説明

アンテナ装置

【課題】 複合式のアンテナ装置の大型化を抑えつつ、GPS信号の受信感度性能を高める。
【解決手段】 アンテナ装置は、地上デジタル信号を受信するフィルムアンテナと、GPS信号を受信する矩形板状のパッチアンテナと、を備えている。フィルムアンテナは、直線状に延在するグラウンドパターンと、グラウンドパターンの一端部から所定の間隔を空けて、当該グラウンドパターンの延在方向に直交する方向に延在する一対の給電素子とを備えている。パッチアンテナは、当該パッチアンテナにおける主面の互いに平行な一対の辺がグラウンドパターンの延在方向に平行となるように、グラウンドパターンと、一対の給電素子とがなす角部の内側に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置に係り、特に自動車等の車両に搭載されるアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両に搭載されるナビゲーションシステムにおいては、地上デジタルのテレビ放送を視聴可能としたものが知られており、車両にはGPS信号を受信するアンテナ装置だけでなく地上デジタル信号を受信するアンテナ装置も搭載されている。
近年においては、GPS用のアンテナと、地上デジタル用のアンテナとを一体化した複合式のアンテナ装置が開発されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−77826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載のアンテナ装置では、GPS用及び地上デジタル用のアンテナがいずれもフィルム状であるが、GPS用のアンテナの場合、フィルム状であると受信感度性能が低く、安定した受信状態が損なわれるおそれがあった。
このため、本発明の課題は、複合式のアンテナ装置の大型化を抑えつつ、GPS信号の受信感度性能を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載のアンテナ装置は、
地上デジタル信号を受信するフィルムアンテナと、
衛星信号を受信する略矩形板状のパッチアンテナと、を備え、
前記フィルムアンテナは、
直線状に延在するグラウンドパターンと、
前記グラウンドパターンの一端部から所定の間隔を空けて、当該グラウンドパターンの延在方向に直交する方向に延在する給電素子と、を備え、
前記パッチアンテナは、当該パッチアンテナにおける主面の互いに平行な一対の辺が前記グラウンドパターンの延在方向に平行となるように、前記グラウンドパターンと、前記給電素子とがなす角部の内側に配置されていることを特徴としている。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のアンテナ装置において、
前記パッチアンテナは、前記グラウンドパターン及び前記給電素子のそれぞれに対して重ならないように前記角部の内側に配置されていることを特徴としている。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載のアンテナ装置において、
前記フィルムアンテナ用の増幅回路部品が実装されたフィルムアンテナ用基板部と、
ボトムケースと当該ボトムケースを覆うトップケースとを有するケース部と、を備え、
前記パッチアンテナは、アンテナ素子と増幅回路部品が実装されるパッチアンテナ用基板部を備え、
前記ケース部は、前記パッチアンテナを収納するパッチ用収納領域と、前記フィルムアンテナ用基板部を収納するフィルム用収納領域とを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複合式のアンテナ装置の大型化を抑えつつ、GPS信号の受信感度性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態に係るアンテナ装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示すアンテナ装置の分解斜視図である。
【図3】図1のアンテナ装置に備わる本体部の概略構成を示す断面図である。
【図4】図1のアンテナ装置に備わるフィルムアンテナの概略構成を示す正面図である。
【図5】本実施形態に係るフィルムアンテナとパッチアンテナとの位置関係を示す正面図である。
【図6】図1のアンテナ装置を自動車のフロントガラスに例えば4ダイバーで設置した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0011】
