説明

アライナ装置

【課題】ウェハが搭載されるターンテーブルの回転及び水平面内での移動によってもフレームの上下における気密性を維持でき、アライニング作業を真空中又は特定のガス雰囲気中で行うことができるようにする。
【解決手段】アライナ装置10は、フレーム3の底面における貫通孔31の周縁部に上端を密着して固定するとともに支持台4の上面における孔部42の周縁部に下端を密着して固定したベローズ9を備えている。また、孔部42には、磁性流体継手8が嵌入している。ターンテーブル1が配置されるフレーム3の上方は、ベローズ9と支持台4の上面とで包囲される範囲においてのみフレーム3の下方に連通し、フレーム3の下方から外気が流入することがなく、気密状態に維持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ウェハを回転させてオリエンテーションフラットおよびノッチを含むマークを検出し、ウェハの位置合わせを行うアライナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェハの面方位が変わるとその微視的な性質が変化するため、半導体製造工程では、通常、ウェハの方向や位置を揃えるアライニング作業が行われている。アライニング作業は、通常、アライナ装置を用いて行われる。アライナ装置では、ウェハを回転させてオリエンテーションフラットおよびノッチを含むマークが検出され、検出されたマークに基づいてウェハのX方向、Y方向、およびθ方向の位置合わせが実行されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
アライナ装置は、ウェハが載置されるターンテーブルを回転自在且つ水平面内で互いに直交する2方向に移動自在に備えている。ターンテーブルは、フレームの下方で支持台に軸支された回転軸の上端に固定されており、フレームの上方に露出している。支持台には、ターンテーブルを回転させるモータ及び伝達機構、支持台をフレームに対して直交する2方向に移動させるモータ及び伝達機構が搭載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−91770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、ウェハに対する処理作業の多様化に伴い、処理作業を真空中又は特定のガス雰囲気中で行う場合がある。アライニング作業を処理作業と同一の環境中で行おうとすると、ターンテーブルが配置されているフレームの上方と、モータ及び伝達機構が配置されているフレームの下方との間の気密性を維持する必要がある。しかし、従来のアライニング装置では、フレームの上下間の気密性を維持できるようにしたものがなく、アライニング作業を処理作業と同一環境中で行うことができなかった。このため、処理作業位置とアライニング作業位置との間でウェハを繰り返し搬送する必要があり、作業時間が長時間化する。
【0006】
この発明の目的は、ウェハが搭載されるターンテーブルの回転及び水平面内での移動によってもフレームの上下における気密性を維持できるようにし、アライニング作業を真空中又は特定のガス雰囲気中で行うことができるアライナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るアライナ装置は、ターンテーブル、回転軸、フレーム、支持台、駆動手段、密封手段、チューブを備えている。ターンテーブルは上面にウェハが搭載される。回転軸は、上端にターンテーブルが固定されている。フレームは、回転軸が貫通する貫通孔を備えている。支持台は、回転軸の下端を軸支する軸支部を備えるとともに、フレームに対して水平方向における互いに直交する2方向に沿って所定範囲内で移動自在にされている。駆動手段は、支持台の下方から回転軸の下端部に回転を供給する。密封手段は、軸支部で支持台の上下を気密状態にする。チューブは、可撓性を有し、上端がフレームの底面における貫通孔の周縁部に密着して固定され、下端が支持台の上面における軸支部の周縁部に密着して固定されている。
【0008】
ターンテーブルは、駆動手段によって回転軸と一体的に回転するとともに、支持台の移動によって回転軸と一体的に水平方向に移動する。回転軸の周囲は、フレームの底面における貫通孔の周縁部と支持台の上面における軸支部の周縁部との間で、チューブによって密封されている。また、密封手段により、軸支部で支持台の上下が気密状態にされている。したがって、ターンテーブルが位置するフレームの上方は、チューブと密封手段とによってフレームの下方におけるチューブ及び軸支部の外側に対して気密状態にされる。この気密状態は、チューブが可撓性を有するため、支持台が水平面内で移動しても維持される。
