説明

アルミニウム電解コンデンサ

【課題】従来、アルミニウム電解コンデンサは、アルミニウムの箔の陽極と陰極とをセパレータを介して巻回してコンデンサ素子とし、上面が開放したケースに収納し、外部端子を設けた封口板によりケースの開放端を封口していた。この時、ケースの開放端近くに設けた輪状のくびれと、ケースの開放端を内側にカーリングすることにより封口板をはさみこんで固定されるので、コンデンサ素子の外径は、前記の輪状のくびれの内径より小さくして、コンデンサ素子をケース内に収納する。そのため、コンデンサ素子の外径とケースの内径の差から生ずる間隙を有しており、この間隙は空間となっていて熱が伝わりにくいため、放熱性の改善が要求されている。本発明ではこのコンデンサの放熱性を改善する。
【解決手段】本発明は、素子固定材部分のケースの内径をコンデンサ素子の内径に近づけることを特徴とするアルミニウム電解コンデンサを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム電解コンデンサに関するものである。特に、アルミニウム電解コンデンサの放熱性に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミニウム電解コンデンサは、アルミニウムの箔の陽極と陰極とをセパレータを介して巻回してコンデンサ素子とし、上面が開放したケースに収納し、外部端子を設けた封口板によりケースの開放端を封口していた。この時、ケースの開放端近くに設けた輪状のくびれと、ケースの開放端を内側にカーリングすることにより封口板をはさみこんで固定される。そのため、コンデンサ素子の外径は、前記の輪状のくびれの内径より小さくして、コンデンサ素子をケース内に収納する。そのため、コンデンサ素子の外径とケースの内径の差から生ずる間隙を有しており、この間隙は空間となっていて熱が伝わりにくいため、放熱性の改善が要求されている。
【0003】
電解コンデンサの放熱性を改善するための方法として、ケースの側面とコンデンサ素子の側面との間隙空間に、従来の石油ピッチ等の素子固定材の代わりとして、熱伝導が良好なシリコーンオイルを充填させる方法(特許文献1)が開示されている。また、ケースとコンデンサ素子との固定を改善しながらコンデンサの放熱性を改善するための方法として、ケースの側面とコンデンサ素子の側面との間隙空間に、シリコーン樹脂コンパウンドを設ける方法(特許文献2)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−110479号公報
【特許文献2】特開平3−179718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の方法では、コンデンサ素子の外径とケースの内径の差から生ずる間隙を埋める素子固定材は、熱伝導が良好な材料といえども有機物または有機物含有物であるため、放熱性の改善が要望されている。
【0006】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、コンデンサの放熱性を改善するアルミニウム電解コンデンサを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するために、下記のアルミニウム電解コンデンサを提供するものである。
(1)陽極箔と陰極箔とをセパレータを介し巻回したコンデンサ素子と、このコンデンサ素子を収納するケースと、このケースの側面と前記コンデンサ素子の側面との間隙を埋めて、コンデンサ素子を固定する素子固定材とを有するアルミニウム電解コンデンサにおいて、前記ケースの側面と前記コンデンサ素子の側面との間隙が、前記素子固定材のない部分より前記素子固定材のある部分のほうが狭いことを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ。
(2)ケース側面の内側に設けたへこみと、そのへこみ部分の前記ケース内側に素子固定材とを設けたことを特徴とする(1)のアルミニウム電解コンデンサ。