図1は本実施形態に係るアンテナ装置の概略構成を示す斜視図であり、図2は分解斜視図である。図1及び2に示すようにアンテナ装置1は、本体部2と、地上デジタル信号を受信するフィルムアンテナ3とを備えている。
【0012】
図3は本体部2の概略構成を示す断面図である。図2及び図3に示すように、本体部2は、パッチアンテナ4と、パッチアンテナ4の基板部5と、フィルムアンテナ3の基板部6と、これらを収納するケース部7とを備えている。
【0013】
パッチアンテナ4は、例えばGPS信号等の衛星信号を受信するアンテナであり、例えばセラミックスから形成された略矩形板状のアンテナ素子41と、アンテナ素子41の略中央部を貫通し、受信面側に半田付けされた給電ピン42とを備えている。アンテナ素子41の受信面とは反対側の面にはグラウンド43が形成されている。
アンテナ素子41は、例えば、20×20×4t[mm]の正方形板形状を有している。なお、アンテナ素子41の形状としては、完全な矩形板状でなくともよく、その全体がおおよそ矩形板状であれば例えば図3に示すように面取りが施されていてもよい。
【0014】
パッチアンテナ4の基板部5は、本発明に係るパッチアンテナ用基板部であり、基板51と、例えばパッチアンテナ4用の増幅回路部品(LNA(Low Noise Amplifier:低雑音増幅回路))等の回路部品(図示省略)とを備えている。基板51における回路部品が実装された面とは反対側の面にはグラウンド52が形成されているとともに、図示しない両面テープによってパッチアンテナ4が固定されている。また、基板51における回路部品が実装された面にはGPS用の同軸ケーブル8の一端が接続されている。
【0015】
フィルムアンテナ3の基板部6は、本発明に係るフィルムアンテナ用基板部であり、基板61と、基板61とフィルムアンテナ3とを電気的に接続するフィンガー62と、例えばフィルムアンテナ3用の増幅回路部品(LNA)等の回路部品(図示省略)とを備えている。フィンガー62は、基板61における回路部品が実装された面とは反対側の面に取り付けられている。また、基板61における回路部品が実装された面には地デジ用の同軸ケーブル9の一端が接続されている。
【0016】
ケース部7は樹脂製であり、ボトムケース71と、トップケース72と、台座73とを備えている。
ボトムケース71は、パッチアンテナ4及び当該パッチアンテナ4の基板部5を収納するパッチ用収納領域711と、フィルムアンテナ3の基板部6を収納するフィルム用収納領域712とを有している。
パッチ用収納領域711には、パッチアンテナ4の受信面に当接する突起713が形成されている。この突起713によってアンテナ素子41が底上げされ、当該アンテナ素子41の半田部44と、ボトムケース71の底部との干渉が防止されている。これにより、パッチアンテナ4が位置決めされるとともに、収納後のがたつきが抑制される。
フィルム用収納領域712における底部には、フィンガー62を露出するための開口714が形成されている。そして、フィルム用収納領域712の底部には、フィルムアンテナの基板61が図示しない両面テープによって固定されている。
ボトムケース71の壁部の内側には、トップケース72に係合する爪部715が形成されている。また、ボトムケース71の壁部の外側には、台座73に係合する凹部716が形成されている。
また、ボトムケース71の底部には、後述するネジ15のネジ頭が配置される貫通孔717が形成されている。
【0017】
トップケース72は、ボトムケース71の周囲を囲んで閉塞するものである。このトップケース72の内側には、パッチアンテナ4の基板51に当接する突起721が形成されている。この突起721が基板51を押さえることでパッチアンテナ4がパッチ用収納領域711内で固定される。
また、トップケース72の内側には、貫通孔717まで延在する凸部722が形成されている。この凸部722は貫通孔717に連通するネジ穴が形成されており、この貫通孔717及びネジ穴にネジ15が螺入することで、ボトムケース71にトップケース72が固定される。
また、トップケース72には、ボトムケース71の爪部715に向かって延出し、当該爪部715に係合する係合部723が形成されている。この係合部723と爪部715との係合を解除すれば、ボトムケース71からトップケース72を取り外すことができる。
【0018】
台座73は、ボトムケース71及びトップケース72を支持するものである。台座73には、ボトムケース71の凹部716まで延出し、当該凹部716に係合する係合部731が形成されている。この係合部731と凹部716との係合を解除すれば台座73からボトムケース71を取り外せることができる。また、台座73には、フィンガー62を露出するための開口732が形成されている。そして、台座73は、車両の窓ガラスに貼られたフィルムアンテナ3に対して、両面テープ74を介して貼り付けられる。両面テープ74にもフィンガー62を露出するための開口741が形成されている。
