説明

アルミニウム−炭化珪素質複合体とその製造方法

【課題】パワーモジュール用ベース板として好適なアルミニウム−炭化珪素質複合体を提供すること。
【解決手段】
アルミニウム粉末、又はアルミニウムを90質量%以上含むアルミニウム合金粉末との混合粉末を含む金属粉末20体積%〜40体積%と、平均粒径が10μm〜350μmの炭化珪素を95体積%以上含有するセラミックス粉末60体積%〜80体積%との混合粉末を金属粉末の融点未満の温度で加圧成形し、加圧成形時に最終的に穴加工を行う箇所に融点が成形温度以上である金属、若しくは融点が成形温度以上である金属にセラミックスを含有するセラミックス−金属複合体を配置した板状のアルミニウム−炭化珪素質複合体で、板状のアルミニウム−炭化珪素質複合体の金属、若しくは融点が成形温度以上である金属にセラミックスを含有するセラミックス−金属複合体部分を機械加工し、穴部を形成した板状のアルミニウム−炭化珪素質複合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーモジュール用ベース板として好適なアルミニウム−炭化珪素質複合体及びそれを用いた放熱部品に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、半導体素子の高集積化、小型化に伴い、発熱量は増加の一途をたどっており、いかに効率よく放熱させるかが課題となっている。そして、高絶縁性・高熱伝導性を有する例えば窒化アルミニウム基板、窒化珪素基板等のセラミックス基板の表面に、銅製又はアルミニウム製の金属回路を、また裏面に銅製又はアルミニウム製の金属放熱板が形成されてなる回路基板が、パワーモジュール用回路基板として使用されている。
【0003】
従来の回路基板の典型的な放熱構造は、回路基板の裏面(放熱面)の金属板、例えば銅板を介してベース板が半田付けされてなるものであり、ベース板としては銅が一般的であった。しかしながら、この構造においては、半導体装置に熱負荷がかかった場合、ベース板と回路基板の熱膨張係数差に起因するクラックが半田層に発生し、その結果放熱が不十分となって半導体素子を誤作動させたり、破損させたりするという課題があった。
【0004】
そこで、熱膨張係数を回路基板のそれに近づけたベース板として、アルミニウム−炭化珪素質複合体が提案されている。このベース板用のアルミニウム−炭化珪素質複合体の製法としては、炭化珪素の多孔体にアルミニウム合金の溶湯を加圧含浸する溶湯鍛造法(特許文献1)、炭化珪素の多孔体にアルミニウム合金の溶湯を非加圧で浸透させる非加圧含浸法(特許文献2)が実用化されている。一方、コスト面からは、アルミニウム粉末と炭化珪素粉末を混合して、加熱成形する粉末冶金法が有利であり、同製法によるアルミニウム−炭化珪素質複合体の検討も行われている(特許文献3,4)。しかし、粉末冶金法によるアルミニウム−炭化珪素質複合体は、溶湯鍛造法のものに比べ、熱伝導率等が低いという課題がある。
【0005】
そこで、熱伝導率向上を目的に、炭化珪素粉末の粒度、含有量を適正化し、アルミニウムの融点以下の温度域にて温度、圧力、時間の加熱成形条件を適正化したアルミニウム−炭化珪素質複合体が提案されている。(特許文献5)本手法を用いることで、回路基板の熱膨張係数に近い熱膨張係数と高い熱伝導率を兼ねたコスト的にも優位なパワーモジュール用アルミニウム−炭化珪素質複合体を提供することが可能となる。
【0006】
ここで、パワーモジュール用ベース板は実使用時に放熱フィンや樹脂ケースにネジ止めを行うが、穴部分の強度についても重要な特性として挙げられる。ベース板の穴部分の強度が低いと、樹脂ケースの固定が弱くなりケース内に充填されているシリコーン漏れによる部分放電特性低下や、放熱フィンへのベース板の締め付け力低下により放熱フィンとベース板との間に空隙が発生し放熱特性が大きく低下するため好ましくない。
【0007】
特許文献5において作製されるアルミニウム−炭化珪素質複合体はパワーモジュール用途としての使用を考慮し、縁周部に放熱フィン、樹脂ケース取り付け用の穴を配置した形状を有している。アルミニウム−炭化珪素質複合体の縁周部の穴形成方法については、穴加工時の加工性を考慮し予備成形体に穴加工を施し加工性に優れたアルミニウムやアルミニウム合金等の金属材を配置後、加熱成形を行った後、金属材の直径以下の大きさの穴を機械加工により形成する手法が紹介されている。
【0008】
しかしながら、本手法で作製されたパワーモジュール用ベース板の穴部周囲の金属材部分は加熱成形の際に原料のアルミニウム粉末、またはアルミニウム合金粉末と金属材が塑性変形による接合をしているため、接合界面の強度が低く、そのためベース板穴部分の強度が低く、実使用時に熱サイクルがかかった際に穴部の破損等が発生し、部分放電特性が低下したり、放熱特性が低下するという問題が想定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許3468358号
【特許文献2】特表平5−507030号公報。
【特許文献3】特開平9−157773号公報
【特許文献4】特開平10−335538号公報
【特許文献5】特願2010−180994
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、パワーモジュール用ベース板として好適なアルミニウム−炭化珪素質複合体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記の目的を達成するために鋭意検討した結果、アルミニウム−炭化珪素質複合体において、炭化珪素粉末の粒度、含有量を適正化し、アルミニウム−炭化珪素質複合体の縁周部に設けた穴部周囲の金属またはセラミックス−金属複合体の形状を規定することにより穴部分の強度を発現出来るとの知見を得て本発明を完成した。
【0012】
