベルを示している。相対的レベルは、テオフィリンの非存在下におけるGFPmRNAに対して標準化される。
図12は、この発明で用いることのできるプラスミドの一覧表を示している。
図13は、この発明で用いることのできるアンチスイッチ構築物、対照、及びqRT−PCRプライマーの典型的配列を示している。配列は、5’から3’方向に示されており、それらのRNA形態で示されている。
図14a〜cは、アンチスイッチベースのカフェインセンサー/勾配フィルターを示すグラフである。
図15a〜bは、多数のリガンドに結合して応答して、多数の分子リガンド入力の論理的シグナル統合を与えるアプタマー調節される核酸を示している。
図16は、多数のリガンドに結合して応答する協同的アプタマー調節される核酸の概略図を示している。
図17は、RNA干渉を利用する標的のリガンド制御された調節のためのDicer基質スイッチを示している。図17aにおいて、このスイッチは、リガンドの非存在下で「オン」であり、リガンド結合により「オフ」となる。図17bにおいて、このスイッチは、リガンドの非存在下で「オフ」であり、リガンド結合により「オン」コンホメーションに活性化される。両方の場合において、活性化状態は、エフェクタードメイン及びセンス鎖を、そのドメインをDicerによる開裂のために利用可能にするコンフィギュレーションで与える。この開裂された生成物は、標的活性の調節のためのRNAi機構において機能する。
図18は、RNA干渉を利用する標的のリガンド制御された調節のためのDrosha基質スイッチを示している。図18aにおいて、スイッチは、リガンドの非存在下で「オン」であり、リガンド結合時に「オフ」である。図18bにおいて、このスイッチは、リガンドの非存在下で「オフ」であり、リガンド結合時に「オン」コンホメーションに活性化される。
図19a〜cは、リガンドテオフィリンの結合に応答性のDicer依存性スイッチを示している。図19aは、テオフィリン濃度が、スイッチとセンス鎖との結合に影響を与えることを示している。スイッチへのテオフィリン結合は、スイッチとセンス鎖との減少した結合を生じる。図19bは、スイッチとセンス鎖のDicer依存性の開裂を示している。5’末端放射性標識したミクロスイッチとセンス鎖を、組換えDicerの存在下又は非存在下に、16時間にわたって、テオフィリン濃度を変えてインキュベートした後に、12%非変性ポリアクリルアミドゲル上に展開した。図19cは、Dicer依存性スイッチ機構の概略図を示している。このスイッチは、リガンドの非存在下で「オン」である。
図20a及び20bは、イン・ビボテオフィリン濃度に応答するDicer依存性スイッチに応答したGFP発現の減少を示している。図20aは、10nMミクロスイッチ及びセンス鎖の、テオフィリン濃度を変えて成長させているHeLa細胞へのトランスフェクションを反映するデータを示すグラフである。テオフィリンの結合は、「オフ」スイッチを引き起こす。このスイッチは、一層低いテオフィリン濃度では「オン」であり、GFP発現のRNAi媒介の減衰を引き起こす。エラーバーは、2つの独立の測定を表している。図20bは、Dicer依存性スイッチ機構の概略図を示しており、このスイッチは、リガンドの非存在下で「オン」である。
図21a〜bは、RNAiを利用する標的のリガンド制御された調節のための単一分子Dicer依存性スイッチを示している。図21aでは、このスイッチは、リガンドの非存在下で「オン」であり、リガンド結合時に「オフ」である。図21bでは、このスイッチは、リガンドの非存在下で「オフ」であり、リガンド結合時に「オン」コンホメーションに活性化される。両方の場合に、活性化状態は、エフェクタードメイン及びセンス鎖を、そのドメインをDicerによる開裂に利用可能にするコンフィギュレーションで与える。その開裂産物は、標的活性を調節するためのRNAi機構において機能する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1a】アンチスイッチ分子がイン・ビボで遺伝子発現を調節するように作用する機構の一般的な図解である。
【図1b】テオフィリン応答性アンチスイッチ、s1及びその標的mRNAの配列及び予想される構造切替えを示している図である。
【図1c】種々のエフェクター濃度でのs1及び対照のイン・ビボGFP調節活性を示している図である。
【図1d】蓄積された定常状態レベルのGFP及びアンチスイッチs1を有する細胞へのエフェクターの添加に際しての、GFP発現を阻止するs1のイン・ビボでの一過性応答を示している図である。
【図1e】s1の、標的及びエフェクター分子に対するイン・ビトロアフィニティーアッセイを示している図である。
【図2a】テオフィリン結合の非存在下で、s1に基づいて同調されたアンチスイッチ(s2〜s4)の予想された構造を示している図である。
【図2b】イン・ビボの、s1〜s4の、種々のテオフィリン濃度でのGFP調節活性を示している図である。
【図3a】改変アプタマーアンチスイッチ構築物(s5〜s6)の、種々のテオフィリン濃度での、イン・ビボでのGFP調節活性を示している図である。
【図3b】種々の小型分子エフェクターに応答性のアンチスイッチ構築物(s1、s7)の、種々のエフェクター濃度での、イン・ビトロでの、GFP調節活性を示している図である。
【図4a】テオフィリンに応答性の「オン」アンチスイッチレギュレーター(s8)の配列及び構造スイッチングを示している図である。
【図4b】種々のテオフィリン濃度での、「オン」及び「オフ」アンチスイッチ構築物のイン・ビボでのGFP調節活性を示している図である。
【図5a】2つの独立したアンチスイッチ分子が、多数の標的遺伝子の発現をイン・ビボで調節するように作用する機構を示している図である。
【図5b】2つのアンチスイッチ構築物(s1、s9)の、それらのそれぞれの標的(GFP、YFP)に対する、それらのそれぞれのエフェクター分子(テオフィリン、テトラサイクリン)の存在下又は非存在下での、イン・ビボでの調節活性を示している図である。
【図6】ncRNA発現構築物の配列及び開裂機構を示している図である。
【図7】アンチスイッチs1の、ヌクレアーゼマッピングによる構造探査を示している図である。
【図8】リガンド結合の非存在下での、アンチスイッチs5、s6及びs7の配列及び予想された構造を示している図である。
【図9】テトラサイクリン応答性Venus(YFP)レギュレーター、s9の配列及び構造スイッチング、並びにその標的mRNAを示している図である。
【図10】イン・ビボのアンチスイッチ特性決定研究で用いられるプラスミドのセットを示している図である。
【図11】標的mRNA及びアンチスイッチs1の相対的RNAレベルを示している図である。
【図12】この発明で用いることのできるプラスミドの一覧表を示している図である。
【図13】この発明で用いることのできるアンチスイッチ構築物、対照、及びqRT−PCRプライマーの典型的配列を示している図である。
【図14a】アンチスイッチベースのカフェインセンサー/勾配フィルターを示すグラフである。
【図14b】アンチスイッチベースのカフェインセンサー/勾配フィルターを示すグラフである。
【図14c】アンチスイッチベースのカフェインセンサー/勾配フィルターを示すグラフである。
【図15a】多数のリガンドに結合して応答して、多数の分子リガンド入力の論理的シグナル統合を与えるアプタマー調節される核酸を示している図である。
【図15b】多数のリガンドに結合して応答して、多数の分子リガンド入力の論理的シグナル統合を与えるアプタマー調節される核酸を示している図である。
【図16】多数のリガンドに結合して応答する協同的アプタマー調節される核酸の概略図を示している図である。
【図17】RNA干渉を利用する標的のリガンド制御された調節のためのDicer基質スイッチを示している図である。
【図18】RNA干渉を利用する標的のリガンド制御された調節のためのDrosha基質スイッチを示している図である。
【図19a】テオフィリン濃度が、スイッチとセンス鎖との結合に影響を与えることを示している図である。
【図19b】スイッチとセンス鎖のDicer依存性の開裂を示している図である。
【図19c】Dicer依存性スイッチ機構の概略図を示している図である。
【図20a】10nMミクロスイッチ及びセンス鎖の、テオフィリン濃度を変えて成長させているHeLa細胞へのトランスフェクションを反映するデータを示すグラフである。
【図20b】Dicer依存性スイッチ機構の概略図である。
【図21】RNAiを利用する標的のリガンド制御された調節のための単一分子Dicer依存性スイッチを示している図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
発明の詳細な説明
1.概観
本発明は、リガンド結合に応答する、トランス作用性アプタマー調節される核酸、即ち「aptaスイッチ」を提供する。一つの面は、アプタマー調節される核酸及び方法並びにこれらのアプタマー調節される核酸を含む、細胞における遺伝子発現を変調する(例えば、減衰させる)ための組成物に関係する。他の面は、試料中の分子の存否又は量を検出するためのイン・ビボセンサーとして用いることのできるアプタマー調節される核酸に関係する。トランス作用性とは、本発明のaptaスイッチが、それらのリガンド依存性の活性を、aptaスイッチと異なる分子(例えば、他の核酸)(例えば、ホスホジエステル(又は、同等物)主鎖リンカーを介して結合しておらず、尚一層好ましくは、aptaスイッチと全く共有結合していない)に対して発揮することを意味する。
【0066】
それ故、本発明の一つの面は、巧みに処理したアプタマー調節される核酸であって、遺伝子発現の強力なアロステリックレギュレーターである当該核酸を提供する。アプタマー調節される核酸の一般的デザインは、エフェクターステム及びアプタマーステムよりなる二重ステム分子を造る核酸折り畳みのコンホメーション力学に基づいている。これらのステムは、好ましくは、リガンドの非存在下では、エフェクターステムの自由エネルギーがアプタマーステムのそれより低くなるようにデザインされる。リガンド及び標的は、協同的に作用して、これらの分子のコンホメーション力学を変えて、アプタマーステムの形成及びエフェクターRNAドメインの標的転写物への結合を安定化させる。アプタマー調節される核酸プラットフォームは、可撓性であり、正及び負の調節を可能にする。「オン」スイッチは、変化したプラットフォームに対する同じエネルギー特性を用いて、リガンドの非存在又は低レベルにおいて、エフェクターRNAドメインが、標的に自由に結合する(但し、リガンド結合は、これらの分子のコンホメーション力学をエフェクターRNAドメインがアプタマーステムに結合するように変化させる)ようにデザインされる。
【0067】
アプタマー調節される核酸のスイッチング力学は、核酸の熱力学的特性に基づく前進的エンジニアリングデザインストラテジーによるチューニングに従順である。エフェクタードメインの自由エネルギーを変えることは、予想可能な様式内のこれらの分子のコンホメーション力学を変える。特に、エフェクターステムの安定性を減じることは、アプタマー調節される核酸におけるコンホメーション変化を誘導するのに必要なリガンド濃度を低下させ、エフェクターステムの安定性を増大させることは、コンホメーション変化を誘導するのに必要なリガンド濃度を増大させる。エフェクターステムの安定性を減少させることは又、低リガンドレベルで「オフ」状態を好むように力学を変える。
【0068】
加えて、アプタマー調節される核酸プラットフォームは、完全にモジュラーであり、リガンド応答及び転写物ターゲティングを、アプタマー調節される核酸内のドメインを交換することにより巧みに処理することを可能にする。これは、種々のリガンドについてのテーラーメイドのアプタマー調節される核酸の構築のためのプラットフォームを与える。アプタマー調節される核酸のアプタマードメインのリガンド結合は、アプタマードメインだけを交換することにより、エフェクタードメインのターゲティング能力から切り離してデザインされる。同様に、エフェクタードメインのターゲティング能力は、エフェクタードメインを、アプタマードメインに影響を与えることなく異なる遺伝子又は分子が標的となるように交換することにより、アプタマードメインのリガンド結合から切り離してデザインすることができる。アプタマー調節される核酸は、自然及び巧みに処理するコンテキストの両方において、空間的時間的遺伝子発現を調整するための強力なフレキシブルな方法を与える。
【0069】
ある具体例において、アプタマー調節される核酸は、多数のモジュラーコンポーネント例えば一種以上のアプタマードメイン及び/又は一種以上のエフェクタードメインを含む。他の具体例において、この発明のアプタマー調節される核酸は、多数のリガンドと相互作用してそれらに応答する。例えば、アプタマー調節される核酸は、多数のリガンドに応答するアプタマードメインを含むことができ、又は各々一種のリガンドに応答する一種より多くのアプタマードメインを含むことができる。適宜、一種以上のエフェクタードメインは、多数のリガンドに応答する一種以上のアプタマードメインによって変調される。特定の面において、協同的リガンド制御された核酸が提供され、該核酸では、多数のリガンドが多数のアプタマードメインに順次的に結合して、一種以上のエフェクタードメインをアロステリック調節する。多数のモジュラーコンポーネントを含むアプタマー調節される核酸は、多数の生体分子インプットの処理及び協同的アプタマー調節される核酸の生成に有用である。例えば、アプタマー調節される核酸は、2以上の異なるリガンドに結合することができる。アプタマー調節される核酸は、両リガンドの結合、又は2つのリガンドの何れかへの結合に応答して、標的遺伝子(例えば、関心ある遺伝子又はレポーター遺伝子例えばグリーン蛍光タンパク質又はベータ−ガラクトシダーゼ)の変調のみをするように形成される。2以上のリガンドに結合するアプタマー調節される核酸において、第一のリガンドの結合は、アプタマーの第二のリガンドに結合する能力を増大させうる。
【0070】
アプタマー調節される核酸は、潜在的に原核生物からヒトに至る多様な生物体において機能しうる(それらを、多くの異なる適用において極めて有用なものとする)遺伝子の新規なアロステリックレギュレーターである。アプタマー調節される核酸は、病状を示す特定の細胞環境に応答性の特定の転写物を標的とすることが望まれる遺伝子治療適用における強力なツールを提供する(Watkins等、Curr Opin Mol Ther 4, 224-8(2002))。病状の代謝プロファイリングを可能にする未来技術(Koch, J Biol Chem 219, 181-8(1956))として、アプタマー調節される核酸は、様々な代謝マーカーに応答するようにデザインすることができる。例えば、アプタマー調節される核酸は、腫瘍遺伝子タンパク質又はイソ型に応答しての細胞の成長及び分割に必要な遺伝子を阻害するようにデザインすることができる。外因的に送達されたアンチセンスオリゴヌクレオチドと同様に、治療分子として作用するアンチセンス構築物であるエフェクタードメインを含む外因的に送達されたアプタマー調節される核酸を予想し、それにより、現行のアンチセンス療法の機能性を、リガンド特異的又は細胞特異的作用を既に高度に標的を定めた療法に導入することによって拡大することもできる。現行のRNAi技術の同様の拡大も又、ここに記載したアプタマー調節される核酸により予想されうる。
【0071】
アプタマー調節される核酸は、更に、新規な調節経路を巧みに処理するために並びに代謝エンジニアリングにおける適用(Khosla等、Nat Rev Drug Discov 2, 1019-25(2003))及び合成サーキットデザイン(Kobayashi等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101, 8414-9(2004))のためにループを制御するために利用することもできる(細胞が、細胞内代謝レベル及び環境シグナルを感知して応答することができるようにすることによる)。アプタマー調節される核酸の活性は、ある範囲のリガンド濃度にわたって調整されるので、スイッチを、ある代謝産物がある濃度を超えるか下回ったときにのみ、遺伝子を阻害し又は活性化するようにデザインすることができる。生合成経路における異質遺伝子の発現(Berens等、Bioorg Med Chem 9, 2549-56(2001))をバランスさせて産物の収率を最大にすることは、生合成遺伝子の発現を経路の中間体レベルに応答して調節するアプタマー調節される核酸を用いて達成することができる。合成遺伝子サーキットは、最近、細胞ネットワークを理解してモデル化するために(Nagai等、Nat Biotechnol 20, 87-90(2002))及び「プログラム可能な」細胞挙動に向けたステップとして細胞制御を達成する(Watkins等、Curr Opin Mol Ther 4, 224-8(2002))ために利用された。遺伝子サーキットは、正確な制御計画のためのレギュレーターとしてアプタマー調節される核酸の組合せを利用して構築することができる。アプタマー調節される核酸は、自然の調節経路を正確にモデル化して、これらの有力な調節計画への更なる洞察を与えるサーキットを構築して特性決定する際の有用なツールとなろう。