【0019】
図4は、フィルムアンテナ3の概略構成を示す正面図である。図4に示すように、フィルムアンテナ3は、全体として所定の光透過性を有しており、第一グラウンドパターン31と、第二グラウンドパターン32と、一対の給電素子33,34とを備えている。
第一グラウンドパターン31は給電点35から直線状に延在するように形成されている。また、第二グラウンドパターン32は、第一グラウンドパターン31の延在方向に直交する方向に沿って給電点35から延在するように形成されている。
一対の給電素子33,34は、第一グラウンドパターン31の延在方向に直交する方向に沿って給電点36から延在するように形成されている。ここで、給電素子33,34用の給電点36は、第一グラウンドパターン31の一端部から図3における下方に離間して配置されているために、一対の給電素子33,34も第一グラウンドパターン31の一端部から所定の間隔を空けて配置されることになる。
【0020】
図5は、フィルムアンテナ3とパッチアンテナ4との位置関係を示す正面図である。図5に示す通り、パッチアンテナ4は、第一グラウンドパターン31及び一対の給電素子33,34に重ならないように、第一グラウンドパターン31と、一対の給電素子33,34とがなす角部40の内側に配置されている。そして、パッチアンテナ4は、アンテナ素子41における主面の互いに平行な一対の辺41a,41bが第一グラウンドパターン31の延在方向に平行となるように配置されている。
また、フィンガー62は、それぞれ給電点35,36に当接している。これにより、フィルムアンテナ3と、当該フィルムアンテナ3の基板部6とがフィンガー62を介して電気的に接続されることになる。
【0021】
以上のように、本実施形態によれば、パッチアンテナ4が、アンテナ素子41における主面の互いに平行な一対の辺41a,41bが第一グラウンドパターン31の延在方向に平行となるように、第一グラウンドパターン31と、一対の給電素子33,34とがなす角部40の内側に配置されているので、フィルムアンテナ3の給電点35,36と、パッチアンテナ4とを極力近接して配置することができる。
図6は、自動車のフロントガラスにアンテナ装置1を例えば4ダイバーで設置した状態を示す説明図である。本実施形態に係るGPS用のパッチアンテナ4と、地上デジタル放送用のフィルムアンテナ3とを複合したアンテナ装置1は、フロントガラスFの上側、左側、右側のいずれか一箇所に配置されていればよく、その他のアンテナ装置1Aは地上デジタル放送用のフィルムアンテナ3のみを有する構成でよい。この場合、各アンテナ装置1,1Aは、第一グラウンドパターン31がフロントガラスFの一辺に沿うように取り付けられている。アンテナ装置1の本体部2においては、光透過性がないためにフロントガラスFの周縁の所定範囲H内に収めなければならない。このため、ケース部7が大型化してしまうと、所定範囲H外にケース部7がはみ出てしまいドライバーの視界を遮ることになる。ところで、上述したように、アンテナ装置1におけるフィルムアンテナ3の基板部6はフィルムアンテナ3の給電点35,36に重なるように配置され、パッチアンテナ4の基板部5はパッチアンテナ4に重なるように配置される。つまり、給電点35,36とパッチアンテナ4とが離れているとケース部7が大型化してしまう。一方、本実施形態のアンテナ装置1のように給電点35,36とパッチアンテナ4とが近接しているとケース部7の大型化を抑えることができる。
そして、従来の複合式のアンテナ装置に使われていたGPS用のフィルムアンテナに比べて、パッチアンテナ4は受信感度性能が高いために、アンテナ装置1全体のGPS信号の受信感度性能を高めることも可能である。
【0022】
なお、パッチアンテナ4自体を小型化すれば、ケース部7の大型化をより効果的に抑制することができるのはもちろんであるが、そうなると高価なパッチアンテナを採用しなければならず好ましくない。本実施形態で例示したセラミックス製のパッチアンテナ4は廉価でありながらもある程度はコンパクトである。このセラミックス製のパッチアンテナ4を採用して角部40の内側に配置する構成にすれば、製造コストを抑えつつも所定範囲H内に収めるケース部7を実現することは容易である。
【0023】
また、第一グラウンドパターン31及び一対の給電素子33,34のそれぞれに重ならないようにパッチアンテナ4が角部40の内側に配置されているので、信号受信時にフィルムアンテナ3とパッチアンテナ4とが干渉しあって受信感度が不安定になってしまうことを抑制することができる。
