説明

アレイ導波路回折格子型光合分波器

【課題】素子の全長が短く、分波されて出力される出力光の位相揺らぎが小さい。
【解決手段】入力スターカプラ20と、出力スターカプラ30と、導波路アレイ26とを具えて構成されるAWG型光合分波器である。入力スターカプラの入力端20Aには入力導波路14が接続されており、出力スターカプラの出力端30Bには出力導波路16-1及び16-2が接続されている。導波路アレイは、入力スターカプラの出力端20Bに一方の端が接続されかつ出力スターカプラの入力端30Aに他方の端が接続された複数の導波路がアレイ状に配置されて構成されている。導波路アレイを構成する各導波路は、入力スターカプラ及び出力スターカプラで生じる光路長差を補償し、かつ波長分離が実現される位相差が与えられる光路長にそれぞれ設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、導波光を波長分離及び合波するアレイ導波路回折格子(AWG:arrayed waveguide grating)型の光合分波器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、受動光ネットワーク(PON: Passive Optical Network)を利用して、事業者と加入者とが双方向通信を行う光通信システムが注目されている。この光通信システムでは、加入者側から事業者側へ向けて送信する上り信号と、事業者側から加入者側へ向けて送信する下り信号とに対して、相異なる波長が割り当てられている。
【0003】
そのため、この光通信システムでは、光を波長分離及び異なる波長の光を合波する光合分波器が必要とされる。
【0004】
この種の光合分波器の代表例の一つとしてAWG型光合分波器が知られている(例えば、特許文献1〜4を参照)。現在、AWG型光合分波器は、上述のPONを利用する光通信システムのみならず、波長をチャンネルの識別標識とする波長多重方式の光通信システムにおいては重要な構成要素となっている。また、AWG型光合分波器は、小型分光センサー等にも利用されており、産業上広い用途を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−27339号公報
【特許文献2】特開平10−104446号公報
【特許文献3】特開2002−82240号公報
【特許文献4】特開2007−94063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の光通信システムあるいは分光センサー等においてAWG型光合分波器が利用される場合は、AWG型光合分波器の全長が短く、AWG型光合分波器によって分波されて出力される光の位相揺らぎが小さいことが求められる。
【0007】
しかしながら、従来のAWG型光合分波器は、コンパクトな素子が実現できるSi導波路であってもその全長が100μm以上であり、コンパクト化及び出力光の位相揺らぎの低減についての研究は、あまりなされてこなかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の発明者は、AWG型光合分波器を構成する2つのスターカプラ及びこのスターカプラ間を繋ぐ導波路アレイの構造につき鋭意研究したところ、従来のAWG型光合分波器では、スターカプラ内で生じる光路長差をスターカプラ内で補償されているように構成されていたため、スターカプラのそれぞれが非常に大きなものとなっていたことが判明した。すなわち、平面導波路部にチャネル導波路部が接続されて構成されるスターカプラにおいて、この平面導波路部において生じる光路長差を、チャネル導波路部の具える複数の各チャネル導波路の光路長を調整することで補償する構成とされており、このチャネル導波路部が長くなることによって、スターカプラが大きなものとなることが判明した。
【0009】
そこで、スターカプラ内で生じる光路長差をスターカプラ内で補償されるように構成する代わりに、2つのスターカプラ間を接続している導波路アレイを構成する各導波路の光路長を調整する構成とすることで実現させれば、AWG型光合分波器を構成する2つのスターカプラを小さく構成することが可能であることを確信した。
【0010】
すなわち、導波路アレイを構成する各導波路の光路長を調整する構成とすることによって、スターカプラで生じる光路長差を導波路アレイにおいて補償し、かつ波長分離が実現される位相差を与える構成とすることによって、AWG型光合分波器の全長を短くすることが可能であることを見出した。
【0011】
また、AWG型光合分波器の全長を短くすることによって、AWG型光合分波器を構成している導波路の全長に比例して増大する、出力光の位相揺らぎが低減されることを確信した。
【0012】
この発明はこのような事情に着目してなされたものであり、素子の全長が短く、分波されて出力される出力光の位相揺らぎが小さいAWG型光合分波器を提供することを目的とする。
【0013】
この発明の要旨によれば、上述の目的を達成するため、AWG型光合分波器は、以下の特徴を具えている。
【0014】
この発明のAWG型光合分波器は、入力スターカプラと、出力スターカプラと、導波路アレイとを具えて構成される。入力スターカプラの入力端には入力導波路が接続されており、出力スターカプラの出力端には出力導波路が接続されている。
【0015】
導波路アレイは、入力スターカプラの出力端に一方の端が接続されかつ出力スターカプラの入力端に他方の端が接続された複数の導波路がアレイ状に配置されて構成されている。
【0016】
そして、導波路アレイを構成する各導波路は、入力スターカプラ及び出力スターカプラで生じる光路長差を補償し、かつ波長分離が実現される位相差が与えられる光路長にそれぞれ設定されている。
【0017】