【0072】
最後に、アプタマー調節される核酸は、プログラム可能な、細胞内分子の濃度特異的検出を可能にする、細胞のイメージング、測定及び検出ストラテジーのための新たなツールを与える。アプタマー調節される核酸は、テーラーメイドの細胞センサー及び潜在的に任意の標的リガンドに応答して任意の遺伝子を標的とすることのできる「スマート」レギュレーターを造るためのユニークなプラットフォームを提供して、細胞制御及び工学のための新たな道を創造する。
【0073】
2.アプタマー調節される核酸
一具体例において、この発明のアプタマー調節される核酸は、アプタマードメイン及びエフェクター核酸ドメインを含む。この発明のアプタマー調節される核酸には、DNA又はRNAが含まれて、一本鎖であっても二本鎖であってもよい。アプタマー調節される核酸は、多数のモジュラーコンポーネント例えば一つ以上のアプタマードメイン及び一つ以上のエフェクタードメインを含むことができる。アプタマー調節される核酸は、更に、官能基又は官能性薬剤例えば挿入剤又はアルキル化剤を含むことができる。アプタマー調節される核酸は、合成の又は非天然の核酸類似体(例えば、6−メルカプトプリン、5−フルオロウラシル、5−ヨード-2’−デオキシウリジン及び6−チオグアニン)を含むことができ、又は改変核酸を含むことができる。典型的な改変には、シトシン環外アミン、5−ブロモ−ウラシルの置換、主鎖改変、メチル化、及び異常な塩基対合の組合せが含まれる。アプタマー調節される核酸は、蛍光標識、放射性標識、化学標識、又は酵素標識などの標識を含むことができる。アプタマードメインは、リガンド結合に応答して、エフェクタードメインにおけるアロステリック変化を誘導してそのエフェクタードメインの標的分子と相互作用する能力を変える。それ故、リガンド結合は、エフェクタードメインを、「オフ」から「オン」(又は、その逆)に切り替える。それ故、アプタマー調節される核酸は、リガンド結合に応答して活性が「オフ」及び「オン」に切り替わるスイッチとして作用する。アプタマードメインのリガンドに対する応答は又、リガンドの正体及び/又はアプタマードメインに露出されたリガンドの量若しくは濃度にも依存しうる。例えば、アプタマーは、小型分子例えば薬物、代謝産物、中間体、補因子、遷移状態類似体、イオン、金属、核酸、及び毒素に結合することができる。或は、アプタマーは、天然の及び合成のポリマー(タンパク質、ペプチド、核酸、多糖類、糖タンパク質を含む)、ホルモン、レセプター及び細胞表面例えば細胞壁及び細胞膜に結合することができる。ある別の具体例において、リガンド制御される核酸のアプタマードメインは、環境変化に応答性である。環境変化には、制限はしないが、pH、温度、浸透性、又は塩濃度の変化が含まれる。エフェクター核酸ドメインは又、RNAi配列として用いることのできる配列例えばsiRNA又はmiRNAを含みうる。好適具体例において、アプタマードメインへのリガンド結合は、これらの分子のコンホメーション力学の変化を媒介し、それは、エフェクター核酸ドメインが標的核酸例えばmRNAと相互作用することを可能にする。
【0074】
一具体例において、アプタマー調節される核酸のエフェクタードメインは、標的遺伝子と、核酸ハイブリダイゼーションにより相互作用する。例えば、アプタマー調節される核酸は、遺伝子の標的配列にハイブリダイズするハイブリダイゼーション配列を含むエフェクタードメイン及びリガンドに結合するアプタマードメインを含むことができる。リガンドのアプタマードメインへの結合は、アプタマー調節される核酸のコンホメーション変化を引き起こし、これは、エフェクタードメインのハイブリダイゼーション配列の標的配列にハイブリダイズする能力(アベイラビリティー及び/又はTmなど)を変える。その上、エフェクタードメインは、標的の発現又は活性を当分野で公知の任意の方法によって変調することができる。一具体例において、アプタマー調節される核酸のエフェクタードメインは、アンチセンス配列を含んで、標的遺伝子の発現の変調において、アンチセンス機構により作用するエフェクタードメインを含む。例えば、アプタマー調節される核酸は、標的遺伝子の発現を阻止するためのアンチセンス配列を含むエフェクタードメイン及びリガンドに結合するアプタマードメインを含むことができる。リガンドのアプタマードメインへの結合は、アプタマー調節される核酸におけるコンホメーション変化を引き起こし、それは、エフェクタードメインのアンチセンス配列の、標的配列の発現を阻止する能力を変える。
【0075】
他の具体例において、アプタマー調節される核酸のエフェクタードメインは、RNAi配列を含んで、標的遺伝子の発現を変調する際に、RNAi又はmiRNA機構によって作用するエフェクタードメインを含む。例えば、アプタマー調節される核酸は、標的遺伝子の発現を阻止するためのmiRNA又はsiRNA配列を含むエフェクタードメイン及びリガンドに結合するアプタマードメインを含むことができる。リガンドのアプタマードメインへの結合は、アプタマー調節される核酸におけるコンホメーション変化を引き起こし、それは、エフェクタードメインのmiRNA又はsiRNA配列の、標的配列の発現を阻止する能力を変える。一具体例において、エフェクタードメインは、miRNA又はsiRNA配列を含み、それは、約19〜35ヌクレオチド長であり、又は好ましくは、約25〜35ヌクレオチドである。ある具体例において、このエフェクタードメインは、ヘアピンループであって、RNアーゼ酵素(例えば、Drosha及びDicer)によるプロセッシングを受けうる。ここで用いる場合、用語「RNAi」は、RNA媒介による、遺伝子発現を減衰させる機構を意味し、小型RNA媒介のサイレンシング機構を含む。RNA媒介のサイレンシング機構は、mRNAの転写の阻止及び標的mRNAの位置指定の開裂を含む。最近の証拠は、ある種のRNAi構築物が、染色体サイレンシングによって(即ち、MRNAレベルではなく又はそれに加えて、ゲノムレベルで)も作用しうることを示唆している。従って、このエフェクタードメインにより標的とされる配列は又、ゲノムレベルの標的遺伝子の転写を調節する非転写配列から選択することもできる。
【0076】
ここに記載した方法は、処理された細胞においてアプタマー調節される核酸を生成する転写されて少なくとも一の転写産物を生成するコード配列を有する発現ベクターを用いることができる。アプタマー調節される核酸を生成するのに適した発現ベクターは、当分野で周知である。例えば、その発現ベクターは、エピソーム性発現ベクター、組込み型発現ベクター、及びウイルス性発現ベクターから選択される。他の好適具体例において、このアプタマー調節される核酸は、ヘアピンRNAを含み、それは、処理された細胞においてプロセッシングを受けてsiRNAになる。
【0077】
この発明は、イン・ビボ核酸センサー(例えば、細胞内分子の存在又は量を、リガンドの、アプタマー調節される核酸のアプタマードメインへの結合の際の核酸コンホメーションの変化によって直接感知するアプタマー調節される核酸)のクラスを提供する。例えば、アプタマー調節される核酸のアプタマードメインと相互作用するリガンドは、そのアプタマー調節される核酸のエフェクタードメインを「オン」に切り替える。次いで、活性化されたエフェクタードメインは、「レポーター」分子を標的とする。このレポーター分子は、エフェクタードメインとの相互作用により活性化され又は抑制される。それ故、レポーター分子の量又は活性は、関心あるリガンドの量又は濃度と相関する。典型的なレポーター分子には、制限はしないが、蛍光レポータータンパク質例えばグリーン蛍光タンパク質(GFP)又はルシフェラーゼ、酵素レポーター例えばアルカリホスファターゼ又は比色レポーター例えばlacZが含まれる。
【0078】
アプタマー
「アプタマー」は、特異的分子に高い親和性及び特異性で結合することのできる核酸分子例えばRNA又はDNAであってよい(Ellington等、Nature 346, 818-22(1990);及びTuerk等、Science 249, 505-10(1990))。アプタマーに結合する典型的なリガンドには、制限はしないが、小型分子例えば薬物、代謝産物、中間体、補因子、遷移状態類似体、イオン、金属、核酸及び毒素が含まれる。アプタマーは又、天然及び合成のポリマー(タンパク質、ペプチド、核酸、多糖類、糖タンパク質、ホルモンを含む)、レセプター及び細胞表面例えば細胞壁及び細胞膜に結合することもできる。このリガンドのアプタマーへの結合(典型的には、RNA)は、そのエフェクタードメインのコンホメーション変化を引き起こし、その標的分子と相互作用する能力を変える。それ故、リガンド結合は、エフェクタードメインの、遺伝子不活性化、転写、翻訳を媒介し、或は例えば標的遺伝子又はmRNAの正常な活性に干渉する能力に影響を与える。アプタマーは、最も典型的には、標的分子の結合についてのイン・ビトロ選択により得られてきた。しかしながら、アプタマーのイン・ビボ選択も又、可能である。アプタマーは、他の物質がこの核酸と複合体化されない環境において、意図する標的分子との複合体を形成することのできる特異的結合領域を有する。この結合の特異性は、アプタマーのリガンドに対する、環境中の他の物質についての又は一般に無関係の分子についての解離定数と比較した、比較解離定数(Kd)により規定される。リガンドは、アプタマーに、無関係の物質より一層大きい親和性で結合するものである。典型的には、アプタマーの、リガンドに関するKdは、無関係の物質又は環境において付随する物質とのKdより約10倍小さい。尚一層好ましくは、このKdは、少なくとも約50倍小さく、一層好ましくは、少なくとも約100倍小さく、最も好ましくは、少なくとも約200倍小さい。アプタマーは、典型的には、約10〜300ヌクレオチド長である。一層一般的に、アプタマーは、約30〜100ヌクレオチド長である。
【0079】
用語「核酸分子」及び「ポリヌクレオチド」は、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド及びそのポリマー(一本鎖又は二本鎖形態)を指す。特に制限しないかぎり、この用語は、基準核酸と類似の結合特性を有し且つ天然のヌクレオチドと類似の様式で代謝される天然のヌクレオチドの公知の類似体を含む核酸を包含する。別途指示しないかぎり、特定の核酸配列は又、暗黙に、保存的に改変された変異体(例えば、縮重コドン置換)及び相補的配列並びに明示的に示された配列を包含する。特に、縮重コドン置換は、一つ以上の選択した(又はすべての)コドンの第3位を混合塩基及び/又はデオキシイノシン残基で置換した配列を生成することにより達成されうる(Batzer等、Nucleic Acids Res. 19:5081(1991);Ohtsuka等、J.Biol.Chem. 260:2605-2608(1985);及びRossolini等、Mol.Cell.Probes 8:91-98(1994))。やはり含まれるのは、天然のホスホジエステル結合を有する分子並びに非天然の結合を有する(例えば、安定化目的で)ものである。この核酸は、任意の物理的形態(例えば、直鎖状、環状、又はスーパーコイル状)であってよい。用語核酸は、オリゴヌクレオチド、遺伝子、cDNA、及び遺伝子にコードされたmRNAと交換可能に用いられる。
【0080】
広範な分子と結合するアプタマーが、容易に作成される。これらの分子の各々は、この発明の方法を用いて、遺伝子発現のモジュレーターとして利用することができる。例えば、有機分子、ヌクレオチド、アミノ酸、ポリペプチド、細胞表面の標的となる特徴、イオン、金属、塩、多糖類は、すべて、それぞれのリガンドに特異的に結合することのできるアプタマーを単離するために適していることが示されている。例えば、有機染料例えばHoechst33258は、イン・ビトロでのアプタマー選択において、標的リガンドとして上首尾に利用されてきた(Werstuck及びGreen, Science 282:296-298(1998))。ドーパミン、テオフィリン、スルホローダミンB及びセロビオースのような他の小型有機分子も又、アプタマーの単離において、リガンドとして利用されてきた。アプタマーは又、抗生物質例えばカナマイシンA、リビドマイシン、トブラマイシン、ネオマイシンB、ビオマイシン、クロラムフェニコール及びストレプトマイシンについても単離されてきた。小型分子を認識するアプタマーの総説については、Famulok, Science 9:324-9(1999)を参照されたい。
【0081】
ある具体例において、この発明のアプタマー調節される核酸のリガンドは、細胞透過性の、小型有機分子である。翻訳に対する一般的阻害効果を有しない小型有機分子は、リガンドとして好適である。この小型分子は、好ましくは、翻訳の所望のレベルの阻害を達成するのに十分なイン・ビボ残留性をも示す。これらの分子は又、例えば経口投与後にバイオアベイラブルであるものを同定するためにスクリーニングすることもできる。この発明のある具体例において、リガンドは、無毒性である。そのリガンドは、適宜、薬物(例えば、ステロイドを含む)であってよい。しかしながら、遺伝子発現を制御する方法の幾つかにおいて、リガンドが薬理学的に不活性であることは、好ましい。幾つかの具体例においては、リガンドは、その細胞における存在が、病気又は病理学的状態を示すポリペプチドである。他の具体例において、アプタマーのためのリガンドは、抗生物質例えばクロラムフェニコールである。別の具体例において、このアプタマーのリガンドは、有機染料例えばHoechst染料33258である。更に別の具体例においては、このリガンドは、金属イオンであってよい。特殊な具体例においては、このアプタマー調節される核酸のアプタマードメインは、カフェインへの結合に応答する。
【0082】
この発明のアプタマー調節されるリガンドは、全体的にRNAからなっていてよい。しかしながら、この発明の別の具体例においては、アプタマー調節される核酸は、全体的に、又は部分的にDNAからなっていてよく、又は部分的に他のヌクレオチド類似体からなっていてよい。イン・ビボで翻訳を特異的に阻害するには、アプタマー調節されるRNAが好適である。かかるアプタマー調節されるRNAは、好ましくは、転写によりアプタマー調節されるRNAを生成するようにアプタマー調節される核酸配列をコードするDNAとして細胞に導入する。或は、アプタマー調節されるRNA自身を細胞に導入することができる。
【0083】
アプタマーは、典型的には、特定のリガンドに結合するように、SELEXとして公知のイン・ビボ又はイン・ビトロ(最も典型的には、イン・ビトロ)選択技術(Ellington等、Nature 346, 818-22(1990);及びTuerk等、Science 249, 505-10(1990))を利用することにより開発される。アプタマーを作成する方法は又、例えば、米国特許第5,582,981号、PCT公開No.WO00/20040、米国特許第5,270,163号、Lorsch及びSzostak, Biochemistry, 33:973(1994)、Mannironi等、Biochemistry 36:9726(1997)、Blind, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96:3606-3610(1999)、Huizenga及びSzostak, Biochemistry, 34:656-665(1995)、PCT公開No.WO99/54506、WO99/27133、WO97/42317及び米国特許第5,756,291号にも記載されている。
【0084】
