アルカリ電池
【課題】防爆機能の作動スペースが小さくても内圧上昇時に防爆機能が確実に作動するアルカリ電池を提供する。
【解決手段】正極端子及び負極端子のうち一方極端子を兼ねる容器1と、前記容器1内に収納される正極及び負極と、前記容器1の開口部に封口ガスケット8を介してカシメ固定された他方極端子板7と、前記他方極端子板7と電気的に接している他方極集電棒17とを備えたアルカリ電池であって、前記封口ガスケット8は、前記他方極集電棒17が挿入されるボス部9と、前記容器1の開口部と前記他方極端子板7との間に配置される筒状外壁部10と、前記ボス部9と前記筒状外壁部10とを連結する鍔部11とを具備し、前記鍔部11は、環状の弁膜12と、前記弁膜12の周囲から前記他方極端子板側に屈曲した屈曲部14とを有し、前記屈曲部14は、前記弁膜側の辺部が反対側の辺部に比較して長く、かつ肉厚である。
【解決手段】正極端子及び負極端子のうち一方極端子を兼ねる容器1と、前記容器1内に収納される正極及び負極と、前記容器1の開口部に封口ガスケット8を介してカシメ固定された他方極端子板7と、前記他方極端子板7と電気的に接している他方極集電棒17とを備えたアルカリ電池であって、前記封口ガスケット8は、前記他方極集電棒17が挿入されるボス部9と、前記容器1の開口部と前記他方極端子板7との間に配置される筒状外壁部10と、前記ボス部9と前記筒状外壁部10とを連結する鍔部11とを具備し、前記鍔部11は、環状の弁膜12と、前記弁膜12の周囲から前記他方極端子板側に屈曲した屈曲部14とを有し、前記屈曲部14は、前記弁膜側の辺部が反対側の辺部に比較して長く、かつ肉厚である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状アルカリ乾電池のようなアルカリ電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来アルカリ電池のボス部の外周周縁部に薄膜部を形成した封口ガスケットは、ボス部の外周周縁部に形成した薄膜部と筒状外壁部を連結する鍔状の連結部が、ボス部中心線に対し垂直もしくは外周に近づくほど負極端子から離れる方向へ傾斜していた。この傾斜は、セパレータ内の固形物がセパレータ外にこぼれ出ないようにセパレータ開口部を支えるために好都合であり多くの電池メーカーで採用されている。
【0003】
逆装填などにより電池が充電され、電池の内圧が上昇した場合、薄膜部とそれに連結した鍔部が変形し、所定の圧力を超えた場合に薄膜部が破断し、効率良く内部のガスを放出することにより防爆機能を発現させることが行われている。
【0004】
一方、アルカリ電池は、近年の携帯用機器の増加や、長寿命化の要望が強いことから、内容物の最適化や、さまざまな添加剤の検討が行なわれているが、電池構造を改良し、内容積そのものを増やす検討も行なわれている。
【0005】
防爆機能を備えたアルカリ電池の封口ガスケットに必要な機能としては、電池内部を密封口することと、電池内圧が所定の圧力を超えた場合に確実に作動する防爆機能を有することであり、電池内容積を増やすためには、より省スペースな構造であることが求められる。
【0006】
省スペースで、封口性が確保され、かつ防爆機能を有するアルカリ電池の一例として、例えば、特許文献1に記載のアルカリ電池が挙げられる。特許文献1に記載のアルカリ電池の防爆機能では、ボス部6の周囲に薄肉の安全弁62が形成され、この安全弁62の周囲に円盤状の連結部63が形成されており、連結部63の負極端子側の面に複数個のリブ64が設けられている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の防爆機能では、連結部63全体がガス圧で撓むことによって安全弁62が破断するため、連結部63の変形に必要なスペースを大きく取る必要があり、省スペース化には不利である。また、省スペース化のために負極端子3と封口ガスケットとの距離を狭くすると、安全弁62が破断する前に、撓んだ連結部63が負極端子3と接し、安全弁62が確実に作動しなくなる。
【特許文献1】特開2003−217532号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、防爆機能の作動スペースが小さくても内圧上昇時に防爆機能が確実に作動するアルカリ電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るアルカリ電池は、正極端子及び負極端子のうち一方極端子を兼ねる容器と、前記容器内に収納される正極及び負極と、前記容器の開口部に封口ガスケットを介してカシメ固定された他方極端子板と、前記他方極端子板と電気的に接している他方極集電棒とを備えたアルカリ電池であって、
前記封口ガスケットは、前記他方極集電棒が挿入されるボス部と、前記容器の開口部と前記他方極端子板との間に配置される筒状外壁部と、前記ボス部と前記筒状外壁部とを連結する鍔部とを具備し、
前記鍔部は、環状の弁膜と、前記弁膜の周囲から前記他方極端子板側に屈曲した屈曲部とを有し、前記屈曲部は、前記弁膜側の辺部が反対側の辺部に比較して長く、かつ肉厚であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、防爆機能の作動スペースが小さくても内圧上昇時に防爆機能が確実に作動するアルカリ電池を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図8に示すように、正極缶31に帽子形の負極端子板32を封口ガスケット33を介してカシメ固定するアルカリ電池において、省スペースであることだけを考慮した場合、封口ガスケット33の構造は、負極端子板32の内面に密着させた構造であることが好ましい。
【0012】
さらに封口性を考慮した場合、封口ガスケット35として、図9に示すように、負極集電棒34が圧入貫通されるボス部36と、筒状外壁部37と、ボス部36と筒状外壁部37とを連結する鍔部38の外周付近に設けられた環状の溝部39とを有するものが望ましい。また、負極端子板40には、皿型の蓋体で、上面に負極端子となる突起40aが形成されているものが望ましい。封口ガスケット35を正極缶31の開口部に配置し、負極端子板40の周縁を封口ガスケット35の環状の溝部39内に挿入し、正極缶31の開口部の上端を封口ガスケット35の筒状外壁部37の上端と共にカシメ加工により内方に折り曲げることによって、良好な封止性が得られる。また、ボス部36の長さと筒状外壁部37の長さは、各種シール剤との組み合わせにより必要最低限の長さを確保することが望ましい。