また、この発明の好適な実施形態のAWG型光合分波器は、入力スターカプラと、導波路アレイと、出力スターカプラとがこの順序に接続されて構成される。入力スターカプラ及び出力スターカプラは、それぞれ平面導波路部と複数の導波路を具えるチャネル導波路部とを具えて構成されている。
【0018】
入力導波路が入力スターカプラの平面導波路部の入力端に接続され、出力導波路が出力スターカプラの平面導波路部の出力端に接続されている。入力スターカプラが具えるチャネル導波路部は、入力スターカプラの平面導波路部の出力端に接続され、出力スターカプラが具えるチャネル導波路部は、出力スターカプラの平面導波路部の入力端に接続されている。
【0019】
チャネル導波路部を構成する前記複数の導波路の内の1本だけを直線導波路とし、他の導波路を傾斜直線導波路部、曲線導波路部及び水平直線導波路部を具えた光導波路とし、かつこの順に接続して構成するのが良い。
【0020】
また、導波路アレイは、入力スターカプラの出力端である入力スターカプラのチャネル導波路部を構成する複数の導波路のそれぞれの出力端に一方の端のそれぞれが接続され、かつ出力スターカプラの入力端である出力スターカプラのチャネル導波路部を構成する複数の導波路のそれぞれの入力端に他方の端のそれぞれが接続された複数の導波路をアレイ状に配置された構成とされている。
【0021】
そして、導波路アレイを構成する複数の導波路のそれぞれの光路長は、前段光路長差と後段光路長差との和として与えられる光路長差を補償し、かつ波長分離が実現される位相差が与えられる長さにそれぞれ設定されている。
【0022】
ここで、前段光路長差とは、入力スターカプラの平面導波路部の入力端から、入力スターカプラのチャネル導波路部を構成しているそれぞれの導波路の出力端に至るまでの間で発生する導波路間の光路長差をいう。
【0023】
また、後段光路長差とは、出力スターカプラのチャネル導波路部を構成しているそれぞれの導波路の入力端から出力スターカプラの平面導波路部の出力端に至るまでの間で発生する導波路間の光路長差をいう。
【0024】
導波路アレイを構成するそれぞれの導波路は、前段導波路部と後段導波路部とを具えて構成し、前段第2直線導波路部の終端と後段第2直線導波路部の始端とが接続された構成とするのが良い。
【0025】
ここで、前段導波路部は、前段第1曲線導波路部、前段第1直線導波路部、前段第2曲線導波路部、及び前段第2直線導波路部の順に導波方向に向って順次接続して構成するのが良い。
【0026】
また、後段導波路部は、前段第1曲線導波路部、前段第1直線導波路部、前段第2曲線導波路部、及び前段第2直線導波路部とそれぞれ対応する同一形状の後段第1曲線導波路、後段第1直線導波路、後段第2曲線導波路、及び後段第2直線導波路が、前段第2直線導波路部の終端を通り、前段第2直線導波路部の導波方向に直交する直線に対称な位置に配置され、この順序に順次接続して構成するのが良い。
【0027】
また、前段第1曲線導波路部、後段第1曲線導波路部、前段第2曲線導波路部、及び後段第2曲線導波路部のそれぞれを、導波路アレイを構成する複数の導波路において同一の曲率半径の円弧形状に設定するのが良い。
【0028】
そして、前段第1直線導波路部及び後段第1直線導波路部のそれぞれの光路長は、導波路アレイを構成する複数の導波路において、それぞれ前段光路長差及び後段光路長差を補償する光路長に設定されている。
【0029】
また、前段第2直線導波路部及び後段第2直線導波路部のそれぞれの光路長は、導波路アレイを構成する複数の導波路において、それぞれ波長分離が実現される位相差が与えられる光路長に設定されている。
【発明の効果】
【0030】
この発明のAWG型光合分波器によれば、導波路アレイにおいて入力スターカプラ及び出力スターカプラで生じる光路長差の補償及び波長分離が実現される位相差が与えられる構成とされている。従って、上述したように入力スターカプラ及び出力スターカプラを従来のAWG型光合分波器が具えていたものよりも小型化することが可能である。
【0031】
この発明の好適な実施形態のAWG型光合分波器によれば、導波路アレイを構成する複数の導波路のそれぞれの光路長が、前段光路長差と後段光路長差との和として与えられる光路長差を補償し、かつ波長分離が実現される位相差が与えられる長さにそれぞれ設定されている。従って、上述したように入力スターカプラ及び出力スターカプラを従来のAWG型光合分波器が具えていたものよりも小型化することが可能である。
【0032】
また、導波路アレイを構成するそれぞれの導波路における、前段導波路部と後段導波路とが互いに線対称となる形状で形成されているので、この導波路アレイの寸法を効果的に小型化することが可能である。
【0033】
更に、チャネル導波路部を構成する前記複数の導波路の内の1本だけを直線導波路とし、他の導波路を傾斜直線導波路部、曲線導波路部及び水平直線導波路部を具えた導波路とし、かつこの順に接続して構成することによって、入力スターカプラを効果的に小型化することが可能となる。
【0034】
また、前段第1曲線導波路部、後段第1曲線導波路部、前段第2曲線導波路部、及び後段第2曲線導波路部のそれぞれを、導波路アレイを構成する複数の導波路において同一の曲率半径の円弧形状に設定することによって、導波路の曲率半径の差異によって発生する導波路の実効屈折率差が発生しない。従って、これら曲線導波路部の幾何学的長さを規定するのみで、波長分離が実現される位相差が与えられる光路長に設定することが可能であり、前段導波路部と後段導波路とが互いに線対称となる形状で形成することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】この発明の実施形態のAWG型光合分波器の概略的斜視図である。
【図2】入力スターカプラの概略的構成を示す平面図である。