このことから、パッチアンテナ4は、第一グラウンドパターン31及び一対の給電素子33,34に重ならない範囲で、第一グラウンドパターン31及び一対の給電素子33,34に近接させることが大型化を抑えるうえで好ましい。
【0024】
また、台座73に対してボトムケース71が着脱自在であるので、パッチアンテナ4や各基板部5,6の修復作業が必要な場合には台座73からボトムケース71を取り外して修復作業をすることができる。台座73とボトムケース71とが固着されたものであると両面テープ74をフロントガラスから剥がさなければならず、修復作業後に再度新たな両面テープ74が必要となる。しかしながら、台座73に対してボトムケース71が着脱自在であれば、台座73からボトムケース71を取り外して修復作業をし、その後台座73にボトムケース71を取り付ければよく、新たな両面テープ74を用意しなくともよい。
【0025】
なお、本発明は上記実施形態に限らず適宜変更可能である。
例えば、上記実施形態では第二グラウンドパターン32を備えたフィルムアンテナ3を例示して説明したが、第一グラウンドパターン31と一対の給電素子33,34との位置関係がそのままであれば第二グラウンドパターン32を省略したフィルムアンテナを用いることも可能である。
また、第二グラウンドパターン32は、一対の給電素子33,34とパッチアンテナ4との間に設けられていてもよい。この場合においてもパッチアンテナ4は第二グラウンドパターン32と重なっていないことが好ましい。
また、上記実施形態では、一対の給電素子33,34を備えたフィルムアンテナ3を例示して説明しているが、給電素子が一つのフィルムアンテナに対しても本発明の構成は適用可能である。
【0026】
また、上記実施形態では、パッチアンテナ4の基板51と、フィルムアンテナ3の基板61とが別体である場合を例示したが、両者が一体化されていてもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 アンテナ装置
2 本体部
3 フィルムアンテナ
4 パッチアンテナ
5 基板部(パッチアンテナ用基板部)
6 基板部(フィルムアンテナ用基板部)
7 ケース部
31 第一グラウンドパターン(グラウンドパターン)
32 第二グラウンドパターン
33,34 給電素子
35,36 給電点
40 角部
41 アンテナ素子
41a,41b 辺
42 給電ピン
71 ボトムケース
72 トップケース
73 台座
74 両面テープ
711 パッチ用収納領域
712 フィルム用収納領域
F フロントガラス
H 所定範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上デジタル信号を受信するフィルムアンテナと、
衛生信号を受信する略矩形板状のパッチアンテナと、を備え、
前記フィルムアンテナは、
直線状に延在するグラウンドパターンと、
前記グラウンドパターンの一端部から所定の間隔を空けて、当該グラウンドパターンの延在方向に直交する方向に延在する給電素子と、を備え、
前記パッチアンテナは、当該パッチアンテナにおける主面の互いに平行な一対の辺が前記グラウンドパターンの延在方向に平行となるように、前記グラウンドパターンと、前記給電素子とがなす角部の内側に配置されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
請求項1記載のアンテナ装置において、
前記パッチアンテナは、前記グラウンドパターン及び前記給電素子のそれぞれに対して重ならないように前記角部の内側に配置されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のアンテナ装置において、
前記フィルムアンテナ用の増幅回路部品が実装されたフィルムアンテナ用基板部と、
ボトムケースと当該ボトムケースを覆うトップケースとを有するケース部と、を備え、
前記パッチアンテナは、アンテナ素子と増幅回路部品が実装されるパッチアンテナ用基板部を備え、
前記ケース部は、前記パッチアンテナを収納するパッチ用収納領域と、前記フィルムアンテナ用基板部を収納するフィルム用収納領域とを有することを特徴とするアンテナ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−58893(P2013−58893A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195706(P2011−195706)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】