一般に、それらの最も基本的形態において、アプタマーを同定するためのイン・ビトロ選択技術は、第一に、ランダム化され又は突然変異誘発された少なくとも幾つかの領域を含む所望の長さのDNA分子の大きいループを調製することを含む。例えば、アプタマー選択のための一般的オリゴヌクレオチドのプールは、20〜100のランダム化されたヌクレオチドの領域を両端で、PCRプライマーの結合に有用な限定された配列の約15〜25ヌクレオチド長の領域を隣接して含みうる。このオリゴヌクレオチドプールは、標準的PCR技術を利用して増幅される(選択した核酸配列の忠実な、効率的増幅を与える任意の手段を用いることができるが)。次いで、このDNAプールを、イン・ビトロで転写して、RNA転写物を生成する。次いで、これらのRNA転写物を、核酸の、他の分子(例えば、タンパク質又は任意の標的分子)に特異的に結合する能力に基づく選択を可能にする任意のプロトコールを利用することができるが、アフィニティークロマトグラフィーにかけることができる。アフィニティークロマトグラフィーの場合、最も典型的には、転写物を、標的リガンドを固定化させてあるカラムを通過させ又は磁気ビーズなどと接触させる。リガンドと結合するプール中のRNA分子は、カラム又はビーズ上に保持され、非結合性配列は、洗い去られる。次いで、リガンドに結合したRNA分子を、逆転写にかけて、再びPCRにより増幅する(通常、溶出後)。選択したプールの配列を、次いで、同種の選択の他のラウンドにかける。典型的には、これらのプール配列を、全部で約3〜10回の、選択手順の反復ラウンドにかける。次いで、cDNAを増幅し、クローン化し、そして、標的リガンドのアプタマーとして作用しうるRNA分子の配列を同定するための標準的手順を利用して配列決定する。一度アプタマー配列が、上首尾に同定されれば、そのアプタマーを、更に、突然変異誘発されたアプタマー配列を含むオリゴヌクレオチドのプールから出発する追加の選択のラウンドを実施することによって最適化することができる。本発明における利用のために、このアプタマーは、好ましくは、生理的条件を真似た塩濃度及び温度の存在下でのリガンド結合につき選択される。
【0085】
一般に、適当なリガンドを、アプタマーが既に利用可能であるかどうか参照することなく選択することができる。殆どの場合において、当業者が選択したリガンドに結合するアプタマーを得ることができる。イン・ビトロ選択プロセスのユニークな性質は、如何なる構造型が所望のリガンドに結合しうるかについての知識がまったくなくても、所望のリガンドに結合する適当なアプタマーの単離を可能にする。
【0086】
アプタマーが、本発明での使用に適しているためには、そのアプタマーのリガンドへの結合親和性が、十分強くなければならず、リガンドに結合したときにアプタマーにより形成される構造は、この発明のアプタマー調節される核酸を「オン」及び「オフ」状態の間で切り替えるかアプタマー調節される核酸の機能レベルを調整するのに十分なものでなければならない。
【0087】
このアプタマー及び会合したリガンドの会合定数は、好ましくは、リガンドの投与に際して得られるリガンド濃度において、そのリガンドがアプタマーに結合して所望の効果を有するように機能するようなものである。例えば、イン・ビボでの使用について、この会合定数は、結合が、血清又は他の組織において達成することのできるリガンド濃度より十分に低い濃度で起きるようなものであるべきである。好ましくは、イン・ビボでの使用に必要なリガンド濃度も又、生物体に対して望ましくない効果を有しうるものより低い。
【0088】
アンチスイッチ
この発明のアプタマー調節される核酸は、アンチセンス配列を含んで、標的遺伝子の発現を阻止するためにアンチセンス機構によって作用するエフェクタードメインを含むことができる。ここで用いる場合、かかるアプタマー調節される核酸は又、「アンチスイッチ」とも呼ばれる。アンチセンス技術は、遺伝子発現を調節するために広く利用されてきた(Buskirk等、Chem Biol 11, 1157-63(2004);及びWeiss等、Cell Mol Life Sci 55, 334-58(1999))。ここで用いる場合、「アンチセンス」技術は、細胞条件下で、少なくとも一種の標的タンパク質をコードする関心ある標的核酸(mRNA及び/又はゲノムDNA)と特異的に、該タンパク質の発現を、例えば転写及び/又は翻訳を立体障害などにより阻止すること、選択的スプライシング、又は転写物の開裂誘導若しくは酵素的不活性化によって阻害するようにハイブリダイズする(例えば、結合する)分子又はそれらの誘導体の投与又はイン・シトゥー生成を指す。この結合は、慣用の塩基対相補性によるものであってよく、又は、例えばDNA二本鎖への結合の場合には、二重らせんの大きい溝における特異的相互作用によるものであってよい。一般に、「アンチセンス」技術は、当分野で一般的に用いられる技術の範囲を指し、核酸配列への特異的結合に依存する任意の治療を含む。
【0089】
本発明のアンチセンスエフェクタードメインを含むアプタマー調節される核酸は、例えば、細胞内で転写されたときに、標的核酸の少なくとも一のユニーク部分と相補的であるエフェクタードメインを生成する発現プラスミドの成分として送達することができる。或は、このアンチセンスエフェクタードメインを含むアプタマー調節される核酸は、標的細胞の外側で生成させることができ、それは、標的細胞に導入したときに、標的核酸とハイブリダイズすることにより発現の阻害を引き起こす。アプタマー調節される核酸は、内因性ヌクレアーゼ例えばエキソヌクレアーゼ及び/又はエンドヌクレアーゼに耐性であり、それ故イン・ビボで安定であるように改変することができる。アプタマー調節される核酸における利用のための典型的核酸分子は、ホスホルアミデート、ホスホチオエート及びDNAのメチルホスホネート類似体である(米国特許第5,176,996号;5,264,564号;及び5,256,775号も参照されたい)。アンチセンス技術において有用なオリゴマーを構築するための一般的アプローチは、例えば、van der krol等(1988) Biotechniques 6:958-976;及びStein等(1988) Cancer Res 48:2659-2668によって総説されている。
【0090】
この発明の組成物及び方法における使用のためのアンチセンスエフェクタードメインを構築する場合には、次の幾つかの考察を考慮することができる:(1)アンチセンスエフェクタードメインは、50%以上のGC含量を有するべきであり;(2)3以上のGのストレッチを有する配列を避け;そして(3)アンチセンスエフェクタードメインは、「オン」状態にあり標的遺伝子を変調する際に25〜26量体以下であるべきである。アンチセンスエフェクタードメインを試験する場合には、ミスマッチの対照を構築することができる。これらの対照は、同じ塩基比を保存するために、対応するアンチセンスオリゴヌクレオチドの配列の順序を逆にすることにより生成することができる。
【0091】
アンチセンスアプローチは、関心あるタンパク質をコードする標的核酸と相補的なエフェクタードメイン(DNA又はRNA)のデザインを含む。このアンチセンスエフェクタードメインは、mRNA転写物に結合して関心あるタンパク質の翻訳を阻止することができる。完全な相補性は、好ましいが、必要でない。二本鎖アンチセンスエフェクタードメインの場合には、二重鎖DNAの一本の鎖を試験することができ、又は三重鎖形成をアッセイすることができる。このハイブリダイズする能力は、相補性の程度とアンチセンス配列の長さの両方に依存するであろう。一般に、ハイブリダイズする核酸が長いほど、それは、標的核酸と一層多くのミスマッチ塩基を有し、しかも安定な二重鎖(又は、三重鎖)を形成しうる。当業者は、ミスマッチの許容度を、ハイブリダイズした複合体の融点を測定するための標準的手順の利用によって確かめることができる。
【0092】
mRNA標的の5’末端(例えば、AUG開始コドンを含んで該コドンまでの5’非翻訳配列)に相補的なアンチセンスエフェクタードメインは、mRNAの翻訳の阻害において最も効率的に働くはずである。しかしながら、mRNAの3’非翻訳配列に相補的な配列は、やはりmRNAの翻訳の阻害に有効であることが最近示された(Wagner, R. 1994. Nature 372:333)。それ故、標的遺伝子の5’又は3’非翻訳、非コード領域に相補的なアンチセンスエフェクタードメインは、標的mRNAの翻訳を阻害するためのアンチセンスアプローチにおいて利用することができよう。mRNAの5’非翻訳領域に相補的なアンチセンスエフェクタードメインは、AUG開始コドンの相補鎖を含むはずである。mRNAのコード領域に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドは、翻訳の一層効率的でないインヒビターであるが、この発明に従ってやはり利用できよう。mRNAの5’側、3’側にハイブリダイズするようにデザインしても、又はコード領域にハイブリダイズするようにデザインしても、アンチセンス核酸は、少なくとも6ヌクレオチド長であるべきであり、且つ好ましくは約100ヌクレオチド未満であり、一層好ましくは、約50、25、17又は10ヌクレオチド長未満である。
【0093】
標的配列の選択にかかわらず、アンチスイッチの標的遺伝子の発現を阻止する能力を定量するために、イン・ビトロの研究が最初に行なわれることは好適なことである。これらの研究が、アンチセンス遺伝子阻害とアンチスイッチの非特異的な生物学的効果とを区別する対照を利用することは好適である。これらの研究が、標的RNA又はタンパク質のレベルを内部対照RNA又はタンパク質のそれと比較することも又、好適である。加えて、アンチスイッチを利用して得られた結果を、対照スイッチを利用して得られたものと比較することが構想されている。対照アンチスイッチが、試験スイッチと凡そ同じ長さであること及び対照アンチスイッチのヌクレオチド配列が、標的配列への特異的ハイブリダイゼーションを阻止するのに必要なだけ、関心あるアンチセンス配列と異なっていることは、好適である。
【0094】
アンチスイッチは、DNA若しくはRNA又はそれらのキメラ混合物若しくは誘導体若しくは改変バージョンであってよい。アンチスイッチは、塩基部分、糖部分、又はホスフェート主鎖において改変して、例えば、分子、ハイブリダイゼーションなどの安定性を改善することができる。アンチスイッチは、他の付属の原子団例えばペプチド(例えば、宿主細胞のレセプターを標的とするため)、又は細胞膜(例えば、Letsinger等、1989, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:6553-6556;Lemaitre等、1987, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:648-652;1988年12月15日公開のPCT公開No.WO88/09810参照)若しくは血液脳関門(例えば、1988年4月25日公開のPCT公開No.WO89/10134参照)を横切る輸送を容易にする薬剤、ハイブリダイゼーションがトリガーである開裂剤(例えば、Krol等、1988, BioTechniques 6:958-976参照)又は挿入剤(例えば、Zon, Pharm.Res. 5:539-549(1988)参照)を含むことができる。この目的のために、アンチスイッチは、他の分子例えばペプチド、ハイブリダイゼーションがトリガーである架橋剤、輸送剤、ハイブリダイゼーションがトリガーである開裂剤などと結合することができる。
【0095】
アンチスイッチは、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシトリエチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ−D−ガラクトシルケオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル;ベータ−D−マンノシルケオシン、5−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、シュードウラシル、ケオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、及び2,6−ジアミノプリンを含む(但し、これらに限られない)群から選択する少なくとも一つの改変塩基部分を含むことができる。
【0096】
アンチスイッチは又、アラビノース、2−フルオロアラビノース、キシルロース、及びヘキソースを含む(但し、これらに限られない)群から選択する少なくとも一つの改変糖部分を含むことができる。
【0097】
アンチスイッチは又、中性のペプチド様主鎖を含むこともできる。かかる分子は、ペプチド核酸(PNA)オリゴマーと呼ばれ、例えば、Perry-O'Keefe等、(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:14670及びEglom等(1993)Nature 365:566に記載されている。PNAオリゴマーの一つの利点は、DNAの中性主鎖のために、本質的に媒質のイオン強度に関係なく相補的DNAに結合するそれらの能力である。更に別の具体例において、アンチスイッチは、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホルアミドチオエート、ホスホルアミデート、ホスホルジアミデート、メチルホスホネート、アルキルホスホトリエステル、及びこれらのホルムアセタール又は類似体よりなる群から選択する少なくとも一つの改変ホスフェート主鎖を含む。
【0098】
更なる具体例において、アンチスイッチは、アノマーオリゴヌクレオチドである。アノマーオリゴヌクレオチドは、相補的RNAと特異的な二本鎖ハイブリッドを形成し、該ハイブリッドでは、通常のユニットと対照的に、これらの鎖は、互いに平行になる(Gautier等、1987, Nucl. Acids Res. 15:6625-6641)。このオリゴヌクレオチドは、2’−O−メチルリボヌクレオチド(Inoue等、1987, Nucl. Acids Res. 15:6131-6148)、又はキメラのRNA−DNA類似体(Inoue等、1987, FEBS Lett. 215:327-330)である。
【0099】
この発明のアプタマー調節される核酸(アンチスイッチを含む)は、当分野で公知の標準的方法により、例えば、自動化DNAシンセサイザー(Biosearch, Applied Biosystemsなどから市販されているものなど)の使用によって合成することができる。例として、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドを、Stein等、Nucl. Acids Res. 16:3209(1988)の方法によって合成することができ、メチルホスホネートオリゴヌクレオチドを、制御された細孔の硝子ポリマー支持体の利用により製造することができる(Sarin等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:7448-7451(1988))。
【0100】
mRNA配列のコード領域に相補的なアンチセンス配列を利用することはできるが、転写されるが翻訳されない領域及び開始メチオニンを含む領域に相補的なものが、最も好ましい。
【0101】
アンチスイッチ核酸分子は、イン・ビボで標的遺伝子を発現する細胞に送達されうる。核酸を細胞に送達するための幾つかの方法が開発されており;例えば、それらは、直接、組織部位に注入することができ、又は所望の細胞を標的とするようにデザインされた改変核酸(例えば、標的細胞表面に発現されたレセプター又は抗原に特異的に結合するペプチド又は抗生物質に結合されたアンチスイッチ)を全身投与することができる。
【0102】