【図3】導波路アレイの概略的構成を示す平面図である。
【図4】従来のAWG型光合分波器とこの発明の実施形態のAWG型光合分波器との全長の比較を行った結果の説明に供する図であり、(A)はこの発明の実施形態のAWG型光合分波器のシミュレーション結果を示す図であり、(B)は従来のAWG型光合分波器のシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図を参照して、この発明の実施形態につき説明する。なお、各図は、この実施形態に係る一構成例を示すものであり、この発明の実施形態が理解できる程度に各構成要素の配置関係等を概略的に示しているに過ぎず、この発明を図示例に限定するものではない。また、以下の説明において、特定の機器及び条件等を用いることがあるが、これら材料及び条件は好適例の一つに過ぎず、したがって、何らこれらに限定されない。また、各図において同様の構成要素については、同一の番号を付して示し、その重複する説明を省略することもある。
【0037】
<この発明の実施形態のAWG型光合分波器の基本構造>
図1を参照して、この発明の実施形態のAWG型光合分波器の構成について説明する。図1はこの発明の実施形態のAWG型光合分波器の概略的斜視図である。図1において、1次元導波路部を太線で示す等、構造は理解できる程度に簡略化して示してある。
【0038】
図1に示すこの発明の実施形態のAWG型光合分波器は、次のように構成されている。すなわち、シリコン(Si)基板10に酸化シリコン(SiO2)クラッド層12が形成されており、このクラッド層12中にAWG型光合分波器が埋め込まれて形成されている。なお、AWG型光合分波器の幾何的形状は、SiO2クラッド層12を通して明瞭に見ることはできないが、図1ではその形状を分りやすく示すために、実線で描いてある。
【0039】
太線で模式的に示してある、入力導波路14、出力導波路16-1及び16-2、及び導波路アレイ26を構成する各導波路のそれぞれは、矩形導波路として形成されている。すなわち、これら導波路の導波方向に垂直な断面のコアの形状は正方形となっている。コアの断面形状を正方形に形成することによって、これら導波路を伝播する導波光の伝播モードの偏波無依存性が実現される。因みに、図1において、出力導波路16-1及び16-2の終端部分のコア断面が正方形となっていることを示すために、出力導波路16-1及び16-2の終端のコアの断面形状を模式的に正方形で示してある。
【0040】
図1に示す構造のAWG型光合分波器は、例えば、SOI基板とドライエッチングおよびCVD法を適宜利用して形成することが可能である。
【0041】
この発明の実施形態のAWG型光合分波器は、図1に示すように、入力スターカプラ20と、出力スターカプラ30と、導波路アレイ26とを具えて構成される。入力スターカプラ20の入力端20Aには入力導波路14が接続されており、出力スターカプラ30の出力端30Bには出力導波路16-1及び16-2が接続されている。
【0042】
入力スターカプラ20は、平面導波路部22とチャネル導波路部24とを具えて構成されている。チャネル導波路部24は、複数のチャネル導波路を具えており、これら複数のチャネル導波路の入力端は、平面導波路部22の出力端22Bに等間隔で接続されている。これら複数のチャネル導波路の入力端が等間隔に配置されて平面導波路部22の出力端22Bに接続された構成となっていることから、この部分で回折格子の効果、すなわち波長分波あるいは合波の機能が発現する。
【0043】
また、出力スターカプラ30は、入力スターカプラ20と合同の形状に形成されており、平面導波路部32とチャネル導波路部34とを具えており、これら複数のチャネル導波路の出力端は、平面導波路部32の入力端32Aに等間隔で接続されている。これら複数のチャネル導波路の出力端が等間隔に配置されて平面導波路部32の入力端32Aに接続された構成となっていることから、アレイ26の移相作用と相まってこの部分で回折格子の効果、すなわち波長分波あるいは合波の機能が発現する。
【0044】
従って、入力光導波路14から入力された入力光は、入力スターカプラ20及び出力スターカプラ30における回折格子の効果によって、出力導波路16-1及び16-2から波長の異なる出力光が出力される。すなわち、1つの入力光が分波されて波長の異なる2つの出力光が出力される分波器として機能することになる。
【0045】
一方、光の伝播経路は、光の伝播方向を逆にしても同一であるので、出力導波路16-1及び16-2を、入力導波路と読み替え、入力導波路14を出力導波路と読み替えれば、波長の異なる2つの入力光が合波されて出力される合波器として機能することになる。すなわち、図1に示すこの発明の実施形態のAWG型光合分波器は、1入力2出力の分波器として機能する他、2入力1出力の合波器としても機能することを意味する。
【0046】
この発明の実施形態のAWG型光合分波器は、上述のように、分波器としても合波器としても機能するが、これまでの説明では便宜上分波器として機能する場合を想定してきた。また、以下の説明においても同様に、分波器として機能するものとして説明し、合波器としての機能についての説明はほとんど重複する説明となるので、その説明を省略する。
【0047】
図1に示すこの発明の実施形態のAWG型光合分波器は1入力2出力のAWG型光合分波器を示してある。一般に1入力N出力のAWG型光合分波器(Nは2以上の整数)についても、以下の説明は同様に成り立つ。また、図1は、入力スターカプラ20と出力スターカプラ30について、その存在領域を波線で囲って概念的に示してあるので、これらスターカプラの入力端及び出力端は、波線で示す位置に存在するわけではない。
【0048】