【0013】
次に、防爆機能を付加するためには、破断する箇所と内圧上昇により変形する部分を設ける必要がある。この一例を図10〜図12に示す。
【0014】
図10に示すように、封口ガスケット35の鍔部38をフラットな形状にして、負極端子板40との間に空間を設ける。また、鍔部38のうちボス部36の周囲の厚さを薄くして環状の薄膜部(弁膜)41を形成する。さらに、負極端子板40にガス抜き孔42を設ける。
【0015】
しかしながら、図10に示すような構成のアルカリ電池によると、内圧上昇時に薄膜部41と連結する連結部が全体的に撓むために変形量としては多く、薄膜部41が破断する以前に連結部が負極端子板40の内面に接触しやすく、薄膜部41が所定の圧力で破断し難くなる。また、連結部が変形するためのスペースを十分に確保すると、電池内容積の向上に不利となる。
【0016】
図10に示す構成の封口ガスケット35で内圧が上昇し薄膜部41が破断するときの挙動を詳細に調査した結果、図11に示すように、内圧が上昇するとともにボス部36周囲の薄膜部41とそれに連結する部分が変形していき、薄膜部41がそれ以上伸びることができなくなったときに図12に示すように破断し防爆機能が発現することがわかった。このとき、もっとも変化量の大きい部位は薄膜部41ではなく、連結部の中央付近であることがわかった。逆にいえば、連結部の外周側の変化量は、連結部中央付近の変化量と比較して少ない変化量であることが明らかとなった。
【0017】
薄膜部とそれに連結する連結部の内圧上昇時の挙動調査から、連結部の外周側には防爆機能が作動する際に必要な作動スペースは内周側のそれに比較して少なくできることが明らかとなり、省スペース化を実現するために削減可能なスペースであることを見出した。
【0018】
本願発明のように、封口ガスケットのボス部と筒状外壁部とを連結する鍔部に、環状の弁膜を形成し、弁膜の周囲から他方極端子板(例えば負極端子板)側に屈曲した屈曲部を設け、屈曲部の弁膜側の辺部を反対側の辺部に比較して長くすると共に厚くすることによって、内圧上昇時、ガス圧が弁膜側辺部に集中するものの、弁膜側辺部が厚くて長いため、撓むというよりは寧ろ、上方にほぼ平行移動することで弁膜を破断させることができる。よって、弁膜を破断させるのに鍔部を撓ませる必要がなく、また、鍔部全体を変形させる必要もないため、弁膜の破断に要する鍔部の変形量を少なくすることができ、作動スペースを小さくして電池内容積の増加を図ることができると共に、防爆機能の作動をより確実なものとすることができる。
【0019】
上記構造の封口ガスケットで作動スペースを極限まで減らした場合、内圧上昇により弁膜が破断した際に、ガスケット鍔部が端子板内面に密着し、効率良く外部にガスを放出することが困難となる場合がある。鍔部の他方極端子板と対向する面に複数の突起を設けることによって、他方極端子板にガスケットが全面密着するのを回避することができ、ガス抜きの経路を確実に確保することができる。
【0020】
本発明の第1の実施形態を図1〜図4を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施形態に係るアルカリ乾電池を示す模式的な断面図である。図2〜図4は図1のアルカリ乾電池の防爆機構作動時の動作を示した模式図である。
【0021】
正極缶1は、有底円筒状で、底面が外側に凸状に張り出しており、この凸部は正極端子2として機能する。また、正極缶1の開口部の下方には、後述する封口ガスケットが配置されるように内方に突出した段差3(ビード部)が設けられている。正極缶1は、例えば、ニッケルメッキまたはニッケル合金メッキ層を形成した冷間圧延鋼板材のような金属から形成することが可能である。
【0022】
正極缶1の内周面のうち、段差3よりも下方に位置する部分には、黒鉛粉末を主成分とする導電性被膜(図示しない)が形成されている。
【0023】
円筒形状の正極合剤4は、正極缶1内に収納され、その外周面が正極缶1の内面の導電性被膜と接している。正極合剤4は、例えば、二酸化マンガン粉末と黒鉛粉末を混合し、これを成形型を用いて所定の圧力で中空円筒状に加圧成形することにより得られる。有底円筒状のセパレータ5は、円筒状の筒紙の開口部に底紙を一体化させたものであり、正極合剤4の中空部内に配置されている。セパレータ5は、例えば、ビニロン及びPVA繊維の不織布から形成される。セパレータ5の開口部の上端は、後述する封口ガスケット8の屈曲部の短辺部分に沿って内方に折り曲げられている。これにより、セパレータ5の開口部を封口ガスケット8の鍔部11で蓋をすることができ、セパレータ5内から内容物(後述するゲル状負極)がこぼれ出すのを回避することができる。
【0024】
ゲル状負極6は、セパレータ5内に充填されている。ゲル状負極6には、例えば、無汞化亜鉛合金粉末、アルカリ電解液及びゲル化剤としてのポリアクリル酸を含むゲル状亜鉛負極を使用することができる。
【0025】
負極端子板7は、正極缶1の封口板を兼ねているもので、正極缶1の開口部に封口ガスケット8を介してカシメ固定されている。ここで、開口部とは、段差3よりも上方に位置する部分をいう。
【0026】
封口ガスケット8は、例えばナイロン6,6のようなポリアミド樹脂から形成されている。封口ガスケット8は、負極集電棒が挿入される円筒状のボス部9と、筒状の外壁部10と、ボス部9と筒状外壁部10とを連結する鍔部11とを備えるものである。筒状外壁部9は、正極缶1の開口部の内面と負極端子板7との間にカシメ加工によって圧縮状態で配置される。また、鍔部11は、内部封口板として機能するものである。
【0027】
鍔部11のうちボス部9の周囲の厚さが最も薄くなっており、環状の弁膜12として機能する。鍔部11の周縁は、下方に陥没しており、環状の凹部13が形成されている。これにより、筒状外壁部10の高さを十分に確保することが可能になると共に、カシメ加工の際に正極缶1の半径方向に加わる力を環状凹部13で吸収することができるため、カシメ加工時に弁膜12が変形するのを防止することができる。この環状凹部13は、正極缶1の段差3上に配置されている。
【0028】