即ち、本発明はアルミニウム粉末、又はアルミニウムを90質量%以上含むアルミニウム合金粉末との混合粉末を含む金属粉末20体積%〜40体積%と、平均粒径が10μm〜350μmの炭化珪素を95体積%以上含有するセラミックス粉末60体積%〜80体積%との混合粉末を金属粉末の融点未満の温度で加圧成形してなり、加圧成形時に最終的に穴加工を行う箇所に融点が成形温度以上である金属、若しくは融点が成形温度以上である金属にセラミックスを含有するセラミックス−金属複合体等の易加工性材料を配置することを特徴とする板状のアルミニウム−炭化珪素質複合体であり、前記易加工性材料部分が円柱状であり、最終的に穴加工を行う際の穴径をxmmとした際の直径yが1.05xmm〜1.5xmmであり、柱状部分に0.01mm〜(y−x)/2mmの深さで、0.2mm以上の幅の1本以上の溝を有し、溝間隔が0.1mm以上であり、前記易加工性材料を機械加工し、穴部を形成したことを特徴とする板状のアルミニウム−炭化珪素質複合体である。
【0013】
また、本発明の、板状のアルミニウム−炭化珪素質複合体の厚みは2mm〜6mmであることが好ましい。
【0014】
本発明は、25℃〜150℃の熱膨張係数が5×10−6/K〜12×10−6/Kである板状のアルミニウム−炭化珪素質複合体であり、加圧成形時に最終的に穴加工を行う箇所に配置するセラミックス−金属複合体のセラミックスの充填量が20体積%以下である板状のアルミニウム−炭化珪素質複合体である。
【0015】
本発明は、板状のアルミニウム−炭化珪素質複合体の一主面の反り量が200mmあたり0〜500μmである板状のアルミニウム−炭化珪素質複合体である。
【0016】
また、本発明はアルミニウム粉末、又はアルミニウムを90質量%以上含むアルミニウム合金粉末との混合粉末を含む金属粉末20体積%〜40体積%と、平均粒径が10μm〜350μmの炭化珪素を95体積%以上含有するセラミックス粉末60体積%〜80体積%との混合粉末を金属粉末の融点未満の温度で加圧成形してなり、加圧成形時に最終的に穴加工を行う箇所に融点が成形温度以上である金属、若しくは融点が成形温度以上である金属にセラミックスを含有するセラミックス−金属複合体等の易加工性材料を配置することを特徴とする板状のアルミニウム−炭化珪素質複合体であり、前記易加工性材料部分が円柱状であり、最終的に穴加工を行う際の穴径をxmmとした際の直径yが1.05xmm〜1.5xmmであり、柱状部分に0.01mm〜(y−x)/2mmの深さで、0.2mm以上の幅の1本以上の溝を有し、溝間隔が0.1mm以上であり、前記易加工性材料を機械加工し、穴部を形成したことを特徴とする板状のアルミニウム−炭化珪素質複合体の製造方法である。
【0017】
更にアルミニウム−炭化珪素質複合体の表面に、めっき処理を行い、一主面がセラミックス回路基板に半田付け又はロウ付け接合され、他の主面が放熱面として用いられるパワーモジュール用ベース板である。
【発明の効果】
【0018】
本発明のアルミニウム−炭化珪素質複合体は、低熱膨張、並びに高熱伝導という特性を有し、穴部の強度が従来技術品に比べ高いという特性を有する。本発明は、アルミニウム粉末等の金属粉末と炭化珪素粉末を金属の融点未満の温度で加熱成形して得られるアルミニウム−炭化珪素質複合体において、縁周部に設けた穴部周囲の金属またはセラミックス−金属複合体の形状を規定することにより穴部分の強度を発現させることで、モジュール化後の使用環境時に発生する応力による穴部の破損で部分放電特性や放熱特性の低下を抑制可能なアルミニウム−炭化珪素質複合体を安価に供給するものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】アルミニウム−炭化珪素質複合体の製作方法を示す説明図
【図2】アルミニウム−炭化珪素質複合体の製作時に使用する易加工性材料を示す説明図
【図3】アルミニウム−炭化珪素質複合体の構造を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のアルミニウム−炭化珪素質複合体は、主成分がアルミニウムであるアルミニウム合金からなる第一の成分と、主成分が炭化珪素からなる第二の成分からなる。本発明のような異種の材料を複合化した複合体では、異種の材料の界面が強固に結びつくことでお互いに熱のやり取りが可能となる。このため、界面の密着性が悪い場合は、複合体の熱伝導率はマトリックス材(本発明ではアルミニウム合金)に支配され、強化材(本発明では炭化珪素)自体の熱伝導率が如何に高くても、複合体全体の熱伝導特性はマトリックス材以下となる。本発明の基本的な考え方は、複合体において如何に金属成分と強化材を強固に密着させるかであり、その手法として、金属成分を融点以下の温度で加圧成形する圧力と時間を適正化することで、アルミニウムのクリープ変形を利用した緻密化により両者の界面を強固なものとし、目的とする特性を達成するものである。
【0021】
本発明のアルミニウム−炭化珪素質複合体の特に重要な特性は、熱伝導率と熱膨張係数である。このため、用いる強化材としては、素材自体の熱伝導率が高く且つ熱膨張係数が小さいことが必要であり、炭化珪素が好適である。更に、炭化珪素とアルミニウムでは、その熱伝達機構が異なる。このため、両素材の界面での熱伝達ロスが複合体の熱伝導率を大きく左右し、この界面の面積を少なくすること(粒子径の大きい炭化珪素粉末を用いること)が、得られる複合体の熱伝導率の向上に効果的である。
【0022】
本発明のアルミニウム−炭化珪素質複合体に用いる強化材としては、炭化珪素を90体積%以上含有するセラミックス粉末を60体積〜80体積%含有することが好ましい。炭化珪素含有量が90体積%未満であると、アルミニウム−炭化珪素質複合体の低熱膨張性、
及び高熱伝導特性を維持することが困難になる。セラミックス粉末としては、窒化珪素、
窒化アルミニウム、窒化硼素、ダイヤモンド及び黒鉛から選ばれた少なくとも1種であり
、強度、熱伝導、加工性等の必要に応じて炭化珪素に添加してもよい。