しかしながら、ある例において関心ある標的遺伝子又はmRNAの活性を減衰させるのに十分なアンチスイッチの細胞内濃度を達成することは困難でありうる。それ故、他のアプローチは、アンチスイッチ又は他のアプタマー調節される核酸が強力なpolII又はpolIIプロモーターの制御下に置かれた組換えDNA構築物を利用する。かかる構築物の、患者の標的細胞をトランスフェクトするための利用は、十分量のアンチスイッチの転写を生じ、それは、標的遺伝子又はmRNAとの相補的塩基対を形成し、それにより、関心あるタンパク質の活性を減衰させるであろう。例えば、ベクターを、イン・ビボで細胞に取り込まれてアンチスイッチの転写を指示するように導入することができる。かかるベクターは、転写されて所望のアンチスイッチを生成することができる限り、エピソーム型のままでいても、染色体に組み込まれてもよい。かかるベクターは、当分野で標準的な組換えDNA技術方法によって構築することができる。ベクターは、当分野で公知の、哺乳動物細胞における複製及び発現に利用されるプラスミド、ウイルス、又は他のものであってよい。プロモーターは、アンチスイッチをコードする配列に、操作可能に結合されうる。アンチスイッチをコードする配列の発現は、当分野で、哺乳動物(好ましくは、ヒト)細胞において作用することが公知の任意のプロモーターによるものであってよい。かかるプロモーターは、誘導されうるものであっても構成的なものであってもよい。かかるプロモーターには、制限はしないが、SV40初期プロモーター領域(Bernoist及びChambon, Nature 290:304-310(1981))、ラウス肉腫ウイルスの3’ロングターミナルリピート(Yamamoto等、Cell 22:787-797(1980))、ヘルペスのチミジンキナーゼプロモーター(Wagner等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:1441-1445(1981))、メタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinster等、Nature 296:3942(1982))などに含まれるプロモーターが含まれる。任意の種類のプラスミド、コスミド、YAC又はウイルスベクターを利用して、組織部位に直接導入することのできる組換えDNA構築物を調製することができる。或は、所望の組織に選択的に感染するウイルスベクターを利用することができ、この場合、投与は、他の経路(例えば、組織的に)によって達成することができる。
【0103】
RNAi構築物 − siRNA及びmiRNA
RNA干渉(RNAi)は、二本鎖(ds)RNA依存性の遺伝子特異的な転写後サイレンシングを示す現象である。この現象を哺乳動物細胞の実験操作に利用しようとする初期の試みは、長いdsRNA分子に応答して活性化される丈夫な非特異的アンチウイルス防御機構によってくじかれた。Gil等、Apoptosis 2000, 5:107-114。この分野は、合成の二本鎖の21ヌクレオチドのRNAが、遺伝子特異的なRNAiを哺乳動物細胞において、包括的なアンチウイルス防御機構を呼び出すことなく、媒介することができるということが示されて有意に進歩した。Elbashir等、Nature 2001, 411:494-498;Caplen等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 2001, 98:9742-9727。結果として、小さい干渉性RNA(siRNA)及びミクロRNA(miRNA)が、遺伝子機能を分析するための強力なツールとなった。小型RNAの化学合成は、有望な結果を生み出してきた一本の大通りである。やはり多くのグループが、かかるsiRNAを細胞内で生成することのできるDNAベースのベクターの開発を追求してきた。幾つかのグループは、最近、このゴールを確認して、一般に、細胞内で効率的にプロセッシングを受けてsiRNAを形成する短かいヘアピン(sh)RNAの転写を含む類似のストラテジーを公開した。Paddison等、PNAS 2002, 99:1443-1448;Paddison等、Genes & Dev 2002, 16:948-958;Sui等、PNAS 2002, 8:5515-5520;及びBrummelkamp等、Science 2002, 296:550-553。これらの報告は、多くの内因的及び外因的に発現された遺伝子を特異的に標的とすることのできるsiRNAを生成する方法を記載している。
【0104】
従って、本発明は、RNAi配列を含んでRNAi又はmiRNA機構により標的遺伝子の発現を減衰させるように作用するエフェクターRNAドメインを含むアプタマー調節される核酸を提供する。例えば、アプタマー調節される核酸は、miRNA又はsiRNA配列を含むエフェクタードメインを含むことができる。一具体例において、エフェクタードメインは、miRNA又はsiRNA配列を含み、該配列は、約19〜75ヌクレオチド長であり、好ましくは、約25〜35塩基対の長さである。ある具体例において、このエフェクタードメインは、RNアーゼ酵素(例えば、Drosha及びDicer)によりプロセッシングを受けうるヘアピンループである。
【0105】
RNAi構築物は、細胞の生理的条件下で、阻害すべき遺伝子(即ち「標的」遺伝子)のmRNA転写物の少なくとも一部分のヌクレオチド配列にハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む。この二本鎖RNAは、RNAiを媒介する能力を有するように天然のRNAに十分に類似していることだけを必要とする。従って、この発明は、遺伝子変異、株多型又は進化による多様化により予想されうる配列の変化を許容することができるという利点を有する。標的配列とRNAi構築物配列の間で許容されるヌクレオチドミスマッチの数は、5塩基対中1、又は10塩基対中1、又は20塩基対中1、又は50塩基対中1である。siRNA二本鎖の中央でのミスマッチは、最も臨界的であり、本質的に、標的RNAの開裂を完全に破壊する。対照的に、標的RNAに相補的なsiRNA鎖の3’末端のヌクレオチドは、標的認識の特異性に有意に寄与しない。
【0106】
配列同一性は、当分野で公知の配列比較及びアラインメントアルゴリズム(Gribskov及びDevereux, Sequence Analysis Primer, Stockton Press, 1991及びその中での引用文献参照)及び例えばデフォルトパラメーターを利用するBESTFITソフトウェアプログラム(例えば、ウィスコンシン大学、Genetic Computing Group)において実行されるSmith-Watermanアルゴリズムによるヌクレオチド配列間の差異パーセントの計算によって最適化されうる。阻害性RNAと標的遺伝子の部分との間の90%より大きい配列同一性が(又は、100%配列同一性さえも)好適である。或は、このRNAの二本鎖領域は、標的遺伝子転写物の一部分とハイブリダイズすることのできるヌクレオチド配列として機能的に限定することができる(例えば、400mM NaCl、40mM PIPES pH6.4、1mM EDTA、50℃又は70℃で12〜16時間のハイブリダイゼーション;その後の洗浄)。
【0107】
RNAi配列を含むエフェクタードメインを含むアプタマー調節される核酸の製造は、ここに記載したアプタマー調節される核酸の製造方法の何れかによって行なうことができる。例えば、アプタマー調節される核酸は、化学合成法により又は組換え核酸技術によって製造することができる。処理した細胞の内因性RNAポリメラーゼは、イン・ビボで転写を媒介することができ、又はクローン化RNAポリメラーゼは、イン・ビトロでの転写のために用いることができる。アプタマー調節される核酸(アンチスイッチ又は標的遺伝子活性をRNAi機構によって変調するものを含む)は、例えば細胞性ヌクレアーゼに対する感受性を減じ、バイオアベイラビリティーを改善し、配合物特性を改善し、及び/又は他の薬物速度論的特性を変えるための、ホスフェート糖主鎖又はヌクレオシドへの改変を含むことができる。例えば、中性RNAのホスホジエステル結合を改変して、少なくとも一つの窒素又は硫黄ヘテロ原子を含ませることができる。RNA構造における改変は、dsRNAへの一般的応答を回避しつつ、特異的な遺伝子阻害を与えるように調整することができる。同様に、塩基を改変して、アデノシンデアミナーゼの活性をブロックすることができる。アプタマー調節される核酸は、酵素により生成することができ、又は部分的又は全面的に有機合成することができ、任意の改変リボヌクレオチドを、イン・ビトロで酵素的に又は有機合成によって導入することができる。
【0108】
RNA分子を化学的に改変する方法は、RNAi構築物の改変のために適応させることができる(例えば、Heidenreich等(1997) Nucleic Acids Res, 25:776-780;Wilson等(1994) J Mol Recog 7:89-98;Chen等(1995) Nucleic Acids Res 23:2661-2668;Hirschbein等(1997) Antisense Nucleic Acid Drug Dev 7:55-61参照)。単に説明のために。RNAi構築物の主鎖は、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、ホスホジチオエート、キメラのメチルホスホネート−ホスホジエステル、ペプチド核酸、5−プロピニルピリミジン含有オリゴマー又は糖改変(例えば、2’−置換されたリボヌクレオシド、a−コンフィギュレーション)によって改変することができる。
【0109】
二本鎖構造は、一本の自己相補性RNA鎖又は二本の相補性RNA鎖によって形成することができる。RNA二本鎖形成は、細胞の内部でも外部でも開始することができる。このRNAは、細胞当たり少なくとも一コピーの送達を可能にする量で導入することができる。一層高投与量(細胞当たり少なくとも5、10、100、500又は1000コピー)の二本鎖物質は、一層有効な開始を生じうるが、一層低投与量も又、特殊な応用には有用でありうる。阻害は、RNAの二本鎖領域に対応するヌクレオチド配列が遺伝子阻害のための標的であるという点において配列特異的である。
【0110】
ある具体例において、主題のRNAi構築物は、「siRNA」である。これらの核酸は、約19〜35ヌクレオチド長であり、尚一層好ましくは、21〜23ヌクレオチド長であって、これは、例えば、一層長い二本鎖RNAのヌクレアーゼ「ダイシング」により生成された断片の長さに相当する。これらのsiRNAは、ヌクレアーゼ複合体をリクルートしてその複合体を特異的配列への対合により標的mRNAに導くと理解されている。結果として、その標的mRNAは、そのタンパク質複合体中でヌクレアーゼによって分解され又は翻訳が阻害される。特定の具体例において、この21〜23ヌクレオチドのsiRNA分子は、3’ヒドロキシル基を含む。
【0111】
他の具体例において、主題のRNAi構築物は、「miRNA」である。ミクロRNA(miRNA)は、小さい非コードRNAであって、遺伝子発現の、相同mRNAとの相互作用による転写後調節を指示する。miRNAは、遺伝子の発現を、タンパク質をコードする遺伝子からの標的mRNA中の相補的部位に結合することにより制御する。miRNAは、一層大きい二本鎖前駆体分子からヌクレオチド分解性開裂によってプロセッシングを受ける。これらの前駆体分子は、しばしば、約70ヌクレオチド長のヘアピン構造であって、25ヌクレオチド以上がそのヘアピン内で塩基対合している。RNアーゼIII様酵素Drosha及びDicer(siRNAプロセッシングにも使える)は、miRNA前駆体を開裂させてmiRNAを生成する。このプロセッシングを受けたmiRNAは、一本鎖であって、タンパク質複合体に組み込まれて、RISC又はmiRNPと呼ばれる。このRNA−タンパク質複合体は、相補的mRNAを標的とする。miRNAは、標的mRNAの翻訳を阻害し又は該RNAの開裂を指示する(Brennecke等、Genome Biology 4:228(2003);Kim等、Mol. Cells 19:1-15(2005)。
【0112】
ある具体例において、miRNA及びsiRNA構築物は、例えば酵素Dicer又はDroshaの存在下で、一層長い二本鎖RNAのプロセッシングによって生成することができる。Dicer及びDroshaは、dsRNAを特異的に開裂させるRNアーゼIII様ヌクレアーゼである。Dicerは、ヘリカーゼドメイン及び2つのRNアーゼIIIモチーフを含む明確な構造を有している。Dicerは又、RDE1/QDE2/ARGONAUTEファミリーに対して相同性の領域をも含んでいる(それらは、下等真核生物においては、RNAiと遺伝的にリンクしている)。実際、Dicerの活性化、又は過剰発現は、多くの場合、そうでなければ非受容性の細胞(例えば、培養真核細胞、又は培養哺乳動物細胞(卵母細胞ではない)又は生物体全体)においてRNA干渉を引き起こすのに十分でありうる。Dicer並びに他のRNAi酵素を利用する方法及び組成物は、米国特許出願第20040086884に記載されている。
【0113】
一具体例においては、キイロショウジョウバエのイン・ビトロ系が用いられる。この具体例において、アプタマー調節される核酸を、キイロショウジョウバエ胚に由来する可溶性抽出物と組み合わせ、それにより、組合せを生じる。この組み合わせを、dsRNAがプロセッシングを受けて約21〜23ヌクレオチドのRNA分子になる条件下に維持する。
【0114】
これらのmiRNA及びsiRNA分子は、当業者に公知の幾つかの技術を利用して精製することができる。例えば、ゲル電気泳動法を利用して、かかる分子を精製することができる。或は、非変性的方法例えば非変性カラムクロマトグラフィーを利用して、siRNA及びmiRNA分子を精製することができる。加えて、クロマトグラフィー(例えば、サイズ排除クロマトグラフィー)、グリセロール勾配遠心分離法、抗体を用いるアフィニティー精製を利用して、siRNA及びmiRNAを精製することができる。
【0115】
ある好適具体例において、エフェクタードメインのsiRNA配列の少なくとも一本の鎖は、約1〜6ヌクレオチド長の3’オーバーハングを有する(2〜4ヌクレオチド長であってもよいが)。一層好ましくは、この3’オーバーハングは、1〜3ヌクレオチド長である。ある具体例において、一方の鎖は、3’オーバーハングを有して、他方の鎖は、平滑端であり、又はやはりオーバーハングを有する。これらのオーバーハングの長さは、各鎖について同じであっても異なってもよい。siRNA配列の安定性を更に増進させるために、3’オーバーハングを、分解に対して安定化させることができる。一具体例において、RNAは、プリンヌクレオチド例えばアデノシン又はグアノシンヌクレオチドを含有することにより安定化される。或は、ピリミジンヌクレオチドの、改変類似体による置換、例えば3’オーバーハングのウリジンヌクレオチドの、2’−デオキシチミジンによる置換は、許容されて、RNAiの効率に影響を与えない。2’ヒドロキシルの非存在は、組織培養におけるオーバーハングのヌクレアーゼ耐性を有意に増進させ、イン・ビボで有益でありうる。
【0116】
ある具体例において、アプタマー調節される核酸は、ヘアピン構造の形態である(ヘアピンRNAと称する)。これらのヘアピンRNAは、外因的に合成することができ又はイン・ビボでのRNAポリメラーゼIIIプロモーターからの転写によって形成することができる。哺乳動物細胞における遺伝子サイレンシングのためにかかるヘアピンRNAを作成して利用する例は、例えば、Paddison等、Genes Dev, 2002, 16:948-58;McCaffrey等、Nature, 2002, 418:38-9;McManus等、RNA 2002, 8:842-50;Yu等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 2002, 99:6047-52に記載されている。好ましくは、かかるヘアピンRNAは、細胞内又は動物内で巧みに処理されて、所望の遺伝子の連続的で安定した抑制を確実にする。当分野では、miRNA及びsiRNAは、細胞内でのヘアピンRNAのプロセッシングにより生成することができるということは、公知である。
【0117】
更に別の具体例において、プラスミドは、二本鎖RNAを、例えば転写産物として送達するために利用される。コード配列が転写された後に、相補的RNA転写物が、塩基対合して、二本鎖RNAを形成する。
【0118】
他の応用
発明の更なる面は、リガンド制御される核酸分子の種々の分野における応用に関係する。例えば、アプタマー調節される核酸を利用して、試料中の標的分子の存否又は量を検出することができる。標的分子は、代謝産物、イオン、ペプチド、核酸などであってよい。同様に、アプタマー調節される核酸を、イメージング目的のために利用することができる。更に、アプタマー調節される核酸は、エフェクター核酸ドメインが、ある環境(例えば、特定の細胞内位置又は細胞膜)を標的とするように利用することができる。