鍔部11のうち、弁膜12と環状凹部13との間に位置する部分は、上方(負極端子側)に向かってへの字状に屈曲している。屈曲部14のうち弁膜12側の辺部(以下、長辺部分と称す)の長さL1が、反対側の辺部(以下、短辺部分と称す)の長さL2よりも長くなっている。ここで、長辺部分の長さL1は、鍔部11の内面側(負極端子の反対側)から見て、弁膜12と屈曲部14との境界(厚さの変位点)から屈曲点までの長さをいう。一方、長さL2は、鍔部11の内面側から見て、屈曲点から終点(図1,2の場合、屈曲部14と平坦部15の境界)までの長さをいう。また、屈曲部14のうち、長辺部分L1の厚さは短辺部分L2の厚さに比して厚くなっている。
【0029】
図1では、屈曲部14の厚さが弁膜12の厚さよりも厚くなっているが、屈曲部14の短辺部分L2の厚さは弁膜12の厚さと等しくても良い。なお、防爆機能を確実に作動させる観点からは、屈曲部14の厚さが弁膜12の厚さよりも厚いことが望ましい。
【0030】
負極端子板7は、皿型の蓋体で、上面が凸状に張り出しており、凸部が負極端子として機能する。また、負極端子板7には、凸部(負極端子)を囲むように複数のガス抜き孔16が開口されている。負極端子板7の周縁は、封口ガスケット8の環状凹部13内に挿入されている。負極端子板7は、例えば、ニッケルメッキまたはニッケル合金メッキ層を形成した冷間圧延鋼板材のような金属から形成することが可能である。
【0031】
正極缶1の開口部の上端は、封口ガスケット8の筒状外壁部10の上端と共にカシメ加工によって内方に折り曲げられている。正極缶1は、封口ガスケット8挿入部分の径が若干大きめに加工してあり、そこに封口ガスケット8と負極端子板7を嵌め込み、縮径することで封口ガスケット8の筒状外壁部10を圧縮状態とする。このとき、封口ガスケット8が中心(ボス部9)方向へ変形するが、封口ガスケット8の環状凹部13の底面と平坦部15とを連結する薄肉部分が変形するだけで、平坦部15まで影響が及ばないため、弁膜12の変形が抑制され、高い封口性を確保することができる。
【0032】
例えば真鍮製の負極集電棒17は、封口ガスケット8のボス部9に挿入されており、頭部が負極端子板7の内面に溶接されることで負極端子板7と電気的に接触し、かつ先端部がゲル状負極4に差し込まれている。
【0033】
前述したようにガス発生により内圧が上昇した際にガス圧は内周側に集中するため、上述した構造のアルカリ乾電池によると、ガス圧を屈曲部14の長辺部分L1に集中させることができる。その結果、図3に示すように、長辺部分L1は撓むというよりは寧ろガス圧で負極端子板7側に移動し、長辺部分L1が弁膜12から引き千切られるようにして破断するため、弁膜12の破断に必要な鍔部11の変形量を小さくすることができる。その結果、防爆機能の作動に必要なスペースである負極端子板7と鍔部11との間のスペースを小さくすることができ、省スペースにしても確実に破断させることが可能になる。破断後、図4に示すように、電池内のガスは、弁膜12の破断箇所から負極端子板7のガス抜き孔16を通して外部に放出されるため、電池の破裂を未然に防止することができる。
【0034】
また、屈曲部14を形成することによって、セパレータ5の開口端を屈曲部14に沿って内方に折り曲げて屈曲部14でセパレータ5の開口部を塞ぐことができるため、セパレータ5からゲル状負極がこぼれ出すのを抑制することが可能になる。
【0035】
長辺部分L1の長さは、短辺部分L2の長さの1.5倍以上、3倍以下にすることが望ましい。これは以下に説明する理由によるものである。長辺部分L1の長さを短辺部分L2の長さの1.5倍未満にすると、内圧上昇時に長辺部分L1だけでなく短辺部分L2も高いガス圧を受けやすくなり、短辺部分L2がガス圧によって撓んで伸びてしまい、所定の内圧に達しても弁膜12が破断しなくなる恐れがある。一方、長辺部分L1の長さが短辺部分L2の長さの3倍を超えると、長辺部分L1の内圧上昇時の変形量が多くなるため、弁膜12が破断する前に長辺部分L1が負極端子板7の内面と接触し、所定の内圧に達しても弁膜12が破断しなくなる恐れがある。
【0036】
次いで、本発明に係る第2の実施形態について図5〜図7に示す。なお、前述した図1で説明したのと同様な部材については同符号を付して説明を省略する。
【0037】
この第2の実施形態に係るアルカリ乾電池は、封口ガスケット8の負極端子板側の面に突起を設けること以外は、前述した図1に示すアルカリ乾電池と同様な構造を有するものである。
【0038】
複数の外周側リブ20は、封口ガスケット8の負極端子板側の面(図5,7の上面)に、屈曲点から長辺部分L1と短辺部分L2とに跨るように同心円状に配置されている。外周側リブ20同士の間には、間隔が設けられている。複数の内周側リブ21は、長辺部分L1のうち、外周側リブ20の間に設けられた空間と対応する位置に同心円状に配置されている。
【0039】
図5〜図7に示すように、封口ガスケット8の負極端子板側の面にリブ20,21を同心円状に設けることによって、ガス圧により鍔部11が押し上げられた際にリブ20,21が負極端子板7の内面に接触することで負極端子板7の内面に鍔部11が密着するのを回避することができ、ガス抜きの経路を確保することができる。また、内周側のリブ21に外周側のリブ20が対向しないように互いの位置をずらすことによって、ガスと一緒に噴出した負極活物質(例えば亜鉛合金粒子)が内周側のリブ21と外周側のリブ20の間の隙間を埋めてガス抜き経路を閉鎖するのを回避することができる。これにより、ガス拡散をスムーズに行うことが可能になる。
【0040】
なお、前述した第1,第2の実施形態では、容器に形成する端子を正極端子とし、封口板に形成する端子を負極端子としたが、容器に形成する端子を負極端子とし、封口板に形成する端子を正極端子とすることも可能である。
【0041】
また、前述した第1,第2の実施形態では、ボス部の周囲に近接して弁膜を設けたが、弁膜は、ボス部の周囲と筒状外壁部との間に形成されていれば良く、例えば、ボス部の周囲から少し離して弁膜を設けることも可能である。
【0042】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0043】
[実施例]
以下、本発明の実施例を前述した図面を参照して詳細に説明する。
【0044】
(実施例1)