【0023】
炭化珪素粉末の平均粒子径は10〜350μmが好ましく、炭化珪素粉末の粒度に関しては、アルミニウム−炭化珪素質複合体の緻密化の点から、平均粒子径が10μm以上である。平均粒子径が10μm未満の場合、アルミニウム−炭化珪素質複合体と金型内に配置した金属若しくはセラミックス−金属複合体との複合化が不十分となり、前記易加工性材料に加工した穴部の強度が低下する。一方、平均粒子径が350μmを超えると、アルミニウム−炭化珪素質複合体の表面粗さ、強度が低下すると共に、アルミニウム−炭化珪素質複合体と金型内に配置した金属若しくはセラミックス−金属複合体に施した溝部分への炭化珪素粉末の浸入量が低減し、前記易加工性材料に加工した穴部の強度が低下する。炭化珪素粉末の含有量が60体積%未満では、アルミニウム−炭化珪素質複合体の熱伝導率が低下し、熱膨張係数が大きくなり好ましくない。一方、炭化珪素粉末の含有量が80体積%を超えると、アルミニウム−炭化珪素質複合体の緻密化が不足し、強度、熱伝導率が低下して好ましくない。また、炭化珪素粉末の含有量を上げ、且つ、緻密化を達成するためには、平均粒子径の異なる炭化珪素粉末を粒度配合することが好適である。この場合、炭化珪素粉末の平均粒子径は、個々の炭化珪素粉末の平均粒子径と含有量より算出する。このため、粒度配合を行う場合には、平均粒子径が10μm未満及び/又は350μmを超える粉末も、使用することができる。更に、球形状に近い炭化珪素粉末を使用することは、含有量を上げるために効果的である。
【0024】
本発明に用いる金属粉末は、アルミニウム粉末、アルミニウム合金粉末又は、アルミニウムとアルミニウム以外の金属の混合粉である。アルミニウム合金及びアルミニウムとアルミニウム以外の金属の混合粉の組成はアルミニウム77〜100質量%、珪素0〜20質量%及びマグネシウム0〜3質量%が好ましい。この金属粉末としては、(1)金属粉末を混合して用いる、(2)金属粉末と合金粉末を混合して用いる(例えば、アルミニウム粉末、珪素粉末及びアルミニウム−マグネシウム合金粉末を用いる)、(3)3成分を所定量含有する合金粉末を用いることが可能である。珪素成分が20質量%を超えると、得られる合金の熱伝導率が低下し、その結果、得られる熱伝導率が低下して好ましくない。
一方、珪素成分が20質量%を超えると、得られる合金の熱伝導率が低下し、得られるアルミニウム−炭化珪素質複合体の熱伝導率が低下し好ましくない。マグネシウム成分は、得られる合金と炭化珪素の密着性を向上させる効果があり、5質量%を超えると、複合化時に炭化アルミニウム(Al)を生成し易くなり、熱伝導率、強度の面で好ましくない。
【0025】
これらの金属粉末の含有量は、得られるアルミニウム−炭化珪素質複合体に対して、20〜40体積%である。ここで、金属粉末の含有量(体積%)は、金属粉末の平均密度を2.7g/cmとして含有量(体積%)を規定している。20体積%未満では、加熱プレ
ス成形時の金属粉末量が不足し、アルミニウム−炭化珪素質複合体の緻密化が不足するため好ましくない。一方、40体積%を超えると、緻密なアルミニウム−炭化珪素質複合体を得ることはできるが、アルミニウム−炭化珪素質複合体の熱膨張係数が大きくなり過ぎて好ましくない。これらの金属粉末の粒度に関しては、平均粒子径が10〜100μm程度が好適である。平均粒子径が10μm未満では、金属粒子表面の酸化により緻密化が阻害され好ましくない。また、平均粒子径が100μmを超えると、クリープ変形による金属粒子の緻密化が進みにくくなることがあり好ましくない。
【0026】
本発明の原料粉末の混合方法に関しては、個々の原料が均一に混合される方法であれば特に制約はない。ボールミル混合、ミキサーによる混合等が可能である。混合時間に関しては、原料粉末の酸化及び粉砕が進まない程度の時間が好ましく、混合方法及び充填量にもよるが、15分〜5時間程度が一般的である。混合時間が短いと、アルミニウム-炭化珪
素質複合体の緻密化不足が発生したり、複合体組織の不均一が発生したりするため好ましくない。一方、混合時間が長すぎると原料粉末の酸化及び粉砕による微粉化が起こり、その結果、アルミニウム−炭化珪素質複合体の熱伝導率が低下する場合があり好ましくない。また、加熱プレス成形時の加熱段階で除去可能なものであれば、必要に応じて保形用バインダー等の使用が可能である。
【0027】
本発明の加熱プレス成形で用いる金型は、強度の点から、鋳鉄、ステンレス等の鉄製の材料が適しており、高価ではあるが窒化珪素等のセラミックスも用いることができる。更に、黒鉛製の金型も用いることができる。金型は、加熱プレス成形で得られる複合体との離型性の面より、表面に離型剤を塗布して用いる。この離型剤としては、黒鉛、アルミナ、窒化硼素等の離型剤が適している。また、金型にアルミナ等の薄膜を形成した後、離型剤を塗布することにより、優れた離型性を得ることが出来ると共に、金型の寿命を延ばすことができる。また、必要に応じて金型と製品の間に、黒鉛シート等の離型板を用いることもできる。金型の構造については、成形時にアルミニウム−炭化珪素質複合体の外形を決定する中型と上下のパンチから構成される。
【0028】
本発明では、金属粉末と炭化珪素粉末の混合粉末を金型内に充填し、金属粉末の融点以下の温度で加熱成形することにより、緻密化した板厚2〜6mmの板状アルミニウム−炭化珪素質複合体とする。この場合、得られる板状アルミニウム−炭化珪素質複合体の板厚は、金型に充填する混合粉末量により調整する。板厚2mm未満では、パワーモジュール用のベース板として用いる場合、面方向の熱伝達が不足し、パワーモジュール全体の放熱特性が低下し好ましくない。一方、板厚が6mmを超えると、板厚の増加によりベース板自体の熱抵抗が大きくなり、その結果、半導体素子の温度が上がり過ぎてしまい好ましくない。更に好ましい板状アルミニウム−炭化珪素質複合体の板厚は、3〜5mmである。
【0029】