【0119】
代謝工学及びプログラミング
この発明のアプタマー調節される核酸は、細胞における代謝産物のレベルを感知して検出するためのツール(非侵襲的でありうる)として機能することができる。このイメージング又は検出は、少なくとも一種の関心ある代謝産物の定量化のために利用することができる。或は、それを用いて、経路を通る過剰な流れ及び生成物形成を制御するためのシグナリング経路中のある種の酵素を調節すること又は細胞内のタンパク質又は酵素のターゲティングレベルによる代謝状態を変えることができる。
【0120】
一具体例において、この発明は、細胞内のリガンドの濃度及び/又は活性を変調する方法を提供する。この方法は、リガンドに対して応答性のアプタマーをデザインして選択すること及び、選択したアプタマー及びエフェクターRNAを含むアプタマー調節される核酸を用意することを含むことができ、ここに、エフェクターRNAは、リガンド(例えば、代謝産物又は中間体分子)を含む細胞内の分子、シグナリング経路又は代謝経路を標的とする。この発明の方法は、例えば、毒性中間体の蓄積に応答し、シグナリング経路若しくは代謝経路の活性を減衰させ、又は処理した細胞の成長、生存若しくは分化を変えるために利用することができる。
【0121】
他の具体例において、一つの方法は、リガンドよりも、異なるシグナリング及び/又は代謝経路にある標的遺伝子の濃度及び/又は活性を変調するために与えられる。この方法によって、アプタマー調節される核酸を利用して、条件付き遺伝子ネットワークを確立することができる。この方法は、リガンドに応答性のアプタマーをデザインして選択すること及び、リガンドと関係したシグナリング経路に無関係の、細胞中の、分子、シグナリング経路又は代謝経路を標的とする選択したアプタマー及びエフェクターRNAを含むアプタマー調節される核酸を用意することを含みうる。従って、アプタマー調節される核酸は、細胞内遺伝子ネットワークを、内因的に生成されたシグナル(例えば、リガンド)を感知して、これらのシグナルに、リガンドと無関係のシグナリング経路内での遺伝子発現に影響を与えることにより応答することによって巧みに処理するために利用することができる。アプタマー調節される核酸を利用して、細胞が、毒性の中間体及び化合物の蓄積に適当に応答するように、又は細胞の生理(例えば、成長、生存、又は分化)を変えるようにすることができる。
【0122】
関連する具体例において、この発明の方法及び組成物を、代謝産物の濃度をモニターするために適合させることができる。この方法は、センサーのアプタマー調節される核酸を含むことができ、そのスイッチのアプタマードメインは、代謝産物に応答性である。代謝産物濃度の変化を測定することにより、アプタマー調節される核酸を利用して、例えば、治療介入により誘導された生化学的効果の全範囲を測定することができる。アプタマー調節される核酸は、更に、代謝産物濃度をモニターすることにより、病気を診断し又は予想するために利用することができる。
【0123】
他の具体例において、アプタマー調節される核酸は、環境(細胞内環境と細胞外環境の両方を含む)との調整のためのツールとして役立ちうる。例えば、アプタマー調節される核酸は、標的RNAを細胞膜その他の細胞内位置に、潜在的にシグナルペプチド或は特定の標的を認識するアプタマードメインによって「輸送する」ために利用することができる。
【0124】
アプタマー調節される核酸は又、多重様式で利用することもできる。例えば、多数の構築物を細胞に導入して、多数の入力を読むことができ、これは、入力の組合せに依って種々の出力を与えることができる。特に、2種以上の異なるアプタマー調節される核酸を、濃度センサーとして組合せて、例えば、バンドパスフィルターを形成することができる。
【0125】
典型的配合物
この発明のアプタマー調節される核酸は又、取込み、分配及び/又は吸収を助成するために、他の分子、分子構造、又は化合物の混合物(例えば、リポソーム、ポリマー、レセプター標的分子、経口投与用、局所投与用その他の配合物)と混合し、結合させ、或は会合させることができる。主題のアプタマー調節される核酸は、浸透増進剤、キャリアー化合物及び/又はトランスフェクション剤をも含む配合物にて提供することができる。
【0126】
かかる取込み、分配及び/又は吸収を助成する配合物であって、aptaスイッチ分子の送達に適合させうる配合物の製法を教示する代表的な米国特許には、米国特許第5,108,921号;5,354,844号;5,416,016号;5,459,127号;5,521,291号;51,543,158号;5,547,932号;5,583,020号;5,591,721号;4,426,330号;4,534,899号;5,013,556号;5,108,921号 ;5,213,804号 ;5,227,170号;5,264,221号;5,356,633号;5,395,619号;5,416,016号;5,417,978号;5,462,854号;5,469,854号;5,512,295号;5,527,528号;5,534,259号;5,543,152号;5,556,948号;5,580,575号;及び5,595,756号が含まれるが、これらに限られない。
【0127】
この発明のアプタマー調節される核酸は又、任意の製薬上許容しうる塩、エステル又はかかるエステルの塩をも含み、又はヒトを含む動物への投与に際して、生物学的に活性な代謝産物又はその残留物を(直接又は間接に)与えることのできる任意の他の化合物を含む。従って、例えば、この開示は又、アプタマー調節される核酸及び製薬上許容しうる塩及び他の生物学的同等物にも向けられている。
【0128】
製薬上許容しうる塩基付加塩は、金属又はアミン例えばアルカリ及びアルカリ土類金属又は有機アミンによって形成される。カチオンとして用いられる金属の例は、ナトリウムカリウム、マグネシウム、カルシウムなどである。適当なアミンの例は、N,NI−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、塩素、ジエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、N−メチルグルカミン、及びプロカイン(例えば、Berge等、「Pharmaceutical Salts」、J. of Pharma Sci., 1977, 66, 1-19参照)である。該酸性化合物の塩基付加塩は、遊離酸型を十分量の所望の塩基と接触させて慣用の方法にて塩を生成することによって製造することができる。遊離酸型は、塩型を酸と接触させて遊離酸を慣用の方法で分離することによって再生することができる。これらの遊離酸型は、それらのそれぞれの塩型と、ある物性例えば極性溶媒における溶解度において幾分異なっているが、他の点では、それらの塩は、本発明の目的に関して、それらのそれぞれの遊離酸に等しい。ここで用いる場合、「製薬用付加塩」は、この発明の組成物の成分の一つの酸型の製薬上許容しうる塩を包含する。これらは、これらのアミンの有機又は無機酸の塩を含む。好適な酸性塩は、塩酸塩、酢酸塩、サリチル酸塩、硝酸塩及びリン酸塩である。他の適当な製薬上許容しうる塩は、当業者に周知であり、無機及び有機酸の様々な塩基性塩が含まれる。製薬上許容しうる塩の好適な例には、(a)ナトリウム、カリウム、アンモニウム、マグネシウム、カルシウム、ポリアミン(スペルミン及びスペルミジン)などのカチオンにより形成された塩;(b)無機酸例えば塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸などにより形成された酸付加塩;(c)有機酸例えば酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パルミチン酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ポリガラクツロン酸など;及び(d)元素アニオン例えば塩素、臭素及びヨウ素から形成された塩が含まれるが、これらに限られない。
【0129】
米国特許出願公開No.20040063654に記載されたような、他の配合物、送達方法及び投与経路も又、提供される。
【0130】
典型的用途
この発明の一つの面は、細胞におけるリガンドの量及び/又は活性を変調する方法を提供する。この方法は、リガンドに応答性のアプタマーをデザインして選択すること及び、選択したアプタマー及びエフェクターRNAを含むアプタマー調節される核酸を用意することを含むことができ、このエフェクターRNAは、リガンドを例えば代謝産物又は中間体分子として含む細胞内の、分子、シグナリング及び/又は代謝経路(即ち、リガンドと関係したシグナリング及び/又は代謝経路)を標的とする。この方法は、細胞をアプタマー調節される核酸と、細胞中のリガンドの濃度及び/又は活性を変調するのに十分な量及び/又は時間で接触させることを更に含むことができる(スイッチオンの場合)。
【0131】
細胞内のリガンドの存在、量及び/又は活性に対する細胞の生物学的又は生化学的応答を変調する方法も又、提供される。この方法は、リガンドに応答性のアプタマーをデザインして選択すること及び、選択したアプタマー及びエフェクターRNAを含むアプタマー調節される核酸を用意することを含むことができ、このエフェクターRNAは、細胞内のリガンドの存在、量及び/又は活性に対する細胞の生物学的又は生化学的応答を変調する遺伝子を標的とする。この方法は、更に、細胞を、とアプタマー調節される核酸と、細胞の生物学的又は生化学的応答を変調するのに十分な量及び/又は時間で、接触させることを含むことができる(スイッチオンの場合)。
【0132】
ある具体例は又、ここに記載のような条件付き遺伝子ネットワークを確立する方法にも向けられている。この方法は、アプタマードメイン及びエフェクタードメインを含むアプタマー調節される核酸を用意することを含むことができ;このアプタマードメインは、リガンドに応答性であるが、エフェクタードメインは、リガンドと関係したシグナリング経路と無関係の分子を標的とする。この方法は、更に、細胞を、アプタマー調節される核酸と、標的分子の発現を変調し、それにより、条件付き遺伝子ネットワークを確立するのに有効な量及び/又は時間で接触させることを含む(スイッチオンの場合)。
【0133】
更なる面において、この発明の方法は、細胞の、特にトランスフォームされた細胞のイン・ビボでの望ましくない成長を阻止するため又は少なくとも低減させるために利用される。ある具体例において、主題の方法は、この発明の少なくとも一のアプタマー調節される核酸を、増殖を調節するタンパク質をコードする遺伝子の発現を特異的に阻止するために利用する。例えば、主題の方法を利用して、標的細胞における有糸分裂に必須の及び/又は標的細胞のアポトーシスの防止に必須の遺伝子産物の発現を阻止することができる。本発明のアプタマー調節される核酸、特にエフェクタードメインは、標的の増殖調節性タンパク質をコードするmRNAのコード配列又は他の部分に対応するようにデザインすることができる。このアプタマー調節される核酸で処理した場合、標的細胞中で生じる発現喪失表現型は、その細胞を静止させ又はアポトーシスを引き起こす。
【0134】
ある具体例において、主題のアプタマー調節される核酸は、細胞成長及び有糸分裂を刺激する遺伝子産物の発現を阻止するように選択される。本発明の方法により標的とされうる遺伝子の一つのクラスは、発癌遺伝子として知られたものである。ここで用いる場合、用語「発癌遺伝子」は、細胞成長を刺激する遺伝子であって、細胞におけるその発現レベルを低減させると、細胞成長の速度が低下し又はその細胞が静止状態になる遺伝子を指す。本発明のコンテキストにおいて、発癌遺伝子は、オートクリン又はパラクリン機能によって細胞増殖を刺激しうる細胞内タンパク質並びに細胞外成長因子を含む。aptaスイッチ分子をデザインすることのできるヒトの発癌遺伝子の例には、c−myc、c−myb、mdm2、PKA−I(I型プロテインキナーゼA)、Abl−1、Bcl2、Ras、c−Rafキナーゼ、CDC25ホスファターゼ、サイクリン、サイクリン依存性キナーゼ(cdk)、テロメラーゼ、PDGF/sis、erb−B、fos、jun、mos、及びsrcが含まれる。本発明のコンテキストにおいて、発癌遺伝子は又、染色体転座から生じた融合遺伝子(例えば、Bcr/Abl融合発癌遺伝子)をも含む。
【0135】
ある好適具体例において、主題のアプタマー調節される核酸は、トランスフォームされた細胞、特に腫瘍細胞の増殖に必須の遺伝子の発現を阻止する能力により選択される。かかるアプタマー調節される核酸は、新生物の、未分化の及び/又は過形成の細胞増殖のイン・ビボでの治療又は予防の部分として(腫瘍の治療の部分としても)利用することができる。c−mycタンパク質は、多くの型の癌において統制解除されて、増大した発現を生じている。イン・ビトロでのc−mycRNAレベルの低減は、アポトーシスの誘導を生じる。それ故、c−mycに相補的なアンチセンス、siRNA、miRNA、又はRNAiエフェクタードメインは、潜在的に、抗癌治療のための治療剤として利用することができる。好ましくは、主題のアプタマー調節される核酸は、慢性リンパ性白血病の治療において利用することができる。慢性リンパ性白血病は、しばしば、Bcr/Abl融合産物を生じる第9及び第12染色体の転座によって引き起こされる。その結果生成した融合タンパク質は、発癌遺伝子として作用し;それ故、Bcr/Abl融合mRNAの特異的排除は、これらの白血病細胞における細胞死を生じうる。実際、Bcr/Abl融合mRNAに特異的なsiRNA分子の、培養白血病細胞へのトランスフェクションは、その融合mRNA及び対応する癌タンパク質を低減させただけでなく、これらの細胞のアポトーシスを誘導した(例えば、Wilda等、Oncogene, 2002, 21:5716-5724参照)。
【0136】
他の具体例において、主題のアプタマー調節される核酸は、リンパ球の活性化(例えば、B細胞又はT細胞の増殖、特に、リンパ球の抗原に媒介された活性化)に必須の遺伝子の発現を阻止する能力によって選択される。かかるアプタマー調節される核酸は、免疫抑制剤として、例えば、免疫媒介の炎症性疾患の治療又は予防の部分として利用することができる。
【0137】
ある具体例において、ここに記載の方法は、自己免疫疾患の治療のために利用することができる。例えば、主題のアプタマー調節される核酸は、サイトカインの発現をコード化し又は調節する遺伝子の発現を阻止する能力について選択される。従って、サイトカイン例えばTNF−アルファ、IL−1アルファ、IL−6又はIL−12、又はこれらの組合せの発現の阻止又は低減を引き起こす構築物は、リウマチ様関節炎の治療又は予防の部分として利用することができる。同様に、炎症に関与するサイトカインの発現の阻止又は低減を引き起こす構築物は、炎症及び炎症関連疾患例えば多発性硬化症の治療又は予防において利用することができる。
【0138】
他の具体例において、主題のアプタマー調節される核酸は、糖尿病の開始又は進行に関係する遺伝子の発現を阻止する能力について選択される。例えば、実験的真性糖尿病は、p21WAF1/CIP1(p21)の発現の増大と関係することが示され、TGF−ベータ1は、腎糸球体の肥大と関係付けられている(例えば、Al-Douahji等、Kidney Int. 56:1691-1699参照)。従って、これらのタンパク質の発現の阻止又は低減を引き起こす構築物は、糖尿病の治療又は予防において利用することができる。
【0139】
他の具体例において、主題のアプタマー調節される核酸は、ICAM−1(細胞内接着分子)の発現を阻止する能力について選択される。ICAM−1の発現を阻止するアンチセンス核酸は、乾癬用に、Isis pharmaceutics により開発されている。加えて、ICAM−1に対するアンチセンス核酸は、急性腎不全及び再灌流障害を防止すること及び腎同系移植片の生存を延長することが示唆されている(例えば、Halier等(1996) Kidney Int. 50:473-80;Dragun等(1998)Kidney Int. 54:590-602;Dragun等(1998) Kidney Int. 54:2113-22参照)。従って、本発明は、上記の疾患における、ICAM−1遺伝子を標的とする類似のアンチセンスエフェクターRNAドメイン、siRNA、miRNA、又はRNAiエフェクタードメインを含むアプタマー調節される核酸の利用を企図している。