例えば、後述するように、厳密には入力スターカプラ20の入力端20Aは、入力スターカプラの平面導波路部22の入力端22Aに対応する。また、入力スターカプラ20の出力端20Bは、図1に示す入力スターカプラ20の存在範囲を区切る終端部の波線の位置20Bと示す位置と一致している。同様に、出力スターカプラ30の入力端30Aは、出力スターカプラ30の存在範囲を区切る始端部の波線の位置30Aに一致し、出力スターカプラ30の出力端30Bは、出力スターカプラの平面導波路部32の出力端32Bに対応している。
【0049】
導波路アレイ26は、入力スターカプラ20の出力端20Bに一方の端が接続され、かつ出力スターカプラ30の入力端30Aに他方の端が接続された複数の導波路がアレイ状に配置されて構成されている。図1では、4本の導波路がアレイ状に配置されて構成される導波路アレイを示しているが、導波路の本数は4本に限られるわけではない。
【0050】
導波路アレイ26を構成する4本の各導波路は、入力スターカプラ20及び出力スターカプラ30で生じる光路長差を補償し、かつ波長分離が実現される位相差が与えられる光路長にそれぞれ設定されている。
【0051】
<入力スターカプラの構成>
図2を参照して入力スターカプラ20の構成及びその設計方法について説明する。出力スターカプラ30は、その構造が図2に示す入力スターカプラ20と同一であるのでその説明を省略する。図2は入力スターカプラ20の概略的構成を示す平面図であり、チャネル導波路部24を構成する個々の導波路を太線で概略的に示してある。
【0052】
入力スターカプラ20は、平面導波路部22と、この平面導波路部22の出力端22Bにその入力端が接続されたN本の導波路24-1〜24-Nからなるチャネル導波路部24とから構成されている。チャネル導波路部24を構成するN本の導波路の内1本だけは直線導波路であり、他の導波路のそれぞれは傾斜直線導波路部24A、曲線導波路部24B及び水平直線導波路部24Cから構成されている。また、平面導波路部22の入力端22Aには、入力導波路14が接続されている。
【0053】
チャネル導波路部24を構成するN本の導波路の内1本だけを直線導波路とする必要は必ずしも必要ではなく、全ての導波路を傾斜直線導波路部24A、曲線導波路部24B及び水平直線導波路部24Cから構成される形状としても良い。しかしながら、チャネル導波路部24を構成するN本の導波路の内1本だけを直線導波路とする事によって、入力スターカプラ20の全長(平面導波路部22の入力端からチャネル導波路部24の出力端までの寸法)を最小にすることが可能であることが経験的に認められた。
【0054】
平面導波路部22は、図2に示すように、一点波線で示す中心線に対して線対称の形状である。ここでは、チャネル導波路部24がN本の導波路で形成されている場合を示しているが、Nの値は2以上の任意の整数値に設定することが可能である。
【0055】
図2において、説明の便宜のため、チャネル導波路部24を構成する直線導波路24-Nに沿ってz軸を取り、チャネル導波路部24の出力端20Bをy軸にとる。
【0056】
チャネル導波路部24を構成する導波路24-1等、直線導波路として形成される導波路24-Nを除き、チャネル導波路部24を構成するすべての導波路は、上述したように、傾斜直線導波路部24A、曲線導波路部24B及び水平直線導波路部24Cから構成されている。ここでは、導波路24-1を取り上げてその形状を説明するが、他の導波路も同様の形状である。
【0057】
図2では導波路24-2については、水平直線導波路部24Cのみ示してあり、他の導波路部分は省略してある。図2に示すように、チャネル導波路部24の出力端は、y軸に一致するように揃えられており、隣接する導波路の出力端の間隔はΔyに設定されている。すなわち、チャネル導波路部24の出力端は、y軸上でΔyの等間隔で並べて配列されている。また、水平直線導波路部24Cとy軸とは直交している。Δyの値は、隣接する導波路を導波される光どうしの電場が互いに重なり合うことがない(すなわち、クロストークが発生しない)値にすればよい。AWG型光合分波器が合分波する光の波長帯域が近赤外帯域であり、断面が300nm角のSi導波路である場合、Δyの値は、2μm以上に設定すればよい。
【0058】
ここで、傾斜直線導波路部24A、あるいは水平直線導波路部24Cとの呼称は、単に、直線導波路部が、z軸に対して平行(すなわち水平)に配置されているか、z軸に対して傾斜した方向に配置されているかを識別するためのものであり、重力場に対する水平あるいは傾斜を意味するものではない。
【0059】
曲線導波路部24Bの導波軸は、図2に示すように、曲率半径がRであって角度Θだけ張られた円弧の一部で与えられる形状である。ここで、導波路の導波軸とは、導波路のコアの導波方向に沿った中心軸をいう。以後、伝播方向が直線状あるいは曲線状の1次元に制限された導波路、いわゆる1次元導波路の形状を示す場合は、導波軸の形状を意味するものとし、単に導波路の形状というものとする。
【0060】
曲線導波路部24Bの形状は、直線導波路として形成される導波路24-nを除きチャネル導波路部24を構成するすべての導波路において合同の形状である。従って、傾斜直線導波路部24Aの長さが、導波路24-1において最長であり、導波路24-2以降順次短くなっている。
【0061】
次に、チャネル導波路部24を構成する各導波路の寸法を数値的に与えるための設計指針を説明する。ここでは、必要に応じて隣接する導波路24-2等他の導波路についても言及するが、主に導波路24-1を一例に取り上げて説明する。導波路24-1以外の導波路についても、設計指針は共通する。
【0062】