本発明で、混合粉末を金型に充填し成形体を作製する際、予備成形圧力は10MPa以上である。予備成形時の圧力が10MPa未満では、緻密化が不足するため好ましくない。また、プレス圧の上限については、特性面からの制約はないが、金型の強度、装置の力量より300MPa以下が適当である。
【0030】
本発明では、混合粉末、若しくは予備成形体を離型処理を施した金型に充填し、使用する金属粉末の融点未満の温度に加熱する。加熱温度は使用する金属粉末の融点より100K低い温度から融点未満の範囲の温度が好ましい。融点より100K低い温度に満たない場合、金属粉末が変形しにくくなり、アルミニウム−炭化珪素質複合体の緻密化が不足するため好ましくない。一方、加熱温度が、融点を超えると、成形時にアルミニウムが漏出し、熱伝導率や強度などの特性バラツキが生じやすくなるため好ましくない。
【0031】
アルミニウム−炭化珪素質複合体は融点以下の温度で加圧成形した後、室温まで冷却する。なお、複合化時の歪み除去の目的で、アルミニウム−炭化珪素質複合体のアニール処理を行うこともある。
【0032】
複合化時の歪み除去の目的で行うアニール処理は、400℃〜550℃の温度で10分以上行うことが好ましい。アニール温度が400℃未満であると、複合体内部の歪みが十分に開放されずに機械加工後の熱処理で形状が変化してしまう場合がある。一方、アニール温度が550℃を越えると、複合体中のアルミニウム合金が溶融する場合がある。アニール時間が10分未満であると、アニール温度が400℃〜550℃であっても複合体内部の歪みが十分に開放されず、機械加工後の熱処理で形状が変化してしまう場合がある。上記条件を満たす場合は、加熱成形後にそのまま冷却を行っても十分なアニール効果が得られる。
【0033】
アルミニウム−炭化珪素質複合体の片面又は両面の表面がアルミニウムを主成分とする金属層で覆われていると、アルミニウム−炭化珪素質複合体をめっき処理するのに好適である。
【0034】
表面の金属層の材料としては、アルミニウム−炭化珪素質複合体と密着しやすいアルミニウム、又はアルミニウム合金が好ましく、アルミニウム、又はアルミニウム合金の融点より100K低い温度〜融点未満の温度で加圧成形することで、アルミニウム−炭化珪素質複合体の表面に複合化することができる。
【0035】
また、アルミニウム−炭化珪素質複合体の片面又は両面の表面に形成される金属層の厚みは、50〜300μmであることが好ましい。金属層の厚みが50μm以上であれば、めっき性を確保することができる。一方、金属層の厚みが300μmを超えると、アルミニウム−炭化珪素質複合体の熱膨張係数が増加し好ましくない。
【0036】
更に、この表面層は、積層時に離型処理を施した金型に、厚みが0.1〜1.0mmで、Vf(セラミックスの含有量)が2〜10体積%のセラミックス繊維を片面又は両面に配置して、金属粉末と炭化珪素粉末の混合粉末を充填し、融点以下の温度で加圧成形することで、調製することができる。上記製造方法により得られたアルミニウム−炭化珪素質複合体は、両主面に厚み0.01〜0.2mmのアルミニウム−セラミックス繊維複合体からなる表面層が形成される。
【0037】
このアルミニウム−セラミックス繊維複合体層は、めっき性の関係より、アルミニウム合金以外の含有量は、30体積%未満であることが好ましい。このため、金型内に配置するセラミックス繊維として、厚みが0.1〜1.0mmでVfが2〜10体積%とする。セラミックス繊維の厚みが、1.0mmを超えると、加熱プレス成形によって、十分に緻密化したアルミニウム−セラミックス繊維複合体層が得られず好ましくない。セラミックス繊維の厚みの下限については、特性状の制約はないが、ハンドリング性の点より0.1mm以上であることが好ましい。また、セラミックス繊維のVfが、20体積%を超えると、得られるアルミニウム−セラミックス繊維複合体層のアルミニウム合金以外の含有量が30体積%を超え、めっき性が低下し好ましくない。Vfの下限については、特性状の制約はないが、ハンドリング性の点より3体積%以上であることが好ましい。セラミックス繊維としては、特に限定されないが、耐熱性の面より、アルミナ繊維、シリカ繊維、ムライト繊維等のセラミックス繊維が好ましく使用できる。
【0038】
本発明では、加熱プレス成形時に、200mmあたり0〜500μmの凹型の反りを具備してなる金型を用いて、加熱プレス成形することで、一主面に200mmあたり0〜500μmの凸型の反りを付与することができる。この場合、金型表面を機械加工により、反り量が0〜500μmの凹型形状とすることにより、得られる板状のアルミニウム−炭化珪素質複合体は、理想的な球面形状の放熱面を得ることが可能であり、良好な放熱特性を得ることができる。本発明の板状のアルミニウム−炭化珪素質複合体を、パワーモジュール用ベース板として用いる場合、その反り量が、長さ200mmあたり0μm未満では、その後のモジュール組み立て工程でベース板と放熱フィンとの間に隙間が生じ、たとえ高熱伝導性の放熱グリースを塗布しても、熱伝達性が著しく低下し、その結果セラミックス回路基板、ベース板、放熱フィン等で構成されるモジュールの放熱性が著しく低下してしまう場合がある。一方、反り量が500μmを超えると、放熱フィンとの接合の際のネジ止め時に、ベース板、又はセラミックス回路基板にクラックが発生してしまう場合があり好ましくない。
【0039】
次に、本発明のアルミニウム−炭化珪素質複合体の穴形成方法について説明する。アルミニウム−炭化珪素質複合体をパワーモジュール用ベース板用途で使用する場合、ケースや放熱フィン取り付け用に縁周部に穴部分が必要となる。ベース板に求められる穴の種類としては、貫通穴、皿穴、タップ穴等がある。
【0040】