(3)ケースの長さ方向に、ライン状のへこみを設けたことを特徴とする(2)のアルミニウム電解コンデンサ。
【発明の効果】
【0008】
素子固定材部分のケースの内径をコンデンサ素子の外径に近づけているので、コンデンサの放熱性を改善するアルミニウム電解コンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係るアルミニウム電解コンデンサを示している。
【図2】本発明に係る別のアルミニウム電解コンデンサを示している。
【図3】本発明に係る別のアルミニウム電解コンデンサの断面図を示している。
【図4】本発明に係る別のアルミニウム電解コンデンサを示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に述べるケースは、側面と底面を有し上面が開口したアルミニウム等の金属材からなり、外観的に円筒状や楕円筒状に形成されている。ケース内側の底部は、中央にコンデンサ素子巻き芯の固定用の突起があってもよい。上面の開口部は、外部端子を導出した封口板により封口され、コンデンサ素子がケース内は密封される。密封は、たとえばケースの開放端近くに設けた輪状のくびれと、ケースの開放端を内側にカーリングすることにより封口板をはさみこんで固定される。この場合、コンデンサ素子の外径は、輪状のくびれの内径より小さくして、コンデンサ素子をケース内に収納する。また、後記する素子固定材部分の、ケースの平均内径は、コンデンサ素子の外径に近づける。素子固定材部分のケースの内径が、コンデンサ素子の外径とほとんど同じだと、コンデンサ素子がケース内に容易に入りにくく、素子固定材部分のケースの内径がコンデンサ素子の外径より大きいとコンデンサ素子を圧迫するため好ましくない。
【0011】
本発明に述べる陽極箔は、アルミニウム電解コンデンサに使用される一般的な陽極箔で、厚さ50μmから150μm程度のアルミニウム箔等を、酸水溶液中、その表面をエッチング処理し、直径が0.1μmから2μm程度のエッチングピットを設けた後、ホウ酸アンモニウム等の水溶液中で、定格電圧の1.5倍程度の電圧を印加して化成し、コンデンサとしての耐圧性の陽極酸化皮膜を形成したもので、化成後、引き出しリードタブを取り付け、陽極箔としたものである。
【0012】
本発明に述べる陰極箔は、アルミニウム電解コンデンサ使用される一般的な陰極箔で、厚さ20μmから100μm程度のアルミニウム箔等をそのまま、または酸水溶液中に浸漬し、その表面をエッチング処理し、引き出しリードタブを取り付け、陰極箔としたものである。
特に厚さは、厚い方が放熱性の点と共に曲がりやすい陰極箔の形状安定性を得ることができるで好ましいが、あまり厚いと対容積あたりの容量が低下するため、50μmから70μm程度にすることが好ましい。
【0013】
本発明に述べるセパレータは、陽極箔と、陰極箔とを物理的にわけると共に、電解液を保持する役目をする通常の多孔質シートで、マニラ紙、ヘンプ紙、クラフト紙などの従来から使用されてきた電解紙を主材料としたものである。大きさはコンデンサの大きさにより選定されるが、おおよそ幅は、陽極箔幅より広く、1cmから30cm程度で、長さは数cmから数mほどのもの、厚さは数μmから数10μmほどのものである。セパレータの構成としては、単純密度紙のほか、一枚が相対的に繊維が密な高密度な層と、相対的に繊維が粗な低密度な層の複層紙などであってもかまわない。
【0014】
本発明に述べるコンデンサ素子は、陽極箔と、陰極箔とをセパレータを介して巻回したものであるが、セパレータは、陽極箔の両幅よりはみ出すようにして巻回し、陰極箔の引き出しリードタブ側では、はみ出すよう巻回する。また、陰極箔のケース底側では、陰極箔の方がはみ出すように巻回するのが放熱の点で好ましい。
【0015】
本発明に述べる素子固定材は、熱伝導性のある物質で、主に高分子と熱伝導フィラーからなる。ケースの側面とコンデンサ素子の側面との間隙空間を埋めるように設ける。耐震性の点で、ある程度可撓性があるほうが好ましい。熱伝導性は添加する熱伝導フィラーにより増強される。