以下の説明では、入力導波路14に入力される入力光として波長が1.49μmと1.31μmとの2波長成分を含む光を仮定し、出力端16-1C及び16-2C(図1参照)からそれぞれ波長が1.49μm及び1.31μmの光が出力されるものとして説明する。この場合、波長が1.49μm及び1.31μmの光の波長分離が実現される位相差ΔLは、0.61μmである。この位相差ΔLは以下のように求められる。
【0063】
波長が1.49μm及び1.31μmの光の平均波長λは、λ=(1.49+1.32)/2=1.4μmとなる。平均波長λに対する光導波路の実効屈折率をnとすると2πnΔL/λ=mλの関係がある。ここで、mは1以上の整数であり、ここではm=2としてある。また、波長が1.4μmの光に対する300nm角のSi導波路の実効屈折率nは2.3であるので、これらのパラメータを上述の式に代入することによって、位相差ΔLは0.61μmと求まる。
【0064】
平面導波路部22の入力端22Aから傾斜直線導波路部24Aの出力端までの直線距離をRsとする。曲線導波路部24Bは、曲率半径がRであって曲率半径の中心から張る角度がΘである円弧の一部で与えられる形状である。Rの値は例えば、5μm程度の値が設定される。
【0065】
ここで、導波路24-1の水平直線導波路部24Cの長さをLhとする。このように仮定すると、平面導波路部22の入力端22Aから導波路24-1の出力端(y軸との交点)までの全長をL0とするとL0は次式(1-1)で与えられる。
L0=Rs+RΘ+Lh (1-1)
導波路24-1の出力端、すなわち水平直線導波路部24Cの出力端である水平直線導波路部24Cとy軸との交点におけるy座標は次式(1-2)で与えられる。
y=RssinΘ+R(1−cosΘ) (1-2)
また、平面導波路部22の入力端22Aからz軸に沿ってy軸に至るまでの距離z0は、次式(1-3)で与えられる。すなわち、平面導波路部22の入力端22Aのz座標は-z0である。
z0=RscosΘ+RsinΘ+Lh (1-3)
チャネル導波路部24を構成する複数の導波路の隣の光路長Rs'は、次式(1-4)で与えられる。
R'=[Δy+RssinΘ−R{−cos(Θ+ΔΘ)+cosΘ}]/sin(Θ+ΔΘ) (1-4)
ここで、ΔΘは、チャネル導波路部24を構成する複数の導波路の隣接する導波路に対する、平面導波路部22の入力端22Aを中心にして、平面導波路部22の出力端22Bに至る動径のなす角度である。従って、光路長Rs'は、この動径のなす角度ΔΘだけ離れて配置された導波路の光路長を与えている。以下に示すシミュレーションでは、ΔΘ=3.5°とした。
【0066】
上述の動径のなす角度ΔΘだけ離れて配置されたそれぞれの導波路を形成している水平直線導波路部24Cの長さLhの差ΔLhは、次式(1-5)で与えられえる。
ΔLh=−R'scos(Θ+ΔΘ)+RscosΘ−R{sin(Θ+ΔΘ)−sinΘ} (1-5)
これは、z0の値が、チャネル導波路部24を構成する複数の導波路において全て等しい値が与えられているとの条件下で、上式(1-3)の差分を計算することによって得られる。
【0067】
最後に、上述の動径のなす角度ΔΘだけ離れて配置された導波路に対する、平面導波路部22の入力端22Aから導波路24-1の出力端(y軸との交点)までの全長の差ΔL0が次式(1-6)で与えられる。これは、上式(1-1)の差分を計算することによって得られる。
ΔL0=R's−Rs+RΔΘ+ΔL (1-6)
チャネル導波路部24を構成する複数の導波路に対するL0の値が全て等しくなるように、光路長ΔL0に相当する光路長が、上述の図1で説明した導波路アレイを構成する個々の導波路において調整される。
【0068】
上述の動径のなす角度ΔΘの値は、導波路アレイ26を構成する導波路の本数をNとしたときNΔΘの大きさが平面導波路部22内での光の回折角を充分にカバーする程度の値とするのが良い。NΔΘの値が小さすぎると、平面導波路部22内での光の回折角が小さすぎて、導波路回折格子として機能する平面導波路部22の出力端に並べられた導波路によって波長分離ができなくなる。波長が1.49μm及び1.31μmの光を分離することを前提にすると、Nの値は、出力導波路の本数の4倍程度に設定するのが良い。ここでは、出力導波路は、出力導波路16-1及び16-2の2本であるから、Nの値を8程度(2×4=8)と設定するのが好適である。
【0069】
また、同様の理由で平面導波路部22の入力端22Aから出力端22Bまでの長さは、入力端22Aから入力された入力光がこの平面導波路部22を伝播中に回折されて、出力端22Bに到達した時点で干渉によって2波長が分離可能となるために充分な長さに設定する必要がある。この距離が短すぎると出力端22Bにおいて、2波長成分のピーク強度が近接しすぎるために波長分離が困難となる。
【0070】
また、平面導波路部22の入力端22Aから傾斜直線導波路部24Aの出力端までの直線距離Rsの最小値は、面導波路部22の入力端22Aから出力端22Bまでの長さ以上に設定するのが望ましい。例えば、入力導波路14の導波路幅を1μmとした場合、平面導波路部22の入力端22Aから出力端22Bまでの長さは17μm以上とし、Rsの最小値は33μmと設定するのが好適である。
【0071】
チャネル導波路部24-j(ここで、jは、1≦j≦Nを満たす整数である。)に対するΔL0(j)とし、入力スターカプラ20のチャネル導波路部24と出力スターカプラ30のチャネル導波路部34の長さの和をΔL0t(j)とすると、ΔL0t(j)は、次式(1-7)であたえられる。
ΔL0t(j)=ΔL0(j)+ΔL0(N+1−j) (1-7)
ここで、ΔL0mをΔL0t(j)の最小値とし、次式(1-8)でΔLoe(j)を定義すると、
ΔLoe(j)=ΔL0t(j)−ΔL0m (1-8)