ニッケル合金メッキ層を形成した冷間圧延鋼板材を使用し、正極缶を作製した。この正極缶の段差(ビード部)より下方に位置する部分の内周面に黒鉛粉末を主成分とする導電性被膜を形成した。
【0045】
この正極缶内に、円筒状に加圧成形した正極合剤を充填した後、正極合剤の中空部に有底円筒状のセパレータを配置した。ゲル状亜鉛負極をセパレータ内に充填した後、前述した図5に示す構造のリブ付き封口ガスケットを正極缶の段差に配置した。
【0046】
この封口ガスケットは外径が13.75mmで、弁膜の厚さが0.2mmで、屈曲部の長辺部分L1の厚さが0.4mmで、短辺部分L2の厚さが0.21mmである。また、長辺部分L1の長さは1.52mmで、短辺部分L2の長さの1.8倍に相当する。
【0047】
頭部に負極端子板が溶接された負極集電棒を封口ガスケットのボス部に挿入して貫通させ、その先端部をゲル状負極に差し込んだ。また、負極端子板の周縁を封口ガスケットの環状凹部に挿入した。
【0048】
次いで、正極缶の開口部の上端を封口ガスケットの筒状外壁部と共にカシメ固定により内方に屈曲させることで封止し、前述した図7に示す構造を有するJIS規格LR6形(単3形)のアルカリ乾電池を組み立てた。
【0049】
(実施例2)
長辺部分L1の長さを1.41mmにして短辺部分L2の長さの1.5倍にすること以外は前述した実施例1で説明したのと同様な構成のアルカリ乾電池を組み立てた。
【0050】
(実施例3)
長辺部分L1の長さを1.59mmにして短辺部分L2の長さの2倍にすること以外は前述した実施例1で説明したのと同様な構成のアルカリ乾電池を組み立てた。
【0051】
(実施例4)
長辺部分L1の長さを1.90mmにして短辺部分L2の長さの3倍にすること以外は前述した実施例1で説明したのと同様な構成のアルカリ乾電池を組み立てた。
【0052】
(比較例1)
屈曲部を形成せずに平坦部とし、平坦部の弁膜側から1.4mmまでの厚さを0.4mmとし、平坦部の残りの部分(0.6mm分、弁膜12、環状凹部13底面及び平坦部15を除く)の厚さを0.21mmとして、平坦部の弁膜側を長辺厚肉部とした封口ガスケットを用いること以外は、前述した実施例1で説明したのと同様な構成のアルカリ乾電池を組み立てた。
【0053】
(比較例2)
二辺の長さがいずれも1.17mmと等しくなるように屈曲部を形成し、屈曲部の一方の辺部分(弁膜側)の厚さを0.4mmの肉厚部とし、他方の辺部分の厚さを0.21mmの薄肉部とした封口ガスケットを用いること以外は、前述した実施例1で説明したのと同様な構成のアルカリ乾電池を組み立てた。
【0054】
(比較例3)
屈曲部の長辺部分L1の厚さが0.21mmで、短辺部分L2の厚さが0.4mmである長辺部分L1が薄肉の封口ガスケットを用いること以外は、前述した実施例1で説明したのと同様な構成のアルカリ乾電池を組み立てた。
【0055】
得られた実施例1〜4及び比較例1〜3のアルカリ乾電池をそれぞれ1000個ずつ用意し、充電器に装填して0.9Aの電流で1時間充電した際に破裂した電池個数を測定し、その結果を下記表1に示す。
【表1】
【0056】
表1から明らかなように、封口ガスケットの鍔部が弁膜の周囲から負極端子板側に向かって屈曲し、屈曲部の弁膜側の辺部が反対側の辺部よりも長くて肉厚になっている実施例1〜4のアルカリ乾電池によると、充電試験時の破裂数を少なくすることができた。
【0057】
これに対し、比較例1〜3のアルカリ乾電池によると、充電時の破裂数が実施例1〜4に比較して多かった。これは、比較例1では、屈曲部を設けずに平坦部としたために、ガス圧で全体が撓んでしまい、弁膜が作動する前に平坦部が負極端子板の内面と接しやすかったためであると推測される。比較例2では、屈曲部の長さが等しかったために、ガス圧による応力が二辺にほぼ等しく拡散され、弁膜の破断が起き難くなったためであると考えられる。さらに、比較例3では、長辺部分の厚さが薄かったために長辺部分が撓みやすくなり、弁膜が作動する前に長辺部分が負極端子板の内面と接しやすかったためであると推測される。
【0058】
以上詳述したように本発明によれば、内圧上昇時の確実な防爆機能の作動、封口性を確保した上で、省スペース化を実現し、電池内容積を増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るアルカリ乾電池を示す模式的な断面図。
【図2】図1のアルカリ乾電池の防爆機構部分を拡大した模式的な断面図。
【図3】図1のアルカリ乾電池の防爆機構の作動メカニズムを説明するための模式図。
【図4】図1のアルカリ乾電池の防爆機構の作動メカニズムを説明するための模式図。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るアルカリ乾電池が具備する封口ガスケットを示す断面図。
【図6】図5の封口ガスケットを示す部分平面図。
【図7】本発明の第2の実施形態に係るアルカリ乾電池の防爆機構部分を拡大した模式的な断面図。
【図8】従来例のアルカリ乾電池の封口部分を拡大した模式的な断面図。
【図9】別な従来例のアルカリ乾電池の封口部分を拡大した模式的な断面図。
【図10】さらに別な従来例のアルカリ乾電池の防爆機構部分を拡大した模式的な断面図。
【図11】図10のアルカリ乾電池の防爆機構の作動メカニズムを説明するための模式図。
【図12】図10のアルカリ乾電池の防爆機構の作動メカニズムを説明するための模式図。
【符号の説明】
【0060】
1…正極缶、2…正極端子、3…段差、4…正極合剤、5…セパレータ、6…ゲル状負極、7…負極端子板、8…封口ガスケット、9…ボス部、10…筒状外壁部、11…鍔部、12…弁膜、13…環状凹部、14…屈曲部、15…平坦部、16…ガス抜き孔、17…負極端子棒、20…外周側リブ、21…内周側リブ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状アルカリ乾電池のようなアルカリ電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来アルカリ電池のボス部の外周周縁部に薄膜部を形成した封口ガスケットは、ボス部の外周周縁部に形成した薄膜部と筒状外壁部を連結する鍔状の連結部が、ボス部中心線に対し垂直もしくは外周に近づくほど負極端子から離れる方向へ傾斜していた。この傾斜は、セパレータ内の固形物がセパレータ外にこぼれ出ないようにセパレータ開口部を支えるために好都合であり多くの電池メーカーで採用されている。