【0140】
他の具体例において、主題のアプタマー調節される核酸は、血管の内皮の平滑筋細胞又は他の細胞(ネオインティマ形成に関与して増殖中の細胞)の増殖に必須の遺伝子の発現を阻止する能力によって選択される。かかる具体例において、主題の方法は、再狭窄の治療又は予防の部分として利用することができる。
【0141】
単に説明のために、血管内皮細胞に適用されたアプタマー調節される核酸は、それらの細胞の増殖を、手順後に低減させることができる。単に説明のために、特殊な例は、c−myc(発癌遺伝子)に相補的なsiRNAである。c−mycのダウンレギュレーションは、細胞成長を阻止する。それ故、siRNA配列を含むエフェクタードメインは、下記の配列をエフェクタードメインに含ませることにより製造することができる:
【化1】

【0142】
全塩基は、太字で示したデオキシリボ核酸であるチミジン(一層の安定化のためのもの)以外はリボ核酸である。二本鎖RNAは、オリゴヌクレオチドを等モル濃度で、10mM トリス−Cl(pH7.0)及び20mM NaCl中で混合して、95℃まで加熱してからゆっくり37℃まで冷却することにより製造することができる。或は、この配列を、ヘアピン構造に含ませることができる。その結果生成した核酸を、次いで、アガロースゲル電気泳動により精製して、細胞に遊離状態で又は送達システム例えばシクロデキストリンベースのポリマーと複合体化して送達することができる。イン・ビトロ実験のために、アプタマー調節される核酸の効果は、c−mycタンパク質に関する成長曲線分析、RT−PCR又はウエスタンブロット分析によってモニターすることができる。
【0143】
c−myc遺伝子に向けられたアンチセンスオリゴヌクレオチドは、冠状動脈ステント移植直後に局所的送達により与えられた場合に、再狭窄を阻止するということが示されている(例えば、Kutryk等(2002) J Am Coll Cardiol. 39:281-287;Kipshidze等(2002) J Am Coll Cardiol. 39:1686-1691参照)。それ故、本発明は、c−Myc遺伝子に対するアプタマー調節される核酸(即ち、c−Mycアンチセンス又はRNAi構築物)をステント移植部位に浸潤送達システム(Interventional Technologies, カリフォルニア、San Diego在)を用いて送達することを企図している。好ましくは、c−Mycターゲティング用のアプタマー調節される核酸は、再狭窄を阻止するためにステント上に直接コートされる。同様に、このc−Mycターゲティング用のアプタマー調節される核酸は、経皮経管冠動脈形成術(PTCA)後の筋内膜過形成を阻止するために局所的に送達することができ、かかる局所的送達の典型的方法は、例えば、Kipshidze等(2001) Catheter Cardiovasc Interv. 54:247-56に見出すことができる。ある具体例において、これらのアプタマー調節される核酸は、例えば、ホスホロチオエート又はホスホルアミデートによって化学的に改変される。
【0144】
初期成長応答性因子1(即ち、Egr−1)は、機械的外傷時に活性化されて、細胞の増殖及び移動に関与する多くの遺伝子の転写を調節する転写因子である。それ故、このタンパク質のダウンレギュレーションも又、再狭窄の防止のための一つのアプローチでありうる。このEgr−1遺伝子に向けられたアプタマー調節される核酸のエフェクタードメインは、下記の配列をエフェクタードメインに含ませることにより製造することができる:
【化2】

【0145】
再び、デオキシリボ核酸である太字で示したチミジンを除いて、すべての塩基は、リボ核酸である。これらのエフェクタードメインは、これらの配列から製造することができ、それにより、アプタマー調節される核酸を製造して、ここに記載したように細胞に導入することができる。
【実施例】
【0146】
実施例
この発明を今や一般的に説明したので、それは、下記の実施例を参照することにより一層容易に理解することができよう。これらは、単に、本発明のある面及び具体例の説明の目的で含むものであり、この発明を制限することを意図したものではない。
【0147】
プラスミド構築、細胞株、試薬
標準的分子生物学技術を利用してすべてのプラスミドを構築した(Sambrook等、Molecular cloning:A laboratory manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 2001))。4つの異なるプラスミド構築物を、pRS314−Gal及びpRS316−Galシャトルベクター中にクローン化することによって生成した(Sikorski等、Genetics 122, 19-27(1989))。遺伝子及びアンチスイッチ構築物を、GAL1プロモーターの下流のマルチクローニング部位にクローン化した。これらのプラスミド(図10及び12参照)は、大腸菌の複製起点(f1)及びアンピシリン耐性の選択マーカー、並びにS.セレビシエの複製起点(CEN6−ARSH4)及びトリプトファンに対する選択マーカー(TRP1−pRS314)及びウラシル(URA3−pRS316)生合成遺伝子を、これらのプラスミドを有する細胞を、適当なアミノ酸欠落溶液を補った合成の完全培地で選択するために含んでいる(Sambrook等、Molecular cloning:A laboratory manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 2001))。第一のプラスミドシステム、pTARGET1において、yEGFPを、マルチクローニング部位にクローン化した(GAL1プロモーターとADH1ターミネーターの間に位置する)。第二のプラスミドシステム、pSWITCH1において、様々なアンチスイッチを、GAL1プロモーターとADH1ターミネーターの間に位置する2つのハンマーヘッドリボザイムの間にクローン化した。第三のプラスミドシステム、pTARGET2において、PGAL−Venus−ADH1term構築物を、pTARGET1中のPGAL−yEGFP−ADH1term構築物の下流にクローン化した。それ故、pTARGET2は、ガラクトースで誘導された場合に、2つの標的転写物を生成する。第四のシステム、pSWITCH2において、PGAL−アンチスイッチ−ADH1term構築物を、pSWITCH1中のPGAL−アンチスイッチ−ADH1term構築物の下流にクローン化した。それ故、pSWITCH2は、ガラクトースの存在により誘導された場合に、2つのアンチスイッチ構築物を生成する。2つのプラスミドのセット、pTARGET1及びpSWITCH1又はpTARGET2及びpSWITCH2を、S.セレビシエ中に同時にトランスフォームして、適当な栄養選択圧を加えて維持した。これら2つのプラスミドセットにおいて、アンチスイッチ構築物及びそれらの標的の発現が、ガラクトースの培地への添加に際して誘導された。オリゴヌクレオチドプライマーは、Integrated DNA Technologies から購入した。すべての遺伝子及びアンチスイッチを、Dyad PCRマシン(MJ Research)にて、TaqDNAポリメラーゼ(Roche)を用いてPCR増幅した。yegfp遺伝子がpSVA1535から得られ、venus遺伝子がpCS2/Venusから得られた(Nagai等、Nat Biotechnol 20, 87-90(2002))。すべてのアンチスイッチ配列は、カスタムオリゴヌクレオチドデザインを利用して得られた(図12参照)。
【0148】
すべてのプラスミドを、New England Biolabs 社の制限エンドヌクレアーゼ及びT4DNAリガーゼを利用して構築した。プラスミドを、Gene Pulser Xcell System (BioRAD)を製造業者の指示に従って利用して、エレクトロコンピテントな大腸菌株、DH10B(Invitrogen; F− mcrA Δ(mrr−hsdRMS−mcrBC)φ80dlacZΔM15 ΔlacX74 deoR recA1 endA1 araD139 Δ(ara,leu)7697galU galK λ− rpsL nupG)にトランスフォームすることによってスクリーニングした。サブクローニングを、制限分析によって確認した。確認されたプラスミドを、次いで、野生型W303□S.セレビシエ株(MATα his3−11,15 trp1−1 leu2−3 ura3−1 ade2−1)に、標準的な酢酸リチウム手順(Gietz等、Guide to Yeast Genetics and Molecular and Cell Biology, B部(Guthrie, C.及びFink, G.編)87-96(Academic Press, San Diego, 2002))を用いてトランスフォームした。プラスミド選択のために、大腸菌を、100μg/ml アンピシリン(EMD Chemicals)を含むLuria-Bertani 培地(DIFCO)にて成長させ、S.セレビシエ細胞を、適当な欠落溶液(Calbiochem)を補った合成の完全培地(DIFCO)にて成長させた。プラスミドの分離を、Perfectprep Plasmid Isolation キット(Eppendorf)を利用して行なった。
【0149】
タンパク質発現アッセイ
酵母細胞を、適当な欠落溶液及び糖質源(2% ラフィノース、1% シュークロース)を補った合成完全培地に接種して、一晩、30℃で成長させた。細胞を新鮮な培地に戻して希釈し、0.1のOD600として、30℃で成長させた。アンチスイッチ活性をアッセイするために、この新鮮な培地は、適当な濃度のテオフィリン(Sigma)、カフェイン(Sigma)、テトラサイクリン(Sigma)、又は水(負の対照)を含み、そして発現を2%ガラクトースの終濃度にして誘導し、又は等容積の水を加えた(非誘導対照)。3時間の成長の後に、GFP及びVenusレベルをSafire(Tecan)蛍光プレートリーダーセット上で、適当な励起(GFP−485nm;Venus−515nm)及び放出(GFP−515nm;Venus−508nm)波長についてアッセイした。アンチセンスの一過性応答をアッセイするために、細胞を、2%ガラクトースを含む新鮮な培地に戻して希釈した。誘導培地で3時間成長させた後で、テオフィリン又は水を加えて、蛍光を経時的にモニターした。蛍光を、細胞数につき、相対的蛍光単位(RFU)を培地のOD600で除することによって標準化した。
【0150】
RNAの定量
酵母細胞を、タンパク質発現アッセイに詳述された方法に従って成長させた。全RNAを標準的酸フェノール抽出手順を用いて抽出した(Caponigro等、Mol Cell Biol 13, 5141-8(1993))。簡単にいえば、細胞をペレット化して、液体窒素中で凍結させた。ペレットを、50mM NaOAc(pH5.2)及び10mM EDTA緩衝液に懸濁させた。細胞を、終濃度1.6%のSDSの添加及び等容の酸フェノールの添加によって溶解させた。溶液を65℃に維持して、10分間、間欠的にボルテックスミキサー処理した。氷上で冷却後、水相を抽出して、更に、等容のクロロホルムを用いて抽出を実施した。RNA試料をエタノール沈殿させて、水中に再懸濁させた。全RNAを、OD260の読みにより定量した。RNA試料を、製造業者の指示に従ってDNアーゼ(Invitrogen)処理した。cDNAを、遺伝子特異的なプライマー(図13参照)及びスーパースクリプトIII逆転写酵素(Invitrogen)を利用して、製造業者の指示に従って合成した。qRT−PCRを、このcDNAについて、iCycler iQシステム(BioRAD)を利用して行なった。試料を、iQ SYBRグリーンスーパーミックス及び、種々のテンプレートに特異的なプライマー対(図13参照)を、cDNA希釈シリーズに用いて、製造業者の指示に従って用意した。データを、iCycler iQソフトウェアを利用して分析した。
【0151】
イン・ビトロアンチスイッチアフィニティー実験
アンチスイッチ及び標的配列を、T7ポリメラーゼプロモーターを含むプライマーを用いてPCR増幅した。RNAを、AmpliscribeT7転写キット(Epicentre)を製造業者の指示に従って用いて転写した(但し、転写を、42℃で行ない、ゲルシフトアッセイには、アンチスイッチを、[α−32P]−UTPの転写混合物への添加により放射性標識した)。このRNAを、15%変性ゲル上で精製して、溶出させ、エタノール沈殿させて、水中に再懸濁させた。RNAを、OD260の読みによって定量した。ヌクレアーゼマッピングのために、アンチスイッチを、25μgのRNAを、DMSO(Sigma)に溶解させたホスフェート反応性標識と、標識緩衝液(0.12M メチルイミダゾール pH9.0、0.16M EDAC)中で4時間、製造業者の指示に従ってインキュベートすることにより、5’末端で蛍光標識(Molecular Probes)した。標識したRNAを、エタノール沈殿及び12%変性ゲル上での泳動により精製した。蛍光バンドをゲルから切り出して、37℃で3時間にわたって水中に溶出させて、エタノール沈殿させた。
【0152】
ゲルシフトアッセイのために、等モル量(5nM)の放射性標識したアンチスイッチと標的RNAを、濃度を変えたテオフィリンと室温で、30分間、15μLの緩衝液(50mM トリス−HCl、pH8.0、100mM NaCl、5mM MgCl2)中でインキュベートした。インキュベーション後に、10%グリセロールをRNA−標的−リガンド混合物に加えて、RNA複合体を遊離のRNAから、8%ポリアクリルアミドゲル上での、1×トリス−ボレート緩衝液中での、室温で数時間の電気泳動によって分離した。ゲルを乾燥させて、アンチスイッチの移動度を、FXホスホルイメージャー(BioRAD)にてイメージ化した。
【0153】
ヌクレアーゼマッピングのために、蛍光標識されたアンチスイッチRNAを、緩衝液(50mM トリス−HCl pH8.0、100mM NaCl、5mM MgCl2)中に再懸濁させ、65℃で3分間変性させて、ゆっくり室温まで冷却した。アンチスイッチRNAを、濃度を変えたテオフィリンと室温で15分間インキュベートした。RNアーゼT1(Ambion)をアンチスイッチ−リガンド混合物に加えて、室温で15分間インキュベートした。開裂産物を、一本鎖核酸分析用キット(Beckman)を利用するP/ACEMDQマシン(Beckman)上でのレーザー誘導された蛍光キャピラリー電気泳動を、製造業者の指示に従って利用して可視化した。
【0154】
RNAの自由エネルギー計算
RNAの自由エネルギーを、RNA structure バージョン3.71(Mathews等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101, 7287-92(2004))を用いて計算した。
【0155】
アンチスイッチデザイン
アンチセンス技術は、遺伝子発現を調節するために広く利用されてきた(Weiss等、Cell Mol Life Sci 55, 334-58 (1999);及びScherer等、Nat Biotechnol 21, 1457-65 (2003))。アロステリック調節機能性は、プラットフォームであって、その上でリガンド結合構造がアンチセンス分子に付加される当該プラットフォームをデザインすることによって巧みに処理されてきた。このプラットフォームにおいて、アンチセンスドメインは、リガンドの非存在下で、「アンチセンスステム」又は「アンチセンスエフェクタードメイン」中に隔離される。リガンドのアプタマードメインへの結合は、アンチセンスステムのコンホメーション力学を変化させ、それは、一層一本鎖形態であるアンチセンスドメインを生じる(図1a)。かかる機構は、シグナリングアプタマー及び他のアロステリックに制御されるRNAの構築において記載されてきた(Nutiu等、J Am Chem Soc 125, 4771-8(2003))。
【0156】