上式(1-8)で与えられるΔLoe(j)が、入力スターカプラ20及び出力スターカプラ30で生じる光路長差を、j番目のチャネル導波路部によって補償するために必要な光路長を与える。j番目のチャネル導波路部によって補償するために必要な光路長とは、入力スターカプラ20が具えるj番目のチャネル導波路であるチャネル導波路24-j及び出力スターカプラ30が具える(N+1−j)番目のチャネル導波路であるチャネル導波路24-(N+1−j)によって補償するために必要な光路長を意味する。
【0072】
例えば、傾斜直線導波路部24A、曲線導波路部24B及び水平直線導波路部24Cの合計の光路長は14μm程度であり、ΔLoe(j)の値は、0.06〜1.9μm程度である。
【0073】
<導波路アレイの構成>
図3を参照して導波路アレイ26の構成及びその設計方法について説明する。図3は、導波路アレイ26の概略的構成を示す平面図であり、導波路アレイ26を構成する個々の導波路を太線で概略的に示してある。
【0074】
導波路アレイ26を構成するそれぞれの導波路は、導波路26-1〜26-NのN本から構成されている。図3においては、中心対称軸である中心対称線を中心対称線Sと示してある。また、図2において設定したy軸を図3においても同一条件で設定してある。図3においてy軸として示してある軸線が左右に1本ずつあるのは、後述する前段導波路部26-Xと後段導波路部26-Yとが線対称に形成されており、図3の左側に示すy軸が、図2において設定されたy軸に相当する。また、図3の右側に示すy軸は、中心対称線Sに対称なy軸である。
【0075】
また、図3では、導波路アレイ26を構成する導波路26-1〜26-Nの内、導波路26-1と導波路26-Nのみを示し他の導波路は省略してある。
【0076】
また、図3において、導波路アレイ26を構成する導波路26-Nの前段第1曲線導波路部26Aの曲率中心ymを通り、中心対称線Sに平行な直線を直線αとし、この直線αと中心対称線Sに対する対称な直線を直線βと示してある。
【0077】
導波路アレイ26を構成するそれぞれの導波路は、前段導波路部26-Xと後段導波路部26-Yとを具えて構成し、前段第2直線導波路部26Dの終端と後段第2直線導波路部26D'の始端とが接続されている。
【0078】
前段導波路部26-Xは、前段第1曲線導波路部26A、前段第1直線導波路部26B、前段第2曲線導波路部26C、及び前段第2直線導波路部26Dの順に導波方向に向って順次接続して構成されている。また、後段導波路部26-Yは、前段第1曲線導波路部26A、前段第1直線導波路部26B、前段第2曲線導波路部26C、及び前段第2直線導波路部26Dとそれぞれ対応する同一形状の後段第1曲線導波路26A'、後段第1直線導波路26B'、後段第2曲線導波路26C'、及び後段第2直線導波路26D'が、前段第2直線導波路部26Dの終端を通り、前段第2直線導波路部26D'の導波方向に直交する直線に対称な位置に配置され、この順序に順次接続して構成されている。
【0079】
すなわち、前段導波路部26-Xと後段導波路部26-Yは、中心線Sに対して線対称の形状に形成されている。また、前段第1曲線導波路部26A、後段第1曲線導波路部26A'、前段第2曲線導波路部26C、及び後段第2曲線導波路部26C'のそれぞれは、導波路アレイを構成する導波路26-1〜26-Nにおいて同一の曲率半径Rの円弧形状に設定されている。
【0080】
前段第1直線導波路部26B及び後段第1直線導波路部26B'のそれぞれの光路長は、導波路アレイ26を構成する導波路26-1〜26-Nにおいて、後述するように、それぞれ前段光路長差及び後段光路長差を補償する光路長に設定されている。
【0081】
前段導波路部26-Xと後段導波路部26-Yは、中心線Sに対して線対称の形状に形成されているので、以下の説明では、主に前段導波路部26-Xの形状につき説明し、後段導波路部26-Yについては、その重複する説明を省略することもある。
【0082】
また、前段第1曲線導波路部26A及び後段第1曲線導波路部26A'のそれぞれの光路長は、後述するように、導波路アレイ26を構成する導波路26-1〜26-Nにおいて、それぞれ波長分離が実現される位相差が与えられる光路長に設定されている。
【0083】
角度Θ0は、直線αとy軸とのなす角度である。また、角度Θaは、前段第1曲線導波路部26Aの円弧部分が占める範囲を与える角度であって、曲率中心から角度Θaで張られる範囲に前段第1曲線導波路部26Aが存在する。
【0084】
角度Θaの値は、導波路アレイ26を構成する導波路26-1〜26-Nにおいて全て同一の値であって、更に、前段第1曲線導波路部26A、前段第2曲線導波路部26C、後段第1曲線導波路26A'、及び後段第2曲線導波路26C'において全て同一の値に設定されている。
【0085】
導波路アレイ26を構成する導波路26-1〜26-Nは、入力スターカプラ20及び出力スターカプラ30で生じる光路長差を前段第1曲線導波路部26Aの光路長Ls及び後段第1曲線導波路部26A’の光路長Lsによって補償するように設定されている。波長分離が実現されるための位相差は角度Θ0で発生させている。
【0086】
前段第2曲線導波路部26Cの曲率半径はRであり、前段第2曲線導波路部26Cの存在範囲は、曲率中心から角度(Θa+Θ0)だけ張られた範囲である。また、前段第2直線導波路部26Dの光路長はLhaである。前段第1直線導波路部26Bの光路長をLsとし、中心線Sと直線αとの間隔Z0aとすると、間隔Z0aは次式(2-1)で与えられる。
Z0a=R{2sin(Θa+Θ0)−sinΘ0}+Lscos(Θa+Θ0)+Lha+(ym−y)sinΘ0 (2-1)
前段導波路部26-Xにおける導波路26-Nの光路長La、すなわち、中心線Sと直線αとに挟まれた間の導波路26-Nの光路長Laは、次式(2-2)で与えられる。
La=R(2Θa+Θ0)+Ls+Lha (2-2)