【0003】
逆装填などにより電池が充電され、電池の内圧が上昇した場合、薄膜部とそれに連結した鍔部が変形し、所定の圧力を超えた場合に薄膜部が破断し、効率良く内部のガスを放出することにより防爆機能を発現させることが行われている。
【0004】
一方、アルカリ電池は、近年の携帯用機器の増加や、長寿命化の要望が強いことから、内容物の最適化や、さまざまな添加剤の検討が行なわれているが、電池構造を改良し、内容積そのものを増やす検討も行なわれている。
【0005】
防爆機能を備えたアルカリ電池の封口ガスケットに必要な機能としては、電池内部を密封口することと、電池内圧が所定の圧力を超えた場合に確実に作動する防爆機能を有することであり、電池内容積を増やすためには、より省スペースな構造であることが求められる。
【0006】
省スペースで、封口性が確保され、かつ防爆機能を有するアルカリ電池の一例として、例えば、特許文献1に記載のアルカリ電池が挙げられる。特許文献1に記載のアルカリ電池の防爆機能では、ボス部6の周囲に薄肉の安全弁62が形成され、この安全弁62の周囲に円盤状の連結部63が形成されており、連結部63の負極端子側の面に複数個のリブ64が設けられている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の防爆機能では、連結部63全体がガス圧で撓むことによって安全弁62が破断するため、連結部63の変形に必要なスペースを大きく取る必要があり、省スペース化には不利である。また、省スペース化のために負極端子3と封口ガスケットとの距離を狭くすると、安全弁62が破断する前に、撓んだ連結部63が負極端子3と接し、安全弁62が確実に作動しなくなる。
【特許文献1】特開2003−217532号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、防爆機能の作動スペースが小さくても内圧上昇時に防爆機能が確実に作動するアルカリ電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るアルカリ電池は、正極端子及び負極端子のうち一方極端子を兼ねる容器と、前記容器内に収納される正極及び負極と、前記容器の開口部に封口ガスケットを介してカシメ固定された他方極端子板と、前記他方極端子板と電気的に接している他方極集電棒とを備えたアルカリ電池であって、
前記封口ガスケットは、前記他方極集電棒が挿入されるボス部と、前記容器の開口部と前記他方極端子板との間に配置される筒状外壁部と、前記ボス部と前記筒状外壁部とを連結する鍔部とを具備し、
前記鍔部は、環状の弁膜と、前記弁膜の周囲から前記他方極端子板側に屈曲した屈曲部とを有し、前記屈曲部は、前記弁膜側の辺部が反対側の辺部に比較して長く、かつ肉厚であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、防爆機能の作動スペースが小さくても内圧上昇時に防爆機能が確実に作動するアルカリ電池を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図8に示すように、正極缶31に帽子形の負極端子板32を封口ガスケット33を介してカシメ固定するアルカリ電池において、省スペースであることだけを考慮した場合、封口ガスケット33の構造は、負極端子板32の内面に密着させた構造であることが好ましい。
【0012】
さらに封口性を考慮した場合、封口ガスケット35として、図9に示すように、負極集電棒34が圧入貫通されるボス部36と、筒状外壁部37と、ボス部36と筒状外壁部37とを連結する鍔部38の外周付近に設けられた環状の溝部39とを有するものが望ましい。また、負極端子板40には、皿型の蓋体で、上面に負極端子となる突起40aが形成されているものが望ましい。封口ガスケット35を正極缶31の開口部に配置し、負極端子板40の周縁を封口ガスケット35の環状の溝部39内に挿入し、正極缶31の開口部の上端を封口ガスケット35の筒状外壁部37の上端と共にカシメ加工により内方に折り曲げることによって、良好な封止性が得られる。また、ボス部36の長さと筒状外壁部37の長さは、各種シール剤との組み合わせにより必要最低限の長さを確保することが望ましい。
【0013】
次に、防爆機能を付加するためには、破断する箇所と内圧上昇により変形する部分を設ける必要がある。この一例を図10〜図12に示す。
【0014】
図10に示すように、封口ガスケット35の鍔部38をフラットな形状にして、負極端子板40との間に空間を設ける。また、鍔部38のうちボス部36の周囲の厚さを薄くして環状の薄膜部(弁膜)41を形成する。さらに、負極端子板40にガス抜き孔42を設ける。
【0015】
しかしながら、図10に示すような構成のアルカリ電池によると、内圧上昇時に薄膜部41と連結する連結部が全体的に撓むために変形量としては多く、薄膜部41が破断する以前に連結部が負極端子板40の内面に接触しやすく、薄膜部41が所定の圧力で破断し難くなる。また、連結部が変形するためのスペースを十分に確保すると、電池内容積の向上に不利となる。
【0016】
図10に示す構成の封口ガスケット35で内圧が上昇し薄膜部41が破断するときの挙動を詳細に調査した結果、図11に示すように、内圧が上昇するとともにボス部36周囲の薄膜部41とそれに連結する部分が変形していき、薄膜部41がそれ以上伸びることができなくなったときに図12に示すように破断し防爆機能が発現することがわかった。このとき、もっとも変化量の大きい部位は薄膜部41ではなく、連結部の中央付近であることがわかった。逆にいえば、連結部の外周側の変化量は、連結部中央付近の変化量と比較して少ない変化量であることが明らかとなった。
【0017】
薄膜部とそれに連結する連結部の内圧上昇時の挙動調査から、連結部の外周側には防爆機能が作動する際に必要な作動スペースは内周側のそれに比較して少なくできることが明らかとなり、省スペース化を実現するために削減可能なスペースであることを見出した。
【0018】