ここで、アルミニウム−炭化珪素質複合体は非常に硬い難加工性材料であり、直接アルミニウム−炭化珪素質複合体に穴加工もできるが、加工工具の摩耗が大きく、かつ多くの加工時間を要すため加工コストが高くなり、そのためベース板自体のコストが高くなってしまう。また、加工する穴の種類がタップ穴の場合には、加工コストアップに加え実使用時のネジ締め付け時にアルミニウム−炭化珪素質複合体にカケ等が発生する可能性がある。
【0041】
本発明のアルミニウム−炭化珪素質複合体の穴形成方法において、穴の種類が貫通穴や皿穴の場合は、例えば、金型の下パンチに最終的に穴が必要な箇所にピンを配置し、上パンチに下パンチのピン位置と同様の位置にスリットを設けることで容易に形成することが出来る。
【0042】
金型に配置するピンの材質については、加熱成形温度以上の融点である必要がありSUSやダイス鋼等の金属材料でも、窒化珪素や窒化アルミ、アルミナ等のセラミックス材料でも構わないが、本発明で使用する原料の炭化珪素は硬いため、耐摩耗性に優れた材料であることが好ましい。このため、ピンは金型にネジ止め等の脱着可能な方式で固定した方が摩耗した際、交換が容易であるため好ましい。ピン径については、ピンに使用する材質の熱膨張係数を考慮し、加熱成形時のピンの熱膨張係数とアルミニウム−炭化珪素質複合体の熱膨張係数における冷却時の穴の収縮量とで設計する必要がある。
【0043】
ピンの形状については、加熱成形後のアルミニウム−炭化珪素質複合体の抜き出しを考慮し1〜5°の抜き勾配を設けることが好ましい。抜き勾配が1°未満であるとアルミニウム−炭化珪素質複合体抜き出しの際に、ピン部分周囲に微小なクラックが発生し、アルミニウム−炭化珪素質複合体強度が低下する。また、抜き勾配が5°を超えると、アルミニウム−炭化珪素質複合体の両主面の穴寸法差が大きくなりベース板に放熱フィンやケース取り付け時に位置ズレや締め付け力不足が発生しやすくなる。
【0044】
上下金型のピンとスリットのクリアランスについては0.01〜1.0mmの範囲であることが好ましい。上下金型のピンとスリットのクリアランスが0.01mm未満の場合、上下の金型に温度差がある場合、ピン径よりもスリット径が小さくなり加熱成形時にピンとスリットが接触し、金型が劣化することがある。また、上下金型のピンとスリットのクリアランスが1mmを超えると、アルミニウム−炭化珪素質複合体の穴周囲の密度低下が発生し、穴部の強度が大きく低下する。
【0045】
本発明のアルミニウム−炭化珪素質複合体の穴形成方法において、穴の種類がタップ穴の場合について説明する。タップ穴部分については、加工コストや実使用時のタップ穴部のアルミニウム−炭化珪素質複合体のカケ等を考慮し易加工性材料にする必要がある。
【0046】
易加工性材料は、融点が成形温度以上である金属、もしくは穴部の強度を考慮し、融点が成形温度以上である金属にセラミックスを含有するセラミックス−金属複合体を用いる。
【0047】
融点が成形温度以上である金属としては、アルミニウムやアルミニウム合金、銅や鉄等があるが、アルミニウム−炭化珪素質複合体と加熱成形の際に金属間化合物を生成しない材料が好ましく、好ましくはアルミニウムやアルミニウム合金である。また、セラミックス−金属複合体中のセラミックスの種類については、アルミナや炭化珪素、黒鉛、窒化硼素などの材料を選定することができる。セラミックスにアルミナやシリカからなるセラミックス繊維や炭素繊維等を用いても構わない。
【0048】
融点が成形温度以上である金属にセラミックスを含有するセラミックス−金属複合体のセラミックス充填量については20体積%以下が好ましく、更に好ましくは15体積%以下である。セラミックス充填量が20体積%を超えると、セラミックス−金属複合体部分にタップ穴等を加工する際に、工具の摩耗が大きくなり生産性が大きく低下する。
【0049】
アルミニウムやアルミニウム合金、もしくはセラミックス−金属複合体等の易加工性材料の形状は円柱状であることが好ましい。この易加工性材料の直径については加熱成形後に加工する穴径の1.05〜1.5倍であることが好ましい。易加工性材料の直径が加工する穴径の1.05倍未満であると、アルミニウム−炭化珪素質複合体と易加工性材料を複合化した際に易加工性材料の微妙な位置ズレが発生した際、穴加工時にアルミニウム−炭化珪素質複合体に加工工具が接触し、工具が摩耗または破損する可能性がある。また、易加工性材料の直径が加工する穴径の1.5倍を超える場合、アルミニウム−炭化珪素質複合体と易加工性材料の熱膨張係数差から、実使用時にアルミニウム−炭化珪素質複合体と易加工性材料の界面の密着性が低下し、放熱フィンや樹脂ケースとの締め付け力が低下してしまう。易加工性材料とアルミニウム−炭化珪素質複合体に必要な界面強度は2MPa以上が好ましい。
【0050】
易加工性材料の柱状部には、アルミニウム−炭化珪素質複合体と加熱成形時の強度を発現させるために溝を形成することが効果的である。易加工性材料の柱状部の溝の深さは、最終的に穴加工を行う際の穴径をxmm、易加工性材料の直径をymmとした場合、0.01mm〜(y−x)/2mmである必要がある。易加工性材料の柱状部の溝深さが0.01mm未満であると、加熱成形後に易加工性材料の柱状部に存在する溝部分にアルミニウム−炭化珪素質複合体量が不十分となり、実使用時に易加工性材料とアルミニウム−炭化珪素質複合体の密着性強度が低下した場合、放熱フィンや樹脂ケースとの締め付け力が低下してしまう。易加工性材料の柱状部の溝深さが(y−x)/2mmを超えると、穴加工時にアルミニウム−炭化珪素質複合体に加工工具が接触し、工具が摩耗または破損する可能性がある。易加工性材料の溝の幅は0.2mm以上が好ましい。易加工性材料の溝の幅が0.2mm未満であると、加熱成形時の複合化の際に溝部分に十分なアルミニウム−炭化珪素質複合体が供給されなくなる場合があり、アルミニウム−炭化珪素質複合体と易加工性材料の強度が低下する場合がある。
【0051】