高分子としては、熱伝導性接着剤、熱伝導性樹脂、熱伝導性ゴム、熱伝導性ゲルなど選択できる。たとえば、熱伝導性接着剤としては、熱伝導性可撓性エポキシ接着剤、一液縮合型液状シリコーンゴム接着剤、加熱硬化型シリコーンゴム接着剤などが使用できる。また、熱伝導性ゴムとしては、熱伝導性シリコーンゴム、熱伝導性ウレタンゴムなどが使用できる。また、熱伝導性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリアミド、ウレタンプレポリマー、アクリル系ポリウレタン樹脂、変成シリコーン/エポキシ混合樹脂組成物などが使用できる。また、熱伝導性ゲルとしては、熱伝導性シリコーンゲル、縮合硬化型の液状シリコーンゲル、チキソ性シリコーンゲル、付加型液状シリコーンゲル、熱伝導性ウレタンゲルなどが使用できる。必要があれば、難燃剤、酸化防止剤を添加してもよい。
熱伝導フィラーとしては、窒化アルミニウム、アルミナ、窒化硼素、水酸化アルミニウム、炭化珪素、酸化チタンその他の熱伝導性に優れるセラミックフィラーを用いることができる。金属フィラーに樹脂やセラミックを被覆などしたものを使用してもよい。
【0016】
本発明に述べるケースに設けるへこみは、ケース側面の素子固定材部分に設けるもので、ケースを内面から見ると凸部で、ケースを外面から見ると凹部となる、ディンプル状または溝状等のものである。
素子固定材は、通常コンデンサ素子を入れる前にケース内に注入し、コンデンサ素子を入れてから固化させるため、ケースの長さ方向のライン状のへこみにすると、へこみとへこみの間で、素子固定材がケースとコンデンサ素子とのすき間を移動しやすく好ましい。
へこみを設ける位置は、素子固定材がケース内で固化する部分で、へこみの深さは、コンデンサ素子が容易にケース内に入りやすいように、コンデンサ素子の外周と接触しないのが好ましい。へこみの数はコンデンサ素子を囲むように複数設ける。へこみの凹凸形状により、ケース外への放熱と、素子固定材とケースとの密着性が向上する。
【0017】
以下、本発明を図面に示す実施の形態に基づいて説明する。
図1は、本発明に係るアルミニウム電解コンデンサを示している。図1の左側半分が側面図、右側半分が断面図を示している。
本発明に係るアルミニウム電解コンデンサは、通常のアルミニウム電解コンデンサと同様に、電極箔を適当な巾に裁断された後、引き出しリードタブ1を接続し、紙などのセパレータと共に捲回されたコンデンサ素子2を、上面が開口したアルミニウム等の金属材からなり外観的に円筒状や楕円筒状に形成されているケース3内に収容し、ケース3開放部近くの側面に設けたくびれ部3aとケース3開放部先端をカールするカール部3bとで封口板4を挟み込んで封口したものである。ケース3には絶縁性チューブを被覆する場合もある。
封口板4は、ケース上面の開口部を封口するもので、リベット外部端子タイプとインサート樹脂モールドタイプなど特に限定なく使用できる。図1では、市場で広く流通している紙フェノール絶縁板とゴム板を張り合わせたタイプの封口板4の場合を示し、その外部端子5は、リベットの外部端子5を使用していて、このリベットの外部端子5は、リベットとそれに取り付けた外部接続用の金属板端子を有し、引き出しリードタブ1を接続固定するため、引き出しリードタブ1の端部に穴をあけて、リベットの円柱部分に差し込み、次に平ワッシャを差し込み、機械的にかしめるリベット止めが一般的となっている。インサート樹脂モールドタイプの封口板の場合は、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイド、フェノール等の絶縁樹脂からなり、3〜50mm程度の厚さがある。外部端子を予め成形金型にセットし、インサート樹脂モールド等で行い、一体的に成形を行っている。
素子固定材6は、通常、コンデンサ素子2を入れる前にケース3内に注入し、コンデンサ素子2を入れてから固化させる。固化後の素子固定材6の高さは、コンデンサ素子2の高さよりも低くする。そうすることにより、コンデンサ内に発生したガスのガス圧を緩和する空間をケース内に確保できる。素子固定材6を設けた部分において、ケース3の外径を小さくして、コンデンサ素子2にケース3を近づける。つまり、ケース3の側面とコンデンサ素子2の側面との間隙において、素子固定材6のない部分より素子固定材6のある部分のほうを狭くする。狭くしたぶん、放熱性が向上する。また、狭くしたぶん、素子固定材6の使用量を低減することができる。