本願発明のように、封口ガスケットのボス部と筒状外壁部とを連結する鍔部に、環状の弁膜を形成し、弁膜の周囲から他方極端子板(例えば負極端子板)側に屈曲した屈曲部を設け、屈曲部の弁膜側の辺部を反対側の辺部に比較して長くすると共に厚くすることによって、内圧上昇時、ガス圧が弁膜側辺部に集中するものの、弁膜側辺部が厚くて長いため、撓むというよりは寧ろ、上方にほぼ平行移動することで弁膜を破断させることができる。よって、弁膜を破断させるのに鍔部を撓ませる必要がなく、また、鍔部全体を変形させる必要もないため、弁膜の破断に要する鍔部の変形量を少なくすることができ、作動スペースを小さくして電池内容積の増加を図ることができると共に、防爆機能の作動をより確実なものとすることができる。
【0019】
上記構造の封口ガスケットで作動スペースを極限まで減らした場合、内圧上昇により弁膜が破断した際に、ガスケット鍔部が端子板内面に密着し、効率良く外部にガスを放出することが困難となる場合がある。鍔部の他方極端子板と対向する面に複数の突起を設けることによって、他方極端子板にガスケットが全面密着するのを回避することができ、ガス抜きの経路を確実に確保することができる。
【0020】
本発明の第1の実施形態を図1〜図4を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施形態に係るアルカリ乾電池を示す模式的な断面図である。図2〜図4は図1のアルカリ乾電池の防爆機構作動時の動作を示した模式図である。
【0021】
正極缶1は、有底円筒状で、底面が外側に凸状に張り出しており、この凸部は正極端子2として機能する。また、正極缶1の開口部の下方には、後述する封口ガスケットが配置されるように内方に突出した段差3(ビード部)が設けられている。正極缶1は、例えば、ニッケルメッキまたはニッケル合金メッキ層を形成した冷間圧延鋼板材のような金属から形成することが可能である。
【0022】
正極缶1の内周面のうち、段差3よりも下方に位置する部分には、黒鉛粉末を主成分とする導電性被膜(図示しない)が形成されている。
【0023】
円筒形状の正極合剤4は、正極缶1内に収納され、その外周面が正極缶1の内面の導電性被膜と接している。正極合剤4は、例えば、二酸化マンガン粉末と黒鉛粉末を混合し、これを成形型を用いて所定の圧力で中空円筒状に加圧成形することにより得られる。有底円筒状のセパレータ5は、円筒状の筒紙の開口部に底紙を一体化させたものであり、正極合剤4の中空部内に配置されている。セパレータ5は、例えば、ビニロン及びPVA繊維の不織布から形成される。セパレータ5の開口部の上端は、後述する封口ガスケット8の屈曲部の短辺部分に沿って内方に折り曲げられている。これにより、セパレータ5の開口部を封口ガスケット8の鍔部11で蓋をすることができ、セパレータ5内から内容物(後述するゲル状負極)がこぼれ出すのを回避することができる。
【0024】
ゲル状負極6は、セパレータ5内に充填されている。ゲル状負極6には、例えば、無汞化亜鉛合金粉末、アルカリ電解液及びゲル化剤としてのポリアクリル酸を含むゲル状亜鉛負極を使用することができる。
【0025】
負極端子板7は、正極缶1の封口板を兼ねているもので、正極缶1の開口部に封口ガスケット8を介してカシメ固定されている。ここで、開口部とは、段差3よりも上方に位置する部分をいう。
【0026】
封口ガスケット8は、例えばナイロン6,6のようなポリアミド樹脂から形成されている。封口ガスケット8は、負極集電棒が挿入される円筒状のボス部9と、筒状の外壁部10と、ボス部9と筒状外壁部10とを連結する鍔部11とを備えるものである。筒状外壁部9は、正極缶1の開口部の内面と負極端子板7との間にカシメ加工によって圧縮状態で配置される。また、鍔部11は、内部封口板として機能するものである。
【0027】
鍔部11のうちボス部9の周囲の厚さが最も薄くなっており、環状の弁膜12として機能する。鍔部11の周縁は、下方に陥没しており、環状の凹部13が形成されている。これにより、筒状外壁部10の高さを十分に確保することが可能になると共に、カシメ加工の際に正極缶1の半径方向に加わる力を環状凹部13で吸収することができるため、カシメ加工時に弁膜12が変形するのを防止することができる。この環状凹部13は、正極缶1の段差3上に配置されている。
【0028】
鍔部11のうち、弁膜12と環状凹部13との間に位置する部分は、上方(負極端子側)に向かってへの字状に屈曲している。屈曲部14のうち弁膜12側の辺部(以下、長辺部分と称す)の長さL1が、反対側の辺部(以下、短辺部分と称す)の長さL2よりも長くなっている。ここで、長辺部分の長さL1は、鍔部11の内面側(負極端子の反対側)から見て、弁膜12と屈曲部14との境界(厚さの変位点)から屈曲点までの長さをいう。一方、長さL2は、鍔部11の内面側から見て、屈曲点から終点(図1,2の場合、屈曲部14と平坦部15の境界)までの長さをいう。また、屈曲部14のうち、長辺部分L1の厚さは短辺部分L2の厚さに比して厚くなっている。
【0029】
図1では、屈曲部14の厚さが弁膜12の厚さよりも厚くなっているが、屈曲部14の短辺部分L2の厚さは弁膜12の厚さと等しくても良い。なお、防爆機能を確実に作動させる観点からは、屈曲部14の厚さが弁膜12の厚さよりも厚いことが望ましい。
【0030】
負極端子板7は、皿型の蓋体で、上面が凸状に張り出しており、凸部が負極端子として機能する。また、負極端子板7には、凸部(負極端子)を囲むように複数のガス抜き孔16が開口されている。負極端子板7の周縁は、封口ガスケット8の環状凹部13内に挿入されている。負極端子板7は、例えば、ニッケルメッキまたはニッケル合金メッキ層を形成した冷間圧延鋼板材のような金属から形成することが可能である。
【0031】
正極缶1の開口部の上端は、封口ガスケット8の筒状外壁部10の上端と共にカシメ加工によって内方に折り曲げられている。正極缶1は、封口ガスケット8挿入部分の径が若干大きめに加工してあり、そこに封口ガスケット8と負極端子板7を嵌め込み、縮径することで封口ガスケット8の筒状外壁部10を圧縮状態とする。このとき、封口ガスケット8が中心(ボス部9)方向へ変形するが、封口ガスケット8の環状凹部13の底面と平坦部15とを連結する薄肉部分が変形するだけで、平坦部15まで影響が及ばないため、弁膜12の変形が抑制され、高い封口性を確保することができる。
【0032】
例えば真鍮製の負極集電棒17は、封口ガスケット8のボス部9に挿入されており、頭部が負極端子板7の内面に溶接されることで負極端子板7と電気的に接触し、かつ先端部がゲル状負極4に差し込まれている。
【0033】