光路長Laが最小の長さL0aは、中心線Sと直線αとに挟まれた間の導波路26-1の光路長であり、その値は次式(2-3)で与えられる。
Z0a=R{2sin(Θa+Θ0)−sinΘ0}+Ls0cos(Θa+Θ0)+Lha0+(ym−y0)sinΘ0 (2-3)
ここで、y0は、導波路26-1の入力端、すなわちy軸との交点の座標であり、Lha0は、導波路26-1の前段第2直線導波路部(導波路26-Nの前段第2直線導波路部26Dに相当する部分)の光路長である。また、Ls0は、導波路26-1の前段第1曲線導波路部(導波路26-Nの前段第1曲線導波路部26Aに相当する分)の光路長である。
【0087】
式(2-1)と式(2-3)の両辺の差をとることによって、次式(2-4)が得られる。
Lha=Lha0−(Ls−Ls0)cos(Θa+Θ0)−(ym−y0)sinΘ0 (2-4)
また、式(2-4)を式(2-2)に代入して、次式(2-5)が得られる。
La=R(2Θa+Θ0)+Ls{1−cos(Θa+Θ0)}
+(y−y0)sinΘ0+Ls0cos(Θa+Θ0)+Lha0 (2-5)
次に式(2-5)の差分をとることによって次式(2-6)が得られる。
ΔLa=ΔLs{1−cos(Θa+Θ0)}+ΔysinΘ0 (2-6)
波長分離が実現される位相差、すなわち、入力スターカプラ20及び出力スターカプラ30における波長フィルタとしての機能を実現させるために必要な光路長差ΔLの値は、次式(2-7)で与えられる関係からΘ0の値が決定される。
ΔL=2Δy・sinΘ0 (2-7)
ここで、式(2-7)においてΔy・sinΘ0の値を2倍した値としてΔLが与えられているが、これは、前段導波路部26-X及び後段導波路部26-Yのそれぞれにおいて、光路長差、Δy・sinΘ0が発生することに起因している。
【0088】
この値Θ0は、ここで仮定した波長が1.49μm及び1.31μmの光を分離及び合波するためのAWG光合分波器においては、9.5°である。また、上述したΔLoe(j)=ΔL0t(j)−ΔL0mで与えられる光路長誤差ΔLoe(j)は、前段第1直線導波路部26B及び後段第1直線導波路部26B'の光路長差ΔLs(j)を調整することによって発生させることが可能である。前段第1直線導波路部26B及び後段第1直線導波路部26B'の隣接する導波路間の光路長差を合計した光路長差ΔLs(j)は、次式(2-8)で与えられる。
ΔLs(j)=ΔLoe(j)−ΔLoe(j-1) (2-8)
上式(2-8)が、入力スターカプラ20及び出力スターカプラ30で生じる光路長差を補償するための条件である。
【0089】
角度Θaは、平面導波路部22の入力端22Aからz軸に沿ってy軸に至るまでの距離z0が最小の値をとるように設定する。この発明の実施形態のAWG型光合分波器においては、Θa=10°に設定することによって、前段導波路部26-Xにおける導波路26-Nの光路長Laの値が、19.3μmとなり最小の値が得られた。
【0090】
<従来のAWG型光合分波器とこの発明の実施形態のAWG型光合分波器との比較>
図4(A)及び図4(B)を参照して、従来のAWG型光合分波器とこの発明の実施形態のAWG型光合分波器との全長の差異についてのシミュレーション結果について説明する。図4(A)及び図4(B)は、従来のAWG型光合分波器とこの発明の実施形態のAWG型光合分波器との全長の比較を行った結果の説明に供する図であり、図4(A)はこの発明の実施形態のAWG型光合分波器のシミュレーション結果を示す図であり、図4(B)は従来のAWG型光合分波器のシミュレーション結果を示す図である。
【0091】
図4(A)によれば、この発明の実施形態のAWG型光合分波器の入力スターカプラ20が具える平面導波路部22と出力スターカプラ30が具える平面導波路部32の部分を除く部分の寸法が57μmであった。一方、図4(B)によれば、従来のAWG型光合分波器の入力スターカプラが具える平面導波路部22’と出力スターカプラが具える平面導波路部32’の部分を除く部分の寸法は141μmであった。
【0092】
これによれば、この発明の実施形態のAWG型光合分波器は、従来の同様のAWG型光合分波器と比較して、60%程度の寸法縮小に成功している。特に、従来のAWG型光合分波器においては、入力スターカプラが具えるチャネル導波路部24’及び出力スターカプラが具えるチャネル導波路部34’の寸法が、この発明の実施形態のAWG型光合分波器のものに比べて非常に長くなっていることが分かる。
【0093】
これは、従来の同様のAWG型光合分波器においては、スターカプラ内で生じる光路長差をスターカプラ内で補償されるように構成していることに起因している。すなわち、スターカプラを構成する平面導波路部で生じる光路長差を、このスターカプラが具えるチャネル導波路部で補償するため、チャネル導波路部の寸法が、この発明の実施形態のAWG型光合分波器におけるチャネル導波路部の寸法に比べて非常に長くなっている。
【0094】
一方この発明の実施形態のAWG型光合分波器では、入力スターカプラ20と出力スターカプラ30との間を接続している導波路アレイを構成する各導波路の光路長を調整することによって、入力スターカプラ及び出力スターカプラで生じる光路長差を補償しかつ波長分離が実現される位相差を与える構成とされている。このため、導波路アレイ26は従来のAWG型光合分波器の導波路アレイ26'より長めであるが、入力スターカプラ20が具えるチャネル導波路24及び出力スターカプラ30が具えるチャネル導波路34の寸法が、従来の同様のAWG型光合分波器と比べて格段に短くなっている。
【符号の説明】
【0095】
10:シリコン基板(Si基板)
12:クラッド層(SiO2クラッド層)
14:入力導波路
16-1、16-2:出力導波路
20:入力スターカプラ