初期のアンチスイッチ、s1は、キサンチン誘導体テオフィリンに高い親和性(Kd=0.29μM)と特異性で結合する以前に選択したアプタマーを利用して構築された(Zimmermann等、RNA 6, 659-67(2000))。このアンチセンスエフェクターRNAドメインは、グリーン蛍光タンパク質(GFP)をコードする標的mRNAの開始コドンの周辺の15ヌクレオチドの領域と塩基対合するようにデザインされる。このテオフィリンアプタマーのステムは、このアンチセンス部分が、リガンドの非存在下で、安定なステム内で塩基対合するが、リガンド結合時には、別の重複するステムが、アンチセンス部分を一層一本鎖状態にさせる「アプタマーステム」又は「アプタマードメイン」を形成するように改められる(図1a及び1b)。このアプタマーステム及びアンチセンスステムは、アンチセンスステムが アプタマーステムより僅かに安定であるようにデザインされる。以前の研究は、一層低いテオフィリンアプタマーステムの配列は、リガンド結合に臨界的でないことを示していて(Zimmermann等、Nat Struct Biol 4, 644-9(1997))、この配列は、リガンド結合に際してアンチセンスステムと相互作用するように変えられた。これらの分子は、コンホメーション力学の変化によって機能し、それで、リガンドが存在せず且つ標的転写物が存在する場合には、おそらくアンチセンスを隔離するステムが形成され;リガンドと標的転写物の両方が存在する場合には、テオフィリンの結合に関する自由エネルギー(約8.9kcal/モル)(Gouda等、Biopolymers 68, 16-34(2003))、及びアプタマー構造におけるRNAの安定化が、アンチセンスドメインを自由にしてその標的転写物に結合させるアプタマーステムの形成を可能にすることが予想される。RNA構造(Mathews等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101, 7287-92(2004))は、形成されたRNAの二次構造の安定性を予想するために利用された。アンチスイッチの二重ステムデザインのために、リガンドへのアプタマーの結合及び標的mRNAへのアンチセンスの結合の自由エネルギーは、協同的様式で、アンチスイッチ分子の構造切り替えに寄与することが予想される。
【0157】
イン・ビボでの遺伝子調節
S.セレビシエにおけるアンチスイッチの発現を、前に記載された系(Taira等、Nucleic Acids Res 19, 5125-30(1991))と類似の新規な非コードRNA(ncRNA)発現構築物を利用して達成した(図6参照)。簡単にいえば、発現すべきRNAを、イン・ビボで自己開裂することが知られた2つのハンマーヘッドリボザイムの間にクローン化する(Samarsky等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96, 6609-14(1999))。この二重ハンマーヘッドの構築物を、PolIIプロモーターの制御下に置くことができ、転写された際に、隣接するハンマーヘッドリボザイムは、99%より大きい効率で、所望のRNAから開裂してはずれる(図11参照)。この構築物は、潜在的に干渉する隣接配列を有しない限定された5’及び3’末端を有するncRNAの創作を可能にする。アンチスイッチs1は、この構築物において、酵母細胞におけるガラクトース誘導性(GAL1)プロモーターの制御下で発現された。酵母で増進されるGFP(yEGFP)(Mateus等、Yeast 16, 1313-23(2000))をGAL1プロモーターの制御下に含むプラスミドを、同じ細胞にトランスフォームした(図1a)。
【0158】
タンパク質発現アッセイの結果は、s1のリガンド特異的なイン・ビボ活性を示している(図1c)。アンチスイッチs1のテオフィリンの存在下での発現は、GFP発現を、対照レベルから約30%低下させ、0.8mM を超えるテオフィリンの添加は、発現をバックグラウンドレベルに低下させる。これらのアンチセンス及びアプタマードメインは、対照として別々に発現され、GFP発現レベルに対して予想された効果を有した。0.75mM及び0.8mM テオフィリンの間での発現レベルの急速な変化に注目することは、興味深い。アンチスイッチs1は、テオフィリン濃度の範囲にわたって直線的に発現を変調するのではなく、二進数的なオン/オフ挙動を示す。この応答は、リガンドと標的mRNAの両方に依存する構造切り替えの予想される協同的機構を支持する。このアンチスイッチで用いられているアプタマーは、テオフィリンとメチル基一つだけ異なるカフェインに結合しないということが以前に示されている(Zimmermann等、RNA 6, 659-67(2000))。カフェインの添加は、発現レベルを不活性なスイッチのそれから変えず、これは、アンチスイッチを活性化して、そのアンチセンスドメインをGFPの遺伝子発現を低減させるように自由にするには、特異的なリガンド−アプタマー相互作用が必要であることを示している。
【0159】
アンチスイッチ調節機構
定量的リアルタイムPCR(qRT−PCR)を、種々の条件下で成長させた細胞から抽出したアンチスイッチs1及び標的mRNAについて行なって、相対的RNAレベルを測定した(図11参照)。標的転写物の相対的レベルは、テオフィリンの非存在下及び高レベルのテオフィリンにて成長させたs1を有する細胞間で有意に変わらず、これは、アンチスイッチが、標的RNAレベルに影響するよりも、翻訳の阻害によって機能することを示している。加えて、定常状態のs1の相対的レベルは、アンチスイッチと標的は、同じプロモーターから発現されるにもかかわらずに、標的レベルの約1,000倍であった。これは、アンチスイッチ分子が、おそらく二次構造を安定化するか又は一層効率的に合成されることにより、mRNAより一層高い細胞内安定性を有しうることを示している。アンチスイッチ調節の一過性の応答を、アンチスイッチの活性化を、定常状態レベルのGFP及び「オフ」状態のs1を発現する細胞へのテオフィリンの添加により誘導することによって測定した(図1d)。GFPレベルは、テオフィリンの添加後すぐに、約0.5〜1時間の半減期に相当する速度で減少を開始し、これは、これらの実験で用いたGFP変異体の半減期と一致する(Mateus等、Yeast 16, 1313-23(2000))。このデータは、アンチスイッチ分子が、それらの標的mRNAからの翻訳を、活性化レベルのエフェクターの存在下で阻止するように迅速に作用すること及び標的タンパク質レベルの低減に要する時間は、そのタンパク質の半減期によって決定されることを支持している。
【0160】
イン・ビトロ特性決定の研究を行なって、アンチスイッチリガンド親和性及びアンチスイッチ応答に関係するコンホメーション変化を調べた。ゲルシフト実験を、開始コドンの上流及び下流の領域を含む等モル量の短い標的転写物(200ヌクレオチド)、及び標識したs1並びに濃度を変えたテオフィリンの存在下で行なって、アンチスイッチリガンド親和性を調べた(図1e)。アンチスイッチ移動度におけるシャープなシフトが、2及び10μM テオフィリンの間で検出されており、これは、おそらく、テオフィリンと標的の両方の結合のためであろう。リガンド単独の存在下でのヌクレアーゼマッピングも又、アンチスイッチのコンホメーション変化を調べるために行なった(図7参照)。このデータは、アンチスイッチ分子が、リガンド及び標的の存在下よりも遥かに高いリガンド濃度(200μM及び2mM対2μM及び10μM)においてコンホメーション変化を示すことを支持しており、これは、リガンドと標的の、アンチスイッチコンホメーション力学に対する協同的効果を支持している。このイン・ビボデータは、培地中のエフェクター分子の濃度を報告しており、これらの分子の細胞内濃度が、膜を横切る輸送限界のために遥かに低いということが予想される。ある研究は、大腸菌膜を横切るテオフィリン濃度の1,000倍を超える低下を報告した(Koch, J Biol Chem 219, 181-8(1956))。イン・ビトロ実験は、リガンド結合及び構造切り替えが、狭い濃度範囲(イン・ビボ研究で報告された細胞外濃度より遥かに低い)で起きることを示している。このデータは、標的の存在下で、イン・ビトロでのアンチスイッチのコンホメーション変化が、リガンド濃度に対して、低マイクロモル範囲(これは、おそらく、これらの研究におけるテオフィリン濃度を示している)で、鋭い二進数的応答を示すことを示している。
【0161】
スイッチング力学を調整するための新しい工学
アンチスイッチプラットフォームの切り替え挙動は、RNA構造のコンホメーション力学に依存しており;それ故、アンチスイッチの熱力学的特性を変えることによって、直接的仕方で切り替え挙動を調整することが可能である。アンチセンスステム及びアプタマーステムの絶対的及び相対的安定性は、アンチスイッチのスイッチ挙動の調整において重要なデザインパラメーターであるということが予想される。スイッチ挙動のダイナミックレンジを探究するために、我々は、アンチセンス及びアプタマーステムの安定性を変えて幾つかのアンチスイッチ(s2〜s4)を造った(図2a)。これらの変化させたアンチスイッチは、遺伝子発現における切り替えが認められ且つGFP発現のダイナミックレンジが増大する濃度範囲に広がるということが予想された。
【0162】
一般に、アンチセンスステムの安定性を塩基対の追加によって増大させることは、切り替えを達成するのに一層高濃度のテオフィリンを必要とするスイッチを生じ、ステムの安定性を低下させることは、一層低い濃度のテオフィリンでGFP発現を阻止するスイッチを生じるということが認められた。例えば、アンチスイッチs2は、アンチスイッチs1と、単一ヌクレオチドだけ異なっている(A21からC)(図2a)。この変異は、アンチセンスステムに一つのミスマッチ対を導入し、それで、リガンドの非存在下で、この構築物は、熱力学的に一層安定でなくなった。結果として、s2は、構築物s1についての0.8mMと比較して、0.2mMより高濃度のテオフィリンが遺伝子発現を阻止するという変化した切り替え力学を示す(図2b)。或は、アンチセンスステムの安定性の増大は、発現の阻止に一層高濃度のテオフィリンを必要とするスイッチを生じる。アンチスイッチs3は、s1よりも5ヌクレオチド長いアンチセンスステム及び、形成された3塩基対の下部ステムを有するアプタマーステムを用いてデザインされており、絶対的ステム安定性が増大している。この増大した安定性の結果として、s3は、約1.25mM テオフィリンで、GFP発現からGFPの阻止にスイッチしており(図2b)、これは、スイッチs1に要する濃度の凡そ1.5倍であり、スイッチs2に要する濃度の6倍である。その上、s3は、「オフ」状態で、一層高レベルのGFP発現を示す(完全な発現の10%対30%阻害)。アンチスイッチs4は、アンチセンスステムの更なる不安定化の効果を調べるために構築された。このアンチスイッチは、変化したループ配列(U18からC)を含み、これは、アンチセンスステムをs2から更に不安定化させる。アッセイは、s4が、更に、スイッチ構築物の力学的スイッチング挙動を拡大する(0.1mM テオフィリンでスイッチングを示す)ことを含む(図2b)。
【0163】
モジュラープラットフォームは、別々のドメインを組み立てることを可能にする。
アンチスイッチデザインプラットフォームのモジュール性を示すために、幾つかの異なるアンチスイッチ分子を構築して、種々のアプタマードメイン間で交換することにより特性決定した(図8参照)。アプタマードメインにおけるこれらの変化は、標的転写物を同じに維持したので、アンチセンスステム及びスイッチングアプタマーステムを以前のデザインと同じに維持するようにデザインされたが、アプタマーモジュールの残りは、交換により失われる。デザインしたアンチスイッチのリガンド応答性の範囲を更に探究するために、我々は、スイッチs5を、以前に特性決定された、テオフィリンに対して一層低い親和性を示すアプタマー(Zimmermann等、PNAS 6, 659-67(2000))を利用して構築した。このアプタマーは、s1〜s4で用いられたアプタマーより約10倍高いKdを有している。加えて、このアンチスイッチの応答は、s2と同じ仕方でアンチセンスステムを不安定化させることにより調整され、s6を生じた。このプラットフォームのモジュール性を更に調べるために、アンチスイッチを、以前にテトラサイクリンに対して特性決定したアプタマー(Berens等、Bioorg Med Chem 9, 2549-56(2001))をも用いて構築した。このアプタマーは、s1〜s4で用いたテオフィリンアプタマー(Kd=1μM)と同様に、テトラサイクリンに対する親和性を有している。図3a〜3bのデータは、異なるアプタマードメインに対するアンチスイッチプラットフォームのモジュール性を支持している。これらの改変されたテオフィリンアプタマーは、s1〜s4において、リガンド濃度に対する変化した応答を示している。予想されたように、s5及びs6に関するスイッチングは、一層高濃度のテオフィリンにおいて生じている(図3a)。有意に、s5は、s1のアプタマードメインの10倍のKdを有するアプタマードメインを含み、凡そ10倍高いテオフィリン濃度でスイッチしている。加えて、テトラサイクリンアンチスイッチs7は、s1〜s4と類似のスイッチ力学を示しており、これは、認められた応答曲線が、デザインされたアンチスイッチの一般的特徴であることを示唆している。
【0164】
「オン」スイッチのデザイン及び特性決定
アンチスイッチプラットフォームの可撓性を更に調べるために、我々は、このプラットフォームを、s1のデザインにおいて利用したアプタマー及びアンチセンスドメインから「オン」アンチスイッチを構築することを企てて、改めた。テオフィリンの非存在下で発現を阻止するが、テオフィリンの存在下では発現を許すアンチスイッチs8を、類似のデザイン原理を利用して構築した。このスイッチは、そのアンチセンスドメインをリガンドの非存在下で示し、それを、自由に標的mRNAと相互作用させるが、リガンドが存在する場合には、そのアンチセンスをアプタマーステム中に隔離する(図4a)。s8は、s1と類似の力学的挙動を示す(1mM テオフィリン付近でスイッチングする)が、これは、類似の塩基対エネルギー特性のためである(図4b)。この機能的「オン」スイッチは、このスイッチプラットフォームの可撓性及びデザインテーマの一般性を示している。
【0165】
同時の、組み合わせた遺伝子調節
このアンチスイッチプラットフォームのモジュール性は、遺伝子発現の組み合わせた制御を示すシステムを可能にする。これを説明するために、我々は、細胞に、2つのスイッチを導入した。その各々は、異なるエフェクター分子に応答性であり、各々異なるmRNA標的のタンパク質発現を調節する:s1は、テオフィリン応答性GFPレギュレーターであり、s9(図9参照)は、テトラサイクリン応答性の黄色蛍光性変異タンパク質(Venus)(Nagai等、Nat Biotechnol 20, 87-90(2002))レギュレーターである(図5a)。これらの分子のターゲティング能力の変化を、アンチセンスステムとスイッチングアプタマーステムとを、アプタマー分子の残りを同じに維持しつつ交換することにより生じさせた。これら2つのアンチスイッチの、GFPとVenusを両方有するプラスミドを用いた同時発現は、遺伝子発現のモジュラーアンチスイッチデザインによる同時調節のアッセイを可能にした。図5bに示したように、テオフィリンの添加は、GFPの発現を減少させたが、Venusの発現は、影響されないままであり、テトラサイクリンの添加は、Venusを減少させたが、GFPには影響していない。その上、両リガンドの添加は、GFPとVenusの両方の発現を減少させた。この試料系は、多数のアンチスイッチ構築物によって正確に調節される一層複雑な遺伝子サーキットの構築の潜在的可能性を示している。
【0166】









【符号の説明】
【0167】
1:アンチセンス配列
2:スイッチする「アプタマーステム」
3:アンチセンス配列
4:スイッチングアプタマーステム配列
5:標的mRNA上の開始コドン
6:アンチセンス配列
7:スイッチングアプタマーステム配列
8:改変された配列
9:アンチセンス配列
10:スイッチングアプタマーステム配列
11:標的mRNA上の開始コドン
12:ユニークな制限部位
13:アンチセンス配列
14:スイッチングアプタマーステム配列
15:改変配列
16:アンチセンス配列
17:スイッチングアプタマーステム配列
18:標的mRNA上の開始コドン
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】

【図1E】

【図2A】

【図2B】

【図3A】