前述したようにガス発生により内圧が上昇した際にガス圧は内周側に集中するため、上述した構造のアルカリ乾電池によると、ガス圧を屈曲部14の長辺部分L1に集中させることができる。その結果、図3に示すように、長辺部分L1は撓むというよりは寧ろガス圧で負極端子板7側に移動し、長辺部分L1が弁膜12から引き千切られるようにして破断するため、弁膜12の破断に必要な鍔部11の変形量を小さくすることができる。その結果、防爆機能の作動に必要なスペースである負極端子板7と鍔部11との間のスペースを小さくすることができ、省スペースにしても確実に破断させることが可能になる。破断後、図4に示すように、電池内のガスは、弁膜12の破断箇所から負極端子板7のガス抜き孔16を通して外部に放出されるため、電池の破裂を未然に防止することができる。
【0034】
また、屈曲部14を形成することによって、セパレータ5の開口端を屈曲部14に沿って内方に折り曲げて屈曲部14でセパレータ5の開口部を塞ぐことができるため、セパレータ5からゲル状負極がこぼれ出すのを抑制することが可能になる。
【0035】
長辺部分L1の長さは、短辺部分L2の長さの1.5倍以上、3倍以下にすることが望ましい。これは以下に説明する理由によるものである。長辺部分L1の長さを短辺部分L2の長さの1.5倍未満にすると、内圧上昇時に長辺部分L1だけでなく短辺部分L2も高いガス圧を受けやすくなり、短辺部分L2がガス圧によって撓んで伸びてしまい、所定の内圧に達しても弁膜12が破断しなくなる恐れがある。一方、長辺部分L1の長さが短辺部分L2の長さの3倍を超えると、長辺部分L1の内圧上昇時の変形量が多くなるため、弁膜12が破断する前に長辺部分L1が負極端子板7の内面と接触し、所定の内圧に達しても弁膜12が破断しなくなる恐れがある。
【0036】
次いで、本発明に係る第2の実施形態について図5〜図7に示す。なお、前述した図1で説明したのと同様な部材については同符号を付して説明を省略する。
【0037】
この第2の実施形態に係るアルカリ乾電池は、封口ガスケット8の負極端子板側の面に突起を設けること以外は、前述した図1に示すアルカリ乾電池と同様な構造を有するものである。
【0038】
複数の外周側リブ20は、封口ガスケット8の負極端子板側の面(図5,7の上面)に、屈曲点から長辺部分L1と短辺部分L2とに跨るように同心円状に配置されている。外周側リブ20同士の間には、間隔が設けられている。複数の内周側リブ21は、長辺部分L1のうち、外周側リブ20の間に設けられた空間と対応する位置に同心円状に配置されている。
【0039】
図5〜図7に示すように、封口ガスケット8の負極端子板側の面にリブ20,21を同心円状に設けることによって、ガス圧により鍔部11が押し上げられた際にリブ20,21が負極端子板7の内面に接触することで負極端子板7の内面に鍔部11が密着するのを回避することができ、ガス抜きの経路を確保することができる。また、内周側のリブ21に外周側のリブ20が対向しないように互いの位置をずらすことによって、ガスと一緒に噴出した負極活物質(例えば亜鉛合金粒子)が内周側のリブ21と外周側のリブ20の間の隙間を埋めてガス抜き経路を閉鎖するのを回避することができる。これにより、ガス拡散をスムーズに行うことが可能になる。
【0040】
なお、前述した第1,第2の実施形態では、容器に形成する端子を正極端子とし、封口板に形成する端子を負極端子としたが、容器に形成する端子を負極端子とし、封口板に形成する端子を正極端子とすることも可能である。
【0041】
また、前述した第1,第2の実施形態では、ボス部の周囲に近接して弁膜を設けたが、弁膜は、ボス部の周囲と筒状外壁部との間に形成されていれば良く、例えば、ボス部の周囲から少し離して弁膜を設けることも可能である。
【0042】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0043】
[実施例]
以下、本発明の実施例を前述した図面を参照して詳細に説明する。
【0044】
(実施例1)
ニッケル合金メッキ層を形成した冷間圧延鋼板材を使用し、正極缶を作製した。この正極缶の段差(ビード部)より下方に位置する部分の内周面に黒鉛粉末を主成分とする導電性被膜を形成した。
【0045】
この正極缶内に、円筒状に加圧成形した正極合剤を充填した後、正極合剤の中空部に有底円筒状のセパレータを配置した。ゲル状亜鉛負極をセパレータ内に充填した後、前述した図5に示す構造のリブ付き封口ガスケットを正極缶の段差に配置した。
【0046】
この封口ガスケットは外径が13.75mmで、弁膜の厚さが0.2mmで、屈曲部の長辺部分L1の厚さが0.4mmで、短辺部分L2の厚さが0.21mmである。また、長辺部分L1の長さは1.52mmで、短辺部分L2の長さの1.8倍に相当する。
【0047】
頭部に負極端子板が溶接された負極集電棒を封口ガスケットのボス部に挿入して貫通させ、その先端部をゲル状負極に差し込んだ。また、負極端子板の周縁を封口ガスケットの環状凹部に挿入した。
【0048】
次いで、正極缶の開口部の上端を封口ガスケットの筒状外壁部と共にカシメ固定により内方に屈曲させることで封止し、前述した図7に示す構造を有するJIS規格LR6形(単3形)のアルカリ乾電池を組み立てた。
【0049】
(実施例2)
長辺部分L1の長さを1.41mmにして短辺部分L2の長さの1.5倍にすること以外は前述した実施例1で説明したのと同様な構成のアルカリ乾電池を組み立てた。
【0050】
(実施例3)
長辺部分L1の長さを1.59mmにして短辺部分L2の長さの2倍にすること以外は前述した実施例1で説明したのと同様な構成のアルカリ乾電池を組み立てた。
【0051】
(実施例4)
長辺部分L1の長さを1.90mmにして短辺部分L2の長さの3倍にすること以外は前述した実施例1で説明したのと同様な構成のアルカリ乾電池を組み立てた。
【0052】
(比較例1)
屈曲部を形成せずに平坦部とし、平坦部の弁膜側から1.4mmまでの厚さを0.4mmとし、平坦部の残りの部分(0.6mm分、弁膜12、環状凹部13底面及び平坦部15を除く)の厚さを0.21mmとして、平坦部の弁膜側を長辺厚肉部とした封口ガスケットを用いること以外は、前述した実施例1で説明したのと同様な構成のアルカリ乾電池を組み立てた。
【0053】
(比較例2)