【0009】
この構成において、密封手段として、支持台に固定されて駆動手段の回転を回転軸に伝達する流体継手を用いることで、回転部分の気密性を確実に維持することができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、ウェハが搭載されるターンテーブルの回転及び水平面内での移動によってもフレームの上下における気密性を維持することができ、アライニング作業を真空中又は特定のガス雰囲気中で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施形態に係るアライナ装置の要部の斜視図である。
【図2】チューブを取り外した状態の同アライナ装置の要部の斜視図である。
【図3】同アライナ装置の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、この発明の実施形態に係るアライナ装置について、図を参照しつつ説明する。
【0013】
図1及び図2に示すように、この発明の実施形態に係るアライナ装置10は、ターンテーブル1、回転軸2、フレーム3、支持台4、モータ5、駆動ベルト6、プーリ7、磁性流体継手8、ベローズ9を備えている。
【0014】
ターンテーブル1は、回転軸2の上端に固定されており、上面にウェハが載置される。回転軸2は、上端部がフレーム3の貫通孔31を下方から貫通してフレーム3の上方に露出している。回転軸2の下端部は、支持台4の軸支部40で軸支されている。支持台4は、フレーム3と平行に配置されており、水平面内で互いに直交する2方向であるX方向及びY方向のそれぞれに沿って所定範囲内で移動自在にされている。
【0015】
支持台4には、ガイド部材41が固定されている。ガイド部材41は、フレーム3の下方にX方向及びY方向のそれぞれに沿って配置されたレール32及び33に外嵌している。支持台4には、X方向移動用モータ61及びY方向移動用モータ62が搭載されている。X方向移動用モータ61及びY方向移動用モータ62のそれぞれの出力軸と同軸のスクリューねじが、フレーム3の底面に固定された雌ねじ部材34に螺合している。
【0016】
支持台4の軸支部40には、孔部42が形成されており、孔部42に密封手段である磁性流体継手8が貫通している。磁性流体継手8は、回転軸2の下端部とプーリ7とを上下方向に連結している。プーリ7は、支持台4の下方に配置されている。
【0017】
モータ5は、支持台4に固定されている。モータ5の出力軸には駆動プーリ51が固定されている。駆動ベルト6は、駆動プーリ51とプーリ7とに張架されている。モータ5、駆動プーリ51、駆動ベルト5及びプーリ7がこの発明の駆動手段に相当する。
【0018】
以上の構成により、X方向移動用モータ61又はY方向移動用モータ62を駆動すると、スクリューねじの回転により、支持台4が回転軸2とともにレール32又はレール33に沿って移動する。モータ5を駆動すると、モータ5の回転が駆動ベルト6を介してプーリ7に供給され、プーリ7の回転が磁性流体継手8を介して回転軸2に伝達されることにより、回転軸2が回転する。
【0019】
X方向移動用モータ61、Y方向移動用モータ62及びモータ5を駆動することで、回転軸2の上端に固定されたターンテーブル1を、X方向及びY方向に沿って移動させることができるとともに、回転軸2周りに回転させることができる。これによって、ターンテーブル1上に載置されたウェハのアライニング作業を行うことができる。
【0020】
なお、ターンテーブル1をX方向及びY方向に沿って所定範囲内で移動させることができるとともに、回転軸2周りに回転させることができることを条件に、上述の構成以外の任意の構成を用いることができる。
【0021】
また、貫通孔31の内径は、所定範囲内でX方向及びY方向に移動する回転軸2が干渉しない大きさにされている。
【0022】
図3に示すように、ベローズ9は、可撓性を有するチューブであり、上端部が取付環91を介してフレーム3の底面における貫通孔31の周縁部に密着させて固定され、下端部が取付環92を介して支持台4の上面における軸支部40に密着させて固定されている。ベローズ9は、フレーム3の底面と支持台4の上面との間で、回転軸2及び磁性流体継手8の周囲を被覆している。