【図3B】

【図4A】

【図4B】

【図5A】

【図5B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)外来の酵素活性に対する基質を形成することのできる基質配列、及び(ii)リガンドに結合するアプタマーを包含する核酸であって、リガンドの該アプタマーへの結合が、核酸のコンホメーション変化を引き起こし、それが、基質配列の、該基質を形成する能力を変え及び/又は外来酵素活性の基質のKm及び/若しくはKcatを変える、当該核酸。
【請求項2】
(i)標的遺伝子の発現を阻止するアンチセンス配列、及び(ii)リガンドに結合するアプタマーを含む核酸であって、リガンドの該アプタマーへの結合が、核酸のコンホメーション変化を引き起こし、これが、該アンチセンス配列の、標的配列の発現を阻止する能力を変える、当該核酸。
【請求項3】
(i)第二の核酸の標的配列にハイブリダイズするハイブリダイゼーション配列;及び(ii)リガンドに結合するアプタマーを含む核酸であって、該アプタマーへのリガンド結合は、核酸のコンホメーション変化を引き起こし、それが、ハイブリダイゼーション配列の、標的配列にハイブリダイズする能力を変える、当該核酸。
【請求項4】
標的遺伝子の発現を変えるトランス作用性核酸であって、該核酸は、下記:
(i)該標的遺伝子にハイブリダイズすることができて該標的遺伝子の発現を調節するターゲティング配列;及び
(ii)リガンドに結合するアプタマー配列
を含み、該リガンドの該アプタマーへの結合が、該核酸のコンホメーション変化を引き起こして、該核酸が、該標的遺伝子の発現を、該リガンドの存在に依存する様式で調節する、当該核酸。
【請求項5】
前記の核酸が、リボ核酸(RNA)である、請求項1〜4の何れかに記載の核酸。
【請求項6】
前記の核酸が、少なくとも一つの天然にないヌクレオシド類似体及び/又は天然にないヌクレオシド残基間の主鎖リンカーを含む、請求項1〜4の何れかに記載の核酸。
【請求項7】
天然のヌクレオシド及びホスフェート主鎖リンカーの対応する核酸と比較して、異なる安定性、ヌクレアーゼ感受性(又は耐性)及び/又はバイオアベイラビリティーを有する、請求項6に記載の核酸。
【請求項8】
50〜200ヌクレオチドのサイズの範囲にある、請求項1〜4の何れかに記載の核酸。
【請求項9】
コンホメーション変化が、分子内二本鎖特徴(前記の基質配列を含む)を生成し又は除去し、二本鎖特徴が、外来酵素活性の基質である、請求項1に記載の核酸。
【請求項10】
前記の外来酵素活性が、RNアーゼ酵素である、請求項1又は9に記載の核酸。
【請求項11】
前記の外来酵素活性が、RNアーゼIII酵素例えばDicer又はDroshaである、請求項10に記載の核酸。
【請求項12】
前記の核酸が、前記のアプタマー、前記のRNアーゼIII酵素、及び前記の基質配列の配列へのリガンド結合に依存する様式で遺伝子サイレンシングを引き起こす、請求項11に記載の核酸。
【請求項13】
前記の基質配列が、siRNA、miRNA又はそれらの前駆体若しくは代謝産物をRNA干渉経路で、前記のRNアーゼIII酵素による反応の産物として生成する、請求項12に記載の核酸。
【請求項14】
コンホメーション変化が、基質配列の能力を変えて第二の核酸種との分子間二本鎖特徴を形成し、二本鎖特徴が外来酵素活性の基質である、請求項1に記載の核酸。
【請求項15】
第二の核酸種が、mRNAであって、前記の外来酵素活性が、mRNAを、二本鎖特徴の形成に依存する様式で変える、請求項14に記載の核酸。
【請求項16】
外来酵素活性が、RNアーゼH酵素及び/又はRNアーゼP酵素である、請求項1、14又は15の何れかに記載の核酸。
【請求項17】
外来酵素活性が、ポリメラーゼ、レコンビナーゼ、リガーゼ、メチラーゼ、グリコシラーゼ及びヌクレアーゼよりなる群から選択される、請求項1又は14に記載の核酸。
【請求項18】
前記のリガンドが、前記の基質配列の基質を形成する能力に変化をもたらし及び/又は外来酵素活性の基質のKm及び/若しくはKcatを変えて投与量依存性速度論を示す、請求項1に記載の核酸。
【請求項19】
前記のアプタマーへのリガンド結合が、前記のアンチセンス配列を前記の標的遺伝子へのハイブリダイゼーションに利用可能にするコンホメーション変化を引き起こす、請求項2に記載の核酸。
【請求項20】
前記のアプタマーへのリガンド結合が、前記のアンチセンス配列を前記の標的遺伝子へのハイブリダイゼーションに利用不能にするコンホメーション変化を引き起こす、請求項2に記載の核酸。
【請求項21】
前記のアプタマーへのリガンドの結合が、核酸内のコンホメーション変化を引き起こし、これが、前記のアンチセンス配列の前記の標的遺伝子へのハイブリダイゼーションにより形成される二本鎖の融点(Tm)を変える、請求項2に記載の核酸。
【請求項22】
前記のアンチセンス配列を、前記の標的遺伝子のRNA転写物にハイブリダイズするように選択する、請求項2、19、20又は21の何れかに記載の核酸。
【請求項23】
前記のアンチセンス配列を、前記の標的遺伝子のゲノム配列にハイブリダイズするように選択する、請求項2、19、20又は21の何れかに記載の核酸。
【請求項24】
前記のリガンドが、前記のアンチセンス配列の、標的配列の発現を阻止する能力に変化をもたらして投与量依存性速度論を示す、請求項2に記載の核酸。
【請求項25】
前記のターゲティング配列が、標的遺伝子のRNA転写物にハイブリダイズして(i)該RNA転写物から翻訳されるタンパク質の量を減少させ及び/又は(ii)該RNA転写物のスプライシングを変える、請求項4に記載の核酸。
【請求項26】
前記のRNA転写物が、mRNAである、請求項25に記載の核酸。
【請求項27】
前記のターゲティング配列が、前記の標的遺伝子のゲノム配列にハイブリダイズして該ゲノム配列から転写されるRNAの量を減少させる、請求項4に記載の核酸。
【請求項28】
前記のリガンドが、前記の基質配列の、前記の標的配列にハイブリダイズする能力に変化をもたらして投与量依存性速度論を示す、請求項3に記載の核酸。
【請求項29】
リガンドが、2500amu未満の分子量を有する小型分子であり且つ/又は細胞透過性である、請求項1〜4の何れかに記載の核酸。
【請求項30】
リガンドが、金属イオンである、請求項1〜4の何れかに記載の核酸。
【請求項31】
リガンドが、天然産物である、請求項1〜4の何れかに記載の核酸。
【請求項32】
リガンドが、シグナル変換二次メッセンジャー分子である、請求項31に記載の核酸。
【請求項33】
リガンドが、翻訳後修飾されたタンパク質である、請求項31に記載の核酸。
【請求項34】
リガンドを、ポリペプチド、ペプチド、核酸、炭水化物、脂肪酸及び脂質、非ペプチドホルモン(ステロイドなど)及びこれらの代謝前駆体又は産物よりなる群から選択する、請求項1〜4の何れかに記載の核酸。
【請求項35】
リガンドを、酵素補因子、酵素基質又は酵素媒介反応の産物よりなる群から選択する、請求項1〜4の何れかに記載の核酸。
【請求項36】
(i)転写されたとき請求項5に記載のRNAを生成するにコード配列、及び(ii)この発現構築物を含む細胞における該RNAの転写を調節する少なくとも一つの転写調節配列を含む発現構築物。
【請求項37】
アプタマー調節される核酸のライブラリーであって、請求項1、2、3若しくは4の何れか又は請求項36に記載の発現構築物の何れかの核酸の多彩な集団を含む当該ライブラリー。
【請求項38】
少なくとも一つの請求項36に記載の発現構築物で巧みに処理された組換え細胞。
【請求項39】
請求項1〜4の何れかに記載の少なくとも一の核酸を含む細胞。
【請求項40】
一種以上の反応の代謝経路を含み;且つ該代謝経路上で制御エレメントとして作用する一種以上のトランス作用性核酸を含む細胞であって、各トランス作用性核酸が、下記:
(i)該代謝経路における酵素補因子、反応体、反応の基質又は生成物から選択したリガンドに選択的に結合するアプタマー配列;
(ii)該代謝経路に含まれるタンパク質をコードする標的遺伝子の発現を低減させるための遺伝子サイレンシング配列、
を含み、該アプタマーへのリガンド結合が、該トランス作用性核酸に2つのコンホメーション状態の間で変化を引き起こし、該コンホメーション状態の一方において、トランス作用性核酸は、該標的遺伝子の発現を該遺伝子サイレンシング配列に依存する様式で阻害し、他方においては、該標的遺伝子の発現を阻害せず、それにより、この代謝経路が、少なくとも部分的に、このトランス作用性核酸によって調節調節される当該細胞。
【請求項41】
代謝経路が、一つの酵素により媒介される少なくとも一つの反応を含み、少なくとも一つの該トランス作用性核酸が、該酵素の発現を調節する、請求項40に記載の細胞。
【請求項42】
細胞における標的遺伝子の、リガンドの存在又は非存在に依存した発現を与える方法であって、該方法は、細胞に、下記:
(i)該標的遺伝子にハイブリダイズしてその標的遺伝子の発現を調節することのできるターゲティング配列;及び
(ii)リガンドに結合するアプタマー配列
を含むトランス作用性核酸を導入することを含み、
該アプタマーへの該リガンドの結合が、該トランス作用性核酸にコンホメーション変化を誘導し、該トランス作用性核酸が、該標的遺伝子の発現を、該リガンドの濃度に依存する投与量依存様式で調節する当該方法。
【請求項43】
リガンドが、前記の細胞により生成される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
リガンドが、前記の細胞と接触される細胞透過性薬剤である、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記のターゲティング配列が、前記の標的遺伝子の発現をアンチセンス機構の作用により阻害し、リガンド誘導されたコンホメーション変化に依存した様式での該標的遺伝子とのハイブリダイゼーションに利用可能である、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
前記のターゲティング配列が、前記の標的遺伝子の発現をRNA干渉機構の作用により阻害し、リガンド誘導されたコンホメーション変化に依存した様式で、RNアーゼIII酵素の基質になる、請求項42に記載の方法。
【請求項47】
前記のターゲティング配列が、前記の標的遺伝子の発現を該標的遺伝子との相同組換えにより阻害し、リガンド誘導されたコンホメーション変化に依存した様式で、レコンビナーゼの基質になる、請求項42に記載の方法。
【請求項48】
細胞内の分析物の量を測定する方法であって、下記を含む当該方法:
(i)レポーター遺伝子にハイブリダイズすることができて該レポーター遺伝子の発現を調節するターゲティング配列を含むトランス作用性核酸、及び該分析物に結合するアプタマー配列を供給し、該分析物の該アプタマーへの結合は、コンホメーション変化を該トランス作用性核酸に誘導し、該トランス作用性核酸は、該レポーター遺伝子の発現を、該分析物の濃度に依存する様式で調節し、
(ii)該レポーター遺伝子の発現量を測定し;そして
(iii)該レポーター遺伝子の発現量を分析物の量と相関させ、それにより、細胞内のリガンドの量を測定する。
【請求項49】
条件付き遺伝子ネットワークを細胞において確立する方法であって、下記を含む当該方法:
(i)標的遺伝子の活性を変調するエフェクタードメインと、標的遺伝子の量又は活性を変調するシグナリング経路と無関係のリガンドに結合するアプタマードメインを含む核酸を供給し、リガンドのアプタマードメインへの結合が、核酸におけるコンホメーション変化を引き起こし、それが、エフェクタードメインの、標的遺伝子の活性を変調する能力を変え;そして
(ii)その細胞を、標的遺伝子の活性を変調するのに十分な量の核酸と接触させ、それにより、条件付き遺伝子ネットワークを確立する。
【請求項50】
病原性因子による感染を治療し又は予防する方法であって、該方法は、患者に、下記を含む十分量のトランス作用性核酸を投与することを含み:
(i)病原体又は患者の標的遺伝子にハイブリダイズすることができて、該標的遺伝子の発現を調節するターゲティング配列(該標的遺伝子は、病原体による感染の維持、統合、再現、毒性又は拡大に必須である);及び
(ii)リガンドに結合するアプタマー配列(該リガンドの濃度は、該病原体の存在に依存する)、
ここに、該リガンドの該アプタマーへの結合が、該核酸にコンホメーション変化を誘導し、該核酸は、該標的遺伝子の発現を、リガンド誘導されたコンホメーション変化に依存する様式で調節して、該病原体による感染を低減させ又は阻止する当該方法。
【請求項51】
患者の細胞における、細胞の成長、分化又は生存力の表現型の調節を引き起こす方法であって、該方法は、該患者の細胞に、下記:
(i)該患者の細胞中の標的遺伝子にハイブリダイズすることができて、該標的遺伝子の発現を調節するターゲティング配列(該標的遺伝子の発現は、細胞の成長、分化又は生存力を変化させる);及び
(ii)リガンドに結合するアプタマー配列(該リガンドの濃度は、細胞の表現型に依存する)、
を含むトランス作用性核酸を導入することを含み、
ここに、該リガンドの該アプタマーへの結合が、該核酸におけるコンホメーション変化を誘導し、該核酸は、該標的遺伝子の発現を、細胞の成長、分化又は生存力を該リガンドの非存在下と比較して変えるように、リガンド誘導されたコンホメーション変化に依存する様式で調節する当該方法。
【請求項52】
細胞死を、前記のリガンドの存在に依存する様式で誘導するために利用される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
細胞死を、前記のリガンドの存在に依存する様式で防止するために利用される、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
分化を、前記のリガンドの存在に依存する様式で誘導するために利用される、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
分化を、前記のリガンドの存在に依存する様式で阻止するために利用される、請求項51に記載の方法。
【請求項56】
過形成又は腫瘍細胞の成長を防止するために利用する、請求項51、52又は54に記載の方法。
【請求項57】
患者における脂肪細胞を低減させるために利用される、請求項51、52又は54に記載の方法。
【請求項58】
幹細胞の成長及び分化を調節するために利用する、請求項51、54又は55に記載の方法。
【請求項59】
免疫応答の活性化を調節するために利用される、請求項51に記載の方法。
【請求項60】
前記のトランス作用性核酸、又は該トランス作用性核酸を転写するための発現構築物を、前記の患者に移植される細胞に、エキソ・ビボで導入する、請求項51、58又は59に記載の方法。
【請求項61】
請求項1〜4の何れかに記載の核酸又は請求項36に記載の発現構築物、及びヒト又は非ヒト患者への投与に適した製薬上許容しうるキャリアーを含む医薬製剤組成物。

【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19A】
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【図19B】
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【図19C】
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【図20A】
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【図20B】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−223201(P2012−223201A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−178625(P2012−178625)
【出願日】平成24年8月10日(2012.8.10)
【分割の表示】特願2007−534921(P2007−534921)の分割
【原出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【出願人】(305053547)カリフォルニア インスティテュート オブ テクノロジー (18)
【Fターム(参考)】