易加工性材料の柱状部に存在する溝の本数としては1本以上であり、実使用時の易加工性材料とアルミニウム−炭化珪素質複合体の密着性強度を考慮した場合、2本以上が好ましい。アルミニウムやアルミニウム合金、もしくはセラミックス−金属複合体等の易加工性材料の製造方法については制限がなく、機械加工で所定の形状に加工しても構わないが、コスト面からプレス加工等の打ち抜きや成形加工を行ったほうが好ましい。
【0052】
易加工性材料の溝の数が2本以上の場合、溝と溝の間隔は0.1mm以上が好ましい。溝間隔が0.1mm未満であると溝間に存在する易加工性材料の強度が低下するため加熱成形の際にヒビやカケ等が発生する可能性がある。
【0053】
アルミニウムやアルミニウム合金、もしくはセラミックス−金属複合体等の易加工性材料とアルミニウム−炭化珪素質複合体の複合化については、混合粉末を金型に充填し、加圧成形し成形体を作製する段階で金型内に最終的に穴加工が必要な箇所に易加工性材料を配置することで所定の位置に易加工性材料が配置された成形体を作製することができる。混合粉末を金型に充填し、予備成形し成形体を作製後、予備成形体に最終的に穴加工が必要な箇所にダイヤモンド工具等を用いて穴加工を行った後、穴部分に易加工性材料を配置後、本成形を行いアルミニウム−炭化珪素質複合体と易加工性材料を複合化しても構わないが加工費用が高くなり、ベース板コストが高くなるため好ましくない。
【0054】
本発明のアルミニウム−炭化珪素質複合体の温度25℃での板厚方向の熱伝導率は、150W/mK以上である。熱伝導率が、150W/mK未満では、パワーモジュール用のベース板等の放熱部品として用いる場合に十分な放熱特性が得られず好ましくない。熱伝導率の上限に関しては、特性面からの制約はないが、炭化珪素自体の特性より300W/mK以下となる。
【0055】
本発明のアルミニウム−炭化珪素質複合体の温度25℃から150℃の熱膨張係数は、5×10−6〜12×10−6/Kである。パワーモジュール用のベース板等の放熱部品と
して用いる場合、接合されるセラミックス回路基板との熱膨張係数のマッチングが非常に重要である。熱膨張係数が、5×10−6/K未満又は12×10−6/Kを超えると、
半導体素子作動時の熱負荷により、接合層(半田層等)やセラミックスの破壊が起こり、放熱特性が低下する場合があり好ましくない。
【0056】
本発明に係るアルミニウム−炭化珪素質複合体は、パワーモジュール用ベース板として用いる場合、取り付け穴等を加工した後、セラミックス回路基板と半田付けにより接合して用いられるのが一般的である。このため、アルミニウム−炭化珪素質複合体表面には、Niめっきを施すことが必要である。めっき処理方法は特に限定されず、無電解めっき処理、電気めっき処理法のいずれでもよい。Niめっきの厚みは1〜20μmであることが好ましい。めっき厚みが1μm未満では、部分的にめっきピンホールが発生し、半田付け時に半田ボイド(空隙)が発生し、回路基板からの放熱特性が低下する場合がある。一方、
Niめっきの厚みが20μmを超えると、Niめっき膜と表面アルミニウム合金との熱膨張差によりめっき剥離が発生する場合がある。Niめっき膜の純度に関しては、半田濡れ性に支障をきたさないものであれば特に制約はなく、リン、硼素等を含有することができる。更に、Niめっき表面に金めっきを施すことも可能である。
【実施例】
【0057】
[実施例1]
炭化珪素粉末A(大平洋ランダム社製/平均粒子径:120μm、密度:3.2g/cm):138.4(32.5体積%)g、炭化珪素粉末B(大平洋ランダム社製/平均粒子径:10μm、密度:3.2g/cm):138.4g(32.5体積%)、アルミニウム粉末(アルコア社製/平均粒子径:25μm):125.8gをボールミルにて1時間混合し、混合粉末を402.7g秤量した。次に、図1に示す鋳鉄製の金型1(外形:250×200×50mm、内径:190×140×50mm)及び鋳鉄製の底部寸法φ7mmで抜き勾配1°の鋳鉄製の高さ9mmのピン付きで、曲率半径20mの凹形状を施した金型2(下部:250×200×20mm、上部:189.9×139.9×10mm)、及び鋳鉄製の金型3(189.9×139.9×60mm)に離型剤として黒鉛及び窒化硼素を塗布した後、金型2の最終的にタップ穴加工を行う箇所に図2に示す高さ9mm、直径5mmで柱状部分には金型2の面から2mmの位置に溝深さ0.25mm、溝幅0.25mm、溝間隔0.25mmの2本の溝を設けた易加工性材料アルミニウムピン(材質A1085)を配置した。
【0058】
その後、金型2、3側の面に純アルミニウム箔(100μm)を配置して、金型2に前記混合粉末を投入後、図1の通りに積層し、油圧プレスにて面圧:50MPaで予備成形を実施した。
【0059】
次に、この積層体を電気炉にて、大気雰囲気下、温度600℃に加熱して15分間保持して、積層体の温度を600℃とした。加熱した積層体は、厚み5mmの断熱材を介して、油圧プレスにて面圧:100MPaで3分間、加熱成形を行った後、圧力を開放して室温まで冷却した。次に、金型2を外し、油圧プレスにて金型3を押し込み、成形体を取り出した後、離型用に配置した黒鉛シートを剥がして、190×140×5mmtのアルミニウム−炭化珪素質複合体を得た。
【0060】
[実施例2]
炭化珪素粉末A(大平洋ランダム社製/平均粒子径:350μm、密度:3.2g/cm):199.5(48体積%)g、炭化珪素粉末B(大平洋ランダム社製/平均粒子径:50μm、密度:3.2g/cm):133.0g(32体積%)、アルミニウム粉末(アルコア社製/平均粒子径:25μm):70.1gをボールミルにて1時間混合し、混合粉末を402.7g秤量した以外は実施例1と同様にしてアルミニウム−炭化珪素質複合体を得た。
【0061】
[実施例3]
炭化珪素粉末A(大平洋ランダム社製/平均粒子径:120μm、密度:3.2g/cm):150.3(35体積%)g、炭化珪素粉末B(大平洋ランダム社製/平均粒子径:50μm、密度:3.2g/cm):107.4g(25体積%)、アルミニウム粉末(アルコア社製/平均粒子径:25μm):145.0gをボールミルにて1時間混合し、混合粉末を402.7g秤量した以外は実施例1と同様にしてアルミニウム−炭化珪素質複合体を得た。