二辺の長さがいずれも1.17mmと等しくなるように屈曲部を形成し、屈曲部の一方の辺部分(弁膜側)の厚さを0.4mmの肉厚部とし、他方の辺部分の厚さを0.21mmの薄肉部とした封口ガスケットを用いること以外は、前述した実施例1で説明したのと同様な構成のアルカリ乾電池を組み立てた。
【0054】
(比較例3)
屈曲部の長辺部分L1の厚さが0.21mmで、短辺部分L2の厚さが0.4mmである長辺部分L1が薄肉の封口ガスケットを用いること以外は、前述した実施例1で説明したのと同様な構成のアルカリ乾電池を組み立てた。
【0055】
得られた実施例1〜4及び比較例1〜3のアルカリ乾電池をそれぞれ1000個ずつ用意し、充電器に装填して0.9Aの電流で1時間充電した際に破裂した電池個数を測定し、その結果を下記表1に示す。
【表1】
【0056】
表1から明らかなように、封口ガスケットの鍔部が弁膜の周囲から負極端子板側に向かって屈曲し、屈曲部の弁膜側の辺部が反対側の辺部よりも長くて肉厚になっている実施例1〜4のアルカリ乾電池によると、充電試験時の破裂数を少なくすることができた。
【0057】
これに対し、比較例1〜3のアルカリ乾電池によると、充電時の破裂数が実施例1〜4に比較して多かった。これは、比較例1では、屈曲部を設けずに平坦部としたために、ガス圧で全体が撓んでしまい、弁膜が作動する前に平坦部が負極端子板の内面と接しやすかったためであると推測される。比較例2では、屈曲部の長さが等しかったために、ガス圧による応力が二辺にほぼ等しく拡散され、弁膜の破断が起き難くなったためであると考えられる。さらに、比較例3では、長辺部分の厚さが薄かったために長辺部分が撓みやすくなり、弁膜が作動する前に長辺部分が負極端子板の内面と接しやすかったためであると推測される。
【0058】
以上詳述したように本発明によれば、内圧上昇時の確実な防爆機能の作動、封口性を確保した上で、省スペース化を実現し、電池内容積を増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るアルカリ乾電池を示す模式的な断面図。
【図2】図1のアルカリ乾電池の防爆機構部分を拡大した模式的な断面図。
【図3】図1のアルカリ乾電池の防爆機構の作動メカニズムを説明するための模式図。
【図4】図1のアルカリ乾電池の防爆機構の作動メカニズムを説明するための模式図。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るアルカリ乾電池が具備する封口ガスケットを示す断面図。
【図6】図5の封口ガスケットを示す部分平面図。
【図7】本発明の第2の実施形態に係るアルカリ乾電池の防爆機構部分を拡大した模式的な断面図。
【図8】従来例のアルカリ乾電池の封口部分を拡大した模式的な断面図。
【図9】別な従来例のアルカリ乾電池の封口部分を拡大した模式的な断面図。
【図10】さらに別な従来例のアルカリ乾電池の防爆機構部分を拡大した模式的な断面図。
【図11】図10のアルカリ乾電池の防爆機構の作動メカニズムを説明するための模式図。
【図12】図10のアルカリ乾電池の防爆機構の作動メカニズムを説明するための模式図。
【符号の説明】
【0060】
1…正極缶、2…正極端子、3…段差、4…正極合剤、5…セパレータ、6…ゲル状負極、7…負極端子板、8…封口ガスケット、9…ボス部、10…筒状外壁部、11…鍔部、12…弁膜、13…環状凹部、14…屈曲部、15…平坦部、16…ガス抜き孔、17…負極端子棒、20…外周側リブ、21…内周側リブ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極端子及び負極端子のうち一方極端子を兼ねる容器と、前記容器内に収納される正極及び負極と、前記容器の開口部に封口ガスケットを介してカシメ固定された他方極端子板と、前記他方極端子板と電気的に接している他方極集電棒とを備えたアルカリ電池であって、
前記封口ガスケットは、前記他方極集電棒が挿入されるボス部と、前記容器の開口部と前記他方極端子板との間に配置される筒状外壁部と、前記ボス部と前記筒状外壁部とを連結する鍔部とを具備し、
前記鍔部は、環状の弁膜と、前記弁膜の周囲から前記他方極端子板側に屈曲した屈曲部とを有し、前記屈曲部は、前記弁膜側の辺部が反対側の辺部に比較して長く、かつ肉厚であることを特徴とするアルカリ電池。
【請求項2】
前記屈曲部は、前記他方極端子板と対向する面に突起が形成されていることを特徴とする請求項1記載のアルカリ電池。
【請求項3】
前記弁膜側の辺部の長さは、前記反対側の辺部の長さの1.5倍以上、3倍以下であることを特徴とする請求項1または2記載のアルカリ電池。
【請求項1】
正極端子及び負極端子のうち一方極端子を兼ねる容器と、前記容器内に収納される正極及び負極と、前記容器の開口部に封口ガスケットを介してカシメ固定された他方極端子板と、前記他方極端子板と電気的に接している他方極集電棒とを備えたアルカリ電池であって、
前記封口ガスケットは、前記他方極集電棒が挿入されるボス部と、前記容器の開口部と前記他方極端子板との間に配置される筒状外壁部と、前記ボス部と前記筒状外壁部とを連結する鍔部とを具備し、
前記鍔部は、環状の弁膜と、前記弁膜の周囲から前記他方極端子板側に屈曲した屈曲部とを有し、前記屈曲部は、前記弁膜側の辺部が反対側の辺部に比較して長く、かつ肉厚であることを特徴とするアルカリ電池。
【請求項2】
前記屈曲部は、前記他方極端子板と対向する面に突起が形成されていることを特徴とする請求項1記載のアルカリ電池。
【請求項3】
前記弁膜側の辺部の長さは、前記反対側の辺部の長さの1.5倍以上、3倍以下であることを特徴とする請求項1または2記載のアルカリ電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−202637(P2006−202637A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−14154(P2005−14154)
【出願日】平成17年1月21日(2005.1.21)
【出願人】(000003539)東芝電池株式会社 (109)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月21日(2005.1.21)
【出願人】(000003539)東芝電池株式会社 (109)
【Fターム(参考)】
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