【0023】
磁性流体継手8は、円筒形状の本体81の下端部にフランジ部82を備えている。支持台4の孔部42の内径は、本体81の外径に略等しくされている。磁性流体継手8は、本体81を支持台4の下方から孔部42内に嵌入させ、フランジ部82を支持台4の底面との間にOリング83を介して固定される。
【0024】
本体81は、下方に露出する入力軸84及び上方に露出する出力軸85を回転自在に支持している。入力軸84には、プーリ7が固定されている。出力軸85には、回転軸2の下端部が同軸上に固定されている。本体81の内部には、磁性流体が充填されている。磁性流体継手8は、本体81の内部に充填されている磁性流体により、入力軸84の回転を出力軸85に伝達するとともに、入力軸84と出力軸85との間を気密状態にする。
【0025】
フレーム3の上方は、貫通孔31を介してフレーム3の下方に連通している。しかし、フレーム3の底面と支持台4の上面との間では、ベローズ9によって貫通孔31の下方は閉鎖されている。また、支持台4の孔部42は、磁性流体継手8によって閉塞されており、磁性流体継手8の内部も磁性流体によって気密状態にされている。したがって、フレーム3の上方は、ベローズ9の内部と支持台4の上面とで包囲される間においてのみ、フレーム3の下方に連通しており、ベローズ9の外部及び支持台4の下方には連通していない。
【0026】
このため、フレーム3の上方を真空状態又は特定のガス雰囲気状態とした場合でも、この状態が外気によって阻害されることがなく、フレーム3の上方を真空状態又は特定のガス雰囲気状態に維持することができる。
【0027】
ベローズ9は、可撓性を有するため、支持台4がフレーム3に対して水平面内でX方向又はY方向に移動した際にも容易に変形する。このため、フレーム3の上方の気密状態を維持したまま、ターンテーブル1をフレーム3の上方でX方向又はY方向に移動させることができる。
【0028】
この結果、ウェハに対して真空状態又は特定のガス雰囲気状態で処理作業を行う場合でも、アライナ装置10をウェハに対する処理作業を行う空間内に配置することができる。アライニング作業を処理作業と同一の環境下で行うことができ、アライニング作業のためにウェハを処理作業環境外に搬出する必要がなく、作業時間を短縮することができる。
【0029】
なお、磁性流体継手9は、支持台4の下方から気密状態を維持して回転軸2に回転を伝達することができる他の継手、例えば他の流体継手を用いることができる。
【0030】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0031】
1−ターンテーブル
2−回転軸
3−フレーム
4−支持台
5−モータ(駆動手段)
6−駆動ベルト(駆動手段)
7−プーリ(駆動手段)
8−磁性流体継手(密封手段)
9−ベローズ(可撓性のチューブ)
10−アライナ装置
31−貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面にウェハが搭載されるターンテーブルと、
上端に前記ターンテーブルが固定された回転軸と、
前記回転軸が貫通する貫通孔を備えたフレームと、
前記回転軸の下端を軸支する軸支部を備えるとともに、水平方向における互いに直交する2方向に沿って所定範囲内で移動自在にされた支持台と、
前記支持台の下方から前記回転軸の下端部に回転を供給する駆動手段と、
前記軸支部で前記支持台の上下を気密状態にする密封手段と、
上端が前記フレームの底面における前記貫通孔の周縁部に密着して固定され、下端が前記支持台の上面における前記軸支部の周縁部に密着して固定された可撓性のチューブと、
を備えたアライナ装置。
【請求項2】
前記密封手段は、前記支持台に固定され、前記駆動手段の回転を前記回転軸に伝達する流体継手である請求項1に記載のアライナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−3796(P2011−3796A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146780(P2009−146780)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(000108753)タツモ株式会社 (73)
【Fターム(参考)】