【0018】
図2は、本発明に係る別のアルミニウム電解コンデンサを示している。図2の左側半分が側面図、右側半分が断面図を示している。
ケース3の素子固定材6を設けた部分以外は、図1と同じ構造で、素子固定材6を設けた部分において、ケース3の肉厚を厚くしてケース3の内径を小さくし、コンデンサ素子2にケース3を近づけ、狭くしたぶん、放熱性が向上する。また、狭くしたぶん、素子固定材6の使用量を低減することができる。
【0019】
図3は、本発明に係る別のアルミニウム電解コンデンサの断面図を示している。図3(a)は、コンデンサの縦断面図を示していて、図3(b)は、コンデンサの横断面図を示している。
ケース3には、縦方向のライン状のへこみ7を複数設けている。ケース3を内側から見ると側面内側方向に設ける凸部で、ケース3を外側から見ると凹部となる。つまり、ケース3の側面とコンデンサ素子2の側面との間隙において、へこみ7部分で、素子固定材6のない部分より素子固定材6のある部分のほうが狭くなっている。
素子固定材6は、通常コンデンサ素子2を入れる前にケース3内に注入し、コンデンサ素子2を入れてから固化させるため、ケース3に設けるへこみ7を長さ方向のライン状のへこみ7にすると、へこみ7とへこみ7の間で、素子固定材6がケース3とコンデンサ素子2とのすき間を移動しやすく好ましい。
へこみ7を設ける位置は、素子固定材6がケース3内で固化する部分で、へこみ7の深さは、コンデンサ素子2が容易にケース3内に入りやすいように、コンデンサ素子2の外径に接触しないのが好ましい。へこみ7の数はコンデンサ素子2を囲むように複数設ける。へこみ7の凹凸形状により、ケース3外への放熱と、素子固定材6とケース3との密着性が向上する。ケース3に設けるへこみ7により、素子固定材6の使用量をへこみ分低減することができる。
【0020】
図4は、本発明に係る別のアルミニウム電解コンデンサを示している。図4の左側半分が側面図、右側半分が断面図を示している。
ケースに設けるへこみ7は、上下に長い、深さの形状が扇状で、千鳥となっている。深さの形状が扇状のため、回転ごま等の押しつけ治具が使用できる。
【符号の説明】
【0021】
1…引き出しリードタブ、2…コンデンサ素子、3…ケース、3a…くびれ部、3b…カール部、4…封口板、5…外部端子、6…素子固定材、7…へこみ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極箔と陰極箔とをセパレータを介し巻回したコンデンサ素子と、このコンデンサ素子を収納するケースと、このケースの側面と前記コンデンサ素子の側面との間隙を埋めて、コンデンサ素子を固定する素子固定材とを有するアルミニウム電解コンデンサにおいて、前記ケースの側面と前記コンデンサ素子の側面との間隙が、前記素子固定材のない部分より前記素子固定材のある部分のほうが狭いことを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ。
【請求項2】
ケース側面の内側に設けたへこみと、そのへこみ部分の前記ケース内側に素子固定材とを設けたことを特徴とする請求項1のアルミニウム電解コンデンサ。
【請求項3】
ケースの長さ方向に、ライン状のへこみを設けたことを特徴とする請求項2のアルミニウム電解コンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−55267(P2013−55267A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193534(P2011−193534)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(309035062)日立エーアイシー株式会社 (47)