【0062】
[実施例4]
金型2の最終的にタップ穴加工を行う箇所に図2に示す高さ9mmのアルミニウム−アルミナ複合体(アルミナ充填量18体積%)を配置した以外は実施例1と同様にしてアルミニウム−炭化珪素質複合体を得た。
【0063】
[実施例5]
高さ9mm、直径4.4mmで柱状部分には金型2の面から2mmの位置に溝深さ0.25mm、溝幅0.25mm、溝間隔0.25mmの2本の溝を設けたアルミニウムピンを使用した以外は実施例1と同様にしてアルミニウム−炭化珪素質複合体を得た。
【0064】
[実施例6]
高さ9mm、直径6mmで柱状部分には金型2の面から2mmの位置に溝深さ0.25mm、溝幅0.25mm、溝間隔0.25mmの2本の溝を設けたアルミニウムピンを使用した以外は実施例1と同様にしてアルミニウム−炭化珪素質複合体を得た。
【0065】
[実施例7]
高さ9mm、直径5mmで柱状部分には金型2の面から2mmの位置に溝深さ0.25
mm、溝幅0.25mm、溝間隔0.25mmの5本の溝を設けたアルミニウムピンを使
用した以外は実施例1と同様にしてアルミニウム−炭化珪素質複合体を得た。
【0066】
[実施例8]
高さ9mm、直径5mmで柱状部分には金型2の面から2mmの位置に溝深さ0.25mm、溝幅0.25mmの1本の溝を設けたアルミニウムピンを使用した以外は実施例1と同様にしてアルミニウム−炭化珪素質複合体を得た。
【0067】
[実施例9]
高さ9mm、直径5mmで柱状部分には金型2の面から2mmの位置に溝深さ0.45mm、溝幅0.25mm、溝間隔0.25mmの2本の溝を設けたアルミニウムピンを使用した以外は実施例1と同様にしてアルミニウム−炭化珪素質複合体を得た。
【0068】
[実施例10]
高さ9mm、直径5mmで柱状部分には金型2の面から2mmの位置に溝深さ0.25mm、溝幅0.21mm、溝間隔0.25mmの2本の溝を設けたアルミニウムピンを使用した以外は実施例1と同様にしてアルミニウム−炭化珪素質複合体を得た。
【0069】
[実施例11]
高さ9mm、直径5mmで柱状部分には金型2の面から2mmの位置に溝深さ0.25mm、溝幅0.25mm、溝間隔0.15mmの2本の溝を設けたアルミニウムピンを使用した以外は実施例1と同様にしてアルミニウム−炭化珪素質複合体を得た。
【0070】
[実施例12]
曲率半径11mの凹形状を施した金型2を用いた以外は実施例1と同様にしてアルミニウム−炭化珪素質複合体を得た。
【0071】
[比較例1]
炭化珪素粉末A(大平洋ランダム社製/平均粒子径:120μm、密度:3.2g/cm):129.9(30体積%)g、炭化珪素粉末B(大平洋ランダム社製/平均粒子径:10μm、密度:3.2g/cm):108.3g(25体積%)、アルミニウム粉末(アルコア社製/平均粒子径:25μm):164.5gをボールミルにて1時間混合し、混合粉末を402.7g秤量した以外は実施例1と同様にしてアルミニウム−炭化珪素質複合体を得た。
【0072】
[比較例2]
炭化珪素粉末A(大平洋ランダム社製/平均粒子径:120μm、密度:3.2g/cm):185.6(45体積%)g、炭化珪素粉末B(大平洋ランダム社製/平均粒子径:10μm、密度:3.2g/cm):164.9g(40体積%)、アルミニウム粉末(アルコア社製/平均粒子径:25μm):52.2gをボールミルにて1時間混合し、混合粉末を402.7g秤量した以外は実施例1と同様にしてアルミニウム−炭化珪素質複合体を得た。
【0073】
[比較例3]
炭化珪素粉末A(大平洋ランダム社製/平均粒子径:500μm、密度:3.2g/cm):276.8(65体積%)g、アルミニウム粉末(アルコア社製/平均粒子径:25μm):125.8gをボールミルにて1時間混合し、混合粉末を402.7g秤量した以外は実施例1と同様にしてアルミニウム−炭化珪素質複合体を得た。
【0074】
[比較例4]
炭化珪素粉末A(大平洋ランダム社製/平均粒子径:7μm、密度:3.2g/cm):276.8g(65体積%)、アルミニウム粉末(アルコア社製/平均粒子径:25μm):125.8gをボールミルにて1時間混合し、混合粉末を402.7g秤量した以外は実施例1と同様にしてアルミニウム−炭化珪素質複合体を得た。
【0075】
[比較例5]
高さ9mm、直径4.2mmで柱状部分には金型2の面から2mmの位置に溝深さ0.25mm、溝幅0.25mm、溝間隔0.25mmの2本の溝を設けたアルミニウムピンを使用した以外は実施例1と同様にしてアルミニウム−炭化珪素質複合体を得た。
【0076】
[比較例6]
高さ9mm、直径6.5mmで柱状部分には金型2の面から2mmの位置に溝深さ0.25m、溝幅0.25mm、溝間隔0.25mmの2本の溝を設けたアルミニウムピンを
使用した以外は実施例1と同様にしてアルミニウム−炭化珪素質複合体を得た。
【0077】
[比較例7]
高さ9mm、直径5mmで柱状部分に溝の存在しないアルミニウムピンを使用した以外
は実施例1と同様にしてアルミニウム−炭化珪素質複合体を得た。
【0078】
[比較例8]
高さ9mm、直径5mmで柱状部分には金型2の面から2mmの位置に溝深さ0.6m
m、溝幅0.25mm、溝間隔0.25mmの2本の溝を設けたアルミニウムピンを使用
した以外は実施例1と同様にしてアルミニウム−炭化珪素質複合体を得た。
【0079】
[比較例9]
高さ9mm、直径5mmで柱状部分には金型2の面から2mmの位置に溝深さ0.25
mm、溝幅0.18mm、溝間隔0.25mmの2本の溝を設けたアルミニウムピンを使
用した以外は実施例1と同様にしてアルミニウム−炭化珪素質複合体を得た。
【0080】
[比較例10]
高さ9mm、直径5mmで柱状部分には金型2の面から2mmの位置に溝深さ0.25