22、22’:平面導波路部(入力スターカプラの平面導波路部)
22A,32A:入力端(平面導波路部の入力端)
22B,32B:出力端(平面導波路部の出力端)
24、24':チャネル導波路部(入力スターカプラのチャネル導波路部)
24-1,24-2,24-n,26-1,26-N:導波路
24A:傾斜直線導波路部
24B:曲線導波路部
24C:水平直線導波路部
26、26’:導波路アレイ
26A:前段第1曲線導波路部
26B:前段第1直線導波路部
26C:前段第2曲線導波路部
26D:前段第2直線導波路部
26-X:前段導波路部
26-Y:後段導波路部
26A':後段第1曲線導波路
26B':後段第1直線導波路
26C':後段第2曲線導波路
26D':後段第2直線導波路
30:出力スターカプラ
32、32’:平面導波路部(出力スターカプラの平面導波路部)
34、34’:チャネル導波路部(出力スターカプラのチャネル導波路部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力導波路が入力端に接続された入力スターカプラと、
出力導波路が出力端に接続された出力スターカプラと、
前記入力スターカプラの出力端に一方の端が接続されかつ前記出力スターカプラの入力端に他方の端が接続された、複数の導波路がアレイ状に配置されて構成される導波路アレイと
を具え、
前記導波路アレイを構成する各導波路は、前記入力スターカプラ及び前記出力スターカプラで生じる光路長差を補償し、かつ波長分離が実現される位相差が与えられる光路長にそれぞれ設定されている
ことを特徴とするアレイ導波路回折格子型光合分波器。
【請求項2】
入力スターカプラと、導波路アレイと、出力スターカプラとがこの順序に接続されて構成され、
前記入力スターカプラ及び前記出力スターカプラは、それぞれ平面導波路部と複数の導波路を具えるチャネル導波路部とを具え、
前記入力導波路が、前記入力スターカプラの平面導波路部の入力端に接続され、
前記出力導波路が、前記出力スターカプラの平面導波路部の出力端に接続され、
前記入力スターカプラが具えるチャネル導波路部は、前記入力スターカプラの平面導波路部の出力端に接続されており、
前記出力スターカプラが具えるチャネル導波路部は、前記出力スターカプラの平面導波路部の入力端に接続されており、
導波路アレイは、前記入力スターカプラの出力端である、前記入力スターカプラのチャネル導波路部を構成する複数の導波路のそれぞれの出力端に一方の端のそれぞれが接続され、かつ前記出力スターカプラの入力端である、前記出力スターカプラのチャネル導波路部を構成する複数の導波路のそれぞれの入力端に他方の端のそれぞれが接続された複数の導波路がアレイ状に配置されて構成され、
前記導波路アレイを構成する複数の導波路のそれぞれの光路長は、
前記入力スターカプラの平面導波路部の入力端から、前記入力スターカプラのチャネル導波路部を構成しているそれぞれの導波路の出力端に至るまでの間で発生する該導波路間の前段光路長差と、
前記出力スターカプラのチャネル導波路部を構成しているそれぞれの導波路の入力端から前記出力スターカプラの平面導波路部の出力端に至るまでの間で発生する該導波路間の後段光路長差と
の和として与えられる光路長差を補償し、かつ波長分離が実現される位相差が与えられる光路長にそれぞれ設定されている
ことを特徴とするアレイ導波路回折格子型光合分波器。
【請求項3】
前記導波路アレイを構成するそれぞれの導波路は、
前段第1曲線導波路部、前段第1直線導波路部、前段第2曲線導波路部、及び前段第2直線導波路部の順に導波方向に向って順次接続されて構成される前段導波路部と、
前記前段第1曲線導波路部、前記前段第1直線導波路部、前記前段第2曲線導波路部、及び前記前段第2直線導波路部とそれぞれ対応する同一形状の後段第1曲線導波路、後段第1直線導波路、後段第2曲線導波路、及び後段第2直線導波路が、前記前段第2直線導波路部の終端を通り、前記前段第2直線導波路部の導波方向に直交する直線に対称な位置に配置され、この順序に順次接続されて構成される後段導波路部と
を具え、
前記前段第2直線導波路部の終端と前記後段第2直線導波路部の始端とが接続されて構成されている
ことを特徴とする請求項2に記載のアレイ導波路回折格子型光合分波器。
【請求項4】
前記チャネル導波路部を構成する前記複数の導波路の内の1本だけは直線導波路であり、他の導波路は傾斜直線導波路部、曲線導波路部及び水平直線導波路部を具えた導波路とし、かつこの順に接続されて構成されていることを特徴とする請求項2に記載のアレイ導波路回折格子型光合分波器。
【請求項5】
前記前段第1曲線導波路部、前記後段第1曲線導波路部、前記前段第2曲線導波路部、及び前記後段第2曲線導波路部のそれぞれは、前記導波路アレイを構成する複数の導波路において同一の曲率半径の円弧形状に設定されており、
前記前段第1直線導波路部及び前記後段第1直線導波路部のそれぞれの光路長は、前記導波路アレイを構成する複数の導波路において、それぞれ前記前段光路長差及び前記後段光路長差を補償する光路長に設定され、
前記前段第2直線導波路部及び前記後段第2直線導波路部のそれぞれの光路長は、前記導波路アレイを構成する複数の導波路において、それぞれ波長分離が実現される位相差が与えられる光路長に設定されている
ことを特徴とする請求項3に記載のアレイ導波路回折格子型光合分波器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−39429(P2011−39429A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189057(P2009−189057)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】