mm、溝幅0.25mm、溝間隔0.08mmの2本の溝を設けたアルミニウムピンを使
用した以外は実施例1と同様にしてアルミニウム−炭化珪素質複合体を得た。

【0081】
実施例1〜12、比較例1〜10の方法で板状のアルミニウム−炭化珪素質複合体を各5枚作製し、各板状のアルミニウム−炭化珪素質複合体の4隅に存在する易加工性材料部分の中心部にマシニングセンタ(ヤマザキマザック社製;バーチカルセンターネクサス)を用いて図3のようにM4のタップ穴を加工後、各種評価を実施した。
【0082】
実施例1〜12、比較例1〜10で得られたアルミニウム−炭化珪素質複合体から、熱膨張測定用試験体(3×3×10mm)、その試験片を用いて温度25℃〜150℃の熱膨張係数を熱膨張計(セイコー電子工業社製;TMA300)で測定した。結果を表2に示す。
【0083】
実施例1〜12、比較例1〜10で得られたアルミニウム−炭化珪素質複合体の放熱面の形状を接触型二次元輪郭形状測定機(東京精密社製;コンターレコード1600D−22)にて測定した。結果を表2に示す。
【0084】
アルミニウム−炭化珪素質複合体を−40℃と125℃の気槽雰囲気に、それぞれ30分間保持し、加熱冷却処理を1000回実施した後に板状のアルミニウム−炭化珪素質複合体の易加工性材料部分の強度を測定するため、M4タップ部分にφ7mmの鉄製ボールを配置後、鉄製ボールに加重を加えアルミニウム−炭化珪素質複合体と易加工性材料界面耐荷重を測定した。また、M4タップ穴加工後の加工工具の摩耗状態をルーペで確認した。結果を表2に示す。
【0085】
【表1】



【0086】
【表2】



【符号の説明】
【0087】
1 金型1
2 金型2
3 金型3
4 金属粉末と炭化珪素粉末の混合粉末
4’ 金属−炭化珪素質複合体
5 純アルミニウム箔
6 融点が成形温度以上の金属または融点が成形温度以上であるセラミックス−金属複合体
7 金属ピン
8 融点が成形温度以上の金属または融点が成形温度以上であるセラミックス−金属複合体に穴加工施したもの


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム粉末、又はアルミニウムを90質量%以上含むアルミニウム合金粉末との混合粉末を含む金属粉末20体積%〜40体積%と、平均粒径が10μm〜350μmの炭化珪素を95体積%以上含有するセラミックス粉末60体積%〜80体積%との混合粉末を金属粉末の融点未満の温度で加圧成形してなり、加圧成形時に最終的に穴加工を行う箇所に融点が成形温度以上である金属、若しくは融点が成形温度以上である金属にセラミックスを含有するセラミックス−金属複合体の易加工性材料を配置することを特徴とする板状のアルミニウム−炭化珪素質複合体であり、前記易加工性材料部分が円柱状であり、最終的に穴加工を行う際の穴径をxmmとした際の直径yが1.05xmm〜1.5xmmであり、柱状部分に0.01mm〜(y−x)/2mmの深さで、0.2mm以上の幅の1本以上の溝を有し、溝間隔が0.1mm以上であり、前記易加工性材料を機械加工し、穴部を形成したことを特徴とする板状のアルミニウム−炭化珪素質複合体。
【請求項2】
アルミニウム−炭化珪素質複合体の厚みが2mm〜6mmであることを特徴とする請求項1記載の板状のアルミニウム−炭化珪素質複合体。
【請求項3】
25℃〜150℃の熱膨張係数が5×10−6/K〜12×10−6/Kであることを特徴とする請求項1または2記載の板状のアルミニウム−炭化珪素質複合体。
【請求項4】
加圧成形時に最終的に穴加工を行う箇所に配置するセラミックス−金属複合体のセラミックスの充填量が20体積%以下であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の板状のアルミニウム−炭化珪素質複合体。
【請求項5】
板状のアルミニウム−炭化珪素質複合体の一主面の反り量が200mmあたり0〜500μmであることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の板状のアルミニウム−炭化珪素質複合体。
【請求項6】
アルミニウム粉末、又はアルミニウムを90質量%以上含むアルミニウム合金粉末との混合粉末を含む金属粉末20体積%〜40体積%と、平均粒径が10μm〜350μmの炭化珪素を95体積%以上含有するセラミックス粉末60体積%〜80体積%との混合粉末を金属粉末の融点未満の温度で加圧成形してなり、加圧成形時に最終的に穴加工を行う箇所に融点が成形温度以上である金属、若しくは融点が成形温度以上である金属にセラミックスを含有するセラミックス−金属複合体の易加工性材料を配置することを特徴とする板状のアルミニウム−炭化珪素質複合体であり、前記易加工性材料部分が円柱状であり、最終的に穴加工を行う際の穴径をxmmとした際の直径yが1.05xmm〜1.5xmmであり、柱状部分に0.01mm〜(y−x)/2mmの深さで、0.2mm以上の幅の1本以上の溝を有し、溝間隔が0.1mm以上であり、前記易加工性材料を機械加工し、穴部を形成したことを特徴とする板状のアルミニウム−炭化珪素質複合体の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5いずれか1項記載のアルミニウム−炭化珪素質複合体の表面に、めっき処理を行い、一主面がセラミックス回路基板に半田付け又はロウ付け接合され、他の主面が放熱面として用いられるパワーモジュール用ベース板。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−254891(P2012−254891A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127844(P2011−127844)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】